説明

車両のドアサッシュ構造

【課題】ドアサッシュの装飾性を高く維持しつつ、ドアサッシュ部のシール性を適正に保持できるようにする。
【解決手段】ドア本体の上方に設けられたインナサッシュ7の車体開口部側に取り付けられたウエザーストリップ5と、上記アウタサッシュ8に設けられた断面略T字状の外端部23に取り付けられるモール部材6とを備えたドアサッシュ構造であって、上記ウエザーストリップ5が、インナサッシュ7またはアウタサッシュ8に取り付けられる取付基部27と、該取付基部27から車体開口部側に膨出するシール部28,29と、上記アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びるシールリップ部30とを有し、かつ上記モール部材6が、アウタサッシュ8の外端部23を抱持する外側湾曲部34および内側湾曲部35と、該外側湾曲部34から上記シールリップ部30側に突設されて該シールリップ部30に圧接される延長片部36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア本体の上方に設けられたドアサッシュと、その車体開口部側に取り付けられたウエザーストリップと、上記ドアサッシュの外端部に取り付けられるモール部材とを備えた車両のドアサッシュ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、自動車のドアのドアサッシュを装飾するドアサッシュモールに折り返しエッジ部を形成し、該折り返しエッジ部を上記ドアサッシュのエッジ部に緩衝体を介して係合させることにより、上記ドアサッシュの外側表面にドアサッシュモールを配設した自動車のドアサッシュ構造において、上記緩衝体の一部をドアサッシュモールの長さ方向における全長に亘り当該ドアサッシュモールの表面側に延出させて延出部を設け、該延出部で上記ドアサッシュモールの表面の所定部分を覆うことにより、上記ドアサッシュモール表面の長さ方向における全長に亘って非装飾部を形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−213184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された自動車のドアサッシュ構造では、ドアサッシュの上辺部外側表面に取り付けられたウエザーストリップのシール部をルーフサイドレールの外板面(車体開口部側面)に当接させてシールすることにより、閉止状態にあるドアの周辺部から車室内へ雨水が進入するのを防止するように構成されている。しかし、上記ドアサッシュの車外側部を装飾するモール部材とウエザーストリップとの間に進入した雨水が、該ウエザーストリップの下端面とその取付面(ドアサッシュの上辺部外側表面)との間を通って車室内に進入する虞があった。
【0005】
特に、上記ドアサッシュを構成するアウタサッシュとインナサッシュとの係合部に隙間が形成されている場合等には、上記ウエザーストリップとドアサッシュとの間を通って進入した雨水が上記隙間を通って車室内に進入し易いとともに、該ウエザーストリップとドアサッシュとの間に溜まった水分によって錆が発生し易くなる等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ドアサッシュの装飾性を高く維持しつつ、ドアサッシュ部のシール性を適正に保持できる車両のドアサッシュ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ドア本体の上方に設けられたインナサッシュと、その車外側に設けられて断面略T字状の外端部を構成するアウタサッシュと、上記インナサッシュの車体開口部側に取り付けられたウエザーストリップと、上記アウタサッシュの外端部に取り付けられるモール部材とを備えた車両のドアサッシュ構造であって、上記ウエザーストリップが、インナサッシュまたはアウタサッシュに取り付けられる取付基部と、該取付基部から車体開口部側に膨出する主シール部と、上記アウタサッシュの外端部の背面側に向けて延びるシールリップ部とを有し、かつ上記モール部材が、アウタサッシュの外端部を抱持する外側湾曲部および内側湾曲部と、該外側湾曲部から上記シールリップ部側に突設されて該シールリップ部に圧接される延長片部とを有するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のドアサッシュ構造において、上記インナサッシュがプレス成形品からなり、上記アウタサッシュがロール成形品からなるものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両のドアサッシュ構造において、上記インナサッシュが一連の枠状に形成されるとともに、上記アウタサッシュがその長手方向の途中で分断され、上記ウエザーストリップの取付基部には、アウタサッシュの外端部の背面側に向けて突設されて該延びる該外端部の背面に圧接される副シールリップ部が設けられたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、上記ウエザーストリップからアウタサッシュの外端部の背面側に向けて延びるように設けられたシールリップ部に、上記モール部材に設けられた外側湾曲部から上記シールリップ部側に突設された延長片部を圧接させて上記ウエザーストリップとモール部材との間をシールするように構成したため、該モール部材の外周縁部を乗り越えてウエストリップとの間に雨水が浸入した場合においても、該雨水が上記ウエザーストリップの取付面部を通って車室内に進入することを効果的に防止できるという利点がある。
【0011】
請求項2に係る発明では、ドア本体の上方に設置されるインナサッシュをプレス成形するとともに、その車外側に設けられるアウタサッシュをロール成形するように構成したため、上記インナサッシュによりドアサッシュの剛性および強度を充分に確保しつつ、複雑な形状を有するアウタサッシュを容易かつ適正に形成できるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明では、インナサッシュを一連の枠状に形成するとともに、アウタサッシュをその長手方向の途中で分断し、上記ウエザーストリップの取付基部に、アウタサッシュの外端部の背面側に向けて突設されて該外端部の背面に圧接される副シールリップ部を設けた構造としたため、ドアサッシュの剛性および強度を充分に確保しつつ、上記アウタサッシュを、より容易かつ適正に形成することができる。また、上記アウタサッシュの分断部から、上記アウタサッシュの外端部とウエザーストリップとの間に雨水が侵入した場合においても、該該雨水を上記副シールリップ部により堰き止めて車室内の侵入するのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両のドアサッシュ構造を備えたサイドドアの外側面を示す説明図である。
【図2】上記サイドドアの内側面を示す説明図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る車両のドアサッシュ構造の実施形態を示す分解断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図4は、本発明の実施形態に係る車両のドアサッシュ構造を備えたフロント側のサイドドアを示している。該サイドドアは、ドア本体1と、その上方に設けられたドアサッシュ2とを有している。該ドアサッシュ2の車体開口部側には、フロントピラー3およびルーフサイドレール4との間をシールするウエザーストリップ5が設置されるとともに、上記ドアサッシュ2の車外側面を覆う装飾用のモール部材6が設置されている。
【0015】
上記ドアサッシュ2は、ドア本体1の上方に設けられたインナサッシュ7と、その車外側に設けられたロール成形品からなるアウタサッシュ8とにより構成されている。上記ドアサッシュ2のインナサッシュ7は、一連の枠状に形成されたプレス成形品からなり、ドア本体1のインナサッシュと一体的に形成されている。一方、上記アウタサッシュ8は、ロール成形品からなり、その長手方向の途中でフロントピラー3およびルーフサイドレール4の下面に沿った上辺部9と、ドア本体1の後端部から上方に立設された後辺部10とに分断されるとともに、上記上辺部9の前端部がドア本体1の前端部に設けられた三角形のコーナ部11においてドア本体1と分断されている。
【0016】
上記インナサッシュ7は、ウエザーストリップ5が取り付けられる取付面部12と、その車外側端部から車体開口部側(上方側)に延びる起立部13と、上記取付面部12の車内側端部に連設された円弧状の湾曲部14と、その下端部から反車体開口部側(下方側)に延びる垂下部15とを有している。そして、上記サイドドアの閉止時に、フロントピラー3およびルーフサイドレール4のフランジ部17に取り付けられた車体側のウエザーストリップ18が上記インナサッシュ7の湾曲部14に当接することにより、当該部分がシールされるようになっている。
【0017】
上記アウタサッシュ8は、インナサッシュ7の取付面部12の下面に沿って設置される平板部19と、その車外側端部から反車体開口部側に延びる内壁部20と、その下端部から車外側に折り返されて車体開口部側に延びる外壁部21と、その上端部から車内側に折り返されて反車体開口部側に延びるヘム部22とを有している。該アウタサッシュ8のヘム部22と上記外壁部21とでインナサッシュ7の起立部13が狭持されることにより、車幅方向外方側に面した断面略T字状の外端部23が形成されている。
【0018】
また、上記アウタサッシュ8の車内側端部には、反車体開口部側(下方側)に延びる垂下部24と、その下端部から車内側に折り返されて車体開口部側に延びるヘム部25とが設置され、該ヘム部25と上記垂下部24の下部とでインナサッシュ7の垂下部15が狭持されるようになっている。そして、上記アウタサッシュ8の平板部19、内壁部20および垂下部24によりガラスランチャンネル26を保持する保持溝が形成されている。
【0019】
上記ウエザーストリップ5は、ドアサッシュ2のインナサッシュ7およびアウタサッシュ8に取り付けられる取付基部27と、該取付基部27から車体開口部側(上方側)に膨出する第1,第2シール部28,29と、該第2シール部29の基端部から上記アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びる第1シールリップ部30と、上記取付基部27の車外側端部から上記アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びる第2シールリップ部31とを有している。
【0020】
そして、上記ウエザーストリップ5の取付基部27が係止具32を介してインナサッシュ7の取付面部12およびアウタサッシュ8の平板部19に係止されることにより、上記第2シールリップ部31の先端部がインナサッシュ7の起立部13に圧接された状態で設置されている。また、サイドドアの閉止時に、上記ウエザーストリップ5の第1,第2シール部28,29がフロントピラー3およびルーフサイドレール4の下面に当接することにより、ドアサッシュ2の外周縁部がシールされるように構成されている。
【0021】
上記モール部材6は、芯金(図示せず)を合成樹脂材により被覆することによりプレート状に形成されたモール本体33と、その内外両端部から車幅方向内方側に突設されて上記ドアサッシュ2の外端部23を抱持する外側湾曲部34および内側湾曲部35と、該外側湾曲部34から上記ウエザーストリップ5の第1シールリップ部30側に突設された延長片部36とを備えている。該ウエザーストリップ5の第1シールリップ部30に上記モール部材6の延長片部36が圧接されることにより、モール部材6の外周縁部と、ウエザーストリップ5の車外側端部との間がシールされるようになっている(図3参照)。
【0022】
上記ドアサッシュ2の後辺部10は、図5に示すように、図略のセンタピラーに沿って上下方向に延びるアウタパネル37およびインナパネル38と、該アウタパネル37の車外側面を覆うように設置されたガーニッシュ39とを有し、該ガーニッシュ39の前辺部と上記アウタパネル37の前辺部との間にガラスランチャンネル26が設置されている。
【0023】
上記のようにドア本体1の上方に設けられたインナサッシュ7と、その車外側に設けられて断面略T字状の外端部23を構成するアウタサッシュ8と、上記インナサッシュ7の車体開口部側に取り付けられたウエザーストリップ5と、上記アウタサッシュ8の外端部に取り付けられるモール部材6とを備えた車両のドアサッシュ構造において、上記ウエザーストリップ5に、インナサッシュ7またはアウタサッシュ8に取り付けられる取付基部27と、該取付基部27から車体開口部側に膨出する第1,第2シール部28,29と、上記アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びる第1シールリップ部30とを設け、かつ上記モール部材6に、アウタサッシュ8の外端部23を抱持する外側湾曲部34および内側湾曲部35と、該外側湾曲部34から上記第1シールリップ部30側に突設されて該第1シールリップ部30に圧接される延長片部36とを設けたため、ドアサッシュ2の車外側面を覆う装飾用のモール部材6を利用して、ドアサッシュ2の装飾性を高く維持しつつ、ドアサッシュ2の外周縁部を効果的にシール性することができる。
【0024】
すなわち、上記実施形態では、インナサッシュ7の取付面部12およびアウタサッシュ8の平板部19に取り付けられたウエザーストリップ5の第1,第2シール部28,29をフロントピラー3およびルーフサイドレール4の下面に当接させることにより、ドアサッシュ2の車体開口部側とフロントピラー3およびルーフサイドレール4との間をシールするように構成された車両のドアサッシュ構造において、上記第2シール部29の基端部から上記アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びる第1シールリップ部30をウエザーストリップ5に設け、該第1シールリップ部30に、上記モール部材6の外側湾曲部34に突設された延長片部36を圧接させるように構成したため、上記モール部材6の外周縁部を乗り越えて上記第2シール部29の基端部側に雨水が浸入した場合においても、該雨水が上記ウエザーストリップ5の下端面とインナサッシュ7の取付面部12との間を通って車室内に進入するという事態の発生を防止できるという利点がある。
【0025】
したがって、上記ドアサッシュ2を構成するインナサッシュ7とアウタサッシュ8とを係合するヘム加工部等に隙間がある場合においても、上記ウエザーストリップ5とドアサッシュ2との間を通って進入した雨水が車室内に進入し、あるいは該ウエザーストリップ5とドアサッシュ2との間に溜まった水分によって上記ドアサッシュ2を構成するインナサッシュ7もしくはアウタサッシュ8に錆が発生すること等を効果的に防止することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、ドア本体1の上方に設置されるドアサッシュ2のインナサッシュ7をプレス成形品により形成するとともに、その車外側に設けられるアウタサッシュ8をロール成形品により形成したため、上記インナサッシュ7によりドアサッシュ2の剛性および強度を充分に確保しつつ、該インナサッシュ7を係止するヘム部22,25等を備えた複雑な形状のアウタサッシュ8を容易かつ適正に形成できるという利点がある。
【0027】
さらに、上記実施形態では、ドアサッシュ2のインナサッシュ7を一連の枠状に形成するとともに、アウタサッシュ8をその長手方向の途中で分断し、上記ウエザーストリップ5の取付基部27に、アウタサッシュ8の外端部23の背面側(車内側面)に向けて突設されて該外端部23の背面に圧接される第2シールリップ部31からなる副シールリップ部を設けた構造としたため、ドアサッシュ2の剛性および強度を充分に確保しつつ、上記アウタサッシュ8を、より容易かつ適正に形成することができる。
【0028】
しかも、上記アウタサッシュ8の分断部等から、該アウタサッシュ8の外端部23とウエザーストリップ5との間に侵入した雨水を上記第2シールリップ部31により堰き止めることができるため、上記雨水がウエザーストリップ5の下端面とインナサッシュ7の取付面部12との間を通って車室内に進入するという事態の発生を、より効果的に防止できるという利点がある。
【0029】
また、上記のようにアウタサッシュ8をその長手方向の途中で分断した場合には、該アウタサッシュ8を容易に形成できるという利点を有する反面、その分断面に防錆メッキを施すことが困難であるというデメリットが付随することになる。しかし、上記ウエザーストリップ5から、アウタサッシュ8の外端部23の背面側に向けて延びる第1シールリップ部30と第2シールリップ部31とを設け、当該部分を二重にシールするように構成したため、上記アウタサッシュ8の分断面に錆び発生するのを効果的に防止できるという利点がある。
【符号の説明】
【0030】
1 ドア本体
2 ドアサッシュ
5 ウエザーストリップ
6 モール部材
7 インナサッシュ
8 アウタサッシュ
27 取付基部
30 第1シールリップ部(シールリップ部)
32 第2シールリップ部(副シールリップ部)
34 外側湾曲部
35 内側湾曲部
36 延長片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体の上方に設けられたインナサッシュと、その車外側に設けられて断面略T字状の外端部を構成するアウタサッシュと、上記インナサッシュの車体開口部側に取り付けられたウエザーストリップと、上記アウタサッシュの外端部に取り付けられるモール部材とを備えた車両のドアサッシュ構造であって、上記ウエザーストリップが、インナサッシュまたはアウタサッシュに取り付けられる取付基部と、該取付基部から車体開口部側に膨出するシール部と、上記アウタサッシュの外端部の背面側に向けて延びるシールリップ部とを有し、かつ上記モール部材が、アウタサッシュの外端部を抱持する外側湾曲部および内側湾曲部と、該外側湾曲部から上記シールリップ部側に突設されて該シールリップ部に圧接される延長片部とを有することを特徴とする車両のドアサッシュ構造。
【請求項2】
上記インナサッシュがプレス成形品からなり、上記アウタサッシュがロール成形品からなることを特徴とする請求項1に記載の車両のドアサッシュ構造。
【請求項3】
上記インナサッシュが一連の枠状に形成されるとともに、上記アウタサッシュがその長手方向の途中で分断され、上記ウエザーストリップの取付基部には、アウタサッシュの外端部の背面側に向けて突設されて該延びる該外端部の背面に圧接される副シールリップ部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の車両のドアサッシュ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162100(P2012−162100A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21733(P2011−21733)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】