車両のシート駆動装置
【課題】シート本体が空の場合にシート本体の動作時間の短縮を図れるようにして車両用シートの使い勝手を向上させるとともに、不必要な高速化を避けてモータの消費電力の無駄を省けるようにする。
【解決手段】車両のシート駆動装置200は、シート本体10を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置200であって、シート本体10の着座者の有無を検出する着座センサ80を備えており、着座センサ80により着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、着座センサ80により着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されている。
【解決手段】車両のシート駆動装置200は、シート本体10を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置200であって、シート本体10の着座者の有無を検出する着座センサ80を備えており、着座センサ80により着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、着座センサ80により着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身障者等が車両への乗降を行なう際に使用されるシートを車室内の所定位置と乗降位置間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するシート駆動装置が特許文献1に記載されている。
このシート駆動装置100は、図11に示すように、助手席として使用されるシート本体102を車室内の所定位置Iから乗降口104側に約90°左回動させ、その乗降口104から車室外の乗降位置IIまで移動させられるように構成されている。
さらに、シート本体102には、着座者の有無を検出する着座センサ(図示省略)が設けられている。そして、着座センサにより着座者が検出されない場合、即ち、シート本体102に人が着座していない場合(空の場合)には、人が着座している場合よりもシート本体102の移動速度を高速にできるように構成されている。このため、例えば、高齢者を車両に乗車させる際、車室内のシート本体102を車室外の乗降位置IIまで移動させる時間を短縮できるようになり、使い勝手が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したシート駆動装置100では、シート本体102が空の場合と、シート本体102に人が着座している場合とで、シート駆動装置100の個々の動作は同じで、移動速度のみが異なっている。しかし、シート本体102が空の場合には、例えば、着座者と乗降口周縁との干渉を考慮する必要がないため、人が着座している場合のようにシート本体102を動作させなくても良い場合がある。このため、シート本体102が空の場合にシート駆動装置の全ての動作を高速にする方式では、駆動源であるモータに負担が掛かり、消費電力の無駄が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート本体が空の場合にシート本体の動作時間の短縮を図れるようにして車両用シートの使い勝手を向上させるとともに、不必要な高速化を避けてモータの消費電力の無駄を省けるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シート本体を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置であって、前記シート本体の着座者の有無を検出する着座センサを備えており、前記着座センサにより着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、着座センサにより着座者が検出されない場合、即ち、シート本体が空の場合におけるシート駆動装置の駆動動作は、前記シート本体に人が着座している場合の前記シート駆動装置の駆動動作に対し、一部の駆動動作が省略されている。
このため、シート本体が空の場合には、シート本体に人が着座している場合と比べて、シート本体を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させる際の動作時間を短縮できるようになる。したがって、車両用シートの使い勝手が向上する。
また、シート駆動装置の一部の駆動動作を省略することでシート駆動装置の動作時間を短縮する構成のため、モータの消費電力を低減することができる。
ここで、「一部の駆動動作を省略する」とは、複数の駆動動作のうち一部の駆動動作を省略する場合だけでなく、同じ駆動動作の駆動距離を短縮する場合等も含むものとする。
また、「シート本体」には、車両用シートのシート本体のみならず、車椅子等も含むものとする。
【0008】
請求項2の発明によると、車室内で前記シート本体を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構と、前記シート本体を車両前向き位置と車両横向き位置間で水平回転させる回転機構とを有しており、前記着座センサにより着座者が検出されない場合の前記シート本体の原点位置と、前記着座センサにより着座者が検出された場合の前記シート本体の原点位置とが車両前後方向にずれており、前記着座者が検出されない場合の前記シート本体の前後スライド量は、前記着座者が検出された場合の前後スライド量よりも小さく設定されていることを特徴とする。
このため、シート本体が空の場合のスライド時間を短縮できるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【0009】
請求項3の発明によると、着座センサにより着座者が検出されない場合における回転機構のシート本体回転速度は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における前記回転機構のシート本体回転速度よりも大きく設定されていることを特徴とする。
このため、シート本体が空の場合のシート本体回転時間を短縮できるようになる。ここで、シート本体が空の場合も人が着座している場合もシート本体の回転角度は等しいため、シート本体が空の場合にシート本体回転速度を大きく設定しても電力の無駄は生じない。
【0010】
請求項4の発明によると、シート本体のシートクッションに対するシートバックの傾斜角度を調整可能なリクライニング機構を有しており、着座センサにより着座者が検出された場合には、前記シート本体の移動途中で前記リクライニング機構が動作し、前記着座センサにより着座者が検出されない場合には、前記リクライニング機構の動作が省略されることを特徴とする。
このように、シート本体が空の場合にはリクライニング機構の動作が省略されるため、リクライニング機構の動作省略分だけシート駆動装置の動作時間が短縮されるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、シート本体が空の場合には、シート本体の動作時間を短縮できるため、車両用シートの使い勝手を向上させることができる。さらに、駆動源であるモータの消費電力の無駄を省けるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用シートを車両の斜め後方から見た模式斜視図である。
【図2】前記車両用シートのシート駆動装置におけるリクライニング機構を表す模式側面図である。
【図3】前記車両用シートのシート駆動装置をシートの後方から見た模式図である。
【図4】前記車両用シートのシート駆動装置の前後スライド機構、回転機構、及び回転ベース等を表す斜視図である。
【図5】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図6】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図7】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図8】前記車両用シートの移動動作を表す模式平面図である(A図、B図、C図、D図、E図)。
【図9】前記車両用シートにおいてシート本体に人が着座している場合のシート駆動装置の動作を表すタイムチャートである。
【図10】前記車両用シートにおいてシート本体が空の場合のシート駆動装置の動作を表すタイムチャートである。
【図11】従来の車両用シートの移動動作を表す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1〜図10に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両のシート駆動装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両のシート駆動装置は、高齢者や身障者等が車両への乗降を行なう際に使用される車両用シートのシート駆動装置である。
ここで、図中の前後左右及び上下は、車両の前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車両用シートSの概要について>
車両用シートSは、図1等に示すように、車両Cの助手席として使用されるシートであり、シート本体10と、そのシート本体10を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させ、さらに移動途中でシート本体10のリクライニング動作を行なうシート駆動装置200とから構成されている。
シート駆動装置200は、図3等の模式図に示すように、車両フロアF上に設置された前後スライド機構20と、その前後スライド機構20の前後スライドベース21上に設置された回転機構30と、その回転機構30の回転ベース35上に設置された昇降機構50、及び外内スライド機構70とを備えており、前記外内スライド機構70上にシート本体10が設置されている。
また、シート駆動装置200は、図2に示すように、シート本体10に設けられたリクライニング機構90を備えている。
【0015】
<前後スライド機構20について>
シート駆動装置200の前後スライド機構20は、車室内でシート本体10を車両前後方向に移動させる機構である。前後スライド機構20は、図3、図4に示すように、車両フロアFの固定ベース23上で車両前後方向に延びるように設置された左右一対の固定側レール22と、それらの固定側レール22に前後スライド可能な状態で支持される前後スライドベース21と、前後スライド機構20の駆動部24(図3参照)とから構成されている。前記駆動部24は、固定ベース23上に設置された駆動モータ24aと、その駆動モータ24aにより回転させられるネジ軸24bと、前後スライドベース21の下面に固定されたナット部24cとを備えている。そして、駆動部24のネジ軸24bとナット部24cとの螺合作用により前後スライドベース21が前後スライドするように構成されている。
【0016】
<回転機構30について>
前後スライドベース21上には、図3、図4に示すように、回転機構30が設置されている。回転機構30は、シート本体10を車両前向きの着座位置と乗降口D側を向いた横向き位置との間で約100°水平回転させる機構である。
回転機構30は、図3等に示すように、前後スライドベース21上に固定された内輪31aと、内輪31aに対して回転可能に支持された外輪31bと、外輪31b上に固定された回転ベース35と、前記内輪31aに対して外輪31bを回転させる駆動部32(図3参照、図4では省略)とから構成されている。駆動部32は、前後スライドベース21の上面に設置された回転モータ32mと歯車伝達機構32aとを備えている。そして、回転モータ32mの回転出力が歯車伝達機構32aを介して外輪31bに伝達され、これにより回転ベース35が前後スライドベース21に対して水平に回転するようになる。
【0017】
<昇降機構50について>
回転ベース35上には、昇降機構50が設置されている。昇降機構50は、図4〜図7に示すように、車室外でシート本体10を昇降させる機構であり、水平方向の駆動源となる横スライド機構40(図4、図7参照)と、横スライド機構40のスライド動作を受けて上下方向に回動する四節リンク機構51(図7等参照)と、四節リンク機構51をガイドする昇降ガイド部材57(図4参照)と、四節リンク機構51により昇降させられる昇降ベース55(図7等参照)とを有している。そして、前記昇降ベース55上に外内スライド機構70(後記する)を介してシート本体10が設置されている。
横スライド機構40は、図3、図4に示すように、回転ベース35の左右両端縁に沿って平行に取付けられた一対のガイドレール41と、ガイドレール41に沿って摺動する摺動子42と、前記摺動子42に載置される横スライドベース44と、横スライドベース44をガイドレール41に沿ってスライドさせる駆動部45(図3参照、図4では省略)とを備えている。駆動部45は、図3に示すように、回転ベース35上でスライド方向に沿って配置されたネジ軸45bと、そのネジ軸45bを回転させる駆動モータ45aと、横スライドベース44の下面に固定されて前記ネジ軸45bと螺合しているナット45cとから構成されている。
【0018】
横スライドベース44には、図5等に示すように、左右一対の四節リンク機構51の基端部が上下回動可能な状態で連結されている。四節リンク機構51は、昇降ベース55を水平な状態で昇降させる機構であり、内側リンクアーム53と外側リンクアーム52とを備えている。そして、両リンクアーム52,53の基端部がそれぞれ横スライド機構40の横スライドベース44の側部に支軸(図示省略)を介して上下回動可能に支持されている。また、両リンクアーム52,53の先端側には、昇降ベース55の側壁部が支軸を介してそれぞれ上下回動可能な状態で連結されている。
また、回転ベース35には、図4に示すように、左右のガイドレール41の外側位置に四節リンク機構51の左右の外側リンクアーム52を下方から支持する昇降ガイド部材57が設けられている。昇降ガイド部材57は、四節リンク機構51が横スライドベース44と共に前進、あるいは後退する動作を、その四節リンク機構51の下方への回動動作、あるいは上方への回動動作に変換できるように構成されている。なお、図5〜図7では、昇降ガイド部材57は省略されている。
【0019】
<外内スライド機構70について>
昇降機構50の昇降ベース55上には、図6、図7等に示すように、その昇降ベース55に対してシート本体10を前進、あるいは後退させる外内スライド機構70が設けられている。外内スライド機構70は、図3に示すように、シート本体10を支持するシート用ベース75と、そのシート用ベース75の下面側に固定された左右一対のガイドレール74aと、昇降ベース55上で前記ガイドレール74aを摺動可能に支持する摺動子74bと、外内スライド機構70の駆動源である駆動部76とを備えている。
駆動部76は、シート用ベース75の下面でガイドレール74aと平行に設けられたラック73と、昇降ベース55上でラック73と噛合するように設けられたピニオン72と、そのピニオン72を回転させる駆動モータ71とを備えている。
【0020】
<シート本体10とリクライニング機構90について>
シート本体10は、図1等に示すように、シートクッション11とシートバック12とを備えており、そのシートクッション11のフレームが外内スライド機構70のシート用ベース75と連結されている(図3等参照)。
シート本体10のシートクッション11には、図1等に示すように、シート本体10に人が着座したときの体重を受けて着座者の有無を検出する着座センサ80が設けられている。
また、シート本体10には、図1、図2に示すように、シートクッション11に対するシートバック12の傾きを調整するリクライニング機構90が設けられている。リクライニング機構90は、図2に示すように、シートバック12のフレーム側に設けられた外歯ギヤ92と、シートクッション11のフレーム側に前記外歯ギヤ92を囲むように設けられて、その外歯ギヤ92と噛合する内歯ギヤ94と、外歯ギヤ92を回転させるリクタイニングモータ(図示省略)と、リクライニング原点を検出するリミットスイッチ96とから構成されている。
さらに、シート本体10には、そのシート本体10の降車動作を行なうための降車スイッチ(図示省略)と、前記シート本体10の乗車動作を行なうための乗車スイッチ(図示省略)とが設けられている。
ここで、前記乗車スイッチ、降車スイッチ、及び着座センサ80の電気信号は、車両の制御装置(ECU)に入力されるようになっており、前記ECUは前記電気信号等に基づいて車両用シートSを構成する前後スライド機構20、回転機構30、昇降機構50、外内スライド機構70、及びリクライニング機構90を動作させる。
【0021】
<車両用シートSの動作について>
先ず、人がシート本体10に着座している場合の車両用シートSの動作について、図8、図9に基づいて説明する。
人がシート本体10に着座している場合には、着座センサ80がオンしており、そのオン信号が前記ECUに入力されている。
着座センサ80がオンしている状態では車室内のシート本体10は後部原点位置に保持されている(図8(A)、図9のタイミングI参照)。この状態からシート本体10を車室外の乗降位置まで移動させるには、車両CのドアDrを開放した後、降車スイッチを操作する。
これにより、前記ECUから回転信号が出力され、回転機構30がシート本体10を左回転させる方向に動作する。そして、シート本体10が一定角度左回転した状態で(図8(B)、図9のタイミングII参照)、前記ECUから前方スライド信号が出力される。これにより、回転機構30の動作が継続している状態で、前後スライド機構20が前後スライドベース21を前方にスライドさせる方向に動作する。即ち、シート本体10は、前記後部原点位置から前方に移動しつつ、左回転するようになる(回転スライド)。これにより、図8(C)の二点鎖線に示すように、シート本体10と車両CのセンターピラーPとの干渉が回避されるようになる。
【0022】
シート本体10の回転スライドが開始されると、図9に示すように、前記ECUからリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度後方に倒す方向に動作する。これにより、着座者の頭部と車両天井部との干渉を回避することができる。さらに、シート本体10の回転スライド中に、前記ECUから昇降機構50の横スライド機構40に対して前進信号(下降信号)が一定時間出力され、横スライドベース44が一定量前進することでシート本体10のスライドロックが解除される。
このようにして、図5に示すように、シート本体10が約90°回転して乗降口D側を向くと、回転スライド中に前記ECUから外内スライド機構70に対して外スライド信号が出力される(図9のタイミングIII参照)。これにより、外内スライド機構70が動作して、図6に示すように、シート本体10が昇降機構50の昇降ベース55に対して前進するようになる。即ち、シート本体10が乗降口Dから車室外に振出されるようになる(外スライド)。そして、前記外スライドが開始された後、回転機構30と前後スライド機構20が停止して回転スライドが完了する(図8(C)参照)。この状態で、シート本体10は車両前向き位置から約100°回転するようになる。さらに、回転スライドが完了後に、図9に示すように、ECUから再びリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度倒す方向に動作する。
【0023】
次に、外スライド中に、ECUから昇降機構50の横スライド機構40に対して前進信号(下降信号)が出力される(図9のタイミングIV参照)。これにより、横スライド機構40の横スライドベース44が四節リンク機構51を前進させる。この結果、図7に示すように、四節リンク機構51が昇降ガイド部材57の働きで下方に回動し、昇降ベース55と共にシート本体10が前進しつつ水平に下降するようになる(図8(D)参照)。
さらに、シート本体10の下降過程で、ECUからリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度起立させる方向に動作する。そして、シート本体10が乗降位置に到達した段階で昇降機構50が停止し(図8(E)、図9のタイミングV)、リクライニング機構90が再びシート本体10のシートバック12を元の位置まで起立させて車両用シートS(シート駆動装置200)の一連の動作が終了する。
なお、乗降位置から人が着座したシート本体10を車室内まで移動させる場合には、乗車スイッチを操作することで、上記した場合と逆の動作で車両用シートSが動作するようになる。
【0024】
次に、人がシート本体10に着座していない場合(空の場合)の車両用シートSの動作について、図10等に基づいて説明する。
人がシート本体10に着座していない場合(空の場合)には、着座センサ80がオフであり、そのオフ信号が前記ECUに入力されている。
着座センサ80がオフ状態では車室内のシート本体10は前部原点位置に保持されている。即ち、空の状態のシート本体10は、人が着座している場合(後部原点位置)よりも一定距離だけ前に位置している。この状態で、車両CのドアDrを開放した後、降車スイッチを操作すると、図10に示すように、回転機構30と前後スライド機構20とが同時に動作して、シート本体10は前部原点位置から前方に移動しつつ、左回転するようになる(回転スライド)。
ここで、空の状態のシート本体10は前部原点位置から前進を開始しているため、人が着座している場合と比べて前後スライド機構20の動作時間は短くなる。このため、前後スライド機構20と同時に動作する回転機構30の動作時間も短くなる。しかし、シート本体10の回転角度は空の場合も人が着座している場合も同じであるため、シート本体10が空の場合には回転機構30の回転速度は高速になる。
【0025】
さらに、シート本体10が空の場合には、着座者の頭部と車両天井部との干渉を配慮する必要がないため、リクライニング機構90の動作は行われない。
次に、シート本体10の回転スライド中に、図10に示すように、シート本体10のスライドロックが解除される。そして、図5等に示すように、シート本体10が約90°回転して乗降口D側を向くと、回転スライド中に外内スライド機構70が動作し、図6、図8(D)に示すように、シート本体10が乗降口Dから車室外に振出されるようになる(外スライド)。そして、外スライドの開始後に回転機構30と前後スライド機構20が停止して回転スライドが完了する。
次に、外スライド中に、昇降機構50の動作が開始され、横スライド機構40、四節リンク機構51の働きでシート本体10が前進しつつ、下降するようになる。そして、シート本体10が乗降位置に到達した段階で昇降機構50が停止し、車両用シートS(シート駆動装置200)の一連の動作が終了する。
なお、乗降位置から空の状態のシート本体10を車室内まで移動させる場合には、乗車スイッチを操作することで、上記した場合と逆の動作で車両用シートSが動作するようになる。
【0026】
<本実施形態に係るシート駆動装置200の長所について>
本発明によると、シート本体10が空の場合におけるシート駆動装置200の駆動動作は、シート本体10に人が着座している場合のシート駆動装置200の駆動動作に対し、一部の駆動動作が省略されている。
このため、シート本体10が空の場合には、シート本体10に人が着座している場合と比べて、シート本体10を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させる際の動作時間を短縮できるようになる。したがって、車両用シートの使い勝手が向上する。
また、シート駆動装置200の一部の駆動動作を省略することでシート駆動装置の動作時間を短縮する構成のため、モータの消費電力を低減させることができる。
【0027】
また、空の状態におけるシート本体10の原点位置(前部原点位置)と、人が着座している場合のシート本体10の原点位置(後部原点位置)とが車両前後方向にずれており、空の状態におけるシート本体10の前後スライド量は、人が着座している場合のシート本体10の前後スライド量よりも小さく設定されている。このため、シート本体10が空の場合のスライド時間を短縮できるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
また、シート本体10が空の場合における回転機構30の回転速度は、シート本体10に人が着座している場合における回転機構30の回転速度よりも大きく設定されている。このため、シート本体10が空の場合のシート本体回転時間を短縮できるようになる。
さらに、シート本体10が空の場合にはリクライニング機構90の動作が省略されるため、リクライニング機構90の動作省略分だけシート駆動装置200の動作時間が短縮されるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、前後スライド機構20と、回転機構30と、昇降機構50と、外内スライド機構70と、リクライニング機構90とを備えるシート駆動装置200を例示した。しかし、例えば、昇降機構50、あるいはリクライニング機構90を有しないシート駆動装置200で乗降位置が車室内にあるシート駆動装置200に本発明を適用することも可能である。
また、前後スライド機構20と、回転機構30と、シート本体10を前傾、あるいは後傾させるチルト機構等を備える車両用シートに本発明を適用することも可能である。
また、本実施形態では、車両用シートSを車両の助手席として使用する例を示したが、例えば、運転席として使用することも可能である。
さらに、本実施形態では、車両用シートSに本発明に係るシート駆動装置200を適用する例を示したが、例えば、ワンボックス車の後部開口から車椅子(シート本体)を乗降させる車椅子リフター(シート駆動装置)に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・・シート本体
20・・・・前後スライド機構
30・・・・回転機構
80・・・・着座センサ
90・・・・リクライニング機構
200・・・シート駆動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身障者等が車両への乗降を行なう際に使用されるシートを車室内の所定位置と乗降位置間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するシート駆動装置が特許文献1に記載されている。
このシート駆動装置100は、図11に示すように、助手席として使用されるシート本体102を車室内の所定位置Iから乗降口104側に約90°左回動させ、その乗降口104から車室外の乗降位置IIまで移動させられるように構成されている。
さらに、シート本体102には、着座者の有無を検出する着座センサ(図示省略)が設けられている。そして、着座センサにより着座者が検出されない場合、即ち、シート本体102に人が着座していない場合(空の場合)には、人が着座している場合よりもシート本体102の移動速度を高速にできるように構成されている。このため、例えば、高齢者を車両に乗車させる際、車室内のシート本体102を車室外の乗降位置IIまで移動させる時間を短縮できるようになり、使い勝手が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したシート駆動装置100では、シート本体102が空の場合と、シート本体102に人が着座している場合とで、シート駆動装置100の個々の動作は同じで、移動速度のみが異なっている。しかし、シート本体102が空の場合には、例えば、着座者と乗降口周縁との干渉を考慮する必要がないため、人が着座している場合のようにシート本体102を動作させなくても良い場合がある。このため、シート本体102が空の場合にシート駆動装置の全ての動作を高速にする方式では、駆動源であるモータに負担が掛かり、消費電力の無駄が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート本体が空の場合にシート本体の動作時間の短縮を図れるようにして車両用シートの使い勝手を向上させるとともに、不必要な高速化を避けてモータの消費電力の無駄を省けるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シート本体を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置であって、前記シート本体の着座者の有無を検出する着座センサを備えており、前記着座センサにより着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、着座センサにより着座者が検出されない場合、即ち、シート本体が空の場合におけるシート駆動装置の駆動動作は、前記シート本体に人が着座している場合の前記シート駆動装置の駆動動作に対し、一部の駆動動作が省略されている。
このため、シート本体が空の場合には、シート本体に人が着座している場合と比べて、シート本体を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させる際の動作時間を短縮できるようになる。したがって、車両用シートの使い勝手が向上する。
また、シート駆動装置の一部の駆動動作を省略することでシート駆動装置の動作時間を短縮する構成のため、モータの消費電力を低減することができる。
ここで、「一部の駆動動作を省略する」とは、複数の駆動動作のうち一部の駆動動作を省略する場合だけでなく、同じ駆動動作の駆動距離を短縮する場合等も含むものとする。
また、「シート本体」には、車両用シートのシート本体のみならず、車椅子等も含むものとする。
【0008】
請求項2の発明によると、車室内で前記シート本体を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構と、前記シート本体を車両前向き位置と車両横向き位置間で水平回転させる回転機構とを有しており、前記着座センサにより着座者が検出されない場合の前記シート本体の原点位置と、前記着座センサにより着座者が検出された場合の前記シート本体の原点位置とが車両前後方向にずれており、前記着座者が検出されない場合の前記シート本体の前後スライド量は、前記着座者が検出された場合の前後スライド量よりも小さく設定されていることを特徴とする。
このため、シート本体が空の場合のスライド時間を短縮できるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【0009】
請求項3の発明によると、着座センサにより着座者が検出されない場合における回転機構のシート本体回転速度は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における前記回転機構のシート本体回転速度よりも大きく設定されていることを特徴とする。
このため、シート本体が空の場合のシート本体回転時間を短縮できるようになる。ここで、シート本体が空の場合も人が着座している場合もシート本体の回転角度は等しいため、シート本体が空の場合にシート本体回転速度を大きく設定しても電力の無駄は生じない。
【0010】
請求項4の発明によると、シート本体のシートクッションに対するシートバックの傾斜角度を調整可能なリクライニング機構を有しており、着座センサにより着座者が検出された場合には、前記シート本体の移動途中で前記リクライニング機構が動作し、前記着座センサにより着座者が検出されない場合には、前記リクライニング機構の動作が省略されることを特徴とする。
このように、シート本体が空の場合にはリクライニング機構の動作が省略されるため、リクライニング機構の動作省略分だけシート駆動装置の動作時間が短縮されるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、シート本体が空の場合には、シート本体の動作時間を短縮できるため、車両用シートの使い勝手を向上させることができる。さらに、駆動源であるモータの消費電力の無駄を省けるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用シートを車両の斜め後方から見た模式斜視図である。
【図2】前記車両用シートのシート駆動装置におけるリクライニング機構を表す模式側面図である。
【図3】前記車両用シートのシート駆動装置をシートの後方から見た模式図である。
【図4】前記車両用シートのシート駆動装置の前後スライド機構、回転機構、及び回転ベース等を表す斜視図である。
【図5】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図6】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図7】前記車両用シートのシート駆動装置の動作を表す模式側面図である。
【図8】前記車両用シートの移動動作を表す模式平面図である(A図、B図、C図、D図、E図)。
【図9】前記車両用シートにおいてシート本体に人が着座している場合のシート駆動装置の動作を表すタイムチャートである。
【図10】前記車両用シートにおいてシート本体が空の場合のシート駆動装置の動作を表すタイムチャートである。
【図11】従来の車両用シートの移動動作を表す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1〜図10に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両のシート駆動装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両のシート駆動装置は、高齢者や身障者等が車両への乗降を行なう際に使用される車両用シートのシート駆動装置である。
ここで、図中の前後左右及び上下は、車両の前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車両用シートSの概要について>
車両用シートSは、図1等に示すように、車両Cの助手席として使用されるシートであり、シート本体10と、そのシート本体10を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させ、さらに移動途中でシート本体10のリクライニング動作を行なうシート駆動装置200とから構成されている。
シート駆動装置200は、図3等の模式図に示すように、車両フロアF上に設置された前後スライド機構20と、その前後スライド機構20の前後スライドベース21上に設置された回転機構30と、その回転機構30の回転ベース35上に設置された昇降機構50、及び外内スライド機構70とを備えており、前記外内スライド機構70上にシート本体10が設置されている。
また、シート駆動装置200は、図2に示すように、シート本体10に設けられたリクライニング機構90を備えている。
【0015】
<前後スライド機構20について>
シート駆動装置200の前後スライド機構20は、車室内でシート本体10を車両前後方向に移動させる機構である。前後スライド機構20は、図3、図4に示すように、車両フロアFの固定ベース23上で車両前後方向に延びるように設置された左右一対の固定側レール22と、それらの固定側レール22に前後スライド可能な状態で支持される前後スライドベース21と、前後スライド機構20の駆動部24(図3参照)とから構成されている。前記駆動部24は、固定ベース23上に設置された駆動モータ24aと、その駆動モータ24aにより回転させられるネジ軸24bと、前後スライドベース21の下面に固定されたナット部24cとを備えている。そして、駆動部24のネジ軸24bとナット部24cとの螺合作用により前後スライドベース21が前後スライドするように構成されている。
【0016】
<回転機構30について>
前後スライドベース21上には、図3、図4に示すように、回転機構30が設置されている。回転機構30は、シート本体10を車両前向きの着座位置と乗降口D側を向いた横向き位置との間で約100°水平回転させる機構である。
回転機構30は、図3等に示すように、前後スライドベース21上に固定された内輪31aと、内輪31aに対して回転可能に支持された外輪31bと、外輪31b上に固定された回転ベース35と、前記内輪31aに対して外輪31bを回転させる駆動部32(図3参照、図4では省略)とから構成されている。駆動部32は、前後スライドベース21の上面に設置された回転モータ32mと歯車伝達機構32aとを備えている。そして、回転モータ32mの回転出力が歯車伝達機構32aを介して外輪31bに伝達され、これにより回転ベース35が前後スライドベース21に対して水平に回転するようになる。
【0017】
<昇降機構50について>
回転ベース35上には、昇降機構50が設置されている。昇降機構50は、図4〜図7に示すように、車室外でシート本体10を昇降させる機構であり、水平方向の駆動源となる横スライド機構40(図4、図7参照)と、横スライド機構40のスライド動作を受けて上下方向に回動する四節リンク機構51(図7等参照)と、四節リンク機構51をガイドする昇降ガイド部材57(図4参照)と、四節リンク機構51により昇降させられる昇降ベース55(図7等参照)とを有している。そして、前記昇降ベース55上に外内スライド機構70(後記する)を介してシート本体10が設置されている。
横スライド機構40は、図3、図4に示すように、回転ベース35の左右両端縁に沿って平行に取付けられた一対のガイドレール41と、ガイドレール41に沿って摺動する摺動子42と、前記摺動子42に載置される横スライドベース44と、横スライドベース44をガイドレール41に沿ってスライドさせる駆動部45(図3参照、図4では省略)とを備えている。駆動部45は、図3に示すように、回転ベース35上でスライド方向に沿って配置されたネジ軸45bと、そのネジ軸45bを回転させる駆動モータ45aと、横スライドベース44の下面に固定されて前記ネジ軸45bと螺合しているナット45cとから構成されている。
【0018】
横スライドベース44には、図5等に示すように、左右一対の四節リンク機構51の基端部が上下回動可能な状態で連結されている。四節リンク機構51は、昇降ベース55を水平な状態で昇降させる機構であり、内側リンクアーム53と外側リンクアーム52とを備えている。そして、両リンクアーム52,53の基端部がそれぞれ横スライド機構40の横スライドベース44の側部に支軸(図示省略)を介して上下回動可能に支持されている。また、両リンクアーム52,53の先端側には、昇降ベース55の側壁部が支軸を介してそれぞれ上下回動可能な状態で連結されている。
また、回転ベース35には、図4に示すように、左右のガイドレール41の外側位置に四節リンク機構51の左右の外側リンクアーム52を下方から支持する昇降ガイド部材57が設けられている。昇降ガイド部材57は、四節リンク機構51が横スライドベース44と共に前進、あるいは後退する動作を、その四節リンク機構51の下方への回動動作、あるいは上方への回動動作に変換できるように構成されている。なお、図5〜図7では、昇降ガイド部材57は省略されている。
【0019】
<外内スライド機構70について>
昇降機構50の昇降ベース55上には、図6、図7等に示すように、その昇降ベース55に対してシート本体10を前進、あるいは後退させる外内スライド機構70が設けられている。外内スライド機構70は、図3に示すように、シート本体10を支持するシート用ベース75と、そのシート用ベース75の下面側に固定された左右一対のガイドレール74aと、昇降ベース55上で前記ガイドレール74aを摺動可能に支持する摺動子74bと、外内スライド機構70の駆動源である駆動部76とを備えている。
駆動部76は、シート用ベース75の下面でガイドレール74aと平行に設けられたラック73と、昇降ベース55上でラック73と噛合するように設けられたピニオン72と、そのピニオン72を回転させる駆動モータ71とを備えている。
【0020】
<シート本体10とリクライニング機構90について>
シート本体10は、図1等に示すように、シートクッション11とシートバック12とを備えており、そのシートクッション11のフレームが外内スライド機構70のシート用ベース75と連結されている(図3等参照)。
シート本体10のシートクッション11には、図1等に示すように、シート本体10に人が着座したときの体重を受けて着座者の有無を検出する着座センサ80が設けられている。
また、シート本体10には、図1、図2に示すように、シートクッション11に対するシートバック12の傾きを調整するリクライニング機構90が設けられている。リクライニング機構90は、図2に示すように、シートバック12のフレーム側に設けられた外歯ギヤ92と、シートクッション11のフレーム側に前記外歯ギヤ92を囲むように設けられて、その外歯ギヤ92と噛合する内歯ギヤ94と、外歯ギヤ92を回転させるリクタイニングモータ(図示省略)と、リクライニング原点を検出するリミットスイッチ96とから構成されている。
さらに、シート本体10には、そのシート本体10の降車動作を行なうための降車スイッチ(図示省略)と、前記シート本体10の乗車動作を行なうための乗車スイッチ(図示省略)とが設けられている。
ここで、前記乗車スイッチ、降車スイッチ、及び着座センサ80の電気信号は、車両の制御装置(ECU)に入力されるようになっており、前記ECUは前記電気信号等に基づいて車両用シートSを構成する前後スライド機構20、回転機構30、昇降機構50、外内スライド機構70、及びリクライニング機構90を動作させる。
【0021】
<車両用シートSの動作について>
先ず、人がシート本体10に着座している場合の車両用シートSの動作について、図8、図9に基づいて説明する。
人がシート本体10に着座している場合には、着座センサ80がオンしており、そのオン信号が前記ECUに入力されている。
着座センサ80がオンしている状態では車室内のシート本体10は後部原点位置に保持されている(図8(A)、図9のタイミングI参照)。この状態からシート本体10を車室外の乗降位置まで移動させるには、車両CのドアDrを開放した後、降車スイッチを操作する。
これにより、前記ECUから回転信号が出力され、回転機構30がシート本体10を左回転させる方向に動作する。そして、シート本体10が一定角度左回転した状態で(図8(B)、図9のタイミングII参照)、前記ECUから前方スライド信号が出力される。これにより、回転機構30の動作が継続している状態で、前後スライド機構20が前後スライドベース21を前方にスライドさせる方向に動作する。即ち、シート本体10は、前記後部原点位置から前方に移動しつつ、左回転するようになる(回転スライド)。これにより、図8(C)の二点鎖線に示すように、シート本体10と車両CのセンターピラーPとの干渉が回避されるようになる。
【0022】
シート本体10の回転スライドが開始されると、図9に示すように、前記ECUからリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度後方に倒す方向に動作する。これにより、着座者の頭部と車両天井部との干渉を回避することができる。さらに、シート本体10の回転スライド中に、前記ECUから昇降機構50の横スライド機構40に対して前進信号(下降信号)が一定時間出力され、横スライドベース44が一定量前進することでシート本体10のスライドロックが解除される。
このようにして、図5に示すように、シート本体10が約90°回転して乗降口D側を向くと、回転スライド中に前記ECUから外内スライド機構70に対して外スライド信号が出力される(図9のタイミングIII参照)。これにより、外内スライド機構70が動作して、図6に示すように、シート本体10が昇降機構50の昇降ベース55に対して前進するようになる。即ち、シート本体10が乗降口Dから車室外に振出されるようになる(外スライド)。そして、前記外スライドが開始された後、回転機構30と前後スライド機構20が停止して回転スライドが完了する(図8(C)参照)。この状態で、シート本体10は車両前向き位置から約100°回転するようになる。さらに、回転スライドが完了後に、図9に示すように、ECUから再びリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度倒す方向に動作する。
【0023】
次に、外スライド中に、ECUから昇降機構50の横スライド機構40に対して前進信号(下降信号)が出力される(図9のタイミングIV参照)。これにより、横スライド機構40の横スライドベース44が四節リンク機構51を前進させる。この結果、図7に示すように、四節リンク機構51が昇降ガイド部材57の働きで下方に回動し、昇降ベース55と共にシート本体10が前進しつつ水平に下降するようになる(図8(D)参照)。
さらに、シート本体10の下降過程で、ECUからリクライニング信号が出力され、リクライニング機構90がシート本体10のシートバック12を一定角度起立させる方向に動作する。そして、シート本体10が乗降位置に到達した段階で昇降機構50が停止し(図8(E)、図9のタイミングV)、リクライニング機構90が再びシート本体10のシートバック12を元の位置まで起立させて車両用シートS(シート駆動装置200)の一連の動作が終了する。
なお、乗降位置から人が着座したシート本体10を車室内まで移動させる場合には、乗車スイッチを操作することで、上記した場合と逆の動作で車両用シートSが動作するようになる。
【0024】
次に、人がシート本体10に着座していない場合(空の場合)の車両用シートSの動作について、図10等に基づいて説明する。
人がシート本体10に着座していない場合(空の場合)には、着座センサ80がオフであり、そのオフ信号が前記ECUに入力されている。
着座センサ80がオフ状態では車室内のシート本体10は前部原点位置に保持されている。即ち、空の状態のシート本体10は、人が着座している場合(後部原点位置)よりも一定距離だけ前に位置している。この状態で、車両CのドアDrを開放した後、降車スイッチを操作すると、図10に示すように、回転機構30と前後スライド機構20とが同時に動作して、シート本体10は前部原点位置から前方に移動しつつ、左回転するようになる(回転スライド)。
ここで、空の状態のシート本体10は前部原点位置から前進を開始しているため、人が着座している場合と比べて前後スライド機構20の動作時間は短くなる。このため、前後スライド機構20と同時に動作する回転機構30の動作時間も短くなる。しかし、シート本体10の回転角度は空の場合も人が着座している場合も同じであるため、シート本体10が空の場合には回転機構30の回転速度は高速になる。
【0025】
さらに、シート本体10が空の場合には、着座者の頭部と車両天井部との干渉を配慮する必要がないため、リクライニング機構90の動作は行われない。
次に、シート本体10の回転スライド中に、図10に示すように、シート本体10のスライドロックが解除される。そして、図5等に示すように、シート本体10が約90°回転して乗降口D側を向くと、回転スライド中に外内スライド機構70が動作し、図6、図8(D)に示すように、シート本体10が乗降口Dから車室外に振出されるようになる(外スライド)。そして、外スライドの開始後に回転機構30と前後スライド機構20が停止して回転スライドが完了する。
次に、外スライド中に、昇降機構50の動作が開始され、横スライド機構40、四節リンク機構51の働きでシート本体10が前進しつつ、下降するようになる。そして、シート本体10が乗降位置に到達した段階で昇降機構50が停止し、車両用シートS(シート駆動装置200)の一連の動作が終了する。
なお、乗降位置から空の状態のシート本体10を車室内まで移動させる場合には、乗車スイッチを操作することで、上記した場合と逆の動作で車両用シートSが動作するようになる。
【0026】
<本実施形態に係るシート駆動装置200の長所について>
本発明によると、シート本体10が空の場合におけるシート駆動装置200の駆動動作は、シート本体10に人が着座している場合のシート駆動装置200の駆動動作に対し、一部の駆動動作が省略されている。
このため、シート本体10が空の場合には、シート本体10に人が着座している場合と比べて、シート本体10を車室内の所定位置と車室外の乗降位置間で移動させる際の動作時間を短縮できるようになる。したがって、車両用シートの使い勝手が向上する。
また、シート駆動装置200の一部の駆動動作を省略することでシート駆動装置の動作時間を短縮する構成のため、モータの消費電力を低減させることができる。
【0027】
また、空の状態におけるシート本体10の原点位置(前部原点位置)と、人が着座している場合のシート本体10の原点位置(後部原点位置)とが車両前後方向にずれており、空の状態におけるシート本体10の前後スライド量は、人が着座している場合のシート本体10の前後スライド量よりも小さく設定されている。このため、シート本体10が空の場合のスライド時間を短縮できるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
また、シート本体10が空の場合における回転機構30の回転速度は、シート本体10に人が着座している場合における回転機構30の回転速度よりも大きく設定されている。このため、シート本体10が空の場合のシート本体回転時間を短縮できるようになる。
さらに、シート本体10が空の場合にはリクライニング機構90の動作が省略されるため、リクライニング機構90の動作省略分だけシート駆動装置200の動作時間が短縮されるとともに、モータの消費電力を低減させることができる。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、前後スライド機構20と、回転機構30と、昇降機構50と、外内スライド機構70と、リクライニング機構90とを備えるシート駆動装置200を例示した。しかし、例えば、昇降機構50、あるいはリクライニング機構90を有しないシート駆動装置200で乗降位置が車室内にあるシート駆動装置200に本発明を適用することも可能である。
また、前後スライド機構20と、回転機構30と、シート本体10を前傾、あるいは後傾させるチルト機構等を備える車両用シートに本発明を適用することも可能である。
また、本実施形態では、車両用シートSを車両の助手席として使用する例を示したが、例えば、運転席として使用することも可能である。
さらに、本実施形態では、車両用シートSに本発明に係るシート駆動装置200を適用する例を示したが、例えば、ワンボックス車の後部開口から車椅子(シート本体)を乗降させる車椅子リフター(シート駆動装置)に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・・シート本体
20・・・・前後スライド機構
30・・・・回転機構
80・・・・着座センサ
90・・・・リクライニング機構
200・・・シート駆動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置であって、
前記シート本体の着座者の有無を検出する着座センサを備えており、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のシート駆動装置であって、
車室内で前記シート本体を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構と、前記シート本体を車両前向き位置と車両横向き位置間で水平回転させる回転機構とを有しており、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合の前記シート本体の原点位置と、前記着座センサにより着座者が検出された場合の前記シート本体の原点位置とが車両前後方向にずれており、
前記着座者が検出されない場合の前記シート本体の前後スライド量は、前記着座者が検出された場合の前後スライド量よりも小さく設定されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のシート駆動装置であって、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合における前記回転機構のシート本体回転速度は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における前記回転機構のシート本体回転速度よりも大きく設定されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両のシート駆動装置であって、
シート本体のシートクッションに対するシートバックの傾斜角度を調整可能なリクライニング機構を有しており、
前記着座センサにより着座者が検出された場合には、前記シート本体の移動途中で前記リクライニング機構が動作し、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合には、前記リクライニング機構の動作が省略されることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項1】
シート本体を車室内の所定位置と、車室内、あるいは車室外の乗降位置との間で移動させることが可能な車両のシート駆動装置であって、
前記シート本体の着座者の有無を検出する着座センサを備えており、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合における一連の駆動動作は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における一連の駆動動作に対して、一部の駆動動作が省略されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のシート駆動装置であって、
車室内で前記シート本体を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構と、前記シート本体を車両前向き位置と車両横向き位置間で水平回転させる回転機構とを有しており、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合の前記シート本体の原点位置と、前記着座センサにより着座者が検出された場合の前記シート本体の原点位置とが車両前後方向にずれており、
前記着座者が検出されない場合の前記シート本体の前後スライド量は、前記着座者が検出された場合の前後スライド量よりも小さく設定されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のシート駆動装置であって、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合における前記回転機構のシート本体回転速度は、前記着座センサにより着座者が検出された場合における前記回転機構のシート本体回転速度よりも大きく設定されていることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両のシート駆動装置であって、
シート本体のシートクッションに対するシートバックの傾斜角度を調整可能なリクライニング機構を有しており、
前記着座センサにより着座者が検出された場合には、前記シート本体の移動途中で前記リクライニング機構が動作し、
前記着座センサにより着座者が検出されない場合には、前記リクライニング機構の動作が省略されることを特徴とする車両のシート駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−18341(P2013−18341A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152657(P2011−152657)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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