説明

車両における樹脂製燃料タンク構造

【課題】タンク本体へのインサート部の取付け部において、ノッチの発生を抑えることができる車両における樹脂製燃料タンク構造を提供する。
【解決手段】耐燃料透過性を有する樹脂材料で形成されたタンク本体と、タンク本体とは別体に樹脂材料で形成され、タンク本体への取付け部80b及び燃料の取り出し開口80aを有するインサート部80とを備え、インサート部80をタンク本体の外層13cに溶着により取り付けた車両における樹脂製燃料タンク構造において、タンク本体の外層13cが、インサート部80の取付け部80bの端部80eにおいて密着するとともに、取付け部80bよりも外方かつ上方に張り出すように形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における耐燃料透過性樹脂材料製の燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動2輪車等の車両では軽量化のために燃料タンクを鉄やアルミニウム等の金属材料に換えて樹脂を用いたものが開発、製品化されている。
この種のものでは、燃料タンクのタンク本体が、外層、中間層及び内層の多重構造となっており、燃料の取り出し部としてのインサート部が、タンク本体の外層に例えば熱板溶着により取り付けられているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−160537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の構成では、インサート部は、外層の上に配置されているものの、外層の成形の過程において、その端部において外層に力が加わりにくい構成となっているので、タンク本体へのインサート部の取付け部において、ノッチが発生する可能性がある。上記ノッチは、インサート部をタンク本体の外層に溶着した後、外層が収縮することにより、インサート部とタンク本体との取付け部において生じる微少な隙間である。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、タンク本体へのインサート部の取付け部において、ノッチの発生を抑えることができる車両における樹脂製燃料タンク構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、耐燃料透過性を有する樹脂材料で形成されたタンク本体と、前記タンク本体とは別体に樹脂材料で形成され、前記タンク本体への取付け部及び燃料の取り出し開口を有するインサート部とを備え、前記インサート部を前記タンク本体の外層に溶着により取り付けた車両における樹脂製燃料タンク構造において、前記タンク本体の外層が、前記インサート部の前記取付け部の端部において密着するとともに、前記取付け部よりも外方かつ上方に張り出すように形成されたことを特徴とする。
【0006】
本発明では、タンク本体の外層が、インサート部の取付け部の端部において密着するとともに、取付け部よりも外方かつ上方に張り出すように形成されているため、外層の形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部の取付け部の端部と外層との間が密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
【0007】
また、前記タンク本体の外層が、前記取付け部の端部の上に密着してもよい。
これにより、外層の形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部の取付け部の端部と外層との間が隙間なく密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
前記インサート部は予め射出成形により形成されており、前記タンク本体はブロー成形されると共に、前記ブロー成形の際に前記インサート部が前記タンク本体に同時に取り付けられてもよい。
この構成では、車両における耐燃料透過性樹脂材料製の燃料タンクを製造する方法の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、タンク本体の外層が、インサート部の取付け部の端部において密着するとともに、取付け部よりも外方かつ上方に張り出すように形成されているため、外層の形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部の取付け部の端部と外層との間が密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
【0009】
また、タンク本体の外層が、取付け部の端部の上に密着するので、外層の形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部の取付け部の端部と外層との間が隙間なく密着されて、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
【0010】
インサート部は予め射出成形により形成されており、タンク本体はブロー成形されると共に、ブロー成形の際にインサート部がタンク本体に同時に取り付けられるため、燃料タンクの製造方法が簡素化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料タンク構造を備えたオフロード系自動2輪車の側面図である。この自動2輪車の車体フレーム1は、ヘッドパイプ2、メインフレーム3、センターフレーム4、ダウンフレーム5及びロアフレーム6を備え、これらをループ状に連結し、その内側にエンジン7を支持している。エンジン7はシリンダ8とクランクケース9を備える。メインフレーム3、センターフレーム4及びロアフレーム6はそれぞれ左右一対で設けられ、ヘッドパイプ2及びダウンフレーム5は車体中心に沿って1本で設けられる。メインフレーム3は、エンジン7の上方を直線状に斜め下がり後方へ延び、エンジン7の後方を上下方向へ延びるセンターフレーム4の上端部へ連結している。ダウンフレーム5は、エンジン7の前方を斜め下がりに下方へ延び、その下端部でロアフレーム6の前端部へ連結している。
【0012】
ロアフレーム6はエンジン7の前側下部からエンジン7の下方へ屈曲して略直線状に後方へ延び、後端部でセンターフレーム4の下端部と連結している。エンジン7の上方には、燃料タンク13が配置されメインフレーム3上に支持される。燃料タンク13の後方にはシート14が配置され、センターフレーム4の上端から後方へ延びるシートレール15上に支持される。シートレール15の下方には、補強パイプ16が配置されている。シートレール15と補強パイプ16には、エアクリーナ17が支持され、スロットルボディ18を介してシリンダヘッド11へ車体後方側から吸気される。
【0013】
シリンダ8の前部からは排気管20が略S字形に屈曲して下方へ延出している。排気管20は、クランクケース9の前方を通り後方へ延出し、センターフレーム4を横切ってその後方にて後端部が補強パイプ16に支持され、排気管20の終端には、マフラー22が接続されている。ヘッドパイプ2にはフロントフォーク23が支持され、フロントフォーク23の下端部に支持された前輪24がハンドル25により操向される。センターフレーム4のピボット軸26にはリヤアーム27の前端部が取り付けられ、ピボット軸26を中心に揺動自在に支持されている。リヤアーム27の後端部には後輪28が支持され、エンジン7によりチェーン駆動される。リヤアーム27とセンターフレーム4の後端部との間には、リヤサスペンションのクッションユニット29が設けられている。符号30はラジエター、31はそのラバーマウント部、32、33はエンジンマウント部、34はエンジンハンガ、35は電装品ケースである。なお、エンジン7は、ピボット軸26によってもセンターフレーム4へ支持されている。
【0014】
図2は、エンジン及び燃料供給系部分の拡大側面図である。
エンジン7は水冷4サイクル式であり、シリンダ8は、そのシリンダ軸線C1が略垂直になる直立状態でクランクケース9の前部に設けられ、下から上へ順に、シリンダブロック10、シリンダヘッド11、ヘッドカバー12を備える。シリンダ8を直立させることにより、エンジン7の前後方向を短くして、エンジン7をオフロード車に適した構成にしている。シリンダ8の直上位置には、燃料タンク13が配置されている。燃料タンク13は、中空のタンク本体13aを備え、その底部とヘッドカバー12上部との間には、スティフナ部36が配設されている。スティフナ部36は、ダウンフレーム5の上下方向中間部とメインフレーム3の後部とを連結する腕状のフレーム補強部材である。タンク本体13aの内部には内蔵式の燃料ポンプ40が収容されている。
【0015】
燃料ポンプ40もシリンダ8の直上に配置され、シリンダ8の中心(ピストンの軸心)であるシリンダ軸線C1の軸線方向の延長線上に重なるように配置されている。なお、燃料ポンプ40の配置は、シリンダ軸線C1と一部でも重なっていれば多少前後方向へ移動してもよい。この場合でも、側面視にてシリンダ8の前後幅内、すなわちシリンダ8の前後の輪郭線を上方へ延長した間隔に収まるように配置する。この配置は重量の大きな燃料ポンプ40を車体の前後方向でエンジン7の重心W近傍にすることができる。エンジン7の重心Wは、クランク軸9aの軸心Oの直近で斜め後上方に位置する。
【0016】
燃料ポンプ40は、図3に示すように、燃料ポンプ40の上部を構成する燃料ポンプ本体部60と、下部を構成するベース部61とを備え、燃料ポンプ本体部60は、タンク本体13aの内部へ挿入されている。
タンク本体13aは、耐燃料透過性を有する樹脂材料で形成され、側面視において左下部に直角部分を有する略直角三角形状をなし、前側下部に略直角部が位置し、上面は後方斜め下がりの斜面をなす比較的小型のものである。
このタンク本体13aの前側部の両側には、メインフレーム3の上面に乗る段部13dが形成され、タンク本体13aの前部には、取付け用ブラケット13eが設けられている。この取付け用ブラケット13eは、下部がタンク本体13aの側壁前面上部へボルト止めされると共に、上部がヘッドパイプ2と一体に形成されて後方へ延びるガセット37(図2参照)へボルト止めされている。
【0017】
タンク本体13aの上部にはインサート部80が設けられ、インサート部80には、燃料の注入用の開口80aを開閉自在に塞ぐタンクキャップ13fが取り付けられている。インサート部80は、樹脂材料を用いて予め射出成形により一体成形され、タンク本体13aへの取付け部80bを備え、取付け部80bは、タンク本体13aの外層13cに溶着により取り付けられる。タンク本体13aの外層13cには、図4に示すように、窪み部90が設けられ、窪み部90は、底部91と内周部93とを有し、底部91には取付け部80bの底部取付け面80cが溶着され、内周部93には取付け部80bの外周取付け面80dが溶着されている。80eは、取付け部80bの端部であり、タンク本体13aの外層13cは該端部80eの上に密着するように溶着される。
【0018】
タンク本体13aの底部13bには、図3に示すように、インサート成形体73が一体にインサート成形される。該インサート成形体73は、インサートリング71と、該インサートリング71を包むように覆う樹脂材料72とで構成されている。インサートリング71は金属材料で構成され、樹脂材料72はポリエチレンであり、該樹脂材料72はタンク本体13aを構成する樹脂材料(ポリエチレン)とは分子量が異なっている。ベース部61は、燃料ポンプ40の側方へ底部13bと平行に延びるフランジ部61aを有し、フランジ部61aを底部13bに下側から接触させた状態で、リング状のプレート62aを介して下側から6本のボルト63をインサートリング71に螺合し、タンク本体13aの底部13bに取り付けられている。また、底部13bには、側方へ若干後方向きに突出したコネクタ65が設けられ、コネクタ65には、燃料ポンプ40へ駆動電源を供給する電線45が配線されている。
【0019】
ベース部61には、燃料ポンプ本体部60の吐出口(図示せず)に接続するジョイント管64が前方へ向かって延出し、ジョイント管64には、図2に示すように、燃料供給管41の一端が接続され、燃料供給管41の他端が略U字状に曲がった後、後方に延出して、スロットルボディ18の燃料噴射ノズル42へ接続している。燃料噴射ノズル42は、公知の電子燃料噴射装置を構成する。燃料供給管41は、燃料ポンプ40からの高圧燃料を燃料噴射ノズル42へ供給する管路であり、底部13bとヘッドカバー12の間を通ってシリンダヘッド11の後部までの間を湾曲して比較的短く配管され、燃料の圧力損失を少なくし、重量軽減に貢献している。
スロットルボディ18は、シリンダヘッド11に設けられた斜め上がりに上方へ延びる吸気通路43へ接続している。燃料噴射ノズル42は、スロットルボディ18の側面に設けられたソケットへ斜めに挿入され、先端の噴射口を吸気通路43内に臨ませ、燃料を吸気通路43内へ噴射する。また、燃料噴射ノズル42には、電線コネクタ44を介して制御用電線48の一端が接続されている。
【0020】
ヘッドカバー12の略記した点火プラグ46には、点火用高圧電線であるハイテンションコード47の一端が接続されて点火用高電圧が印加される。また、燃料ポンプ40には、駆動電力を供給するための駆動用電線45が接続されている。これらの電線45、47、48の各他端は、電装品ケース35に設けたコンデンサ50へ接続されている。電装品ケース35には、電装品としてコンデンサ50と別に、レギュレータ51及び転倒スイッチ52が収容されている。
電装品ケース35は、シリンダ8の後方かつクランクケース9の上方となる位置で、かつシリンダ8へ近い位置にて左側面をセンターフレーム4に支持されている。電装品ケース35の右側は前方へ延出するステー53がエンジンハンガ34の先端へ連結して支持されている。また、排気管20は電装品ケース35の側方を通って後方へ長く延出し、マフラー22の後端部は電装品ケース35よりも後方位置にて開口する(図1参照)。このため、電装品ケース35はシリンダ8からの熱や排気熱が電装品に対して効果的に遮断されるようになっている。
【0021】
つぎに、タンク本体13aの樹脂成形手順を説明する。
図5は、樹脂パリソンを成形する多層設備射出機構、図6は、ブロー成形の工程を示す。タンク本体13aは、4種6層(2層の接着層を含む。)の多層成形からなる樹脂パリソンを成形し、該パリソンを金型に移してブロー成形により製造される。
【0022】
図5Aにおいて、多層設備射出機構は、本体95に6つの注入器101〜106を接続して備える。注入器101は、パリソン100の最外層となるカーボンブラック入りHDPE(高密度ポリエチレン)を注入し、注入器103は、カーボンブラック入りHDPEの内側層となるバリ再生材(粉砕材)を注入し、注入器104は、パリソンの最内層となるHDPE(高密度ポリエチレン)を注入し、注入器106は、パリソンの中間の層となるための燃料の透過を抑制するEVOH(エチレンビニルアルコール)を注入し、注入器102,105は、接着剤を注入する。バリ再生材(粉砕材)は廃材であり、この廃材層は、外層の生成段階で生じる歩留まりを細かく粉砕して構成される。この廃材層には、EVOHが含まれるが、そのカスの直径が大きいと、外層が壊れ易くなる。そのため、本構成では、EVOHの凝集体全長を1000μm以下に管理している。
【0023】
本体95の内側には、各樹脂を連続押し出し可能に注入溝(図示せず)が設けられ、各樹脂の混合比率を決定し、注入器101〜106を動作し、樹脂を連続的に押し出しすると、図5Bに示す多層構造の樹脂パリソン100が成形される。図5Bにおいて、最外層S1は、例えば厚さが0.25mm以上のカーボンブラック入りHDPE(高密度ポリエチレン)、その内側の層S2は、厚さが1.0mm以上のバリ再生材(粉砕材)、層S3は、厚さが45μm以上の接着剤、中間の層S4は、厚さが70μm以上のEVOH(エチレンビニルアルコール)、層S5は、厚さが45μm以上の接着剤、最内層S6は、厚さが0.9mm以上のHDPE(高密度ポリエチレン)である。
【0024】
タンク本体13aは、樹脂パリソン100を、図6A〜図6Fに示すように、金型108,109に移してブロー成形により製造される。
予備金型108には、図6Aにおいて、タンク本体13aの上部に溶着するインサート部80と、タンク本体13aの底部13bにインサート成形するインサート成形体(図示せず)とが予め一体に組み付けられる。この金型108に、上述したパリソン100が入れられ(図6A)、パリソン100の内側がプリブロー(図6B)され、及び減圧(図6C)されることで、図6Dに示すように、パリソン100Aの肉厚が決められる。この段階で、インサート部80と、インサート成形体とが一体化される。つぎに、この一体化されたパリソン100Aが、金型109に入れられ(図6E)、この工程では、2箇所にノズル111,112が装着される。
【0025】
そして、所定のエアー温度、ブロー時間を管理しつつ、一方のノズル111を通じてエアーブローし、時間をずらして、他方のノズル112を通じて排気することで、ブロー成形を実行した後、最終原型となったタンク本体13aが、金型109から排出される(図6F)。ノズル111,112は、インサート部80の開口と、インサート成形体73の近傍の開口を通じて装着すればよい。
【0026】
本実施の形態では、図6Eに示すブロー成形の段階において、外方に膨らむ力により、図4に示すように、タンク本体13aの外層13cが、インサート部80の取付け部80bの外周取付け面80dに密着し、取付け部80bの端部80eの上に重なるように密着して、取付け部80bよりも外方かつ上方に張り出すように形成されている。即ち、図6Eの段階で使用する金型109が、外層13cを、取付け部80bよりも外方かつ上方に張り出して、上記の成形状態に成形するように設計されている。この場合、インサート部80の取付け部80bよりも外側に張り出した位置でのタンク本体13aの張り出し内面13fが、取付け部80bの外周取付け面80dよりも外側に位置している。また、タンク本体13aの張り出し内面13fに連なって、取付け部80bの外周取付け面80dに対向して延在するタンク本体13aの対向内面13gが、タンク本体13aの外側に向けて取付け部80bの外周取付け面80dから離れるように傾斜している。
【0027】
上述したように、タンク本体13aの外層13cに、インサート部80の取付け部80bを溶着した場合には、該取付け部80bにおいて、溶着後に外層13cに収縮が発生し、該取付け部80bの外周取付け面80dと外層13cとの間に微少な隙間、即ちノッチが発生する可能性があり、特に、外部から車両に対し大きな力が印加された場合に、その影響がタンク本体13aに及ぶことが懸念される。
本構成では、図4に示すように、タンク本体13aの外層13cが、インサート部80の取付け部80bの外周取付け面80dに密着し、取付け部80bの端部80eの上に重なるように密着して、取付け部80bよりも外方かつ上方に張り出すように形成されているため、外層13cの形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部80の取付け部80bの外周取付け面80dおよび端部80eと外層13cとの間が密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
【0028】
また、インサート部80の取付け部80bよりも外側に張り出した位置でのタンク本体13aの張り出し内面13fが、取付け部80bの外周取付け面80dよりも外側に位置しているため、外層13cの形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部80の取付け部80bの外周取付け面80dおよび端部80eと外層13cとの間が密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
さらに、タンク本体13aの張り出し内面13fに連なって、取付け部80bの外周取付け面80dに対向して延在するタンク本体13aの対向内面13gが、タンク本体13aの外側に向けて取付け部80bの外周取付け面80dから離れるように傾斜しているため、外層13cの形成過程において、外方に膨らむ力によりインサート部80の取付け部80bの外周取付け面80dおよび端部80eと外層13cとの間が密着されるので、該部分におけるノッチの発生を抑えることができる。
【0029】
また、上述したインサート部80は予め射出成形により形成し、このインサート部80を、図6Aにおいて、予備金型108に予め一体に組み付けるだけで、タンク本体13aをブロー成形すると共に、ブロー成形の際に、インサート部80をタンク本体13aに同時に取付け可能としたため、車両における耐燃料透過性樹脂材料製の燃料タンク13の製造方法を簡素化できる。
【0030】
図7A〜図7Dは、ノッチの発生を抑制する形態の例示である。
図7Aでは、取付け部80bと外層13間を斜めに裁断して、この外層13の収縮時に、外層13が取付け部80bを押し付けるようにした。図7Bでは、取付け部80bと外層13間を縦に裁断し、ノッチ部分13nに樹脂を充填して埋めた。また、図7Cでは、取付け部80bと外層13間を縦に裁断し、ノッチ部分13nを潰した。さらに、図7Dでは、取付け部80bと外層13間を縦に裁断し、ノッチ部分13nを加工により落とした。
【0031】
以上、タンク本体13aをブロー成形した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば回転成形により成形してもよい。この場合、金型に予めインサート成形体73及びインサート部80を装着しておき、後に、粉末の状態で提供される樹脂材料を金型に入れて回転成形を行い、タンク本体13aの成形と同時にインサート成形体73及びインサート部80をタンク本体13aにインサート成形する。ここで、回転成形とは、熱可塑性の粉末樹脂を金型内に入れ、この金型を加熱炉内にて例えば360℃に加熱して、2軸方向に対して回転させながら樹脂を溶融させた後に、内部を冷却固化させて成形品を成形する成形技術を言う。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動2輪車の側面図である。
【図2】エンジンおよび燃料供給系部分の拡大側面図である。
【図3】燃料タンクの一部を切り欠いて示す側面図である。
【図4】インサート部の拡大断面図である。
【図5】Aは、多層設備射出機構を示す図、Bは断面構造を示す図である。
【図6】A〜Fは、ブロー成形の工程を示す図である。
【図7】A〜Dは、別の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 車体フレーム
7 エンジン
13 燃料タンク
13a タンク本体
13c 外層
13f タンクキャップ
80 インサート部
80a 開口
80b 取付け部
80c 底部取付け面
80d 外周取付け面
80e 端部
90 窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐燃料透過性を有する樹脂材料で形成されたタンク本体と、前記タンク本体とは別体に樹脂材料で形成され、前記タンク本体への取付け部及び燃料の注入用開口を有するインサート部とを備え、前記インサート部を前記タンク本体の外層に溶着により取り付けた車両における樹脂製燃料タンク構造において、
前記タンク本体の外層が、前記インサート部の前記取付け部の端部において密着するとともに、前記取付け部よりも外方かつ上方に張り出すように形成されたことを特徴とする車両における樹脂製燃料タンク構造。
【請求項2】
前記タンク本体の外層が、前記取付け部の端部の上に密着することを特徴とする請求項1に記載の車両における樹脂製燃料タンク構造。
【請求項3】
前記インサート部は予め射出成形により形成されており、前記タンク本体はブロー成形されると共に、前記ブロー成形の際に前記インサート部が前記タンク本体に同時に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の車両における樹脂製燃料タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234403(P2009−234403A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82457(P2008−82457)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】