説明

車両の側部車体構造

【課題】 側突荷重をロールバーへ伝達し、車両内方へのサイドパネルの変形や侵入を抑制し得る車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】 車体の外側面を構成するアウターパネルと、車室内壁面を構成するインナーパネルとからなるサイドパネルに対し、車載された状態で車両上方へ延出する形状を備えたロールバーが、車幅方向に延びる連結部材を介して組み付けられた部位近傍の車両の側部車体構造において、アウターパネルには、略車幅方向外方へ延出される延出部を形成し、該連結部材の車幅方向外方端部には、該連結部材をインナーパネルに取り付けるべく該インナーパネルに沿って延びるフランジを設ける。また、該フランジには、該インナーパネルを貫通して車幅方向外方へ突出し、上記アウターパネルの延出部の近傍に延びる突出部を設ける。この突出部は、上記フランジの変形に伴いアウターパネルの延出部と干渉し該アウターパネルを移動規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の略上下方向に広がり、上記車体の外側面を構成するアウターパネルと、該アウターパネルの車室内方側に配置され、車室内壁面を構成するインナーパネルとからなるサイドパネルに対し、車載された状態で車両上方へ延出する形状を備えたロールバーが、車幅方向に延びる連結部材を介して組み付けられた部位近傍の車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オープンカーにおいては、その転倒時に乗員の頭部を保護し、また、例えば側突荷重に対し車幅方向における車体の剛性を向上させるために、車両上方へ延びるロールバーが標準的に配設されるようになっている。このロールバーは、通常、車幅方向に延在するクロスメンバに固定されるが、より高い剛性が求められることから、従来では、例えば特開平11−321334号公報に開示されるように、ロールバーが、車体の側面を構成するサイドパネルに対して接続されるものが知られている。ロールバーとサイドパネルとを連結部材を介して接続することにより、特に側突衝突に対する剛性が高まり、衝突安全性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平11−321334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述したような構造が採用されても、ロールバーとサイドパネルとの接続部分よりも前方又は後方に大きな側突荷重が加わった場合には、突支えが無いため、サイドパネルが車室内側へ変形,侵入してしまい、乗員の安全性を確保し難いという問題があった。
【0004】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、側突荷重を適切にロールバーへ伝達し、車両内方へのサイドパネルの変形や侵入を抑制し得る車両の側部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、車両の略上下方向に広がり、上記車体の外側面を構成するアウターパネルと、該アウターパネルの車室内方側に配置され、車室内壁面を構成するインナーパネルとからなるサイドパネルに対し、車載された状態で車両上方へ延出する形状を備えたロールバーが、車幅方向に延びる連結部材を介して組み付けられた部位近傍の車両の側部車体構造において、上記アウターパネルには、略車幅方向外方へ延出される延出部が形成され、上記連結部材の車幅方向外方端部には、該連結部材を上記インナーパネルに取り付けるべく該インナーパネルに沿って延びるフランジが設けられるとともに、該フランジには、該インナーパネルを貫通して車幅方向外方へ突出し、上記アウターパネルの延出部の近傍に延びる突出部が設けられており、該突出部は、上記フランジの変形に伴い上記アウターパネルの延出部と干渉し該アウターパネルを移動規制することを特徴としたものである。
【0006】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記突出部は、上記インナーパネルを貫通して車幅方向外方へ突出しつつ、上記連結部材を上記インナーパネルに取り付けるべく締結する締結部材であることを特徴としたものである。
【0007】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、上記アウターパネルの車室内側には補強部材が設けられており、該補強部材は、上記締結部材の近傍において該締結部材の先端部よりも車幅方向内方側に位置する形状を有していることを特徴としたものである。
【0008】
また、更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、上記補強部材は、その少なくとも一部が、上記フランジの車幅方向外側に位置する形状を有していることを特徴としたものである。
【0009】
また、更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項3又は4に係る発明において、上記補強部材には、ドアストライカが設けられていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1に係る発明によれば、連結部材のフランジが車幅方向内側への折れ曲がるほど大きな側突荷重が加わっても、その変形に伴い、上記突出部とアウターパネルとが干渉し合うことから、アウターパネルの車室内側への変形を物理的に規制することができ、また、側突荷重をフランジ及び連結部材を介してロールバーに伝達し分散させることができる。
【0011】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、上記突出部として締結部材を用いるため、特別な部材を追加することなく、請求項1による効果を実現することができる。
【0012】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、外観デザインやドア形状等によって形状が決定されるアウターパネルとは別に設計自由度の高い補強部材を締結部材のより近傍に設けることで、アウターパネルと締結部材とをより早期に且つ確実に干渉させ、物理的な規制を行うことができる。
【0013】
また、更に、本願の請求項4に係る発明によれば、側突荷重が加わった初期においても、上記補強部材がフランジと干渉することにより、その側突荷重をフランジ及び連結部材を介してロールバーに伝達し分散させることができる。
【0014】
また、更に、本願の請求項5に係る発明によれば、上記補強部材がドアストライカ用の補強部材を兼用するため、特にドアへ側突荷重が加わった場合に、その荷重を早期に且つ確実に締結部材,フランジ及び連結部材を介してロールバーに伝達し分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、オープンカーにおける車体1のシート4(図1に二点鎖線で示す)の後側部分を示す図であり、また、図2は、車両用ロールバー構造11の要部を示す拡大斜視図である。車体1は、フロントフロア部3と、該フロントフロア部3から車体後方側へ傾斜するように延びるキックアップ部5と、その後方のリアフロア部7と、左右のサイドパネル9とを備えている。また、キックアップ部5の上端部とリアフロア部7との境界には、左右のサイドパネル9をつなぐクロスメンバ6が設けられている。なお、図1では、車両前方に向かって車幅方向左側のサイドパネル9は省略する。
【0016】
左右のサイドパネル9には、該左右のサイドパネル9をつなぐように、本実施形態にかかる車両用ロールバー構造11が設けられている。この車両用ロールバー構造11は、オープンカーのベルトライン12下方に設けられ、左右のサイドパネル9をつなぐクロスバー部材13と、このクロスバー部材13から上方に向かって略逆U宇状に突設された2つのロールバー部材15とを備えている。
【0017】
上記クロスバー部材13は、シート4の後方において車幅方向に延び、その両端部が左右のサイドドア後方のサイドパネル9にそれぞれ設けた平面視略L宇状のリンクブラケット14に取り付けられている。このリンクブラケット14は、オープンカーの幌(不図示)を回動自在に支持するものである。
【0018】
上記各ロールバー部材15は、鋼製の丸パイプを略逆U字状に折り曲げて略左右対称に形成したものであり、そのサイドパネル9側の下端部は上記クロスバー部材13を貫通して他方の下端部よりも下側に延びた延設部16を形成している。上記クロスバー部材13の上壁部及び下端部には、それぞれロールバー部材15の外径よりも若干大きいロールバー挿通孔13bが設けられ、サイドパネル9側のロールバー挿通孔13bに対応する前壁部には、それぞれ2つのボルト挿通孔(不図示)が設けられている。すなわち、口−ルバー部材15のサイドパネル9側は、上記クロスバー部材13のロールバー挿通孔13bに挿通された状態で上記ボルト挿通孔に通したボルト50によってクロスバー部材13に締結固定されているとともに、ロールバー挿通孔13bにおいてクロスバー部材13と溶接されている。一方、ロールバー部材15の車幅方向内側の下端部は、クロスバー部材13の上壁部側のロールバー挿通孔13bにのみ挿通され、該ロールバー挿通孔13bにおいてクロスバー部材13と溶接されている。
【0019】
また、上記各ロールバー部材15の延設部16の下端部には、略三角形状の取付ブラケット15aが溶着されている。この取付ブラケット15aは、図2からよく分かるように、上記シート4後方のクロスメンバ6に3本のボルト54で締結固定されている。
【0020】
上記各ロールバー部材15とサイドパネル9との間には、車幅方向に向かって延びる連結部材17が設けられ、この連結部材17によってサイドパネル9とロールバー部材15の延設部16とが連結されている。この連結部材17は、一本のパイプからなり、車幅方向内方に延びる一端側でプレスされて平坦な形状をもつ平坦部17aをなし、また、車幅方向外方に延びる他端側で連結部材17の軸方向に対して垂直なフランジ17bに接合されている。
【0021】
車幅方向内側の平坦部17aは、ロールバー部材15の延設部16に設けられた固定ブラケット20に対して、締結ボルト53によって締結される。他方、車幅方向外側のフランジ17bは、サイドパネル9に略平行に車体前方側へ広がり、略車幅方向に延びる締結ボルト51によって締結される。
【0022】
図3は、ロールバー部材15と連結部材17との組付け部分を示す横断面説明図である。また、図4及び5は、共に、固定ブラケット20の斜視図である。更に、図6及び7は、共に、連結部材17の斜視図である。ロールバー部材15の延設部16の前側には、略円形の孔部16aが形成されている。そして、この孔部16aを跨ぐように規制手段を備えた固定ブラケット20が延設部16に固定されている。この固定ブラケット20は、鋼板をプレス加工してなるもので、本実施形態では、ロールバー部材15がクロスバー部材13に取り付けられたり、その延設部16がクロスメンバ6に固定されたりするに先立って、延設部16に固定される。また、この固定ブラケット20は、連結部材17の平坦部17aが取り付けられる平坦な取付部19と、この取付部19の上下端部からそれぞれ延設部16側に延びる4つのフランジ部22とを備えている。フランジ部22は、取付部20が跨いでいる延設部16の軸線に対し略垂直に延び、それぞれその先端部が延設部16の円周方向の外径に沿うように形成され、これら先端部が延設部16に溶接されることで固定ブラケット20が延設部16に固定されている。
【0023】
固定ブラケット20の取付部19には、固定ブラケット20に対して連結部材17を締結固定するために、その車幅方向外側に、延設部16の孔部16aと同心に位置決めされるボルト挿通孔19aが開口され、また、その車幅方向内側には、ボルト挿通孔19bが開口されている。これらのボルト挿通孔19a,19bに対応して、固定ブラケット20の裏面には、被締結部材としてのウェルドナット52A,52Bが溶接により固定されている。ボルト挿通孔19aに対応するウェルドナット52Aの少なくとも一部が上記延設部16の孔部16aに位置させられる。この延設部16の孔部16aは、図3からよく分かるように、ウェルドナット52Aの外周よりも大きな内径を有し、ウェルドナット52Aの外周と孔部16aとの間には、若干隙間が設けられている。
【0024】
また、本願発明の特徴として、固定ブラケット20は、その取付部19の車幅方向内側の端部から車幅方向内方へ延出する係止部21を有している。この係止部21は、締結ボルト53A,53Bを用いて連結部材17を固定ブラケット20に固定するに先立って、連結部材17と固定ブラケット20とを係合させ連結部材17を移動規制するためのもので、取付部19の車幅方向内側の端部から車幅方向内方へ延出した後、一旦車両前方へ延び、更に、その端部21aで車幅方向内方へ延出する形状をなしている。
【0025】
他方、連結部材17は、かかる固定ブラケット20の構成に対応する構成を有している。まず、固定ブラケット20の取付部19に形成されたボルト挿通孔19a,19bに対応して、連結部材17の平坦部17aの車幅方向内側及び外側には、締結ボルト53A,53Bよりも内径が大きな貫通孔17c,17dがそれぞれ形成されている。ここでは、車幅方向内側の貫通孔17cが、連結部材17の車幅方向の取付誤差を吸収すべく、長孔状に形成されている。更に、固定ブラケット20の係止部21に対応して、連結部材17の平坦部17aには、貫通孔17dより車幅方向内側に、上下方向に延びる略矩形状の開口部17eが形成されている。
【0026】
固定ブラケット20の係止部21と連結部材17の開口部17eとは互いに係合する関係にあり、図3からよく分かるように、両者が係合した状態では、固定ブラケット20の係止部21が、連結部材17の後側から、該連結部材17の開口部17eに挿通させられ、連結部材17の前側で、係止部21の端部21aが開口部17eの外側周縁部17gに対向しつつ車幅方向内方へ延出する。
【0027】
サイドパネル9と既に車載されたロールバー部材15の延設部16とを連結部材17を介して接続する際には、まず、固定ブラケット20の係止部21を連結部材17の開口部17eに挿通させ、その端部21aが開口部17eの外側周縁部17gに対向しつつ車幅方向内方へ延出するように、連結部材17を取り付ける。次に、連結部材17の一端側に接合されたフランジ17bを、車幅方向に延びる締結ボルト51を用いてサイドパネル9に締結固定する。
【0028】
その後、車体前後方向に延びる締結ボルト53A,53Bをそれぞれ貫通孔17c,17d及びボルト挿通孔19a,19bに車体前側から挿通させ、取付部19裏面のウェルドナット52A,52Bに締め付けることで連結部材17を固定ブラケット19に固定する。これにより、サイドパネル9とロールバー部材15の延設部16とが連結部材17で接続される。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る連結部材17及び固定ブラケット20の構成によれば、連結部材17がサイドパネル9に締結された段階で、連結部材17が係止部21により移動規制されるように係止され、固定ブラケット20から離間することはなく、このため、固定ブラケット20に対する連結部材17の締結時に、作業者が連結部材17をロールバー部材15側に押さえ付ける必要がなく、より安全に且つ簡単に組付け作業を行うことができる。また、連結部材17が係止部21により係止されることにより、連結部材17の貫通孔17c,17dがそれぞれ固定ブラケット20のボルト挿通孔19a,19bに合った状態で保持されるため、固定ブラケット20に対する連結部材17の締結作業がより簡単に行える。
また、本実施形態に係る連結部材17及び固定ブラケット20の構成によれば、サイドパネル9に対する連結部材17の固定に際し、車幅方向に延びる締結ボルトを用いる場合であっても、ロールバー部材15の延設部16とサイドパネル9との間の組付け誤差を適切に吸収することができる。
更に、本実施形態に係る連結部材17及び固定ブラケット20の構成によれば、固定ブラケット20の係止部21がその端部21aにて車幅方向内方へ延びるように形成されるため、連結部材17を係止部21と係合させ易く、また、連結部材17のサイドパネル9側への配置作業も係合動作と同一移動方向で容易に行うことができる。
【0030】
本実施形態では、更に、側突荷重が加わった場合に、側突荷重を適切にロールバー構造11へ伝達し、車両内方へのサイドパネル9の変形や侵入を抑制すべく工夫がなされた側部車体構造が採用されている。図8は、車体1の側面を構成するサイドパネル9に対しロールバー部材15が連結部材17を介して接続された部位近傍の側部車体構造を示す横断面説明図である。
【0031】
サイドパネル9は、基本的に、車両の略上下方向に広がり、車体1の外側面をなすアウターパネル30と、該アウターパネル30の車室内方側に配置され、車室内壁面を構成するインナーパネル32とから構成される。このサイドパネル9の車幅方向外側には、ドアパネル40が、その閉状態において、アウターパネル30に対向するように取り付けられる。ドアパネル40は、ドアアウターパネル38と、該ドアアウターパネル38と一体化され車幅方向内側にあるドアインナーパネル39とから構成する。
【0032】
サイドパネル9を構成するアウターパネル30には、車幅方向に広がる面30bと車体1の側面に沿って広がる面30cとからなり、略車幅方向外方へ延出する延出部30aが形成されている。このアウターパネル30の車室内側には、アウターパネル30に沿って広がる補強部材31が設けられており、この補強部材31にも、アウターパネル30の形状に対応して、車幅方向に広がる面31bと車体1の側面に沿って広がる面31cとから構成される延出部31aが形成されている。また、補強部材31には、延出部31aを構成すべく車幅方向に広がる面31bにおいて、ドアストライカ33が取り付けられている。
【0033】
また、一方、サイドパネル9を構成するインナーパネル32には、連結部材17がその一端側に設けられたフランジ17bを介して締結固定される。フランジ17bは、連結部材17が接合された部分から略車両前方へ延出し、その延出された部分には、締結ボルト51を挿通させるためのボルト挿通孔17fが開口されている。また、そのボルト挿通孔17fに対応して、インナーパネル32には、ボルト挿通孔32aが開口されている。インナーパネル32に連結部材17を固定する際には、車幅方向内側からフランジ17b及びインナーパネル32に形成されたボルト挿通孔17f及び32aに締結ボルト51を挿通させ、インナーパネル32の車幅方向外側に位置決めされるウェルドナット55に締め付ける。なお、本実施形態では、インナーパネル32の車幅方向外側に配設されたベルトラインレイン35が、締結ボルト51及びウェルドナット55により、インナーパネル32に対して固定される。
【0034】
図8から分かるように、連結部材17がフランジ17bを介してインナーパネル32に固定された状態で、補強部材31は、その延出部31aにて、締結ボルト51の車両前方側近傍に位置し、また、締結ボルト51の雄ネジ部51aの先端よりも車幅方向内方側に位置するように配設されている。締結ボルト51の雄ネジ部51aは、インナーパネル32を貫通して車幅方向外方へ突出し、アウターパネル30の延出部30aを構成すべく車幅方向に広がる面30bに沿って延びている。更に、この実施形態では、補強部材31が、その一部にて、フランジ17bの車幅方向外側に位置するように、つまり、車両の前後方向において、フランジ17bに差し掛かるように配設されている。
【0035】
アウターパネル30及び補強部材31が車幅方向内側へ変形し、この変形に伴い、インナーパネル32が直接に若しくはその内側に設けられたウェルドナット55を介して押し込まれ変形するほどの側突荷重が加わった場合には、フランジ17bがインナーパネル32から局所的に浮き上がるが、かかる荷重が大きくなると、例えば連結部材17が接合された部分と締結ボルト51が取り付けられる部分との間等の位置でフランジ17bが折れ曲がり、締結ボルト51の雄ネジ部51aが車両前方側へ倒れ込むような変形が生じる。前述した側部車体構造によれば、フランジ17bの変形に伴い車両前方側へ倒れ込んだ締結ボルト51の雄ネジ部51aが、補強部材31の延出部31a(厳密にはそれを構成すべく車幅方向に広がる面31b)に食い込むように干渉し、その結果、補強部材31及びアウターパネル30の車室内側への変形が物理的に規制されることとなる。また、この場合には、側突荷重をフランジ17b及び連結部材17を介してロールバー構造11に伝達し分散させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、外観デザインやドアの形状等によって形状が決定されるアウターパネル30とは別に設計自由度の高い補強部材31が締結ボルト51のより近傍に設けられるため、アウターパネル30及び補強部材31と締結ボルト51とをより早期に且つ確実に干渉させ、アウターパネル30及び補強部材31の物理的な規制を行うことができる。
【0037】
更に、本実施形態では、補強部材31が、車両前方側で、その一部が、フランジ17bの車幅方向外側に位置するように、すなわち、フランジ17bの車幅方向外側で該フランジ17bに対向するように形状付けられているため、側突荷重が加わった初期においても、補強部材31がフランジ17bと干渉することとなり、これにより、その側突荷重をフランジ17b及び連結部材17を介してロールバー構造11に伝達し分散させることができる。
【0038】
また、更に、本実施形態では、アウターパネル30及び補強部材31と干渉する部材として、締結ボルト51が用いられるため、特別な部材を追加することなく、上記の効果を実現することができる。
【0039】
また、更に、本実施形態では、補強部材31がドアストライカ33用の補強部材を兼用するため、特にドアパネル40に対して側突荷重が加わった場合に、その荷重を早期に且つ確実に締結ボルト51,フランジ17b及び連結部材17を介してロールバー構造11に伝達し分散させることができる。
【0040】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、連結部材17を延設部16の前方側へ設けているが、延設部16の後方側へ設けてもよい。この場合には、延設部16の後方側に孔部16a,ウェルドナット52A,52B,固定ブラケット20等を設ければよい。また、前述した実施形態では、オープンカーを対象としているが、オープンカーに限定されることはなく、車体の側面を構成するサイドパネルよりも車幅方向内側の車体に固定され、車体の上下方向に建設されたロールバー部材を備えた車両であればよい。この場合には、ロールバー部材の延設部をフロントフロア部に固定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、車体の側面を構成するサイドパネルよりも車幅方向内側の車体に固定され、車体の上下方向に延設されたロールバー部材を備えたオープンカーのような車両用のロールバー構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】オープンカーにおける車体のシート後側部分を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る車両のロールバー構造の要部を示す拡大斜視図である。
【図3】上記ロールバー部材と連結部材との組付け部分を示す横断面説明図である。
【図4】上記連結部材の斜視図である。
【図5】上記連結部材の図4とは別の斜視図である。
【図6】上記ロールバーに対して連結部材を組み付けるための固定ブラケットの斜視図である。
【図7】上記固定ブラケットの図4とは別の斜視図である。
【図8】車体の側面を構成するサイドパネルに対し上記ロールバーが連結部材を介して組み付けられた部位近傍の側部車体構造を示す横断面説明図である。
【図9】補強部材及びアウターパネルの車室内側への侵入に伴い、連結部材のフランジに設けられた突出部が補強部材及びアウターパネルに干渉して、それらの車室内側への変形が物理的に規制された状態にある側部車体構造を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…車体,6…クロスメンバ,9…インナーパネル,11…ロールバー構造,13…クロスバー部材,15…ロールバー部材,16…延設部,17…連結部材,17a…平坦部,17b…フランジ,17c,17d…締結ボルト用貫通孔,17e…開口部,17f…ボルト挿通孔,19…取付部,19a,19b…ボルト挿通孔,20…固定ブラケット,21…係止部,21a…端部,…,…,30…アウターパネル,31…補強部材,…,…,33…ドアストライカ,51…締結ボルト,51a…雄ネジ部,52A,52B…ウェルドナット,53A,53B…締結ボルト,55…ウェルドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の略上下方向に広がり、上記車体の外側面を構成するアウターパネルと、該アウターパネルの車室内方側に配置され、車室内壁面を構成するインナーパネルとからなるサイドパネルに対し、車載された状態で車両上方へ延出する形状を備えたロールバーが、車幅方向に延びる連結部材を介して組み付けられた部位近傍の車両の側部車体構造において、
上記アウターパネルには、略車幅方向外方へ延出される延出部が形成され、
上記連結部材の車幅方向外方端部には、該連結部材を上記インナーパネルに取り付けるべく該インナーパネルに沿って延びるフランジが設けられるとともに、該フランジには、該インナーパネルを貫通して車幅方向外方へ突出し、上記アウターパネルの延出部の近傍に延びる突出部が設けられており、
上記突出部は、上記フランジの変形に伴い上記アウターパネルの延出部と干渉し該アウターパネルを移動規制することを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
上記突出部は、上記インナーパネルを貫通して車幅方向外方へ突出しつつ、上記連結部材を上記インナーパネルに取り付けるべく締結する締結部材であることを特徴とする請求項1記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記アウターパネルの車室内側には補強部材が設けられており、
上記補強部材は、上記締結部材の近傍において該締結部材の先端部よりも車幅方向内方側に位置する形状を有していることを特徴とする請求項2記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
上記補強部材は、その少なくとも一部が、上記フランジの車幅方向外側に位置する形状を有していることを特徴とする請求項3記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
上記補強部材には、ドアストライカが設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−96278(P2006−96278A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287221(P2004−287221)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】