説明

路面標示用複合反射素子およびそれを含有してなる路面標示材

【課題】耐熱性、耐溶剤性、耐温水性及びバインダー接着性に優れ、再帰反射性能及び視認性に優れた路面標示材用複合反射素子を提供する。
【解決手段】コア材の表面に、屈折率1.5〜2.5、平均粒子径10〜500μmの高屈折率ガラスビーズが水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーにより固定化されていることを特徴とする路面標示材用複合反射素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全天候型路面標示材用複合反射素子及びその製造方法、並びに該路面標示材用複合反射素子を含有してなる路面標示材に関し、更に詳しくは、夜間雨天時における道路標示材の視認性を改善することが出来る路面標示材用複合反射素子及びそれを安価に且つ容易に製造することが出来る製造方法、並びに該路面標示材用複合反射素子を含む路面標示材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路用路面標示材としては、夜間の視認性を向上させるためにガラスビーズ等の反射材を標示材基材表面に散布してその反射が利用されてきた。しかし、夜間雨天時に路面が水没すると車のヘッドライトが鏡面反射して再帰性反射しないために著しく視認性を阻害するという問題を含んでいる。このため、反射材を水没させないようにする必要があり、例えば、路面標示材基材に凹凸を付けて、その凹凸部に反射材(ガラスビーズ等)を分散させて水没を防止することにより、夜間雨天時でも視認できるようにしている(特許文献1〜4)。
また、例えば、コア材とその表面に設けられた結合剤層に固定化された高屈折率ビーズからなる再帰性反射エレメントを含んだ路面標示材が紹介されている(特許文献5,6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3091996号公報
【特許文献2】特許第2515478号公報
【特許文献3】特開2000−273831号公報
【特許文献4】特表2002−527797号公報
【特許文献5】特表2007−510832号公報
【特許文献6】特開2007−212763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、上記実情に鑑み上記従来技術の問題点を解消するべく鋭意研究の結果、比較的安価なガラスビーズ、無機粒子等からなるコア材の表面に高屈折率ガラスビーズを特定のバインダー樹脂により固定化してなる複合反射素子が夜間雨天時にも視認性の優れた道路標示材を提供し、しかも低コストで安価に製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の特徴の第1は、コア材の表面に、屈折率1.5〜2.5、平均粒子径10〜500μmの高屈折率ガラスビーズが水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーにより固定化されていることを特徴とする路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0006】
本発明の特徴の第2は、コア材が、ガラスビーズ、セラミックビーズ、炭酸カルシウム、バライト、セルベン、珪石、酸化亜鉛、アルミナから選ばれる少なくとも1種である路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0007】
本発明の特徴の第3は、コア材の平均粒子径が100〜5000μmである路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0008】
本発明の特徴の第4は、コア材の表面が、酸化チタン、マイカのどちらか又は両方、又はパール顔料からなる被覆材で被覆されている路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0009】
本発明の特徴の第5は、水系エマルジョン樹脂がアクリル系樹脂である路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0010】
本発明の特徴の第6は、高屈折率ガラスビーズが10〜100μmの幅広い粒度分布を有する路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0011】
本発明の特徴の第7は、上記複合反射素子の表面が蛍光顔料又は蓄光顔料で被覆されている路面標示材用複合反射素子を内容とする。
【0012】
本発明の特徴の第8は、コア材と、水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーとを混合撹拌しコア材の表面をバインダー層で被覆した後にガラスビーズ投入し、更にバインダーを添加することにより、コア材の表面にガラスビーズを固着させる上記複路面標示材用合反射素子の製造方法を内容とする。
【0013】
本発明の特徴の第9は、上記複合反射素子を含有してなる路面標示材を内容とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の路面標示材用複合反射素子は、コア材に高屈折率ガラスビーズが強固に固着されているのでコア材表面からの離脱が少なく、耐熱性、耐溶剤性も良好である。このため、ペイント型、溶融式両方の路面標示材の再帰性反射素子として好適である。
また、バインダーがエマルジョン樹脂又は水性液状樹脂であり無溶剤系であるので環境性・作業性が良好で、更には溶剤系バインダーと比べて硬化性が良くタックが残りにくく、二次凝集も少ないので歩留まりも良くなる。また、製造方法も容易で安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施例1で作製した路面標示材用複合反射素子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】図2は、本発明の実施例3で作製した路面標示材用複合反射素子の光学顕微鏡写真(50倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における高屈折率ガラスビーズは屈折率は1.5〜2.5のものが用いられる。屈折率は高い方が良いが、2.5より大きくするのは技術的に困難であり、また1.5より小さいと再帰性反射しにくくなる。
ガラスビーズの平均粒子径は10〜500μmで、好ましくは10〜300μm、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは40〜100μmである。
平均粒子径が10μm未満では反射輝度が乏しくなり、一方、500μmを超えるとコア材に固着しにくい。これは、コア材の概ね10分の1以下でないとガラスビーズとコア材との接触面積が小さくなるためである。
本発明の路面標示材用複合反射素子は、コア材の粒子表面の全体のみならず、一部がガラスビーズで固着されている場合も含む。
尚、ここでの平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布計Microtrac-FRA によって求められる体積基準平均粒子径D50 である。
【0017】
本発明におけるコア材としては、ガラスビーズ、セラミックビーズ、炭酸カルシウム、バライト(硫酸バリウム)、セルベン、珪石、酸化亜鉛、アルミナ等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。好ましくは粒子形が球形でない炭酸カルシウム、バライト、セルベン、珪石、酸化亜鉛、アルミナ等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。球形粒子は、コア材との接点が小さく表面の凹凸が少ないので高屈折率ガラスビーズとの接着性があまり強くない。コスト面からも粉砕品である炭酸カルシウム、バライト、セルベン、珪石、アルミナが高屈折率ガラスビーズを固着させやすく、且つ低コストである。更に好ましくはセルベンである。セルベンとは、白色の陶器等のセラミックを粉砕して粒子径を整えた粒状物である。高輝度反射させるためには、光が高屈折率ガラスビーズを通過してコア材で反射させて入射した方向と平行に戻るようにする必要がある。したがって、コア材の反射率・屈折率も輝度に大きな影響を与える。そのため、屈折率の高いセルベンが安価で好ましい。コア材の硬度は高い方が好ましいが、路面標示材基材中に炭酸カルシウム等の比較的硬度の低い充填材が大量に含まれているため、該路面標示材用複合反射素子の硬度が高くても路面標示材の寿命に大きく関与しない。具体的には、モース硬度3である炭酸カルシウム以上の硬度であれば使用できる。
【0018】
コア材の反射率・屈折率が低い場合は予めバインダーを用いてコア材を酸化チタン、マイカのどちらか又は両方、又はパール顔料からなる被覆材で被覆させるのが好ましい。珪石に酸化チタン又はパール顔料を水ガラスで高温焼き付けしたカラーサンドをコア材として用いるのが更に好ましい。
【0019】
また、コア材の表面は、蛍光顔料又は蓄光顔料で被覆されているのが好ましい。ただし、酸化チタン、マイカ、パール顔料からなる被覆材と併用する場合は、予めそれらで被覆処理してから蛍光顔料又は蓄光顔料を被覆する必要がある。蛍光顔料、蓄光顔料は着色顔料と混じるとその効果が低下するためである。蛍光顔料、蓄光顔料で被覆することで輝度向上にはあまり寄与しないが実際の視認性には効果がある。
コア材の平均粒子径は100〜5000μmであり、好ましくは400〜1200μmであり、より好ましくは600〜800μmである。コア材が100μm未満では輝度が乏しく視認性に劣る。一方、コア材が5000μmを超えると標示材基材からの露出部が大きいために離脱しやすくなる。
尚、ここでの平均粒子径は、ロータップシェーカーでJIS標準篩を用いて作成したロジン・ラムラー分布から算出した50%積算ふるい上である。
【0020】
本発明におけるバインダーとしては、環境性・作業性の観点から水系エマルジョン樹脂及び水性液状樹脂が好適に使用できる。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、シリコーン・アクリル酸エステル共重合体等の樹脂を主体とした合成樹脂エマルジョンやアミノ樹脂のような水性液状樹脂が挙げられる。アクリル系エマルジョンが価格や作業性の観点から最も好ましい。
【0021】
コア材の表面に、固定化される高屈折率ガラスビーズは、10〜100μmの粒度分布を有することが好ましい。高屈折ガラスビーズは幅広い粒度分布を有する方が最密的にコア材を覆うことができるからである。コア材表面に最密に高屈折率ガラスビーズを固着させた方が、該複合反射素子が車両等に踏まれた時、その外力で高屈折率ガラスビーズがコア材表面から離脱するのを抑制できる。高屈折率ガラスビーズの添加量は、コア材の比重、大きさにより異なるが、概ね20〜50重量%である。
尚、ここでの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計Microtrac-FRA によって求められる体積基準平均粒子径D50 である。
【0022】
本発明の複合反射素子は、更に、その上から蛍光顔料又は蓄光顔料で被覆されているのが好ましい。蛍光顔料、蓄光顔料で被覆することで輝度向上にはあまり寄与しないが実際の視認性には効果がある。
【0023】
本発明の路面標示材用複合反射素子の製造方法は特に限定されないが、好ましい方法として、コア材と、水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーとを混合撹拌しコア材の表面をバインダー層で被覆した後に高屈折率ガラスビーズ投入し、更にバインダーを添加することにより、コア材の表面に高屈折率ガラスビーズを固着させる方法が挙げられる。使用されるミキサーとしては、一般的なミキサーが使用可能で、例えばクーラーミキサー、ハイスピードミキサー等が、コア材が破壊されない程度の速度で使用される。具体的には、先ずコア材をミキサー内に投入し撹拌しながら、バインダーである水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂を投入しコア材をバインダーにより表面被覆する。この際、ジャケットは、樹脂を硬化させ接着性を良くするために加熱するのが好ましい。次に、高屈折率ガラスビーズを投入し、撹拌しながら徐々に水希釈した水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂を添加して硬化させる。
【0024】
本発明の路面標示材用複合反射素子に適応する路面標示材基材は特に限定されないが、脂肪族系石油樹脂、ロジンエステル樹脂を結合剤とした溶融型塗料、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とした無溶剤、溶剤型及びエマルジョン型塗料が使用できる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されないことは云うまでもない。
尚、以下の記載において、「%」、「部」は特に断らない限り、「重量%」、「重量部」である。
【0026】
実施例1
コア材として市販のセルベンB(400μm〜800μm;(株)山森土本鉱業所製)100gを1Lの紙カップに入れ、次いでサイビノールNP−846(スチレン・アクリル共重合体水性エマルジョン;サイデン化学(株)製)を蒸留水で希釈して25%濃度として10g投入し、遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500(倉敷紡績(株)製)を用いて、(公転500rpm、自転500rpm、60秒)の条件で混合した。それを110℃のオーブンで10分間乾燥した後、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせた。それに再びサイビノールNP−846(25%濃度)を10g投入し、高屈折率ガラスビーズであるユニビーズUB−56NH(75〜90μm;屈折率2.2;(株)ユニオン製)100gを手撹拌しながら徐々に加えて、再び遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500(倉敷紡績(株)製)を用いて、(公転500rpm、自転500rpm、60秒)の条件で混合した。それを110℃のオーブンで15分間乾燥した後、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子とした。
得られた路面標示材用複合反射素子の光学顕微鏡写真(100倍)を図1に示す。
【0027】
実施例2
コア材として市販の炭酸カルシウムである寒水砂NO.A(210〜420μm;丸尾カルシウム(株)製)100gを1Lの紙カップに入れ、次いでエポルジョンEA55(エポキシ樹脂水性エマルジョン;日本エヌエスシー(株)製)を蒸留水で希釈して25%濃度に調整した液10gにパールマイカME−100R(パール顔料:(株)山口雲母工業所製)5gを十分に分散させた混合液を投入し、遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500を用いて、(公転500rpm、自転500rpm、60秒)の条件で混合した。それを110℃のオーブンで10分間乾燥した後、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせた。それに再びエポルジョンEA55(25%濃度)を10g投入し、高屈折率ガラスビーズであるユニビーズUB−12NH(38〜45μm;屈折率2.2;(株)ユニオン製)100gを手撹拌しながら徐々に加えて、再び遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500(倉敷紡績(株)製)を用いて、(公転500rpm、自転500rpm、60秒)の条件で混合した。それを110℃のオーブンで15分間乾燥した後、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子とした。
【0028】
実施例3
コア材として市販のガラスビーズUB−1719LN(600〜850μm;(株)ユニオン製)5kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型;深江工業(株)製)に投入した。次いでボンコートSA−6360(アクリル・シリコーン複合エマルジョン;DIC(株)製)を蒸留水で希釈して25%濃度に調整した液500gにCR−50(酸化チタン;石原産業(株)製)を15g、C−93(マイカ;(株)山口雲母工業所製)15gを十分に分散させた混合液を作成し、徐々にミキサー内に撹拌しながら添加した。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには135℃のオイルを循環させている。品温が105℃になるまで脱水・乾燥した。次いで、ボンコートSA−6360(25%濃度)を500g添加し、ユニビーズUB−56NHを4kg撹拌しながら添加した。品温が110℃になるまで脱水・乾燥し、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。
得られた路面標示材用複合反射素子の光学顕微鏡写真(50倍)を図2に示す。
【0029】
実施例4
コア材として市販のカラーサンド20ホワイト(400〜800μm;(株)山森土本鉱業所製)5kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型)に投入し、ポリゾール3500(アクリル酸アルキル・スチレン共重合樹脂エマルジョン;昭和高分子(株)製)を蒸留水で希釈して25%濃度に調整した液500gを徐々にミキサー内に撹拌しながら添加した。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには135℃のオイルを循環させている。品温が105℃になるまで脱水・乾燥した。次いで、ポリゾール3500(25%濃度)を500g添加し、ユニビーズUB−56NH(75〜90μm)、UB−34NH(53〜63μm)、UB−12NH(38〜45μm)、UB−02NH(0〜45μm;屈折率2.2;(株)ユニオン製)を各1kg(屈折率2.2;(株)ユニオン製)混合して撹拌しながら添加した。品温が110℃になるまで脱水・乾燥し、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。
【0030】
実施例5
コア材として重晶石を粉砕してJIS標準篩(目開き350〜710μm)で篩分けて粒度調整した粒状バライトを9kg使用した以外は実施例4と同様(エマルジョン、高屈折率ガラスビーズも同量)にして路面標示材用複合反射素子を得た。
【0031】
実施例6
下記配合でアクリル系2液バインダーを調整した。
<主剤>
アクリシラップDR−510(アクリルプレポリマー;三菱レイヨン製):50部
N夜光顔料GLL−300FF(畜光顔料;根本特殊化学(株)製) :100部
<硬化剤>
ボウジンテックスVE(硬化剤BPO−50;水谷ペイント(株)) :30部
*混合比率;主剤/硬化剤=10/1
実施例1で作成した路面標示材用複合反射素子5kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型)に投入し、上記配合のアクリル系2液バインダー375gをミキサー内に撹拌しながら添加し、品温が100℃になるまで撹拌し硬化させ、目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには135℃のオイルを循環させている。
【0032】
実施例7
実施例1のユニビーズUB−56NHの代わりにガラスビーズGB−AH(45〜90μm;屈折率1.5〜1.53;ポッターズ・バリティーニ製)を100g添加した以外は同様にして路面標示材用複合反射素子とした。
【0033】
比較例1
下記配合でポリウレタン2液バインダーを調整した。
<主剤>
タケネートL−1032(イソシアネート;三井化学(株)製) :40部
<硬化剤>
アクトコール87−34(ポリオール;三井化学(株)製) :45部
ニッカオクチックス鉛17%DINP(硬化触媒;日本化学産業製食べ(株))
:4部
パールマイカME−100R(パール顔料:(株)山口雲母工業所製):50部
DINP(可塑剤;(株)ジェイ・プラス製) :15部
*混合比率;主剤/硬化剤=1/3
次いで、コア材としてシリカ(商品名:シルシック粒400〜800μm:(株)山森土本鉱業所製)5kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型)に投入し、上記配合のポリウレタン2液バインダー320gを撹拌しながら添加した。添加終了後、ユニビーズUB−56NH(75〜90μm)5kgを撹拌しながら投入し、投入終了後5分間撹拌した。それを排出して、50℃のオーブンで2時間養生硬化させた。それを目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせようとしたが、タックが激しいために2日間養生して硬化させた後にメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには50℃のオイルを循環させている。
【0034】
比較例2
下記配合で変性シリコーン2液バインダーを調整した。
<主剤>
S810(変性シリコーン樹脂;(株)カネカ製) :50部
DOP(可塑剤;(株)ジェイ・プラス製) :30部
<硬化剤>
ネオスタンU−28(スズ系硬化触媒;(株)カネカ製) :12部
ラウリルアミン(反応調整材:和光純薬工業(株)製) :50部
DINP(可塑剤;(株)ジェイ・プラス製) :14部
*混合比率;主剤/硬化剤=10/1
コア材として市販のセルベンB(400μm〜800μm;(株)山森土本鉱業所製)100gを1Lの紙カップに入れ、次いで上記配合で調節した変性シリコーン2液バインダーを4g投入し、次いでユニビーズUB−34NH(53〜63μm)を100g投入して、遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500)を用いて、(公転500rpm、自転500rpm、60秒)の条件で混合した。それを50℃のオーブンで2時間養生硬化させた。それを目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせようとしたが、タックが激しいために2日間養生して硬化させた後にメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子とした。
【0035】
比較例3
下記配合で変性シリコーンエポキシ樹脂バインダーを調整した。
SAT−200サイリル樹脂(変性シリコーンエポキシ樹脂;(株)カネカ製)
:71部
ネオスタンU−100(スズ系硬化触媒;日東化成(株)製) :4部
KBM−603(接着付与剤;信越化学工業(株)) :2部
CR−50(酸化チタン;石原産業(株)製) :24部
メチルイソブチルケトン(可塑剤;和光純薬工業(株)) :70部
コア材として市販のガラスビーズUB−1719LN(600〜850μm)5kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型)に投入し、上記配合の変性シリコーンエポキシ樹脂バインダー240gを撹拌しながら添加した。添加終了後、ユニビーズUB−56NH(75〜90μm)5kgを撹拌しながら投入し、投入終了後5分間撹拌した。それを排出して、50℃のオーブンで3時間養生硬化させた。それを目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせようとしたが、タックが激しいために2日間養生して硬化させた後にメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには50℃のオイルを循環させている。
【0036】
比較例4
下記配合でポリウレタン2液バインダーを調整した。
<主剤>
タケネートL−1032(イソシアネート;三井化学(株)製) :40部
<硬化剤>
アクトコール87−34(ポリオール;三井化学(株)製) :45部
ニッカオクチックス鉛17%DINP(硬化触媒;日本化学産業製(株))
:4部
DINP(可塑剤;(株)ジェイ・プラス製) :50部
*混合比率;主剤/硬化剤=1/3
ユニビーズUB−56NH(75〜90μm)、UB−34NH(53〜63μm)、UB−12NH(38〜45μm)、UB−02NH(0〜45μm)各1kgをハイスピードミキサー(FS−GS−10J型)に投入し、上記配合のポリウレタン2液バインダー600gを撹拌しながら滴下し、滴下終了後5分間撹拌し高屈折率ガラスビーズの造粒物を得た。それを排出して、50℃のオーブンで2時間養生硬化させた。それを目開き1.7mmのJIS標準篩でメッシュパスさせようとしたが、タックが激しいために2日間養生して硬化させた後にメッシュパスさせて路面標示材用複合反射素子を得た。尚、ミキサーの羽根は円盤型で、アジテータ150rpm、チョッパー600rpmで運転し、ジャケットには50℃のオイルを循環させている。
【0037】
表1に、実施例1〜7、比較例1〜4によって得られた複合反射素子の概要を示す。
【0038】
上記実施例1〜7、比較例1〜4によって得られた複合反射素子を下記試験項目で評価した。結果を表2に示す。
<耐熱性>
複合反射素子を適量とり200℃のオーブンで30分間加熱し、下記の基準で変化度合いを肉眼で評価した。
◎:加熱前後で色相に変化が無い。
○:加熱後やや黄色味を帯びている。
△:加熱後黄色く変色している。
×:加熱後茶褐色に変色している。
【0039】
<耐溶剤性>
300mlのビーカーにトルエン及びキシレンを100gとり、複合反射素子を10g投入して30分間で撹拌し、下記の基準で高屈折率ガラスビーズの離脱度合いをルーペ(30倍)で観察し評価した。
◎:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が見当たらない。
○:複合反射素子表面から多少高屈折率ガラスビーズが離脱しているが、被覆率がコア材表面の80%以上である。
△:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱があり、被覆率がコア材表面の60%以上80%未満である。又はコア材表面のバインダーが膨潤している。
×:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が多く、被覆率がコア材表面の60未満である。又はコア剤表面からバインダーが剥離している。
【0040】
<耐温水性>
複合反射素子を80℃の温水に3日間養生してから取り出して30分間撹拌し、下記の基準で高屈折率ガラスビーズの離脱度合いをルーペ(30倍)で観察し評価した。
◎:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が見当たらない。
○:複合反射素子表面から多少高屈折率ガラスビーズが離脱しているが、被覆率がコア材表面の80%以上である。
△:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱があり、被覆率がコア材表面の60%以上80%未満である。又はコア材表面のバインダーが膨潤している。
×:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が多く、被覆率がコア材表面の60未満である。又はコア剤表面からバインダーが剥離している。
【0041】
<タック性>
複合反射素子をパウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)で3分間(180回)タッピングした後、50℃のオーブンに3日間放置し複合反射素子の凝集性・タック性を下記の基準で評価した。
◎:複合反射素子同士の凝集がなく流動性が良好であり、表面ベタツキが無い。
○:複合反射素子同士の凝集がなく流動性が良好であるが、若干表面ベタツキがある。
△:複合反射素子同士が凝集しているが比較的簡単に解れる。又は、表面ベタツキがあるが目開き1.7mmのJIS標準篩を高屈折率ガラスビーズの離脱することなく通過させることができる。
×:複合反射素子同士が凝集し容易に解れない。又は、表面ベタツキが強くハンドリングできない。
【0042】
<バインダー接着性>
複合反射素子を遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスターKK−500(倉敷紡績(株)製)に投入し、公転760rpm、自転760rpm、120秒)の条件で撹拌し、下記の基準で高屈折率ガラスビーズの離脱度合いをルーペ(30倍)で観察し評価した。
◎:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が見当たらない。
○:複合反射素子表面から多少高屈折率ガラスビーズが離脱しているが、被覆率がコア材表面の80%以上である。
△:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱があり、被覆率がコア材表面の60%以上80%未満である。
×:複合反射素子表面から高屈折率ガラスビーズの離脱が多く、被覆率がコア材表面の60未満である。
表2の結果から、本発明の路面標示材用複合反射素子は、耐熱性、耐溶剤性、耐温水性及びバインダー接着性に優れているのは明白である。
【0043】
実施例8〜14、比較例5〜10
日本ライナー(株)から「エバーライン白S」(JIS K 5665 3種 適合品)という商品名で市販されている溶剤型の道路標示材を基材として用意した。この基材を電熱器(1200W)で195℃になるまでステンレス製のかき混ぜ棒で撹拌した。これをアルミニウム板(150×70×1.5mm)に幅60mm、厚さ約2mmに塗布した。次いで、予め180℃に加温した実施例1〜7、比較例1〜4によって得られた複合反射素子を180g/m2 の密度で散布した後、ガラスビーズUB−108L(屈折率1.52、106〜850μm;(株)ユニオン製)を400g/m2 の密度で散布し路面用道路標示材の塗板を得た。
比較例9は、複合反射素子の代わりにUB−56NHを、比較例10は、複合反射素子の代わりにユニフラッシュUB−1521(屈折率1.93、425〜1180μm;(株)ユニオン製)を用い、上記と同様に180g/m2 の密度で散布し路面用道路標示材の塗板を得た。表3に、この路面標示材の再帰性反射性能、視認性の評価を示す。
【0044】
<再帰性反射性能>
反射輝度計ミロテックス7(東芝バロティーニ(株)製)による測定した。尚、再帰反射性能における乾燥とは常温で水の影響の無い状態で、湿潤とは複合反射素子が充分水に埋没している(水膜に覆われている)状態で計測したことを示す。
<視認性>
暗室において、塗板を水に浸漬させた状態でライトを当て、目視視認性を下記基準で評価した。
5:非常によく見える。
4:よく見える。
3:普通である。
2:あまり見えない。
1:見えない。
【0045】
実施例15〜21、比較例11〜16
アトミクス(株)から「ハードラインH250B」(JIS K 5665 2種 適合品)という商品名で市販されている溶剤型の道路標示材を基材として用意した。この基材を電熱器(1200W)で60℃になるまでステンレス製のかき混ぜ棒で撹拌した。これをアルミニウム板(150×70×1.5mm)に幅60mm、厚さ約2mmに塗布した。次いで、実施例1〜7、比較例1〜4によって得られた複合反射素子を180g/m2 の密度で散布し、次いでガラスビーズUB−108L(屈折率1.52、106〜850μm;(株)ユニオン製)を400g/m2 の密度で散布し路面用道路標示材の塗板を得た。
比較例15は、複合反射素子の代わりにUB−56NHを、比較例16は、複合反射素子の代わりにユニフラッシュUB−1521(屈折率1.93、425〜1180μm;(株)ユニオン製)を同様に180g/m2 の密度で散布し路面用道路標示材の塗板を得た。表4にこの路面標示材の再帰性反射性能、視認性の評価を示す。尚、評価方法は実施例8〜14、比較例5〜10と同様に実施した。
【0046】
表3、4の結果から、本発明の路面標示材用複合反射素子は、水膜に覆われた場合でも再帰性反射輝度は高く、視認性も優れていることがわかる。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0051】
叙上のとおり、本発明の水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂をバインダーとして用いた路面標示材用複合反射素子は、熱硬化性樹脂をバインダーとして使用する場合に比べ、耐熱性、耐溶剤性、耐温水性、およびバインダー接着性に優れ、再帰性反射輝度の高い路面標示材を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、製造方法が容易で、特定の樹脂バインダーを使用することでタック性が少ないことによりハンドリングが良くなり、製造時間も短縮でき、路面標示材用複合反射素子を効率的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材の表面に、屈折率1.5〜2.5、平均粒子径10〜500μmの高屈折率ガラスビーズが水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーにより固定化されていることを特徴とする路面標示材用複合反射素子。
【請求項2】
コア材が、ガラスビーズ、セラミックビーズ、炭酸カルシウム、バライト、セルベン、珪石、酸化亜鉛、アルミナから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の路面標示材用複合反射素子。
【請求項3】
コア材の平均粒子径が100〜5000μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の路面標示材用複合反射素子。
【請求項4】
コア材の表面が、酸化チタン、マイカのどちらか又は両方、又はパール顔料からなる被覆材で被覆されていることを特徴とする請求項2記載の路面標示材用複合反射素子。
【請求項5】
水系エマルジョン樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の路面標示材用複合反射素子。
【請求項6】
高屈折率ガラスビーズが10〜100μmの幅広い粒度分布を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の路面標示材用複合反射素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合反射素子の表面が蛍光顔料又は蓄光顔料で被覆されていることを特徴とする路面標示材用複合反射素子。
【請求項8】
コア材と、水系エマルジョン樹脂又は水性液状樹脂からなるバインダーとを混合撹拌しコア材の表面をバインダー層で被覆した後に高屈折率ガラスビーズ投入し、更にバインダーを添加することにより、コア材の表面に高屈折率ガラスビーズを固着させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複路面標示材用合反射素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合反射素子を含有してなることを特徴とする路面標示材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−253165(P2011−253165A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128950(P2010−128950)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(390008442)丸尾カルシウム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】