説明

車両のデッキガーニッシュ構造

【課題】本発明は、吸収できる荷重の値を効率よく調整することができるデッキガーニッシュを提供する。
【解決手段】デッキガーニッシュ20は、その前端側に前記フロントフード30後端32の下方で、かつカウルトップ16の上方に配置されるエネルギ吸収部材であるデッキガーニッシュロア40を備えており、デッキガーニッシュロア40は、車両前後方向の断面が前後いずれか一方に開口された略U字状に形成され、かつ車幅方向に延設されるとともに、車幅方向に間隔をおいて配置される複数のリブ23が内部に立設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントフードに加わった衝撃を吸収するデッキガーニッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジンルームが車体前部に設けられる自動車などでは、エンジンルームを覆うフロントフードに衝撃が加わった際に、この衝撃を効率よく吸収することで、歩行者への障害値を軽減することが求められている。
【0003】
通常、車体の前部にエンジンルームが形成される自動車などでは、フロントウィンドガラスの下端からフロントフードの後端までの間に、装飾等のために車幅方向にわたって延設されるデッキガーニッシュが備えられている。デッキガーニッシュは、フロントウィンドガラスの下端を支持する骨格部材であるカウルトップの上方に配置され、フロントウィンドガラス下端の上面を覆うとともにフロントフードの後端の下方にもぐりこむように構成されている。
【0004】
また、デッキガーニッシュは、運転席からエンジンルーム内が見えないようにするとともにエンジンルーム内に水などが入り込まないように、その前方側には、フロントフードに向かって立ち上がる縦壁部が設けられており、フロントフードとの隙間が小さくなるように形成されている。
【0005】
しかしながら、上記のように形成されるデッキガーニッシュは、例えば樹脂などから形成されており、ある程度の剛性を有している。このため、フロントフードの上方から衝撃が加わった場合、該衝撃によってフロントフードは、下方に変位してデッキガーニッシュに当接するが、このとき、デッキガーニッシュの剛性によってフロントフードの変位が阻止されてしまう。この結果、フロントフードに加わった衝撃が吸収されにくくなる傾向にある。特に、上記のようにデッキガーニッシュが縦壁部を備える場合では、縦壁部の剛性によってこの傾向が顕著に現れることが考えられる。
【0006】
このため、フロントフードに上方から加わった衝撃を効率よく吸収するために、当該衝撃をデッキガーニッシュで吸収することが提案されている。この種のデッキガーニッシュの構造としては、デッキガーニッシュの一部を脆弱部とし、この脆弱部が破壊されることによってフロントフードに加わった衝撃を吸収している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−306086
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているデッキガーニッシュでは、脆弱部は、ある設定された値以上の衝撃が加わったときに破壊されるものである。言い換えると、デッキガーニッシュの一部を脆弱部とするので、デッキガーニッシュが吸収すべき荷重の値を調整する場合、脆弱部の形状を調整する必要がある。いわゆる、デッキガーニッシュの形状を維持するための剛性と衝撃吸収のための変形し易さとを両立させるための調整が必要となってくる。このため、デッキガーニッシュの一部を脆弱部とする構造では、デッキガーニッシュの衝撃吸収荷重の調整が難しくなることが考えられる。 したがって、本発明の目的は、衝撃吸収荷重の設定を効率よく調整することができるデッキガーニッシュを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する第1の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、車両のフロントウィンドガラス下端と車両のフロントフードの後端との間で車幅方向にわたって配置されるデッキガーニッシュにおいて、同デッキガーニッシュは、その前端側に前記フロントフード後端の下方で、かつ車両の骨格部材の上方に配置されるエネルギ吸収部を備えており、同エネルギ吸収部は、車両前後方向の断面が前後いずれか一方に開口された略U字状に形成され、かつ車幅方向に延設されるとともに、車幅方向に間隔をおいて配置される複数のリブが内部に立設される
この構成によれば、フードに加わった荷重は、デッキガーニッシュのエネルギ吸収部に伝えられ、衝撃荷重を吸収することができる。特に、断面略U字状であるエネルギ吸収部の内部に立設されたリブは、通常時のエネルギ吸収部の形状を維持するとともに、荷重入力時に破壊もしくは変形することによって荷重を効率良く吸収することができる。さらに、デッキガーニッシュのエネルギ吸収部は、リブの数を変えることによって、吸収すべき衝撃荷重の大きさを自在に調整することができるので、衝撃吸収荷重の設定が容易である。
【0009】
上記の課題を解決する第2の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、第1の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造において、前記エネルギ吸収部は、前記フロントフードの後端下方に位置する上壁部と、同上壁部よりも下方の前記骨格部材側に位置する下壁部と、前記上壁部および前記下壁部の車両前後方向いずれか一方の端部どうしを連結する側壁部とを有し、前記上壁部と前記下壁部との間には、前記リブが立設されるとともに、前記側壁部には、上方からの荷重によって変形する脆弱部が設けられる。
【0010】
この構成によれば、エネルギ吸収部に加わった荷重は、側壁部の脆弱部に作用し、側壁部を破壊したりもしくは変形したりする。それゆえ、エネルギ吸収部に加わった荷重を側壁部でも吸収することができ、さらには、エネルギ吸収部内のリブにスムーズに伝達されるので、効率よく衝撃荷重を吸収することができる。
【0011】
上記の課題を解決する第3の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、第1および第2の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造において、前記リブは、平板状であり、上下方向に対して傾斜した状態に立設される。
【0012】
この構成によれば、リブが上下方向に対して斜めに配置されているので、デッキガーニッシュのエネルギ吸収部に上方から荷重が作用したときに、リブが倒れ易くなっているので、エネルギ吸収部が変形するのを邪魔することなく、効率よく衝撃荷重を吸収することができる。
【0013】
上記の課題を解決する第4の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、第1乃至第3の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造において、前記リブにおいて車両前後方向両端部の少なくとも一端には、切り欠き部が形成される。
【0014】
この構成によれば、リブが破壊されたりもしくは変形しやすくなるので、衝撃荷重の吸収がよりスムーズとなる。
【0015】
上記の課題を解決する第5の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、第2乃至第4の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造において、前記側壁部は、車両前後方向断面が前記上壁部と前記下壁部とに対して前記側壁部が配置される側に向かって突出するように屈曲した形状であり、前記脆弱部が、前記側壁部の屈曲部分に設けられる。
【0016】
この構成によれば、側壁部は、脆弱部でより一層変形しやすくなり、エネルギ吸収部の変形がよりスムーズとなり、より確実に衝撃荷重の吸収作用が確実となる。
【0017】
上記の課題を解決する第6の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造は、第1乃至第5の発明に係る車両のデッキガーニッシュ構造において、前記デッキガーニッシュは、車幅方向にわたって延設され、前記フロントウィンドガラスと前記フロントフード間に露出されるデッキガーニッシュアッパと、前記エネルギ吸収部を形成するとともに、前記骨格部材に固定されて前記デッキガーニッシュアッパを支持するデッキガーニッシュロアとから構成されている。
【0018】
この構成によれば、エネルギ吸収部をデッキガーニッシュアッパと別部材としているので、衝撃荷重の吸収によりエネルギ吸収部が変形しても、デッキガーニッシュロアのみを交換することで機能を再生することができる。またエネルギ吸収部を交換することで、様々な条件に対応させた衝撃吸収荷重の設定を簡単に調整することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リブの数を調整するだけで、吸収すべき荷重の大きさを調整することができる。つまり、吸収できる荷重の値を効率よく調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るデッキガーニッシュ20を、図1〜6を用いて説明する。図1は、デッキガーニッシュ20を備える自動車10の車体11の前部を、一部省略して示す斜視図であり、車両幅方向略中央部で切断したものである。図1に示すように、車体11の前部は、エンジンルーム12と、フロントウィンドガラス13と、カウルトップアウタ14とカウルトップインナ15とを備えるカウルトップ16と、デッキガーニッシュ20と、フロントフード30となどを備えている。
【0021】
エンジンルーム12は、車体11において車室よりも前に形成されており、フロントフード30によって覆われている。
【0022】
フロントウィンドガラス13は、車室の前方に配置されており、下端13aをカウルトップ16によって支持されている。カウルトップ16は、車体11の骨格部材であり、フロントウィンドガラス13よりも下方に配置されて、図示しない左右のフロントピラーをつなぐように車幅方向に延設されている。
【0023】
カウルトップ16は、カウルトップアウタ14とカウルトップインナ15とから構成されている。カウルトップアウタ14は、カウルトップ16の車体上方側に配置され、フロントウィンドガラス13の下端13aの下部を支持している。
【0024】
カウルトップインナ15は、カウルトップアウタ14の下方に配置されており、前端がフロントフード30の後端32と重なる位置まで延びて後述するデッキガーニッシュ20の下部を支持している。
【0025】
フロントフード30は、エンジンルーム12の前縁から後方に向かって延設されており、エンジンルーム12上面を覆っている。フロントフード30の後端32側には、支持機構が設けられ、当該支持機構を支点にして前端31側が開閉するように車体11に支持されている。また、フロントフード30の前端31側は、ラッチ機構によってエンジンルーム12の前縁に着脱可能に固定されている。
【0026】
フロントフード30は、フードアウタ33と、フードインナ34とから構成されている。フードアウタ33は、車体外側に面しており、その後端は、上記したフロントフード30の開閉動作を妨げないように、フロントウィンドガラス13の下端13aよりも前方に位置している。
【0027】
フードインナ34は、フードアウタ33の下方に配置されており、フードインナ34の前端と後端とがフードアウタ33の前端と後端とに固定されている。
【0028】
図2は、図1中に示すF2の範囲を拡大するとともに車幅方向側方から見た状態を示す断面図である。図2は、フロントウィンドガラス13の下端13aと、カウルトップ16のカウルトップアウタ14とカウルトップインナ15とフロントフード30の後端32と、デッキガーニッシュ20とを示している。図2に示すように、フードインナ34の後側34aは、例えばフードアウタ33に固定される後端から前方にかけて下方に向かって段状に下がっている。本実施形態では、例えば3段になっている。
【0029】
図1,2に示すように、デッキガーニッシュ20は、カウルトップ16の上方で、フロントウィンドガラス13とフロントフード30との間に配置され、車幅方向にわたって延設されている。デッキガーニッシュ20は、それぞれ車幅方向に延設されたデッキガーニッシュアッパ21とデッキガーニッシュロア40とで構成されている。
【0030】
図2に示すように、デッキガーニッシュアッパ21は、車体表面側に露出され、その後端21aは、フロントウィンドガラス13の下端13aを覆うように取り付けられている。それゆえ、デッキガーニッシュアッパ21の後端21aは、フロントウィンドガラス13の下端13aに沿った形状となっている。デッキガーニッシュアッパ21においてフロントウィンドガラス13下端13aの近傍には、薄肉部21bが形成されている。薄肉部21bは、例えば切り込みが形成されるなどして他の部位に比べて厚みが薄くなっている。
【0031】
また、デッキガーニッシュアッパ21の前端側は、フロントフード30の下方まで延ばされてデッキガーニッシュロア40と結合するとともに下方を支持されている。
【0032】
デッキガーニッシュアッパ21は、ワイパ装置17が車体上方に突出することがないように考慮された形状に形成されており、ワイパ取付部24と、縦壁部25とを有している。
【0033】
ワイパ取付部24は、デッキガーニッシュアッパ21において後端21aよりも前方の位置にあって、ワイパ装置17が取り付けられる。ワイパ取付部24は、フロントフード30の後端32よりも下方かつ前方に向かって延びている。このため、ワイパ取付部24にワイパ装置17が取り付けられても、ワイパ装置17が上方に向かって突出することが抑制される。
【0034】
縦壁部25は、デッキガーニッシュアッパ21においてワイパ取付部24よりも前側に形成されている。縦壁部25は、フロントフード30の後端32に向かって立ち上がるようにフロントフード30後端32付近まで延ばされている。縦壁部25は、フロントフード30との隙間を小さくして運転席からエンジンルーム12内が見えることを防止するなど見栄えをよくしている。
【0035】
デッキガーニッシュアッパ21において縦壁部25よりも前に位置する前部26は、フードインナ34の形状に合わせて、下方に下がった後、前方に延びている。前部26とフロントフード30との間には、フードウェザストリップ18が設けられており、エンジンルーム12内への水の浸入を防いでいる。
【0036】
デッキガーニッシュロア40は、デッキガーニッシュアッパ21の前部26の下方に結合されている。言い換えると、デッキガーニッシュロア40は、フロントフード30の後端32の下方の位置おいて、デッキガーニッシュアッパ21とカウルトップインナ15との間に挟まれて配置されている。
【0037】
デッキガーニッシュロア40は、デッキガーニッシュアッパ21側に位置する上壁部41と上壁部41の下方でカウルトップインナ15側に位置する下壁部42と上壁部41と下壁部42とを連結する縦壁状の側壁部43とから構成されており、車幅方向側方向から見たとき、いわゆる車両前後方向断面が車体前方に開口する略U字状に形成されている。
【0038】
さらに、上壁部41と下壁部42との間には、リブ23が立設されており、これら上壁部41、下壁部42、側壁部43およびリブ23によってデッキガーニッシュ20のエネルギ吸収部を形成している。
【0039】
図3は、デッキガーニッシュロア40の全体を示す斜視図である。図3に示すように、デッキガーニッシュロア40は、長尺状の部材で、車幅方向にわたって配置される。デッキガーニッシュロア40の上壁部41および下壁部42は、平板状で、略並行に上下に並んで設けられ、リブ23は、デッキガーニッシュロア40の内部に車幅方向に間隔を置いて複数配置されている。
【0040】
図2に示すように、デッキガーニッシュロア40は、その上壁部41がデッキガーニッシュアッパ21の前部26の下面に取り付けられ、下壁部42が、カウルトップインナ15の上面に固定されている。そして、側壁部43は、上壁部41の後端41aと下壁部42の後端42aとを連結している。
【0041】
図2に示すように、側壁部43の車両前後方向断面は、上下方向での略中央に位置する中央部43aで屈曲しており、同中央部43aがもっとも車両後方に突出するような折れ曲がった形状に形成されている。つまり、側壁部43は、車両前後方向断面が上壁部41と下壁部42とに対して側壁部43が配置される側に向かって突出するように屈曲した形状である。
【0042】
さらに、側壁部43は、上下端から中央部43aに向かって厚みが次第に薄くなるよう形成されており、側壁部43の屈曲部分である中央部43aの厚みが最も薄くなっている。中央部43aは、上方から荷重が作用した時に、破壊もしくは変形するように設定されている。なお、中央部43aは、本発明で言う脆弱部である。
【0043】
図4は、図3に示されたF4の範囲を拡大して示す斜視図である。図4では、デッキガーニッシュロア40の一端に配置されるリブ23を示している。
【0044】
図4に示すように、リブ23は、平板状で、上壁部41と下壁部42との間に上下方向に対して斜めに配置されている。なお、図2に示すように、リブ23の形状は、リブ23が上下方向に対して斜めに配置されたときにリブ23を側方から見ると、デッキガーニッシュロア40内面に沿う形状である。
【0045】
なお、デッキガーニッシュロア40は、例えば樹脂製であり、リブ23と上壁部41、下壁部42、側壁部43とは、一体に成形されている。
【0046】
図2に示すように、リブ23には、その前端の上下方向略中央部に切り欠き部27が形成されている。切り欠き部27は、リブ23の前端から後方に向かって略三角形状に切り欠かれて、前端側に開口されている。
【0047】
このように形成されるとともに配置されるリブ23の数は、デッキガーニッシュロア40に上方から所定値以上の荷重が作用したときに、上壁部41、下壁部42、側壁部43との連結部Xが変形もしくは破壊されて倒れたり、もしくは切り欠き部27の頂点部分27aの近傍が破壊されたり変形されることによって上記所定値以上の衝撃を吸収できるように、決定されている。なお、所定値とは、吸収されることが求められる大きさである。 つぎに、デッキガーニッシュ20の作用を説明する。図2に矢印で示すように、フロントフード30に上方から所定値以上の荷重Pが加えられると、図5に示すように、フロントフード30が下方に向かって、フロントフード30の後端32がデッキガーニッシュアッパ21の縦壁部25の上端縁に当接するまで変位する。
【0048】
なお、所定値は、吸収されることが望まれる大きさである。図5は、所定値以上の荷重Pがフロントフード30に入力された後のデッキガーニッシュ20の近傍を示している。
【0049】
フロントフード30の後端32がデッキガーニッシュアッパ21の縦壁部25の上端縁に当接することによって、フロントフード30に加えられた荷重Pがデッキガーニッシュアッパ21を介してデッキガーニッシュロア40に伝えられる。
【0050】
図5に示すように、デッキガーニッシュロア40に伝えられた荷重Pは、上壁部41を介して、各リブ23と側壁部43とに作用する。上記したように各リブ23は、上下方向に対して斜めに配置されている。それゆえ、荷重Pは、各リブ23に、各リブ23を倒すように作用する。
【0051】
具体的には、デッキガーニッシュロア40に伝達された荷重Pのうち、各リブ23に作用する荷重成分は、各リブ23と上壁部41、下壁部42、側壁部43との連結部Xに作用するとともに、各リブ23の切り欠き部27の頂点部分27aの近傍に作用する。上記したように、リブ23と上壁部41、下壁部42、側壁部43との連結部Xと切り欠き部27の頂点部分27aとは、デッキガーニッシュロア40に加わる荷重が所定値以上であると、破壊されたりもしくは変形するように設定されている。このため、リブ23は、図6に示すように例えば破壊される。このことによって、荷重Pは、吸収される。
【0052】
上記のように各リブ23が荷重Pを吸収すると、リブ23は、倒れるなどする。このとき、荷重Pは、リブ23に作用すると同時に、側壁部43の中央部43aにも作用し、中央部43aを破壊もしくは変形させる。中央部43aが破壊されたりもしくは変形することによっても、荷重Pは吸収される。このとき、中央部43aが薄く形成されているので、中央部43aは、比較的小さな荷重で変形もしくは破壊される。
【0053】
言い換えると、側壁部43の中央部43aが薄いことによって、側壁部43は、荷重が各リブ23に伝わることを阻害しない。
【0054】
また、側壁部43が、後方に突出する形状に形成されているので、デッキガーニッシュロア40の内方に変形して上壁部41の変位を阻害することがない。
【0055】
上記のように、リブ23、側壁部43の作用によって上壁部41が下方に向かって変位するので、デッキガーニッシュアッパ21も下方に変位されることとなり、フロントフード30からの衝撃荷重を効率よく吸収することができる。なお、デッキガーニッシュアッパ21の薄肉部21bが破壊されることによって、デッキガーニッシュアッパ21の変位は、阻害されない。
【0056】
このように構成されるデッキガーニッシュ20では、リブ23の数を調整することによって、デッキガーニッシュロア40が吸収すべき荷重の値を調整することができる。
【0057】
つまり、吸収すべき荷重の所定値を比較的小さくする場合は、リブ23の数を少なくするとよい。または、吸収すべき荷重の所定値を比較的大きくする場合は、リブ23の数を多くするとよい。
【0058】
また、リブ23が上下方向に対して傾斜しているので、デッキガーニッシュロア40に加わった荷重は、各リブ23と上壁部41、下壁部42、側壁部43との連結部Xに作用しやすくなるとともに、切り欠き部27の頂点部分27aの近傍にも作用しやすくなる。このため、デッキガーニッシュロア40は、安定したつぶれ性能を得ることができる。
【0059】
また、切り欠き部27が形成されることによって、各リブ23は、破壊されやすくもしくは変形しやすくなるので、安定して破壊もしくは変形する。
【0060】
また、デッキガーニッシュロア40が側壁部43を有するとともに側壁部43の中央部43aが薄いので、側壁部43でも衝撃を吸収できるとともに、デッキガーニッシュロア40に加わった荷重がスムーズに各リブ23に伝わるようになる。
【0061】
また、側壁部43は、車両前後方向断面が、中央部43aが後方に向かって突出する形状に形成されているので、より一層変形しやすくなるだけでなく、デッキガーニッシュロア40の内部に向かって変形するのを防いでいる。
【0062】
また、デッキガーニッシュアッパ21に薄肉部が形成されることによって、デッキガーニッシュアッパ21は、荷重がデッキガーニッシュロア40に伝わることを阻害しなくなる。
【0063】
また、リブ23は、切り欠き部27が形成されていることによって、破壊されたり変形しやすくなる。
【0064】
また、デッキガーニッシュ20は、デッキガーニッシュアッパ21と、エネルギ吸収部としてのデッキガーニッシュロア40とを備えている。それゆえ、デッキガーニッシュ20に衝撃が作用して、デッキガーニッシュ20が衝撃を吸収しても、デッキガーニッシュロア40だけを交換すればよい。さらに、デッキガーニッシュロアを交換することによって、様々な条件に対応させた衝撃吸収荷重の設定を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係るデッキガーニッシュを備える自動車の車体の前部を、一部省略して示す斜視図。
【図2】図1中に示すF2の範囲を拡大するとともに車幅方向側方から見た状態を示す断面図。
【図3】図1に示されたデッキガーニッシュロアの全体を示す斜視図。
【図4】図3に示されたF4の範囲を拡大して示す斜視図。
【図5】所定値以上の荷重がフロントフードに入力された後のデッキガーニッシュの近傍を示す断面図。
【図6】図4に示されたリブが破壊された状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0066】
11…車体、12…エンジンルーム、13…フロントウィンドガラス、13a…下端、16…カウルトップ、20…デッキガーニッシュ、23…リブ、27…切り欠き部、30…フロントフード、32…後端、41…上壁部、42…下壁部、43…側壁部、43a…中央部(脆弱部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウィンドガラス下端と車両のフロントフードの後端との間で車幅方向にわたって配置されるデッキガーニッシュ構造において、
同デッキガーニッシュは、その前端側に前記フロントフード後端の下方で、かつ車両の骨格部材の上方に配置されるエネルギ吸収部を備えており、
同エネルギ吸収部は、車両前後方向の断面が前後いずれか一方に開口された略U字状に形成され、かつ車幅方向に延設されるとともに、車幅方向に間隔をおいて配置される複数のリブが内部に立設されることを特徴とする車両のデッキガーニッシュ構造。
【請求項2】
前記エネルギ吸収部は、前記フロントフードの後端下方に位置する上壁部と、同上壁部よりも下方の前記骨格部材側に位置する下壁部と、前記上壁部および前記下壁部の車両前後方向いずれか一方の端部どうしを連結する側壁部とを有し、前記上壁部と前記下壁部との間には、前記リブが立設されるとともに、前記側壁部には、上方からの荷重によって変形する脆弱部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両のデッキガーニッシュ構造。
【請求項3】
前記リブは、平板状であり上下方向に対して傾斜した状態に立設されることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の車両のデッキガーニッシュ構造。
【請求項4】
前記リブにおいて、車両前後方向両端部の少なくとも一端には、切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車両のデッキガーニッシュ構造。
【請求項5】
前記側壁部は、車両前後方向断面が前記上壁部と前記下壁部とに対して前記側壁部が配置される側に向かって突出するように屈曲した形状であり、前記脆弱部が、前記側壁部の屈曲部分に設けられること特徴とする請求項2乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の車両のデッキガーニッシュ構造。
【請求項6】
前記デッキガーニッシュは、車幅方向にわたって延設され、前記フロントウィンドガラスと前記フロントフード間に露出されるデッキガーニッシュアッパと、前記エネルギ吸収部を形成するとともに、前記骨格部材に固定されて前記デッキガーニッシュアッパを支持するデッキガーニッシュロアとから構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の車両のデッキガーニッシュ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−30632(P2008−30632A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206845(P2006−206845)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】