説明

車両の制御装置

【課題】計算負荷を低減することで、限られたメモリ容量しか実装できない車両へのJITモデリングの適用を可能にすると共に、より多くのデータを網羅することを可能にして制御精度を向上させるようにした車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の運転を示すパラメータ群を計測し(S10)、計測されたパラメータ群を入力とし、対応して設定された出力と共に入力データuDB(i)、出力データyDB(i)として蓄積して蓄積データを得(S12)、入力に対して時刻tのときのモデルを同定するための要求点を設定し(S14)、設定された要求点と蓄積入力との距離を求めて類似度を算出し(S16)、蓄積データから距離が小さいデータの集合を探索して近傍のデータとして決定し(S18)、それに含まれる出力データから推定出力を算出し(S20)、算出値に基づいて車両の運転を制御する(S22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の制御装置に関し、より詳しくは計算負荷を低減するようにした車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、モデリング手法としてJust In Time モデリング(以下「JITモデリング」という)が提唱されている。JITモデリングは、過去の蓄積データ内の全ての入力データの中から、現在の入力(要求点)に類似するデータの集合(これを「近傍」とよぶ)を探索し、対応する出力データを推定出力データとする手法である。
【0003】
即ち、対象の大域的なモデルを求める代わりに、システムの過去の入出力データを蓄積し、蓄積されたデータの中から類似する事例を検索し、その事例の出力を推定結果として出力する手法である。JITモデリングを用いた技術としては、特許文献1記載の技術を挙げることができる。
【0004】
特許文献1記載の技術にあっては、制御量の時系列データとPID制御パラメータを状態ベクトルとしてデータベースに蓄積し、新たな状態ベクトルが与えられると、蓄積された状態ベクトルに基づいて局所モデルとして新たな状態ベクトルに対応するPID制御パラメータを生成してPID制御器のPID制御パラメータを調整すると共に、制御誤差が小さくなるように修正してデータベースに蓄積している。
【特許文献1】特開2007−304844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
JITモデリングは、実際の入出力データから直接的に推定結果を生成するため、出力挙動の説明付けあるいは物理的な解釈が容易という利点がある。また、大域的(普遍的)なモデルを得るためには、制御対象の構造や物理現象に関する事前情報が必要となるが、JITモデリングではより少ない事前情報のみで済むという利点もある。
【0006】
他方、JITモデリングで推定精度を上げて制御精度を向上させるには、より網羅性の高い大量のデータをデータベースとして用意する必要があり、その結果、データベースが大きくなることに伴って類似事例を検索するための計算負荷が増大し、検索に時間を要してしまう。そのため、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両への適用が困難であった。
【0007】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、計算負荷を低減することで、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両へのJITモデリングの適用を可能にすると共に、より多くのデータを網羅することを可能にして制御精度を向上させるようにした車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る車両の制御装置にあっては、車両の運転を示すパラメータ群を計測する計測手段と、前記計測されたパラメータ群を入力u(t)とし、前記入力u(t)に対応して設定された出力y(t)と共に入力データuDB(i)、出力データyDB(i)としてそれぞれ蓄積して蓄積データφDB(i)(=uDB(i),yDB(i))を得るデータ蓄積手段と、前記入力u(t)に対して時刻tのときのモデルを同定するための要求点qを設定する要求点設定手段と、前記設定された要求点qと前記蓄積入力uDB(i)との距離dを全てのiについて求めることで類似度を算出する類似度算出手段と、前記蓄積データφDB(i)から前記距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定する近傍決定手段と、前記決定された近傍のデータに含まれる出力データyDB(i)から推定出力yハット(t;q)を算出する推定出力算出手段と、前記算出された推定出力yハット(t;q)に基づいて前記車両の運転を制御する車両運転制御手段とを備える如く構成した。
【0009】
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、前記近傍データ決定手段は、前記求めた距離dの小さいk個のデータの集合をソートして前記近傍のデータとして決定する如く構成した。
【0010】
請求項3に係る車両の制御装置にあっては、前記近傍決定手段は、しきい値thdの初期値を求めて前記距離dと比較し、距離d<thdを満足する距離dの個数pを求め、p=kとなるようにthdを増減して前記k個のデータの集合を探索する如く構成した。
【0011】
請求項4に係る車両の制御装置にあっては、前記近傍決定手段は、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxを求め、その平均値を前記しきい値thdの初期値とする如く構成した。
【0012】
請求項5に係る車両の制御装置にあっては、前記近傍決定手段は、前記蓄積データφDB(i)の総数をNとするとき、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxの和にk/Nを乗じて得た積を前記しきい値thdの初期値とする如く構成した。
【0013】
請求項6に係る車両の制御装置にあっては、前記近傍決定手段は、k<pであるとき、d<thdを満たす集合のみを探索する如く構成した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る車両の制御装置にあっては、計測されたパラメータ群を入力u(t)とし、それに対応して設定された出力y(t)と共に入力データuDB(i)、出力データyDB(i)として蓄積して蓄積データφDB(i)(=uDB(i),yDB(i))を得、入力u(t)に対して時刻tのときのモデルを同定するための要求点qを設定し、設定された要求点qと蓄積入力uDB(i)との距離dを全てのiについて求め、蓄積データφDB(i)から距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定し、それに含まれる出力データyDB(i)から推定出力yハット(t;q)を算出すると共に、算出された推定出力yハット(t;q)に基づいて車両の運転を制御する如く構成したので、近傍決定手段の計算負荷を低減することができる。
【0015】
即ち、近傍探索は一般的にソートにより行われるが、ソート処理はデータを比較しながら並べ替え、データの順序が揃うまでそれを繰り返す作業であるため、計算負荷が大きく、検索速度低下の大きな原因の1つとなる。それに対し、本願においては、ソートに代え、蓄積データφDB(i)から距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定するように構成したので、計算負荷を低減させることができ、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両にJITモデリングを適用することができる。
【0016】
また、計算負荷が低減することで、より短い周期でモデリングすることができると共に、蓄積データの量や種類を増加させてより多くのデータを網羅することができ、それによって制御精度を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、求めた距離dの小さいk個のデータの集合をソートして近傍のデータとして決定する如く構成したので、上記した効果に加え、計算負荷をほとんど生じることがない。即ち、ソートするのはk個のデータだけであるので、計算負荷をほとんど生じることがなく、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両にJITモデリングを適用することができる。
【0018】
請求項3に係る車両の制御装置にあっては、しきい値thdの初期値を求めて距離dと比較し、距離d<thdを満足する距離dの個数pを求め、p=kとなるようにthdを増減してk個のデータの集合を探索する如く構成したので、上記した効果に加え、構成が簡易となって計算負荷を一層低減することができる。
【0019】
請求項4に係る車両の制御装置にあっては、距離dの最小値dminと最大値dmaxを求め、その平均値を前記しきい値thdの初期値とする如く構成したので、上記した効果に加え、k個のデータの集合を確実に探索することができる。
【0020】
請求項5に係る車両の制御装置にあっては、蓄積データφDB(i)の総数をNとするとき、距離dの最小値dminと最大値dmaxの和にk/Nを乗じて得た積をしきい値thdの初期値とする如く構成したので、上記した効果に加え、一旦近傍ではないと判定された領域は二度と探索しないため、初期探索のときから近傍にかなり接近することができ、計算負荷を一層低減することができる。
【0021】
請求項6に係る車両の制御装置にあっては、k<pであるとき、d<thdを満たす集合のみを探索する如く構成したので、上記した効果に加え、探索効率を向上させることができ、計算負荷を一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両の制御装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、この発明の第1実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。実施例においては、車両の制御装置として運転者の運転志向を推定して車両の運転を制御する装置を例にとって説明する。
【0024】
図1において、符号10はエンジン(内燃機関)を示す。エンジン10は4気筒などの複数の気筒を備える火花点火式の水冷ガソリンエンジンであり、車両(駆動輪Wなどで部分的に示す)14の車体(図示せず)に搭載される。
【0025】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されて駆動される。
【0026】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(燃料噴射弁)20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0027】
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して変速機26に入力される。変速機26はエンジン10の出力を変速する。
【0028】
即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプインペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービンランナ24bはメインシャフト(ミッション入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24はロックアップクラッチ24cを備える。
【0029】
変速機26はCVT(Continuous Variable Transmission)からなり、メインシャフトMSに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフトCSに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cと、可動プーリ半体(後述)のピストン室に作動油を供給する油圧機構26dとからなる。
【0030】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに配置された固定プーリ半体26a1と、固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに固定された固定プーリ半体26b1と、固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0031】
CVT26は、前後進切換装置30に接続される。前後進切換装置30は、フォワード(前進)クラッチ30aと、後進ブレーキ30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。
【0032】
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2はフォワードクラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0033】
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0034】
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ34,36を介してセカンダリシャフトSSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ40とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(タイヤ。右側のみ示す)Wに伝えられる。駆動輪Wの付近にはディスクブレーキ42が配置される。
【0035】
フォワードクラッチ30aと後進ブレーキ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー44を運転者が操作することによって行われる。即ち、運転者によってシフトレバー44のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作は油圧機構(図示せず)のマニュアルバルブ(図示せず)に伝えられる。
【0036】
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、フォワードクラッチ30aのピストン室に油圧が供給されてフォワードクラッチ30aが締結される。フォワードクラッチ30aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
【0037】
他方、Rポジションが選択されると、フォワードクラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキ30bが作動する。それによりキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
【0038】
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されてフォワードクラッチ30aと後進ブレーキ30bが共に開放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0039】
CVT26においては油圧機構26dから可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室に作動油が供給され、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧(ベルト伝達トルク)が発生させられると、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。
【0040】
このように、プーリ側圧を調整、換言すればベルト伝達トルク指令値を変更することで、エンジン10の出力を駆動輪Wに伝達する変速比を無段階に変化させることができる。
【0041】
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ48が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ50が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0042】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ52が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットル開度THに比例した信号を出力すると共に、アクセルペダル付近にはアクセル開度センサ54が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量(アクセルペダル踏み込み量)に相当するアクセルペダル開度APに比例する信号を出力する。
【0043】
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ56が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じると共に、吸気系には吸気温センサ58が設けられ、エンジン10に吸入される吸気温(外気温)TAに応じた出力を生じる。
【0044】
上記したクランク角センサ48などの出力は、エンジンコントローラ60に送られる。エンジンコントローラ60はCPU,ROM,RAMなどを有するマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動すると共に、アクセルペダル開度APに応じてスロットルバルブの開度THを制御する。
【0045】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)62が設けられ、タービンランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的にはフォワードクラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0046】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)64が設けられてドライブプーリ26aの回転数、即ち、フォワードクラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)66が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数を示すパルス信号を出力する。
【0047】
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近にはVELセンサ(回転数センサ)68が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力回転数あるいは車速VELを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションセンサ70が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
【0048】
またブレーキペダル付近にはブレーキ開度センサ72が設けられて運転者のブレーキペダル操作量(ブレーキペダル踏み込み量)に相当するブレーキペダル開度BRKに比例する信号を出力すると共に、ステアリングホイール(図示せず)の付近には舵角センサ73が設けられて運転者の操作したステアリング舵角θstに比例する信号を出力する。
【0049】
上記したNTセンサ62などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ74に送られる(アクセル開度センサ54の出力などはエンジンコントローラ60から送信される)。シフトコントローラ74もCPU,ROM,RAMなどを有するマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ60と通信自在に構成される。
【0050】
入力されたセンサ出力のうち、NTセンサ62などの回転数センサの出力はシフトコントローラ74において波形整形回路に入力される。シフトコントローラ74は波形整形回路の出力の時間間隔を計測して回転数と車速Vを検出する。
【0051】
シフトコントローラ74はそれら検出値に基づき、油圧機構の電磁ソレノイド(図示せず)を励磁・非励磁してトルクコンバータ24とCVT26の動作を制御すると共に、フォワードクラッチ30aの締結を判断して操作量を決定する。
【0052】
より具体的には、シフトコントローラ74は、後述するように運転者の運転志向、具体的にはスポーティ走行と燃費走行のいずれを志向するか判定して目標変速比(レシオ)を決定し、決定した目標変速比となるように、可動プーリ半体26a2,26b2を駆動し、変速比を制御する。
【0053】
以下、それについて説明する。
【0054】
制御系やパラメータ推定器などの設計においては、設計対象の動特性を把握する必要があり、この作業は一般にモデリングと呼ばれる。モデリングの一般的な手法として、物理モデリングとシステム同定がある。
【0055】
物理モデリングは、対象の物理現象を支配する法則を抽出し、微分方程式などの数式を用いてモデルを作成する手法である。対象の物理現象が明確な場合は有効であるが、未知のパラメータが存在する場合や多数の入出力を持つような大規模なモデルに対しては適用が困難である。
【0056】
一方、システム同定は、実際に対象を動作させ、そのときの入出力信号から同定手法を用いてモデルを構成する手法であり、モデルの内部構造が未知であってもモデリング可能である。
【0057】
以上の手法はどちらも対象の大域的な(普遍的な)モデルを得る手法であるが、対象が強い非線形性を持つ場合や、モデルの次数が明確でない場合などにあっては、有効なモデルを得るのは困難である。
【0058】
これらに対し、前記したJITモデリングでは、対象の大域的なモデルを求める代わりに、対象の過去の入出力データを大量に蓄積し、蓄積データから出力の推定値を求める。JITモデリングでは、モデルを同定したい点(これを「要求点」と呼ぶ)が与えられると、蓄積データを利用して要求点付近の局所モデルを構成するため、強い非線形性を持つような大域的なモデルを求めるのが困難な対象であっても、有効なモデルを得ることが可能である。
【0059】
以下、JITモデリングのアルゴリズムについて簡単に説明する。
【0060】
まず、システムの入力と出力をそれぞれu(t),y(t)とする。
【0061】
【数1】

ここで、mは入力の数、nは出力の数である。
【0062】
また、u(t)とy(t)の過去のデータを蓄積してそれぞれuDB(i),yDB(i)とし、それらを用いて蓄積データφDB(i)を次式のように構成する。
【0063】
【数2】

上記でnuは入力の次数であり、自由に選ぶことができる。
【0064】
次に、時刻tにおける入力u(t)に対する出力y(t)の推定をJIT手法により行うことを考える。このときの入力u(t)はモデルを同定したい点であり、要求点と呼ばれる。ここでは要求点をqと表す。
【0065】
【数3】

【0066】
JITモデリングによる出力推定の基本的な構成を図2に示す。これは具体的には、シフトコントローラ74の動作を示すブロック図である。図3は、図2に示す構成を動作的に示すフロー・チャートである。
【0067】
以下、JITモデリングを用いて車両14において運転者の運転志向を推定して車両14の動作を制御する場合を例にとって説明する。
【0068】
図2と図3を参照して説明すると、先ず前処理において、エキスパート運転者が、スポーティ走行や燃費走行など運転志向を変化させて走行したデータを計測し(データ計測ブロックa,S10)、それらのデータをデータベースとして蓄積する(蓄積データブロックb,S12)。ここで「エキスパート運転者」は、上記した運転志向に変化させながら車両14を運転することができる熟練運転者を意味する。
【0069】
入力データとしては、運転志向と関連があると思われるパラメータを選択する。例えば、アクセルペダル開度AP、ブレーキペダル開度BRK、ステアリング角度θstなどの運転者の操作に関する情報、エンジン回転数NE、車速VELなどの車両14の運転に関する情報である。
【0070】
それ以外にも、カメラ・レーダ・GPSなどの外界センサが搭載されるときは、それらを通じて得た外界情報やそれらの統計量(差分・平均・分散など)を加えても良い。また、それらを組み合わせて作った特徴的な値を入力に加えても良い。
【0071】
一方、対応する出力値としては、最も単純に、加速性能を重視したスポーティ走行のとき1、燃費を重視した燃費走行のとき0とする。
【0072】
次いで、要求点qを設定する(要求点設定ブロックc,S14)。前記した如く、要求点qは、時刻tにおける入力u(t)に対する出力y(t)を推定するとき、そのときの入力u(t)、即ち、モデルを同定したい点を意味する。
【0073】
次いで、設定された要求点qと蓄積データの類似度を算出する(類似度算出ブロックd,S16)。
【0074】
類似度は、1からNまで変化させたときの全てのiについて蓄積入力データuDB(i)と要求点qとの距離dを求めることで算出する。距離dの算出手法としては種々のものが提案されているが、最も単純なのはユークリッド距離を用いる方法である。
【0075】
【数4】

【0076】
次いで、算出した類似度に基づき、要求点に類似するデータを蓄積データから探索し、近傍を決定する(近傍決定ブロックe,S18)。
【0077】
ここで「近傍」とは、蓄積データφDB(i)の中で要求点qとの距離dが小さいデータの集合のことである。近傍決定の最も単純な手法は、要求点qから最も近いk個のデータを選択する方法であり、k−NN(k Nearest Neighbors)法と呼ばれる。
【0078】
その場合、近傍の決定においては全てのiについて求めた距離d(uDB(i),q)の中から、距離dの小さいデータを抽出する必要がある。距離dの小さいデータを抽出する最も一般的な手法は、求めた距離dを小さい順にソートし、ソート後の結果について小さいほうからk個の蓄積データを選択することである。
【0079】
しかしながら、ソート処理にはバブルソートやクイックソートなど種々の手法があるとはいえ、いずれもデータを比較しながら並べ替えてデータの順序が揃うまでそれを繰り返す作業であるため、負荷の大きい処理である。
【0080】
ところで、近傍決定において実際に必要なのは、距離dの小さいデータから順にk個のデータを特定することであり、近傍以外のデータはソートされている必要はない。さらに、近傍に含まれるデータの単純平均により推定出力を求める場合は、近傍においてもソートされている必要はない。即ち、蓄積データの中で、順不同で距離dの小さいk個のデータを特定できれば十分である。
【0081】
そこで、この実施例においては、最初から全ての距離データに対してソートを行うのではなく、まず以下の手順に従って距離dの小さいk個のデータに
絞り込むようにした。即ち、求めた距離dの小さいk個のデータの集合をソートして近傍のデータとして決定する如く構成した。
【0082】
図4はそれを示すS18の近傍決定処理のサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【0083】
先ず、S100においてしきい値thdを適当に設定し、S102に進み、d(uDB(i),q)<thdを満足する距離dの個数pを求める。次いでS104に進んでkとpを比較する。
【0084】
S104においてk<pと判断されるときは未だしきい値thdが大きいので、S106に進んでthdを小さくし、S102に戻って再びpを求める。逆にS104においてk>pと判断されるとき、しきい値thdが小さすぎるので、S108に進み、thdを大きくしてS102に戻る。
【0085】
S104においてk=pと判断されるまで、これらの手順を繰り返す。k=pとなるthdが求まり、S104でk=pと判断されるとき、S110に進み、d(uDB(i),q)<thdを満たすuDB(i)を抽出することで近傍を得ることができる。
【0086】
図2、図3の説明に戻ると、次いで近傍に含まれる出力データから推定出力を算出する(推定出力算出部f,S20)。
【0087】
推定出力の最も単純な算出手法は、近傍に含まれる出力データの単純平均値を推定出力とすることである。
【0088】
【数5】

【0089】
ここで、yハット(t;q)は時刻tにおける要求点qに対する推定出力であり、l1〜lkは近傍のインデックスである。ハットは推定値を示す。このようにして、JITモデリングによりシステムの推定出力を得ることが可能である。
【0090】
次いで算出された推定出力yハット(t;q)に基づいて車両14の運転を制御する(車両運転制御ブロックg,S22)。
【0091】
即ち、シフトコントローラ74は算出された推定出力が1(スポーティ走行)であるか、0(燃費走行)であるか判定し、それに応じて油圧機構の電磁ソレノイド(図示せず)を励磁・非励磁してトルクコンバータ24とCVT26の動作を制御する。
【0092】
より具体的には、シフトコントローラ74は、運転者が加速性能を重視したスポーティ走行を志向していると推定されるとき、大きな駆動力を発生できるように変速比(レシオ)をロー側に制御する一方、燃費を重視した燃費走行を志向していると推定されるとき、エンジン10が燃費最適作動線付近で動作するように変速比やスロットル開度THを制御する。
【0093】
車両14を制御する場合のように、比較的速いシステムでダイナミクスが強く、また過渡状態における制御精度も重要となる場合には、ダイナミクスを考慮したモデリングを行う必要がある。
【0094】
JITモデリングにおいては、数2式において入力の次数nu≧1と設定することにより、ダイナミクスの考慮が可能である。なぜならば、nu≧1とした場合、現在の入力だけでなく過去の入力との距離dも考慮して類似度の算出が行われるからである。
【0095】
第1実施例に係る車両の制御装置は上記の如く、車両14の運転を示すパラメータ群を計測する計測手段(アクセル開度センサ54など、シフトコントローラ74,データ計測ブロックa,S10)と、前記計測されたパラメータ群を入力u(t)とし、前記入力u(t)に対応して設定された出力y(t)と共に入力データuDB(i)、出力データyDB(i)としてそれぞれ蓄積して蓄積データφDB(i)(=uDB(i),yDB(i))を得るデータ蓄積手段(蓄積データブロックb,S12)と、前記入力u(t)に対して時刻tのときのモデルを同定するための要求点qを設定する要求点設定手段(要求点設定ブロックc,S14)と、前記設定された要求点qと前記蓄積入力uDB(i)との距離dを全てのiについて求めることで類似度を算出する類似度算出手段(類似度算出ブロックd,S16)と、前記蓄積データφDB(i)から前記距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定する近傍決定手段(近傍決定ブロックe,S18)と、前記決定された近傍のデータに含まれる出力データyDB(i)から推定出力yハット(t;q)を算出する推定出力算出手段(推定出力算出ブロックf,S20)と、前記算出された推定出力yハット(t;q)に基づいて前記車両の運転を制御する車両運転制御手段(車両運転制御ブロックg,S22)とを備える如く構成したので、近傍決定手段の計算負荷を低減することができる。
【0096】
即ち、近傍決定(探索)は一般的にソートにより行われるが、ソート処理はデータを比較しながら並べ替え、データの順序が揃うまでそれを繰り返す作業であるため、計算負荷が大きく、検索速度低下の大きな原因の1つとなる。それに対し、本願においては、ソートに代え、蓄積データφDB(i)から距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定するように構成したので、計算負荷を低減させることができ、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両14にJITモデリングを適用することができる。
【0097】
また、計算負荷が低減することで、より短い周期でモデリングすることができると共に、蓄積データの量や種類を増加させてより多くのデータを網羅することができ、それによって制御精度を向上させることができる。
【0098】
また、前記近傍データ決定手段は、前記求めた距離dの小さいk個のデータの集合をソートして前記近傍のデータとして決定する如く構成したので、上記した効果に加え、計算負荷をほとんど生じることがない。例えば、距離dに応じた重み付け平均を算出する場合でも、ソートする必要があるのはk個のデータだけで、それ以外についてはソートする必要がないので、計算負荷をほとんど生じることがなく、実装できるコンピュータの計算能力やメモリ容量が限られる車両にJITモデリングを適用することができる。
【0099】
また、前記近傍決定手段は、しきい値thdの初期値を求めて前記距離dと比較し、距離d<thdを満足する距離dの個数pを求め、p=kとなるようにthdを増減して前記k個のデータの集合を探索するように構成したので、上記した効果に加え、構成が簡易となって計算負荷を一層低減することができる。
【0100】
また、運転者の運転志向を推定して車両14の運転を制御することで、運転者の意図に良く沿うことができる。
【実施例2】
【0101】
図5は、この発明の第2実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【0102】
第1実施例の図4に示す近傍決定処理ではしきい値thdの初期値を適宜決定したが、第2実施例においては二分探索法の考え方に基づいて設定するようにした。
【0103】
以下説明すると、先ず、S200において距離dの最小値dminと最大値dmaxをそれぞれ求め、thd=(dmin+dmax)/2とし、S202においてその値を初期値とする。
【0104】
次いで第1実施例と同様、S204を経てS206に進み、kとpを比較する。S206でk<pと判断される場合、S208においてdmax=thdとし、S202においてthd=(dmin+dmax)/2とする。他方、S206でk>pと判断される場合、S210においてdmin=dmaxとする。
【0105】
上記を繰り返すことで確実にk=pとなるthdを求めることができ、S212においてd(uDB(i),q)<thdを満たすuDB(i)を抽出して近傍を決定することができる。
【0106】
第2実施例に係る車両の制御装置においては上記の如く、前記近傍決定手段は、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxを求め、その平均値を前記しきい値thdの初期値とする(S200からS212)如く構成したので、k個のデータの集合を確実に探索することができる。尚、残余の構成および効果は第1実施例と同様である。
【実施例3】
【0107】
図6は、この発明の第3実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【0108】
第2実施例においてはしきい値thdの初期値をthd=(dmin+dmax)/2として与えた。しかしながら、蓄積データのデータ数Nとし、そのデータ数Nを近傍として選択するデータ数kと比べた場合、k<<Nであるのが一般的である。
【0109】
即ち、近傍は、距離データ全体の中で極めて最小値寄りのごく一部の領域である。従って、thd=(dmin+dmax)/2のようにデータ全体の中間的な値をしきい値の初期値として与えるのは、必ずしも効率的ではない。
【0110】
そこで、第3実施例にあっては距離dの値の分布は均等であると仮定し、S300においてしきい値の初期値をthd=(dmin+dmax)×k/Nとし、初期値を従前の実施例よりもより最小値寄りに設定するようにした。
【0111】
尚、S302以降の処理は第2実施例と同様である。このようにすることで、初期探索の時点で近傍にかなり近づくことができるので、探索数を低減することができる。
【0112】
この手法によるとき、距離データが均等に分布していない場合は探索数が増加するが、それでも中間的な値を初期値とする場合と比較すれば効率的である。尚、2回目の探索以降は、すでに述べた方法と同様に二分探索を繰り返せば良い。
【0113】
第3実施例に係る車両の制御装置においては上記の如く、前記近傍決定手段は、前記蓄積データφDB(i)の総数をNとするとき、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxの和にk/Nを乗じて得た積を前記しきい値thdの初期値とする(S300からS312)如く構成したので、初期探索のときから近傍にかなり接近することができ、計算負荷を一層低減することができる。尚、残余の構成および効果は第1実施例と同様である。
【実施例4】
【0114】
図7は、この発明の第4実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【0115】
第4実施例にあっても、距離dの値の分布は均等であると仮定し、S400においてしきい値の初期値をthd=(dmin+dmax)×k/Nとし、従前の実施例に比して初期値を、より最小値寄りに設定するようにした。S402からS412までの処理は、第3実施例のS302以降の処理と同様である。
【0116】
上記で、S406の比較結果においてk<pとなった場合、そのときのしきい値thdに対してd(uDB(i),q)<thdを満たすd(uDB(i),q)の集合に近傍は包含される。反対にd(uDB(i),q)>thdを満たすd(uDB(i),q)の集合の中には近傍は存在しないので、以後は探索する必要がない。
【0117】
従って、S406の比較結果でk<pとなったときは、S414において以後の探索対象をd(uDB(i),q)<thdを満たす集合のみとする。このようにして、探索範囲を縮小しながら探索を行うことにより、探索効率をさらに向上させることができる。即ち、一旦近傍ではないと判定された領域は二度と探索しないため、初期探索の時点で近傍にかなり近づくことができるので、探索数を低減することができる。
【0118】
第4実施例に係る車両の制御装置においては上記の如く、前記近傍決定手段は、k<pであるとき、d<thdを満たす集合のみを探索する(S400からS414)如く構成したので、探索効率を向上させることができ、計算負荷を一層低減することができる。
【0119】
尚、上記において車両の制御装置として運転者の運転志向を推定して車両の運転を制御する装置を例にとって説明したが、それは例示であり、車両の制御装置はどのような制御対象を制御するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明の第1実施例に係るこの発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置のシフトコントローラがJITモデリングによる出力推定を行うときの基本的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2の構成を動作的に示すフロー・チャートである。
【図4】図3フロー・チャートの近傍決定処理のサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図5】この発明の第2実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【図6】この発明の第3実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【図7】この発明の第4実施例に係る車両の制御装置の近傍決定処理、特にしきい値の初期値の決定を示す、図4と同様なフロー・チャートである。
【符号の説明】
【0121】
10 エンジン(内燃機関)、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 変速機(CVT)、30 前後進切換装置、30a フォワードクラッチ、48 クランク角センサ、50 絶対圧センサ、52 スロットル開度センサ、54 アクセル開度センサ、56 水温センサ、60 エンジンコントローラ、72 ブレーキ開度センサ、73 舵角センサ、74 シフトコントローラ、W 駆動輪(タイヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を示すパラメータ群を計測する計測手段と、前記計測されたパラメータ群を入力u(t)とし、前記入力u(t)に対応して設定された出力y(t)と共に入力データuDB(i)、出力データyDB(i)としてそれぞれ蓄積して蓄積データφDB(i)(=uDB(i),yDB(i))を得るデータ蓄積手段と、前記入力u(t)に対して時刻tのときのモデルを同定するための要求点qを設定する要求点設定手段と、前記設定された要求点qと前記蓄積入力uDB(i)との距離dを全てのiについて求めることで類似度を算出する類似度算出手段と、前記蓄積データφDB(i)から前記距離dが小さいk個のデータの集合を探索して近傍のデータとして決定する近傍データ決定手段と、前記決定された近傍のデータに含まれる出力データyDB(i)から推定出力yハット(t;q)を算出する推定出力算出手段と、前記算出された推定出力yハット(t;q)に基づいて前記車両の運転を制御する車両運転制御手段とを備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記近傍データ決定手段は、前記求めた距離dの小さいk個のデータの集合をソートして前記近傍のデータとして決定することを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記近傍データ決定手段は、しきい値thdの初期値を求めて前記距離dと比較し、距離d<thdを満足する距離dの個数pを求め、p=kとなるようにthdを増減して前記k個のデータの集合を探索することを特徴とする請求項1または2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記近傍データ決定手段は、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxを求め、その平均値を前記しきい値thdの初期値とすることを特徴とする請求項3記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記近傍データ決定手段は、前記蓄積データφDB(i)の総数をNとするとき、前記距離dの最小値dminと最大値dmaxの和にk/Nを乗じて得た積を前記しきい値thdの初期値とすることを特徴とする請求項4記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記近傍データ決定手段は、k<pであるとき、d<thdを満たす集合のみを探索することを特徴とする請求項5記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−116006(P2010−116006A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289816(P2008−289816)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】