説明

車両の下部構造

【課題】本発明は、車両の下部構造について、マウント装置を車体に振動を伝達し難い構造とし、且つ車両衝突時には衝撃吸収性に優れた構造とすることを目的としている。
【解決手段】このため、車両幅方向に搭載したエンジンの車両前後方向後側空間に車両幅方向にサブフレームを配設し、サブフレーム上方に車両幅方向にステアリングギヤボックスと車両前後方向に排気管とを配設し、ステアリングギヤボックス上方にマウント装置を配設した車両の下部構造において、サブフレーム上面部に車両前後方向に凹部を形成し、排気管を下部が凹部に入り込む状態でステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設し、サブフレーム上面側で夫々排気管上方を跨ぐアーチ状の補強部材にマウント装置を締結する一方、車両前側補強部材を車両後側補強部材と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ補強部材両端のサブフレームへの接合部の強度を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の下部構造に係り、特にマウント装置を車体に振動を伝達し難い構造とし、且つ車両衝突時の衝撃吸収性に優れた構造とする車両の下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の下部構造においては、車両のエンジンルームの下部、かつエンジン後方に、車両幅方向に延びるサブフレームを配設し、このサブフレームの上方にステアリングギヤボックスやエンジンのマウント装置、排気管を配設している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−42829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両の下部構造においては、図8に示す如く、エンジンの後方に車両幅方向に延びるサブフレーム110を配設している。
そして、このサブフレーム110の上方に、図8に示す如く、車両幅方向に延びるステアリングギヤボックス121と車両前後方向に延びる排気管130とを互いに交差する状態で配設している。
また、前記ステアリングギヤボックス121の上方には、図8に示す如く、エンジンを支持するエンジンマウント装置(「マウント装置」ともいう。)122を配設している。
つまり、このエンジンマウント装置122は、防振ゴムであるリヤマウント125とを備え、このリヤマウント125の内筒部を、図8に示す如く、マウントブラケット126によって変速機に連結する一方、リヤマウント125の外筒部を第1、第2取付部147、148によって前記サブフレーム110に連結している。
【0005】
このとき、前記エンジンマウント装置122のリヤマウント125がサブフレーム110から鉛直方向で離れた位置に配設されている。
この結果、前記エンジンマウント装置122をサブフレーム110に連結する第1、第2取付部147、148がエンジンの振動で振動し易くなるという不都合がある。
【0006】
また、車両の衝突時に、エンジンを所定距離だけ車両後方に移動させれば、衝撃の吸収性を高めることができるが、従来のマウント装置においては、リヤマウント125の動きが第1、第2取付部材147、148によって抑制され、十分にエンジン後方に移動できる構造になっていなかったため、衝撃吸収性が低くなるという不都合がある。
【0007】
この発明の目的は、サブフレーム上にマウント装置を配設した車両の下部構造について、マウント装置を車体に振動を伝達し難い構造とし、且つ車両衝突時には衝撃吸収性に優れた構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、エンジンルームにクランク軸を車両幅方向に向けたエンジンを搭載し、このエンジンの車両前後方向後側の空間に車両幅方向に延びるサブフレームを配設し、このサブフレームの上方に車両幅方向に延びるステアリングギヤボックスと車両前後方向に延びる排気管とを互いに交差する状態で配設するとともに前記ステアリングギヤボックスの上方に前記エンジンを支持するマウント装置を配設した車両の下部構造において、前記サブフレームの上面部に車両前後方向に延びる凹部を形成し、前記排気管を下部が前記凹部内に入り込む状態で前記ステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設し、前記サブフレームの上面側で車両前後方向に離れた位置に夫々前記排気管の上方を跨ぐアーチ状の補強部材を配設し、これら補強部材に前記マウント装置を締結する一方、両補強部材のうち車両前側に配設された補強部材を車両後側に配設された補強部材と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ前記補強部材の両端の前記サブフレームへの接合部の強度を異ならせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、エンジンルームにクランク軸を車両幅方向に向けたエンジンを搭載し、エンジンの車両前後方向後側の空間に車両幅方向に延びるサブフレームを配設し、サブフレームの上方に車両幅方向に延びるステアリングギヤボックスと車両前後方向に延びる排気管とを互いに交差する状態で配設するとともにステアリングギヤボックスの上方にエンジンを支持するマウント装置を配設した車両の下部構造において、サブフレームの上面部に車両前後方向に延びる凹部を形成し、排気管を下部が凹部内に入り込む状態でステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設し、サブフレームの上面側で車両前後方向に離れた位置に夫々排気管の上方を跨ぐアーチ状の補強部材を配設し、これら補強部材にマウント装置を締結する一方、両補強部材のうち車両前側に配設された補強部材を車両後側に配設された補強部材と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ補強部材の両端の前記サブフレームへの接合部の強度を異ならせた。
従って、サブフレームの上面部に車両前後方向に延びる凹部を形成し、排気管を下部が凹部内に入り込む状態でステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設したことで、凹部を設けない場合と比べてステアリングギヤボックスとその上方のマウント装置を、鉛直方向でサブフレームの近くに配設でき、マウント装置をサブフレームに支持する支持部を振動し難い構造にできる。
そして、サブフレームの上面側で車両前後方向に離れた位置に夫々排気管の上方を跨ぐアーチ状の補強部材を配設し、これら補強部材にマウント装置を締結したため、鉛直方向及び車両幅方向の荷重に対して変形し難いアーチ状の補強部材でマウント装置をサブフレームに支持し、エンジンの振動を車体に伝達し難い構造にできる。
更に、両補強部材のうち車両前側に配設された補強部材を車両後側に配設された補強部材と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ前記補強部材の両端の前記サブフレームへの接合部の強度を異ならせたため、車両衝突時には、車両前側の補強部材の接合部の強度の小なる側を先に破断させ、次いでもう一方の接合部を破断させることができる。これによってエンジンを車両後方に移動できる構造とし、車両前部の衝撃吸収空間を拡大し、車両が受ける衝撃力を吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図7はこの発明の実施例を示すものである。
図2及び図3において、1は車両、2は車両1の前輪、3は車両1の後輪、4はダッシュパネル、5は車両1の前部、つまり前輪2、2間かつダッシュパネル4によって区画形成されるエンジンルーム、6はエンジンルーム5内に搭載されるディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という。)である。
前記車両1のエンジンルーム5内には、図2及び図3に示す如く、クランク軸7を車両幅方向に向けた横置き状態の前記エンジン6と変速機8とを搭載する。
そして、このエンジン6の車両前後方向後側の空間9に、図2及び図3に示す如く、車両幅方向に延びるサブフレーム10を配設する。
そして、エンジン6と変速機8の左右両側部を左マウント23と、右マウント24とによって車両1に支持し、エンジン6の後部をエンジンマウント装置22によってサブフレーム10に支持する。
【0012】
このとき、サブフレーム10は、図4及び図6、図7に示す如く、本体部11と、この本体部11の車両幅方向左側部を車両前後方向前側に突出させて形成した左側の第1フロントサスペンション取付部12と、前記本体部11の車両幅方向右側部を車両前後方向前側に突出させて形成した右側の第2フロントサスペンション取付部13と、前記本体部11の車両幅方向左側部を車両前後方向後側に突出させて形成した左側の第1車体取付部14と、前記本体部11の車両幅方向右側部を車両前後方向後側に突出させて形成した右側の第2車体取付部15と、前記本体部11の車両幅方向左側部の中央部位から上方に立ち上がり、その後に車両幅方向左側部に向かって斜め上方に指向する左側の第1車体取付部材16と、前記本体部11の車両幅方向右側部の中央部位から上方に立ち上がり、その後に車両幅方向右側部に向かって斜め上方に指向する右側の第2車体取付部材17と、前記本体部11の中央部位から後述する排気管30を挟むように車両前後方向後側に突出させて形成した2本のハンガ18、19と、後述するステアリングギヤボックス21を取り付けるための取付部20とからなる。
従って、前記サブフレーム10に、第1、第2フロントサスペンション取付部12、13によってフロントサスペンションを揺動可能に取り付けることができる。
また、前記サブフレーム10を、第1、第2車体取付部14、15及び第1、第2車体取付部材16、17によって前記車両1の車体側に堅固に取り付けることができる。
【0013】
また、前記サブフレーム10の上面部10aにおいて、図3〜図5に示す如く、サブフレーム10の上方に車両幅方向に延びるステアリングギヤボックス21と車両前後方向に延びる排気管30とを互いに交差する状態で配設するとともに、前記ステアリングギヤボックス21の上方に前記エンジン6を支持するエンジンマウント装置(「マウント装置」ともいう。)22を配設する。
このとき、前記エンジンマウント装置22は、図1及び図6に示す如く、防振ゴムを備えるとともにサブフレーム10に固定されるリヤマウント25と、このリヤマウント25を変速機8に連結するマウントブラケット26とを備え、リヤマウント25は、図1に示す如く車両前後に突出するマウント取付部27を介して後述する補強部材35に取り付けられている。
そして、前記ステアリングギヤボックス21は、図1に示す如く、複数のステアリングギヤボックス取付部28を介してサブフレーム10に取り付けられている。
【0014】
この際、前記サブフレーム10の上面部10aに車両前後方向に延びる凹部29を形成し、排気管30を下部が前記凹部29内に入り込む状態で前記ステアリングギヤボックス21の鉛直方向下側に配設する。
従って、凹部29を設けない場合と比べてステアリングギヤボックス21とその上方のエンジンマウント装置22を、鉛直方向でサブフレーム10の近くに配設でき、エンジンマウント装置22をサブフレーム10に支持する支持部がエンジンの振動で振動し難い構造とすることができる。
なお、前記凹部29は、前記サブフレーム10の上面部10aの略中央部位を、図1及び図6、図7に示す如く、サブフレーム10の下面部10bから下方に突出しない範囲で窪ませて形成する。
そして、図3〜図5に示す如く、前記エンジン6の排気管30を前記サブフレーム10の上方を通過して車両後方に延出する一方、この排気管30の前記サブフレーム10より車両前後方向後側の部位にパティキュレートフィルタ31を配設する。
このとき、この排気管30は、図2〜図5に示す如く、上流側端部が前記エンジン6の車両前後方向前側の排気側に接続されており、途中部位に酸化触媒32が配設されるとともに、前記凹部29の車両前後方向前側においてフレキシブルチューブ33が接続されている。
前記凹部29を通過した後の排気管30は、前記パティキュレートフィルタ31に接続され、図2に示す如く、パティキュレートフィルタ31の下流側が前記車両1の後輪3、3間、かつ車両幅方向右側部の後輪3近傍に配設されるマフラ34に接続される。
上記構造によって前記パティキュレートフィルタ31に到る前記排気管30の管長が短くなり、前記パティキュレートフィルタ31に流入する排気ガス温度の低下を防止し、前記パティキュレートフィルタ31をパティキュレートの燃焼除去可能な温度に維持し、パティキュレートフィルタ31の浄化性能を向上させることが可能である。
【0015】
一方、前記サブフレーム10の上面側10aで車両前後方向に離れた位置に夫々前記凹部29及び前記排気管30の上方を跨ぐアーチ状の補強部材35を配設する。
そして、前記エンジンマウント装置22を補強部材35を介して前記サブフレーム10の上面部10aに連結する構成とする。
【0016】
詳述すれば、前記補強部材35は、車両前側に配設された補強部材である第1補強部材36と、この第1補強部材36よりも車両後側に配設された補強部材である第2補強部材37とで構成される。
そして、前記補強部材35の第1補強部材36は、図1及び図6に示す如く、前記サブフレーム10の車両前後方向前部に配設され、車両幅方向の両端の第1接合部36a、第2接合部36bを介してサブフレーム10に接合される。
また、前記補強部材35の第2補強部材37は、図1及び図6に示す如く、前記第1補強部材36よりも大形に形成され、第1補強部材36の車両後方側に所定の空間を隔てて配設され、車両幅方向の両端の第1接合部37a、第2接合部37bを介してサブフレーム10に接合される。
このとき、前記第1補強部材36には、下方に位置する前記凹部29に対峙し、この凹部29と共に円形状の貫通形状を現出させ、しかも前記排気管30の上方を跨ぐアーチ状とするために、第1上側凹部38が設けられる。
そして、前記第1補強部材36の第2接合部36bは、車両幅方向の寸法及び厚さ方向の寸法が第1接合部36aより大きく形成され、その上面部に前記エンジンマウント装置22用の取付部39が一体的に設けられる。
これによって、第2接合部36bは第1接合部36aより断面積が大きく、強度の高い構造となる。
一方、前記第2補強部材37には、下方に位置する前記凹部29に対峙し、この凹部29と共に円形状の貫通形状を現出させ、しかも前記排気管30の上方を跨ぐアーチ状とするために、第2上側凹部40が設けられる。
そして、前記第2補強部材37は、第2接合部37bが第1接合部37aより車両幅方向の寸法が大きく形成され、図1及び図6に示す如く、車両幅方向の右側に前記ステアリングギヤボックス21用の第1取付孔部41が設けられるとともに、車両幅方向の左側に前記エンジンマウント装置22用の第2取付部42が設けられる。
従って、前記補強部材35を構成する前記第1補強部材36と前記第2補強部材37とを前記排気管30の上方を跨ぐアーチ状に形成して凹部29の長手方向両端部に配置することで、凹部29に沿って発生するサブフレーム10の変形を大幅に抑制することができる。
【0017】
更に、前記ステアリングギヤボックス21を、図1、図4及び図5に示す如く、前記第1補強部材36と前記第2補強部材37との間に配置し、ステアリングギヤボックス取付部28を介してサブフレーム10に連結する。
このとき、車両幅方向右側のステアリングギヤボックス取付部28は、車両前後方向前部の前側第1ステアリングギヤボックス取付部43と、車両前後方向後部の後側第2ステアリングギヤボックス取付部44とからなる。
そして、前記ステアリングギヤボックス21は、図4に示す如く、前記サブフレーム10の上面部10aに形成した前記取付部20を利用して取り付けられる前記前側第1ステアリングギヤボックス取付部43と、前記補強部材35の前記第2補強部材37に形成した前記第1取付部41を利用して車両幅方向の右側に取り付けられる前記後側第2ステアリングギヤボックス取付部44とによって、前記サブフレーム10の上面部10aに取り付けられる。
従って、前記ステアリングギヤボックス21を介して補強部材35としての第2補強部材37をサブフレーム10の上面部10aに連結し、サブフレーム10の変形を抑制することができる。
【0018】
更にまた、前記第1補強部材36及び前記第2補強部材37に前記エンジンマウント装置22を締結する。
つまり、このエンジンマウント装置22は前記マウント取付部27を有しており、このマウント取付部27は、図1に示す如く、車両前後方向前部の前側第1マウント取付部45と、車両前後方向後部の後側第2マウント取付部46とからなる。
そして、図1及び図6に示す如く、前記第1補強部材36の第2接合部36b側に形成した取付部39を利用して取り付けられる前記前側第1マウント取付部45と、前記第2補強部材37の第2接合部37b側に形成した前記第2取付孔42を利用して取り付けられる前記後側第2マウント取付部46とによって、前記エンジンマウント装置22を前記第1補強部材36及び前記第2補強部材37に連結する。
従って、鉛直方向及び車両幅方向の荷重に対して変形し難いアーチ状の第1補強部材36、第2補強部材37を介してエンジンマウント装置22をサブフレーム10に連結し、エンジンの振動を車体に伝達し難い構造とすることができる。
【0019】
さらに、両補強部材36、37のうち車両前側に配設された第1補強部材36を車両後側に配設された第2補強部材37と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ前記第1補強部材36の両端の前記サブフレーム10への第1接合部36a、第2接合部36bの強度を異ならせた構成とする。
従って、車両衝突時には、車両前側の第1補強部材36の接合部の強度の小なる第1接合部36aを先に破断させ、次いでもう一方の第2接合部36bを破断させて、エンジンマウント装置22を車両後方に移動させることができる。
これによってエンジン6を車両後方に移動できる構造とし、車両前部の衝撃吸収空間を拡大し、車両が受ける衝撃力を吸収できる。
【0020】
詳述すれば、前記補強部材35のうち車両後側に配設される第2補強部材37を鉄系の板材で前記サブフレーム10と一体的に形成する一方、車両前側に配設される第1補強部材36を、鉄系の板材からなる第2補強部材37と比べて、車両前方からの衝撃力で破断し易い材料、例えばアルミ系の鋳造材料で形成するものである。
従って、上記構造によって、第1補強部材36の軽量化を図りつつ車両衝突時の衝撃吸収性を向上させることができる。
【0021】
ここで、前記第1補強部材36の両端を前記サブフレーム10に接合する第1接合部36aと第2接合部36bの強度を異ならせる方法について説明する。
この第1接合部36a、第2接合部36bの強度は、第1、第2接合部36a、36bの断面形状や接合部36a、36bを固定する固定具の数によって変動する。
このため、本実施例においては、第2接合部36bの車両幅方向の寸法と厚さ方向の寸法を第1接合部36aの車両幅方向の寸法と厚さ方向の寸法より大きくし、第2接合部36bの強度を第1接合部36aの強度より大としている。
【0022】
次に作用を説明する。
【0023】
通常時には、サブフレームの上面部に車両前後方向に延びる凹部を形成し、排気管を下部が凹部内に入り込む状態でステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設したことで、凹部を設けない場合と比べてステアリングギヤボックスとその上方のマウント装置を、鉛直方向でサブフレームの近くに配設でき、マウント装置をサブフレームに支持する支持部を振動し難い構造にできる。
また、サブフレーム10の上面側10aで車両前後方向に離れた位置に夫々排気管30の上方を跨ぐアーチ状の補強部材35を配設し、これら補強部材35にエンジンマウント装置22を締結したため、鉛直方向及び車両幅方向の荷重に対して変形し難いアーチ状の補強部材35で凹部29の変形を抑制し、且つエンジンマウント装置22のサブフレーム10への支持剛性を向上させ、エンジンの振動を車体に伝達し難い構造とすることができる。
さらに、前記車両1の前側において、衝突が発生した際には、衝突時の衝撃力によって車両前側が変形し、この車両前側の変形によって前記エンジンルーム5が収縮され、車両前側の変形がエンジン6に至ることとなる。
そして、衝突時の衝撃力がエンジン6に至ると、エンジン6を車両後側に押圧することとなるため、このエンジン6を支持するリヤマウント25を介して、前記サブフレーム10に固定される前記第1、第2補強部材36、37に衝突時の衝撃力が作用する。
このとき、車両後側に配設される第2補強部材37を鉄系の板材で前記サブフレーム10と一体的に形成する一方、車両前側に配設される第1補強部材36を、鉄系の板材からなる第2補強部材37と比べて、車両前方からの衝撃力で破断し易い材料、例えばアルミ系の鋳造材料で形成し、且つ前記第1補強部材36の両端を前記サブフレーム10に接合する第1接合部36aと第2接合部36bの強度を異ならせた構成としたため強度の小なる第1接合部36aが、衝突時の衝撃力によって先に破断され、次いで、もう一方の接合部の強度の大なる第2接合部36bが破断される。
つまり、第1補強部材36を衝撃力で破断し易い材料とし、且つ第1補強部材36の両端の第1接合部36aと第2接合部36bの強度を異ならせたことにより、第1補強部材36を車両が受ける衝撃力によって効率的に破断させることができる。
また、前記第1補強部材36の両端の第1接合部36a、第2接合部36bが破断されることにより、エンジン6が車両後方に移動されるため、車両前部の衝撃吸収空間を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例におけるマウント取付状態を示すサブフレームの左前方斜視図である。
【図2】車両の概略平面図である。
【図3】車両の前部の概略右側面図である。
【図4】サブフレーム周辺の概略平面図である。
【図5】サブフレーム周辺の概略右側面図である。
【図6】マウント取付状態を示すサブフレームの右前方斜視図である。
【図7】サブフレームの正面図である。
【図8】この発明の従来技術を示すサブフレームの右前方斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 車両
4 ダッシュパネル
5 エンジンルーム
6 エンジン
8 変速機
9 空間
10 サブフレーム
21 ステアリングギヤボックス
22 エンジンマウント装置(「マウント装置」ともいう。)
23 左マウント
24 右マウント
25 リヤマウント
29 凹部
30 排気管
35 補強部材
36 第1補強部材
36a 第1接合部
36b 第2接合部
37 第2補強部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームにクランク軸を車両幅方向に向けたエンジンを搭載し、このエンジンの車両前後方向後側の空間に車両幅方向に延びるサブフレームを配設し、このサブフレームの上方に車両幅方向に延びるステアリングギヤボックスと車両前後方向に延びる排気管とを互いに交差する状態で配設するとともに前記ステアリングギヤボックスの上方に前記エンジンを支持するマウント装置を配設した車両の下部構造において、前記サブフレームの上面部に車両前後方向に延びる凹部を形成し、前記排気管を下部が前記凹部内に入り込む状態で前記ステアリングギヤボックスの鉛直方向下側に配設し、前記サブフレームの上面側で車両前後方向に離れた位置に夫々前記排気管の上方を跨ぐアーチ状の補強部材を配設し、これら補強部材に前記マウント装置を締結する一方、両補強部材のうち車両前側に配設された補強部材を車両後側に配設された補強部材と比べて車両前方からの衝撃力で破断し易い材料で形成し、且つ前記補強部材の両端の前記サブフレームへの接合部の強度を異ならせたことを特徴とする車両の下部構造。
【請求項2】
前記補強部材のうち車両後側に配設される補強部材を鉄系の板材で前記サブフレームと一体的に形成する一方、車両前側に配設される補強部材をアルミ系の鋳造材料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−83799(P2009−83799A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259388(P2007−259388)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】