説明

路面状態推定方法

【課題】走行中の雪路を更に細分化して推定することのできる路面状態推定方法を提供する。
【解決手段】加速度センサー、路面温度計、及び、マイクロフォンにより、タイヤのタイヤ周方向振動、路面温度T、及び、タイヤ発生音をそれぞれ検出するとともに、タイヤの振動のデータから、踏み込み前領域R1の帯域値P11,P12,P13と、踏み込み領域R2の帯域値P21,P22,P23と、蹴り出し前領域R3の帯域値P31,P32,P33と、蹴り出し領域R4の帯域値P41,P42と、蹴り出し後領域R5の帯域値P51,P52,P53とを算出し、タイヤ発生音のデータから低周波帯域のバンドパワー値PAと高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PA/PB)を演算し、帯域値Pijと、路面温度Tのデータと、音圧レベル比Qと、車輪速のデータとを用いて、路面状態を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の路面状態を推定する方法に関するもので、特に、雪路の状態を細分化して推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行安全性を高めるため、走行中の路面の状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。走行中の路面の状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
【0003】
走行中の路面の状態を推定する方法としては、例えば、走行中のタイヤの振動を検出し、この検出されたタイヤの振動の時系列波形から、踏み込み位置より前の時間領域(踏み込み前領域)の振動を抽出するとともに、この振動の低周波領域(1kHz〜2kHz帯)の振動成分の大きさに対する高周波領域(3kHz〜5kHz帯)域の振動成分の大きさの比である振動レベル比Rを算出し、この振動レベル比Rから路面状態が高μ路であるか低μ路であるかを推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、走行中のタイヤから発生するタイヤ発生音を検出し、この検出されたタイヤ発生音の設定周波数範囲内の音圧レベルの平均値を算出し、この平均値を基準値と比較することにより、路面がかなり濡れたアスファルト路か、やや濡れたアスファルト路か、乾いたアスファルト路か、もしくは、氷路かを推定する方法や、複数の周波数範囲の音圧レベルの平均値の比を基準値と比較して、路面が雪上路か、冠水路か、氷上路か、もしくは、乾燥路かを推定する方法も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2006/135090 A1
【特許文献2】特開平6−174543号公報
【特許文献3】特開平8−261993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の路面状態を推定する方法では、走行中の路面が圧雪路か氷路かを判定することはできるが、雪路を新雪が積もっている積雪路か、表面がシャーベット状になっている雪路であるかなど、雪路を更に細かく分類できなかった。
【0007】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、走行中の雪路を更に細分化して推定することのできる路面状態推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に記載の発明は、走行中の路面の状態を推定する方法であって、タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、前記時系列波形から、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と、前記踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値P12と、前記踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値P21と、前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(b)と、前記帯域値P11,P12,P21,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が積雪路であるか否かを推定するステップ(c)とを有し、前記ステップ(c)では、前記帯域値P11,P12を予め求めておいた識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1に代入して得られた関数値f1と、前記帯域値P21,P51を予め求めておいた識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2に代入して得られた関数値f2とが、f1≧0かつf2<0である場合に、走行中の路面が積雪路であると判定することを特徴とする。
これにより、路面が新雪が積もっている積雪路であることを推定することができるので、加速度センサーで検出されるタイヤ周方向の加速度もしくはタイヤ幅方向の加速度の出力のみを用いた簡単な方法で、雪路の状態を更に細かく推定できる。
【0009】
なお、帯域値Pijは、指定された周波数帯域の振動レベルの平均値であってもよいし、指定された周波数帯域のなかの、条件による差異が特に大きな振動レベルを有する領域の平均値であってもよい。あるいは、指定された周波数帯域のなかの予め設定された1つもしくは複数の振動レベルの平均値もしくは和であってもよい。
また、本発明で判定に用いられる識別関数は、2つ以上の集合を識別するための関数で、図18に示すように、ある条件A(ここでは、水や雪などの路面上の介在物とタイヤとが衝突するという条件)を満たす場合には、P11≧P12であり、条件Aを満たさない場合には、P11<P12であるとすると、条件Aを満たす帯域値(P11,P12)の集合と、条件Aを満たさない帯域値(P11,P12)の集合との境界線は、P11=P12である。このとき、識別関数はF1=P11−P12(w11=1,w12=−1,K1=0)で、境界線はF1=0となる。すなわち、F1に(P11,P12)を代入したときに、F1≧0のときには、P11≧P12で、F1<0のときには、P11<P12である。
一般的な識別関数は、F1=w11・P11+w12・P12−K1で、w11,w12,K1は、条件Aについて実際に求めた帯域値(P11,P12)の集合のデータから、最小二乗法、マハラノビス距離、あるいは、SVMなどの周知の手法を用いて算出できる。
二変数の識別関数F2だけでなく、多変数の識別関数F3,F4,F7,F8についても同様に求めることができる。
なお、関数F’1=P12−P11も、識別関数F1=P11−P12と同様の識別を行うことのできる識別関数である。この識別関数F’1を用いた場合には、判定の符号が逆転する。また、一般の識別関数F=w1・P1+w2・P2+……+wn・Pn−Kも、識別関数F’=w’1・P1+w’2・P2+……+w’n・Pn−K’(w’k=−wk,K’=−K)も同様の識別を行うことができ、識別関数F’を用いた場合には、判定の符号が逆転する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、前記時系列波形から、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求めるステップ(d)と、前記帯域値P52,P345の大きさ、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53の大きさに基づいて、走行中の路面がシャーベット状の雪路であるか否かを推定するステップ(e)とを有し、前記ステップ(e)では、前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3が、f3<0である場合、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f’3<0である場合に、走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定することを特徴とする。
これにより、路面がシャーベット状の雪路であることを推定することができるので、加速度センサーで検出されるタイヤ周方向の加速度もしくはタイヤ幅方向の加速度の出力のみを用いた簡単な方法で、雪路の状態を更に細かく推定できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、前記時系列波形から、前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を求めるか、または、前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(f)と、前記帯域値P450の大きさ、または、前記帯域値P42,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が凍結路であるか否かを推定するステップ(g)とを有し、前記ステップ(g)では、前記帯域値P450を予め求めておいた識別関数F4=w41・P450−K4に代入して得られた関数値f4が、f4<0である場合、または、前記帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0である場合に、走行中の路面が凍結路であると判定することを特徴とする。
これにより、路面が凍結路であることを推定することができるので、加速度センサーで検出されるタイヤ周方向の加速度もしくはタイヤ幅方向の加速度の出力のみを用いた簡単な方法で、雪路の状態を更に細かく推定できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、前記時系列波形から、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と、前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と、前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と、前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と、前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と、前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と、前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と、前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(h)と、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が圧雪路であるか否かを推定するステップ(i)とを有し、前記ステップ(i)では、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7に代入して得られた関数値f’7と、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8に代入して得られた関数値f8とが、f’7<0かつ、f8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定することを特徴とする。
これにより、路面が圧雪路であることを推定することができるので、加速度センサーで検出されるタイヤ周方向の加速度もしくはタイヤ幅方向の加速度の出力のみを用いた簡単な方法で、雪路の状態を更に細かく推定できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(A)と、前記時系列波形から、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値P12とを求め、前記帯域値P11,P12を予め求めておいた識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1に代入して得られた関数値f1が、f1≧0を満たしているか否かを判定するステップ(B)と、前記ステップ(B)においてf1≧0である場合に、前記踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値P21と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、前記帯域値P21,P51を予め求めておいた識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2に代入して得られた関数値f2が、f2<0を満たしているか否か判定し、f2<0である場合に走行中の路面が積雪路であると判定するステップ(C)と、前記ステップ(C)においてf2≧0である場合に、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求め、前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3が、f3<0を満たしているか否か、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f’3<0を満たしているか否かを判定し、前記関数値f3がf3<0または前記関数値f’3がf’3<0である場合には走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定し、前記関数値f3がf3≧0または前記関数値f’3がf’3≧0である場合にはWET路であると判定するステップ(D)と、前記ステップ(B)においてf1<0である場合に、前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を求めるか、または、前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、前記帯域値P450を予め求めておいた識別関数F4=w41・P450−K4に代入して得られた関数値f4が、f4<0である場合、または、前記帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0である場合に、走行中の路面が凍結路であると判定するステップ(E)と、前記ステップ(E)においてf4≧0である場合に、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と、前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450とを求めるか、または、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P450を予め求めておいた識別関数F7=w71・P11+w72・P13+w73・P22+w74・P23+w75・P32+w76・P33+w77・P450−K7に代入して得られた関数値f7が、f7≧0である場合、または、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7に代入して得られた関数値f’7が、f’7≧0である場合に、走行中の路面が平滑な乾燥路であると判定するステップ(F)と、前記ステップ(F)においてf7<0またはf’7<0である場合に、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8に代入して得られた関数値f8が、f8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定し、f8≧0である場合に、走行中の路面が粗い乾燥路であると判定するステップ(G)とを有することを特徴とする。
これにより、加速度センサーで検出されるタイヤ周方向の加速度もしくはタイヤ幅方向の加速度の出力のみを用いた簡単な方法で、路面状態を、「積雪路」、「シャーベット状の雪路」、「WET路」、「圧雪路」、「凍結路」、「乾燥路」の6つの状態に細分化して推定できる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の路面状態推定方法において、前記ステップ(E)と前記ステップ(F)との間に、走行中の路面温度とタイヤ発生音とを検出するステップ(H)と、タイヤ発生音の10Hz〜10kHzのオクターブ分布波形から算出される低周波帯域でのバンドパワー値PAと高周波帯域でのバンドパワー値PBとを求めるステップ(I)と、前記路面温度とバンドパワー値PA,PBとから、路面上に介在物があるか否かを判定するステップ(J)とを設け、前記ステップ(I)では、前記路面温度が予め設定された基準温度よりも低いか、または低周波帯域のバンドパワー値PAに対する高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PB/PA)が1未満である場合には、路面上に介在物がないと判定して前記ステップ(F)に進み、前記ステップ(I)において路面上に介在物があると判定された場合には、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求め、前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f3≧0またはf’3≧0であるか否かを判定し、前記関数値f3または関数値f’3が、f3<0またはf’3<0である場合には走行中の路面が浅いシャーベット状の雪路であると判定し、前記関数値f3または関数値f’3が、f3≧0またはf’3≧0である場合には浅いWET路であると判定することを特徴とする。
これにより、「シャーベット状の雪路」と「WET路」についても、それぞれ、「浅いシャーベット状の雪路」と「深いシャーベット状の雪路」、「浅いWET路」と「深いWET路」とに細分化して推定できるので、路面状態の推定精度を更に向上させることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態推定方法において、サスペンションに監視用の加速度センサーを設置するとともに、前記監視用の加速度センサーで検出した加速度の値が予め設定した閾値を超えた場合には路面の判定を中止することを特徴とする。
これにより、タイヤに、突起や縁石を乗り越えたときのような、過度な入力があった場合に、その間の路面状態の推定データを削除することができるので、誤った路面推定を避けることができ、推定精度を向上させることができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の路面状態推定方法において、路面状態を撮影し、この撮影された路面状態の映像を表示画面に表示するとともに、前記表示画面に前記推定された路面状態を表示することを特徴とする。
これにより、路面状態の推定と実際の走行中の路面の状態とを同期させて運転者に視認させることができるので、車両の走行安全性を向上させることができる。
【0017】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る路面状態推定システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】センサー等の配置を示す図である。
【図3】路面状態の推定を行う演算装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】タイヤ振動の時系列波形における踏み込み前領域、踏み込み領域、蹴り出し前領域、蹴り出し領域、及び、蹴り出し後領域を示す図である。
【図5】音圧信号のオクターブ分布波形を示す図である。
【図6】本発明による路面状態の推定方法を示すフローチャートである。
【図7】踏み込み前領域の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図8】踏み込み領域の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図9】蹴り出し後領域の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図10】蹴り出し後領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図11】蹴り出し前領域の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図12】蹴り出し後領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図13】踏み込み前領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図14】踏み込み領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図15】蹴り出し前領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図16】蹴り出し領域の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図17】蹴り出し後領域の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
【図18】識別関数を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る路面状態推定システム1の構成を示す機能ブロック図である。
路面状態推定システム1の各構成要素は、車両に搭載されるタイヤ10と、車体20及び車内20Mと、推定された路面状態などのデータを集積して管理する管理センター40とに分散されて設置される。
タイヤ10には、加速度センサー11と、増幅器12と、A/D変換器13と、タイヤ側送信装置14と、受電装置15と、電力供給装置16とが配置される。
車体20及び車内20Mには、路面温度計21と、マイクロフォン22と、車輪速センサー23と、監視用加速度センサー24と、カメラ25と、GPS26と、演算装置27と、路面情報収録手段28と、モニター29と、受信装置30と、車両側送信装置31と、給電装置32と、警報装置33とが設置されている。
管理センター40には、データサーバー41と表示装置42とが設置されている。
【0021】
加速度センサー11は、図2に示すように、前輪20Fのタイヤ10のインナーライナー部10aのタイヤ気室10b側のほぼ中央部に配置されて、路面Rから当該タイヤ10のトレッド10cに入力する振動を検出する。なお、本例では、加速度センサー11の検出方向をタイヤ周方向になるように配置している。
増幅器12はローパスフィルタを備え、加速度センサー11で検出したタイヤ周方向の振動の時系列波形(加速度波形)から高周波ノイズ成分を除去して、A/D変換器13に出力する。
A/D変換器13は、A/D変換された加速度波形をタイヤ側送信装置14に出力する。
タイヤ側送信装置14は、A/D変換された加速度波形を、無線にて、車体20側に設けられた受信装置30に送信する。
受電装置15は、給電装置32から送信された電力供給用のRF信号を受信してこれを電力供給装置16に出力する。本例では、受電装置15を受信用コイルで構成するとともに、複数の受信用コイルをタイヤ10の周上に等間隔に配列することで、タイヤ10の回転時には、ほぼ連続してRF信号を受信できるようにしている。
電力供給装置16は、受電装置15で受信したRF信号を電力に変換してコンデンサーに充電し、電力を増幅器12、A/D変換器13、タイヤ側送信装置14に供給する。
タイヤ側送信装置14と受電装置15とは、加速度センサー11と一体にインナーライナー部10aに配置してもよいが、タイヤ10のバルブ10vに取付ける構成としてもよい。
【0022】
路面温度計21は、例えば、赤外線温度センサーから構成され、図2に示すように、車体20のフロントのバンパー20aの下部に設置されて、路面Rから放射される、波長が赤外線領域の熱放射を計測して当該路面Rの温度を計測する。路面温度計21で計測された温度のデータは演算装置27と路面情報収録手段28とに出力される。
マイクロフォン22は、車体20の、後輪20R前方のフレーム20bの下部に取付けられて、タイヤ発生音の音圧信号を検出する。タイヤ発生音は車両の走行時に後輪20Rのタイヤ10が路面Rに接地する際にタイヤ接地面付近に発生する。マイクロフォン22で検出したタイヤ発生音の音圧信号は、演算装置27に出力される。
車輪速センサー23は車輪の回転速度(以下、車輪速という)を検出するもので、本例では、外周部に歯車が形成され車輪とともに回転するローターと、このローターと磁気回路を構成するヨークと、磁気回路の磁束変化を検出するコイルとを備え、車輪(ここでは、前輪20F)の回転角度を検出する周知の電磁誘導型の車輪速センサーを用いている。ヨークとコイルとは、車軸51に回転自在に取付けられたナックル52に装着される。車輪速センサー23で検出された車輪速のデータは、演算装置27と路面情報収録手段28とに出力される。
監視用加速度センサー24はナックル52に取付けられて、タイヤ10からホイール53を介して車両バネ下部に伝播されたトレッド振動(サスペンション部の加速度)を検出する。監視用加速度センサー24で検出された車両バネ下部の振動のデータは、演算装置27に出力される。
【0023】
カメラ25は、例えば、CCDカラーカメラから構成され、図2に示すように、車体20の屋根20cに設置されて、車両が通過しようとする路面(車両前方の路面)Rの状態を撮影する。
また、GPS26は、車内20Mの運転席に設置されて、車両の地上での絶対位置を測定する。
カメラ25で撮影された映像の画像データと、GPS26で測定された車両の位置データとは、路面情報収録手段28に出力される。
演算装置27は、加速度センサー11で検出したタイヤ振動のデータと、路面温度計21で検出した路面温度のデータと、マイクロフォン22で検出したタイヤ発生音のデータと、車輪速センサー23で検出した車輪速のデータとから走行中の路面状態を推定する。タイヤ振動のデータは、タイヤ側送信装置14から受信装置30に送信され、受信装置30から演算装置27に出力される。
演算装置27の詳細については後述する。
路面情報収録手段28は、演算装置27で推定した走行中の路面の状態と、カメラ25で撮影された映像の画像データと、GPS26で測定された車両の位置データと、路面温度計21で計測された温度のデータと、車輪速センサー23で検出された車輪速のデータとを合成した表示用画像データを作成し、これをモニター29と車輌側送信装置31とに出力する。
モニター29は、路面情報収録手段28から入力された表示用画像データを表示画面に表示する。
演算装置27と路面情報収録手段28とは、それぞれ、マイクロコンピュータのソフトウェアにより構成され、モニター29とともに、運転席近傍に設置される。
【0024】
受信装置30は、タイヤ側送信装置14から送信されたタイヤ振動のデータを受信して演算装置27に出力する。
車両側送信装置31は、路面情報収録手段28に入力された当該車両の情報(推定された路面状態の情報、路面Rの画像データ、車両の位置データ、路面Rの温度のデータ、及び、車輪速のデータ)を管理センター40のデータサーバー41に送信する。
給電装置32は、高周波発生手段と電力供給用コイルとを備え、高周波発生手段で発生させた高周波を、電力供給用コイルから電力供給用のRF信号として受電装置15に送信する。給電装置32は、車体20のタイヤハウス20dに、タイヤ10に設けられた受電装置15の図示しない受信コイルに対向する位置に設置される。
警報装置33は運転席近傍に設置されて、路面が深いWET状態もしくは凍結路であると推定された場合に、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーに慎重な運転をするように警告する。
なお、警報用のブザーを駆動し、警報音により、ドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させるようにしてもよいし、警報用のブザーとLEDとを併用してもよい。
【0025】
管理センター40のデータサーバー41は、路面状態推定システム1を搭載した車両から送られてくる車両の情報を集計して保存するとともに、集計されたデータから、例えば、所定の広さの地域における路面状態のデータを当該地域の地図データに合成したりなどした統計データを作成する。
表示装置42は、統計データもしくは特定車両の車両データを表示画面に表示する。
なお、管理センター40と各車両とを相互通信可能にし、データサーバー41で作成した統計データを、各車両にフィードバックすることで、所定の領域の路面を通過する車両に対しての警告や注意を促すようにすれば、車両の走行安全性を更に向上させることができる。
【0026】
演算装置27は、図3に示すように、タイヤ振動データ処理部27Aと、音データ処理部27Bと、路面状態推定手段27Cとを備える。
タイヤ振動データ処理部27Aは、振動波形検出手段27aと領域信号抽出手段27bと帯域値算出手段27cとを備え、加速度センサー11で検出したタイヤ振動のデータを帯域値Pijに変換して路面状態推定手段27Cに出力する。
振動波形検出手段27aは、図4(a)に示すような、加速度センサー11の出力信号である加速度信号の踏み込み側のピーク位置もしくは蹴り出し側のピーク位置から、タイヤが一回転する時間を算出するとともに、車輪速センサー23で検出した車輪速度を用いて、タイヤ一回転分の加速度波形を検出する。
領域信号抽出手段27bは、図4(b)に示すように、タイヤ一回転分の加速度波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分割し、各領域R1〜R5における振動レベルの時系列波形を抽出する。
【0027】
帯域値算出手段27cは、各領域R1〜R5の時系列波形をバンドパスフィルターに通して、以下に示すような、所定の周波数領域の振動成分の大きさである帯域値Pijを算出する。なお、添字iは領域を指し、添字jは抽出した周波数領域を指す。
バンドパスフィルターは周波数領域毎に設ける。
11;踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値
12;踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値
13;踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値
21;踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値
22;踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値
23;踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値
31;蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値
32;蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値
33;蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値
41;蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値
42;蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値
51;蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値
52;蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値
53;蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値
【0028】
音データ処理部27Bは、周波数分析手段27dと、音圧レベル算出手段27eと、音圧レベル比演算手段27fとを備え、音圧レベル比Q=(PB/PA)を算出して路面状態推定手段27Cに出力する。
周波数分析手段27dは、タイヤ発生音の音圧信号をN分の1オクターブ分析して、図5に示すような、音圧信号の分布波形(オクターブ分布波形)を求める。オクターブ分布波形は、N分の1オクターブの帯域に区切ったオクターブバンド毎に音圧レベル(バンドパワー)を測定して求めるもので、本例では、N=3とした。
音圧レベル算出手段27eは、オクターブ分布波形から、低周波帯域(例えば、500Hz)でのバンドパワー値PAと高周波帯域(例えば、9000Hz)でのバンドパワー値PBとを算出する。
音圧レベル比演算手段27fは、低周波帯域のバンドパワー値PAと高周波帯域のバンドパワー値PBとから音圧レベル演算値を算出する。本例では、音圧レベル演算値を、低周波帯域のバンドパワー値PAに対する高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Qとした。Q=(PB/PA)である。
【0029】
路面状態推定手段27Cは、タイヤ振動データ処理部27Aから入力されるタイヤ周方向の振動の帯域値Pijと、音データ処理部27Bから入力される音圧レベル比Qと、路面温度計21から入力される路面温度Tのデータとを用いて、路面が「積雪路」、「浅いシャーベット状の雪路」、「深いシャーベット状の雪路」、「浅いWET路」、「深いWET路」、「凍結路」、「圧雪路」、「乾燥路」の8つの状態のいずれであるかを判定し、その判定結果を、路面情報収録手段28に出力する。なお、「乾燥路」が「粗い乾燥路」か「平滑な乾燥路」かの判定も可能である。
また、深いWET状態もしくは凍結路であると判定したときには、この判定結果を警報装置33に出力する。
なお、監視用の加速度センサー24で検出したサスペンション部の加速度の値が予め設定した閾値を超えた場合には、路面状態推定手段27Cは路面の判定を中止する。
以下に、路面状態の推定方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。
始めに、路面上に水や雪などの介在物があるか否かを判定する(ステップS1)。
路面上に水や雪などの介在物がある場合には、踏み込み時において、水膜や雪とタイヤとが衝突するので、図7の踏み込み前領域R1の時系列波形をFFTにより周波数分析して得られた周波数スペクトルに示すように、踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11は、WET路やシャーベット状の雪路での値が乾燥路(dry)での値よりも大きくなる。しかし、踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値P12は路面状態による差が小さい。そこで、帯域値P12を基準値として、帯域値P11と帯域値P12との差(dBの差)P11−P12を求めるとともに、この差P11−P12の大きさに対して閾値K1を設定し、差P11−P12の大きさが閾値K1以上である場合には、路面上に水や雪などの介在物があると判定する。また、差P11−P12の大きさが閾値K1よりも小さい場合には、路面上に水や雪などの介在物がないか、あってもその水膜もしくはシャーベット状の雪の層が薄いと判定する。
本例では、様々な路面状態における帯域値P11と帯域値P12との関係を予め実験的に求めて識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1を設定し、実際に算出した帯域値P11と帯域値P12とを識別関数F1に代入して得られた関数値f1が、f1≧0を満たしているか否かにより、路面上に水や雪などの介在物があるか否かを判定した。なお、識別関数の係数w11は約+1で、係数w12は約−1である。
【0030】
ステップS1においてf1≧0である場合には、ステップS2に進んで、路面上の介在物が、新雪が積もった柔らかいものかどうかを判定する。
介在物が新雪である場合には、踏み込み時の衝撃が雪により緩和されるとともに、路面が滑り易くなる。したがって、図8の踏み込み領域R2の周波数スペクトルに示すように、積雪路における踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値P21の値は、WET路や乾燥路での値よりも小さくなるとともに、図9の蹴り出し後領域R5の周波数スペクトルに示すように、蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51も小さくなる。
したがって、帯域値P21、帯域値P51、あるいは、帯域値P21と帯域値P51との和P2151に対して閾値を設定し、P21,P51、あるいは、和P2151が閾値よりも小さい場合に、路面が新雪が積もった積雪路であると判定することができる。
本例では、様々な路面状態における帯域値P21と帯域値P51との関係を予め実験的に求めて識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2を設定し、実際に算出した帯域値P21と帯域値P51とを識別関数F2に代入して得られた関数値f2が、f2<0を満たしているか否かにより、路面が積雪路であるか否かを判定した。なお、識別関数の係数w21及び係数w22は約+1である。
【0031】
ステップS2においてf2≧0である場合には、ステップS3に進んで、路面上の介在物が水か雪か、すなわち、路面が深いWET路か、深いシャーベット状の雪路であるかどうかを判定する。
介在物がシャーベット状の雪である場合には、介在物が水である場合に比べて蹴り出しの振動のうち周波数の高い領域での振動成分が大きくなる一方、路面が滑り易くなるため、周波数の低い領域での振動成分が大きくなる。したがって、図10の蹴り出し後領域R5の周波数スペクトルに示すように、蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52の値はシャーベット状の雪路の方が小さく、7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53の値はシャーベット状の雪路の方が大きくなる。一方、図11の蹴り出し前領域R3の周波数スペクトルに示すように、蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31の値はシャーベット状の雪路の方が大きくなる。また、蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41の値も大きくなる。
したがって、帯域値P52,P31,P41,P53、もしくは、帯域値P52と帯域値P31,P41,P53との差から、介在物が水であるかシャーベット状の雪であるかを判定することができる。なお、このように、パラメータが多くなった場合には、様々な路面状態における帯域値P52,P31,P41,P53に対して予め識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3を設定して路面がシャーベット状の雪路であるか否かを判定することが好ましい。すなわち、識別関数F’3に帯域値P52,P31,P41,P53を代入して得られた関数値f’3が、f’3≧0である場合には深いWET路であると判定し、f’3<0である場合には路面がシャーベット状の雪路であると判定する。これにより、帯域値P52,P31,P41,P53、もしくは、帯域値P52と帯域値P31,P41,P53との差を判定に用いる場合よりも高い精度を得ることができる。
また、帯域値P31,P41,P53に代えて、蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345を求め、帯域値P345と帯域値P52とを予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3が、f3<0である場合に、走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定するようにしてもよい。
【0032】
ステップS1においてf1<0である場合には、ステップS4に進んで、路面が滑り易いか否かを判定する。積雪路、シャーベット状の雪路、深いWET路以外の路面で滑り易い路面は凍結路であるので、このステップ4では、路面が凍結路か否かを判定する。
路面が滑り易い場合には、特に、蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と、図12の蹴り出し後領域R5の周波数スペクトルに示すように、蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とが小さくなる。そこで、前記帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0である場合には、走行中の路面が凍結路であると判定し、f’4≧0である場合にはステップS5に進む。
また、帯域値P42,P51に代えて、前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を予め求めておいた識別関数F4=w41・P450−K4に代入して得られた関数値f4が、f4<0である場合走行中の路面が凍結路であると判定するようにしてもよい。
【0033】
ステップS5では、路面上に薄い水膜もしくは浅いシャーベット状の雪があるか否かを判定する。水膜やシャーベット状の雪の層が薄い場合には、ステップS1の判定では、水膜やシャーベット状の雪はないと判定されるので、ここでは、走行中の路面温度Tとタイヤ発生音から算出された音圧レベル比Q=(PB/PA)とを用いて、路面上に薄い水膜もしくは浅いシャーベット状の雪があるか否かを判定する。
具体的には、路面温度Tのデータと予め設定された基準温度T0とを比較し、計測された路面温度Tが基準温度T0以上である場合には、路面上の水が液体状態を取り得るか否かを判定する。路面温度Tが基準温度T0よりも低い場合には、路面上の水が液体状態を取り得るか否かの判定を行わずに、直ちにステップS7に進む。本例では、基準温度T0をT0=−3℃とした。
路面上の水が液体状態を取り得るか否かの判定は、音圧レベル比Q=(PB/PA)を用いて行う。低周波帯域(例えば、500Hz)でのバンドパワー値PAは、路面上の水が液体状態であるか否かにかかわらず、速度により変化する。一方、高周波帯域(例えば、9000Hz)でのバンドパワー値PBも速度により変化するが、タイヤが水を跳ねる音を検出したときに大きくなる。したがって、算出された音圧レベル比Q=(PB/PA)が1以上であったときには路面上の水が液体状態を取り得る。
すなわち、路面温度Tが基準温度T0よりも低いか、または、音圧レベル比Q=(PB/PA)が1未満である場合には、路面上に介在物(水または雪)がないと判定してステップS7に進み、路面温度Tが基準温度T0以上で、かつ、音圧レベル比Q=(PB/PA)が1以上である場合には、路面上に介在物があると判定してステップS6に進む。
ステップS6では、路面上の介在物が水か雪か、すなわち、路面が浅いWET路か、浅いシャーベット状の雪路であるかどうかを判定する。この判定は、ステップS3における判定と同一で、識別関数F’3に帯域値P52,P31,P41,P53を代入して得られた関数値f’3が、f’3≧0である場合には浅いWET路であると判定し、f’3<0である場合には、路面が浅いシャーベット状の雪路であると判定する。なお、識別関数F3に帯域値P52,P345を代入して得られた関数値f3を用いて判定してもよい。
最後に、ステップS7及びステップS8において、路面が圧雪路か乾燥路(DRY)かを判定する。
図13の踏み込み前領域R1の周波数スペクトルに示すように、踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と1kHz以下の周波数帯域から選択される帯域値P13とは、路面の粗さが粗いと大きくなる。すなわち、圧雪路では、平滑な乾燥路よりも、帯域値P11と帯域値P13とが大きくなる。なお、図示していないが、粗い乾燥路でも、帯域値P11と帯域値P13とが平滑な乾燥路よりも大きくなる。
また、圧雪路では、雪により、踏み込み時の衝撃が緩和されるので、図14の踏み込み領域R2の周波数スペクトルと、図15の蹴り出し前領域R3の周波数スペクトルに示すように、踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と、蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32とは、圧雪路のほうが乾燥路よりも小さくなる。しかしながら、圧雪路では、雪による踏面内の微小な滑りが生じるので、踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と、蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33とは、圧雪路のほうが乾燥路よりも大きくなる。
更に、滑り易い場合には蹴り出し時の剪断力が低下するので、図16の蹴り出し領域R4の周波数スペクトルと、図17の蹴り出し後領域R5の周波数スペクトルに示すように、蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と、蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とが小さくなるので、これによっても、圧雪路か乾燥路とを判別することができる。
【0034】
ステップS7では、走行中の路面が平滑な乾燥路と圧雪路または粗い乾燥路とを識別する識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7を設定し、帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7に代入して得られた関数値f’7が、f’7≧0である場合に、走行中の路面が平滑な乾燥路であると判定する。一方、f’7<0である場合には、圧雪路もしくは粗い乾燥路であると判定しステップS8へ進む。
また、帯域値P42,P51に代えて、蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を求め、帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P450を予め求めておいた識別関数F7=w71・P11+w72・P13+w73・P22+w74・P23+w75・P32+w76・P33+w77・P450−K7に代入して得られた関数値f7が、f7≧0である場合に、走行中の路面が平滑な乾燥路であると推定するようにしてもよい。
ステップS8では、路面が圧雪路か粗い乾燥路かを識別する識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8を設定し、帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8に代入して得られた関数値f8が、f8≧0である場合に、走行中の路面が粗い乾燥路であると推定し、f8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定する。
なお、識別関数F7と識別関数F8は、実際に車両を平滑な乾燥路と粗い乾燥路と圧雪路とで走行させて求めた帯域値(P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51)の集合のデータから、最小二乗法、マハラノビス距離、あるいは、SVMなどの周知の手法を用いて算出したもので、識別関数F7の係数wmnと識別関数F8の係数 wmnは当然異なる。
【0035】
このように本実施の形態では、加速度センサー11、路面温度計21、及び、マイクロフォン22により、タイヤ10のタイヤ周方向振動、路面温度T、及び、タイヤ発生音をそれぞれ検出するとともに、タイヤ10の振動のデータから、踏み込み前領域R1の帯域値P11,P12,P13と、踏み込み領域R2の帯域値P21,P22,P23と、蹴り出し前領域R3の帯域値P31,P32,P33と、蹴り出し領域R4の帯域値P41,P42と、蹴り出し後領域R5の帯域値P51,P52,P53とを算出し、タイヤ発生音のデータから低周波帯域のバンドパワー値PAと高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PA/PB)を演算し、帯域値Pijと、路面温度Tのデータと、音圧レベル比Qと、車輪速のデータとを用いて、路面状態を推定するようにしたので、雪路の状態を細分化して推定できるとともに、路面の状態を精度良く推定することができる。
また、判定用の識別関数Fkを予め求めておき、このFkに帯域値Pijを代入して得られた関数値fkの正負によって、路面状態を判定するようにしたので、路面状態の推定精度を著しく高めることができる。
【0036】
なお、前記実施の形態では、タイヤ周方向振動の各領域R1〜R5の時系列波形をバンドパスフィルターを通すことで帯域値Pijを求めたが、前記時系列波形をFFT分析して得られた周波数スペクトルから帯域値Pijを求めるようにしてもよい。
また、前記例では、帯域値Pijをタイヤ周方向振動の帯域値Pijとしたが、加速度センサー11の検出方向をタイヤ幅方向に変更し、タイヤ幅方向振動の帯域値P’ijを求め、この帯域値P’ijを用いて路面状態を推定するようにしてもよい。但し、タイヤ幅方向の振動はタイヤ周方向の振動に比べて振幅が小さいので、本例のように、タイヤ周方向の振動を用いる方が推定精度を高める上では好ましい。
また、前記例では、車体側の給電装置32から電力供給装置16に電力を供給したが、タイヤ内発電により電力供給装置16に電力を供給するようにしてもよい。タイヤ内発電を行う装置としては、例えば、タイヤ10の転動により回転する着磁されたローターと、このローターに隣接する高透磁率材から成るステータと、ローター及びステータを含む磁気回路内に設けられた発電コイルとを備えた発電装置などが挙げられる。
【0037】
また、前記例では、タイヤ10の振動と路面温度Tとタイヤ発生音とを検出して路面状態を推定したが、タイヤ周方向振動のデータのみを用いて路面状態を推定しても、雪路を細分化して推定することができる。この場合、浅いシャーベット状の雪路は、深いシャーベット状の雪路か乾燥路もしくは圧雪路と判定され、浅いWET路は深いWET路か圧雪路もしくは乾燥路と判定されるが、「深い」と「浅い」とを区別する設定値を変更して、ステップS1の介在物の判定に使用する識別関数F1及び識別関数F2を作成すれば、推定の精度が低下することはない。また、このような路面判定を行う場合には、図6に示したフローチャートにおいて、ステップS5,S6を省略すればよい。
【0038】
また、本発明による路面状態の推定方法を用いて雪路状態のみを細分化する推定を行うことも可能である。
すなわち、路面が積雪路であるか否かを推定するには、加速度センサー11で検出したタイヤ周方向振動の帯域値P11,P12を、予め求めておいた識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1に代入して得られた関数値f1と、前記帯域値P21,P51を予め求めておいた識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2に代入して得られた関数値f2とが、f1≧0かつf2<0を満たしているか否かを判定し、f1≧0かつf2<0である場合に、走行中の路面が積雪路であると判定すればよい。なお、f1<0もしくはf2≧0の場合には、路面が積雪路以外であるので、以下の雪路状態の推定を続けて行えばよい。
また、路面がシャーベット状の雪路であるか否かを推定するには、帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f’3<0を満たしているか否かを判定し、f’3<0である場合に、走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定すればよい。
【0039】
また、路面が凍結路であるか否かを推定するには、帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0を満たしているか否かを判定し、f’4<0である場合に、走行中の路面が凍結路であると判定すればよい。
また、路面が圧雪路であるか否かを推定するには、帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7に代入して得られた関数値f’7と、帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8に代入して得られた関数値f8とが、f’7<0かつf8<0を満たしているか否かを判定し、f’7<0かつf8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定すればよい。
[実施例]
【0040】
試験車両である4輪駆動車のバンパーに赤外線温度センサーを取付けるとともに、左前輪のインナーライナー部に加速度センサーを取付け、左後輪前方の車両下部にマイクロフォンを取付けた車両を準備し、冬季北海道の一般道を走行して路面状態を推定した。
走行中の車内において目視で判別した路面状態を「正」としたときの推定結果の正答率を表1に示す。なお、タイヤサイズは、265/65R17で、走行速度は60km/hである。
【表1】

表1からわかるように、本発明による路面推定方法を用いることにより、雪路の状態を細分化して推定できることが確認された。シャーベット状の雪路と凍結路とでは正答率が低いが、これは、なお、基準となる路面状態が車内の目視によるため、圧雪路上の浅いシャーベット状の雪と凍結状態との判別がつけにくいことによるものと考えられる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、走行中の路面の状態を精度よく推定することができるとともに、雪路を細分化して推定できるので、この推定された路面状態を運転者に認識させたり、推定された路面状態に基づいて車両の走行状態を制御したりすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 路面状態推定システム、10 タイヤ、11 加速度センサー、12 増幅器、
13 A/D変換器、14 タイヤ側送信装置、15 受電装置、
16 電力供給装置、20 車体、20M 車内、21 路面温度計、
22 マイクロフォン、23 車輪速センサー、24 監視用加速度センサー、
25 カメラ、26 GPS、27 演算装置、28 路面情報収録手段、
29 モニター、30 受信装置、31 車両側送信装置、32 給電装置、
33 警報装置、40 管理センター、41 データサーバー、42 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、
前記時系列波形から、
前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と、
前記踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値P12と、
前記踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値P21と、
前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(b)と、
前記帯域値P11,P12,P21,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が積雪路であるか否かを推定するステップ(c)とを有し、
前記ステップ(c)では、前記帯域値P11,P12を予め求めておいた識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1に代入して得られた関数値f1と、前記帯域値P21,P51を予め求めておいた識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2に代入して得られた関数値f2とが、f1≧0かつf2<0である場合に、走行中の路面が積雪路であると判定することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項2】
タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、
前記時系列波形から、
前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、
または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求めるステップ(d)と、
前記帯域値P52,P345の大きさ、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53の大きさに基づいて、走行中の路面がシャーベット状の雪路であるか否かを推定するステップ(e)とを有し、
前記ステップ(e)では、前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3が、f3<0である場合、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f’3<0である場合に、走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項3】
タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、
前記時系列波形から、
前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を求めるか、
または、前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(f)と、
前記帯域値P450の大きさ、または、前記帯域値P42,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が凍結路であるか否かを推定するステップ(g)とを有し、
前記ステップ(g)では、前記帯域値P450を予め求めておいた識別関数F4=w41・P450−K4に代入して得られた関数値f4が、f4<0である場合、または、前記帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0である場合に、走行中の路面が凍結路であると判定することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項4】
タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(a)と、
前記時系列波形から、
前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と、
前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と、
前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と、
前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と、
前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と、
前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と、
前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と、
前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求めるステップ(h)と、
前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51の大きさに基づいて、走行中の路面が圧雪路であるか否かを推定するステップ(i)とを有し、
前記ステップ(i)では、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7に代入して得られた関数値f’7と、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8に代入して得られた関数値f8とが、f’7<0かつ、f8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項5】
タイヤ内に設置された加速度センサーで検出した走行中のタイヤのタイヤ周方向の振動もしくはタイヤ幅方向の振動の時系列波形を、踏み込み端に出現する踏み込み側のピークよりも前の踏み込み前領域R1と、前記踏み込み側のピークを形成する踏み込み領域R2と、前記踏み込み側のピークと蹴り出し端に出現する蹴り出し側のピークとの間の蹴り出し前領域R3と、前記蹴り出し側のピークを形成する蹴り出し領域R4と、前記蹴り出し側のピークよりも後の蹴り出し後領域R5とに分けるステップ(A)と、
前記時系列波形から、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の0.5kHz〜1.5kHz帯域から選択される帯域値P12とを求め、前記帯域値P11,P12を予め求めておいた識別関数F1=w11・P11+w12・P12−K1に代入して得られた関数値f1が、f1≧0を満たしているか否かを判定するステップ(B)と、
前記ステップ(B)においてf1≧0である場合に、前記踏み込み領域R2の1kHz〜3kHz帯域から選択される帯域値P21と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、前記帯域値P21,P51を予め求めておいた識別関数F2=w21・P21+w22・P51−K2に代入して得られた関数値f2が、f2<0を満たしているか否か判定し、f2<0である場合に走行中の路面が積雪路であると判定するステップ(C)と、
前記ステップ(C)においてf2≧0である場合に、
前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、
または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求め、
前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3が、f3<0を満たしているか否か、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f’3<0を満たしているか否かを判定し、前記関数値f3がf3<0または前記関数値f’3がf’3<0である場合には走行中の路面がシャーベット状の雪路であると判定し、前記関数値f3がf3≧0または前記関数値f’3がf’3≧0である場合にはWET路であると判定するステップ(D)と、
前記ステップ(B)においてf1<0である場合に、
前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450を求めるか、
または、前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、
前記帯域値P450を予め求めておいた識別関数F4=w41・P450−K4に代入して得られた関数値f4が、f4<0である場合、または、前記帯域値P42,P51を予め求めておいた識別関数F’4=w’41・P42+w’42・P51−K’4に代入して得られた関数値f’4が、f’4<0である場合に、走行中の路面が凍結路であると判定するステップ(E)と、
前記ステップ(E)においてf4≧0である場合に、
前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と、前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R450の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P450とを求めるか、
または、前記踏み込み前領域R1の2kHz〜8kHz帯域から選択される帯域値P11と前記踏み込み前領域R1の1kHz以下の帯域から選択される帯域値P13と前記踏み込み領域R2の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P22と前記踏み込み領域R2の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P23と前記蹴り出し前領域R3の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P32と前記蹴り出し前領域R3の4kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P33と前記蹴り出し領域R4の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P42と前記蹴り出し後領域R5の1kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P51とを求め、
前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P450を予め求めておいた識別関数F7=w71・P11+w72・P13+w73・P22+w74・P23+w75・P32+w76・P33+w77・P450−K7に代入して得られた関数値f7が、f7≧0である場合、または、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F’7=w’71・P11+w’72・P13+w’73・P22+w’74・P23+w’75・P32+w’76・P33+w’77・P42+w’78・P51−K’7に代入して得られた関数値f’7が、f’7≧0である場合に、走行中の路面が平滑な乾燥路であると判定するステップ(F)と、
前記ステップ(F)においてf7<0またはf’7<0である場合に、前記帯域値P11,P13,P22,P23,P32,P33,P42,P51を予め求めておいた識別関数F8=w81・P11+w82・P13+w83・P22+w84・P23+w85・P32+w86・P33+w87・P42+w88・P51−K8に代入して得られた関数値f8が、f8<0である場合に、走行中の路面が圧雪路であると判定し、f8≧0である場合に、走行中の路面が粗い乾燥路であると判定するステップ(G)とを有することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項6】
前記ステップ(E)と前記ステップ(F)との間に、
走行中の路面温度とタイヤ発生音とを検出するステップ(H)と、
タイヤ発生音の10Hz〜10kHzのオクターブ分布波形から算出される低周波帯域でのバンドパワー値PAと高周波帯域でのバンドパワー値PBとを求めるステップ(I)と、
前記路面温度とバンドパワー値PA,PBとから、路面上に介在物があるか否かを判定するステップ(J)とを設け、
前記ステップ(I)では、前記路面温度が予め設定された基準温度よりも低いか、または低周波帯域のバンドパワー値PAに対する高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PB/PA)が1未満である場合には、路面上に介在物がないと判定して前記ステップ(F)に進み、
前記ステップ(I)において路面上に介在物があると判定された場合には、
前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と、前記蹴り出し前領域R3と前記蹴り出し領域R4と前記蹴り出し後領域R5に跨る領域R345の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P345とを求めるか、
または、前記蹴り出し後領域R5の2kHz〜4kHz帯域から選択される帯域値P52と前記蹴り出し前領域R3の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P31と前記蹴り出し領域R4の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P41と前記蹴り出し後領域R5の7kHz〜10kHz帯域から選択される帯域値P53とを求め、
前記帯域値P52,P345を予め求めておいた識別関数F3=w31・P52+w32・P345−K3に代入して得られた関数値f3、または、前記帯域値P52,P31,P41,P53を予め求めておいた識別関数F’3=w’31・P52+w’32・P31+w’33・P41+w’34・P53−K’3に代入して得られた関数値f’3が、f3≧0またはf’3≧0であるか否かを判定し、前記関数値f3または関数値f’3が、f3<0またはf’3<0である場合には走行中の路面が浅いシャーベット状の雪路であると判定し、前記関数値f3または関数値f’3が、f3≧0またはf’3≧0である場合には浅いWET路であると判定することを特徴とする請求項5に記載の路面状態推定方法。
【請求項7】
サスペンションに監視用の加速度センサーを設置するとともに、前記監視用の加速度センサーで検出した加速度の値が予め設定した閾値を超えた場合には路面の判定を中止することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態推定方法。
【請求項8】
路面状態を撮影し、この撮影された路面状態の映像を表示画面に表示するとともに、前記表示画面に前記推定された路面状態を表示することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の路面状態推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−242303(P2011−242303A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115730(P2010−115730)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】