説明

車両の側部車体構造

【課題】重量の増加や車室空間の制限を抑制しつつ、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時に、ルーフサイドレールが車室側に倒れることを抑制することができ、乗員の安全性を向上させることができる車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレール10と、ルーフサイドレール10の下方に設けられたドア開口部を開閉可能に覆うサイドドア30、40と、を備えた車両の側部車体構造において、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを非連結状態とし、前記荷重の入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを連結した連結状態とする第1の連結機構15、35、16、45が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の側部車体構造に関し、より詳しく言えば、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレールと、該ルーフサイドレールの下方に設けられたドア開口部を開閉可能に覆うサイドドアとを備えた車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、例えば車両が横転したときなどの車両のルーフクラッシュを抑制するため、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレールに補強部材を配設したり、フロントドアとリアドアの間において車体上下方向に延びるセンタピラーに補強部材を配設したりすることが行われている。
【0003】
また、センタピラーが存在しないピラーレスの車両では、特許文献1に記載されるように、ドア本体に、ドアの閉鎖位置で車体のルーフ部に連結されるとともに車体のフロア部に連結される補強部材を設けて、車体のルーフ部に入力された荷重を補強部材によって車体のフロア部に伝達するようにしたものが知られている。
【0004】
サイドドアに補強部材を配置するものとしてはまた、例えば特許文献2に記載されるように、車体側面に沿う側面部とその上端からルーフに向けて延出されたルーフ部とを備えたサイドドアにおいて、該側面部と該ルーフ部との境界部に車体前後方向に延びる補強部材を設けたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−273250号公報
【特許文献2】特開平11−348559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動車等の車両では、例えば車両が横転したときなどの車両のルーフクラッシュをさらに抑制し、車室内の乗員の安全性をさらに高めることが求められている。自動車等の車両では、車体上部のルーフサイドレールと車体下部のサイドシルとの間に大きなドア開口部が設けられており、車両の横転時などにルーフサイドレールの上方から荷重が入力されるとルーフサイドレールが車室側に倒れ易いので、ルーフサイドレールが車室側に倒れることを抑制することが望まれる。
【0007】
これに対し、前記特許文献1や前記特許文献2に記載されるようなサイドドアに配設される補強部材のサイズを大きくしたり補強部材の数を増加させたりすることで、ルーフサイドレールの上方から荷重が入力される際にルーフサイドレールが車室側に倒れることを抑制することが可能であるが、かかる場合には、重量の増加を引き起こしたり車室空間が制限されることとなる。
【0008】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、重量の増加や車室空間の制限を抑制しつつ、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時に、ルーフサイドレールが車室側に倒れることを抑制することができ、乗員の安全性を向上させることができる車両の側部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本願の請求項1に係る車両の側部車体構造は、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレールと、該ルーフサイドレールの下方に設けられたドア開口部を開閉可能に覆うサイドドアと、を備えた車両の側部車体構造であって、前記ルーフサイドレールの上方からの荷重の非入力時には該ルーフサイドレールと前記サイドドアとを非連結状態とし、前記荷重の入力時には該ルーフサイドレールと前記サイドドアとを連結した連結状態とする第1の連結機構が備えられている、ことを特徴としたものである。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1の連結機構は、前記サイドドアに設けられて前記ルーフサイドレールに向けて突出する突出部と、該ルーフサイドレールにおける前記突出部の対応位置に設けられて前記荷重の入力時に前記突出部と係合する係合部とを有し、前記突出部と前記係合部とは、前記荷重の非入力時に前記サイドドアの開閉を許容するように構成されている、ことを特徴としたものである。
【0011】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記サイドドアは、車体前方側に配設されるフロントドアと、該フロントドアの車体後方側に配設されるリアドアと、を備え、前記第1の連結機構は、該フロントドアと該リアドアとにそれぞれ備えられている、ことを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記フロントドアと前記リアドアとの間に、車体上下方向に延び上端が前記ルーフサイドレールに結合されたセンタピラーが設けられ、前記ルーフサイドレールと前記センタピラーとの結合部近傍における前記フロントドア及び前記リアドアの少なくとも何れか一方のドアに、前記荷重の非入力時には該センタピラーと非連結状態とし、前記荷重の入力時には該センタピラーと連結した連結状態とする第2の連結機構が備えられている、ことを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記フロントドアと前記リアドアの少なくとも何れか一方のドアが、前記センタピラーと車体側面視において重なるように配設され、前記センタピラーと車体側面視において重なる前記ドア又は前記センタピラーにおける前記ドアと前記センタピラーとが車体側面視において重なる位置に補強部材が備えられている、ことを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項2から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記サイドドアは、該サイドドアと前記ルーフサイドレールとが対向する上面部に、前記第1の連結機構と該サイドドアと前記ルーフサイドレールとの隙を埋めるシール部材が配設されている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に係る車両の側部車体構造によれば、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にルーフサイドレールとサイドドアとを連結した連結状態とする第1の連結機構が備えられていることにより、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にルーフサイドレールにかかる荷重をサイドドアに伝達してサイドドアに分散させることができるので、重量の増加や車室空間の制限を抑制しつつ、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にルーフサイドレールが車室側に倒れることを抑制することができ、乗員の安全性を向上させることができる。さらに、前記荷重の入力時にルーフサイドレールとサイドドアが連結されるため、前記荷重の非入力時である通常は非連結とされており、乗員が乗降する際にはサイドドアを容易に開閉することができる。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、第1の連結機構は、サイドドアに設けられてルーフサイドレールに向けて突出する突出部と、ルーフサイドレールにおける突出部の対応位置に設けられて前記荷重の入力時に突出部と係合する係合部とを有し、突出部と係合部とは、前記荷重の非入力時にサイドドアの開閉を許容するように構成されていることにより、ルーフサイドレールの上方からの荷重の非入力時にサイドドアの開閉を阻害することなく、比較的簡単な構成によって、例えば連結機構を解除するための複雑な構造を必要とせず、前記効果を奏することができる。
【0017】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1の連結機構は、フロントドアとリアドアとにそれぞれ備えられていることにより、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にルーフサイドレールにかかる荷重をフロントドアとリアドアに伝達してフロントドアとリアドアに分散させることができるので、前記効果を有効に得ることができる。
【0018】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、ルーフサイドレールとセンタピラーとの結合部近傍におけるフロントドア及びリアドアの少なくとも何れか一方のドアに、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にセンタピラーと連結した連結状態とする第2の連結機構が備えられていることにより、ルーフサイドレールの上方からの荷重の入力時にサイドドアに伝達された荷重をセンタピラーに伝達してセンタピラーに分散させることができるので、ルーフサイドレールが車室側に倒れることをさらに抑制することができ、乗員の安全性をさらに向上させることができる。
【0019】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、センタピラーと車体側面視において重なるドア又はセンタピラーにおけるドアとセンタピラーとが車体側面視において重なる位置に補強部材が備えられていることにより、ルーフサイドレールが車室側に倒れることをさらに抑制することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、サイドドアは、サイドドアとルーフサイドレールとが対向する上面部に、第1の連結機構とサイドドアとルーフサイドレールとの隙を埋めるシール部材が配設されていることにより、第1の連結機構を配設しつつシール部材を配設する場合であっても、異物等の車内側への侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体の概略図である。
【図2】図1に示す車体の要部拡大図である。
【図3】図2におけるY3−Y3線に沿った車体の断面図である。
【図4】図2におけるY4−Y4線に沿った車体の断面図である。
【図5】図2におけるY5−Y5線に沿った車体の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体にルーフサイドレールの上方から荷重が入力されたときの状態を説明するための説明図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体の断面図である。
【図8】図7に示す車体にルーフサイドレールの上方から荷重が入力されたときの状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体の概略図である。この車体1は、図1に示すように、4ドアタイプの乗用車の車体であり、車体1の側面を構成する車体側部2は、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレール10と、車体下部において車体前後方向に延びるサイドシル5と、車体上下方向に延び、上端がルーフサイドレール10に結合され下端がサイドシル5に結合されたセンタピラー20とを備え、ルーフサイドレール10の下方においてセンタピラー20の車体前後方向にドア開口部3、4が設けられている。
【0023】
車体側部2はまた、ルーフサイドレール10の下方に設けられたドア開口部3、4を開閉可能に覆うサイドドア30、40を備えている。サイドドア30、40は、車体前方側に配設されるフロントドア30と該フロントドア30の車体後方側に配設されるリアドア40とを備え、フロントドア30とリアドア40との間にセンタピラー20が設けられている。
【0024】
フロントドア30、リアドア40はそれぞれ、ドア本体31、41と、ドアガラス32、42と、ドアガラス32、42の昇降をガイドするとともにドアガラス32、42を保持するドアサッシ33、43とを備え、その車体前方側に設けられた図示しないヒンジ機構によってその車体後方側を開閉し、ドア開口部3、4を開閉可能に覆うことができるようになっている。
【0025】
図2は、図1に示す車体の要部を拡大した図であり、ルーフサイドレールとセンタピラーとの結合部近傍を拡大して示している。また、図3は、図2におけるY3−Y3線に沿った車体の断面図、図4は、図2におけるY4−Y4線に沿った車体の断面図、図5は、図2におけるY5−Y5線に沿った車体の断面図である。
【0026】
図4に示すように、車体上部のルーフサイドレール10は、車体の外面の一部を構成するルーフサイドレールアウタ11と、車体の内面の一部を構成するルーフサイドレールインナ12と、ルーフサイドレールアウタ11とルーフサイドレールインナ12との間に配設されたルーフサイドレールレイン13とを備え、ルーフサイドレールアウタ11、ルーフサイドレールインナ12及びルーフサイドレールレイン13の車幅方向内方端部及び下方端部がそれぞれ重ね合わせて接合され、閉断面状に形成されている。
【0027】
また、ルーフサイドレール10には、その車幅方向内方端部、すなわちルーフサイドレールアウタ11、ルーフサイドレールインナ12及びルーフサイドレールレイン13がともに重ね合わせて接合される車幅方向内方端部に、車体のルーフ部を構成するルーフパネル7の車幅方向外方端部が重ね合わせて接合されている。
【0028】
ルーフサイドレール10に上端が結合されるセンタピラー20は、図5に示すように、車体の外面の一部を構成するセンタピラーアウタ21と、車体の内面の一部を構成するセンタピラーインナ22と、センタピラーアウタ21とセンタピラーインナ22との間に配設されたセンタピラーレイン23とを備え、センタピラーレイン23とセンタピラーアウタ21の両端部がともにセンタピラーインナ22に重ね合わせて接合され、閉断面状に形成されている。
【0029】
本実施形態では、ルーフサイドレール10とセンタピラー20との結合部6では、図3に示すように、ルーフサイドレールアウタ11とセンタピラーアウタ21とが一体的に形成されるとともに、ルーフサイドレールインナ12とセンタピラーインナ22とが一体的に形成され、ルーフサイドレールインナ12とセンタピラーインナ22の車室側には補強プレート8が配設されている。
【0030】
また、ルーフサイドレール10とセンタピラー20との結合部6近傍において、フロントドア30とリアドア40とはそれぞれ、センタピラー20と車体側面視において重なるように配設されており、フロントドア30の車体後方側の端部がセンタピラー20と重なるように配設され、リアドア40の車体前方側の端部がセンタピラー20と重なるように配設されている。フロントドア30の車体後方側の端部であるドアサッシ33の縦辺部33aがセンタピラー20と重なるように配設され、リアドア40の車体前方側の端部であるドアサッシ43の縦辺部43aがセンタピラー20と重なるように配設されている。
【0031】
フロントドア30のドアサッシ33は、図5に示すように、車体の外面の一部を構成するドアサッシアウタ33bと、車体の内面の一部を構成するドアサッシインナ33cと、図示しないドアガラス昇降機構によって昇降されるドアガラス32をガイドする断面コ字状のガイド部33dとを備えている。
【0032】
リアドア40についても同様に、ドアサッシ43は、車体の外面の一部を構成するドアサッシアウタ43bと、車体の内面の一部を構成するドアサッシインナ43cと、図示しないドアガラス昇降機構によって昇降されるドアガラス42をガイドする断面コ字状のガイド部43dとを備えている。
【0033】
本実施形態に係る車体側部2においては、フロントドア30、リアドア40にそれぞれ、ルーフサイドレール10に向けて突出する突出部35、45が設けられるとともに、ルーフサイドレール10に、例えば車両が横転したときなど、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると該突出部35、45と係合する係合部15、16が設けられている。
【0034】
フロントドア30に設けられる突出部35は、ドアサッシ33の縦辺部33aと上辺部33eとの角部に設けられ、図3に示すように、略円柱状に形成され、その先端部が先細り状に形成されている。突出部35はまた、その下端部が円盤状の基部36に一体的に結合され、該基部36が図示しない接着材によってドアサッシインナ33cの車外側から車内側に向けて下方に傾斜する上面部33fに固着して取り付けられ、上面部33fに形成された略円形状の開口部33gに挿通した状態でルーフサイドレール10に向けて突出するように設けられている。
【0035】
一方、ルーフサイドレール10に設けられる係合部15は、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されないときには突出部35と係合せずにルーフサイドレール10とフロントドア30とを非連結状態とし、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると突出部35と係合してルーフサイドレール10とフロントドア30とを連結するものであり、前記荷重の入力時に突出部35と係合するように突出部35に対応した位置、すなわち突出部35の上方側の位置に設けられている。
【0036】
係合部15は、底面部15aと側面部15bとフランジ部15cとを備えてハット状に形成され、車体上方側に膨出し車体下方側が開口するように位置付けられている。図3に示すように、係合部15は、フランジ部15cが、ルーフサイドレールアウタ11の車外側から車内側に向けて下方に傾斜する下面部11aと、ルーフサイドレールレイン13の車外側から車内側に向けて下方に傾斜する下面部13aとに接合され、下面部13aに形成された略円形状の開口部13b内に側面部15bが配置された状態でルーフサイドレール10内に凹状に窪むように設けられている。
【0037】
フロントドア30に設けられた突出部35は、その先端部が係合部15内に位置するように配置されるものの、フロントドア30を開閉する際に、本実施形態ではフロントドア30を開閉するために水平方向に移動する際に、突出部35と係合部15とが干渉しないように突出部35と係合部15との間に隙間Sが形成され、突出部35と係合部15とは、フロントドア30の開閉を許容するように構成されている。なお、ルーフサイドレール10自体もまた、フロントドア30を開閉する際に、突出部35と干渉しないように形成されている。
【0038】
リアドア40についても同様に、リアドア40に設けられる突出部45が、突出部35と同様にして構成され、ドアサッシ43の縦辺部43aと上辺部43eとの角部に設けられている。ルーフサイドレール10における突出部45の対応位置に設けられる係合部16もまた、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると突出部45と係合してルーフサイドレール10とリアドア40とを連結するものであり、係合部15と同様にして構成され、突出部45と係合部16は、フロントドア30の開閉を許容するように構成されている。
【0039】
本実施形態ではまた、フロントドア30及びリアドア40にそれぞれ円筒状の補強部材37、47が設けられ、図2に示すように、フロントドア30に設けられる補強部材37は、ドアサッシ33の縦辺部33aに沿って車体上下方向に延びるように設けられ、リアドア40に設けられる補強部材47は、ドアサッシ43の縦辺部43aに沿って車体上下方向に延びるように設けられている。
【0040】
前述したように、フロントドア30とリアドア40とはそれぞれ、センタピラー20と車体側面視において重なるように配置されており、補強部材37及び47はそれぞれ、フロントドア30及びリアドア40におけるセンタピラー20と車体側面視において重なる位置に設けられている。
【0041】
このようにして構成される本実施形態に係る車体側部2においては、例えば車両が横転したときなどには、車体上部のルーフサイドレール10に該ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力され得る。
【0042】
図6は、本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体にルーフサイドレールの上方から荷重が入力されたときの状態を説明するための説明図であり、図6では、図3に示す断面において、車両の横転時にルーフサイドレール10に入力される荷重を模擬した荷重Fが、圧子100を介してルーフサイドレール10の上方、具体的には車幅方向外方側から車幅方向内方側にルーフサイドレール10の上方から入力された状態を示している。なお、図6では、荷重Fが入力される前の状態を二点鎖線で示し、ウェザーストリップを省略して示している。
【0043】
図6に示すように、ルーフサイドレール10の上方から荷重Fが入力され、ルーフサイドレール10が荷重Fの入力に伴って車室側へ押圧されると、本実施形態では、ルーフサイドレール10に設けられた係合部15が下方へ移動して、フロントドア30に設けられた突出部35と係合し、ルーフサイドレール10とフロントドア30とを連結した連結状態とすることができるようになっている。これにより、ルーフサイドレール10にかかる荷重をフロントドア30に伝達することができる。
【0044】
このように、本実施形態では、フロントドア30に、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはルーフサイドレール10とフロントドア30とを非連結状態とし、前記荷重の入力時にはルーフサイドレール10とフロントドア30とを連結した連結状態とする連結機構が備えられ、該連結機構は、フロントドア30に設けられる突出部35とルーフサイドレール10に設けられる係合部15とによって構成されている。
【0045】
また、リアドア40についても同様に、ルーフサイドレール10の上方から荷重Fが入力されると、ルーフサイドレール10に設けられた係合部16が下方へ移動して、リアドア40に設けられた突出部45と係合し、ルーフサイドレール10とリアドア40とを連結した連結状態とすることができるようになっている。これにより、ルーフサイドレール10にかかる荷重をリアドア40にも伝達することができる。
【0046】
リアドア40についても同様に、該リアドア40に、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはルーフサイドレール10とリアドア40とを非連結状態とし、前記荷重の入力時にはルーフサイドレール10とリアドア40とを連結した連結状態とする連結機構が備えられ、該連結機構は、リアドア40に設けられる突出部45とルーフサイドレール10に設けられる係合部16とによって構成されている。
【0047】
また、本実施形態では、サイドドア30、40は、ルーフサイドレール10と対向する上面部、具体的にはドアサッシインナ33cの上面部33fに、突出部35、45と係合部15、16とから構成される連結機構と該サイドドア30、40とルーフサイドレール10との隙を埋めるシール部材としてウェザーストリップ34が配設されている。これにより、異物等が車室内へ侵入することを防止することができる。
【0048】
なお、サイドドア30、40に設けられる突出部35、45は、鉄物のような比較的剛性の高い材料から作られることが望ましい。後述する別の実施形態に係る車体1のサイドドア30、40に設けられる突出部35、45、38についても同様に、鉄物のような比較的剛性の高い材料から作られることが望ましい。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る車両の側部車体構造では、ルーフサイドレール10の上方からの荷重Fの非入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを非連結状態とし、前記荷重Fの入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを連結した連結状態とする連結機構35、15、45、16が備えられている。
【0050】
これにより、ルーフサイドレール10の上方からの荷重Fの入力時にルーフサイドレール10にかかる荷重をサイドドア30、40に伝達してサイドドア30、40に分散させることができるので、重量の増加や車室空間の制限を抑制しつつ、ルーフサイドレール10の上方からの荷重Fの入力時にルーフサイドレール10が車室側に倒れることを抑制することができ、乗員の安全性を向上させることができる。さらに、荷重Fの入力時にルーフサイドレール10とサイドドア30、40が連結されるため、荷重Fの非入力時である通常は非連結とされており、乗員が乗降する際にはサイドドア30、40を容易に開閉することができる。
【0051】
また、前記連結機構35、15、45、16は、サイドドア30、40に設けられてルーフサイドレール10に向けて突出する突出部35、45と、ルーフサイドレール10における突出部35、45の対応位置に設けられて前記荷重Fの入力時に突出部35、45と係合する係合部15、16とを有し、突出部35、45と係合部15、16とは、前記荷重Fの非入力時にサイドドア30、40の開閉を許容するように構成されていることにより、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にサイドドア30、40の開閉を阻害することなく、比較的簡単な構成によって、例えば連結機構を解除するための複雑な構造を必要とせず、前記効果を奏することができる。
【0052】
本実施形態では、フロントドア30とリアドア40とはそれぞれ、センタピラー20と車体側面視において重なるように配置され、補強部材37及び47はそれぞれ、フロントドア30及びリアドア40におけるセンタピラー20と車体側面視において重なる位置に設けられているが、補強部材37及び47をそれぞれ、センタピラー20におけるフロントドア30と車体側面視において重なる位置及びリアドア40と車体側面視において重なる位置に設けるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、フロントドア30とリアドア40とはそれぞれ、センタピラー20と車体側面視において重なるように配置されているが、フロントドア30及びリアドア40の何れか一方のドアが、センタピラー20と車体側面視において重なるように配置され、センタピラーと車体側面視において重なるドアにおける該ドアとセンタピラーとが車体側面視において重なる位置に補強部材を設けるようにしてもよく、また、センタピラーにおける該ドアとセンタピラーとが車体側面視において重なる位置に補強部材を設けるようにしてもよい。
【0054】
このように、フロントドア30とリアドア40の少なくとも何れか一方のドアが、センタピラー20と車体側面視において重なるように配設され、センタピラー20と車体側面視において重なるドア又はセンタピラー20における該ドアとセンタピラー20とが車体側面視において重なる位置に補強部材が備えられることにより、ルーフサイドレール10が車室側に倒れることをさらに抑制することができる。
【0055】
次に、本発明の別の実施形態について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、本発明の別の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体の断面図である。本発明の別の実施形態に係る車両の側部車体構造を適用した車体は、前述した実施形態に係る車体1に、サイドドア30、40とセンタピラー20とを連結する連結機構が備えられたものであり、前述した実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、本発明の別の実施形態に係る車体は、前述した車体1の車体側部2と同様に、車体側部52に、サイドドア30、40に設けられた突出部35、45とルーフサイドレール10に設けられた係合部15、16とによって、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを非連結状態とし、前記荷重の入力時にはルーフサイドレール10とサイドドア30、40とを連結した連結状態とする連結機構35、15、45、16が備えられている。
【0057】
車体側部52ではまた、ルーフサイドレール10とセンタピラー20との結合部6近傍において、フロントドア30及びリアドア40に、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはセンタピラー20と非連結状態とし、前記荷重の入力時にはセンタピラー20と連結した連結状態とする連結機構が備えられている。
【0058】
図7に示すように、フロントドア30に、センタピラー20に向けて突出する突出部38が設けられ、センタピラー20に、例えば車両が横転したときなど、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると該突出部38と係合する係合部25が設けられ、突出部38と係合部25とは、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはフロントドア30とセンタピラー20と非連結状態とし、前記荷重の入力時にはフロントドア30とセンタピラー20と連結した連結状態とする連結機構を構成している。
【0059】
フロントドア30に設けられる突出部38は、ドアサッシ33の縦辺部33aに設けられ、略円柱状に形成され、その先端部が先細り状に形成されている。突出部38はまた、その下端部が円盤状の基部39に一体的に結合され、該基部39が図示しない接着材によってドアサッシュインナ33cの上面部33fから下方に延びる縦部33hに固着して取り付けられ、該縦部33hに形成された略円形状の開口部33jに挿通した状態でセンタピラー20に向けて水平方向に突出するように設けられている。
【0060】
一方、センタピラー20に設けられる係合部25は、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されないときには突出部38と係合せずにルーフサイドレール10とフロントドア30とを非連結状態とし、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると突出部35と係合してフロントドア30とセンタピラー20とを連結するように突出部38に対応した位置に設けられている。
【0061】
係合部25は、底面部25aと側面部25bとフランジ部25cとを備えてハット状に形成され、車幅方向内方側に膨出し車幅方向外方側が開口するように位置付けられている。図7に示すように、係合部25は、フランジ部25cが、センタピラーアウタ21の車体上下方向に延びる縦部21aと、センタピラーレイン23の車体上下方向に延びる縦部23aとに接合され、該縦部23aに形成された略円形状の開口部23b内に側面部25bが配置された状態でセンタピラー20内に凹状に窪むように設けられている。
【0062】
フロントドア30に設けられた突出部38は、その先端部が係合部25内に位置するように配置されるものの、フロントドア30を開閉する際に、突出部38と係合部25とが干渉しないように位置付けられ、突出部38と係合部25とは、フロントドア30の開閉を許容するように構成されている。係合部25について、車体前後方向に長い長穴形状とすることにより、フロントドア30の開閉をより確実に許容することができる。
【0063】
なお、リアドア40についても同様に、リアドア40に、センタピラー20に向けて突出する突出部が設けられるとともに、センタピラー20に、ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力されると該突出部と係合する係合部が設けられ、該突出部と該係合部とによって、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の非入力時にはリアドア40とセンタピラー20と非連結状態とし、前記荷重の入力時にはリアドア40とセンタピラー20と連結した連結状態とする連結機構が備えられている。
【0064】
このようにして構成される本発明の別の実施形態に係る車体側部52においても、例えば車両が横転したときなどには、車体上部のルーフサイドレール10に該ルーフサイドレール10の上方から荷重が入力され得る。
【0065】
図8は、図7に示す車体にルーフサイドレールの上方から荷重が入力されたときの状態を説明するための説明図であり、図8では、図7に示す断面において、車両の横転時にルーフサイドレール10に入力される荷重を模擬した荷重Fが、圧子101を介してルーフサイドレール10の上方から垂直方向に入力された状態を示している。
【0066】
図8に示すように、ルーフサイドレール10の上方から荷重Fが入力され、ルーフサイドレール10が荷重Fの入力に伴って車室側へ押圧されると、本実施形態においても、ルーフサイドレール10に設けられた係合部15が下方へ移動して、フロントドア30に設けられた突出部35と係合し、ルーフサイドレール10とフロントドア30とを連結した連結状態とすることができるようになっている。これにより、ルーフサイドレール10にかかる荷重をフロントドア30に伝達することができる。
【0067】
また、この実施形態では、センタピラー20に設けられた係合部25も下方へ移動して、フロントドア30に設けられた突出部38と係合し、フロントドア30とセンタピラー20とを連結した連結状態とすることができるようになっている。これにより、フロントドア30に伝達された荷重をセンタピラー20に伝達してセンタピラー20に分散させることができる。
【0068】
また、リアドア40についても同様に、ルーフサイドレール10の上方から荷重Fが入力されると、ルーフサイドレール10とリアドア40とを連結する連結機構によってルーフサイドレール10にかかる荷重をリアドア40に伝達することができ、センタピラー20とリアドア40とを連結する連結機構によってリアドア40に伝達された荷重をセンタピラー20に伝達してセンタピラー20に分散させることができる。
【0069】
本実施形態では、フロントドア30とリアドア40とにそれぞれ、センタピラー20と連結する連結機構38、25が備えられているが、フロントドア30及びリアドア40の何れか一方のドアのみに、センタピラー20と連結する連結機構を備えるようにすることも可能である。
【0070】
このように、本発明の別の実施形態に係る車両の側部車体構造は、ルーフサイドレール10とセンタピラー20との結合部6近傍におけるフロントドア30及びリアドア40の少なくとも何れか一方のドアに、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の入力時にセンタピラー20と連結した連結状態とする連結機構38、25が備えられている。
【0071】
これにより、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の入力時にサイドドア30、40に伝達された荷重をセンタピラー20に伝達してセンタピラー20に分散させることができるので、ルーフサイドレール10が車室側に倒れることをさらに抑制することができ、乗員の安全性をさらに向上させることができる。
【0072】
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ルーフサイドレール10の上方からの荷重の入力時にルーフサイドレール10が車室側に倒れることを抑制するようにした車両の側部車体構造を提供することができ、ルーフサイドレール10の下方に設けられたドア開口部3、4を開閉可能に覆うサイドドア30、40を備えた車両において有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 車体
2、52 車体側部
3、4 ドア開口部
6 ルーフサイドレールとセンタピラーとの結合部
10 ルーフサイドレール
15、25 係合部
20 センタピラー
30 フロントドア
34 シール部材
35、38 突出部
37、47 補強部材
40 リアドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレールと、該ルーフサイドレールの下方に設けられたドア開口部を開閉可能に覆うサイドドアと、を備えた車両の側部車体構造であって、
前記ルーフサイドレールの上方からの荷重の非入力時には該ルーフサイドレールと前記サイドドアとを非連結状態とし、前記荷重の入力時には該ルーフサイドレールと前記サイドドアとを連結した連結状態とする第1の連結機構が備えられている、
ことを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記第1の連結機構は、前記サイドドアに設けられて前記ルーフサイドレールに向けて突出する突出部と、該ルーフサイドレールにおける前記突出部の対応位置に設けられて前記荷重の入力時に前記突出部と係合する係合部とを有し、
前記突出部と前記係合部とは、前記荷重の非入力時に前記サイドドアの開閉を許容するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記サイドドアは、車体前方側に配設されるフロントドアと、該フロントドアの車体後方側に配設されるリアドアと、を備え、
前記第1の連結機構は、該フロントドアと該リアドアとにそれぞれ備えられている、
ことを特徴とする請求項1叉は請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記フロントドアと前記リアドアとの間に、車体上下方向に延び上端が前記ルーフサイドレールに結合されたセンタピラーが設けられ、
前記ルーフサイドレールと前記センタピラーとの結合部近傍における前記フロントドア及び前記リアドアの少なくとも何れか一方のドアに、前記荷重の非入力時には該センタピラーと非連結状態とし、前記荷重の入力時には該センタピラーと連結した連結状態とする第2の連結機構が備えられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
前記フロントドアと前記リアドアの少なくとも何れか一方のドアが、前記センタピラーと車体側面視において重なるように配設され、
前記センタピラーと車体側面視において重なる前記ドア又は前記センタピラーにおける前記ドアと前記センタピラーとが車体側面視において重なる位置に補強部材が備えられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
前記サイドドアは、該サイドドアと前記ルーフサイドレールとが対向する上面部に、前記第1の連結機構と該サイドドアと前記ルーフサイドレールとの隙を埋めるシール部材が配設されている、
ことを特徴とする請求項2から請求項5の何れか1項に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−152874(P2011−152874A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16380(P2010−16380)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】