車両の側部車体構造
【課題】シートベルトからの荷重を効率的に吸収することが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【解決手段】クォータインナパネル２及びクォータアウタパネル３を備え、リヤシートベルト６の中間位置を案内支持するシートベルトガイド８が設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、クォータインナパネル２の外側には、クォータインナリーンフォースメント９が接合され、クォータインナパネル２には、シートベルトガイド８を取付ける取付ボルト１０のボルト取付部１１が設けられ、クォータインナリーンフォースメント９の下方には、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置され、クォータインナリーンフォースメント９の後部がクォータアウタパネル３の後部の辺に接合されているとともに、クォータインナリーンフォースメント９がパーティションパネル１２に接合されている。
【解決手段】クォータインナパネル２及びクォータアウタパネル３を備え、リヤシートベルト６の中間位置を案内支持するシートベルトガイド８が設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、クォータインナパネル２の外側には、クォータインナリーンフォースメント９が接合され、クォータインナパネル２には、シートベルトガイド８を取付ける取付ボルト１０のボルト取付部１１が設けられ、クォータインナリーンフォースメント９の下方には、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置され、クォータインナリーンフォースメント９の後部がクォータアウタパネル３の後部の辺に接合されているとともに、クォータインナリーンフォースメント９がパーティションパネル１２に接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、側部車体構造に係り、詳しくはシートベルト装置のシートベルトガイドが設けられている車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
４ドア・セダンタイプの車両のシートベルト装置は、構成部材として、リヤシートベルトを巻き取るリトラクタと、該リトラクタから上方へ繰り出されるシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドを備えており、これらリトラクタ及びシートベルトガイドは、シートベルトによって乗員の体を保持する関係上、車室側部に設けられている。そして、このようなリトラクタ及びシートベルトガイドを側部車体に取付ける場合には、車体側のホイールハウスインナパネルあるいはリヤピラーインナパネルに専用のブラケットを溶接固定することが行われていた。
ところが、このようにリトラクタやシートベルトガイドの取付用に専用のブラケットを設ける側部車体構造では、当該ブラケットの分だけ部品点数及び取付作業工数が増えることから、コスト高を将来するおそれがあった。また、当該ブラケットとその周囲の車体構成部材との相互関連性が少ないことから、シートベルトからリトラクタやシートベルトガイドへ加わる荷重を分散して支持しにくいという問題があった。
【０００３】
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献１のように、リヤピラーインナパネルにホイールハウスインナパネルの端部を接合させ、ホイールハウスインナパネルの内側にサスペンションリンクを支持するリンクブラケットを配置し、該リンクブラケットの端部をリヤピラーインナパネルとホイールハウスインナパネルとの接合部間に固定するとともに、リンクブラケットの端部を当該固定部からさらに車室側に延出させてリトラクタ取付部とした構造が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平６−１２６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
このような側部車体構造では、シートベルトに荷重が掛かった時、当該シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部（懸架部）における車両前方への荷重によって、クォータインナパネルが車両前方に向かって歪んで変形する。このとき、クォータインナパネルのみが車両前方に歪んで変形すると、荷重は分散されず、限界を超えたパネルの変形により十分な荷重吸収ができなくなり、シートベルトによる乗員の保持力が不十分になるおそれがあった。
また、上述した特許文献１の側部車体構造では、シートベルトに荷重が掛かった時の荷重分散を行うために、サイドハウジングレインフォースメントがクォータインナパネルに接合され、サイドハウジングレインフォースメントの後縁がクォータインナパネル及びクォータアウタパネルと共に３枚重ねで溶接接合されている。しかしながら、サイドハウジングレインフォースメントは、直接にはサイドブレースやパッケージジャンクションに接合されていないので、周辺部材への荷重分散が十分ではなく、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することができないという問題があった。
【０００６】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、シートベルトからの荷重をクォータインナパネルの周辺部材に分散し、クォータインナパネルのみが変形することを回避でき、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、
前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されている。
【０００８】
また、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられている。
【０００９】
さらに、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられている。
【００１０】
そして、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されている。
【発明の効果】
【００１１】
上述の如く、本発明に係る車両の側部車体構造は、クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプのものであって、前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されているので、シートベルトからの荷重を分散できるとともに、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することができる。特に、本発明の側部車体構造では、クォータインナリーンフォースメントとパーティションパネルとの接合によって、車体の幅方向の骨格を形成する剛性部材への荷重分散が可能となり、シートベルトからの荷重の吸収性能向上を図ることができる。
【００１２】
また、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられているので、シートベルトからの荷重によるクォータインナリーンフォースメントの折れ変形を低減させることが可能となり、クォータアウタパネルの後部及びパーティションパネルにシートベルトからの荷重を確実に伝えることができる。すなわち、シートベルトからの荷重をクォータインナパネルとクォータインナリーンフォースメントで受けた後、クォータインナリーンフォースメントによりパーティションパネルに荷重を分散することができる。これは、クォータインナリーンフォースメントが簡単に折れてしまうと変形が大きくなり、ボルト取付部の位置が大きく移動してしまうので、シートベルトの機能を十分に発揮させるには重要なことである。
【００１３】
さらに、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられているので、上述のビードとほぼ同様の効果を得ることができる。
【００１４】
そして、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されているので、クォータインナリーンフォースメントを通してクォータパネルの前後にわたって荷重を分散し、荷重分散を促進できるとともに、リヤドア開口部の角部の変形を低減し、荷重負荷後のドア開きを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用される車両の室内側から見た後方側部の車体の一部を示す斜視図である。
【図２】図１におけるＸ部を拡大して示す斜視図である。
【図３】図２におけるＡ−Ａ線断面図である。
【図４】本発明の実施形態に係る側部車体構造において、車両の室内側から見たクォータインナリーンフォースメントを示す斜視図である。
【図５】本発明の実施形態の変形例に係る側部車体構造を示すものであり、（ａ）は図１におけるＸ部の拡大斜視図、（ｂ）は（ａ）におけるＹ部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図１〜図４は本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を示すものである。
【００１７】
本発明の実施形態に係る車両は、図１〜図４に示すように、後部座席搭乗者を保持するシートベルト装置１を装備した４ドア・セダンタイプの自動車であり、このタイプの車両の側部車体構造は、車両の前後方向及び上下方向に沿って延在することにより車両側部の車体を構成するクォータインナパネル２、クォータアウタパネル３、リヤピラーパネル４及びホイールハウスインナパネル５を備えている。
シートベルト装置１は、リヤシートベルト６を巻き取るリトラクタ７と、このリトラクタ７から上方へ繰り出されるリヤシートベルト６の中間位置を案内支持するシートベルトガイド８を備えており、これらリトラクタ７及びシートベルトガイド８は、リヤシートベルト６によって乗員の体を保持する関係上、車室内の側部車体に設けられている。
【００１８】
クォータインナパネル２の車両後方側位置の外側には、車両の幅方向及び上下方向に展開して屈曲するクォータインナリーンフォースメント９が接合されて配置されている。このクォータインナリーンフォースメント９が位置するクォータインナパネル２には、シートベルトガイド８を取付ける取付ボルト１０のボルト取付部（懸架部）１１が設けられている。
【００１９】
本実施形態のクォータインナリーンフォースメント９の下方には、図２及び図３に示すように、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置されており、このパーティションパネル１２は、車幅方向に沿って延在するメインパネル１３と、該メインパネル１３の車幅方向両側で、車両前後方向に位置するフロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５とから構成されている。メインパネル１３は、車両前後方向の中間部分が上方へ突出する「くの字状」に折り曲げられて形成され、フロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５は、メインパネル１３に沿った形状に配置されており、これらパネルの重合部は、互いに接合されている。そして、パーティションパネル１２のリヤサイドパネル１５の車幅方向端部は、クォータインナパネル２の上下方向中間部分に接合されている。
【００２０】
また、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａは、図３に示すように、クォータインナパネル２とクォータアウタパネル３との接合部まで延長されており、これらクォータインナリーンフォースメントの後端部９ａ、クォータインナパネル２及びクォータアウタパネル３は、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。３枚重ね合わせられた状態では、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａがクォータアウタパネル３とクォータインナパネル２との間に配置され、クォータアウタパネル３の後部の辺に接合されていることになる。
しかも、クォータインナリーンフォースメント９の前方側下端部９ｂは、パーティションパネル１２のフロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５の車幅方向端部に接合されている。
【００２１】
また、本実施形態のクォータインナリーンフォースメント９には、図２及び図４に示すように、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在する２本のビード１６が横並びに設けられている。これらビード１６は、ボルト取付部１１に掛かる荷重に対するクォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を高めるものであり、上方へ突出する湾曲形状を有し、クォータインナリーンフォースメント９のパーティションパネル１２との接合部に向かって形成されている。
【００２２】
さらに、クォータインナリーンフォースメント９の上下方向に沿って延びる左右両側の辺部には、図４に示すように、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するフランジ１７がそれぞれ設けられている。これらフランジ１７は、ビード１６と同様、ボルト取付部１１に掛かる荷重に対するクォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を高めるものであり、下方へ折り曲げて形成されている。
【００２３】
本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用された４ドア・セダンタイプの車両において、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性加重をリヤシートベルト６で受け、シートベルトガイド８のボルト取付部１１が、車両前方及び車両下方へ向かって荷重を受けると、ボルト取付部１１は、車両前方に移動する。これに伴い、クォータインナパネル２が変形しようとする。しかし、クォータインナパネル２は、クォータインナリーンフォースメント９、パーティションパネル１２及びクォータアウタパネル３などの周辺部品に接合されているため、ボルト取付部１１からの荷重の分散が可能となり、その結果、クォータインナパネル２の変形が低減することになる。しかも、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するビード１６及びフランジ１７の存在によって、クォータインナリーンフォースメント９の下部剛性が向上していることから、クォータインナリーンフォースメント９がボルト取付部１１の下方部分で折れ変形を生じることが抑えられ、クォータアウタパネル３及びパーティションパネル１２への荷重伝達が促進される。
【００２４】
このように、本発明の実施形態に係る側部車体構造においては、クォータインナパネル２の外側にクォータインナリーンフォースメント９が接合され、クォータインナリーンフォースメント９が位置するクォータインナパネル２にシートベルトガイド８のボルト取付部１１が設けられ、クォータインナリーンフォースメント９の下方に、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置され、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａがクォータアウタパネル３の後部の辺に接合され、クォータインナリーンフォースメント９がパーティションパネル１２に接合されているため、シートベルトガイド８のボルト取付部１１からの荷重を車体剛性部材へ伝えて分散できるとともに、当該ボルト取付部１１からの荷重を効率的に吸収することができる。
【００２５】
また、本実施形態の側部車体構造では、クォータインナリーンフォースメント９にボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するビード１６及びフランジ１７が設けられているため、クォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を大きく向上させることができ、シートベルトガイド８のボルト取付部１１から車両前方への荷重入力時のクォータインナリーンフォースメント９の折れ変形を低減させることができる。
【００２６】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【００２７】
例えば、既述の実施形態におけるクォータインナリーンフォースメント９の車両前方側は、クォータインナパネル２の前後方向中間部分に位置する長さに形成されているが、図５（ａ）の点線で示すように、クォータインナリーンフォースメント９の前部９ｃにおける車幅方向の一部分が、車両前方へ向かって延長され、かつ図５（ｂ）に示すように、クォータインナパネル２の前縁部と共に３枚重ねの状態で、クォータアウタパネル３の前縁部に接合されていても良い。これによって、クォータインナリーンフォースメント９に掛かる荷重の分散を促進させることができる。
【符号の説明】
【００２８】
１ シートベルト装置
２ クォータインナパネル
３ クォータアウタパネル
６ リヤシートベルト
７ リトラクタ
８ シートベルトガイド
９ クォータインナリーンフォースメント
９ａ 後端部
９ｂ 下端部
９ｃ 前部
１０ 取付ボルト
１１ ボルト取付部
１２ パーティションパネル
１３ メインパネル
１４ フロントサイドパネル
１５ リヤサイドパネル
１６ ビード
１７ フランジ
Ｃ 水平中心軸線
【技術分野】
【０００１】
本発明は、側部車体構造に係り、詳しくはシートベルト装置のシートベルトガイドが設けられている車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
４ドア・セダンタイプの車両のシートベルト装置は、構成部材として、リヤシートベルトを巻き取るリトラクタと、該リトラクタから上方へ繰り出されるシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドを備えており、これらリトラクタ及びシートベルトガイドは、シートベルトによって乗員の体を保持する関係上、車室側部に設けられている。そして、このようなリトラクタ及びシートベルトガイドを側部車体に取付ける場合には、車体側のホイールハウスインナパネルあるいはリヤピラーインナパネルに専用のブラケットを溶接固定することが行われていた。
ところが、このようにリトラクタやシートベルトガイドの取付用に専用のブラケットを設ける側部車体構造では、当該ブラケットの分だけ部品点数及び取付作業工数が増えることから、コスト高を将来するおそれがあった。また、当該ブラケットとその周囲の車体構成部材との相互関連性が少ないことから、シートベルトからリトラクタやシートベルトガイドへ加わる荷重を分散して支持しにくいという問題があった。
【０００３】
そのため、従来の側部車体構造の中には、特許文献１のように、リヤピラーインナパネルにホイールハウスインナパネルの端部を接合させ、ホイールハウスインナパネルの内側にサスペンションリンクを支持するリンクブラケットを配置し、該リンクブラケットの端部をリヤピラーインナパネルとホイールハウスインナパネルとの接合部間に固定するとともに、リンクブラケットの端部を当該固定部からさらに車室側に延出させてリトラクタ取付部とした構造が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平６−１２６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
このような側部車体構造では、シートベルトに荷重が掛かった時、当該シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部（懸架部）における車両前方への荷重によって、クォータインナパネルが車両前方に向かって歪んで変形する。このとき、クォータインナパネルのみが車両前方に歪んで変形すると、荷重は分散されず、限界を超えたパネルの変形により十分な荷重吸収ができなくなり、シートベルトによる乗員の保持力が不十分になるおそれがあった。
また、上述した特許文献１の側部車体構造では、シートベルトに荷重が掛かった時の荷重分散を行うために、サイドハウジングレインフォースメントがクォータインナパネルに接合され、サイドハウジングレインフォースメントの後縁がクォータインナパネル及びクォータアウタパネルと共に３枚重ねで溶接接合されている。しかしながら、サイドハウジングレインフォースメントは、直接にはサイドブレースやパッケージジャンクションに接合されていないので、周辺部材への荷重分散が十分ではなく、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することができないという問題があった。
【０００６】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、シートベルトからの荷重をクォータインナパネルの周辺部材に分散し、クォータインナパネルのみが変形することを回避でき、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することが可能な車両の側部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、
前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されている。
【０００８】
また、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられている。
【０００９】
さらに、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられている。
【００１０】
そして、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されている。
【発明の効果】
【００１１】
上述の如く、本発明に係る車両の側部車体構造は、クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプのものであって、前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されているので、シートベルトからの荷重を分散できるとともに、シートベルトからの荷重を効率的に吸収することができる。特に、本発明の側部車体構造では、クォータインナリーンフォースメントとパーティションパネルとの接合によって、車体の幅方向の骨格を形成する剛性部材への荷重分散が可能となり、シートベルトからの荷重の吸収性能向上を図ることができる。
【００１２】
また、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられているので、シートベルトからの荷重によるクォータインナリーンフォースメントの折れ変形を低減させることが可能となり、クォータアウタパネルの後部及びパーティションパネルにシートベルトからの荷重を確実に伝えることができる。すなわち、シートベルトからの荷重をクォータインナパネルとクォータインナリーンフォースメントで受けた後、クォータインナリーンフォースメントによりパーティションパネルに荷重を分散することができる。これは、クォータインナリーンフォースメントが簡単に折れてしまうと変形が大きくなり、ボルト取付部の位置が大きく移動してしまうので、シートベルトの機能を十分に発揮させるには重要なことである。
【００１３】
さらに、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられているので、上述のビードとほぼ同様の効果を得ることができる。
【００１４】
そして、本発明において、前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されているので、クォータインナリーンフォースメントを通してクォータパネルの前後にわたって荷重を分散し、荷重分散を促進できるとともに、リヤドア開口部の角部の変形を低減し、荷重負荷後のドア開きを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用される車両の室内側から見た後方側部の車体の一部を示す斜視図である。
【図２】図１におけるＸ部を拡大して示す斜視図である。
【図３】図２におけるＡ−Ａ線断面図である。
【図４】本発明の実施形態に係る側部車体構造において、車両の室内側から見たクォータインナリーンフォースメントを示す斜視図である。
【図５】本発明の実施形態の変形例に係る側部車体構造を示すものであり、（ａ）は図１におけるＸ部の拡大斜視図、（ｂ）は（ａ）におけるＹ部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図１〜図４は本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を示すものである。
【００１７】
本発明の実施形態に係る車両は、図１〜図４に示すように、後部座席搭乗者を保持するシートベルト装置１を装備した４ドア・セダンタイプの自動車であり、このタイプの車両の側部車体構造は、車両の前後方向及び上下方向に沿って延在することにより車両側部の車体を構成するクォータインナパネル２、クォータアウタパネル３、リヤピラーパネル４及びホイールハウスインナパネル５を備えている。
シートベルト装置１は、リヤシートベルト６を巻き取るリトラクタ７と、このリトラクタ７から上方へ繰り出されるリヤシートベルト６の中間位置を案内支持するシートベルトガイド８を備えており、これらリトラクタ７及びシートベルトガイド８は、リヤシートベルト６によって乗員の体を保持する関係上、車室内の側部車体に設けられている。
【００１８】
クォータインナパネル２の車両後方側位置の外側には、車両の幅方向及び上下方向に展開して屈曲するクォータインナリーンフォースメント９が接合されて配置されている。このクォータインナリーンフォースメント９が位置するクォータインナパネル２には、シートベルトガイド８を取付ける取付ボルト１０のボルト取付部（懸架部）１１が設けられている。
【００１９】
本実施形態のクォータインナリーンフォースメント９の下方には、図２及び図３に示すように、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置されており、このパーティションパネル１２は、車幅方向に沿って延在するメインパネル１３と、該メインパネル１３の車幅方向両側で、車両前後方向に位置するフロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５とから構成されている。メインパネル１３は、車両前後方向の中間部分が上方へ突出する「くの字状」に折り曲げられて形成され、フロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５は、メインパネル１３に沿った形状に配置されており、これらパネルの重合部は、互いに接合されている。そして、パーティションパネル１２のリヤサイドパネル１５の車幅方向端部は、クォータインナパネル２の上下方向中間部分に接合されている。
【００２０】
また、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａは、図３に示すように、クォータインナパネル２とクォータアウタパネル３との接合部まで延長されており、これらクォータインナリーンフォースメントの後端部９ａ、クォータインナパネル２及びクォータアウタパネル３は、３枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接によって接合されている。３枚重ね合わせられた状態では、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａがクォータアウタパネル３とクォータインナパネル２との間に配置され、クォータアウタパネル３の後部の辺に接合されていることになる。
しかも、クォータインナリーンフォースメント９の前方側下端部９ｂは、パーティションパネル１２のフロントサイドパネル１４及びリヤサイドパネル１５の車幅方向端部に接合されている。
【００２１】
また、本実施形態のクォータインナリーンフォースメント９には、図２及び図４に示すように、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在する２本のビード１６が横並びに設けられている。これらビード１６は、ボルト取付部１１に掛かる荷重に対するクォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を高めるものであり、上方へ突出する湾曲形状を有し、クォータインナリーンフォースメント９のパーティションパネル１２との接合部に向かって形成されている。
【００２２】
さらに、クォータインナリーンフォースメント９の上下方向に沿って延びる左右両側の辺部には、図４に示すように、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するフランジ１７がそれぞれ設けられている。これらフランジ１７は、ビード１６と同様、ボルト取付部１１に掛かる荷重に対するクォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を高めるものであり、下方へ折り曲げて形成されている。
【００２３】
本発明の実施形態に係る側部車体構造が適用された４ドア・セダンタイプの車両において、車両前方から荷重が加えられ、後部座席搭乗者の慣性加重をリヤシートベルト６で受け、シートベルトガイド８のボルト取付部１１が、車両前方及び車両下方へ向かって荷重を受けると、ボルト取付部１１は、車両前方に移動する。これに伴い、クォータインナパネル２が変形しようとする。しかし、クォータインナパネル２は、クォータインナリーンフォースメント９、パーティションパネル１２及びクォータアウタパネル３などの周辺部品に接合されているため、ボルト取付部１１からの荷重の分散が可能となり、その結果、クォータインナパネル２の変形が低減することになる。しかも、ボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するビード１６及びフランジ１７の存在によって、クォータインナリーンフォースメント９の下部剛性が向上していることから、クォータインナリーンフォースメント９がボルト取付部１１の下方部分で折れ変形を生じることが抑えられ、クォータアウタパネル３及びパーティションパネル１２への荷重伝達が促進される。
【００２４】
このように、本発明の実施形態に係る側部車体構造においては、クォータインナパネル２の外側にクォータインナリーンフォースメント９が接合され、クォータインナリーンフォースメント９が位置するクォータインナパネル２にシートベルトガイド８のボルト取付部１１が設けられ、クォータインナリーンフォースメント９の下方に、クォータインナパネル２と接合するパーティションパネル１２が配置され、クォータインナリーンフォースメント９の後端部９ａがクォータアウタパネル３の後部の辺に接合され、クォータインナリーンフォースメント９がパーティションパネル１２に接合されているため、シートベルトガイド８のボルト取付部１１からの荷重を車体剛性部材へ伝えて分散できるとともに、当該ボルト取付部１１からの荷重を効率的に吸収することができる。
【００２５】
また、本実施形態の側部車体構造では、クォータインナリーンフォースメント９にボルト取付部１１の水平中心軸線Ｃの位置から下方に向かって延在するビード１６及びフランジ１７が設けられているため、クォータインナリーンフォースメント９の下部剛性を大きく向上させることができ、シートベルトガイド８のボルト取付部１１から車両前方への荷重入力時のクォータインナリーンフォースメント９の折れ変形を低減させることができる。
【００２６】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【００２７】
例えば、既述の実施形態におけるクォータインナリーンフォースメント９の車両前方側は、クォータインナパネル２の前後方向中間部分に位置する長さに形成されているが、図５（ａ）の点線で示すように、クォータインナリーンフォースメント９の前部９ｃにおける車幅方向の一部分が、車両前方へ向かって延長され、かつ図５（ｂ）に示すように、クォータインナパネル２の前縁部と共に３枚重ねの状態で、クォータアウタパネル３の前縁部に接合されていても良い。これによって、クォータインナリーンフォースメント９に掛かる荷重の分散を促進させることができる。
【符号の説明】
【００２８】
１ シートベルト装置
２ クォータインナパネル
３ クォータアウタパネル
６ リヤシートベルト
７ リトラクタ
８ シートベルトガイド
９ クォータインナリーンフォースメント
９ａ 後端部
９ｂ 下端部
９ｃ 前部
１０ 取付ボルト
１１ ボルト取付部
１２ パーティションパネル
１３ メインパネル
１４ フロントサイドパネル
１５ リヤサイドパネル
１６ ビード
１７ フランジ
Ｃ 水平中心軸線
【特許請求の範囲】
【請求項１】
クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、
前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項２】
前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項３】
前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載の車両の側部車体構造。
【請求項４】
前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の車両の側部車体構造。
【請求項１】
クォータインナパネル及びクォータアウタパネルを備え、リヤシートベルトの中間位置を案内支持するシートベルトガイドが設けられている４ドア・セダンタイプの車両の側部車体構造において、
前記クォータインナパネルの外側には、クォータインナリーンフォースメントが接合され、前記クォータインナリーンフォースメントが位置する前記クォータインナパネルには、前記シートベルトガイドを取付ける取付ボルトのボルト取付部が設けられ、前記クォータインナリーンフォースメントの下方には、前記クォータインナパネルと接合するパーティションパネルが配置され、前記クォータインナリーンフォースメントの後部が前記クォータアウタパネルの後部の辺に接合されているとともに、前記クォータインナリーンフォースメントが前記パーティションパネルに接合されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項２】
前記クォータインナリーンフォースメントには、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するビードが設けられていることを特徴とする請求項１に記載の車両の側部車体構造。
【請求項３】
前記クォータインナリーンフォースメントの上下方向に沿って延びる辺部には、前記ボルト取付部の位置から下方に向かって延在するフランジが設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載の車両の側部車体構造。
【請求項４】
前記クォータインナリーンフォースメントの前部が車両前方へ向かって延長され、かつ前記クォータアウタパネルの前縁部に接合されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の車両の側部車体構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１１−２３５８３６（Ｐ２０１１−２３５８３６Ａ）
【公開日】平成２３年１１月２４日（２０１１．１１．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１１０９７９（Ｐ２０１０−１１０９７９）
【出願日】平成２２年５月１３日（２０１０．５．１３）
【出願人】（０００００２０８２）スズキ株式会社 (3,196)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１１月２４日（２０１１．１１．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年５月１３日（２０１０．５．１３）
【出願人】（０００００２０８２）スズキ株式会社 (3,196)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]