説明

路肩検出装置及び路肩検出装置を用いた車両

【課題】走行路面と路外との境界である路肩に白線やガードレール等の立体物がなくても、画像情報から路肩を検出する路肩検出装置を提供する。
【解決手段】入力された車外環境の三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する距離情報算出部と、算出された距離に基づく距離画像から自車両が走行する走行路面を検出する走行路面検出部と、検出された走行路面と路外との高低差を測定する高低差算出部と、測定された高低差に基づいて、走行路面と路外との境界である路肩が、走行路面より低い路外がある場合の路肩か否か判定する路肩判定部と、を有する路肩検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外の画像情報から路肩を検出する路肩検出装置及びそれを用いた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全な走行を実現するために、車両の周囲の危険な事象を検出して、検出した危険な事象を回避するために、車両の操舵,アクセル,ブレーキを自動制御する装置に関して研究開発が行われており、一部の車両には既に搭載されている。その中でも、車両に搭載したセンサで白線や路肩を検出して、車両が車線外や路外に逸脱する危険がある場合に、ドライバに警報を発信するシステムや、自動ブレーキ制御や自動ステアリング制御で車両の速度や進行方向を制御するシステムは、路外逸脱の事故を防止する上で有効である。
【0003】
車線逸脱を防止するには、車両に搭載した単眼カメラやステレオカメラを用いて白線を検出し、検出した白線と車両との位置関係から、車両が車線外に逸脱している場合にドライバに警報を発信するシステムが実用化されている。また、同じく、白線を車両に搭載したカメラで検出し、検出した白線と車両との位置関係から、車両が車線外に逸脱しそうな場合に車両のステアリング制御を行うシステムに関しては、多数特許文献がある。
【0004】
また、ガードレール等の路肩の立体物をステレオカメラで検出する装置が特許文献1に示されている。このシステムを利用することで、白線がない場合でも路肩の立体物に衝突しそうな場合に、ドライバへの警報やステアリング制御を行うことができる。
【0005】
さらには、特許文献2には、車両に搭載した単眼カメラを用いて路肩の側溝を検出する装置が記載されている。ここでは、単眼カメラの画像の輝度情報を用いて、路面よりも低い位置にある部分と、路面上の動きが異なることを利用して、側溝を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−5932号公報
【特許文献2】特開2009−53818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両に搭載したセンサで車両前方の走行路の路肩を検出して、車線逸脱警報や車線逸脱防止制御を行う場合、白線を検出するシステムの場合は、道路に白線がない場合に路外に逸脱する事故を防止することができない。
【0008】
また特許文献1のシステムの場合、白線がない場合でも、路肩にガードレール等の立体物があれば路外へ逸脱する事故に対応できるが、路肩に白線も立体物もない場合は対応できない。
【0009】
また、特許文献2の場合、路肩に白線や立体物がなく、路面より低い部分によって路肩が形成されている場合にも対応できるが、単眼カメラの輝度情報を利用しているため、照明変動がる実環境においては適用が難しい。
【0010】
本発明の目的は、走行路面と路外との境界である路肩に白線やガードレール等の立体物がなくても、画像情報から路肩を検出する路肩検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、入力された車外環境の三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する距離情報算出部と、算出された距離に基づく距離画像から自車両が走行する走行路面を検出する走行路面検出部と、検出された走行路面と路外との高低差を測定する高低差算出部と、測定された高低差に基づいて、走行路面と路外との境界である路肩が、走行路面より低い路外がある場合の路肩か否か判定する路肩判定部と、を有する構成とする。
【0012】
また、入力された車外環境の三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する距離情報算出部と、算出された距離に基づく距離画像を複数の画像領域に分離し、複数の画像領域の各々の画像領域間の距離が予め定めた閾値以上か否かを算出し、予め定めた閾値以上の場合を不連続であるとして路肩と判定する不連続性算出部と、算出された路肩に基づいて、走行路面と路外との境界である路肩が、走行路面より低い路外がある場合の路肩か否か判定する路肩判定部と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
走行路面と路外との境界である路肩に白線やガードレール等の立体物がなくても、車外の画像情報から路肩を検出する路肩検出装置を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る路肩検出装置の概要を説明する図である。
【図2】本発明の距離情報算出部の処理フローを示す図である。
【図3】本発明の走行路面算出部の処理フローを示す図である。
【図4】ステレオカメラで3次元位置を求める方法を説明する図である。
【図5】ステレオカメラで3次元位置を求める方法を説明する図である。
【図6】ステレオカメラで走行路面を求める方法を説明する図である。
【図7】走行路面よりも低い路外を検出する方法を説明する図である。
【図8】路外が走行路面より低い場合の路肩を検出する方法を説明する図である。
【図9】ステレオカメラにおける左右画像の対応点に関して説明する図である。
【図10】左右画像の対応点の求め方を説明する図である。
【図11】ステレオカメラにおいて視差の算出の仕方を説明する図である。
【図12】路外が走行路面よりも低い場合の路肩を検出する方法を説明する図である。
【図13】路外が走行路面よりも低い場合の路肩を検出する方法を説明する図である。
【図14】ステレオカメラで3次元位置を求める方法を説明する図である。
【図15】ステレオカメラで3次元位置を求める方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を用いて各実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
ここでは、本発明を、車両に搭載されたステレオカメラの映像を用いて、車両前方の走行路の路肩(以下、自動車が走行できる部分と走行できない部分の境界を「路肩」とする)を検出し、車両が路外(以下、自動車が走行できない領域を「路外」とする)に逸脱する可能性がある場合に、ドライバへの警報や逸脱を防止する制御を行うシステムに適用した場合の実施の形態を説明する。なお、本発明では車外の環境情報を取得する手段としてステレオカメラを用いたが、3次元情報を計測することができるものであれば、何でも良い。例えば、単眼カメラ(撮像素子)を複数用いても適用できる。
【0017】
まず図1を用いて本発明の路肩検出装置の概要を説明する。
【0018】
図1において、車両103に搭載されたステレオカメラ装置104を設け、車両103の前方を撮像範囲とし、車両103前方の立体物の3次元情報を計測することができる。ステレオカメラ装置104の詳細は後述する。
【0019】
ステレオカメラ装置104は、車両103が走行路101を走行している際に、車両前方の道路の路肩113と車両との位置関係、および、走行路面(以下、自動車が走行できる部分の路面を「走行路面」とする)と路外114の高低差や、自車が走行している面との不連続性を測定し、車両が路外に逸脱する危険があるかどうかと、路外が走行路面よりも低いかどうかを判定する。ここで、路外が走行路面よりも低い場合や、路面の不連続性がある場合の路肩を「路外が走行路面より低い路肩」と以下呼ぶこととする。
【0020】
そして、ドライバへの路外逸脱の危険性に関する警報発信や、自動ブレーキ制御,自動ステアリング制御が必要かどうかの判定情報および路肩と車両の位置関係を、車両103に搭載されたHMI(ヒューマンマシンインタフェースHuman Machine Interface)や車両制御装置に伝達する。
【0021】
HMIは、ドライバに危険事象を伝達することができる画面やスピーカ,振動装置等を持ち、路外への逸脱の危険を警告する必要がある場合は、画面,音声,ステアリングや座席の振動といった手段でドライバに警報を発信する。
【0022】
また、車両制御装置は、ステレオカメラ装置104から受信した自動ブレーキ制御,自動ステアリング制御が必要かどうかの判定情報および路肩と車両の位置関係の情報に基づき、自動ブレーキ制御や自動ステアリング制御を行い、車両103が安全に走行できるように車両103の速度や進行方向を制御する。
【0023】
次に、図1を用いて、車両103に搭載されたステレオカメラ装置104の詳細について説明する。
【0024】
ステレオカメラ装置104は、左の撮像部105と右の撮像部106で撮像した車外環境(車両前方)の左右の画像情報に基づく3次元画像情報から車両106前方の対象物(立体物)の有無と車両103から対象物までの距離を算出する距離情報算出部107と、その対象物の有無と距離情報に基づいて車両前方の走行路面が左右の撮像部105,106で撮像した画面上のどの部分に相当するかを計算し、走行路面を検出する走行路面検出部108と、走行路面検出部108で求めた走行路面と路外との高低差を測定する高低差算出部109と、測定された高低差に基づいて走行路面と路外の境界である路肩が、路外が走行路面より低い位置にある場合の路肩か否かを判定する路肩判定部110と、その判定結果と、自車両の状態情報(自車速度,操舵角など)に基づいて、車両が路外へ逸脱する危険があるか否かを判定する車両逸脱判定部116と、を備える。
【0025】
このステレオカメラ装置104を搭載した車両103は、車両逸脱判定部116の判定結果に基づき、ドライバに対して路外逸脱の危険の警報を発信するかどうかを判定する警報要否判定部112と、車両逸脱判定部116の判定結果に基づき、車両103の自動ブレーキ制御,自動ステアリング制御が必要かどうかを判定する自動制御判定部111と、を備える。
【0026】
これらそれぞれの部分の詳細について、以下説明する。
【0027】
左の撮像部105と右の撮像部106は、車両103の前方を撮像範囲とし、走行路101及び車両前方の対象物(立体物)を撮像対象とすることができるように設置する。左の撮像部105と右の撮像部106は、いずれもレンズとCCD(またはCMOS撮像素子)から構成されており、上記撮像範囲をカバーできる仕様の部品を使用する。左の撮像部105と右の撮像部106とを結ぶ線は、走行路面に平行でかつ、車両の進行方向に垂直とする。左の撮像部105と右の撮像部106の間の距離dは、車両からどの程度の距離までを検知範囲とするかにより決定する。
【0028】
次に、ステレオカメラ装置104の距離情報算出部107の機能の詳細に関して、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
図2のフローチャートにおいて、まず、左画像入力処理201において、左の撮像部105で撮像した画像データを受信する。次に右画像入力処理202において、右の撮像部106で撮像した画像データを受信する。ここで、左画像入力処理201と右画像入力処理202を並列処理として同時に行っても良い。
【0030】
次に対応点算出処理203において、左画像入力処理201と右画像入力処理202で取得した左右2枚の画像を比較して、同一物体を撮像している部分を特定する。すなわち、図9に示したように、走行路101上にある対象物である物体901をステレオカメラ装置104で撮像すると、左の撮像部105と右の撮像部106で撮像された画像は、それぞれ左画像902,右画像903のようになる。ここで、同一の物体901は、左画像902では904の位置に撮像され、右画像903では905の位置に撮像され、画像の横方向にd1のずれが発生するため、左画像902の904に撮像されている物体が、右画像903のどこに撮像されているかを特定する必要がある。
【0031】
左画像902に撮像されている特定の物体が、右画像903のどこに撮像されているかを特定する方法を図10を用いて説明する。
【0032】
図10において、左画像,右画像の座標系に関して、横方向をu軸1001、縦方向をv軸1002とする。まず、左画像902において、uv座標系で、(u1,v1),(u1,v2),(u2,v1),(u2,v2)で囲まれた矩形領域1003を設定する。
【0033】
次に右画像903において、(U,v1),(U,v2),(U+(u2−u1),v1),(U+(u2−u1),v2)で囲まれた領域を、Uの値をu=0からu=u3まで増加させ、画像の右方向へこの矩形領域1004まで走査させる。走査させる際、矩形領域1003内の画像と、矩形領域1004内の画像の相関値を比較して、左画像902の矩形領域1003と相関性が最も高い右画像903の矩形領域1005の位置(u4,v1),(u4,v2),(u4+(u2−u1),v1),(u4+(u2−u1),v2)に、矩形領域1004に撮像されている物体と同一物体が撮像されているとする。ここで、矩形領域1003内の各画素と、矩形領域1005内の各画素が対応しているとする。ここで、右画像903の矩形領域1004を走査した際、相関値がある一定以上の値になる矩形がない場合は、左画像902の矩形領域1003に対応する右画像903内の対応点は無しとする。
【0034】
次に、左画像902の矩形領域を1006の位置にずらし、同様の処理を行う。このように左画像902の矩形領域を左画像902内全体に走査して、左画像902の全画素に対して、右画像903内の対応点を求める。対応点が見つからない場合は、対応点無しとする。
【0035】
次に図2のフローチャートにおいて、距離算出処理204を行う。
【0036】
距離算出処理204では、前述の対応点算出処理203で求めた、同一物体を撮像している左画像902と右画像903の対応点に関して、各対応点がステレオカメラ装置104からどの程度の距離の位置にあるかを算出する。
【0037】
まず、図11を用いて、左画像902と右画像903の対応点1101のカメラからの距離を算出する方法を説明する。
【0038】
図11において、左の撮像部105は、レンズ1102と撮像面1103から成る焦点距離f,光軸1108のカメラであり、右撮像部106は、レンズ1104と撮像面1105から成る焦点距離f,光軸1109のカメラである。カメラ前方にある点1101は、左の撮像部105の撮像面1103の点1106(光軸1108からd2の距離)へ撮像され、左画像902では点1106(光軸1108からd4画素の位置)となる。同様に、カメラ前方にある点1101は、右の撮像部106の撮像面1105の点1107(光軸1109からd3の距離)に撮像され、右画像903では点1107(光軸1109からd5画素の位置)となる。
【0039】
このように同一の物体の点1101が、左画像902では光軸1108から左へd4画素の位置、右画像903では光軸1109から右へd5の位置に撮像され、d4+d5画素の視差が発生する。このため、左の撮像部105の光軸1108と点1101との距離をxとすると、以下の式により、ステレオカメラ装置104から点1101までの距離Dを求めることができる。
点1101と左の撮像部105との関係からd2:f=x:D
点1101と右の撮像部106との関係からd3:f=(d−x):D
【0040】
従って、D=f×d/(d2+d3)=f×d/{(d4+d5)×a}となる。ここで、aは撮像面1103,1105の撮像素子のサイズである。
【0041】
以上述べた距離算出を、前述の対応点算出処理203で算出した対応点全てに関して実施する。その結果、カメラから対象物までの距離を表現した距離画像を求めることができる。
【0042】
そして、図2のフローチャートの距離情報出力処理205では、この距離画像を出力して保存する。
【0043】
最後に、図2のフローチャートの分岐206において、左の撮像部105及び右の撮像部106から画像入力信号がある場合は、処理201に戻る。分岐206において、左の撮像部105及び右の撮像部106から画像入力信号がない場合は、画像入力信号が距離情報算出部107に入力されるまで待機する。
【0044】
次に図3のフローチャートを用いて、図1のステレオカメラ装置104の走行路面検出部108に関して、その処理の詳細を説明する。
【0045】
図3のフローチャートにおいて、まず距離情報算出結果読込処理301において、距離情報算出部107の距離情報出力処理205で出力した距離画像を読み込む。
【0046】
次に、3次元情報算出処理302において、距離情報算出結果読込処理301で読み込んだ距離画像を用いて、画面の各画素の3次元位置を求める。距離画像は図4に示すように、左の撮像部105で撮像した左画像902の各画素Pk(k=1〜N、Nは左画像902の画素数)402を撮像している対象403のステレオカメラ装置104からの距離dkを、左画像902の全画素について算出したものである。この距離dkを用いて、撮像する対象403の3次元座標値(xk,yk,zk)を計算する。ここで3次元座標は図5に示すように、車両103を上から見て、車両の進行方向をz軸501、z軸501に垂直で車両の左右方向の軸をx軸502、z軸に垂直で車両の上下方向の軸をy軸とする。
【0047】
まず、図5において、撮像する対象403のx座標値であるxkの算出方法を説明する。図14において、左の撮像部105は、レンズ1102と撮像面1103から成っている、焦点距離f、光軸がz′軸1603のカメラであり、図5のz軸501と図14のz′軸1603は図5のxz平面と垂直な平面と同じ平面上にあり、z軸501とz′軸1603の成す角度は、ステレオカメラ装置104の設置俯角αと一致する。
【0048】
また、図14の撮像面1103を含み、z′軸1603に垂直な軸をx′軸1604とすると、図14のx′軸1604と図5のx軸502とが一致する。ここで、図5の撮像する対象403が図14の点1601とすると、点1601が撮像面1602の光軸1603からX2の位置に撮像されるとする。すなわち、撮像面1103において撮像素子サイズのx′軸1604方向のサイズをaとすると、点1601は、左画像902の光軸1603からX3=X2/aの画素の位置1605に撮像される。ここで、点1601のカメラからの距離をdkとすると、
2:f=X1:D1
ここで、D1=dk×cosθさらに、ここでθは、tanθ=X2/f
従って、X1=D1×X2/f=D1×X3×a/f
となる。ここで、X3は図4の403に相当する画素数になる。図4において、光軸位置に相当する画面中心線を404とした時、対象としている画素Pk402の画面中心線403からの画素数がX3に相当する。また、X2が図5のxkと同じである。
【0049】
次に図5において、撮像する対象403のy座標値であるykの算出方法を説明する。
【0050】
図15において、左の撮像部105のレンズ1102と、撮像面1103とを有し、焦点距離をf、光軸をz′軸1603とする。図15のz軸501は、図5のz軸501と同じであり、z軸501とz′軸1603の成す角度は、ステレオカメラ装置104の設置俯角αと一致する。また、図15の撮像面1103を含み、z′軸1603に垂直な軸をy′軸1702とする。ここで、図5の撮像する対象403が図14の点1601とすると、点1601が撮像面1103の光軸1603からY2の位置に撮像されるとする。すなわち、撮像面1103において撮像素子サイズのy′軸1702方向のサイズをbとすると、点1601は、左画像902の画面中央1701からY3=Y2/aの画素の位置1605に撮像される。ここで、点1601のカメラからの距離をdkとすると、
Yk=dk*sin(θ+α)(ここでθは、tanθ=Y2/f)
最後に図5において、撮像する対象403のz座標値であるzkの算出方法を説明する。
【0051】
図15において、
zk=dk*cos(θ+α)(ここでθは、tanθ=Y2/f)
となる。
【0052】
以上のように、図4の左画像902の全画素について、画素Pkの3次元座標(xk,yk,zk)を計算する。
【0053】
次に図3のフローチャートにおいて、走行路面式当てはめ処理303を行う。
【0054】
走行路面式当てはめ処理303では、前処理である3次元情報算出処理302で求めた左画像902の各画素のうち、走行路面である可能性が高い画素を抽出する。
【0055】
図6において、左画像902が左の撮像部105で撮像した画像であり、走行路101が左撮像に撮像されている道路である。また図6における物体601は、車両の前方を走行する先行車等の走行路面を隠している物体であり、物体601のような物体が存在する可能性が低い、車両に近い部分である602の点線で示した部分を、走行路面式当てはめに使用する画素として抽出する。
【0056】
ここで、図5で示した座標系において、走行路面式をax+by+cz+d=0、上記で抽出した画素の3次元座標を、Pi(xi,yi,zi)(i=0〜J、Jは抽出した画素の個数)とすると、Piを満たすパラメータa,b,cを算出することにより、走行路面式を求めることができる。
【0057】
次に図1のステレオカメラ装置104の高低差算出部109にて行われる処理について説明する。
【0058】
高低差算出部109では、走行路面検出部108の図3の処理フローの中で算出した左画像902の各画素の3次元位置と走行路面式を比較して、走行路面よりも低い部分にある画素を抽出する。
【0059】
図7は、図5で定めた座標系を立体的に見た図であり、図7の走行路面701が路面式ax+by+cz+d=0で表現した走行路面である。ここで、左画像902のある画素Pkの3次元座標を(xk,yk,zk)とした時、走行路面式ax+by+cz+d=0にxk、zkを代入した時のzの値zk′を求める。そして、zk′とzkを比較し、zk>zk′の時、Pkは走行路面式より高い位置にある(物体703の位置)と判定し、反対にzk<zk′の時、Pkは走行路面式より低い位置にある(物体702の位置)と判定する。
【0060】
そして、走行路面式よりも低い位置にあると判定されたPk群をPlowとする。Plowの各画素に左画像上の座標値(uk,vk)とPlowの3次元位置(xk,yk,zk)を付与して、Plowを高低差算出部109の出力とする。ここで、左画像上の座標値(uk,yk)は、図10に示す座標系であり、3次元位置(xk,yk,zk)は図7に示す座標系である。
【0061】
次に図1のステレオカメラ装置104の路肩判定部110にて行われる処理について説明する。
【0062】
路肩判定部110では、高低差算出部109にて抽出した走行路面式よりも低い位置にあると判定されたPk群Plowのクラスタリングを行う。ここでクラスタリングとは、各Plowが持っている3次元位置(xk,yk,zk)を比較し、各xk,yk,zkの値が近い物どうしをグルーピングし、グループの要素がある数Nを越えたグループを走行路面よりも低い路外群Plowgroupとして抽出する。図8は、左画像902上で走行路面よりも低い路外群Plowgroupとして抽出された画素のグループを示しており、点線で囲った部分801が1つのグループである。
【0063】
次に、Plowgroupとして抽出された画素のグループに関して、左画像902上でその輪郭線802を求める。輪郭線を求める際には、Plowgroupの各画素が持つ座標値(uk,vk)を利用する。まず、同じvkの値を持つ画素を抽出して、その抽出した画素群の中で最小のukと最大のukを持つ画素を輪郭要素として抽出する。そして、vkの値を走査してPlowgroup内の全て画素に関して、輪郭要素を抽出し、抽出した輪郭要素群をPlowgroupの輪郭線802とする。
【0064】
次に求めた輪郭線802の中から、路外が走行路面より低い場合の路肩候補となる部分を抽出する。
【0065】
図12において、輪郭線802が左画像902で抽出した輪郭である。まず、輪郭線802が左画像902の左半分に存在する場合、輪郭として抽出した画素で同じvkの値を持つ画素がある場合、ukの値が大きい方の画素を路外が走行路面より低い路肩候補の画素として抽出する。図12の点線で囲った部分の画素1201がそれに相当する。一方、輪郭線802が左画像902の右半分に存在する場合、輪郭として抽出した画素で同じvkの値を持つ画素がある場合、ukの値が小さい方の画素を路外が走行路面より低い場合の路肩候補の画素として抽出する。
【0066】
また図1に示したように、路外が走行路面より低い場合の路肩は不連続性算出部115において行われる処理においても検出可能である。ここで不連続性とは、自車の周辺の路面を複数の多角形で近似した際に、それぞれの多角形の連続性を判定した場合に、ある一定閾値以上に不連続な場合を指す。
【0067】
図13に示すように距離算出部107で算出された距離画像に対して、自車周辺のデータに関して、複数の多角形の領域で近似する(複数の画像領域に分割する)。
【0068】
図13において、領域1301〜1304が走行路面101の部分に対して、4つの四角形パッチで近似、領域1305〜1308が路外114の部分に対して、4つの四角形パッチで近似したことを示している。四角形パッチは、三角形パッチでも構わない。
【0069】
ここで、領域1301〜1308の全ての四角形に関して、隣接する四角形との連続性を判定する。連続性を判定するには、隣り合う四角形について、お互いに最も近い辺どうしの距離を算出し、算出した距離がある一定閾値以内の場合連続と判定し、逆にある一定閾値以上の場合に不連続と判定する。
【0070】
図13の例の場合、四角形の領域1302の左側の辺と、四角形の領域1307の右側の辺との距離を算出した場合に不連続と判定され、113で示した部分が路肩と判定できる。この際、四角形パッチの上下関係により、路外114が走行路101面より高い場合と、路外114が走行路101面より低い場合がある。本発明においては、路外が走行路面より低いと判定された場合に、路肩判定部110において、路外が走行路面より低い場合の路肩が存在すると判定する。
【0071】
次に、車両106に搭載された車両逸脱判定部116で行われる処理について説明する。
【0072】
車両逸脱判定部116では、ステレオカメラ装置104の路肩判定部110から判定結果を受信する。受信する判定結果の内容は、車両前方の走行路101の左右に路外114が走行路101面より低い場合の路肩113があるかどうかの判定と、路外114が走行路面より低い場合の路肩113がある場合の路肩113と車両103との相対位置である。
【0073】
車両逸脱判定部116では、受信した路外114が走行路面より低い場合の路肩113との相対位置と自車速度、自車進行方向(操舵角)を考慮して、路外逸脱の危険があるかどうかを判定し、結果を、自動制御判定部111へ送る。
【0074】
自動制御判定部111では、路外逸脱を防止するための自動操舵制御や、自動ブレーキ制御が必要であるか否かと、必要な場合、制御を行う度合いを判定し、車両制御装置に制御の指令を送り、操舵制御、ブレーキ制御を実施する。
【0075】
また、ステレオカメラ装置104は、路外114が走行路面より低い場合の路肩113のみではなく、路肩113の白線やガードレール等を検出する機能も有しており、特許文献1等の手法により実現可能であり、検出した情報に基づき同様に車両逸脱を防止する自動制御が可能である。この際、本発明の路外が走行路面より低い場合の路肩を検出した場合は、白線やガードレールを検出した場合よりも、逸脱防止のための操舵制御、ブレーキ制御を強くする。
【0076】
また、警報要否判定部112では、車両逸脱判定部116から受信した判定結果に基づき、路外114が走行路面より低い場合の路肩113との相対位置と自車速度、自車進行方向(操舵角)を考慮して、ドライバへ路外逸脱に関する警告をしたほうが良いか否かを判定し、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)にドライバに警告を発報するための指令を送る。この際同様に、本発明の路外が走行路面より低い場合の路肩を検出した場合は、白線やガードレールを検出した場合よりも、逸脱防止の警告の度合いを強くする。
【0077】
また本発明は、図1のステレオカメラ装置104をレーザレンジファイダに置き換えることが可能である。レーザレンジファインダは、周囲の三次元位置情報を取得することが可能であり、距離情報算出部107と同様の出力を得ることができ、路外が走行路面より低い路肩を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
101 走行路
103 車両
104 ステレオカメラ装置
105,106 撮像部
108 走行路面検出部
109 高低差算出部
110 路肩判定部
111 自動制御判定部
112 警報要否判定部
113 路肩
114 路外
115 不連続性算出部
116 車両逸脱判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された車外環境の三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する距離情報算出部と、
算出された距離に基づく距離画像から自車両が走行する走行路面を検出する走行路面検出部と、
検出された前記走行路面と路外との高低差を測定する高低差算出部と、
前記高低差算出部で測定された高低差に基づいて、前記走行路面と前記路外との境界である路肩が、走行路面より低い路外がある場合の路肩か否か判定する路肩判定部と、を有する路肩検出装置。
【請求項2】
入力された車外環境の三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する距離情報算出部と、
算出された距離に基づく距離画像を複数の画像領域に分離し、前記複数の画像領域の各々の画像領域間の距離が予め定めた閾値以上か否かを算出し、予め定めた閾値以上の場合を不連続であるとして路肩と判定する不連続性算出部と、
前記不連続性算出部で算出された路肩に基づいて、前記走行路面と前記路外との境界である路肩が、走行路面より低い路外がある場合の路肩か否か判定する路肩判定部と、を有する路肩検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の路肩検出装置において、
前記路肩判定部で判定された結果と、検出された自車速度及び操舵角に基づいて、自車両が路外へ逸脱するか否かを判定する車両逸脱判定部を有する路肩検出装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の路肩検出装置において、
前記距離情報算出部は、車外環境の左の画像情報と、右の画像情報と、が入力され、入力された左右の画像情報に基づく三次元画像情報から対象物の有無及び自車両から対象物までの距離を算出する路肩検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の路肩検出装置において、
前記距離情報算出部は、入力された左右の画像情報を比較して、同一物体を撮像している部分を特定する対応点算出処理部と、画像情報を取得する撮像素子から特定された前記同一物体までの距離を算出する距離算出部と、算出された距離に基づく距離画像を生成し、出力する距離情報出力処理部と、を有する路肩検出装置。
【請求項6】
請求項1記載の路肩検出装置において、
前記走行路面検出部は、前記距離情報算出部で算出された距離に基づく距離画像から各画素の3次元位置を算出する3次元情報算出処理部と、算出された3次元位置に基づいて走行路面である可能性が高い画素を抽出して走行路面を検出する走行路式当てはめ処理部と、を有する路肩検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の路肩検出装置において、
前記高低差算出部は、前記3次元情報算出処理部で算出された前記3次元位置と、前記走行路式当てはめ処理部で検出された走行路面と、に基づいて、前記走行路面と路外との高低差を測定する路肩検出装置。
【請求項8】
請求項1記載の路肩検出装置において、
前記路肩判定部は、前記高低差に基づいて前記走行路面よりも低い路外群を抽出し、抽出した路外群内の全て画素に関して、輪郭要素を抽出し、抽出した輪郭要素群を路外群の輪郭線とし、前記輪郭線から、路外が走行路面より低い場合の路肩を判定する路肩検出装置。
【請求項9】
請求項3記載の路肩検出装置を有する車両において、
前記車両逸脱判定部の判定結果に基づいて、ドライバへ路外逸脱に関する警報発信の要否を判定する警告要否判定部を有する車両。
【請求項10】
請求項3記載の路肩検出装置を有する車両において、
前記車両逸脱判定部の判定結果に基づいて、路外逸脱を防止するための自動操舵制御、又は自動ブレーキ制御が必要であるか否かを判定する自動制御判定部を有する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−138244(P2011−138244A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296670(P2009−296670)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】