説明

車両のステアリング装置

【課題】 補助電源50の電源供給を適切なタイミングで行うことにより、運転者に対して操舵違和感を与えないようにする。
【解決手段】 昇圧回路40からモータ駆動回路30への電源供給ラインに補助電源50を並列に接続するとともに、補助電源50からモータ駆動回路30への放電路を開閉するスイッチ51を設ける。電源制御部62は、操舵操作量(操舵トルク、操舵角、操舵速度)に基づいて、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定し、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定したときに、スイッチ51をオンにして2電源供給モードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電源と、車載電源により充電される補助電源との両方を使って電気アクチュエータの駆動回路へ電源供給して車輪を転舵する車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルの回動操作に対して操舵アシストトルクを付与するように電動モータを備え、この電動モータの通電制御を行って操舵アシストトルクを調整する。こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載電源を使用するが消費電力量が大きい。そのため、例えば、特許文献1に提案された装置では、車載電源を補助する補助電源を備えている。この補助電源は、車載電源からモータ駆動回路への電源供給ラインに並列に接続されて車載電源により充電され、蓄電した電力を使ってモータ駆動回路へ電源供給できる構成になっている。また、補助電源からモータ駆動回路への給電/非給電を切り替えるためのスイッチを備えており、電動モータを作動させる目標電力値が閾値を上回ったときに、スイッチをオンして補助電源からモータ駆動回路への電源供給を補助する。
【特許文献1】特開2007−91122
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に提案された装置では、操舵トルクと車速に基づいて目標電力値を演算し、演算された目標電力値が閾値を上回ったときにスイッチがオンするものであるため、補助電源による電源供給が遅れてしまうことがある。補助電源による電源供給が遅れてしまうと、電動モータへの電力供給量が不足して適切な操舵アシストが得られない欠落期間が発生してしまい、運転者に対して操舵違和感を与えてしまう。
【0004】
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、補助電源の電源供給を適切なタイミングで行うことにより、運転者に対して操舵違和感を与えないようにすることにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車輪を転舵するための力を発生する電気アクチュエータと、車載電源から電源供給され前記電気アクチュエータを駆動する駆動回路と、運転者の操舵操作に基づいて前記駆動回路を制御して前記電気アクチュエータへの通電量を制御する通電制御手段と、前記車載電源から前記駆動回路への電源供給路に並列に接続されて、前記車載電源により充電されるとともに、蓄電した電力を使って前記駆動回路への電源供給を補助する補助電源と、前記補助電源から前記駆動回路への放電路を開閉するスイッチと、前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定する推定手段と、前記推定手段により前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定されたとき、前記スイッチを閉じるスイッチ制御手段とを備えたことにある。
【0006】
この発明においては、車載電源から電気アクチュエータの駆動回路への電源供給路に補助電源が接続されている。この補助電源は、車載電源により充電され、蓄電した電力を使って駆動回路への電源供給を補助する。電気アクチュエータは、車輪を転舵するための力を発生するもので、例えば、運転者の操舵操作を補助するように操舵補助力を発生するものや、運転者の操舵操作力を使わずに車輪を転舵するものであってもよい。電気アクチュエータとしては、例えば、電動モータが使用され、駆動回路としては、例えば、インバータ回路やHブリッジ回路などのモータ駆動回路が使用される。通電制御手段は、運転者の操舵操作に基づいて駆動回路を制御する。例えば、操舵ハンドルに働いた操舵トルクが大きくなるほど電動モータの通電量を増大させるように駆動回路を制御する。これにより、電気アクチュエータに流れる通電量が制御されて、操舵操作に応じた転舵力が発生する。
【0007】
補助電源から駆動回路への放電路にはスイッチが設けられており、スイッチが閉じられているときのみ、補助電源から駆動回路へ電源供給可能となっている。このスイッチが閉じられるタイミングは、推定手段の推定により決定される。推定手段は、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定する。つまり、車載電源だけでは電力供給量不足を生じる状況が直後(現時点から直後)に到来する可能性がある否か推定する。そして、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定された場合には、スイッチ制御手段がスイッチを閉じて電気アクチュエータの大電力駆動に備える。従って、運転者が大きく操舵操作をして電気アクチュエータが大電力で駆動されるときには、すでに、スイッチが閉じられて補助電源から電源供給補助できる状態になっているため、電力供給遅れが生じなく、応答性良く電気アクチュエータを駆動することができる。この結果、運転者に対して操舵違和感を与えない。
【0008】
本発明の他の特徴は、操舵ハンドルの操舵操作量を検出する操舵操作量検出手段を備え、前記推定手段は、前記検出された操舵操作量が設定操舵操作量よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することにある。
【0009】
電気アクチュエータで消費される電力は、操舵操作量に応じて変化する。従って、操舵操作量が設定操舵操作量よりも大きくなったときには、その直後に補助電源による電源供給補助が必要となる可能性(電気アクチュエータが大電力で駆動される可能性)があると推定できる。そこで、本発明においては、操舵操作量検出手段により操舵ハンドルの操舵操作量を検出し、検出した操舵操作量が設定操舵操作量よりも大きくなったときに、推定手段が、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定し、スイッチ制御手段がスイッチを閉成する。従って、電気アクチュエータが大電力で駆動される前に、補助電源により電源供給補助できる体制に切り替えておくことができる。
【0010】
この場合、前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルの操舵角を検出するものであり、前記推定手段は、前記検出された操舵角が設定操舵角よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定するとよい。
また、前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルに働いた操舵トルクを検出するものであり、前記推定手段は、前記検出された操舵トルクが設定トルクよりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定するとよい。
また、前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルの操舵速度を検出するものであり、前記推定手段は、前記検出された操舵速度が設定操舵速度よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定するとよい。
【0011】
操舵ハンドルの操舵角、操舵ハンドルに働いた操舵トルク、操舵ハンドルの操舵速度の少なくとも1つが設定値よりも大きくなったときには、その直後に補助電源による電源供給補助が必要となる可能性(電気アクチュエータが大電力で駆動される可能性)があると推定できる。そこで、本発明においては、この3つの操舵操作量の少なくとも1つに基づいて、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定したときにスイッチを閉成する。従って、電気アクチュエータが大電力で駆動される前に、補助電源により電源供給補助できる体制に切り替えておくことができる。尚、上記3つの操舵操作量を検出し、そのうちの1つでも設定値よりも大きくなったときに、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定するようにしてもよい。また、操舵操作量における各設定値(設定操舵角、設定トルク、設定操舵速度)は、その設定値と等しい量の操舵操作が行われたときには、通電制御手段が補助電源による電源供給補助を必要としないレベルの電力で電気アクチュエータを駆動できる値に設定されるものである。
【0012】
本発明の他の特徴は、車速を検出する車速検出手段を備え、前記推定手段は、前記検出された車速が設定車速よりも低速になったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することにある。
【0013】
据え切り操作時においては、電気アクチュエータの必要電力が大きくなる。一方、ある程度の速度で車両が走行している場合には、車輪を転舵するために必要となる電気アクチュエータの電力は少なくてすむ。そこで、本発明においては、車速が設定車速よりも低速になったときには、その直後に補助電源による電源供給補助が必要となる可能性があると推定する。従って、据え切り操作が行われるときには、その前からスイッチが閉成されているため、補助電源による電源供給補助により電気アクチュエータに十分な電力を供給することができる。この結果、電源供給補助が遅れないため、運転者に操舵違和感を与えない。
【0014】
本発明の特徴は、前記車載電源の出力電圧を昇圧し、昇圧した電源を前記駆動回路と前記補助電源に供給する昇圧回路と、前記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段とを備え、前記推定手段は、前記検出された昇圧回路の出力電流が設定電流よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することにある。
【0015】
本発明においては、車載電源の出力は、昇圧回路により昇圧されて駆動回路と補助電源とに供給される。車載電源を使って電気アクチュエータが駆動されるときには、昇圧回路から駆動回路に電流が流れる。この昇圧回路の出力電流は、昇圧電流検出手段により検出され、その大きさが設定電流よりも大きくなったとき、推定手段が補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定する。昇圧回路は、定格出力が決められているため、それ以上の電力を出力することができない。従って、設定電流を、昇圧回路の定格出力が得られる電流値よりも小さな値に設定しておくことで、補助電源による電源供給補助が必要となる前に、事前に、スイッチを閉成しておくことができる。この結果、電源供給補助が遅れないため、運転者に操舵違和感を与えない。
【0016】
本発明の他の特徴は、前記補助電源の充電状態を検出する充電状態検出手段と、前記推定手段が前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定した場合であっても、前記補助電源の充電状態が予め設定した基準充電状態を下回る場合には、前記スイッチの閉成動作を禁止する禁止手段を備えたことにある。
【0017】
この場合、前記充電状態検出手段は、前記補助電源の出力電圧を検出し、その検出した出力電圧を前記補助電源の充電状態とみなすとよい。
【0018】
本発明においては、充電状態検出手段が補助電源の充電状態を検出する。例えば、補助電源の出力電圧を検出して、その出力電圧の高低により補助電源の充電状態を検出する。補助電源の充電状態が良好であれば、補助電源から電力を引き出して電気アクチュエータに供給しても問題ないが、補助電源の充電状態が良好でない場合(蓄電量が不足している場合)には、そこから更に電力を引き出すと、補助電源が劣化して寿命が低下してしまうおそれがある。特に、二次電池(化学電池)を補助電源として用いた場合には、その傾向が強い。そこで、充電状態検出手段により検出した充電状態が予め設定した基準充電状態を下回る場合、例えば、補助電源の出力電圧が基準電圧を下回る場合には、禁止手段がスイッチの閉成動作を禁止する。従って、補助電源から放電しないため補助電源の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態として車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
【0020】
本実施形態の車両の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電源供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電源供給回路に並列接続される補助電源50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。
【0021】
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
【0022】
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。この電動モータ20は、本発明の電気アクチュエータに相当する。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRの操舵をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
【0023】
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTxと呼ぶ。操舵トルクTxは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTxを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTxを負の値で示す。従って、操舵トルクTxの大きさは、その絶対値の大きさとなる。
【0024】
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵速度ωxと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。本実施形態においては、操舵ハンドル11の中立位置を「0」とし、中立位置に対する右方向への舵角を正の値で示し、中立位置に対する左方向への舵角を負の値で示す。
【0025】
尚、本願明細書においては、操舵トルクTx、操舵角θx、操舵速度ωxについて設定値と比較するが、この比較にあたっては、その大きさ、つまり、絶対値を使って比較する。
【0026】
モータ駆動回路30は、MOS−FETからなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電源供給ライン37を引き出した構成を採用している。
【0027】
第1スイッチング素子31,第3スイッチング素子33,第5スイッチング素子35のドレインは、それぞれ後述する昇圧駆動ライン113に接続され、第2スイッチング素子32,第4スイッチング素子34,第6スイッチング素子36のソースは、それぞれ接地ライン111に接続される。モータ駆動回路30から電動モータ20への電源供給ライン37には、電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出(測定)し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値を、モータ電流iuvwと呼ぶ。また、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。
【0028】
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60のアシスト制御部61(後述する)に接続され、アシスト制御部61からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOS−FETには、構造上ダイオードが寄生している。
【0029】
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置は、主電源100から電源供給される。主電源100は、主バッテリ101と、エンジンの回転により発電するオルタネータ102とを並列接続して構成される。主バッテリ101としては、定格出力電圧が12Vの一般の車載バッテリが用いられる。
【0030】
この主電源100は、電動パワーステアリング装置だけでなく他の車載電気負荷への電源供給も共通して行うもので本発明の車載電源に相当する。主バッテリ101の電源端子(+端子)に接続される電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
【0031】
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
【0032】
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104のダイオード108接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
【0033】
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
【0034】
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOS−FETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOS−FETには、構造上ダイオードが寄生している。
【0035】
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62(後述する)により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
【0036】
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源100側へのノイズが除去される。
【0037】
昇圧回路40の出力電圧(昇圧電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比制御により調整可能となっている。本実施形態においては、20V〜50Vの範囲で調整できるように構成される。昇圧回路40の出力は、定格出力以下となるように制限されており、電動モータ20の駆動に必要な電力が定格出力を上回る場合には、昇圧電圧が目標電圧を維持できずに低下する。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
【0038】
昇圧回路40の出力側となる昇圧電源ライン112には、電流センサ46と電圧センサ47が設けられる。電流センサ46は、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、昇圧回路40の出力電流である昇圧電流ioutを表す信号を電源制御部62に出力する。また、電圧センサ47は、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、昇圧回路40の出力電圧である昇圧電圧voutを表す信号を電源制御部62に出力する。以下、電流センサ46を昇圧電流センサ46と呼び、電圧センサ47を昇圧電圧センサ47と呼ぶ。
【0039】
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、補助電源50のプラス端子に接続される。
【0040】
補助電源50は、昇圧回路40により充電され、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、主電源100を補助してモータ駆動回路30に電源供給する蓄電池である。従って、補助電源50は、昇圧回路40の出力電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。補助電源50としては、例えば、ニッケル水素電池等の二次電池が使用される。補助電源50の接地端子は、接地ライン111に接続される。
【0041】
充放電ライン114には、スイッチ51が設けられる。このスイッチ51は、本実施形態においては、MOS−FETが用いられる。スイッチ51は、MOS−FETに寄生する寄生ダイオードの向きが補助電源50の充電方向にのみ通電可能となるように向けて接続される。従って、スイッチ51は、補助電源50からモータ駆動回路30への放電路を開閉する素子となる。スイッチ51は、そのゲートが電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62から出力される信号により開閉制御される。尚、寄生ダイオードの通電容量が不足する場合には、別途、図示しないダイオードを寄生ダイオードと同じ向きに並列に接続するとよい。
【0042】
補助電源50には、その端子電圧を検出する電圧センサ52が設けられる。この電圧センサ52は、電子制御装置60の電源制御部62に接続され、電源制御部62に対して測定値である補助電源電圧vsubを表す信号を出力する。以下、この電圧センサ52を補助電源電圧センサ52と呼ぶ。
【0043】
電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61と電源制御部62とは、互いに制御指令や制御データ等の授受が可能に設けられる。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTx、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、これらのセンサ信号に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。また、アシスト制御部61に入力されたセンサ信号は、電源制御部62にも出力されるように構成されている。
【0044】
電源制御部62は、昇圧電流センサ46、昇圧電圧センサ47、補助電源電圧センサ52を接続し、昇圧電流iout、昇圧電圧vout、補助電源電圧vsubを表すセンサ信号を入力する。電源制御部62は、検出した出力電圧voutをフィードバックして、予め設定した目標昇圧電圧が得られるように昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その昇圧電圧を目標電圧に制御する。また、電源制御部62は、スイッチ51のゲートを接続し、後述する電源供給モード切替制御ルーチンの実行によりスイッチ51のオン/オフ状態を切り替えて、モータ駆動回路30への電源供給状態を切り替える。また、電源制御部62には、運転者に対して補助電源50の充電状態不良を報知するための報知器63(例えば、ランプ)が接続されている。
【0045】
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表し、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵アシスト制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0046】
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTxとを読み込む。
【0047】
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクテーブルを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTxに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクテーブルは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTxの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクテーブルは、右方向の操舵トルクTxに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば同じである。
【0048】
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵速度ωxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵速度ωxについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。尚、操舵速度ωxについては、電動モータ20で発生する逆起電力から推定してもよい。
【0049】
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
【0050】
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS16において、このモータ電流iuvwと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)により目標指令電圧v*を計算する。
【0051】
そして、アシスト制御部61は、ステップS17において、目標指令電圧v*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が制御されて、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。尚、この操舵アシスト制御ルーチンを実行するアシスト制御部61が本発明の通電制御手段に相当する。
【0052】
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、低速走行時でのハンドル操作や、速いハンドル回動操作したときには大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に補助電源50から電源供給を補助する構成を採用している。そして、電動モータ20を大電力で駆動する必要がないときには、スイッチ51をオフ状態に保持して、補助電源50への充電のみ可能な状態にする。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力をモータ駆動回路30および補助電源50に供給するシステムを構成している。
【0053】
電動パワーステアリング装置においては、操舵アシスト制御ルーチンにおいて、目標電流ias*を演算するため、電動モータ20にて大電力消費する時期は把握できる。しかし、演算して得られた目標電流ias*に基づいて、スイッチ51をオンして補助電源50による電源供給補助を開始するようにしていては、電源供給補助が遅れてしまい目標電流ias*を供給できなくなるおそれがある。この場合には、一時的に操舵アシストトルクが不足してしまい、運転者に操舵違和感を与えてしまう。
【0054】
そこで、本実施形態においては、操舵アシスト制御ルーチンとは独立して、電源制御部62が電源供給モード切替制御ルーチンを実行することにより、こうした不具合を解消する。
【0055】
以下、電子制御装置60の電源制御部62が行う電源供給モード切替制御処理について説明する。図4,図5は、電源制御部62により実施される電源供給モード切替制御ルーチンの第1実施形態を表すフローチャートである。この電源供給モード切替制御ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶される。電源供給モード切替制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106がオンされて初期診断が完了した後に起動し、所定の短い周期で繰り返される。
【0056】
本電源供給モード切替制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS21において、フラグFが「0」か否かについて判断する。このフラグFは、スイッチ51の状況を表すもので、F=0にてスイッチ51がオフ状態を、F=1にてスイッチ51がオン状態を表す。本制御ルーチンの起動時においては、フラグFは「0」に設定されている。F=0となる状態においては、補助電源50の放電路は開いているため、補助電源50からの電源供給補助は不能になっている。
【0057】
まず、フラグF=0の場合から説明する。フラグF=0の場合には、ステップS22において、操舵トルクセンサ21にて検出される操舵トルクTxを読み込む。この操舵トルクTは、アシスト制御部61にて行うアシスト制御処理に使用されるデータであり、アシスト制御部61から読み込まれる。続いて、電源制御部62は、ステップS23において、操舵トルクTxの大きさ(絶対値)が設定トルクT1より大きいか否かを判断する。運転者がハンドル操作を行うときには、操舵トルクが発生する。従って、操舵トルク|Tx|が増加するときには、その直後に電動モータ20が大電力で駆動される可能性があると推定できる。
【0058】
そこで、本実施形態においては、電動モータ20の大電力駆動を事前に予測するための判定値として設定トルクT1を設定し、操舵トルク|Tx|と設定トルクT1とを比較する。そして、操舵トルク|Tx|が設定トルクT1より大きくなったときに、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定し、逆に、操舵トルク|Tx|が設定トルクT1以下であれば、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。従って、この設定トルクT1は、補助電源50による電源供給補助がなくても主電源10による電源供給だけで電力不足を生じない範囲の値に設定されている。
【0059】
また、設定トルクT1の大きさは、仮に操舵トルクが上昇しても補助電源50による電源供給補助が必要となる状況に達するまでの時間が本電源供給モード切替制御の制御周期よりも長くなる値に設定される。従って、操舵トルクTxが設定トルクT1以下であれば、たとえ操舵トルクが上昇しても次の制御周期までには電動モータ20への電力供給量不足を生じないため、この段階では、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。
【0060】
操舵トルク|Tx|が設定トルクT1以下であれば、ステップS24において、操舵角センサ22にて検出される操舵角θxを読み込む。この操舵角θxについてもアシスト制御部61にて行うアシスト制御処理に使用されるデータであり、アシスト制御部61から読み込まれる。続いて、電源制御部62は、ステップS25において、操舵角θxの大きさ(絶対値)が設定操舵角θ1より大きいか否かを判断する。運転者がハンドル操作を行うときには、操舵角|θx|が増加する。従って、操舵角|θx|が増加するときには、その直後に電動モータ20が大電力で駆動される可能性があると推定できる。
【0061】
そこで、本実施形態においては、電動モータ20の大電力消費を事前に予測するための判定値として設定操舵角θ1を設定し、操舵角|θx|と設定操舵角θ1とを比較する。そして、操舵角|θx|が設定操舵角θ1より大きくなったときに、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定し、逆に、操舵角|θx|が設定操舵角θ1以下であれば、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。従って、この設定操舵角θ1は、補助電源50による電源供給補助がなくても主電源10による電源供給だけで電力不足を生じない範囲の値に設定されている。
【0062】
また、設定操舵角θ1の大きさは、仮に操舵角が上昇しても補助電源50による電源供給補助が必要となる状況に達するまでの時間が本電源供給モード切替制御の制御周期よりも長くなる値に設定される。従って、操舵角θxが設定操舵角θ1以下であれば、たとえ操舵角が上昇しても次の制御周期までには電動モータ20への電力供給量不足を生じないため、この段階では、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。
【0063】
操舵角|θx|が設定操舵角θ1以下であれば、ステップS26において、アシスト制御部にて演算された操舵速度ωxを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS27において、操舵速度ωの大きさ(絶対値)が設定操舵速度ω1より大きいか否かを判断する。運転者がハンドル操作を行うときには、操舵速度|ωx|が増加する。従って、操舵速度|ωx|が増加するときには、その直後に電動モータ20が大電力で駆動される可能性があると推定できる。
【0064】
そこで、本実施形態においては、電動モータ20の大電力駆動を事前に予測するための判定値として設定操舵速度ω1を設定し、操舵速度|ωx|と設定操舵速度ω1とを比較する。そして、操舵速度|ωx|が設定操舵速度ω1より大きくなったときに、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定し、逆に、操舵速度|ωx|が設定操舵速度ω1以下であれば、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。従って、この設定操舵速度ω1は、補助電源50による電源供給補助がなくても主電源10による電源供給だけで電力不足を生じない範囲の値に設定されている。
【0065】
また、設定操舵速度ω1の大きさは、仮に操舵速度が上昇しても補助電源50による電源供給補助が必要となる状況に達するまでの時間が本電源供給モード切替制御の制御周期よりも長くなる値に設定される。従って、操舵速度ωxが設定操舵速度ω1以下であれば、たとえ操舵速度が上昇しても次の制御周期までには電動モータ20への電力供給量不足を生じないため、この段階では、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。
【0066】
こうしたステップS23,S25,S27の判断において、いずれも「No」となる場合には、本制御ルーチンをそのまま一旦終了する。従って、スイッチ51は、オフ状態に維持され、主電源100のみからモータ駆動回路30に電源供給されるモード(以下、主電源モードと呼ぶ)に設定される。本制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。そして、操舵トルク|Tx|が設定トルクT1を上回った場合(S23:Yes)、あるいは、操舵角|θx|が設定操舵角θ1を上回った場合(S25:Yes)、あるいは、操舵速度|ωx|が設定操舵角ω1を上回った場合(S27:Yes)、いずれも、その処理がステップS28に進められる。
【0067】
電源制御部62は、ステップS28において、補助電源電圧vsubを読み込む。電源制御部62は、本制御ルーチンとは別に補助電源電圧検出処理を実行して、補助電源電圧センサ52により検出される補助電源電圧vsubを定期的に読み込み、その値を図示しない不揮発性メモリ等に記憶する。従って、ステップS28は、記憶されている最新の補助電源電圧vsubを読み込む処理となる。この補助電源電圧vsubは、補助電源50の充電状態の判断に用いられる。
【0068】
補助電源電圧vsubの検出にあたっては、補助電源50の充放電ライン114が昇圧駆動ライン113と接続されているため、補助電源電圧センサ52により検出される電圧値が昇圧回路40の昇圧電圧となってしまうおそれがある。そこで、電源制御部62は、補助電源電圧検出処理を行うときには、例えば、操舵アシストが必要のない状況を確認して、一時的に昇圧回路40の作動を停止させる。これにより、昇圧電圧が補助電源電圧を下回るため、補助電源電圧センサ52にて補助電源電圧vsubを正確に測定することができる。あるいは、充放電ライン114に、別のスイッチを設けておいて、補助電源電圧検出時においてのみ、そのスイッチをオフにして補助電源電圧センサ52にて補助電源電圧vsubを測定するようにしてもよい。また、充放電ライン114に流れる電流を検出する電流センサ(図示略)を設け、充放電ライン114に充放電電流が流れていないときの補助電源電圧センサ52の検出値を読み込んで、その検出値を補助電源電圧vsubとして記憶するようにしてもよい。
【0069】
電源制御部62は、ステップS28において、補助電源電圧vsubを読み込むと、続いて、ステップS29において、補助電源電圧vsubが基準電圧v1を上回っているか否かを判断する。この基準電圧v1は、補助電源50の充電状態の良否を判定する判定電圧である。補助電源電圧vsubが基準電圧v1を上回っていれば、補助電源50の充電状態は良好であると判定して、ステップS30において、スイッチ51をオンし(オフ状態からオン状態に切り替え)、ステップS31において、フラグFを「1」に設定する。従って、補助電源50がモータ駆動回路30の電源入力部と接続され、主電源100と補助電源50とを並列にした2電源によりモータ駆動回路30に電源供給するモードとなる。以下、このモードを2電源モードと呼ぶ。
【0070】
2電源モードにおいては、昇圧回路40の出力が不足する電力分を補助電源50から供給する。電動モータ20が大電力で駆動された場合には、その消費電力が昇圧回路40の定格出力を上回るため、昇圧制御にかかわらず昇圧電圧が低下する。このため、補助電源50の出力電圧(電源電圧)が昇圧回路40の昇圧電圧を上回り、昇圧回路40に代わって補助電源50からモータ駆動回路30に電力が供給される。つまり、2電源モードにおいては、昇圧回路40の昇圧電圧と補助電源の出力電圧(電源電圧)との大小関係によりモータ駆動回路30に電力供給する電源が自然に切り替わり、一方の電源の電力供給量不足を補うように他方の電源から電力を供給する。従って、2電源モードにおいては、モータ駆動回路30に大電力を供給することができる。
【0071】
このステップS30でスイッチ51がオンされた時点においては、電動モータ20が大電力で駆動される可能性がある状況であって、実際には、まだ電動モータ20が大電力で駆動されていない。従って、ステップS30にて2電源モードに切り替えることで、その後に発生すると予測される電動モータ20の大電力消費に備えることができる。このように、ステップS23,S25,S27において、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定する処理が本発明の推定手段に相当し、その推定に基づいてスイッチ51をオン状態に切り替えるステップS30の処理が本発明のスイッチ制御手段に相当する。
【0072】
一方、ステップS29において、補助電源電圧vsubが基準電圧v1以下であると判定された場合には、2電源モードに切り替えることなく主電源モードを維持する。そして、ステップS32において、報知器63を作動させて、補助電源50が充電不足である旨を運転者に報知する。
【0073】
補助電源50の充電状態が良好であれば、補助電源50から電力を引き出してモータ駆動回路30に供給しても問題ないが、補助電源50の充電状態が良好でない場合(蓄電量が不足している場合)には、そこから更に電力を引き出すと、補助電源50が劣化して寿命が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態においては、補助電源電圧vsubに基づいて補助電源50の充電状態を検出し、その充電状態が予め設定した基準充電状態を下回る場合には、スイッチ51の閉成動作を禁止する。従って、補助電源50から放電しないため補助電源50の劣化を抑制することができる。このステップS29の判断によりスイッチ51の閉成動作を禁止する処理が本発明の禁止手段に相当する。
【0074】
ステップS31あるいはステップS32の処理が行われると、本制御ルーチンは一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返されるが、2電源モードに切り替えられたのちは、フラグFが「1」に設定されているため、ステップS21の判断は「No」となり、ステップS40においてスイッチオフ条件チェック処理が行われる。
【0075】
このスイッチオフ条件チェック処理は、スイッチ51をオフに戻すタイミングを設定するもので、図5に示すフローチャートに沿って実行される。まず、電源制御部62は、ステップS41において、操舵トルクセンサ21にて検出される操舵トルクTxを読み込み、ステップS42において、操舵トルクTxの大きさ(絶対値)が設定トルクT2より小さいか否かを判断する。この設定トルクT2は、設定トルクT1よりも小さな値に設定されている。操舵トルク|Tx|が設定トルクT2以上である場合には(S42:No)、この段階で、スイッチオフ条件が不成立となり(ステップS48)、その処理が図4のメインルーチンに戻される。
【0076】
操舵トルク|Tx|が設定トルクT2を下回っている場合には、ステップS43において、操舵角センサ22にて検出される操舵角θxを読み込み、ステップS44において、操舵角θxの大きさ(絶対値)が設定操舵角θ2より小さいか否かを判断する。この設定操舵角θ2は、設定操舵角θ1よりも小さな値に設定されている。操舵角|θx|が設定操舵角θ2以上である場合には(S44:No)、この段階で、スイッチオフ条件が不成立となり(ステップS48)、その処理が図4のメインルーチンに戻される。
【0077】
操舵角|θx|が設定操舵角θ2を下回っている場合には、ステップS45において、アシスト制御部61にて演算された操舵速度ωxを読み込み、ステップS46において、操舵速度ωxの大きさ(絶対値)が設定操舵速度ω2より小さいか否かを判断する。この設定操舵速度ω2は、設定操舵速度ω1よりも小さな値に設定されている。操舵速度|ωx|が設定操舵速度ω2以上である場合には(S46:No)、スイッチオフ条件が不成立となり(ステップS48)、その処理が図4のメインルーチンに戻される。
【0078】
電源制御部62は、ステップS46において「Yes」と判定した場合には、ステップS47において、スイッチオフ条件が成立したと判断する。つまり、ステップS42,S44,S46の3つの条件が満たされたとき、スイッチオフ条件が成立したと判断し、その一つでも満たされない場合には、スイッチオフ条件が成立しない。
【0079】
こうして、スイッチオフ条件チェック処理が完了すると、電源制御部62は、その処理を図4のステップS51に進め、スイッチオフ条件が成立したか否かを判断し、成立していないあいだは、そのまま本制御ルーチンを一旦終了する。また、スイッチオフ条件が成立した場合には、ステップS52において、スイッチ51をオフにして(オン状態からオフ状態に切り替えて)主電源モードに切り替え、ステップS53において、フラグFを「0」にリセットして、本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、イグニッションスイッチ106がオフされるまで繰り返される。
【0080】
尚、スイッチオフ条件チェック処理においては、設定操舵トルクT2,設定操舵角θ2,設定操舵速度ω2を設定操舵トルクT1,設定操舵角θ1,設定操舵速度ω1より小さな値に設定して、それぞれ不感帯を設けて電源供給モードの切替制御を安定させているが、2電源モードから主電源モードに戻すタイミングは、電動モータ20が大電力で駆動される可能性がなくなっている状況であれば良く、それほど急いで行う必要はない。例えば、アシスト制御部61が演算する目標電流ias*を読み込み、この目標電流ias*が所定の小さな値(例えば、ゼロ)になるまで待ってから主電源モードに戻すようにしてもよい。
【0081】
以上説明した本実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、操舵トルクTx、操舵角θx、操舵速度ωxの少なくとも1つが設定値T1、θ1、ω1よりも大きくなったときには、その直後に補助電源50による電源供給補助が必要となる可能性があると推定してスイッチ51をオンするため、実際に電動モータ20が大電力で駆動される前に、補助電源50により電源供給補助できる体制に切り替えておくことができる。従って、モータ駆動回路30への電力供給遅れが生じなく、応答性良く電動モータ20を駆動することができる。この結果、運転者に対して操舵違和感を与えない。
【0082】
また、補助電源50の充電状態が良好ではない場合には、スイッチ51の閉成動作を禁止しているため、補助電源50の劣化を抑制して、補助電源50の寿命を長くするとこができる。
【0083】
次に、第2実施形態としての電源供給モード切替制御について説明する。図6は、第2実施形態としての電源供給モード切替制御ルーチンを表すフローチャートである。以下の説明にあたっては、上述した第1実施形態の電源供給モード切替制御と共通する処理については、図面に同一のステップ符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2実施形態の電源供給モード切替制御ルーチンも、イグニッションスイッチ106がオンされて初期診断が完了した後に起動し、所定の短い周期で繰り返される。この電源供給モード切替制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS21において、フラグFが「0」か否かについて判断する。フラグF=0の場合、つまり、主電源モード時であれば、ステップS61において、車速センサ23にて検出される車速Vxを読み込む。この車速Vxは、アシスト制御部61にて行うアシスト制御処理に使用されるデータである。従って、電源制御部62は、アシスト制御部61から車速Vxを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS62において、車速Vxが予め設定した設定車速V1よりも小さいか否かについて判断する。
【0085】
据え切り操作時においては、電動モータ20を駆動するためには大電力を供給する必要がある。一方、ある程度の速度で車両が走行している場合には、車輪FWL,FWRを転舵するために必要となる電力は少なくてすむ。そこで、本実施形態においては、車速Vxに基づいて、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否か、つまり、現時点の状況が、電動モータ20の大電力駆動により主電源100だけでは電力供給量不足を生じる可能性がある状況であるか否かを推定する。車速Vxが設定車速V1よりも低速になったときには、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定し、逆に、車速Vxが設定車速V1以上であれば、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。従って、この設定車速V1は、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定するための判定値である。
【0086】
車速Vxが設定車速V1以上ある場合には(S62:No)、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定して本制御ルーチンを一旦終了する。一方、車速Vxが設定車速V1を下回っている場合には(S62:Yes)、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定して、その処理をステップS30に進める。このステップS30以降の処理は、上述した実施形態の処理と同一である。
【0087】
一方、ステップS21において、フラグF=1と判定された場合、つまり、2電源モード時においては、その処理をステップS63に進め、スイッチオフ条件をチェックする。例えば、車速センサ23にて検出される車速Vxを読み込み、車速Vxが設定車速V2を上回っているかを判断する。この設定車速V2は、不感帯を設けるために設定車速V1よりも大きな値(高速値)に設定されている。車速Vxが設定車速V2以下である場合には、スイッチオフ条件を不成立とし、車速Vxが設定車速V2を上回っている場合には、スイッチオフ条件が成立したと判断する。
【0088】
こうしてスイッチオフ条件のチェック処理が完了すると、ステップS51において、スイッチオフ条件が成立の有無が判断され、スイッチオフ条件が成立していれば、ステップS52において、スイッチ51をオフにして(オン状態からオフ状態に切り替えて)、主電源モードに切り替え、ステップS53において、フラグFを「0」にリセットして本制御ルーチンを一旦終了する。また、スイッチオフ条件が成立していない場合は、そのまま本制御ルーチンを終了する。従って、この場合は、2電源モードが継続される。
【0089】
以上説明した第2実施形態によれば、車速Vxが設定車速V1を下回ったときに、その直後に補助電源50による電源供給補助が必要となる可能性があると推定してスイッチ51をオンするため、実際に電動モータ20が大電力で駆動される前に、補助電源50により電源供給補助できる体制に切り替えておくことができる。従って、モータ駆動回路30への電力供給遅れが生じなく、応答性良く電動モータ20を駆動することができる。この結果、運転者に対して操舵違和感を与えない。
【0090】
次に、第3実施形態としての電源供給モード切替制御について説明する。図7は、第3実施形態としての電源供給モード切替制御ルーチンを表すフローチャートである。以下の説明にあたっては、上述した第1実施形態の電源供給モード切替制御と共通する処理については、図面に同一のステップ符号を付して説明を省略する。
【0091】
第3実施形態の電源供給モード切替制御ルーチンも、イグニッションスイッチ106がオンされて初期診断が完了した後に起動し、所定の短い周期で繰り返される。この電源供給モード切替制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS21において、フラグFが「0」か否かについて判断する。フラグF=0の場合、つまり、主電源モード時であれば、ステップS71において、昇圧電流センサ46にて検出される昇圧電流ioutを読み込む。
【0092】
続いて、電源制御部62は、ステップS72において、昇圧電流ioutが予め設定した設定電流i1よりも大きいか否かを判断する。昇圧電流ioutが予め設定した設定電流i1以下である場合には(S72:No)、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定して本制御ルーチンを一旦終了する。一方、昇圧電流ioutが予め設定した設定電流i1より大きい場合には(S72:Yes)、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定して、その処理をステップS30に進める。このステップS30以降の処理は、上述した実施形態の処理と同一である。
【0093】
運転者が操舵操作を行うと、操舵アシスト制御によりモータ駆動回路30から電動モータ20に電流が流れる。この場合、主電源モードであれば、昇圧回路40のみからモータ駆動回路30に電力が供給されることになる。また、昇圧回路40は、定格出力が決められているため、定格出力以下の範囲内においてモータ駆動回路30への電力供給が可能となっている。従って、設定電流i1を昇圧回路40の定格出力が得られる電流値よりも所定量小さな値に設定しておくことで、昇圧電流ioutが設定電流i1を上回ったときに、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することができる。このため、実際に電動モータ20の駆動に必要な電力が昇圧回路40の定格出力を越えてしまう前に、スイッチ51を閉成して2電源モードに切り替えておくことができる。
【0094】
また、設定電流i1の大きさは、仮に昇圧電流ioutが上昇しても補助電源50による電源供給補助が必要となる状況に達するまでの時間が、本電源供給モード切替制御の制御周期よりも長くなる値に設定される。従って、昇圧電流ioutが設定電流i1以下であれば、たとえ昇圧電流が上昇しても次の制御周期までには電動モータ20への電力供給量不足を生じないため、この段階では、補助電源50による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性がないと推定する。
【0095】
一方、ステップS21において、フラグF=1と判定された場合、つまり、2電源モード時においては、その処理をステップS73に進め、スイッチオフ条件をチェックする。この処理は、例えば、第1実施形態のステップS40の処理と同一でよい。あるいは、アシスト制御部61が演算する目標電流ias*を読み込み、この目標電流ias*が所定の小さな値(例えば、ゼロ)にまで低下しか否かを判断し、目標電流ias*が所定の小さな値にまで低下していればスイッチオフ条件が成立したと判定するようにしてもよい。
【0096】
こうしてスイッチオフ条件のチェック処理が完了すると、その処理がステップS51に進められる。ステップS51以降の処理は、第1実施形態の処理と同一である。
【0097】
以上説明した第3実施形態によれば、昇圧電流ioutが設定電流i1を上回ったときに、その直後に補助電源50による電源供給補助が必要となる可能性があると推定してスイッチ51をオンするため、実際に電動モータ20が大電力で駆動される前に、補助電源50により電源供給補助できる体制に切り替えておくことができる。従って、モータ駆動回路30への電力供給遅れが生じなく、応答性良く電動モータ20を駆動することができる。この結果、運転者に対して操舵違和感を与えない。
【0098】
以上、本発明の実施形態の電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、第1実施形態においては、3つの操舵操作量(操舵トルク、操舵角、操舵速度)に基づいて、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定しているが、必ずしも3つの操舵操作量を全て使う必要はなく、そのうちの1つあるいは2つに基づいて、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定するようにしてもよい。また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、車速と操舵操作量とに基づいて、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定するようにしてもよい。この場合、例えば、第1実施形態のステップS21とステップS22のあいだに、第2実施形態のステップS61,62を挿入するとよい。また、第1実施形態と第3実施形態との組み合わせ、あるいは、3つの実施形態の組み合わせを採用することもできる。3つの実施形態を組み合わせる場合には、車速、操舵操作量、昇圧電流のうち少なくとも1つが設定値を上回ったとき(車速の場合は設定車速を下回ったとき)、補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定すればよい。
【0100】
また、本発明のステアリング装置は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、例えば、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
【0101】
また、本実施形態においては、昇圧回路を備えた構成を採用しているが、昇圧回路を備えない構成であってもよい。また、本実施形態においては、補助電源の充電状態の検出をその端子電圧に基づいて行っているが、例えば、放電電流値と電圧降下値との関係等に基づいて精度良く行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
【図2】操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図3】アシストトルクテーブルを表すグラフである。
【図4】第1実施形態の電源供給モード切替制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】第1実施形態のスイッチオフ条件チェックルーチンを表すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の電源供給モード切替制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図7】第3実施形態の電源供給モード切替制御ルーチンを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
10…ステアリング機構、20…電動モータ、21…操舵トルクセンサ、22…回転角センサ、23…車速センサ、30…モータ駆動回路、40…昇圧回路、46…昇圧電流センサ、47…昇圧電圧センサ、50…補助電源、51…スイッチ、52…補助電源電圧センサ、60…電子制御装置、61…アシスト制御部、62…電源制御部、100…主電源(車載電源)、101…主バッテリ、102…オルタネータ、114…充放電ライン、FWL,FWR…左右前輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を転舵するための力を発生する電気アクチュエータと、
車載電源から電源供給され前記電気アクチュエータを駆動する駆動回路と、
運転者の操舵操作に基づいて前記駆動回路を制御して前記電気アクチュエータへの通電量を制御する通電制御手段と、
前記車載電源から前記駆動回路への電源供給路に並列に接続されて、前記車載電源により充電されるとともに、蓄電した電力を使って前記駆動回路への電源供給を補助する補助電源と、
前記補助電源から前記駆動回路への放電路を開閉するスイッチと、
前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があるか否かを推定する推定手段と、
前記推定手段により前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定されたとき、前記スイッチを閉じるスイッチ制御手段と
を備えた車両のステアリング装置。
【請求項2】
操舵ハンドルの操舵操作量を検出する操舵操作量検出手段を備え、
前記推定手段は、前記検出された操舵操作量が設定操舵操作量よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルの操舵角を検出するものであり、
前記推定手段は、前記検出された操舵角が設定操舵角よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項2記載の車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルに働いた操舵トルクを検出するものであり、
前記推定手段は、前記検出された操舵トルクが設定トルクよりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項2または3記載の車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記操舵操作量検出手段は、前記操舵ハンドルの操舵速度を検出するものであり、
前記推定手段は、前記検出された操舵速度が設定操舵速度よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れか一項記載の車両のステアリング装置。
【請求項6】
車速を検出する車速検出手段を備え、
前記推定手段は、前記検出された車速が設定車速よりも低速になったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項記載の車両のステアリング装置。
【請求項7】
前記車載電源の出力電圧を昇圧し、昇圧した電源を前記駆動回路と前記補助電源に供給する昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段と
を備え、
前記推定手段は、前記検出された昇圧回路の出力電流が設定電流よりも大きくなったときに前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項記載の車両のステアリング装置。
【請求項8】
前記補助電源の充電状態を検出する充電状態検出手段と、
前記推定手段が前記補助電源による電源供給補助が必要となる状況が直後に到来する可能性があると推定した場合であっても、前記補助電源の充電状態が予め設定した基準充電状態を下回る場合には、前記スイッチの閉成動作を禁止する禁止手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項記載の車両のステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−95132(P2010−95132A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267325(P2008−267325)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】