車両の下部車体構造
【課題】車両後部のフロアパネル下面側にタンクを配設する車両の下部車体構造において、車両衝突時の安全性を向上させるとともに車体後部に作用する空気抵抗を低減させる。
【解決手段】車両後部のフロアパネル1下面側に、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造である。フロアパネル1の下面側における還元剤タンク21と排気管19との間にボックス部材29が配設されている。
【解決手段】車両後部のフロアパネル1下面側に、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造である。フロアパネル1の下面側における還元剤タンク21と排気管19との間にボックス部材29が配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関し、特に、車両後部のフロアパネル下面側にタンクが配設されている車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の内燃機関(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等)から排出される排気ガス中の窒素酸化物を、排気管に配設したNOX還元触媒を用いて浄化する排気浄化システムが知られている。また、NOX還元触媒における浄化効率を高めるために、アンモニアを還元物質として用いることが提案されている。例えば、尿素水溶液を還元触媒上流側の排気管内に添加すると、排気ガスの熱により尿素水溶液が加熱分解されてアンモニアが生成し、窒素酸化物の浄化が促進される。
【0003】
このように、尿素水溶液から生成されるアンモニアを還元物質として用いる場合には、尿素水溶液を貯蔵するタンク(還元剤タンク)を車体に保持させる必要がある。例えば、特許文献1には、還元剤タンクを車両のエンジンルームやサイドカウル部に配備した車両用排気浄化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−242092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知のように、アンモニアは強い刺激臭を放つとともに毒性を有しているいることから、例えば車両の衝突時に還元剤タンクが破損した場合にも、アンモニアや尿素水溶液が車室内に侵入するのを確実に防ぐ必要がある。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように従来の車両用排気浄化装置では、還元剤タンクをフロアパネルの上面側に配置するものが多く、還元剤タンクが破損した場合、アンモニアや尿素水溶液が車室内に侵入するおそれがある。
【0006】
そこで、車室内とは確実に仕切られているフロアパネルの下面側に還元剤タンクを配設することが考えられるが、この場合、車両後突時の安全性を高めるために、可燃性の高い燃料が貯蔵された燃料タンクよりも後方に還元剤タンクを配設することが望ましい。また、フロアパネルの下面側には車両前後方向に延びるように排気管が配設されていることから、車両衝突時に還元剤タンクと排気管とが接触したり、破損した還元剤タンクから漏れた尿素水溶液が排気管からの放熱により熱分解されて毒性を有するアンモニアが発生したりするのを防ぐために、還元剤タンクを排気管から車幅方向に所定間隔を隔てて配設する必要がある。
【0007】
このように、車両後突時の安全性を高めるとともに毒性を有するアンモニアの発生を抑えるためには、車両後部のフロアパネル下面側に、還元剤タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するのが望ましいが、このようなレイアウトでは、フロアパネル下面側を流れて還元剤タンクと排気管との間を通り抜けた空気が車体後部(リヤエンドパネル)にまともに当たることになり、車体に作用する空気抵抗が大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両後部のフロアパネル下面側にタンクを配設する車両の下部車体構造において、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルの下面側における上記タンクと上記排気管との間にボックス部材が配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時にタンクと排気管とが干渉するのを抑えることができる。
【0011】
また、タンクと排気管との間にボックス部材が配設されているので、車両衝突時にタンクと排気管とが接近するのを抑えることができるとともに、フロアパネル下面側を流れる空気が車体後部に作用するのを抑えることができる。
【0012】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ボックス部材は、樹脂製であり、上記ボックス部材の上記排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明によれば、ボックス部材の排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられているので、排気管の近傍に樹脂製のボックス部材を配置した場合にも、排気管からの放熱によるボックス部材の変形等を抑えることができる。したがって、車両の軽量化と熱害対策との両立を図ることができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記フロアパネルの下面側には、上記タンクを支持するための支持フレームが配設されており、上記ボックス部材は、上記タンク側で上記支持フレームに支持されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明によれば、ボックス部材は支持フレームに支持されているので、ボックス部材をフロアパネルに直接取り付ける場合に比べて、ボックス部材の支持剛性を向上させることができる。
【0017】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記支持フレームには、上記ボックス部材を支持するための支持ブラケットが配設されており、上記支持ブラケットには、上記ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明によれば、ボックス部材を支持するための支持ブラケットに、ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されているので、ボックス部材の取付(本組付け)を容易に行うことができる。
【0019】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記ボックス部材の上記排気管側には、該ボックス部材を上記フロアパネルに取り付けるための取付部が設けられており、上記ボックス部材の仮組付け時に上記取付部を上記フロアパネルに締結する締結部材を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
第5の発明によれば、ボックス部材をフロアパネルに取り付ける排気管側の取付部は、ボックス部材の仮組付け時に締結部材によりフロアパネルに締結されるので、仮組付け時にボックス部材を車幅方向両側から支持することができる。これにより、仮組付け時においてもボックス部材が安定支持されるので、ボックス部材の取付(本組付け)をより一層容易に行うことができる。
【0021】
第6の発明は、車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、上記タンクには、該タンクをその下側から覆うカバー部材が取り付けられており、上記カバー部材は、上記タンクと上記排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びていることを特徴とするものである。
【0022】
第6の発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時にタンクと排気管とが干渉するのを抑えることができる。
【0023】
また、タンクをその下側から覆うカバー部材が、該タンクと該排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びているので、フロアパネル下面側を流れる空気が車体後部に作用するのを抑えることができる。
【0024】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設することから、車両衝突時のタンクと排気管との干渉が抑えられるとともに、タンクと排気管との間の空間が埋められていることから、フロアパネル下面側を流れる空気の車体後部への作用が抑えられるので、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る車両後部の下部車体構造を示す底面図である。なお、図を見易くするために排気管17の支持部材やサスペンション等は図示省略している。
【0028】
図中の符合1はフロアパネルを示し、このフロアパネル1の後端部における車幅方向中央には下方に凹んだタイヤパン3が形成されている。また、フロアパネル1の後端にはリヤエンドパネル5の前面が接合されている。
【0029】
上記リヤエンドパネル5は、図2に示すように、車幅方向に延びているとともに、車両背面視で後述する還元剤タンク21及びボックス部材29の略上半分を覆うように下方に延びている。リヤエンドパネル5の左右両端の下端部5a,5bには、車両前後方向に延びる左右のリヤサイドフレーム7,9のフランジ部7a,9aがボルト11で締結されている。
【0030】
上記リヤサイドフレーム7,9は左右両側にフランジ部7b,9bを有する断面略ハット状に形成されており、これらフランジ部7b,9bを上記フロアパネル1に溶接することでフロアパネル1とともに閉断面を形成するようになっている。左右のリヤサイドフレーム7,9はタイヤパン3よりも前側で車幅方向に延びるリヤクロスメンバ49とそれぞれ連結されている。
【0031】
また、上記フロアパネル1下面の車幅方向中央部には上記還元剤タンク21を支持するための支持フレーム13が車両前後方向に延びている。この支持フレーム13も、リヤサイドフレーム7,9と同様に、左右両側にフランジ部13aを有する断面略ハット状に形成されており、フランジ部13aを上記フロアパネル1に溶接することでフロアパネル1とともに閉断面を形成するようになっている。
【0032】
さらに、上記フロアパネル1の下面における上記支持フレーム13の左側で且つタイヤパンの車両前後方向略中央には、車幅方向に延びる補強メンバ15が配設されている。この補強メンバ15は、その全周に亘ってフランジ部15aを有する断面略ハット状に形成されており、フランジ部15aを上記フロアパネル1及び支持フレーム13に溶接することで閉断面を形成するようになっている。
【0033】
上述の通り、フロアパネル1と閉断面を形成するように、リヤサイドフレーム7,9、支持フレーム13及び補強メンバ15を該フロアパネル1に取り付けるとともに、左右のリヤサイドフレーム7,9をリヤクロスメンバ49で連結することにより、車両後部におけるフロアパネル1の剛性が高められている。
【0034】
上記フロアパネル1の下面側には、図示しないエンジンから車両前後方向後側に延びる排気管17が配設されている。符合19はサイレンサであり、排気管17の一部を構成していて車両前後方向におけるタイヤパン3中央に位置している。また、この排気管17は、その内部に図示しないNOX還元触媒が配置されているとともに、該還元触媒よりも上流側で上記還元剤タンク21から供給される尿素水溶液が添加されるようになっている。これにより、排気管17内部で排気ガスの熱により尿素水溶液が加熱分解されてアンモニアが生成し、窒素酸化物の浄化が促進される。
【0035】
この車両の下部車体構造では、図3に示すように、車両後部のフロアパネル1下面側に、排気管17と車幅方向に所定間隔を隔てて樹脂製の還元剤タンク(タンク)21が配設されている。この還元剤タンク21は、上記排気管17内に供給する尿素水溶液を貯蔵するためのものであり、左側リヤサイドフレーム7の後端部と補強メンバ15の左側の端部とに両端がボルト締結された鋼製の第1タンク固定バンド25、及び支持フレーム13の前端と後端とに両端がボルト締結された鋼製の第2タンク固定バンド27によって緊縛固定されている。
【0036】
このように、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配置するのは、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが接触したり、破損した還元剤タンク21から漏れた尿素水溶液が排気管17からの放熱により熱分解されて毒性を有するアンモニアが発生したりするのを防ぐためである。
【0037】
また、還元剤タンク21の保護をより一層確実なものとするために、還元剤タンク21には、図1に示すように、該還元剤タンク21をその下側から覆う樹脂製のプロテクタ(カバー部材)23が取り付けられている。このプロテクタ23は、図1中の符合55,55の位置で還元剤タンク21にボルト締結されているとともに、第1タンク固定バンド25及び第2タンク固定バンド27にそれぞれ2箇所形成されたブラケット部(図示せず)にボルト締結されている。なお、還元剤タンク21内の尿素水溶液の凍結を防止するために、還元剤タンク21とプロテクタ23との隙間には発泡スチロール製のインシュレーター(図示せず)が挿入充填されている。
【0038】
このように、還元剤タンク21と排気管17との間に空間を形成すると、フロアパネル1下面側を流れて還元剤タンク21と排気管17との間を通り抜けた空気が、リヤエンドパネル5(車体後部)にまともに当たって車体に作用する空気の抵抗が増大することになるが、このような空気抵抗の増大を抑制するために、本実施形態の下部車体構造では、還元剤タンク21と排気管17との間に樹脂製のボックス部材29が配設されている。
【0039】
上記ボックス部材29は、台形状の底部29aの4辺から立ち上がる左側壁部29c、右側壁部29d、前側壁部29e及び後側壁部29fがそれぞれ上方に行くに従って外側に傾斜するように形成されていて、図4に示すように、その内部が空洞になっている。これら壁部29c,29d,29e,29fの上端部には全周に亘って外側に延びるフランジ部29bが形成されており、ボックス部材29は、車両正面視及び車両側面視とも断面略ハット状をなすように形成されている。
【0040】
上記ボックス部材29には、該ボックス部材29の排気管17側(車幅方向右側)を覆う金属製カバー部材31が取り付けられている。この金属製カバー部材31は、排気管17から放出される排ガスの熱からボックス部材29を保護するものであり、図5に示すように、ボックス部材29の底部29aと面一な底部31aと、ボックス部材29の右側壁部29dと面一な竪壁部31bと、該竪壁部31bの上端から上方に行くに従って右側に傾斜する傾斜部31cと、フロアパネル1と面一なフランジ部31dとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工し、底部31a及び竪壁部31bをボックス部材29に重ねてリベット33で4箇所締結することにより、ボックス部材29に取り付けられている。なお、金属製カバー部材31には、その剛性を高めるために折り曲げ加工された2条のリブ31e,31eが形成されている。
【0041】
上記ボックス部材29は、還元剤タンク21側(車幅方向左側)では上記支持フレーム13に支持されている一方、排気管17側(車幅方向右側)では取付部31dによってフロアパネル1に取り付けられており、左右両側で固定されるようになっている。より具体的には、図6に示すように、ボックス部材29は、車幅方向左側ではそのフランジ部29bが、車両前後方向で互いに間隔を空けて支持フレーム13に配設され且つそれぞれ車幅方向右側に延びている第1及び第2支持ブラケット35,37にボルト締結されている一方、車幅方向右側では、上記金属製カバー部材31のフランジ部(取付部)31dをフロアパネル1に2箇所41,43でボルト締結することによりフロアパネル1に取り付けられている。
【0042】
上記第1支持ブラケット(支持ブラケット)35は、図6〜図8に示すように、支持フレーム13の底部13bと面一で車幅方向右側に略水平に延びる本体部35aと、該本体部の前端から上方に延びる前側補強部35bと、該本体部の後端から上方に延びる後側補強部35cとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工したものである。
【0043】
上記本体部35aは、その左側部分が支持フレーム13の底部13bに溶接されている一方、その右側の端部が二叉に分岐して締結部35eと第1係止部(係止部)35dとを構成している。
【0044】
上記第1係止部35dは、車幅方向右側に真っ直ぐに延びており、上記ボックス部材29の仮組付け時に該ボックス部材29のフランジ部29bが係止されるようになっている。一方、上記締結部35eは、車幅方向右側に行くに従って上方に傾斜した後、車幅方向右側に真っ直ぐに延びており、ボックス部材29の本組付け時に第1係止部35dよりも高い位置で還元剤タンク21のフランジ部29bがボルト締結されるようになっている。なお、第1係止部35d及び締結部35eには、その剛性を高めるために折り曲げ加工されたリブ31f,31gがそれぞれ形成されている。
【0045】
上記前側補強部35bは、その車幅方向左側の端部35hが車両前方に折り曲げられて平面視L字状をなしており、該端部35hが支持フレーム13の右側の側面13cに溶接で取り付けられている。また、上記後側補強部35cは、その車幅方向左側の端部35iが車両後方に折り曲げられて平面視L字状をなしており、該端部35iが支持フレーム13の右側の側面13cに溶接で取り付けられている。
【0046】
上記第2支持ブラケット(支持ブラケット)37は、図6及び図8に示すように、支持フレーム13の底部13bと面一で車幅方向右側に略水平に延びる本体部37aと、該本体部37aの前端から下方に延びる前側補強部37cと、該本体部37aの後端から上方に延びる中央補強部35cと、該中央補強部35cの上端から車両後方に延びる後側補強部37eと、該後側補強部37eの後端部から下方に延びる第2係止部(係止部)37bとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工したものである。
【0047】
上記本体部35aは、その左側部分が支持フレーム13の底部13bに溶接されている一方、その右側の端部にボックス部材29のフランジ部29bがボルト締結されるようになっている。また、上記後側補強部37eは、その車幅方向左側の端部35fが支持フレーム13のフランジ部13aに溶接で取り付けられている。
【0048】
上記第2係止部37bは、後側補強部37eの後端部における車幅方向左側の端部から下方に延びているとともに車両正面視でL字状をなしていて、上記ボックス部材29の仮組付け時に、本体部37aよりも低い位置でボックス部材29のフランジ部29bが係止されるようになっている。
【0049】
一方、上記金属製カバー部材31のフランジ部31dには、車両前後方向に間隔を空けてボルト挿通孔が3つ形成されており、フロアパネル1から突出しているスタッドボルト39,39を車両前方の挿通孔41と車両後方の挿通孔43に挿通し、該スタッドボルト39,39を鋼製ナット57,59で締め付けることで、金属製カバー部材31がフロアパネル1に固定されるようになっている。また、中央挿通孔45は、ボックス部材29を仮組付けする際用いられるものであり、フロアパネル1から突出しているスタッドボルト61を挿通孔45に挿通し、該スタッドボルト61に樹脂製ナット(締結部材)47を押し込んで回転させることにより、金属製カバー部材31がフロアパネル1に仮止めされるようになっている。
【0050】
上記ボックス部材29をフロアパネル1に取り付ける際には、金属製カバー部材31がリベット締結されているボックス部材29を支持フレーム13に車幅方向左側から近づけ、該ボックス部材29のフランジ部29bを第1及び第2支持ブラケット35,37に係止させた状態で、ボックス部材29の右側を持ち上げて金属製カバー部材31の中央挿通孔45にフロアパネル1から突出しているスタッドボルト61を挿通し、該スタッドボルト61に樹脂製ナット47を押し込んで回転させることで、上記ボックス部材29の仮組付けを行うことができる。
【0051】
−効果−
本実施形態によれば、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが干渉するのを抑えることができる。
【0052】
また、還元剤タンク21と排気管17との間にボックス部材29が配設されているので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが接近するのを抑えることができるとともに、フロアパネル1下面側を流れる空気がリヤエンドパネル5に作用するのを抑えることができる。
【0053】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、リヤエンドパネル5に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0054】
また、ボックス部材29の排気管17側には、金属製カバー部材31が取り付けられているので、排気管17の近傍に樹脂製のボックス部材29を配置した場合にも、排気管17からの放熱によるボックス部材29の変形等が抑えることができる。したがって、車両の軽量化と熱害対策との両立を図ることができる。
【0055】
さらに、ボックス部材29は支持フレーム13に支持されているので、ボックス部材29をフロアパネル1に直接取り付ける場合に比べて、ボックス部材29の支持剛性を向上させることができる。
【0056】
また、ボックス部材29を支持するための第1及び第2支持ブラケット35,37に、ボックス部材29の仮組付け時に該ボックス部材29のフランジ部29bが係止される第1及び第2係止部35d,37bが形成されているので、ボックス部材29の本組付けを容易に行うことができる。
【0057】
さらに、ボックス部材29をフロアパネル1に取り付けるための排気管17側の取付部(金属製カバー部材31のフランジ部)31dは、ボックス部材29の仮組付け時に樹脂製ナット47によりフロアパネル1に締結されるので、仮組付け時にボックス部材29を車幅方向両側から支持することができる。これにより、仮組付け時においてもボックス部材29が安定支持されるので、ボックス部材29の本組付けをより一層容易に行うことができる。
(実施形態2)
本実施形態は、上記ボックス部材29に代えて還元剤タンク21をその下側から覆うプロテクタ(カバー部材)51により還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋める点が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0058】
プロテクタ51は、図9に示すように、還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管17側に延びていて、プロテクタ51の排気管17側には、該プロテクタ51を排気管17から放出される排ガスの熱から保護する金属製カバー部材31が取り付けられている。
【0059】
図10に示すように、プロテクタ51内の右側部分は空洞になっているので、軽量化を図りつつ還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めることが可能になっている。なお、プロテクタ51は、その左側部分が、図9中の符合55,55の位置で還元剤タンク21とボルト締結されるとともに、第1タンク固定バンド25と及び第2タンク固定バンド27にそれぞれ2箇所形成されたブラケット部(図示せず)にボルト締結される一方、その右側部分が、金属製カバー部材31を介してフロアパネル1にボルト締結されることで、フロアパネル1に取り付けられている。
【0060】
−効果−
本実施形態によれば、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが干渉するのを抑えることができる。
【0061】
また、還元剤タンク21をその下側から覆うプロテクタ51が、還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管17側に延びているので、フロアパネル1下面側を流れる空気がリヤエンドパネル5に作用するのを抑えることができる。
【0062】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、尿素水溶液を貯蔵する還元剤タンク21を車両後部のフロアパネル1下面側に配設したが、これに限らず、熱害対策を必要とする液体や気体等を貯蔵するための各種タンクを配設してもよい。
【0064】
上記実施形態1では、ボックス部材29の排気管17側の取付部として金属製カバー部材31を利用したが、これに限らず、例えばボックス部材29と一体に取付部を設けたり、ボックス部材29及び金属製カバー部材31とは別の部材からなる取付部を設けてもよい。
【0065】
上記実施形態2では、金属製カバー部材31を車幅方向の排気管17側に延すことにより、還元剤タンク21と連続するように空洞を形成したが、これに限らず、図11に示すように、還元剤タンク21と空洞との間に仕切壁53を形成するようにしてもよい。このように、仕切壁53を形成すれば、万一還元剤タンク21が破損した場合でも、漏れた尿素水溶液が排気管17近傍まで流れるのを抑制することができる。
【0066】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0067】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、車両後部のフロアパネル1下面側に還元剤タンク21を配設する車両の下部車体構造等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態1に係る車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図2】下部車体構造を示す背面図である。
【図3】車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図4】図1のIV−IV線の矢視断面図である。
【図5】金属製カバー部材を取り付けたボックス部材を示す斜視図である。
【図6】ボックス部を示す底面図である。
【図7】第1支持ブラケットを示す斜視図である。
【図8】ボックス部を下方から見た斜視図である。
【図9】実施形態2に係る車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図10】図9のX−X線の矢視断面図である。
【図11】その他の実施形態に係る車両の下部車体構造を示す、図10に相当する図である。
【符号の説明】
【0070】
1 フロアパネル
13 支持フレーム
17 排気管
21 還元剤タンク(タンク)
29 ボックス部材
31 金属製カバー部材
31d フランジ部(取付部)
35 第1支持ブラケット(支持ブラケット)
35d 第1係止部(係止部)
37 第2支持ブラケット(支持ブラケット)
37b 第2係止部(係止部)
47 樹脂製ナット(締結部材)
51 プロテクタ(カバー部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関し、特に、車両後部のフロアパネル下面側にタンクが配設されている車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の内燃機関(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等)から排出される排気ガス中の窒素酸化物を、排気管に配設したNOX還元触媒を用いて浄化する排気浄化システムが知られている。また、NOX還元触媒における浄化効率を高めるために、アンモニアを還元物質として用いることが提案されている。例えば、尿素水溶液を還元触媒上流側の排気管内に添加すると、排気ガスの熱により尿素水溶液が加熱分解されてアンモニアが生成し、窒素酸化物の浄化が促進される。
【0003】
このように、尿素水溶液から生成されるアンモニアを還元物質として用いる場合には、尿素水溶液を貯蔵するタンク(還元剤タンク)を車体に保持させる必要がある。例えば、特許文献1には、還元剤タンクを車両のエンジンルームやサイドカウル部に配備した車両用排気浄化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−242092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知のように、アンモニアは強い刺激臭を放つとともに毒性を有しているいることから、例えば車両の衝突時に還元剤タンクが破損した場合にも、アンモニアや尿素水溶液が車室内に侵入するのを確実に防ぐ必要がある。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように従来の車両用排気浄化装置では、還元剤タンクをフロアパネルの上面側に配置するものが多く、還元剤タンクが破損した場合、アンモニアや尿素水溶液が車室内に侵入するおそれがある。
【0006】
そこで、車室内とは確実に仕切られているフロアパネルの下面側に還元剤タンクを配設することが考えられるが、この場合、車両後突時の安全性を高めるために、可燃性の高い燃料が貯蔵された燃料タンクよりも後方に還元剤タンクを配設することが望ましい。また、フロアパネルの下面側には車両前後方向に延びるように排気管が配設されていることから、車両衝突時に還元剤タンクと排気管とが接触したり、破損した還元剤タンクから漏れた尿素水溶液が排気管からの放熱により熱分解されて毒性を有するアンモニアが発生したりするのを防ぐために、還元剤タンクを排気管から車幅方向に所定間隔を隔てて配設する必要がある。
【0007】
このように、車両後突時の安全性を高めるとともに毒性を有するアンモニアの発生を抑えるためには、車両後部のフロアパネル下面側に、還元剤タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するのが望ましいが、このようなレイアウトでは、フロアパネル下面側を流れて還元剤タンクと排気管との間を通り抜けた空気が車体後部(リヤエンドパネル)にまともに当たることになり、車体に作用する空気抵抗が大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両後部のフロアパネル下面側にタンクを配設する車両の下部車体構造において、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルの下面側における上記タンクと上記排気管との間にボックス部材が配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時にタンクと排気管とが干渉するのを抑えることができる。
【0011】
また、タンクと排気管との間にボックス部材が配設されているので、車両衝突時にタンクと排気管とが接近するのを抑えることができるとともに、フロアパネル下面側を流れる空気が車体後部に作用するのを抑えることができる。
【0012】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ボックス部材は、樹脂製であり、上記ボックス部材の上記排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明によれば、ボックス部材の排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられているので、排気管の近傍に樹脂製のボックス部材を配置した場合にも、排気管からの放熱によるボックス部材の変形等を抑えることができる。したがって、車両の軽量化と熱害対策との両立を図ることができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記フロアパネルの下面側には、上記タンクを支持するための支持フレームが配設されており、上記ボックス部材は、上記タンク側で上記支持フレームに支持されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明によれば、ボックス部材は支持フレームに支持されているので、ボックス部材をフロアパネルに直接取り付ける場合に比べて、ボックス部材の支持剛性を向上させることができる。
【0017】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記支持フレームには、上記ボックス部材を支持するための支持ブラケットが配設されており、上記支持ブラケットには、上記ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明によれば、ボックス部材を支持するための支持ブラケットに、ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されているので、ボックス部材の取付(本組付け)を容易に行うことができる。
【0019】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記ボックス部材の上記排気管側には、該ボックス部材を上記フロアパネルに取り付けるための取付部が設けられており、上記ボックス部材の仮組付け時に上記取付部を上記フロアパネルに締結する締結部材を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
第5の発明によれば、ボックス部材をフロアパネルに取り付ける排気管側の取付部は、ボックス部材の仮組付け時に締結部材によりフロアパネルに締結されるので、仮組付け時にボックス部材を車幅方向両側から支持することができる。これにより、仮組付け時においてもボックス部材が安定支持されるので、ボックス部材の取付(本組付け)をより一層容易に行うことができる。
【0021】
第6の発明は、車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、上記タンクには、該タンクをその下側から覆うカバー部材が取り付けられており、上記カバー部材は、上記タンクと上記排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びていることを特徴とするものである。
【0022】
第6の発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時にタンクと排気管とが干渉するのを抑えることができる。
【0023】
また、タンクをその下側から覆うカバー部材が、該タンクと該排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びているので、フロアパネル下面側を流れる空気が車体後部に作用するのを抑えることができる。
【0024】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設することから、車両衝突時のタンクと排気管との干渉が抑えられるとともに、タンクと排気管との間の空間が埋められていることから、フロアパネル下面側を流れる空気の車体後部への作用が抑えられるので、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る車両後部の下部車体構造を示す底面図である。なお、図を見易くするために排気管17の支持部材やサスペンション等は図示省略している。
【0028】
図中の符合1はフロアパネルを示し、このフロアパネル1の後端部における車幅方向中央には下方に凹んだタイヤパン3が形成されている。また、フロアパネル1の後端にはリヤエンドパネル5の前面が接合されている。
【0029】
上記リヤエンドパネル5は、図2に示すように、車幅方向に延びているとともに、車両背面視で後述する還元剤タンク21及びボックス部材29の略上半分を覆うように下方に延びている。リヤエンドパネル5の左右両端の下端部5a,5bには、車両前後方向に延びる左右のリヤサイドフレーム7,9のフランジ部7a,9aがボルト11で締結されている。
【0030】
上記リヤサイドフレーム7,9は左右両側にフランジ部7b,9bを有する断面略ハット状に形成されており、これらフランジ部7b,9bを上記フロアパネル1に溶接することでフロアパネル1とともに閉断面を形成するようになっている。左右のリヤサイドフレーム7,9はタイヤパン3よりも前側で車幅方向に延びるリヤクロスメンバ49とそれぞれ連結されている。
【0031】
また、上記フロアパネル1下面の車幅方向中央部には上記還元剤タンク21を支持するための支持フレーム13が車両前後方向に延びている。この支持フレーム13も、リヤサイドフレーム7,9と同様に、左右両側にフランジ部13aを有する断面略ハット状に形成されており、フランジ部13aを上記フロアパネル1に溶接することでフロアパネル1とともに閉断面を形成するようになっている。
【0032】
さらに、上記フロアパネル1の下面における上記支持フレーム13の左側で且つタイヤパンの車両前後方向略中央には、車幅方向に延びる補強メンバ15が配設されている。この補強メンバ15は、その全周に亘ってフランジ部15aを有する断面略ハット状に形成されており、フランジ部15aを上記フロアパネル1及び支持フレーム13に溶接することで閉断面を形成するようになっている。
【0033】
上述の通り、フロアパネル1と閉断面を形成するように、リヤサイドフレーム7,9、支持フレーム13及び補強メンバ15を該フロアパネル1に取り付けるとともに、左右のリヤサイドフレーム7,9をリヤクロスメンバ49で連結することにより、車両後部におけるフロアパネル1の剛性が高められている。
【0034】
上記フロアパネル1の下面側には、図示しないエンジンから車両前後方向後側に延びる排気管17が配設されている。符合19はサイレンサであり、排気管17の一部を構成していて車両前後方向におけるタイヤパン3中央に位置している。また、この排気管17は、その内部に図示しないNOX還元触媒が配置されているとともに、該還元触媒よりも上流側で上記還元剤タンク21から供給される尿素水溶液が添加されるようになっている。これにより、排気管17内部で排気ガスの熱により尿素水溶液が加熱分解されてアンモニアが生成し、窒素酸化物の浄化が促進される。
【0035】
この車両の下部車体構造では、図3に示すように、車両後部のフロアパネル1下面側に、排気管17と車幅方向に所定間隔を隔てて樹脂製の還元剤タンク(タンク)21が配設されている。この還元剤タンク21は、上記排気管17内に供給する尿素水溶液を貯蔵するためのものであり、左側リヤサイドフレーム7の後端部と補強メンバ15の左側の端部とに両端がボルト締結された鋼製の第1タンク固定バンド25、及び支持フレーム13の前端と後端とに両端がボルト締結された鋼製の第2タンク固定バンド27によって緊縛固定されている。
【0036】
このように、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配置するのは、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが接触したり、破損した還元剤タンク21から漏れた尿素水溶液が排気管17からの放熱により熱分解されて毒性を有するアンモニアが発生したりするのを防ぐためである。
【0037】
また、還元剤タンク21の保護をより一層確実なものとするために、還元剤タンク21には、図1に示すように、該還元剤タンク21をその下側から覆う樹脂製のプロテクタ(カバー部材)23が取り付けられている。このプロテクタ23は、図1中の符合55,55の位置で還元剤タンク21にボルト締結されているとともに、第1タンク固定バンド25及び第2タンク固定バンド27にそれぞれ2箇所形成されたブラケット部(図示せず)にボルト締結されている。なお、還元剤タンク21内の尿素水溶液の凍結を防止するために、還元剤タンク21とプロテクタ23との隙間には発泡スチロール製のインシュレーター(図示せず)が挿入充填されている。
【0038】
このように、還元剤タンク21と排気管17との間に空間を形成すると、フロアパネル1下面側を流れて還元剤タンク21と排気管17との間を通り抜けた空気が、リヤエンドパネル5(車体後部)にまともに当たって車体に作用する空気の抵抗が増大することになるが、このような空気抵抗の増大を抑制するために、本実施形態の下部車体構造では、還元剤タンク21と排気管17との間に樹脂製のボックス部材29が配設されている。
【0039】
上記ボックス部材29は、台形状の底部29aの4辺から立ち上がる左側壁部29c、右側壁部29d、前側壁部29e及び後側壁部29fがそれぞれ上方に行くに従って外側に傾斜するように形成されていて、図4に示すように、その内部が空洞になっている。これら壁部29c,29d,29e,29fの上端部には全周に亘って外側に延びるフランジ部29bが形成されており、ボックス部材29は、車両正面視及び車両側面視とも断面略ハット状をなすように形成されている。
【0040】
上記ボックス部材29には、該ボックス部材29の排気管17側(車幅方向右側)を覆う金属製カバー部材31が取り付けられている。この金属製カバー部材31は、排気管17から放出される排ガスの熱からボックス部材29を保護するものであり、図5に示すように、ボックス部材29の底部29aと面一な底部31aと、ボックス部材29の右側壁部29dと面一な竪壁部31bと、該竪壁部31bの上端から上方に行くに従って右側に傾斜する傾斜部31cと、フロアパネル1と面一なフランジ部31dとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工し、底部31a及び竪壁部31bをボックス部材29に重ねてリベット33で4箇所締結することにより、ボックス部材29に取り付けられている。なお、金属製カバー部材31には、その剛性を高めるために折り曲げ加工された2条のリブ31e,31eが形成されている。
【0041】
上記ボックス部材29は、還元剤タンク21側(車幅方向左側)では上記支持フレーム13に支持されている一方、排気管17側(車幅方向右側)では取付部31dによってフロアパネル1に取り付けられており、左右両側で固定されるようになっている。より具体的には、図6に示すように、ボックス部材29は、車幅方向左側ではそのフランジ部29bが、車両前後方向で互いに間隔を空けて支持フレーム13に配設され且つそれぞれ車幅方向右側に延びている第1及び第2支持ブラケット35,37にボルト締結されている一方、車幅方向右側では、上記金属製カバー部材31のフランジ部(取付部)31dをフロアパネル1に2箇所41,43でボルト締結することによりフロアパネル1に取り付けられている。
【0042】
上記第1支持ブラケット(支持ブラケット)35は、図6〜図8に示すように、支持フレーム13の底部13bと面一で車幅方向右側に略水平に延びる本体部35aと、該本体部の前端から上方に延びる前側補強部35bと、該本体部の後端から上方に延びる後側補強部35cとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工したものである。
【0043】
上記本体部35aは、その左側部分が支持フレーム13の底部13bに溶接されている一方、その右側の端部が二叉に分岐して締結部35eと第1係止部(係止部)35dとを構成している。
【0044】
上記第1係止部35dは、車幅方向右側に真っ直ぐに延びており、上記ボックス部材29の仮組付け時に該ボックス部材29のフランジ部29bが係止されるようになっている。一方、上記締結部35eは、車幅方向右側に行くに従って上方に傾斜した後、車幅方向右側に真っ直ぐに延びており、ボックス部材29の本組付け時に第1係止部35dよりも高い位置で還元剤タンク21のフランジ部29bがボルト締結されるようになっている。なお、第1係止部35d及び締結部35eには、その剛性を高めるために折り曲げ加工されたリブ31f,31gがそれぞれ形成されている。
【0045】
上記前側補強部35bは、その車幅方向左側の端部35hが車両前方に折り曲げられて平面視L字状をなしており、該端部35hが支持フレーム13の右側の側面13cに溶接で取り付けられている。また、上記後側補強部35cは、その車幅方向左側の端部35iが車両後方に折り曲げられて平面視L字状をなしており、該端部35iが支持フレーム13の右側の側面13cに溶接で取り付けられている。
【0046】
上記第2支持ブラケット(支持ブラケット)37は、図6及び図8に示すように、支持フレーム13の底部13bと面一で車幅方向右側に略水平に延びる本体部37aと、該本体部37aの前端から下方に延びる前側補強部37cと、該本体部37aの後端から上方に延びる中央補強部35cと、該中央補強部35cの上端から車両後方に延びる後側補強部37eと、該後側補強部37eの後端部から下方に延びる第2係止部(係止部)37bとが形成されるように金属製の板を折り曲げ加工したものである。
【0047】
上記本体部35aは、その左側部分が支持フレーム13の底部13bに溶接されている一方、その右側の端部にボックス部材29のフランジ部29bがボルト締結されるようになっている。また、上記後側補強部37eは、その車幅方向左側の端部35fが支持フレーム13のフランジ部13aに溶接で取り付けられている。
【0048】
上記第2係止部37bは、後側補強部37eの後端部における車幅方向左側の端部から下方に延びているとともに車両正面視でL字状をなしていて、上記ボックス部材29の仮組付け時に、本体部37aよりも低い位置でボックス部材29のフランジ部29bが係止されるようになっている。
【0049】
一方、上記金属製カバー部材31のフランジ部31dには、車両前後方向に間隔を空けてボルト挿通孔が3つ形成されており、フロアパネル1から突出しているスタッドボルト39,39を車両前方の挿通孔41と車両後方の挿通孔43に挿通し、該スタッドボルト39,39を鋼製ナット57,59で締め付けることで、金属製カバー部材31がフロアパネル1に固定されるようになっている。また、中央挿通孔45は、ボックス部材29を仮組付けする際用いられるものであり、フロアパネル1から突出しているスタッドボルト61を挿通孔45に挿通し、該スタッドボルト61に樹脂製ナット(締結部材)47を押し込んで回転させることにより、金属製カバー部材31がフロアパネル1に仮止めされるようになっている。
【0050】
上記ボックス部材29をフロアパネル1に取り付ける際には、金属製カバー部材31がリベット締結されているボックス部材29を支持フレーム13に車幅方向左側から近づけ、該ボックス部材29のフランジ部29bを第1及び第2支持ブラケット35,37に係止させた状態で、ボックス部材29の右側を持ち上げて金属製カバー部材31の中央挿通孔45にフロアパネル1から突出しているスタッドボルト61を挿通し、該スタッドボルト61に樹脂製ナット47を押し込んで回転させることで、上記ボックス部材29の仮組付けを行うことができる。
【0051】
−効果−
本実施形態によれば、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが干渉するのを抑えることができる。
【0052】
また、還元剤タンク21と排気管17との間にボックス部材29が配設されているので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが接近するのを抑えることができるとともに、フロアパネル1下面側を流れる空気がリヤエンドパネル5に作用するのを抑えることができる。
【0053】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、リヤエンドパネル5に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0054】
また、ボックス部材29の排気管17側には、金属製カバー部材31が取り付けられているので、排気管17の近傍に樹脂製のボックス部材29を配置した場合にも、排気管17からの放熱によるボックス部材29の変形等が抑えることができる。したがって、車両の軽量化と熱害対策との両立を図ることができる。
【0055】
さらに、ボックス部材29は支持フレーム13に支持されているので、ボックス部材29をフロアパネル1に直接取り付ける場合に比べて、ボックス部材29の支持剛性を向上させることができる。
【0056】
また、ボックス部材29を支持するための第1及び第2支持ブラケット35,37に、ボックス部材29の仮組付け時に該ボックス部材29のフランジ部29bが係止される第1及び第2係止部35d,37bが形成されているので、ボックス部材29の本組付けを容易に行うことができる。
【0057】
さらに、ボックス部材29をフロアパネル1に取り付けるための排気管17側の取付部(金属製カバー部材31のフランジ部)31dは、ボックス部材29の仮組付け時に樹脂製ナット47によりフロアパネル1に締結されるので、仮組付け時にボックス部材29を車幅方向両側から支持することができる。これにより、仮組付け時においてもボックス部材29が安定支持されるので、ボックス部材29の本組付けをより一層容易に行うことができる。
(実施形態2)
本実施形態は、上記ボックス部材29に代えて還元剤タンク21をその下側から覆うプロテクタ(カバー部材)51により還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋める点が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0058】
プロテクタ51は、図9に示すように、還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管17側に延びていて、プロテクタ51の排気管17側には、該プロテクタ51を排気管17から放出される排ガスの熱から保護する金属製カバー部材31が取り付けられている。
【0059】
図10に示すように、プロテクタ51内の右側部分は空洞になっているので、軽量化を図りつつ還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めることが可能になっている。なお、プロテクタ51は、その左側部分が、図9中の符合55,55の位置で還元剤タンク21とボルト締結されるとともに、第1タンク固定バンド25と及び第2タンク固定バンド27にそれぞれ2箇所形成されたブラケット部(図示せず)にボルト締結される一方、その右側部分が、金属製カバー部材31を介してフロアパネル1にボルト締結されることで、フロアパネル1に取り付けられている。
【0060】
−効果−
本実施形態によれば、還元剤タンク21と排気管17とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設するので、車両衝突時に還元剤タンク21と排気管17とが干渉するのを抑えることができる。
【0061】
また、還元剤タンク21をその下側から覆うプロテクタ51が、還元剤タンク21と排気管17との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管17側に延びているので、フロアパネル1下面側を流れる空気がリヤエンドパネル5に作用するのを抑えることができる。
【0062】
したがって、車両衝突時における安全性を向上させるとともに、車体後部に作用する空気抵抗を低減させることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、尿素水溶液を貯蔵する還元剤タンク21を車両後部のフロアパネル1下面側に配設したが、これに限らず、熱害対策を必要とする液体や気体等を貯蔵するための各種タンクを配設してもよい。
【0064】
上記実施形態1では、ボックス部材29の排気管17側の取付部として金属製カバー部材31を利用したが、これに限らず、例えばボックス部材29と一体に取付部を設けたり、ボックス部材29及び金属製カバー部材31とは別の部材からなる取付部を設けてもよい。
【0065】
上記実施形態2では、金属製カバー部材31を車幅方向の排気管17側に延すことにより、還元剤タンク21と連続するように空洞を形成したが、これに限らず、図11に示すように、還元剤タンク21と空洞との間に仕切壁53を形成するようにしてもよい。このように、仕切壁53を形成すれば、万一還元剤タンク21が破損した場合でも、漏れた尿素水溶液が排気管17近傍まで流れるのを抑制することができる。
【0066】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0067】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、車両後部のフロアパネル1下面側に還元剤タンク21を配設する車両の下部車体構造等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態1に係る車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図2】下部車体構造を示す背面図である。
【図3】車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図4】図1のIV−IV線の矢視断面図である。
【図5】金属製カバー部材を取り付けたボックス部材を示す斜視図である。
【図6】ボックス部を示す底面図である。
【図7】第1支持ブラケットを示す斜視図である。
【図8】ボックス部を下方から見た斜視図である。
【図9】実施形態2に係る車両の下部車体構造を示す底面図である。
【図10】図9のX−X線の矢視断面図である。
【図11】その他の実施形態に係る車両の下部車体構造を示す、図10に相当する図である。
【符号の説明】
【0070】
1 フロアパネル
13 支持フレーム
17 排気管
21 還元剤タンク(タンク)
29 ボックス部材
31 金属製カバー部材
31d フランジ部(取付部)
35 第1支持ブラケット(支持ブラケット)
35d 第1係止部(係止部)
37 第2支持ブラケット(支持ブラケット)
37b 第2係止部(係止部)
47 樹脂製ナット(締結部材)
51 プロテクタ(カバー部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルの下面側における上記タンクと上記排気管との間にボックス部材が配設されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の下部車体構造において、
上記ボックス部材は、樹脂製であり、
上記ボックス部材の上記排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の下部車体構造において、
上記フロアパネルの下面側には、上記タンクを支持するための支持フレームが配設されており、
上記ボックス部材は、上記タンク側で上記支持フレームに支持されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両の下部車体構造において、
上記支持フレームには、上記ボックス部材を支持するための支持ブラケットが配設されており、
上記支持ブラケットには、上記ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項5】
請求項4記載の車両の下部車体構造において、
上記ボックス部材の上記排気管側には、該ボックス部材を上記フロアパネルに取り付けるための取付部が設けられており、
上記ボックス部材の仮組付け時に上記取付部を上記フロアパネルに締結する締結部材を備えていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項6】
車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、
上記タンクには、該タンクをその下側から覆うカバー部材が取り付けられており、
上記カバー部材は、上記タンクと上記排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項1】
車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルの下面側における上記タンクと上記排気管との間にボックス部材が配設されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の下部車体構造において、
上記ボックス部材は、樹脂製であり、
上記ボックス部材の上記排気管側には、金属製カバー部材が取り付けられていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の下部車体構造において、
上記フロアパネルの下面側には、上記タンクを支持するための支持フレームが配設されており、
上記ボックス部材は、上記タンク側で上記支持フレームに支持されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両の下部車体構造において、
上記支持フレームには、上記ボックス部材を支持するための支持ブラケットが配設されており、
上記支持ブラケットには、上記ボックス部材の仮組付け時に該ボックス部材が係止される係止部が形成されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項5】
請求項4記載の車両の下部車体構造において、
上記ボックス部材の上記排気管側には、該ボックス部材を上記フロアパネルに取り付けるための取付部が設けられており、
上記ボックス部材の仮組付け時に上記取付部を上記フロアパネルに締結する締結部材を備えていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項6】
車両後部のフロアパネル下面側に、タンクと排気管とを車幅方向に所定間隔を隔てて配設する車両の下部車体構造であって、
上記タンクには、該タンクをその下側から覆うカバー部材が取り付けられており、
上記カバー部材は、上記タンクと上記排気管との間の空間を埋めるように車幅方向の排気管側に延びていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−52459(P2010−52459A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216621(P2008−216621)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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