説明

車両のカウル構造

【課題】カウルに上方から衝撃力が作用した場合には仕切部材が容易に変形し、且つ、通常の使用状態では仕切部材の支持剛性を確保する。
【解決手段】カウル空間25内に設けた遮蔽板40の下側固定部40Bはカウルロア16の下壁部16Aに車体上下方向から固定されている。また、遮蔽板40の上側固定部40Eは補強ブラケット26のフランジ26Fに取付クリップ50によって車幅方向から固定されている。さらに、遮蔽板40の上下方向中間部に脆弱部40Aが形成されていると共に、遮蔽板40の上側固定部40Eと下側固定部40Bとが脆弱部40Aの下方側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のカウル構造では、箱形断面のカウルの車幅方向中間部に仕切り板を設け、この仕切り板によってカウル空間を車幅方向に沿って車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両のカウル構造では、仕切り板の車幅方向一側にエアコンの外気導入ダクトが設けられ、仕切壁の車幅方向他側にはエンジンルームから排出される熱風が導入されるようになっている。これにより、エンジンルームから排出される熱風がエアコンの外気導入ダクトへ侵入するのを防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−69858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カウルに上方から衝撃力が作用した場合に、カウルの上壁を変形させることで、衝突体が受ける衝撃力を吸収することができる。このため、上記構成のような車両のカウル構造では、カウル空間に設けた仕切部材(仕切り板)が上壁の変形に大きな抵抗力を付与しないようにする必要がある。その反面、仕切部材の通常の使用状態での支持剛性も確保する必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、カウルに上方から衝撃力が作用した場合には、仕切部材が容易に変形し、且つ、通常の使用状態では仕切部材の支持剛性を確保することができる車両のカウル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両のカウル構造は、フロントガラスの下側に車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に沿って延在し車体上方側が開放されたカウル空間を形成すると共に上壁部が前記フロントガラスを下方側から支持するカウル本体と、前記カウル空間内に車体上下方向に沿って配設されて該配設位置に前記カウル本体とで閉断面を形成すると共に、前記カウル本体の上壁部を下方側から支持し前記フロントガラスの支持剛性を向上するための補強部材と、前記カウル空間内に車体前後方向に沿って設けられ、前記カウル空間を車幅方向に仕切ると共に、上下方向中間部に車体前後方向に延びる一又は二以上の折れ部からなる脆弱部が形成され、該脆弱部の下方側の部位が前記補強部材に車幅方向から固定され且つ前記カウル本体に車体上下方向から固定された仕切部材と、を有する
【0008】
請求項1に記載の車両のカウル構造では、フロントガラスの下側に車幅方向に沿って設けられたカウル本体によって形成され車幅方向に沿って延在し車体上方側が開放されたたカウル空間内に、仕切部材が車体前後方向に沿って配設され、該配設位置にカウル本体とで閉断面を形成すると共に、カウル本体の上壁部を下方側から支持する補強部材が車体上下方向に沿って設けられている。仕切り部材は、カウル空間を車幅方向に仕切ると共に、上下方向中間部に設けた車体前後方向に延びる一又は二以上の折れ部からなる脆弱部の下方側の部位が、補強部材に車幅方向から固定され且つカウル本体に車体上下方向から固定されている。このため、仕切部材をカウル本体に車体上下方向からのみ固定する構成に比べて、仕切壁の支持剛性が向上する。また、カウルに上方から衝撃力が作用した場合には、仕切部材における補強部材とカウル本体との結合より上方側に設けた脆弱部が容易に変形する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る車両のカウル構造では、カウルに上方から衝撃力が作用した場合には、仕切部材が容易に変形し、且つ、通常の使用状態では仕切部材の支持剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造を示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造の要部を示す車体斜め外側前方から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造の要部を示す車体斜め外側前方から見た分解斜視図である。
【図4】図1の4−4断面線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造の変形状態を示す図4に対応する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造が適用されて構成された自動車の部分的な構成を示す車体斜め外側前方から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
【0012】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る車両のカウル構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印UPは車体上方方向を示し、矢印FRは車体前方方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0013】
図6に示すように、本実施形態に係る車両(自動車)では、フロントガラス(フロントウインドシールドガラス)10とエンジンフード12との間に設けられたカウル本体14を有しており、カウル本体14は、フロントガラス10の前端縁部10Aの下側に車幅方向に沿って配置されている。
【0014】
図1に示すように、カウル本体14はカウルロア16、カウルインナ22、カウルアウタ24を有しており、カウルロア16は車体のエンジンルーム18と車室20とを仕切るダッシュパネル(図示省略)の上端部に連結されている。また、カウルロア16の下壁部16Aの後端部には、車体斜め上側後方に向かってフランジ16Bが形成されており、このフランジ16Bは、カウルインナ22の縦壁部22Aの下部22Bの前面に結合されている。また、カウルインナ22の縦壁部22Aは車体斜め上側後方に向かって延設されており、上端部には、車体斜め上側後方に向かって屈曲したフランジ22Cが形成されている。
【0015】
カウルインナ22のフランジ22Cの上面には、カウルアウタ24の後端部に形成されたフランジ24Aが結合されている。また、カウルアウタ24の車幅方向から見た断面形状は、開口部を車体下側後方へ向けた断面ハット形状とされており、上壁部24Bがフロントガラス10の前端縁部10Aを車体下方側から支持している。即ち、カウルアウタ24の上壁部24Bの上面にフロントガラス10の前端縁部10Aが接着剤23によって固定されている。
【0016】
なお、カウルアウタ24の上壁部24Bの前端からは車体下方へ向かって前壁部24Cが形成されており、前壁部24Cの下端からは車体斜め下側前方に向かってフランジ24Dが形成されている。一方、カウルアウタ24の上壁部24Bの後端からは車体斜め下側後方へ向かって後壁部24Eが形成されており、フランジ24Aは後壁部24Eの下端からは車体斜め上側後方に向かって延びている。
【0017】
図6に示すように、カウルロア16、カウルインナ22及びカウルアウタ24で構成されるカウル本体14によって、車幅方向に沿って延在し車体上方側が開放されたカウル空間25が形成されている。また、このカウル空間25の上方はカウルルーバ23で覆われている。
【0018】
また、カウル空間25の内部における、カウルアウタ24の前壁部24Cに形成された外気導入口30の車幅方向両外側近傍には、それぞれ左右一対の補強ブラケット(NVブレースともいう)26が車体上下方向に沿って設けられている。また、これらの補強ブラケット26はそれぞれ長尺状の板材を屈曲した構成となっている。
【0019】
図1に示すように、補強ブラケット26の上端部には、車体上側後方に向かって上壁部26Aが形成されており、この上壁部26Aはカウルアウタ24の上壁部24Bの下面に結合されている。また、補強ブラケット26の上壁部26Aの前端からは、車体斜め下側後方に向かって上縦壁部26Bが形成されており、上縦壁部26Bの下端からは、車体後方へ向かって横壁部26Cが形成されている。また、横壁部26Cの後端からは、車体斜め下側前方に向かって下縦壁部26Dが形成されており、下縦壁部26Dはカウルインナ22の縦壁部22Aにおける上下方向中間部22Dの前面に結合されている。
【0020】
従って、補強ブラケット26によってカウルアウタ24の上壁部24Bとカウルインナ22の縦壁部22Aの上下方向中間部22Dとが連結されており、補強ブラケット26はカウルインナ22とカウルアウタ24とで閉断面27を形成している。即ち、補強ブラケット26はカウルアウタ24の上壁部24Bを下方側から支持しており、フロントガラス10の前端縁部10Aの支持剛性を向上させている。
【0021】
図2及び図3に示すように、補強ブラケット26の上縦壁部26B、横壁部26C、下縦壁部26Dにおける車幅方向において外気導入口30と反対側の端部には、車体前方へ向かって補強用のフランジ26Eが形成されている。一方、補強ブラケット26の下縦壁部26Dにおける車幅方向において外気導入口30と同じ側の端部には、車体前方へ向かって固定用のフランジ26Fが形成されている。
【0022】
図3に示すように、補強ブラケット26のフランジ26Fには、取付孔32が形成されている。
【0023】
図6に示すように、カウル空間25の内部には、カウル空間25を車幅方向に仕切る仕切部材としての左右一対の遮蔽板40が車体前後方向に沿って設けられている。左右一対の遮蔽板40は、カウルアウタ24の前壁部24Cに形成された外気導入口30の車幅方向両外側近傍で且つ、左右の補強ブラケット26の内側にそれぞれ配置されている。また、遮蔽板40の周縁部にはシール材42が設けられている。
【0024】
なお、遮蔽板40は樹脂製のダンボール材で構成されており、車体上下方向の反力を生み出すことで、遮蔽板40のシール材42のカウルルーバ23への面圧を確保できるようになっている。
【0025】
図4に示すように、遮蔽板40のシール材42は、カウル空間25の内周面に密着しており、カウル本体14とカウルルーバ23との間に形成されたカウル空間25が、遮蔽板40によって外気用カウル空間25Aと他側カウル空間25Bとに仕切られている。従って、エンジンルームから他側カウル空間25Bに導入される熱風が、外気用カウル空間25A側に設けられた外気導入口30へ侵入することが抑制されるようにしている。
【0026】
また、遮蔽板40の上下方向中間部には、車体前後方向に延びる一又は二以上(本実施形態では5箇所)の折れ部41からなる脆弱部40Aが形成されている。この脆弱部40Aは、車体前後方向から見た断面形状が、三角波形状に屈曲しており、図5に示すように、車体上方側から車体下方側に向かって衝撃力(図1の矢印F1)が作用した場合や、車体斜め上方側から衝撃力(図1の矢印F2、F3)が作用した場合には、遮蔽板40の脆弱部40Aが車体上下方向に容易に座屈変形して、衝突エネルギーを吸収することができるようになっている。
【0027】
図1に示すように、遮蔽板40の下端部における車体前後方向中間部には下側固定部40Bが形成されており、下側固定部40Bの下面からは、下方に向けかって取付クリップ40Cが突出形成されている。この取付クリップ40Cはカウルロア16の下壁部16Aに形成された取付孔46に車体上方(図1の矢印A方向)から挿入されており、遮蔽板40の下側固定部40Bはカウルロア16の下壁部16Aに取付クリップ40Cによって車体上下方向から固定されている。
【0028】
なお、遮蔽板40の下側固定部40Bには、下側固定部40Bの剛性を向上させるために複数の補強リブ40Dが車体上下方向に沿って形成されており、これらの複数の補強リブ40Dは車体前後方向に間隔を取って形成されている。
【0029】
図4に示すように、遮蔽板40の後端部における脆弱部40Aの下方側近傍は、上側固定部40Eとなっており、上側固定部40Eには取付孔48が形成されている。また、遮蔽板40の取付孔48には、補強ブラケット26のフランジ26Fの取付孔32に車幅方向の上側固定部40Eと反対方向(図4の矢印B方向)から挿入された取付クリップ50が挿入されており、遮蔽板40の上側固定部40Eは補強ブラケット26のフランジ26Fに取付クリップ50によって車幅方向から固定されている。
【0030】
従って、遮蔽板40をカウルロア16に車体上下方向から取付クリップ40Cのみで固定する構成に比べて、遮蔽板40の支持剛性が向上するようになっている。
【0031】
次に、本の実施形態の作用について説明する。
【0032】
本実施形態では、カウル空間25の内部に設けられた遮蔽板40の下側固定部40Bがカウルロア16の下壁部16Aに取付クリップ40Cによって車体上下方向から固定されている。さらに、遮蔽板40の取付孔48には、補強ブラケット26のフランジ26Fの取付孔32に車幅方向から挿入された取付クリップ50が挿入されており、遮蔽板40の上側固定部40Eは補強ブラケット26のフランジ26Fに取付クリップ50によって車幅方向から固定されている。
【0033】
このため、遮蔽板40をカウルロア16に車体上下方向から固定するのみの構成に比べて、本実施形態では、遮蔽板40の支持剛性が向上する。この結果、車体への組付状態での遮蔽板40の保持力が向上し、倒れ難くなり、遮蔽板40の倒れに対する信頼性を向上できる。
【0034】
従って、洗車時に遮蔽板40が水圧によって倒れることが無く、左右の遮蔽板40の間にワイパを設けた場合には、洗車時にワイパが被水するのを防止できる。
【0035】
また、本実施形態では、カウル本体14とカウルルーバ23との間に形成されたカウル空間25が、遮蔽板40によって外気用カウル空間25Aと他側カウル空間25Bとに仕切られている。したがって、エンジンルームから他側カウル空間25Bに導入される熱風が、外気用カウル空間25A側に設けられた外気導入口30へ侵入することが抑制される。
【0036】
また、本実施形態では、遮蔽板40を樹脂製のダンボール材で構成し、車体上下方向の反力を生み出すことで、遮蔽板40のシール材42のカウルルーバ23への面圧を確保できる。この結果、シール材42をカウルルーバ23に密着させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、遮蔽板40の上下方向中間部に、車体前後方向に延びる一又は二以上(本実施形態では5箇所)の折れ部からなる脆弱部40Aが形成されていると共に、遮蔽板40の上側固定部40Eと補強ブラケット26のフランジ26Fとの固定部が、衝突体Kの侵入ストロークより外側となる脆弱部40Aの下方側に設けられている。この結果、図5に示すように、衝突体Kが衝突し、車体上方側から車体下方側に向かって衝撃力(図1の矢印F1)が作用した場合や、車体斜め上方側から衝撃力(図1の矢印F2、F3)が作用した場合には、遮蔽板40の脆弱部40Aが車体上下方向に容易に座屈変形して、衝突エネルギーを吸収することができる。このため、歩行者保護性能を損なうことがない。
【0038】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0039】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、遮蔽板40を樹脂製のダンボール材で構成したが、遮蔽板40は樹脂製のダンボール材以外の他の材料で構成してもよい。
【0040】
また、遮蔽板40の取付けは取付クリップ40C、50に限定されず、締結部材等の他の固定部材を使用し、車体下方(図1の矢印Aと反対方向)からや上側固定部40Eと同方向(図4の矢印B方向と反対方向)から固定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
14 カウル本体
16 カウルロア
22 カウルインナ
24 カウルアウタ
25 カウル空間
26 補強ブラケット
27 閉断面
30 外気導入口
32 取付孔
40 遮蔽板(仕切部材)
40A 遮蔽板の脆弱部
40B 遮蔽板の下側固定部
40C 遮蔽板の取付クリップ
40E 遮蔽板の上側固定部
41 折れ部
42 シール材
46 カウルロアの取付孔
48 遮蔽板の取付孔
50 取付クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下側に車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に沿って延在し車体上方側が開放されたカウル空間を形成すると共に上壁部が前記フロントガラスを下方側から支持するカウル本体と、
前記カウル空間内に車体上下方向に沿って配設されて該配設位置に前記カウル本体とで閉断面を形成すると共に、前記カウル本体の上壁部を下方側から支持し前記フロントガラスの支持剛性を向上するための補強部材と、
前記カウル空間内に車体前後方向に沿って設けられ、前記カウル空間を車幅方向に仕切ると共に、上下方向中間部に車体前後方向に延びる一又は二以上の折れ部からなる脆弱部が形成され、該脆弱部の下方側の部位が前記補強部材に車幅方向から固定され且つ前記カウル本体に車体上下方向から固定された仕切部材と、
を有する車両のカウル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−167943(P2010−167943A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13211(P2009−13211)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】