説明

車両のフード構造

【課題】 フードの後部を支持するリンク部材とフードとの連結状態を必要時に応じて解除するとともに、このリンク部材とフードとを連結する操作を容易に行い得るようにする。
【解決手段】 車体の前部に配設されて開閉可能に支持された車両のフード構造であって、車体2側に設けられた枢支部4を支点として揺動可能に枢支されたリンク部材5と、このリンク部材5をフード1の後部に連結してフード1からリンク部材5が離間するのを規制する規制手段とを備え、この規制手段は、上記リンク部材5またはフード1の一方に設けられた嵌合部材13と、他方に設けられた被嵌合部12とにより構成され、上記嵌合部材13は、縮径変位することにより被嵌合部に係脱可能に止着される止着部19を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部に配設されて開閉可能に支持された車両のフード支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体の前部に備えられたフードおよび車体の固定部において、車体の固定部の第1横軸芯を支点として上下に揺動自在に支持された前向きのリンク部材を備え、上記フードの後部裏面に設けられた第2横軸芯を支点としてリンク部材の端部を揺動自在に接続するとともに、上記リンク部材が第2横軸芯を支点としてフード後部の裏面に接近する方向に揺動する状態を阻止する第1阻止部と、上記リンク部材が第2横軸芯を支点としてフード後部の裏面から離される方向に揺動する状態を阻止する第2阻止部とを設けるとともに、上記リンク部材を介してフードを第1横軸芯回りに開閉可能に構成し、車両の障害物への衝突に伴って上記第2阻止部を破損させながらフードの後部を強制的に持ち上げる持ち上げ手段を設け、上記第2阻止部の強度を第1阻止部の強度よりも低く設定した車両のフード構造が知られている。
【特許文献1】特開2005−059799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された車両のフード構造によれば、フードの開閉操作を行う際等には、接続部材の第2阻止部によってリンク部材とフードとが一体に連結された状態で第2横軸芯を支点としてフードが揺動変位するため、フードをスムーズに開閉できるとともに、フードを安定した閉止状態に維持することが可能である。また、走行中の車両が障害物に衝突した場合には、持ち上げ手段の付勢力に応じて接続部材の第2阻止部が破断されることにより、リンク部材が第1横軸芯を支点にして上方に揺動変位することが許容されるとともに、第2横軸芯を支点にしたリンク部材の揺動変位に応じ、フードの後部裏面からリンク部材が離間してフードが強制的に持ち上げられるため、障害物がフードの上面に当接した場合におけるフードの下方への変位量を充分に確保して衝撃を効果的に吸収できるという利点がある。
【0004】
しかし、上記のように車両の衝突時に、持ち上げ手段の付勢力に応じて接続部材の第2阻止部が破断されることにより、リンク部材とフードとを一体に連結する接続部材が脱落することになるため、上記持ち上げ手段の作動後にフードを下降させて再走行する際に、新たな接続部材を用いてリンク部材とフードとを一体に連結しない限り、走行時の振動に応じてフードの後部が上下動することが避けられず、異音が発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フードの後部を支持するリンク部材とフードとの連結状態を必要時に応じて解除するとともに、このリンク部材とフードとを再び連結する操作を容易に行うことができる車両のフード支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体の前部に配設されて開閉可能に支持された車両のフード構造であって、車体に設けられた枢支部を支点として揺動可能に枢支されたリンク部材と、このリンク部材をフードの後部に連結してフードからリンク部材が離間するのを規制する規制手段とを備え、この規制手段は、上記リンク部材またはフードの一方に設けられた嵌合部材と、他方に設けられた被嵌合部とにより構成され、上記嵌合部材は、縮径変位することにより被嵌合部に係脱可能に止着される止着部を備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のフード構造において、リンク部材の一端部を第1枢支部により車体に枢支するとともに、リンク部材の他端部を第2枢支部によりフードに枢支し、この第2枢支部を支点にリンク部材が揺動変位してフードから離間するのを規制手段により規制するように構成したものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のフード構造において、被嵌合部に対する係合案内部となる先窄まりのテーパ面を止着部の先端部に設けたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両のフード構造において、止着部の先端部に設けられたテーパ面からなる係合案内部の基端部側部位に、この係合案内部とは逆方向に傾斜したテーパ面からなる係合保持部を設けたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両のフード構造において、嵌合部材の係合案内部を構成するテーパ面の傾斜角度を、係合保持部を構成するテーパ面の傾斜角度よりも小さな値に設定したものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のフード構造において、嵌合部材を、被嵌合部に比べて小径の芯材と、この芯材を被覆する弾性体からなる止着部とにより構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、車体の前端部が障害物に当接する衝突事故が発生した場合には、リンク部材を上方に付勢する等により上記嵌合部材の止着部を被嵌合部から離脱させてリンク部材とフードとの連結状態を解除することができるため、フードの後部を上昇させることにより、上記障害物がフード上に倒れ込んだ場合等におけるフードの下降量を充分に確保して障害物に作用する衝撃荷重等を効果的に緩和できるとともに、衝突事故の発生後に、上記嵌合部材の止着部を縮径変位させて被嵌合部に止着することにより、新たな連結部材を使用して上記リンク部材とフードとを連結する等の繁雑な作業を要することなく、容易に元の状態に復帰させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、衝突事故の発生時には、第2枢支部を支点に上記フードを揺動変位させて、その後端部をリンク部材から離間させることにより、上記嵌合部材の止着部を被嵌合部からスムーズに離脱させることができるとともに、上記第2枢支部によりフードとリンク部材との連結状態を維持して走行時にフードが跳ね上がること等を防止できるという利点がある。また、上記フードの後部を下方に押圧することにより、第2枢支部を支点にフードを揺動変位させて、その後端部を下降させるとともに、第1枢支部を支点にリンク部材を揺動変位させてリンク部材の先端部を初期位置に自動的に変位させることができるため、連結解除状態となったリンク部材を位置決めした状態でリンク部材をフードの後部に連結するという繁雑な作業を要することなく、フードの後部を下方に押圧するだけで、上記止着部を被嵌合部に止着してリンク部材とフード側部材とを一体に連結することができるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、フードの後部を下方に押圧する操作に応じ、上記止着部を縮径変位させて被嵌合部に圧入する際に、上記係合案内部を構成するテーパ面をガイド面として利用することにより、上記止着部の圧入作業を容易かつ適正に行うことができるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、上記被嵌合部に止着された止着部を被嵌合部から離脱させてフードの後部とリンク部材との連結状態を解除する際に、上記係合保持部を構成するテーパ面をガイド面として利用することにより、上記止着部を被嵌合部から容易かつ適正に離脱させることができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、嵌合部材の止着部に設けられた係合案内部を構成するテーパ面の傾斜角度を、係合保持部を構成するテーパ面の傾斜角度よりも小さな値に設定することにより、上記係合案内部を係合保持部に比べて鋭角な先窄まり形状に形成したため、フードの後部を下方に押圧して上記止着部を被嵌合部に圧入する際に、上記係合案内部を構成するテーパ面のガイド機能を充分に発揮させて嵌合部材の止着部を被嵌合部にスムーズに止着することができる。しかも、上記係合保持部を構成するテーパ面の傾斜角度を、嵌合部材の係合案内部を構成するテーパ面の傾斜角度よりも大きな値に設定することにより、上記止着部を被嵌合部から離脱させる際のガイド機能を維持しつつ、通常時には、上記止着部が被嵌合部から離脱するのを効果的に防止して上記嵌合部材を嵌合位置に安定して保持させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、嵌合部材を高剛性体からなる芯材と、この芯材を被覆する弾性体からなる止着部とにより構成するとともに、上記芯材の軸径を被嵌合部の孔径よりも小径に設定したため、上記嵌合部材を被嵌合部に安定して止着させることができるとともに、止着部を被嵌合部から離脱させてフードの後部とリンク部材との連結状態を解除する際に、曲げ力または捩り力が作用した場合等においても上記嵌合部材が大きく変形するのを上記芯材により阻止することにより、上記嵌合部材が大きく変形することに起因して上記被嵌合部から止着部を離脱させることができなくなったり、止着部が破損したりする等の事態を生じることなく、必要に応じて上記被嵌合部から止着部を適正に離脱させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図4は、本発明に係る車両のフード構造の実施形態を示している。この車両のフード構造は、エンジンルームの上面を覆うように配設されて開閉可能に支持されたフード1と、車体側部材であるフロントフェンダー2の後部上面等にボルト止めされる等により固定されたヒンジブラケット3と、このヒンジブラケット3に設けられたヒンジピン等からなる第1枢支部4により基端部が枢支されたリンク部材5と、前後一対の取付ボルト6によりフード1、具体的にはフードインナパネル1aの後部下面に固定されたフード側部材7とを有し、このフード側部材7にリンク部材5の先端部が枢支されている。
【0019】
上記フード側部材7は、左右一対の側板8と、その上端部同士を連結する取付基板9とを有する断面コ字状に形成されている。上記取付基板9には、取付ボルト6の挿通部となる切欠き溝10および挿通孔11が形成されるとともに、上記リンク部材5に設けられた透孔からなる被嵌合部12に嵌合される嵌合部材13が、車体の後方側に設けられた突部14に取り付けられている。また、上記フード側部材7の側板8には、リンク部材5の先端部を枢支する連結ピン等からなる第2枢支部15の挿通孔16が前端部に形成されるとともに、図5に示すように、下端部が外方側に拡開した拡開部17が、車体の後方側部位に形成されている。
【0020】
上記嵌合部材13は、図6に示すように、鋼材等の高剛性体からなる芯材18と、この芯材18の下端部を被覆するように設置された合成ゴム材等の弾性体からなる止着部19とにより構成されている。また、上記嵌合部材13の芯材18は、その軸径が上記透孔からなる被嵌合部12の孔径よりも小さい軸体により形成され、その上端部にかしめ部21が形成されることにより上記フード側部材7の突部14に取り付けられている。このフード側部材7の突部14には、下方に凹入した凹部22が形成されるとともに、この凹部22に嵌合部材13の芯材18が挿通される挿通孔20が形成されている(図2参照)。
【0021】
上記嵌合部材13の止着部19には、上記被嵌合部12に対する係合案内部23となる先窄まりのテーパ面が先端部(下端部)に形成されるとともに、その基端部側部位に上記係合案内部23とは逆方向に傾斜したテーパ面からなる係合保持部24が形成されている。そして、上記嵌合部材13の止着部19を縮径変位させて上記係合案内部23を被嵌合部12の上方から下方に挿通させることにより、上記係合保持部24が被嵌合部12の周縁部下面に圧接された状態で、上記嵌合部材13の止着部19が被嵌合部12に対して係脱可能に止着されるようになっている。上記止着部19の係合案内部23を構成するテーパ面の軸芯に対する傾斜角度θ1は、係合保持部24を構成するテーパ面の軸芯に対する傾斜角度θ2に比べて小さな値に設定されることにより、係合案内部23が係合保持部24に比べて鋭角な先窄まり形状に形成されている。
【0022】
上記リンク部材5は、鋼板材等からなる左右一対の側板25および両側板25の上端部同士を連結する上面板26からなる断面コ字状のリンク本体27と、上記側板25に連設されて車体の後方側に延びるリンク基部28とを有し、このリンク基部28の後端が上記第1枢支部4を介してヒンジブラケット3に枢支されることにより、このヒンジブラケット3を介して車体に連結されるとともに、第1枢支部4を支点として揺動可能に支持されている。
【0023】
また、上記リンク部材5の上面板26は、その幅寸法がフード側部材7の取付基板9よりも小さい値に設定されることにより、フード側部材7に設けられた左右一対の側板8の間に上記リンク本体27が挿入されるように構成されている。さらに、上記リンク部材5の側板25には、前下がりに傾斜した長孔29が形成され、この長孔29に上記連結ピン等からなる第2枢支部15が挿通されることにより、この第2枢支部15を介してリンク部材5の先端部とフード側部材7の前端部とが回動可能に連結されている。
【0024】
上記リンク部材5の上面板26には、フード側部材7の下面に沿うようにリンク本体27を挿入した際に、上記取付ボルト6がリンク部材5に干渉するのを防止するとともに、軽量化を図るための抜き孔30が形成され、かつ上記嵌合部材13の止着部19が挿通される透孔が所定位置に形成され、この透孔によって上記被嵌合部12が構成されている。そして、通常には、上記フード側部材7の後端部に設けられた嵌合部材13の止着部19が、リンク部材5に設けられた被嵌合部12に止着されることにより、リンク部材5の中間部とフード側部材7の後端部とが一体に連結されるとともに、リンク部材5の先端部とフード側部材7の前端部とが上記第2枢支部15により一体に連結された状態で、ヒンジブラケット3に設けられた第1枢支部4を支点としてフード1の開閉操作が行われるようになっている。
【0025】
すなわち、上記嵌合部材13および被嵌合部12からなる規制手段により、フード1からリンク部材5が離間するのを規制した状態で、フード1の前端部に設けられた図外のロック機構によるフード1のロック状態を解除した後、図1および図7に示す閉止位置にあるフード1の前端部を上方に押し上げることにより、図8に示すように、第1枢支部4を支点に上記リンク部材5の先端部およびフード側部材7を上昇させる方向に揺動変位させてフード1を開放状態に移行させることができる。また、上記リンク部材5とフード側部材7とを一体に連結した状態でフード1をロック位置に係止することにより、車両の走行時にフード1の後部が上下動するのを規制してフード1を安定したロック状態に係止することができる。
【0026】
また、車両の走行時に車体の前端部が障害物に当接したことが図外のセンサにより検出された場合には、図9に示すように、リンク部材5の下方に配設された押上駆動手段31のインフレータ等が作動状態となって、リンク部材5の上面板26が上方に付勢されることにより、上記第1枢支部4を支点としてリンク部材5の先端部が上方に押し上げられるとともに、前端のロック部を支点としてフード1の後部が上方に押し上げられる。この結果、上記嵌合部材13の止着部19が被嵌合部12から離脱してリンク部材5とフード側部材7との連結状態が解除され、上記第2枢支部15を支点としてリンク部材5がフード1から離間する方向に揺動変位することが許容されることになる。
【0027】
上記のようにしてフード1の前端部がロック手段により閉止位置に係止されつつ、押上駆動手段31の付勢力に応じ、上記第2枢支部15を支点としてフード側部材7が揺動変位することが許容されるため、図9および図10に示すように、押上駆動手段31の伸縮押動部32が伸長状態となってフード1の後部が押し上げられるとともに、上記第2枢支部15がリンク部材5の長孔29に沿って車体の前方側にスライド変位しつつ、上記第1枢支部4を支点としてリンク部材5が揺動変位することによりその先端部が上昇する。
【0028】
次いで、上記押上駆動手段31により押し上げられたフード1の後部を下方に押圧すると、上記第2枢支部15を介してフード側部材7に連結されたリンク部材5によりフード1の後部が支持されつつ下方に移動するとともに、これに対応して上記第1枢支部4を支点にリンク部材5が揺動変位することにより、リンク部材5の先端部が図1に示すように初期位置に下降する。このようにしてフード1、フード側部材7およびリンク部材5がそれぞれ初期位置に下降すると、上記嵌合部材13の止着部19が被嵌合部12に圧接されるため、この止着部19が縮径変位して被嵌合部12に止着されることにより、上記リンク部材5とフード側部材7とが一体に連結されて元の状態に復帰する。
【0029】
上記のように車体の前部に配設されて開閉可能に支持された車両のフード構造において、車体に設けられた第1枢支部4を支点として揺動可能に枢支されたリンク部材5を設けるとともに、フード1の後部に設けられた嵌合部材13と、リンク部材5に設けられた被嵌合部12とからなる規制手段により、リンク部材5をフード1の後部に連結してフード1からリンク部材5が離間するのを規制するように構成したため、通常時には、フード1の後部をリンク部材5に連結した状態で、ヒンジブラケット3に設けられた第1枢支部4を支点としてフード1の開閉操作をスムーズに行うことができるとともに、車両の走行時には、フード1の後部が上下動するのを防止してフード1を安定したロック状態に維持できるという利点がある。
【0030】
そして、上記嵌合部材13に設けられた止着部19を縮径変位させて被嵌合部12に係脱可能に止着するように構成したため、車体の前端部が障害物に当接する衝突事故が発生した場合には、押上駆動手段31を作動させてリンク部材5の上面板26を上方に付勢することにより、嵌合部材13の止着部19を被嵌合部12から離脱させてリンク部材5とフード側部材7との連結状態を解除することができる。したがって、図9および図10に示すように、上記押上駆動手段31の付勢力に応じてフード1の後部を上昇させることにより、上記障害物がフード1上に倒れ込んだ場合等におけるフード1の下降量を充分に確保し、このフード1を変形させて障害物に作用する衝撃荷重等を効果的に緩和できるという利点がある。
【0031】
しかも、衝突事故の発生後には、上記のように上昇したフード1の後部を下方に押圧して上記フード側部材7およびリンク部材5を初期位置に下降させることにより、上記嵌合部材13の止着部19を縮径変位させて被嵌合部12に止着することができるため、新たな連結部材を使用して上記リンク部材5とフード側部材7とを連結する等の繁雑な作業を要することなく、容易に元の状態に復帰させることができる。したがって、上記事故の発生、または上記押上駆動手段31の誤作動により後端部が上昇した上記フード1を元の状態に復帰させた後、車両を走行させる際には、フード1の後部が上下動するのを規制してフード1を安定したロック状態に保持することにより、車両の走行時にフード1のがたつきが発生するのを簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
また、上記実施形態では、リンク部材5の基端部を第1枢支部4により車体に枢支するとともに、リンク部材5の先端部を第2枢支部15によりフード1(具体的にはフード1の後部下面に取り付けられたフード側部材7)に枢支し、上記第2枢支部15を支点にリンク部材5が揺動変位してフード1から離間するのを、上記嵌合部材13および被嵌合部12からなる規制手段により規制するように構成したため、上記衝突事故の発生時にリンク部材5の中間部とフード側部材7の後端部との連結状態を適正に解除することができるとともに、連結解除状態となったリンク部材5の中間部とフード側部材7の後端部とを元の状態に復帰させる作業を容易に行うことができる。
【0033】
すなわち、上記第2枢支部15を省略し、リンク部材5の先端部側面に設けられた凹部にフード側部材7の前端部側面に設けられた突部を圧入し、あるいは前後一対の嵌合部材13および被嵌合部12を設ける等により、リンク部材5をフード側部材7に連結してフード1からリンク部材5が離間するのを規制した状態と、リンク部材5とフード側部材7とを完全に離間させた状態とに変位させるように構成することも可能であるが、このように構成した場合には、リンク部材5から離間したフード1の跳ね上がり量を制限するためのワイヤー部材等を設ける必要があるとともに、連結解除状態となったリンク部材5とフード側部材7とを位置決めしつつ、両者を一体に連結するという煩雑な作業が必要である。
【0034】
これに対して上記のようにリンク部材5の先端部を第2枢支部15によりフード側部材7に枢支した場合には、この第2枢支部15を支点に上記フード側部材7を揺動変位させてリンク部材5から離間させる方向に付勢することにより、上記嵌合部材13の止着部19を被嵌合部12からスムーズに離脱させることができるとともに、上記第2枢支部15によりフード1およびフード側部材7とリンク部材5との連結状態を維持してフード1の跳ね上がり等を防止できるという利点がある。
【0035】
また、図9および図10に示す上昇位置にあるフード1の後部を下方に押圧することにより、上記第2枢支部15を支点にフード側部材7を揺動変位させて下降させるとともに、上記第1枢支部4を支点にリンク部材5を揺動変位させてリンク部材5の先端部を図1に示す初期位置に自動的に変位させることができる。したがって、上記のように連結解除状態となったリンク部材5とフード側部材7とを把持して位置決めするという繁雑な作業を要することなく、フード1の後部を下方に押圧するだけで、上記止着部19を被嵌合部12に止着してリンク部材5とフード側部材7とを一体に連結できるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態では、被嵌合部12に対する係合案内部23となる先窄まりのテーパ面を止着部19の先端部に設けたため、フード1の後部を下方に押圧する操作に応じ、上記止着部19を縮径変位させて被嵌合部12に圧入する際に、上記係合案内部23を構成するテーパ面をガイド面として利用することにより、上記止着部19の圧入作業を容易かつ適正に行うことができるという利点がある。
【0037】
さらに、上記実施形態に示すように、嵌合部材13の先端部に設けられたテーパ面からなる係合案内部23の基端部側部位に、この係合案内部23とは逆方向に傾斜したテーパ面からなる係合保持部24を設けた場合には、上記被嵌合部12に止着された止着部19を縮径変位させて被嵌合部12から離脱させる際に、上記係合保持部24を構成するテーパ面をガイド面として利用することにより、上記止着部19を容易かつ適正に被嵌合部12から離脱させてフード1の後部とリンク部材5との連結状態を解除することができる。
【0038】
特に、上記実施形態に示すように、嵌合部材13の係合案内部23を構成するテーパ面の傾斜角度θ1を、係合保持部24を構成するテーパ面の傾斜角度θ2よりも小さな値に設定することにより、係合案内部23を係合保持部24に比べて鋭角な先窄まり形状に形成した場合には、フード1の後部を下方に押圧して上記止着部19を被嵌合部12に圧入する際に、上記係合案内部23を構成するテーパ面のガイド機能を充分に発揮させて上記止着部19を被嵌合部12にスムーズに止着することができる。しかも、上記係合保持部24を構成するテーパ面の傾斜角度θ2が、嵌合部材13の係合案内部23を構成するテーパ面の傾斜角度θ1よりも大きな値に設定されることにより、上記止着部19を被嵌合部12から離脱させる際のガイド機能を維持しつつ、通常時には、上記止着部19が被嵌合部12から離脱するのを防止して上記嵌合部材13を嵌合位置に安定して保持させることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、嵌合部材13を高剛性体からなる芯材18と、この芯材18を被覆する弾性体からなる止着部19とにより構成するとともに、上記芯材18の軸径を被嵌合部12の孔径よりも小径に設定したため、上記嵌合部材13を被嵌合部12に安定して止着させることができるとともに、止着部19を被嵌合部12から離脱させてフード1の後部とリンク部材5との連結状態を解除する際に、所定の曲げ力または捩り力が作用した場合等においても、上記嵌合部材13が大きく変形するのを上記芯材18により阻止することができる。したがって、上記嵌合部材13の変形に起因して上記被嵌合部12から止着部19を離脱させることができなくなったり、止着部19が破損したりする等の事態を生じることなく、必要に応じて上記被嵌合部12から止着部19を適正に離脱させることができるという利点がある。
【0040】
また、上記実施形態では、図5に示すように、フード側部材7の側板8における車体の後方側部位に、下端部が外方側に拡開した拡開部17を形成したため、図9に示すように、フード側部材7の下面から離間した状態となったリンク部材5を揺動変位させて、図1に示すようにフード側部材7内に移動させる際に、フード側部材7の側板8とリンク部材5の側板25との接触面積を小さくすることにより、リンク部材5をスムーズに揺動変位させることができるという利点がある。
【0041】
なお、上記実施形態では、フード1に取り付けられたフード側部材7に嵌合部材13を設けるとともに、リンク部材5に被嵌合部12を設けた例について説明したが、この被嵌合部12を上記フード1側に設けるとともに、嵌合部材13をリンク部材5側に設けた構造としてもよい。また、上記リンク部材5の下方に配設された押上駆動手段31の伸縮押動部32により、上記リンク部材5を上方に付勢して嵌合部材13の止着部19を被嵌合部12から離脱させるように構成された上記実施形態に代え、フード側部材7の取付基板9またはフード1を上方に押動することにより、上記嵌合部材13の止着部19を被嵌合部12から離脱させるように構成してもよい。
【0042】
さらに、上記インフレータが作動することにより伸長状態となる伸縮押動部32を備えた押上駆動手段31に代え、上記リンク部材5の先端部を上方に付勢する第1枢支部4に設けられた鶴巻ばねにより押上駆動手段を構成し、あるいは衝突時に作用する衝撃荷重の反力等に応じてフード1の後部を自動的に上昇させて上記嵌合部材13の止着部19を被嵌合部12から離脱させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る車両のフード構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】フードの後部を支持する支持機構の構成を示す分解斜視図である。
【図3】フードの後部を支持する支持機構の構成を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】フードの閉止状態を示す全体斜視図である。
【図8】フードの開放状態を示す図1相当図である。
【図9】フードの後部を上昇させた状態を示す図1相当図である。
【図10】フードの後部を上昇させた状態を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 フード
2 車体側部材(フロントフェンダー)
4 第1枢支部
5 リンク部材
7 フード側部材(フードの後部)
12 被嵌合部
13 嵌合部材
15 第2枢支部
18 芯材
19 止着部
23 係合案内部
24 係合保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に配設されて開閉可能に支持された車両のフード構造であって、車体に設けられた枢支部を支点として揺動可能に枢支されたリンク部材と、このリンク部材をフードの後部に連結してフードからリンク部材が離間するのを規制する規制手段とを備え、この規制手段は、上記リンク部材またはフードの一方に設けられた嵌合部材と、他方に設けられた被嵌合部とにより構成され、上記嵌合部材は、縮径変位することにより被嵌合部に係脱可能に止着される止着部を備えたことを特徴とする車両のフード構造。
【請求項2】
リンク部材の一端部を第1枢支部により車体に枢支するとともに、リンク部材の他端部を第2枢支部によりフードに枢支し、この第2枢支部を支点にリンク部材が揺動変位してフードから離間するのを規制手段により規制するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両のフード構造。
【請求項3】
被嵌合部に対する係合案内部となる先窄まりのテーパ面を止着部の先端部に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のフード構造。
【請求項4】
止着部の先端部に設けられたテーパ面からなる係合案内部の基端部側部位に、この係合案内部とは逆方向に傾斜したテーパ面からなる係合保持部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の車両のフード構造。
【請求項5】
嵌合部材の係合案内部を構成するテーパ面の傾斜角度を、係合保持部を構成するテーパ面の傾斜角度よりも小さな値に設定したことを特徴とする請求項4に記載の車両のフード構造。
【請求項6】
嵌合部材を、被嵌合部に比べて小径の芯材と、この芯材を被覆する弾性体からなる止着部とにより構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のフード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−62487(P2007−62487A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249175(P2005−249175)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】