説明

車両および車両用制御方法

【課題】不要な電力消費を回避して、燃費の悪化を抑制する。
【解決手段】ECUは、車両のシステムが起動した場合に(S100にてYES)、電圧VB2(0)をDC/DCコンバータの目標電圧として決定するステップ(S102)と、補機バッテリの放置期間が第1期間αよりも長い場合であって(S104にてYES)、かつ、エンジンの初回起動後である場合(S106にてYES)、あるいは、補機バッテリの放置期間が第1期間α以下である場合であって(S104にてNO)、車両のシステムの起動後の経過時間が第2期間βよりも長い場合(S114にてYES)、燃費改善モードの選択を許可状態とするステップ(S108)と、電圧VB2(1)を目標電圧として決定するステップ(S110)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と内燃機関とを搭載したハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機と内燃機関とを搭載したハイブリッド車両には、車両駆動用蓄電装置と補機バッテリとが搭載される。たとえば、特開2008−302852号公報(特許文献1)には、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上である場合に、車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギーを用いて補機バッテリを充電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補機バッテリは長期放置されることによって補機バッテリの性能が十分に発揮できない場合がある。そのため、車両システムの起動時点において補機バッテリを充電しておき、長期放置されていないと判定された時点で充電を中止することが望ましい。しかしながら、長期放置されたか否かを判定するための条件として、内燃機関が初回始動したという条件が含まれる場合には、内燃機関を停止させた状態の走行が継続すると、長期放置されたか否かの判定ができない状態が長時間継続するという問題がある。この場合、長期放置されていないときでも補機バッテリの充電が長時間継続する場合があるため、消費電力が増加して燃費が悪化するという問題がある。
【0005】
上述した公報に開示されたハイブリッド自動車の制御装置には、このような問題について何ら考慮されておらず、解決することができない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、不要な電力消費を回避して、燃費の悪化を抑制する車両および車両用制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に係る車両は、駆動源である回転電機に電力を供給する第1蓄電装置と、回転電機と異なる電気機器に電力を供給する、第1蓄電装置よりも電圧が低い第2蓄電装置と、第1蓄電装置の電圧を調整して第2蓄電装置および電気機器のうちの少なくともいずれか一方に供給するためのコンバータと、第1蓄電装置から第2蓄電装置に供給される電圧が目標電圧になるようにコンバータを制御するための制御部とを含む。制御部は、直前の車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも長い場合には、第1電圧を目標電圧として決定し、停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも短い場合には、第1電圧よりも低い第2電圧を前記目標電圧として決定する。
【0008】
好ましくは、第1電圧は、第1蓄電装置の電力を用いて第2蓄電装置の充電が可能となる電圧である。
【0009】
さらに好ましくは、制御部は、車両システムの起動時点において第1電圧を目標電圧として決定する。
【0010】
さらに好ましくは、駆動源は、内燃機関をさらに含む。制御部は、停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも短い場合には、内燃機関に設けられる空燃比センサのプレヒートの完了後に、第2電圧を目標電圧として決定する。
【0011】
さらに好ましくは、制御部は、車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも短い場合には、起動時点から第2期間が経過しているときに、プレヒートが完了しているとして第2電圧を前記目標電圧として決定する。
【0012】
さらに好ましくは、制御部は、車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも長い場合には、起動時点から第3期間が経過しているときに、第2電圧を目標電圧として決定する。第3期間は、第2期間よりも長い期間である。
【0013】
さらに好ましくは、駆動源は、内燃機関をさらに含む。制御部は、内燃機関の初回始動の直前に第1電圧を目標電圧として決定し、内燃機関が停止したときに第2電圧を目標電圧として決定する。
【0014】
この発明の他の局面に係る車両用制御方法は、駆動源である回転電機に電力を供給する第1蓄電装置と、回転電機と異なる電気機器に電力を供給する、第1蓄電装置よりも電圧が低い第2蓄電装置と、第1蓄電装置の電圧を調整して第2蓄電装置および電気機器のうちの少なくともいずれか一方に供給するためのコンバータとを搭載した車両に用いられる車両用制御方法である。この車両用制御方法は、直前の車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも長い場合には、第1電圧を目標電圧として決定するステップと、停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも短い場合には、第1電圧よりも低い第2電圧を目標電圧として決定するステップと、第1蓄電装置から第2蓄電装置に供給される電圧が目標電圧になるようにコンバータを制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、たとえば、ハイブリッド車両においては、内燃機関の始動の有無にかかわらず、第2蓄電装置の放置期間に基づいて長期放置状態であるか否かを判定することができる。そのため、第2蓄電装置が長期放置状態であるか否かの判定に長時間を要することが回避される。また、第2蓄電装置が長期放置状態であるか否かに応じてコンバータの制御を速やかに行なうことができる。したがって、不要な電力消費を回避して、燃費の悪化を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る車両の全体ブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの機能ブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの動作を示すタイミングチャートである。
【図7】第3の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの機能ブロック図である。
【図8】第3の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、メインバッテリ70と、DC/DCコンバータ72と、補機バッテリ74と、システムメインリレー(以下、SMRと記載する)76と、充電装置78と、駆動輪80と、スタートスイッチ150と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
【0019】
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
【0020】
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
【0021】
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してメインバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、メインバッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
【0022】
第2MG30は、メインバッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してメインバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
【0023】
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104と、エキゾーストマニホールド17と、排気管19とを含む。燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。
【0024】
さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
【0025】
また、エキゾーストマニホールド17には、排気管19が接続される。複数の気筒102からエキゾーストマニホールド17に排出される排気ガスは、排気管19を流通する。排気管19には、空燃比センサ18が設けられる。空燃比センサ18は、排気管19を流通する排気ガスの空燃比を検出する。空燃比センサ18は、検出された空燃比を示す信号afrをECU200に送信する。
【0026】
空燃比センサ18には、抵抗が内蔵されている。ECU200は、エンジン10の始動前に空燃比センサ18に対して電力を供給して、空燃比センサ18の温度が所定温度以上となるまで加熱する(以下、プレヒートと記載する)空燃比センサ18が所定温度以上となることによって、排気ガスとの温度差を縮小することができる。
【0027】
ECU200は、運転者によってスタートスイッチ150が操作された時点、車両1のシステムの起動時あるいはエンジン10を始動する直前(始動タイミングの所定時間前)にプレヒートを行なうように空燃比センサ18に対して電力を供給する。なお、空燃比センサ18には、別途空燃比センサ18を加熱するためのヒータが設けられていてもよい。
【0028】
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
【0029】
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
【0030】
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
【0031】
PCU60は、メインバッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御される昇圧コンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。昇圧コンバータは、メインバッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、昇圧コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、メインバッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータに出力する。昇圧コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してメインバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてメインバッテリ70が充電される。なお、昇圧コンバータは、省略してもよい。
【0032】
メインバッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。メインバッテリ70は、SMR76を介在してPCU60に接続される。メインバッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。メインバッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。メインバッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される。なお、メインバッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
【0033】
メインバッテリ70には、メインバッテリ70の電池温度TB1を検出するための電池温度センサ156と、メインバッテリ70の電流IB1を検出するための電流センサ158と、メインバッテリ70の電圧VB1を検出するための第1電圧センサ160とが設けられる。
【0034】
SMR76は、ECU200からの制御信号に基づいて、導通状態と遮断状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切り替える。導通状態とは、メインバッテリ70とPCU60とが電気的に接続された状態である。遮断状態とは、メインバッテリ70とPCU60とが電気的に遮断された状態である。
【0035】
電池温度センサ156は、電池温度TB1を示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IB1を示す信号をECU200に送信する。第1電圧センサ160は、電圧VB1を示す信号をECU200に送信する。
【0036】
DC/DCコンバータ72は、メインバッテリ70の電力を用いて補機バッテリ74を充電したり、第1MG20および第2MG30以外の電気機器(以下、補機と記載する)に対して電力を供給したりする。ECU200は、DC/DCコンバータ72の出力電圧が目標電圧となるように制御信号S3を生成して、生成した制御信号S3をDC/DCコンバータ72に送信する。DC/DCコンバータ72の正極端子は、PCU60の正極端子とメインバッテリ70の正極端子とを接続する電源ラインPLに接続され、DC/DCコンバータ72の負極端子は、PCU60の負極端子とメインバッテリ70の負極端子とを接続するアースラインNLに接続される。
【0037】
補機バッテリ74は、メインバッテリ70よりも電圧の低い蓄電装置であって、補機に電力を供給する。補機バッテリ74は、たとえば、12Vバッテリを一例として説明するが、24Vバッテリであってもよいし、その他の所定電圧であってもよく、特に12Vバッテリに限定されるものではない。
【0038】
補機バッテリ74には、補機バッテリ74の電圧VB2を検出するための第2電圧センサ162が設けられる。第2電圧センサ162は、補機バッテリ74の電圧VB2を示す信号をECU200に送信する。
【0039】
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
【0040】
ECU200は、たとえば、車両1のシステムが停止状態である場合に信号STを受信した場合に、起動指示を受けたと判断して、車両1のシステムを停止状態から起動状態に移行させる。また、ECU200は、車両1のシステムが起動状態である場合に信号STを受信した場合に、停止指示を受けた判断して、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。以下の説明において、車両1のシステムが起動状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオフ操作といい、車両1のシステムが停止状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオン操作という。また、車両1のシステムが起動状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器に電力が供給されるなどして、複数の機器は作動可能な状態となる。すなわち、車両1は、発進可能な状態となる。一方、車両1のシステムが停止状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器のうちの一部への電力の供給が停止されるなどして、一部の機器が作動停止状態となる。車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行する場合には、SMR76は、メインバッテリ70とPCU60と間を電気的に遮断された状態から電気的に接続された状態になる。
【0041】
第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
【0042】
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
【0043】
充電装置78は、充電プラグ300が車両1に取り付けられることによって外部電源302から供給される電力を用いてメインバッテリ70を充電する。充電プラグ300は、充電ケーブル304の一方端に接続される。充電ケーブル304の他方端は、外部電源302に接続される。充電装置78の正極端子は、PCU60の正極端子とメインバッテリ70の正極端子とを接続する電源ラインPLに接続され、充電装置78の負極端子は、PCU60の負極端子とメインバッテリ70の負極端子とを接続するアースラインNLに接続される。なお、充電装置78は、SMR76よりもメインバッテリ70側の電源ラインPLおよびアースラインNLに接続されてもよい。
【0044】
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。さらに、ECU200は、DC/DCコンバータ72を制御するための制御信号S3を生成し、その生成した制御信号S3をエンジン10へ出力する。
【0045】
ECU200は、エンジン10、PCU60およびDC/DCコンバータ72等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、メインバッテリ70の充放電状態、補機バッテリ74の電圧、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
【0046】
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
【0047】
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、エンジン10を停止させた状態で第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
【0048】
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、メインバッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、メインバッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにメインバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0049】
上述した構成を有する車両1に搭載される補機バッテリ74は長期放置されることによって性能を十分に発揮できない場合がある。そのため、車両1のシステムの起動時点において補機バッテリ74を充電し、長期放置されていないと判定された時点で充電を中止することが望ましい。しかしながら、長期放置されたか否かを判定するための条件として、エンジン10が初回始動したという条件が含まれる場合には、エンジン10を停止させた状態の走行が継続すると、長期放置されたか否かの判定ができない状態が長時間継続する場合がある。この場合、長期放置されていないときでも補機バッテリ74の充電が長時間継続するため、消費電力が増加して燃費が悪化する場合がある。
【0050】
そこで、本実施の形態においては、ECU200が、直前の車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間αよりも長い場合には、電圧VB2(0)をDC/DCコンバータ72の目標電圧として決定し、停止時点から起動時点までの期間が第1期間αよりも短い場合には、電圧VB2(0)よりも低い電圧VB2(1)を目標電圧として決定する。
【0051】
図2に、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、起動判定部202と、初期電圧決定部204と、放置期間判定部206と、完了判定部208と、経過時間判定部210と、第1許否決定部212と、補機電圧制御部214とを含む。
【0052】
起動判定部202は、車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行したか否かを判定する。起動判定部202は、上述したスタートスイッチ150からの信号に基づいて車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行したか否かを判定する。なお、起動判定部202は、たとえば、車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合に、起動判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0053】
初期電圧決定部204は、車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合に、車両1のシステムの起動時の電圧VB2(0)を目標電圧の初期値として決定する。なお、本実施の形態においては、電圧VB2(0)は、少なくともDC/DCコンバータ72から供給される電力を用いて補機バッテリ74を充電することが可能な電圧であればよい。たとえば、電圧VB2(0)は、所定電圧であってもよい。また、補機バッテリ74の内部抵抗は、温度が低いほど高くなる。そのため、補機バッテリ74を充電することが可能な電圧の下限値は、上昇する。そのため、電圧VB2(0)は、充電可能な電圧の下限値にマージンを加えたものであってもよい。あるいは、電圧VB2(0)は、所定電圧と充電可能な電圧の下限値との比較結果に基づいて決定されてもよい。たとえば、電圧VB2(0)は、所定電圧と充電可能な電圧の下限値とのうちのいずれか高い方が決定されてもよい。
【0054】
また、初期電圧決定部204は、たとえば、起動判定フラグがオンである場合に、電圧VB2(0)を目標電圧として決定するようにしてもよい。
【0055】
放置期間判定部206は、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長いか否かを判定する。補機バッテリ74の放置期間とは、直前の車両1のシステムの停止時点から起動時点までの期間をいう。第1期間αは、所定期間であり、補機バッテリ74が長期放置状態であると判定するためのしきい値である。第1期間αは、たとえば、数日の期間である。なお、放置期間判定部206は、たとえば、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長い場合に、放置判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0056】
完了判定部208は、放置期間判定部206によって補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも短いと判定された場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了しているか否かを判定する。本実施の形態においては、完了判定部208は、エンジン10の初回始動が完了している場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定する。エンジン10の初回始動とは、車両1のシステムの起動時点から最初のエンジン10の始動をいう。完了判定部208は、たとえば、車両1のシステムの起動時点から最初のエンジン10の始動が行なわれた場合にオン状態となるフラグの状態に基づいてエンジン10の初回始動が完了しているか否かを判定する。なお、完了判定部208は、たとえば、放置判定フラグがオフ状態である場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了しているか否かを判定し、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定する場合に、完了判定フラグをオンするようにしてもよい。特に車両1がプラグインハイブリッド車両である場合は、エンジン10の初回始動になかなか至らないため、初回始動だけでプレヒートが完了しているか否かを判定すると補機バッテリ74の燃費改善モードへの移行が遅くなる。そのため、車両1がプラグインハイブリッド車両である場合は、プレヒートが完了しているか否かの判定を実施することが望ましい。
【0057】
経過時間判定部210は、放置期間判定部206によって補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長いと判定された場合に、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間βよりも大きいか否かを判定する。第2期間βは、第1期間αよりも短い所定期間であって、長期放置状態の補機バッテリ74が適切な性能を発揮できるように充電するための期間である。第2期間βは、たとえば、数十分の期間である。なお、経過時間判定部210は、たとえば、放置判定フラグがオン状態である場合に、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間βよりも大きいか否かを判定し、第2期間βよりも大きいと判定する場合に、経過時間判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0058】
第1許否決定部212は、放置期間判定部206と、完了判定部208と、経過時間判定部210とによる判定結果に基づいて、燃費改善モードの選択を許可状態とするか不許可状態とするかを決定する。燃費改善モードは、DC/DCコンバータ72の目標電圧を電圧VB2(0)よりも低い電圧VB2(1)としてDC/DCコンバータ72を制御するモードを含む。電圧VB2(1)は、電圧VB2(0)よりも低い電圧であれば特に限定されるものではないが、少なくとも補機バッテリ74によって電力が供給される電気機器が正常に動作できる電圧であればよい。なお、電圧VB2(1)は、補機バッテリ74の温度によって決定されてもよいし、所定電圧であってもよいし、補機バッテリ74の温度によって決定される電圧と所定電圧とのうちのいずれか高い方の電圧であってもよい。
【0059】
第1許否決定部212は、たとえば、放置期間判定部206によって補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも短いと判定された場合であって、かつ、完了判定部208によって空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定された場合には、燃費改善モードの選択を許可状態とする。
【0060】
第1許否決定部212は、たとえば、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも短いと判定された場合であって、かつ、空燃比センサ18のプレヒートが完了していないと判定された場合には、燃費改善モードの選択を不許可状態とする。
【0061】
さらに、第1許否決定部212は、たとえば、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長いと判定された場合であって、かつ、経過時間判定部210によって車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間βよりも大きいと判定された場合には、燃費改善モードの選択を許可状態とする。
【0062】
第1許否決定部212は、たとえば、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長いと判定された場合であって、かつ、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間β以下であると判定された場合には、燃費改善モードの選択を不許可状態とする。
【0063】
なお、第1許否決定部212は、たとえば、放置期間判定フラグがオフ状態であって、かつ、完了判定フラグがオン状態である場合、または、放置期間判定フラグおよび経過時間判定フラグがいずれもオン状態である場合には、燃費改善モードの選択許可フラグをオン状態としてもよい。
【0064】
第1許否決定部212は、たとえば、放置期間判定フラグおよび完了判定フラグがいずれもオフ状態である場合、または、放置期間判定フラグがオン状態であって、かつ、経過時間判定フラグがオフ状態である場合には、燃費改善モードの選択許可フラグをオフ状態としてもよい。
【0065】
補機電圧制御部214は、燃費改善モードの選択が許可状態である場合、DC/DCコンバータ72の目標電圧として電圧VB2(1)を決定する。また、補機電圧制御部214は、燃費改善モードの選択が不許可状態である場合、DC/DCコンバータ72の目標電圧として電圧VB2(0)を決定する。補機電圧制御部214は、第2電圧センサ162によって検出される電圧VB2が決定された目標電圧になるようにDC/DCコンバータ72を制御する。
【0066】
なお、補機電圧制御部214は、たとえば、選択許可フラグがオン状態である場合に、電圧VB2(1)を目標電圧として決定し、選択許可フラグがオフ状態である場合に、電圧VB2(0)を目標電圧として決定するようにしてもよい。
【0067】
本実施の形態において、起動判定部202と、初期電圧決定部204と、放置期間判定部206と、完了判定部208と、経過時間判定部210と、第1許否決定部212と、補機電圧制御部214とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0068】
図3を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、ECU200は、図3に示したフローチャートに基づくプログラムを所定の計算サイクル毎に実行する。
【0069】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行したか否かを判定する。車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合(S100にてYES)、処理はS100に戻される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS102に移される。
【0070】
S102にて、ECU200は、車両1のシステムの起動時のDC/DCコンバータ72の目標電圧の初期値として電圧VB2(0)を決定する。
【0071】
S104にて、ECU200は、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長いか否かを判定する。第1期間αについては上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長い場合(S104にてYES)、処理はS114に移される。もしそうでない場合(S104にてNO)、処理はS106に移される。
【0072】
S106にて、ECU200は、エンジン10の初回始動後であるか否かを判定する。初回始動後であるか否かの判定方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。エンジン10の初回始動後である場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S106にてNO)、処理はS112に移される。
【0073】
S108にて、ECU200は、燃費改善モードの選択を許可状態とする。S110にて、ECU200は、DC/DCコンバータ72の目標電圧として電圧VB2(0)よりも低い電圧VB2(1)を決定して、目標電圧として決定された電圧VB2(1)になるようにDC/DCコンバータ72を制御する。S112にて、ECU200は、燃費改善モードの選択を不許可状態とする。
【0074】
S114にて、ECU200は、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間βよりも大きいか否かを判定する。第2期間βについては上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第2期間βよりも大きい場合(S114にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S114にてNO)、処理はS116に移される。S116にて、ECU200は、燃費改善モードの選択を不許可状態とする。
【0075】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200の動作について図4を参照して説明する。
【0076】
たとえば、車両1のシステムおよびエンジン10が停止状態である場合を想定する。このとき、DC/DCコンバータ72の目標電圧として電圧VB2(1)が決定されているとする。また、燃費改善モードは、不許可状態であるとする。
【0077】
<放置期間が第1期間αよりも長い場合>
時間T(0)にて、運転者がスタートスイッチ150を操作するなどして車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合(S100にてYES)、電圧VB2(0)が目標電圧の初期値として決定される(S102)。そして、DC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が目標電圧である電圧VB2(0)になるようにDC/DCコンバータが制御される。そのため、補機バッテリ74の充電が行なわれる。
【0078】
このとき、補機バッテリ74の放置期間は、第1期間αよりも長いため(S104にてNO)、車両1の起動時点から第2期間βが経過するまでは(S114にてNO)、燃費改善モードの選択は不許可状態となる(S116)。
【0079】
時間T(2)にて、車両1のシステムの起動時点から第2期間βが経過した場合(S114にてYES)、図4の破線に示すように、燃費改善モードの選択が許可状態となり(S108)、目標電圧が電圧VB2(0)から電圧VB2(1)に低下させられる(S110)。
【0080】
<放置期間が第1期間αよりも短い場合>
時間T(0)にて、運転者がスタートスイッチ150を操作するなどして車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合(S100にてYES)、電圧VB2(0)が目標電圧の初期値として決定される(S102)。そして、DC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が目標電圧である電圧VB2(0)になるようにDC/DCコンバータ72が制御される。そのため、補機バッテリ74の充電が行なわれる。
【0081】
このとき、補機バッテリ74の放置期間は、第1期間αよりも短いため(S104にてYES)、エンジン10の初回始動までは(S106にてNO)、燃費改善モードの選択は不許可状態となる(S112)。
【0082】
時間T(2)よりも前の時間T(1)において、エンジン10が始動した場合、エンジン10の初回始動後となるため(S106にてYES)、図4の実線に示すように、燃費改善モードの選択が許可状態となり(S108)、DC/DCコンバータ72の目標電圧が電圧VB2(0)から電圧VB2(1)に低下させられる(S110)。
【0083】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、エンジン10が始動しない場合でも、補機バッテリ74の放置期間に基づいて長期放置状態であるか否かを判定することができる。そのため、補機バッテリ74が長期放置状態であるか否かの判定に長時間を要することが回避される。また、補機バッテリ74が長期放置状態であるか否かに応じてDC/DCコンバータ72の制御を速やかに行なうことができる。したがって、不要な電力消費を回避して、燃費の悪化を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【0084】
本実施の形態において、車両1のシステムの起動時点とは、SMR76が遮断状態から導通状態に移行した時点であるとして説明したが、たとえば、運転者がスタートスイッチ150に対して車両1のシステムの起動操作を行なった時点(スタートスイッチ150からST信号を受信した時点)であってもよい。
【0085】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る車両について説明する。本実施の形態に係る車両は、上述の第1の実施の形態に係る車両の構成と比較して、完了判定部208の動作が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0086】
本実施の形態においては、完了判定部208は、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γよりも大きい場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定する。第3期間γは、第1期間αおよび第2期間βよりも短い所定期間であって、車両1のシステムの起動時点から空燃比センサ18のプレヒートが開始されてから空燃比センサ18の温度が所定温度以上となることによってプレヒートが完了するまでの期間である。なお、所定温度は、空燃比センサ18の検出素子と排気ガスとの温度差が縮小できる温度であればよい。なお、完了判定部208は、たとえば、放置判定フラグがオフ状態である場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了しているか否かを判定し、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定する場合に、完了判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0087】
図5を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、ECU200は、図5に示したフローチャートに基づくプログラムを所定の計算サイクル毎に実行する。
【0088】
なお、図5に示したフローチャートの中で、前述の図3に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0089】
補機バッテリ74の放置期間が第1期間α以下である場合(S104にてNO)、S150にて、ECU200は、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γよりも大きいか否かを判定する。車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γよりも大きい場合(S150にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S150にてNO)、処理はS112に移される。
【0090】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図6を参照して説明する。なお、補機バッテリ74の放置期間が第1期間αよりも長い場合は、上述の第1の実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作と同じである。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0091】
<放置期間が第1期間αよりも短い場合>
図6に示すように時間T(0)にて、運転者がスタートスイッチ150を操作するなどして車両1のシステムが停止状態から起動状態に移行した場合(S100にてYES)、電圧VB2(0)が目標電圧の初期値として決定される(S102)。そして、DC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が目標電圧である電圧VB2(0)になるようにDC/DCコンバータ72が制御される。そのため、補機バッテリ74の充電が行なわれる。
【0092】
このとき、補機バッテリ74の放置期間は、第1期間αよりも短いため(S104にてYES)、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γ以下である場合には(S150にてNO)、燃費改善モードの選択は不許可状態となる(S112)。
【0093】
エンジン10が始動する時間T(1)よりも前の時間T(3)において、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γよりも大きくなる場合には(S105にてYES)、図6の実線に示すように、燃費改善モードの選択が許可状態となり(S108)、DC/DCコンバータ72の目標電圧が電圧VB2(0)から電圧VB2(1)に低下させられる(S110)。
【0094】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、上述の第1の実施の形態において説明した本発明の作用効果に加えて、エンジン10の始動の有無に関わらず、空燃比センサ18のプレヒートの完了後にDC/DCコンバータ72の目標電圧を低下させることができるため、不要な電力消費を回避することができる。
【0095】
また、本実施の形態においては、ECU200は、車両1のシステムの起動時点からの経過時間が第3期間γよりも大きい場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定すると説明したが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、ECU200は、空燃比センサ18の抵抗値がしきい値以下となる場合に、空燃比センサ18のプレヒートが完了していると判定してもよい。これは、空燃比センサ18の温度が低いほど抵抗値が高くなり、温度が高いほど抵抗値が低くなるためである。
【0096】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る車両について説明する。本実施の形態に係る車両は、上述の第1の実施の形態における車両1に搭載されたECU200の動作に加えて、エンジン10の始動の直前に補機バッテリ74の目標電圧を上昇させる動作を行なう。したがって、以下に説明する構成以外については、図1および図2を用いて説明した上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0097】
本実施の形態において、ECU200は、車両1のシステムの起動後のエンジン10の初回始動の直前に電圧VB2(0)を目標電圧として決定する。さらに、ECU200は、エンジン10の停止時に電圧VB2(1)を目標電圧として決定する。
【0098】
図7に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、図2に記載した構成に加えて、図7に示すように、モード判定部250と、初回始動判定部252と、第1補機電圧制御部254と、エンジン始動制御部256と、停止判定部258と、第2許否決定部260と、第2補機電圧制御部262とをさらに含む。
【0099】
モード判定部250は、燃費改善モードの選択中であるか否かを判定する。モード判定部250は、たとえば、上述の燃費改善モードの選択許可フラグがオン状態である場合に、燃費改善モードの選択中であると判定し、選択許可フラグがオフ状態である場合に、燃費改善モードの選択中でないと判定するようにしてもよい。なお、モード判定部250は、たとえば、燃費改善モードの選択中であると判定する場合に、モード判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0100】
初回始動判定部252は、エンジン10の初回始動タイミングであるか否かを判定する。初回始動判定部252は、たとえば、車両1のシステム起動後におけるエンジン10が始動しておらず、かつ、エンジン10の始動条件が成立する場合に、エンジン10の初回始動タイミングであると判定する。エンジン10の始動条件は、たとえば、メインバッテリ70のSOCがしきい値よりも低下しているという条件を含むがこの条件に限定されるものではない。なお、初回始動判定部252は、たとえば、エンジン10の初回始動タイミングであると判定する場合に、初回始動判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0101】
第1補機電圧制御部254は、モード判定部250によって燃費改善モードの選択中であると判定され、かつ、初回始動判定部252によってエンジン10の初回始動タイミングであると判定された場合に、電圧VB2(0)を目標電圧として決定する。なお、第1補機電圧制御部254は、たとえば、モード判定フラグがオン状態であって、かつ、初回始動フラグがオン状態である場合に、電圧VB2(0)を目標電圧として決定するようにしてもよい。第1補機電圧制御部254は、第2電圧センサ162によって検出される電圧VB2が目標電圧になるようにDC/DCコンバータ72を制御する。
【0102】
エンジン始動制御部256は、電圧VB2(0)が目標電圧として決定された後に、エンジン10を始動させるための始動制御を実行する。始動制御は、エンジン回転速度Neが初爆可能回転速度以上になるように第1MG20を回転させる制御と、スロットル制御と、燃料噴射制御と、点火制御とを含む。
【0103】
停止判定部258は、エンジン10が停止したか否かを判定する。停止判定部258は、たとえば、エンジン回転速度Neが実質的にゼロである場合には、エンジン10が停止していると判定する。
【0104】
なお、停止判定部258は、たとえば、エンジン10の作動中にエンジン10の停止条件が成立した後の所定時間経過後であって、エンジン10の始動条件が成立していない場合に、エンジン10が停止したと判定するようにしてもよいし、エンジン回転速度Neが所定回転速度以上の状態から実質的にゼロとなる状態に移行した場合に、エンジン10が停止していると判定するようにしてもよい。停止判定部258は、たとえば、エンジン10が停止したと判定した場合に、停止判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0105】
第2許否決定部260は、停止判定部258による判定結果に基づいて、燃費改善モードの選択の許否を決定する。第2許否決定部260は、たとえば、停止判定部258によってエンジン10が停止していると判定された場合には、燃費改善モードの選択を許可状態とし、エンジン10が作動中であると判定された場合には、燃費改善モードの選択を不許可状態とする。
【0106】
なお、許否決定部は、たとえば、停止判定フラグがオン状態である場合に、燃費改善モードの選択許可フラグをオン状態とし、停止判定フラグがオフ状態である場合に、燃費改善モードの選択許可フラグをオフ状態としてもよい。
【0107】
第2補機電圧制御部262は、燃費改善モードの選択が許可状態である場合には、電圧VB2(1)を目標電圧として決定する。また、第2補機電圧制御部262は、燃費改善モードの選択が不許可状態である場合には、電圧VB2(0)を目標電圧として決定する。第2補機電圧制御部262は、DC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が、すなわち、第2電圧センサ162によって検出される電圧VB2が決定された目標電圧になるようにDC/DCコンバータ72を制御する。
【0108】
なお、第2補機電圧制御部262は、たとえば、選択許可フラグがオン状態である場合に、電圧VB2(1)を目標電圧として決定し、選択許可フラグがオフ状態である場合に、電圧VB2(0)を目標電圧として決定するようにしてもよい。
【0109】
本実施の形態において、モード判定部250と、初回始動判定部252と、第1補機電圧制御部254と、エンジン始動制御部256と、停止判定部258と、第2許否決定部260と、第2補機電圧制御部262とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0110】
図8を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、ECU200は、図8に示したフローチャートに基づくプログラムを所定の計算サイクル毎に実行する。
【0111】
S300にて、ECU200は、燃費改善モードの選択中であるか否かを判定する。燃費改善モードの選択中である場合(S300にてYES)、処理はS302に移される。もしそうでない場合(S300にてNO)、この処理は終了する。
【0112】
S302にて、ECU200は、エンジン10の初回始動タイミングであるか否かを判定する。エンジン10の初回始動タイミングであるか否かの判定方法は、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。エンジン10の初回始動タイミングである場合(S302にてYES)、処理はS304に移される。もしそうでない場合(S302にてNO)、この処理は終了する。
【0113】
S304にて、ECU200は、電圧VB2(1)をDC/DCコンバータ72の目標電圧として決定する。S306にて、ECU200は、エンジン10を始動させる。
【0114】
S308にて、ECU200は、エンジン10が停止したか否かを判定する。エンジン10が停止した場合(S308にてYES)、処理はS310に移される。もしそうでない場合(S308にてNO)、処理はS308に戻される。
【0115】
S310にて、ECU200は、燃費改善モードの選択を許可状態とする。S312にて、ECU200は、電圧VB2(1)を目標電圧として決定する。
【0116】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図9を参照して説明する。
【0117】
たとえば、車両1がエンジン10を停止させた状態で第2MG30の動力を用いて走行している場合を想定する。このとき、燃費改善モードが選択中(すなわち、許可状態)であるとする。
【0118】
図9に示すように時間T(4)にて、燃費改善モードが選択中であって(S300にてYES)、エンジン10の初回始動タイミングであると判定された場合(S302にてYES)、電圧VB2(0)が目標電圧として決定される(S304)。DC/DCコンバータ72の目標電圧の上昇によってDC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が上昇する。この状態でエンジン10が始動させられる(S306)。そして、エンジン10が停止されるまで(S308にてNO)、電圧VB2(0)が目標電圧として維持される。
【0119】
時間T(5)にて、エンジン10が停止した場合(S308にてYES)、燃費改善モードが許可状態となるとともに(S310)、電圧VB2(1)が目標電圧として決定される(S312)。DC/DCコンバータ72の目標電圧の低下によって、DC/DCコンバータ72から補機バッテリ74に供給される電圧が低下する。
【0120】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、上述した第1の実施の形態において説明した本発明の作用効果に加えて、エンジン10の初回始動時においては、エンジン10が停止するまでDC/DCコンバータ72の目標電圧を上昇させることによって、エンジン10において燃焼が安定するため、エンジン10の始動性および排気エミッション等を向上させることができる。また、エンジン10が停止するまで目標電圧を維持するため、燃焼を安定させることができる。
【0121】
なお、本実施の形態においては、エンジン10の初回始動時においては、エンジン10が停止するまで目標電圧を上昇させることとしたが、たとえば、エンジン10の始動が完了した時点で目標電圧を低下させるようにしてもよい。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
1 車両、10 エンジン、11 エンジン回転速度センサ、12,13 レゾルバ、14 車輪速センサ、16 駆動軸、17 エキゾーストマニホールド、18 空燃比センサ、19 排気管、20,30 MG、40 動力分割装置、50 サンギヤ、52 ピニオンギヤ、54 キャリア、56 リングギヤ、58 減速機、70 メインバッテリ、72 コンバータ、74 補機バッテリ、76 SMR、78 充電装置、80 駆動輪、102 気筒、104 燃料噴射装置、150 スタートスイッチ、156 電池温度センサ、158 電流センサ、160,162 電圧センサ、200 ECU、202 起動判定部、204 初期電圧決定部、206 放置期間判定部、208 完了判定部、210 経過時間判定部、212,260 許否決定部、214 補機電圧制御部、250 モード判定部、252 初回始動判定部、254 第1補機電圧制御部、256 エンジン始動制御部、258 停止判定部、262 第2補機電圧制御部、300 充電プラグ、302 外部電源、304 充電ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源である回転電機に電力を供給する第1蓄電装置と、
前記回転電機と異なる電気機器に電力を供給する、前記第1蓄電装置よりも電圧が低い第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置の電圧を調整して前記第2蓄電装置および前記電気機器のうちの少なくともいずれか一方に供給するためのコンバータと、
前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置に供給される電圧が目標電圧になるように前記コンバータを制御するための制御部とを含み、
前記制御部は、直前の車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも長い場合には、第1電圧を前記目標電圧として決定し、前記停止時点から前記起動時点までの期間が前記第1期間よりも短い場合には、前記第1電圧よりも低い第2電圧を前記目標電圧として決定する、車両。
【請求項2】
前記第1電圧は、前記第1蓄電装置の電力を用いて前記第2蓄電装置の充電が可能となる電圧である、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両システムの前記起動時点において前記第1電圧を前記目標電圧として決定する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記駆動源は、内燃機関をさらに含み、
前記制御部は、前記停止時点から前記起動時点までの期間が前記第1期間よりも短い場合には、前記内燃機関に設けられる空燃比センサのプレヒートの完了後に、前記第2電圧を前記目標電圧として決定する、請求項1〜3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両システムの前記停止時点から前記起動時点までの期間が前記第1期間よりも短い場合には、前記起動時点から第2期間が経過しているときに、前記プレヒートが完了しているとして前記第2電圧を前記目標電圧として決定する、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記車両システムの前記停止時点から前記起動時点までの期間が前記第1期間よりも長い場合には、前記起動時点から第3期間が経過しているときに、前記第2電圧を前記目標電圧として決定し、
前記第3期間は、前記第2期間よりも長い期間である、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記駆動源は、内燃機関をさらに含み、
前記制御部は、前記内燃機関の初回始動の直前に前記第1電圧を前記目標電圧として決定し、前記内燃機関が停止したときに前記第2電圧を前記目標電圧として決定する、請求項1〜6のいずれかに記載の車両。
【請求項8】
駆動源である回転電機に電力を供給する第1蓄電装置と、前記回転電機と異なる電気機器に電力を供給する、前記第1蓄電装置よりも電圧が低い第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置の電圧を調整して前記第2蓄電装置および前記電気機器のうちの少なくともいずれか一方に供給するためのコンバータとを搭載した車両に用いられる車両用制御方法であって、
直前の車両システムの停止時点から起動時点までの期間が第1期間よりも長い場合には、第1電圧を目標電圧として決定するステップと、
前記停止時点から前記起動時点までの期間が前記第1期間よりも短い場合には、前記第1電圧よりも低い第2電圧を前記目標電圧として決定するステップと、
前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置に供給される電圧が前記目標電圧になるように前記コンバータを制御するステップとを含む、車両用制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166675(P2012−166675A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28817(P2011−28817)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】