説明

車両のルーフ部構造

【課題】
乗員の開放感の増大が図られたパノラマルーフ車両において、クルマ焼けの有効な防止と、パノラマルーフの開放感の維持とを両立させることを課題とする。
【解決手段】
ルーフパネル21と、ルーフパネル21の下方で車幅方向に延びるルーフクロス部材22,23とを含む車両のルーフ部構造において、車室10内でルーフパネル21の前端部21aから前方へ引出し可能な板状の日除け部材60をルーフパネル21の下方に備える。日除け部材60は、ルーフパネル21及びフロントガラス30と略同じ車幅方向の幅を有している。日除け部材60は、ルーフクロス部材22,23のアッパ部材22a,23aとロア部材22b,23bとの間に形成されている車幅方向に延びるスリットを車両前後方向にスライド自在に挿通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のルーフ部構造に関し、自動車等の車両のボディ構造、特に上部ボディ構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のルーフ部は、車室上方を覆うルーフパネルと、このルーフパネルの車幅方向両端部に結合されて車両前後方向に延びる左右のルーフレールと、この左右のルーフレール間に架設されて前記ルーフパネルの下方で車幅方向に延びるフロントヘッダや補強部材としてのルーフクロスメンバと、前記ルーフパネルやルーフクロスメンバ等の下方に配置されて車室の見栄えや風合いの向上を図るルーフトリム等とを備えてなるものである。そして、近年、乗員の開放感を増大する目的で、フロントヘッダの位置を後退させ、フロントガラスの上端部をフロントシート上方のルーフ水平部まで延長させた、いわゆるパノラマルーフ仕様の車両が普及している。
【0003】
なお、特許文献1には、同じく乗員の開放感を増大する技術として、車室が、フロントウインドガラスと、ルーフガラスと、バックウインドガラスと、クオータウインドガラスと、ドアガラスとで囲まれた、いわゆるグリーンハウスと呼ばれる構造の車両が開示されている。
【特許文献1】実開昭64−8414号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のようなパノラマルーフ仕様の車両においては、通常の車両に比べて、日光による車室の温度上昇や内装品の退色等の問題が大きくなるから、そのようなクルマ焼けの問題をより一層有効に防止しなければならない。そして、そのためには、例えばサンシェードやサンバイザー等の日除け部材を用いることが考えられるが、該日除け部材を使用しないときには、それらがパノラマルーフの開放感を阻害しないように対策する必要がある。
【0005】
本発明は、乗員の開放感増大が図られたパノラマルーフ車両における前記課題に対処するもので、クルマ焼けの有効な防止と、パノラマルーフの開放感の維持とを両立させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、ルーフパネルと、このルーフパネルの下方で車幅方向に延びるルーフクロス部材とを含む車両のルーフ部構造であって、車室内で前記ルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な板状の日除け部材が前記ルーフパネルの下方に備えられ、前記日除け部材は、前記ルーフパネル及びフロントガラスと略同じ車幅方向の幅を有すると共に、前記ルーフクロス部材に形成されている車幅方向に延びるスリットを車両前後方向にスライド自在に挿通していることを特徴とする。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両のルーフ部構造において、前記日除け部材は、フロントヘッダを挿通していることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両のルーフ部構造において、前記フロントヘッダのスリットより下部に、ルームミラーの脚部が結合していることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項2又は3に記載の車両のルーフ部構造において、前記日除け部材は、前記フロントヘッダより後方のセンタクロス部材もまた挿通していることを特徴とする。
【0010】
一方、請求項5に記載の発明は、ルーフパネルと、このルーフパネルの下方で車幅方向に延びるルーフクロス部材とを含む車両のルーフ部構造であって、車室内で前記ルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な板状の日除け部材が前記ルーフパネルの下方に備えられ、前記日除け部材は、その前端部にサンバイザー部材と、該サンバイザー部材の収容部とを有すると共に、前記サンバイザー部材が前記収容部に収容された状態で後方へ後退して前記ルーフパネルの下方に配置されているルーフトリム部材で隠蔽されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の車両のルーフ部構造において、前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の下面に備えられ、前記収容部は、前記日除け部材の下面に形成されている凹所であることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項7に記載の発明は、前記請求項5に記載の車両のルーフ部構造において、前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の上面に備えられ、前記収容部は、前記日除け部材の上方空間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車室内でルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な日除け部材が前記ルーフパネルの下方において当該ルーフ部にビルトインで備えられているから、この日除け部材を前方へ引き出すことにより、遮光ができ、パノラマルーフ車両のクルマ焼けの問題を有効に防止することができる。一方、この日除け部材を後方へ後退させることにより、該日除け部材の非使用時におけるパノラマルーフ車両の開放感を維持することができる。
【0014】
その場合に、前記日除け部材は、前記ルーフパネル及びフロントガラスと略同じ車幅方向の幅を有しているから、広い幅で確実に遮光ができる。また、前記日除け部材は、板状であるから、前方へ引き出したときに垂れ下がることが抑制できる。
【0015】
そして、前記日除け部材は、ルーフクロス部材に形成されている車幅方向に延びるスリットを車両前後方向にスライド自在に挿通しているから、この日除け部材は、ルーフクロス部材によって全幅に亘って安定に支持されることとなり、この日除け部材の支持性が簡単な構成にて向上する。
【0016】
次に、請求項2に記載の発明によれば、前記日除け部材が挿通するルーフクロス部材は、ルーフパネルの前端部に配置されているフロントヘッダであるから、ルーフパネルの前端部から前方へ引き出される日除け部材の支持スパンを有効に長く確保することができ、この日除け部材を前方へ引き出したときの支持性がより一層向上する。
【0017】
次に、請求項3に記載の発明によれば、前記フロントヘッダのスリットより下部に、ルームミラーの脚部が結合しているから、このルームミラーの脚部とフロントガラスとの間に間隙が生成し、この間隙を通過して日除け部材はルームミラーの脚部が邪魔にならずに支障なく前方へ引き出すことができる。そして、その前方への引出し量に応じて、車室上方のルーフ部のみの遮光(サンシェード機能)、フロントガラス上部までの遮光(サンバイザー機能)、及びフロントガラス下部までの遮光(駐車時全面日除け機能)等が実現する。その場合に、日除け部材とルームミラー脚部との干渉を考慮する必要がないから、日除け部材にルームミラー脚部を避けるための車両前後方向のスリット等を形成する必要がなく、その結果、この日除け部材でフロントガラスを漏れなく遮光することが可能となり、走行中のより安全な運転の実現と、駐車中のより確実なクルマ焼けの防止とが実現する。
【0018】
次に、請求項4に記載の発明によれば、前記日除け部材は、フロントヘッダを挿通することに加えて、該フロントヘッダより後方のセンタクロス部材もまた挿通しているから、この日除け部材は、フロントヘッダとセンタクロス部材とによって車両前後方向に複数箇所で支持されることとなり、この日除け部材の支持性がこの点からも簡単な構成にてより一層向上する。
【0019】
一方、請求項5に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明と同様、車室内でルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な日除け部材が前記ルーフパネルの下方において当該ルーフ部にビルトインで備えられているから、この日除け部材を前方へ引き出すことにより、遮光ができ、パノラマルーフ車両のクルマ焼けの問題を有効に防止することができる。一方、この日除け部材を後方へ後退させることにより、該日除け部材の非使用時におけるパノラマルーフ車両の開放感を維持することができる。
【0020】
その場合に、前記日除け部材は、その前端部にサンバイザー部材と、該サンバイザー部材の収容部とを有しているから、日除け部材を引き出してサンバイザー部材を使用しないときは、車室上方のルーフ部のみの遮光(サンシェード機能)が実現し、日除け部材を引き出してかつサンバイザー部材を使用したときには、フロントガラス上部までの遮光(サンバイザー機能)が実現する。また、前記日除け部材は、板状であるから、前方へ引き出したときに垂れ下がることが抑制できる。
【0021】
そして、前記日除け部材は、サンバイザー部材が収容部に収容された状態で後方へ後退してルーフパネルの下方に配置されているルーフトリム部材で隠蔽されるように構成されているから、これらの日除け部材及びサンバイザー部材の非使用時には、これらがルーフトリム部材に隠れて見えなくなり、車室の見栄えが損なわれない。また、サンバイザー部材の非使用時には、その非使用状態のサンバイザー部材だけがフロントガラスの上部に残ったりすることがないから、日除け部材の非使用時と同様、該サンバイザー部材の非使用時におけるパノラマルーフ車両の開放感を良好に維持することができる。
【0022】
次に、請求項6に記載の発明によれば、前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の下面に備えられ、前記収容部は、前記日除け部材の下面に形成されている凹所であるから、前記サンバイザー部材を前記収容部に収容したときには、該サンバイザー部材が日除け部材の下面から突出することがなくなり、日除け部材をルーフパネルやルーフトリム部材に対して円滑に前後移動することが確保される。
【0023】
そして、請求項7に記載の発明によれば、前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の上面に備えられ、前記収容部は、前記日除け部材の上方空間であるから、前記サンバイザー部材を前記収容部に収容したときには、該サンバイザー部材が日除け部材に隠れて見えなくなり、日除け部材の外観がすっきりし、これによっても車室の見栄えが損なわれない。また、サンバイザー部材を収容部に収容したときには、該サンバイザー部材が日除け部材の下面から突出することがなくなり、日除け部材をルーフパネルやルーフトリム部材に対して円滑に前後移動することが確保される。以下、発明の最良の実施形態を通して、本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施形態]
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。図1、図2に示すように、この第1の実施形態に係る車両1は、左右のフロントピラー及びリヤピラーで受支されたルーフ部20を有する。ルーフ部20は、車室10の上方を覆うルーフパネル21(図3参照)と、このルーフパネル21の車幅方向両端部に結合されて車両1の前後方向に延びる左右のルーフレール26(図4参照)と、この左右のルーフレール26,26間に架設されて前記ルーフパネル21の下方で車幅方向に延びるフロントヘッダ22(図3参照)及び補強部材としてのセンタクロス部材23(図3参照)と、前記ルーフパネル21やフロントヘッダ22等の下方に配置されて車室10の見栄えや風合いの向上を図るルーフトリム24(図3参照)等とを備えてなっている。
【0025】
そして、この車両1は、乗員X(図3参照)の開放感を増大する目的で、フロントヘッダ22の位置を後退させ、フロントガラス30の上端部をフロントシート50の上方のルーフ水平部まで延長させた、いわゆるパノラマルーフ仕様の車両とされている。その結果、このパノラマルーフ車両1においては、通常の車両に比べて、日光による車室10の温度上昇や内装品の退色等の問題が大きくなるから、そのようなクルマ焼けの問題を有効に防止する対策が施されている。併せて、そのクルマ焼けの防止対策が、パノラマルーフの開放感を阻害しないようにする対策もまた講じられている。
【0026】
すなわち、図3に示すように、ルーフパネル21の下方で、ルーフトリム24の上方に、板状の可動シェード60が備えられている。この可動シェード60は、フロントヘッダ22に形成されている車幅方向に延びるスリット22c(図4参照)を車両1の前後方向にスライド自在に挿通している。また、この可動シェード60は、同様に、前記フロントヘッダ22より後方のセンタクロス部材23に形成されている車幅方向に延びるスリット23cを車両1の前後方向にスライド自在に挿通している。そして、この可動シェード60は、車室10内でルーフパネル21の前端部21aから前方へ引出し可能とされている。
【0027】
その場合に、前記可動シェード60は、図1に破線で示したように、ルーフパネル21及びフロントガラス30と略同じ車幅方向の幅を有していると共に、図1及び図2に破線で示したように、ルーフパネル21と略同じ前後方向の長さを有している。
【0028】
ここで、前記フロントヘッダ22は、図3及び図4に示すように、ルーフパネル21に接合されているアッパ部材22aと、該アッパ部材22aの下方に配置されているロア部材22bとを含んでおり、前記スリット22cは、これらの両部材22a,22b間に生成した上下方向のクリアランスで構成されている。同様に、前記センタクロス部材23は、図3に示すように、ルーフパネル21に接合されているアッパ部材23aと、該アッパ部材23aの下方に配置されているロア部材23bとを含んでおり、前記スリット23cは、これらの両部材23a,23b間に生成した上下方向のクリアランスで構成されている。
【0029】
そして、図3に示したように、前記フロントヘッダ22のスリット22cより下部、つまりロア部材22bに、ルームミラー25の脚部25aが結合している。これにより、ルームミラー25の脚部25aは、フロントガラス30から離間して、ルームミラー25の脚部25aとフロントガラス30との間に所定間隔の間隙Dが生成している。
【0030】
さらに、図4に示したように、可動シェード60は、その左右両側部が断面コ字状のサイドガイド27で把持されて、より円滑に前後方向にスライド移動するように企図されている。前記サイドガイド27は、取付ブラケット27aを介して、ルーフレール26のアウタ部材26aとインナ部材26bのうちインナ部材26bに結合されている。なお、ルーフレール26とルーフトリム24との間には、乗員が車室10の天井に頭を接触させたときのショックを和らげるための緩衝材29が内在されている。また、ルーフレール26の下端部にはドア用のウェザストリップ28が備えられている。
【0031】
このように、本実施形態では、車室10内でルーフパネル21の前端部21aから前方へ引出し可能な可動シェード60が前記ルーフパネル21の下方において当該ルーフ部20にビルトインで備えられている。したがって、前記可動シェード60を前方へ引き出すことにより、遮光ができ、このパノラマルーフ車両1のクルマ焼けの問題を有効に防止することが可能となる。一方、前記可動シェード60を後方へ後退させることにより、該可動シェード60の非使用時におけるこのパノラマルーフ車両1の開放感を維持することが可能となる。
【0032】
その場合に、前記可動シェード60は、ルーフパネル21及びフロントガラス30と略同じ車幅方向の幅を有しているから、広い幅で確実な遮光が実現する。また、前記可動シェード60は、板状であるから、前方へ引き出したときに垂れ下がったりすることがない。可動シェード60は、好ましくは、軽量で適度な柔軟性のある、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で作製されている。
【0033】
そして、前記可動シェード60は、フロントヘッダ22やセンタクロス部材23等のルーフクロス部材に形成されている車幅方向に延びるスリット22c,23cを前後方向にスライド自在に挿通しているから、この可動シェード60は、ルーフクロス部材22,23によって全幅に亘って安定に支持されることとなり、この可動シェード60の支持性が簡単な構成にて向上する。
【0034】
その場合に、前記可動シェード60は、ルーフパネル21の前端部21aに配置されているフロントヘッダ22を挿通しているから、ルーフパネル21の前端部21aから前方へ引き出される可動シェード60の支持スパンを有効に長く確保することができ、この可動シェード60を前方へ引き出したときの支持性がより一層向上する。
【0035】
また、前記可動シェード60は、フロントヘッダ22を挿通することに加えて、該フロントヘッダ22より後方のセンタクロス部材23もまた挿通しているから、この可動シェード60は、フロントヘッダ22とセンタクロス部材23とによって車両1の前後方向に複数箇所(この例では2箇所)で支持されることとなり、この可動シェード60の支持性がこの点からも簡単な構成にてより一層向上する。
【0036】
そして、前記フロントヘッダ22のロア部材22bに、ルームミラー25の脚部25aが結合しているから、前述したように、このルームミラー25の脚部25aとフロントガラス30との間に間隙Dが生成し、この間隙Dを通過して可動シェード60はルームミラー25の脚部25aが邪魔にならずに支障なく前方へ引き出すことができる。その結果、その前方への引出し量に応じて、図5及び図7に矢印Aで示したように、車室10上方のルーフ部20のみの遮光(サンシェード機能)と、図6及び図7に矢印Bで示したように、フロントガラス30上部までの遮光(サンバイザー機能)と、図7に矢印Cで示したように、カウル70まで到達するフロントガラス30下部までの遮光(駐車時全面日除け機能)とが実現する(可動シェード60は、フロントガラス30を全部覆うことができるだけの前後方向の長さを有している)。
【0037】
その場合に、可動シェード60とルームミラー脚部25aとの干渉を考慮する必要がないから、例えば、可動シェード60にルームミラー脚部25aを避けるための車両前後方向のスリット等を形成する必要がなく、その結果、この可動シェード60でフロントガラス30を漏れなく遮光することが可能となり、走行中のより安全な運転の実現と、駐車中のより確実なクルマ焼けの防止とを図ることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
次に、図8〜図12を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を用い、重複部分の詳しい説明は省略して、特徴部分のみ説明する。
【0039】
図8に示すように、この第2の実施形態においては、可動シェード60は、その前端部60aにサンバイザー90,90と、該サンバイザー90,90の収容部91,91とを有している。その場合に、前記サンバイザー90,90は、可動シェード60の下面に備えられ、前記収容部91,91は、可動シェード60の下面に形成されている凹所で構成されている。各サンバイザー90は、前記凹所91を車幅方向に貫通する支軸92及びナット93によって下方へ揺動自在に構成されている。
【0040】
また、図9に示すように、可動シェード60は、サンバイザー90,90が収容部91,91に収容された状態で、後方へ後退して、ルーフパネル21の下方に配置されているルーフトリム24で隠蔽されるように構成されている。なお、この第2実施形態では、ルームミラー25は、その脚部25aがフロントガラス30の内面に接着されている。
【0041】
このように、本実施形態では、前記第1の実施形態と同様、車室10内でルーフパネル21の前端部21aから前方へ引出し可能な可動シェード60が前記ルーフパネル21の下方において当該ルーフ部20にビルトインで備えられている。したがって、前記可動シェード60を前方へ引き出すことにより、遮光ができ、このパノラマルーフ車両1のクルマ焼けの問題を有効に防止することが可能となる。一方、前記可動シェード60を後方へ後退させることにより、該可動シェード60の非使用時におけるこのパノラマルーフ車両1の開放感を維持することが可能となる。
【0042】
その場合に、前記可動シェード60は、その前端部60aにサンバイザー90と、該サンバイザー90の収容部91とを有しているから、図10及び図12に矢印Aで示したように、可動シェード60を引き出してサンバイザー90を使用しないときは、車室10上方のルーフ部20のみの遮光(サンシェード機能)が実現し、図11及び図12に矢印Bで示したように、可動シェード60を引き出してかつサンバイザー90を使用したときには、フロントガラス30上部までの遮光(サンバイザー機能)が実現する。また、前記可動シェード60は、板状であるから、前方へ引き出したときに垂れ下がったりすることがない。可動シェード60は、好ましくは、軽量で適度な柔軟性のある、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で作製されている。
【0043】
そして、前記可動シェード60は、サンバイザー90が収容部91に収容された状態で、後方へ後退して、ルーフパネル21の下方に配置されているルーフトリム24で隠蔽されるから、これらの可動シェード60及びサンバイザー90の非使用時には、これらがルーフトリム24に隠れて見えなくなり、車室10の見栄えが低下することがない。特に、サンバイザー90の非使用時には、その非使用状態のサンバイザー90のみがフロントガラス30の上部に残ったりすることがないから、可動シェード60の非使用時と同様、サンバイザー90の非使用時におけるこのパノラマルーフ車両1の開放感を良好に維持することができる。
【0044】
しかも、前記サンバイザー90は、可動シェード60の下面に備えられ、前記収容部91は、可動シェード60の下面に形成された凹所であるから、前記サンバイザー90を前記収容部91に収容したときには、該サンバイザー90が可動シェード60の下面から突出することがなくなり、可動シェード60をルーフパネル21及びルーフトリム24に対して円滑に前後移動することが確保される。
【0045】
[第3の実施形態]
次に、図12〜図14を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1、第2の実施形態と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を用い、重複部分の詳しい説明は省略して、特徴部分のみ説明する。
【0046】
図13に示すように、この第3の実施形態においては、可動シェード60は、前記第2の実施形態と同様、その前端部60aにサンバイザー90,90(1つのみ図示)と、該サンバイザー90,90の収容部91,91(同じく1つのみ図示)とを有している。その場合に、前記サンバイザー90,90は、可動シェード60の上面に備えられ、前記収容部91,91は、可動シェード60の上方空間(フロントパネル21やフロントヘッダ22までの空間)で構成されている。
【0047】
各サンバイザー90には、車幅方向に開口し、前後方向に延びる節度孔90aが形成されている。そして、この節度孔90aを、可動シェード60の上面に設けられた車幅方向に延びる支軸94が挿通している。サンバイザー90の非使用時は、図13に示したように、可動シェード60の上面において、サンバイザー90を前記節度孔90aを介して前記支軸94に対して後方へ後退させる。一方、サンバイザー90の使用時には、図14に示したように、サンバイザー90を前記節度孔90aを介して前記支軸94に対して前方へ引き出し、かつ該支軸94回りに下方へ揺動させる。
【0048】
また、図13に示すように、可動シェード60は、サンバイザー90,90が収容部91,91に収容された状態で、後方へ後退して、ルーフパネル21の下方に配置されているルーフトリム24で隠蔽されるように構成されている。なお、この第3実施形態においても、ルームミラー25は、その脚部25aがフロントガラス30の内面に接着されている。
【0049】
このように、本実施形態では、前記第2の実施形態と同様、前記可動シェード60は、その前端部60aにサンバイザー90と、該サンバイザー90の収容部91とを有しているから、図12及び図13に矢印Aで示したように、可動シェード60を引き出してサンバイザー90を使用しないときは、車室10上方のルーフ部20のみの遮光(サンシェード機能)が実現し、図12及び図14に矢印Bで示したように、可動シェード60を引き出してかつサンバイザー90を使用したときには、フロントガラス30上部までの遮光(サンバイザー機能)が実現する。また、前記可動シェード60は、板状であるから、前方へ引き出したときに垂れ下がったりすることがない。可動シェード60は、好ましくは、軽量で適度な柔軟性のある、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で作製されている。
【0050】
そして、前記可動シェード60は、サンバイザー90が収容部91に収容された状態で、後方へ後退して、ルーフパネル21の下方に配置されているルーフトリム24で隠蔽されるから、これらの可動シェード60及びサンバイザー90の非使用時には、これらがルーフトリム24に隠れて見えなくなり、車室10の見栄えが低下することがない。特に、サンバイザー90の非使用時には、その非使用状態のサンバイザー90のみがフロントガラス30の上部に残ったりすることがないから、可動シェード60の非使用時と同様、サンバイザー90の非使用時におけるこのパノラマルーフ車両1の開放感を良好に維持することができる。
【0051】
しかも、前記サンバイザー90は、可動シェード60の上面に備えられ、前記収容部91は、可動シェード60の上方空間であるから、前記サンバイザー90を前記収容部91に収容したときには、該サンバイザー90が可動シェード60に隠れて見えなくなり、可動シェード60の外観がすっきりし、これによっても車室10の見栄えが損なわれない。また、サンバイザー90を収容部91に収容したときには、該サンバイザー90が可動シェード60の下面から突出することがなくなり、可動シェード60をルーフパネル21及びルーフトリム24に対して円滑に前後移動することが確保される。
【0052】
なお、本実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正、変更が可能であることはいうまでもない。例えば、走行中は、安全・確実な前方視界が担保されるように、可動シェード60の前方引出し量を、最大限、サンシェード機能実現位置Aないしサンバイザー機能実現位置Bまでに規制するようにしてもよい。そして、乗員が車両1から長時間離れる駐車中のみ、クルマ焼け防止のために、可動シェード60の前方引出し量を無制限に許可するようにしてもよい。そして、そのためには、例えば車速から走行中か駐車中かを判定するようにする。また、可動シェード60の通過経路上にピンやロッドを進出又は退避させて、可動シェード60の前後方向のスライド移動を機械的に禁止又は許可するようにする。
【0053】
また、車両1の意匠として、ルーフ部20の前後方向に亘る曲率とフロントガラス30の前後方向に亘る曲率とが略同じで連続しているような場合は、可動シェード60の前後方向に亘る曲率をそれらの曲率に一致させると、可動シェード60の前方引出し及び後方後退がルーフパネル21やフロントガラス30に接触せずに無理なく行えるようになるから好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、車室内でルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な板状の日除け部材を前記ルーフパネルの下方に備えることにより、パノラマルーフ車両におけるクルマ焼けの有効な防止とパノラマルーフの開放感の維持とを両立させることができ、自動車等の車両のボディ構造、特に上部ボディ構造の技術分野において幅広い産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両の平面図である。
【図2】前記車両の側面図である。
【図3】図1の矢視III−IIIに沿う部分拡大縦断面図である。
【図4】図1の矢視IV−IVに沿う部分拡大縦断面図である。
【図5】可動シェードをサンシェード機能実現まで引き出した様子を示す図3に類似の縦断面図である。
【図6】可動シェードをサンバイザー機能実現まで引き出した様子を示す図3に類似の縦断面図である。
【図7】前記車両の車室からフロントガラスを通して前方を眺めたときの説明図であって、可動シェードのサンシェード機能位置、サンバイザー機能位置、及び駐車時全面日除け機能位置を示すものである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る可動シェードの前端部の前方・下方からの部分分解斜視図である。
【図9】前記可動シェードをルーフトリムに格納した様子を図3に対応して示す縦断面図である。
【図10】前記可動シェードをサンシェード機能実現まで引き出した様子を図5に対応して示す縦断面図である。
【図11】前記可動シェードに備えられたサンバイザー使用時の様子を図6に対応して示す縦断面図である。
【図12】前記車両の車室からフロントガラスを通して前方を眺めたときの説明図であって、可動シェードのサンシェード機能位置、及びサンバイザーのサンバイザー機能位置を示すものである。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る可動シェードの前端部を図3、図9に対応して示す部分拡大縦断面図である。
【図14】前記可動シェードに備えられたサンバイザー使用時の様子を図11に対応して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 車室
20 ルーフ部
21 ルーフパネル
21a ルーフパネル前端部
22 フロントヘッダ(ルーフクロス部材)
22c フロントヘッダスリット
23 センタクロス部材(ルーフクロス部材)
23c センタクロス部材スリット
24 ルーフトリム
25 ルームミラー
25a 脚部
27 サイドガイド
30 フロントガラス
50 フロントシート
60 可動シェード(日除け部材)
60a シェード前端部
90 サンバイザー
91 サンバイザー収容部
A サンシェード機能実現位置
B サンバイザー機能実現位置
C 駐車時全面日除け機能実現位置
D 間隙
X 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、このルーフパネルの下方で車幅方向に延びるルーフクロス部材とを含む車両のルーフ部構造であって、
車室内で前記ルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な板状の日除け部材が前記ルーフパネルの下方に備えられ、
前記日除け部材は、前記ルーフパネル及びフロントガラスと略同じ車幅方向の幅を有すると共に、前記ルーフクロス部材に形成されている車幅方向に延びるスリットを車両前後方向にスライド自在に挿通していることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両のルーフ部構造において、
前記日除け部材は、フロントヘッダを挿通していることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両のルーフ部構造において、
前記フロントヘッダのスリットより下部に、ルームミラーの脚部が結合していることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の車両のルーフ部構造において、
前記日除け部材は、前記フロントヘッダより後方のセンタクロス部材もまた挿通していることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項5】
ルーフパネルと、このルーフパネルの下方で車幅方向に延びるルーフクロス部材とを含む車両のルーフ部構造であって、
車室内で前記ルーフパネルの前端部から前方へ引出し可能な板状の日除け部材が前記ルーフパネルの下方に備えられ、
前記日除け部材は、その前端部にサンバイザー部材と、該サンバイザー部材の収容部とを有すると共に、前記サンバイザー部材が前記収容部に収容された状態で後方へ後退して前記ルーフパネルの下方に配置されているルーフトリム部材で隠蔽されるように構成されていることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項6】
前記請求項5に記載の車両のルーフ部構造において、
前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の下面に備えられ、
前記収容部は、前記日除け部材の下面に形成されている凹所であることを特徴とする車両のルーフ部構造。
【請求項7】
前記請求項5に記載の車両のルーフ部構造において、
前記サンバイザー部材は、前記日除け部材の上面に備えられ、
前記収容部は、前記日除け部材の上方空間であることを特徴とする車両のルーフ部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−335300(P2006−335300A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165142(P2005−165142)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】