説明

車両の制御装置

【課題】車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、エンジン停止から再始動までの時間を、より適切に設定することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の車室の窓の開閉状態を検出する窓開閉センサ51と、車室のドアの開閉状態を検出するドア開閉センサ50と、車室内の湿度を検出する湿度検出手段30と、窓開閉センサ51及びドア開閉センサ50により、車室の窓及びドアが全て閉状態であることが検出され、且つ、エンジン2が停止してているときに、湿度センサ30の検出湿度に基づいて、エンジン2の停止中における車両の車室内の湿度上昇率ΔHを算出する湿度上昇率算出手段46と、湿度上昇率算出手段46により算出された湿度上昇率ΔHに基づいて、エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの運転中に停止条件が成立したときにエンジンを停止し、エンジンの停止中に始動条件が成立したときにエンジンを始動する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の停止中にエンジンを一時的に停止することによって、停車中のアイドル運転により燃料が消費されることを抑制するようにした車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車両の制御装置においては、車速がゼロになって車両が停止し、且つクラッチスイッチがOFFとなったとき(停止条件が成立したとき)にエンジンを停止し、エンジン停止から所定時間(S2)が経過したとき(始動条件が成立したとき)に、エンジンを再始動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−358729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載され車両の制御装置においては、エンジンの始動条件である所定時間(エンジン停止から再始動までの経過時間)を、どのように設定するかについての記載はない。
【0006】
そして、この所定時間を一定とした場合には、走行により車室内の自然換気が行われていた車両が停止してエンジンを停止したときや、エンジンが停止するまでエンジンの駆動力によって除湿機が作動していて、エンジンの停止と共に除湿機の作動も停止したときに、外気や車室内の状況によっては、エンジンが始動するまでに車室内の湿度の上昇により窓ガラスが曇ってしまう場合がある。そして、このように窓ガラスが曇ってしまうと、次に車両を発進させる際に、運転者は窓ガラスの曇りを取り除かなければならないという不都合がある。
【0007】
また、その一方で、窓ガラスが曇らないようにエンジンの停止から始動までの時間を短く設定すると、車両の停止中にエンジンを停止して燃料消費を抑制するという効果が不十分になるという不都合がある。
【0008】
そこで、本発明は、車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、エンジン停止から再始動までの時間を、より適切に設定することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は目的を達成するためになされたものであり、エンジンと該エンジンの駆動力により作動して車室内を除湿する除湿機とを備えた車両に対して、所定のエンジン停止条件が成立したときに前記エンジンを停止し、その後、所定のエンジン停止時間が経過した時に、前記エンジンを始動すると共に前記除湿機を起動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置の改良に関する。
【0010】
そして、本発明の第1の態様は、前記車両の車室の窓の開閉状態を検出する窓開閉検出手段と、前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、前記窓開閉検出手段により、前記車両の車室の窓が全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジンが停止しているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出する湿度上昇率算出手段と、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、前記車両の車室のドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段と、前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、前記ドア開閉検出手段により、前記車両の車室のドアが全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジンが停止しているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出する湿度上昇率算出手段と、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
かかる本発明において、エンジンが停止しているときの車両の車室内の湿度の上昇率が高いほど、車室の窓ガラスが曇り易くなる。そこで、エンジンが停止しているときの車室内の湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定することにより、窓ガラスの曇り易さに応じたエンジン停止時間を決定することができる。
【0013】
しかし、車室のドアや窓が開いていた場合は、開いたドアや窓を介して車室内の空気が換気されるため、車室内の湿度の変化が不安定となる。そのため、この場合に、湿度上昇率に基づいてエンジン停止時間を決定すると、エンジン停止時間が不適切なものとなるおそれがある。
【0014】
そこで、前記湿度上昇率算出手段は、車室の窓が全て閉状態又は車室のドアが全て閉状態であって、車室内の湿度の上昇が安定しているときに、車室内の湿度上昇率を算出する。そして、これにより、前記湿度上昇率算出手段によって算出された車室内の湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間決定手段により算出されるエンジン停止時間が、不適切なものとなることを防止することができる。
【0015】
また、車室の窓の開閉状態を検出する窓開閉検出手段と、車室のドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段の双方を備え、前記湿度上昇率算出手段は、前記窓開閉検出手段及び前記ドア開閉手段により、前記車両の車室のドアと窓が全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジン制御手段により前記エンジンが停止されているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出することがより望ましい。
【0016】
また、上記第1の態様及び第2の態様において、前記エンジン停止時間決定手段は、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が高いほど、前記エンジン停止時間を短い時間に決定することを特徴とする。
【0017】
かかる本発明によれば、前記湿度上昇率が高いほど車室の窓ガラスが曇り易くなるため、前記エンジン停止時間決定手段により、車室内の状況に応じた適切なエンジン停止時間を決定することができる。
【0018】
また、上記第1の態様及び第2の態様において、前記エンジン停止時間決定時間は、前記エンジンが停止する際の前記湿度検出手段の検出湿度と、前記車両の車室の窓ガラスの曇りが生じる湿度を想定して設定された曇り判定湿度との湿度差を算出し、該湿度差が小さいほど前記エンジン停止時間を短い時間に設定することを特徴とする。
【0019】
かかる本発明によれば、前記湿度差が小さいほど車室の窓ガラスが曇り易くなるため、前記エンジン停止時間決定手段により、車室内の状況に応じた適切なエンジン停止時間を決定することができる。
【0020】
また、上記第1の態様及び第2の態様において、前記湿度上昇率算出手段は、前記車両の乗員により前記車両の起動操作がなされたことを検知した時に、前記湿度上昇率を算出することを特徴とする。
【0021】
かかる本発明によれば、前記車両の乗員が前記車両の起動操作をするのは、前記車両に全ての乗員が乗り込んで車両を発進させる状態となった時であると想定される。そこで、この時に前記湿度上昇率算出手段により、前記湿度上昇率を算出することによって、車両の乗員人数に応じた湿度上昇率を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図。
【図2】車室の窓とドアの開閉状態を判断して、車室内の湿度上昇率を算出する処理のフローチャート。
【図3】車室内の湿度上昇率から、乗員人数の検知とエンジンの停止の可否を判断するための条件の説明図。
【図4】窓ガラスの曇りを防止して、エンジンを一時的に停止する処理のフローチャート。
【図5】乗員人数と湿度差に応じて、エンジン停止時間を設定するマップの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図である。本実施形態の車両は、エンジン2及びモータ・ジェネレータGを駆動源とするハイブリッド車であり、排気ガスの排出量を低減すると共に燃料消費を抑制するために、車両が信号待ちで停止したときや渋滞中に停止したとき等に、停止条件の成立によりエンジン2を停止し、始動条件の成立によりエンジン2を再始動するエンジン停止・再始動機能(自動アイドルストップ機能)を備えている。
【0025】
また、本実施形態の車両は、車室内の暖房及び冷房を行う空調装置1を備えており、空調装置1は、冷凍サイクル装置A(本発明の除湿機の機能を含む)による冷房機能及び除湿機能と、エンジン2の冷却液の循環通路Bに設けたヒータコアHによる暖房機能とを有している。
【0026】
そして、マイクロコンピュータ等により構成される電子ユニットである制御装置4(本発明の車両の制御装置に相当する)により、エンジン2、モータ・ジェネレータG、空調装置1の作動が制御される。制御装置4は、所定のプログラムを実行することにより、車両状況検出手段41、曇り判定湿度推定手段42、エンジン停止時間決定手段43、エンジン制御手段44、空調制御手段45、湿度上昇率算出手段46、及び乗員人数検知手段47として機能する。
【0027】
制御装置4には、車室内の湿度を検出する湿度センサ30(本発明の湿度検出手段に相当する)、車室内の温度を検出する車室内センサ31、車外の気温を検出する外気温センサ32、日射量を検出する日射センサ33、車速を検出する車速センサ34、車室の各ドアの開閉状態を検出するドア開閉センサ50(本発明のドア開閉検出手段に相当する)、車室の各窓の開閉状態を検出する窓開閉センサ51(本発明の窓開閉検出手段に相当する)、及び、後述する蒸発器12の下流側の付近の温度を検出する蒸発器温度センサ122による検出信号が入力される。また、制御装置4には、車室内への空調方向を設定する風向スイッチ35と、空調条件(温度、風量等)を設定する空調スイッチ36の操作信号が入力される。
【0028】
また、制御装置4から出力される制御信号によって、エンジン2、モータ・ジェネレータG,空調装置1等の作動が制御される。
【0029】
空調装置1は、冷凍サイクル装置Aの構成として、エンジン2により駆動される圧縮機6、凝縮器9、受液器10、膨張弁11、及び蒸発器12を備えている。また、暖房用の構成として、エンジン2の冷却液循環路Bを構成する、ヒータコアH、エンジン2により駆動されるウォータポンプP、サーモスタットTh、及びラジエータRを備えている。
【0030】
エンジン2とモータ・ジェネレータGは回転軸21により直結され、この構成により、エンジン2とモータ・ジェネレータGによる駆動力の発生と、減速時におけるモータ・ジェネレータGによる回生電力の発生を可能としている。エンジン2及びモータ・ジェネレータGの回転は、変速機Trを介して車輪Wに伝達される。
【0031】
また、モータ・ジェネレータGは、エンジン2を始動させるためのスタータモータの機能を有し、さらに、モータ・ジェネレータGの回生電力により、蓄電装置17のバッテリ18が充電される。
【0032】
次に、冷凍サイクル装置Aは、圧縮機6と、凝縮器9と、受液器10と、膨張弁11と、蒸発器12を、圧縮機6を上流側とし、蒸発器12を下流側として、これらを順次冷媒循環路3に接続して構成されている。冷凍サイクルは、冷媒(フロンや二酸化炭素等からなる)を蒸発、圧縮、凝縮、膨張させるものである。
【0033】
制御装置4の空調制御手段45は、空調スイッチ36により設定された温度と、外気温度、湿度、日射量等に基いて目標蒸発器温度を算出し、該目標蒸発器温度と蒸発器温度センサ122の検出温度との差を減少させるように、圧縮機6を制御する。圧縮機6はエンジン2の駆動力により作動し、エンジン2の回転軸81の先端に設けられたプーリ82と、圧縮機6の駆動軸84に設けられたプーリ85と、プーリ82,85を連動させるベルト83とにより、エンジン2の駆動力が圧縮機6に伝達される。
【0034】
また、圧縮機6の駆動軸84に電磁クラッチ86が設けられ、空調制御手段45は、電磁クラッチ86により、エンジン2の駆動力の圧縮機6への伝達と遮断を切換える。
【0035】
凝縮器9は、圧縮機6により圧縮されて高温・高圧になった冷媒を熱交換により冷却し、液化する。受液器10は、凝縮器9により液化された冷媒を一時的に蓄えるボンベであり、図示しないドライヤを介して膨張弁11に接続されている。そして、このドライヤにより水分が除去された冷媒が膨張弁11に供給される。
【0036】
膨張弁11は、蒸発器12の入口側に取り付けられ、高温高圧の液化された冷媒が通過する際に、冷媒を液体から霧状の気体に変化させて噴射する。膨張弁11には絞り弁(図示しない)が内設され、空調制御手段45は、該絞り弁の開度を制御して蒸発器12に噴射する冷媒の流量(冷媒能力)を調節している。
【0037】
蒸発器12は、冷媒の気化により車室内の空気の熱を奪って冷却する熱交換器であり、空調ケース14に収容されている。蒸発器12の上流側にはブロワファン121が設けられ、ブロワファン121の回転数が空調制御手段45により制御される。ブロワファン121の回転により、蒸発器12で除湿・冷却された空気や、ヒータコアHで加熱された空気が車室内に吹出されると共に、車室内の空気又は外気が空調ケース14に吸入される。車室内への空気の送出は、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145を介して行なわれる。
【0038】
次に、暖房側の構成について説明する。エンジン2の冷却液は、エンジン2の駆動力で作動する機械式のウォーターポンプPにより、サーモスタットThからラジエータRに供給されると共に、エンジン2のウォータジャケット内を循環する。また、エンジン2の冷却液は、車室内を暖房するための熱源として利用されるために分流され、ウォータポンプPからヒータコアHを経てウォータポンプPに戻る循環通路Bを流通する。
【0039】
エンジン2の回転軸81に設けられたプーリ90と、ウォータポンプPの駆動軸94に設けられたプーリ92と、プーリ90,92を連動させるベルト91とにより、エンジンの駆動力がウォータポンプPに伝達される。
【0040】
ヒータコアHは、ラジエータRにおいてエンジン2により加温された冷却液の熱で、周囲の空気を加熱する熱交換を行なうものである。ヒータコアHの上流側には、蒸発器12を通過した空気をヒータコアH側に導いたり、迂回させたりするためのエアミックスドア142が設置されている。
【0041】
エアミックスドア142は、例えば、ヒータコアHの空気の入口を開閉する回動式の板ドアからなり、回転中心側に設置されたエアミックスサーボモータ(図示しない)によって開閉される。エアミックスドア142は、閉塞ポジションaにあるときに空調ケース14内の空気がヒータコアHに流れることを阻止し、中間ポジションbにあるときに空調ケース14内の空気の半分がヒータコアHに流れるようにし、解放ポジションcにあるときに空調ケース14内の空気が全部ヒータコアHに流れるようにする。空調制御手段45は、エアミックスサーボモータ(図示しない)を作動させて、エアミックスドア142の位置を変更することにより、車室内への空気の吹出し温度を制御する。
【0042】
空調ケース14は、上流側に内気導入口と外気導入口との切替えを行なうインテークドア141が設置され、下流側に蒸発器12により除湿・冷却された空気、又はヒータコアHにより加温された空気をデフロスタに吐出させるためのデフドア143、ベンチレータに吐出させるためのベントドア144、及び足元に吐出させるためのフロアドア145が、それぞれ設置されている。インテークドア141、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145は、サーボモータにより電動的に回動させてもよく、手動により回動させるようにしてもよい。
【0043】
次に、図2,図4に示したフローチャートに従って、制御装置4によるエンジン2の停止・再始動処理について説明する。
【0044】
図2のSTEP1〜STEP3は湿度上昇率算出手段46による処理である。湿度上昇率算出手段46は、STEP1で、車両の乗員によりイグニッションスイッチ(図示しない)のON操作がなされて車両が起動されたときにSTEP2に進み、ドア開閉センサ50の検出信号及び窓開閉センサ51の検出信号から、車両の車室の全てのドアと窓が閉状態であるか否かを判断する。
【0045】
そして、車室の全てのドアと窓が閉状態であるときはSTEP3に進み、湿度上昇率Rhを算出する。湿度上昇率Rhは、所定時間における湿度センサ30の検出湿度の上昇幅を、この所定時間で除して算出される。
【0046】
続くSTEP4〜STEP6及びSTEP10は、乗員人数検知手段47による処理である。乗員人数検知手段47は、図3に示した判定条件に湿度上昇率Rhを適用して、車両の乗員人数を検知する。図3は、縦軸を湿度(H)に設定し、横軸を時間(t)に設定して、乗員人数1人用の判定直線L1、乗員人数2人用の判定直線L2、乗員人数3人用の判定直線L3、乗員人数4人用の判定直線L4、乗員人数5人用の判定直線L5を示したものである。なお、各判定直線L1〜L5の傾きが湿度上昇率となる。
【0047】
図3による乗員人数の検知条件は以下の表1のようになり、乗員人数検知手段47は、この検知条件に従って、車両の乗員人数を検知する。
【0048】
【表1】

【0049】
続くSTEP5で、乗員人数検知手段47は、湿度上昇率Rhが判定閾値Rh_lmt(判定直線L5の傾き)よりも大きいか否かを判定する。そして、湿度上昇率Rhが判定閾値Rh_lmt以下であるときはSTEP6に進み、乗員人数検知手段47は、エンジン2の停止を許可してSTEP7に進む。一方、湿度上昇率Rhが判定閾値Rh_lmtよりも大きいときには、車室の窓ガラスが曇り易い状況となっている。そのため、場合はSTEP10に分岐し、乗員人数検知手段47はエンジン2の停止を禁止してSTEP7に進み、処理を終了する。
【0050】
また、STEP2で、車室のいずれかのドア又は窓が開状態となっていたときには、車室内の空気が開いているドア又は窓を介して換気され、車室内の湿度上昇率Rhを安定して算出することができない。そのため、この場合はSTEP10に分岐し、乗員人数検知手段47はエンジン2の停止を禁止してSTEP7に進み、処理を終了する。
【0051】
次に、図4に示したフローチャートに従って、エンジン制御手段44によるエンジン2の停止・再始動処理について説明する。
【0052】
エンジン制御手段44は、上述した図2のSTEP6で、エンジン2の停止が許可されたときに、図4に示したフローチャートを繰り返し実行して、エンジン2の停止・再始動処理を実行する。また、図2のSTEP10で、エンジン2の停止が禁止されたときには、エンジン制御手段44は、エンジン2の停止・再始動処理を実行しない。
【0053】
エンジン制御手段44は、STEP20で、エンジン停止条件が成立しているか否かを判断する。ここで、エンジン停止条件として、「湿度センサ30により検出された車室内の湿度Hsが、曇り判定湿度推定手段42により推定された曇り判定湿度Hdよりも低いこと」が設定されている。
【0054】
曇り判定湿度推定手段42は、車内温センサ31により検出した車室内の温度、外気温センサ32により検出した外気温、日射センサ33により検出した日射量、車速センサ34により検出した車両が停止する直前の車速、風向スイッチ35により設定されたブロワファン121による車室内への送風方向、空調スイッチ36により設定された空調条件等に基いて、車両が置かれた状況を検出する。
【0055】
なお、車両が置かれた状況の検出は、必ずしもこれら全ての要素に基いて行なう必要はなく、例えば外気温のみに基いて行なうようにしてもよい。また、車両の窓の開閉度合い等、さらに他の要素と組み合わせて、車両が置かれた状況を検出するようにしてもよい。
【0056】
そして、曇り判定湿度推定手段42は、車両が置かれた状況を、予め設定された車両が置かれた状況と曇り判定湿度Hdとの相関関係を示すマップに適用して、曇り判定湿度Hdを推定する。なお、このマップは実験やコンピュータシミュレーション等により決定され、このマップのデータは予めメモリ(図示しない)に記憶されている。また、マップではなく、車両が置かれた状況と曇り判定湿度Hdとの相関式により、曇り判定湿度Hdを推定するようにしてもよい。
【0057】
STEP20でエンジン停止条件が成立したとき(車室内の検出湿度Hs<曇り判定湿度Hdであるとき)はSTEP21に進む。STEP21はエンジン停止時間決定手段43による処理である。エンジン停止時間決定手段43は、続くSTEP22でエンジン2が停止される直前の湿度センサ30の検出湿度Hsと曇り判定湿度Hdとの湿度差ΔH(=検出湿度Hs−曇り判定湿度Hd)を算出する。
【0058】
なお、湿度差ΔHの算出に用いられる湿度Hsの検出タイミングを、エンジン2が停止される直前ではなく、エンジン2が停止する時、或いはエンジン2が停止された直後としてもよい。
【0059】
次のSTEP22で、エンジン制御手段44はエンジン2を停止する。続くSTEP23はエンジン停止時間決定手段43による処理であり、エンジン停止時間決定手段43は、上述した図2のSTEP4で乗員人数検知手段47により検知された車両の乗員人数と、STEP21で算出された湿度差ΔHとに基づいて、エンジン停止時間Tsを決定する。
【0060】
具体的には、エンジン停止時間決定手段43は、図5に示した、乗員人数及び湿度差ΔHとエンジン停止時間Tsとの対応マップを用いて、エンジン停止時間Tsを決定する。図3に示した対応マップは、縦軸をエンジン停止時間(Ts)、横軸を湿度差(ΔH)として、乗員人数1人用のN1、乗員人数2人用のN2、乗員人数3人用のN3、乗員人数4人用のN4、及び乗員人数5人用のN5という5種類の乗員人数に対して、湿度差ΔHとエンジン停止時間Tsとの対応関係を設定したものである。
【0061】
図5の対応マップにおいては、湿度差ΔHがΔH1未満であるときは、エンジン停止時間Tsが初期設定時間Ts0に設定されている。また、湿度差ΔHがΔH1以上になると、湿度差ΔHが大きくなるに従って、エンジン停止時間Tsがより長い時間に設定されている。
【0062】
そして、エンジン停止時間Tsは、同じ湿度差ΔHであるときには、乗員人数が多くなるに従って、より短い時間に設定されている。例えば、図示したように、湿度差ΔHがΔH2であるときに、乗員人数が1人(N1)であるときはエンジン停止時間TsがTs2に決定され、乗員人数が4人(N4)であるときにはエンジン停止時間TsがTs2よりも短いTs1に決定される。
【0063】
このように、車両の窓ガラスの曇り易さを決定する要素である乗員人数と湿度差ΔHに基づいてエンジン停止時間Tsを決定することにより、車両の窓ガラスの曇りが生じることを防止つつ、エンジン停止時間Tsを極力長い時間に設定して、燃料消費の抑制効果を高めることができる。
【0064】
なお、図5に示した対応マップは、実験やコンピュータシミュレーションの結果に基づいて作成され、対応マップのデータが予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、対応マップではなく、湿度差ΔH及び乗員人数と、エンジン停止時間Tsとの相関式を用いて、エンジン停止時間Tsを決定するようにしてもよい。
【0065】
このようにして、STEP23で、エンジン停止時間決定手段43によりエンジン停止時間Tsが決定されると、次のSTEP24で、エンジン制御手段44は、エンジン始動タイマのタイマ時間をエンジン停止時間Tsに設定する。
【0066】
そして、続くSTEP25で、エンジン制御手段44はエンジン始動タイマをスタートさせ、STEP26でエンジン始動タイマがタイムアップしたときに、STEP27に進んでエンジン2を始動する。また、次のSTEP28で空調制御手段45を介して冷凍サイクル装置Aを起動すると共に、ブロワファン121を起動して、STEP20に戻る。冷凍サイクル装置Aとブロワファン121の起動により、車室内の除湿が開始されるため、車両の窓ガラスが曇ることを防止することができる。
【0067】
なお、上記実施の形態では、エンジン停止時間決定時間43は、車両の乗員人数とエンジン2を停止する直前の湿度差ΔHとを用いて、エンジン停止時間Tsを決定したが、車両の乗員人数のみを用いて、乗員人数が多いほどエンジン停止時間Tsを短い時間に設定するようにしてもよい。この場合、乗員人数検知手段47は、上述したように湿度上昇率Rhに基づいて乗員人数を検知するため、エンジン停止時間Tsは湿度上昇率に基づいて決定されることになる。
【0068】
また、上記実施の形態においては、本発明をハイブリッド車に適用した例を示したが、自動的にエンジンを停止し、再始動する自動アイドルストップ機能を備えた車両であれば、エンジンのみを駆動源とする車両に対しても本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…空調装置、2…エンジン、4…制御装置(車両の制御装置)、6…圧縮機、9…凝縮器、12…蒸発器、30…湿度センサ、31…車内温センサ、32…外気温センサ、33…日射センサ、34…車速センサ、35…風向スイッチ、36…空調スイッチ、37a〜37d…シートベルト装着センサ、41…車両状況検出装置、42…曇り判定湿度推定手段、43…エンジン停止時間決定手段、44…エンジン制御手段、45…空調制御手段、46…湿度上昇率算出手段、47…乗員人数検知手段、50…ドア開閉センサ、51…窓開閉センサ、121…ブロワファン、A…冷凍サイクル装置、G…モータ・ジェネレータ、H…ヒータコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと該エンジンの駆動力により作動して車室内を除湿する除湿機とを備えた車両に対して、所定のエンジン停止条件が成立したときに前記エンジンを停止し、その後、所定のエンジン停止時間が経過した時に、前記エンジンを始動すると共に前記除湿機を起動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置であって、
前記車両の車室の窓の開閉状態を検出する窓開閉検出手段と、
前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記窓開閉検出手段により、前記車両の車室の窓が全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジンが停止しているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出する湿度上昇率算出手段と、
前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記車室のドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備え、
前記湿度上昇率算出手段は、前記窓開閉検出手段及び前記ドア開閉手段により、前記車両の車室のドアと窓が全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジンが停止しているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
エンジンと該エンジンの駆動力により作動して車室内を除湿する除湿機とを備えた車両に対して、所定のエンジン停止条件が成立したときに前記エンジンを停止し、その後、所定のエンジン停止時間が経過した時に、前記エンジンを始動すると共に前記除湿機を起動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置であって、
前記車両の車室のドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段と、
前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記ドア開閉検出手段により、前記車両の車室のドアが全て閉状態であることが検出され、且つ、前記エンジンが停止しているときに、前記湿度検出手段の検出湿度に基づいて、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を算出する湿度上昇率算出手段と、
前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の車両の制御装置において、
前記エンジン停止時間決定時間は、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が高いほど、前記エンジン停止時間を短い時間に決定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両の制御装置において、
前記エンジン停止時間決定時間は、前記エンジンが停止する際の前記湿度検出手段の検出湿度と、前記車両の車室の窓ガラスの曇りが生じる湿度を想定して設定された曇り判定湿度との湿度差を算出し、該湿度差が小さいほど前記エンジン停止時間を短い時間に設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載の車両の制御装置において、
前記湿度上昇率算出手段は、前記車両の乗員により前記車両の起動操作がなされたことを検知したときに、前記湿度上昇率を算出することを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−12637(P2011−12637A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159134(P2009−159134)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】