説明

車両の制御装置

【課題】車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることができる。
【解決手段】車両は、内燃機関2、内燃機関2の内部とヒータコア6とを通って冷却水が循環する冷却水回路、車室内の暖房のための温風を形成すべくヒータコア6に対して送風するブロワモータ18、バッテリからの給電により駆動される車両駆動用モータジェネレータ22を備える。電子制御装置20は、内燃機関2を停止状態とするとともにモータジェネレータ22を駆動することにより車両のEV走行を行う一方、冷却水温が所定温度以下となるとEV走行を終了して内燃機関2の再始動を行う。EV走行中におけるブロワモータ18の作動に際して、EV走行の継続時間がバッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水温が高いと推定される場合には低いと推定される場合に比べてブロワモータによる送風量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を停止状態とするとともに車両駆動用のモータを駆動することにより車両のEV走行を行う一方、冷却水の温度が所定温度以下となると当該EV走行を終了して内燃機関の再始動を行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷式の内燃機関では、内燃機関のシリンダヘッドやシリンダブロックに形成されたウォータジャケット内に冷却水を流通させることで内燃機関の冷却がなされる。また、水冷式の内燃機関を駆動源とする車両では、ウォータジャケットを通過する際に加熱された冷却水がヒータコアに送られるようになっている。また、ヒータコアに対してブロワモータにより送風がなされることにより、ヒータコアにて冷却水の熱により温風が形成されることで車室内の暖房が行われる。
【0003】
また、車両の駆動源として、水冷式の内燃機関と、バッテリからの給電により駆動されるモータとを備える車両、いわゆるハイブリッドカーが周知である(例えば特許文献1参照)。こうした車両の制御装置では、内燃機関の燃費の向上を図るべく、内燃機関を停止状態とするとともにモータを駆動することによる車両の走行、すなわち電気自動車走行(以下、EV(Electric Vehicle)走行)が行われる。
【0004】
ところで、EV走行中には、機関燃焼に伴う熱が新たに発生しないことから、ウォータジャケットを通過する冷却水は徐々に加熱されなくなり、冷却水の温度は次第に低下することとなる。そして、冷却水の温度が過度に低下すると、ヒータコアにて温風が好適に形成されず、要求される暖房性能を確保することができないといった問題が生じる。
【0005】
そこで、従来の車両の制御装置では、EV走行中に冷却水の温度を監視するとともに、冷却水の温度が所定温度以下となると、内燃機関の再始動を行うことで、冷却水を加熱するようにしている。これにより、要求される暖房性能を好適に確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11―245657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、こうした従来の車両の制御装置にあっては、例えばEV走行が開始されたときの冷却水の温度が上記所定温度よりは高いものの、冷却水の温度と同所定温度との差が小さい場合には、冷却水の温度が早期に上記所定温度以下となる。そのため、車両のEV走行の継続時間が短くなり、内燃機関の燃費を向上することができないといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、車両駆動用の内燃機関と、内燃機関の内部とヒータコアとを通って冷却水が循環する冷却水回路と、車室内の暖房のための温風を形成すべく前記ヒータコアに対して送風するブロワモータと、バッテリからの給電により駆動される車両駆動用のモータとを備える車両に適用され、内燃機関を停止状態とするとともに前記モータを駆動することにより車両のEV走行を行う一方、冷却水の温度が所定温度以下となると当該EV走行を終了して内燃機関の再始動を行う車両の制御装置において、EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記バッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が低いと推定される場合には高いと推定される場合に比べて前記ブロワモータによる送風量を低減する送風量低減制御を実行する送風量低減制御手段を備えることをその要旨としている。
【0010】
バッテリの充電がなされているほど、車両のEV走行の継続可能な時間は長くなる。ただし、EV走行中において冷却水の温度が所定温度以下となると、車室内の暖房のために冷却水を加熱すべく、当該EV走行が終了されて、内燃機関の再始動が行われる。上記構成によれば、EV走行の継続時間がバッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が低いと推定される場合には高いと推定される場合に比べて送風量低減制御を通じてブロワモータによる送風量が低減される。すなわち、ヒータコアを通じて冷却水から放出される熱量のうちブロワモータからの送風に起因する熱量が低減されるようになる。これにより、こうした送風量低減制御を行わない構成に比べて、冷却水の温度が所定温度以下となるまでの時間、すなわち内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることができる。従って、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることができるようになる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記送風量低減制御手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記バッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が、前記所定温度以下となると推定される場合にはそうでない場合に比べて前記ブロワモータによる送風量を低減する送風量低減制御を実行することをその要旨としている。
【0012】
EV走行中におけるブロワモータの作動に際して、冷却水の温度が十分に高いときにまで送風量低減制御を実行することとすると、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を一層長くすることができるようにはなるものの、要求される暖房性能を確保することができないといった問題が生じるおそれがある。この点、上記構成によれば、冷却水の温度が上記所定温度以下となると推定されない場合には、上記送風量低減制御が行われないことから、冷却水の温度が十分に高いときにまでブロワモータによる送風量が低減されることはない。従って、ブロワモータによる送風量の低減によって、要求される暖房性能が確保されなくなることを抑制しつつ、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることができるようになる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両の制御装置において、EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定する温度推定手段を備え、前記送風量低減制御手段は、前記温度推定手段により推定される冷却水の温度が前記所定温度以下となると判断される場合には前記送風量低減制御を実行することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、EV走行中におけるブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続期間が所定時間となるときの冷却水の温度が温度推定手段を通じて推定される。そして、温度推定手段を通じて推定される冷却水の温度が所定温度以下となると判断される場合には、送風量低減制御手段を通じて送風量低減制御が実行される。
【0015】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の制御装置において、前記温度推定手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に先立ち、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定し、前記送風量低減制御手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に先立ち、前記送風量低減制御の実行の有無を設定することをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、温度推定手段による冷却水の温度の推定が、EV走行中におけるブロワモータの作動に先立ち行われる。そしてこの推定結果に基づいて、送風量低減制御手段による送風量低減制御の実行の有無が、EV走行中におけるブロワモータの作動に先立ち設定される。これにより、送風量低減制御が必要な場合にはこれを早期から実行することができ、冷却水の温度が所定温度以下となるまでの時間、すなわち内燃機関が停止状態に維持される時間を一層長くすることができる。特に上記構成において、冷却水の温度の推定及び送風量低減制御の実行の有無の設定を、EV走行中におけるブロワモータの作動に先立ち1度だけ実行するものとすれば、温度推定手段及び送風量低減制御手段の制御構成を簡易なものとすることができるようになる。
【0017】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の車両の制御装置において、前記温度推定手段は、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を当該EV走行中に所定期間毎に推定し、前記送風量低減制御手段は、前記温度推定手段により冷却水の温度が推定される毎に前記送風量低減制御の実行の有無を設定することをその要旨としている。
【0018】
EV走行中における冷却水の温度の変化態様は、EV走行中における外気温や車速といったブロワモータによる送風量以外の要因によっても異なるものとなる。この点、上記構成によれば、EV走行中に所定期間毎に冷却水の温度の推定が行われるとともに、その推定の都度、同推定結果に基づいて送風量低減制御の有無が設定される。このため、EV走行中においてブロワモータの作動を開始した後に初めて、冷却水の温度が所定温度以下となると推定された場合には、その時点から送風量低減制御を実行することができる。従って、ブロワモータによる送風量の低減によって、要求される暖房性能が確保されなくなることを的確に抑制しつつ、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができるようになる。
【0019】
(6)請求項3〜請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明によるように、前記温度推定手段は、そのときの冷却水の温度と前記ブロワモータによる送風量とに基づいて単位時間当たりの冷却水の放熱量を推定するとともに、当該放熱量に基づいて単位時間後の冷却水の温度を推定し、推定される冷却水の温度に基づいて当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定するといった態様をもって具体化することができる。
【0020】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、前記送風量低減制御を禁止する送風量低減制御禁止手段を備えることをその要旨としている。
【0021】
EV走行の継続時間がバッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が、当該EV走行を終了して内燃機関の再始動を行う所定温度以下となると推定される場合に送風量低減制御を実行することで、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を長くすることができるようにはなる。しかし、車室内の暖房要求が高いときにまで上記送風量低減制御を実行することとすると、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるおそれがある。この点、上記構成によれば、車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、送風量低減制御が禁止されることから、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるといった問題の発生を抑制することができる。
【0022】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記送風量低減制御手段は、当該EV走行中における車両の走行態様を推定するとともに、推定される車両の走行態様と前記バッテリの充電状態との双方に基づき前記所定時間を設定することをその要旨としている。
【0023】
EV走行中におけるバッテリの充電状態の推移は、例えばバッテリの放電態様や回生ブレーキ等によるバッテリの充電態様といった車両の走行態様によって異なるものとなる。そのため例えば、EV走行中におけるブロワモータの作動に先立ち、バッテリの充電状態のみに基づいて上記所定時間の設定を1度だけ行うものとすると、EV走行中における車両の走行態様によっては上記所定時間が的確に設定されず、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができないおそれがある。この点、上記構成によれば、EV走行中における車両の走行態様が推定されるとともに、その推定結果とバッテリの充電状態との双方に基づいて上記所定時間が設定される。このため、EV走行中におけるバッテリの充電状態の推移を精度良く把握することができ、上記所定時間を的確に設定することができるようになる。従って、車両走行中に内燃機関が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができないといった問題の発生を抑制することができる。
【0024】
(9)請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の発明は、請求項9に記載の発明によるように、前記送風量低減制御手段は、前記ブロワモータによる送風量を設定するマップとして、多量側の送風量となる第1のマップと、少量側の送風量となる第2のマップとを備え、EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度が前記所定温度よりも高くなると推定される場合には前記第1のマップを使用して前記送風量の設定を行い、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度が前記所定温度以下となると推定される場合には前記第2のマップを使用して前記送風量の設定を行うといった態様をもって具体化することができる。この場合、ブロワモータによる送風量を設定するに際して、第1のマップと第2のマップとを適宜選択して使用することにより、送風量低減制御を簡易且つ的確に実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両の制御装置の一実施形態について、冷却水回路を中心とした概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態に採用されるブロワモータ出力設定用のマップ選択処理のフローチャート。
【図3】同実施形態に採用される判定用冷却水温推定処理のフローチャート。
【図4】同実施形態に採用される目標吹出口温度とブロワモータ出力との関係を規定するマップ。
【図5】同実施形態の作用を説明するためのタイミングチャートであって、EV走行が開始されてからの経過時間と冷却水温との関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の車両の制御装置を具体化した一実施形態を、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
図1に、本実施形態の車両の制御装置について、冷却水回路を中心とした概略構成を示す。
【0027】
同図に示すように、車両の冷却水回路は、大きくは次の2つの回路を備えている。
第1の冷却水回路は、冷却水を循環させる電動ウォータポンプ4、車両駆動用の内燃機関2の内部に設けられるウォータジャケット、ラジエータ14、サーモスタット16を通り、再び電動ウォータポンプ4に戻る構成となっている。ラジエータ14は、外気との熱交換により冷却水を冷却する熱交換器である。サーモスタット16は、感温式の弁として構成されている。サーモスタット16は、その感温部周囲における冷却水の温度が低いときには閉弁することでラジエータ14を通じた冷却水の循環を禁止する。また、サーモスタット16は、その感温部周囲における冷却水の温度が高いときには開弁することでラジエータ14を通じた冷却水の循環を許容する。
【0028】
第2の冷却水回路は、電動ウォータポンプ4から、内燃機関2のウォータジャケット、ヒータコア6、排気熱回収器8、EGRクーラ10、及びサーモスタット16を通り、再び電動ウォータポンプ4に戻る構成となっている。ヒータコア6は、暖房時に冷却水の熱で車室内に送られる温風を形成する。排気熱回収器8は、冷却水と排気との熱交換を通じて排気の熱を回収する。EGRクーラ10は、内燃機関2の排気系から吸気系へと再循環される排気を冷却水との熱交換を通じて冷却する。第2の冷却水回路には、排気熱回収器8を迂回する迂回通路が設けられている。また、第2の冷却水回路には、内燃機関2のウォータジャケットから、スロットルボディ12を通り、EGRクーラ10とサーモスタット16との間に接続される接続通路が設けられている。
【0029】
車両に設けられる空調装置は、車室内の暖房のための温風を形成すべくヒータコア6に対して送風するブロワモータ18を備えている。
また、車両は、バッテリからの給電により駆動される車両駆動用のモータとしての機能と、発電機としての機能とを併せ有するモータジェネレータ22が設けられている。従って、車両は、内燃機関2とモータジェネレータ22とを備える車両、いわゆるハイブリッドカーとして構成されている。
【0030】
こうした内燃機関2の制御、空調装置の制御、及びモータジェネレータ22の制御といった車両の制御は、電子制御装置20により行われる。電子制御装置20は、中央演算装置(CPU)、読込専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力ポート(I/O)を備えている。ここでCPUは、車両の各種制御に係る各種演算処理を実施し、ROMは各種制御に使用するプログラムやデータを記憶する。また、RAMは、車両の各部に設けられた各種センサの検出結果やCPUの演算結果を一時記憶する。また、I/Oは、電子制御装置20と外部との信号の入出力を媒介する。
【0031】
こうした電子制御装置20には、車両の各部に設けられたセンサの検出情報やスイッチの作動情報等の情報が入力されている。例えば電子制御装置20には、室内温度Tr、冷却水の温度(冷却水温)THWが入力されている。更に、電子制御装置20には、吹出口から車室内に送られる温冷風の温度の目標値である目標吹出口温度(TAO)や空調装置の設定温度Tset等の情報が入力されるようにもなっている。尚、本実施形態では、冷却水温THWを検出するセンサをウォータジャケットとヒータコア6との間に設けているが、他に例えば、ウォータジャケットの内部や、ヒータコア6の内部、或いはヒータコア6と排気熱回収器8との間に設けるようにしてもよい。
【0032】
さて、本実施形態では、電子制御装置20は、内燃機関2の燃費の向上を図るべく、内燃機関2を停止状態とするとともにモータジェネレータ22を駆動することによる車両の走行、すなわち電気自動車走行(以下、EV(Electric Vehicle)走行)を行うことができるように構成されている。
【0033】
ところで、EV走行中には、内燃機関2の燃焼に伴う熱が新たに発生しないことから、ウォータジャケットを通過する冷却水は徐々に加熱されなくなり、冷却水の温度は次第に低下することとなる。そして、冷却水の温度が過度に低下すると、ヒータコア6にて温風が好適に形成されず、要求される暖房性能を確保することができないといった問題が生じる。
【0034】
そこで、EV走行中に冷却水温THWを監視するとともに、冷却水温THWが所定温度β以下となると、内燃機関2の再始動を行うことで、冷却水を加熱するようにしている。これにより、要求される暖房性能を好適に確保するようにしている。
【0035】
しかし、例えばEV走行が開始されたときの冷却水温THWが上記所定温度βよりは高いものの、冷却水温THWと所定温度βとの差が小さい場合には、冷却水温THWが早期に所定温度β以下となる。そのため、車両のEV走行の継続時間が短くなり、内燃機関2の燃費を向上することができないといった問題が生じる。
【0036】
そこで本実施形態では、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に際して、当該EV走行の継続時間tsumがバッテリの充電状態SOC(State of Charge)に基づき設定される所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが高いと推定される場合には低いと推定される場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減する送風量低減制御を実行するようにしている。ここで、バッテリの充電状態SOCは、バッテリに蓄電可能な最大電力値に対する現在の電力値の割合を示す指標である。また、バッテリの充電状態SOCが大きいときほど、EV走行を、より長い時間にわたって継続することができる。そのため、上記所定時間tstは、バッテリの充電状態SOCが大きいほど、大きな値として設定される。尚、バッテリの充電状態SOCと所定時間tstとの関係は、予め実験やシミュレーション等を通じて設定されている。
【0037】
ただし、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に際して、冷却水温THWが十分に高いときにまで送風量低減制御を実行することとすると、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を一層長くすることができるようにはなるものの、要求される暖房性能を確保することができないといった問題が生じるおそれがある。このため、本実施形態では、当該EV走行の継続時間tsumがバッテリの充電状態SOCに基づき設定される所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが、所定温度β以下となると推定される場合にはそうでない場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減するようにしている。より具体的には、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstを推定するとともに、推定される冷却水温THWstが所定温度β以下となると判断される場合には上記送風量低減制御を実行するようにしている。
【0038】
図2は、こうした本実施形態に採用されるブロワモータ出力設定用のマップ選択処理のフローチャートを示している。尚、本処理は、EV走行中に、電子制御装置20によって周期的に繰り返し実行される。
【0039】
同図に示すように、本処理が開始されると、電子制御装置20は、まず、ステップS1においてマップ選択完了フラグFが「OFF」であるか否かを判断する。EV走行が開始されたときには、マップ選択完了フラグFは「OFF」に設定されている。そのため、マップを選択するまでは、マップ選択完了フラグFが「OFF」であると判断して(ステップS:YES)、次に、ステップS2に進む。
【0040】
ステップS2では、空調装置のスイッチ(SW)がオンになっているか否かを判断する。すなわち、ブロワモータ18に対して作動指令が出力されているか否かを判断する。ここで、空調装置のスイッチがオフである場合(ステップS2:NO)には、ブロワモータ18を作動させる必要がなく、ブロワモータ出力設定用のマップを選択する必要がないとして、この一連の処理を一旦終了する。
【0041】
一方、空調装置のスイッチがオンである場合(S2:YES)には、次に、ステップS3に進み、空調装置の設定温度Tsetが判定温度α以下であるか否かを判断する。すなわち、車室内の暖房要求が高いか否かを判断する。その結果、設定温度Tsetが判定温度α以下である場合には(S3:YES)、車室内の暖房要求が高くはないとして、次に、ステップS4の判定用冷却水温推定処理に進む。尚、判定温度Tsetは実験等により予め設定されている。
【0042】
一方、設定温度Tsetが判定温度αよりも高い場合(S3:NO)には、次に、ステップS6に進む。ステップS6では、ブロワモータ出力Pを設定するためのマップとして、図4に実線にて示す第1のマップM1を選択し、次に、ステップS8に進む。ステップS8では、マップ選択完了フラグFを「ON」にして、この一連の処理を一旦終了する。図4は、目標吹出口温度TAOとブロワモータ出力Pとの関係を規定するマップである。ちなみに、第1のマップM1は、EV走行以外の車両の走行状態のときにおいても使用されるマップである。
【0043】
ここで、図3を参照して、判定用冷却水温推定処理について説明する。
図3は、こうした判定用冷却水温推定処理のフローチャートを示している。尚、本処理は、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS4の処理に進んだときに実行される。
【0044】
同図に示すように、本処理が開始されると、電子制御装置20は、まず、ステップS401において、そのときの室内温度Tr1、そのときのバッテリの充電状態SOC1、その時点の所定期間前から同時点までにおける平均車速Vave1、及びそのときの冷却水温THW1を読み込む。そして、次に、ステップS402に進み、EV走行中であるとの条件と空調装置のスイッチがオンであるとの条件との双方の条件が成立してからバッテリ要求により内燃機関2の再始動がなされるまでの時間である所定時間tstをバッテリの充電状態SOC1及び平均車速Vave1に基づき算出する。例えば、EV走行が開始される前から空調装置のスイッチがオンされている場合には、上記所定時間tstの始期はEV走行が開始された時点とされる。また、EV走行が開始された後に空調装置のスイッチがオンされる場合には、上記所定時間tstの始期は空調装置のスイッチがオンされる時点とされる。また、バッテリの充電がなされているほど所定時間tstは長く設定される。また、平均車速Vaveが小さいほど、その後のEV走行においても車速が小さくなり、バッテリの放電が緩やかなものとなる可能性が高いと推定される。そのため、平均車速Vaveが小さいほど所定時間tstは長く設定される。
【0045】
こうして所定時間tstを設定すると、次に、ステップS403に進み、設定温度Tset及び室内温度Tr1に基づき周知の態様により目標吹出口温度TAO1を設定する。具体的には、設定温度Tsetが高いほど目標吹出口温度TAO1は高く設定される。また、室内温度Tr1が低いほど目標吹出口温度TAO1は高く設定される。尚、室内温度Tr1及び設定温度Tsetに加えて、外気温や日射量に基づいて目標吹出口温度TAO1を設定するようにすることもできる。
【0046】
こうして目標吹出口温度TAO1を設定すると、次に、ステップS404に進み、図4に実線にて示す第1マップを使用して設定されるブロワモータ出力P1と冷却水温THW1とに基づき、ブロワモータ18による送風により単位時間dtに冷却水から放出される熱量(放熱量)Qh1を算出する。そして、次に、ステップS405に進み、その時点から単位時間dtが経過した後の冷却水温THW2を、ステップS404にて算出した放熱量Qh1と冷却水の全質量(冷却水質量)Mとに基づいて算出する。具体的には、放熱量Qh1を冷却水質量Mにて除することにより単位時間dtにおける冷却水温THWの低下量ΔTHWを算出し、冷却水温THW1から同低下量ΔTHWを減じることにより、単位時間dtが経過した後の冷却水温THW2を算出する。
【0047】
こうして冷却水温THW2を算出すると、次に、ステップS406に進み、室内温度Tr1と放熱量Qh1とに基づいて、その時点から単位時間dtが経過した後の室内温度Tr2を算出する。そして、次に、ステップS407に進み、室内温度Tr2及び設定温度Tsetに基づきステップS403と同様にして、その時点から単位時間dtが経過した後の目標吹出口温度TAO2を設定する。
【0048】
こうして目標吹出口温度TAO2を設定すると、次に、ステップS408に進み、判定用冷却水温推定処理が開始されてからの経過時間tsumを更新する。ここでは、それまでの経過時間tsumに対して単位時間dtを加えることにより同経過時間tsumを更新する。尚、最初にステップS408に進む際には、右辺の経過時間tsumには初期値として「0」が設定されている。
【0049】
こうして、判定用冷却水温推定処理が開始されてからの経過時間tsumを更新すると、次に、ステップS409に進み、経過時間tsumが所定時間tst以上であるか否かを判断する。ここで、経過時間tsumが所定時間tst未満である場合(ステップS409:NO)には、次に、ステップS410に進む。ステップS410では、冷却水温THW2、室内温度Tr2、及び目標吹出口温度TAO2をそれぞれ、冷却水温THW1、室内温度Tr2、及び目標吹出口温度TAO1に置き換える。そして、次に、上述したステップS404〜S409の処理を繰り返す。そして、経過時間tsumが所定時間tst以上となると(ステップS409:YES)、次に、ステップS411に進み、最新の冷却水温THW2を判定用冷却水温THWstとして設定して、この一連の処理を終了する。
【0050】
ステップS4の判定用冷却水温推定処理を通じて判定用冷却水温THWstを設定すると、次に、先の図2に示すように、ステップS5に進む。ステップS5では、判定用冷却水温THWstが所定温度βよりも高いか否かを判断する。ここで、所定温度βは、実験等を通じて予め設定された温度である。この結果、判定用冷却水温THWstが所定温度βよりも高い場合(ステップS5:YES)には、次に、ステップS6に進み、ブロワモータ出力を設定するためのマップとして、図4に実線にて示す第1のマップM1を選択する。
【0051】
一方、判定用冷却水温THWstが所定温度β以下である場合(ステップS5:NO)には、次に、ステップS7に進み、ブロワモータ出力を設定するためのマップとして、図4に破線にて示す第2のマップM2を選択する。
【0052】
ここで図4に示すように、第2のマップM2は、第1のマップM1に比べて同一の目標吹出口温度TAOに対応するブロワモータ出力Pが小さく設定されている。すなわち、同一の目標吹出口温度TAOにおいて、第2のマップM2が選択された場合には第1のマップM1が選択された場合に比べて、ブロワモータ出力Pが小さくされることで、ブロワモータ18による送風量が低減される。
【0053】
こうして、ステップS6或いはステップS7においてブロワモータ出力Pを設定するためのマップを選択すると、次に、ステップS8に進む。ステップS8では、マップ選択完了フラグFを「ON」にして、この一連の処理を一旦終了する。
【0054】
次に、図5を参照して、本実施形態の車両の制御装置の作用の一例について説明する。
図5は、EV走行が開始されてからの経過時間tsumと冷却水温THWとの関係を示すタイミングチャートである。
【0055】
同図に実線にて示すように、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度βよりも高くなることで、第1のマップM1を選択してブロワモータ出力Pが設定されると、経過時間tsumが所定時間tstとなるまでは、冷却水温THWは所定温度βよりも高い状態を維持して低下する。
【0056】
一方、同図に一点鎖線にて示すように、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度β以下となるときに、従来の車両の制御装置によるように、第1のマップM1が選択されると、経過時間tsumが所定時間tstとなるよりも前の時点t1に、冷却水温THWは所定温度βを下回ることとなる。従って、車両のEV走行の継続時間が短くなり、内燃機関2の燃費を向上することができない。
【0057】
これに対して、本実施形態の車両の制御装置では、同図に一点鎖線にて示すように、EV走行継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度β以下となることで、第2のマップM2が選択される。そのため、第1のマップM1が選択される構成に比べて、ヒータコア6を通じて冷却水から放出される熱量のうちブロワモータ18からの送風に起因する熱量が低減されるようになる。これにより、冷却水温THWが所定温度β以下となるまでの時間t2、すなわち内燃機関2が停止状態に維持される時間t2が長くなる(t2>t1)。
【0058】
尚、以上説明した本実施形態において、電子制御装置20が、本発明に係る送風量低減制御手段、温度推定手段、及び送風量低減制御禁止手段に相当する。また、モータジェネレータ22が、本発明に係るモータに相当する。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る車両の制御装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)車両は、車両駆動用の内燃機関2と、内燃機関2の内部とヒータコア6とを通って冷却水が循環する冷却水回路と、車室内の暖房のための温風を形成すべくヒータコア6に対して送風するブロワモータ18と、バッテリからの給電により駆動される車両駆動用のモータジェネレータ22とを備える。また、電子制御装置20は、内燃機関2を停止状態とするとともにモータジェネレータ22を駆動することにより車両のEV走行を行う一方、冷却水温THWが所定温度β以下となると当該EV走行を終了して内燃機関2の再始動を行うようにしている。そして、電子制御装置20は、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に際して、当該EV走行の継続時間tsumがバッテリの充電状態SOCに基づき設定される所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが高いと推定される場合には低いと推定される場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減する送風量低減制御を実行するようにしている。こうした送風量低減制御が実行されると、ヒータコア6を通じて冷却水から放出される熱量のうちブロワモータ18からの送風に起因する熱量が低減されるようになる。これにより、こうした送風量低減制御を行わない構成に比べて、冷却水温THWが所定温度β以下となるまでの時間、すなわち内燃機関2が停止状態に維持される時間を長くすることができる。従って、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を長くすることができるようになる。
【0060】
(2)電子制御装置20は、送風量低減制御において、当該EV走行の継続時間tsumがバッテリの充電状態SOCに基づき設定される所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが、所定温度β以下となると推定される場合にはそうでない場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減するようにしている。具体的には、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstを推定するとともに、推定される冷却水温THWstが所定温度β以下となると判断される場合には送風量低減制御を実行するようにしている。これにより、冷却水温THWが上記所定温度β以下となると推定されない場合には、上記送風量低減制御が行われないことから、冷却水温THWが十分に高いときにまでブロワモータ18による送風量が低減されることはない。従って、ブロワモータ18による送風量の低減によって、要求される暖房性能が確保されなくなることを抑制しつつ、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を長くすることができるようになる。
【0061】
(3)電子制御装置20は、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstを推定するとともに、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち、送風量低減制御の実行の有無を設定するようにしている。具体的には、冷却水温THWstの推定及び送風量低減制御の実行の有無の設定を、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち1度だけ実行するようにしている。これにより、送風量低減制御が必要な場合にはこれを早期から実行することができ、冷却水温THWが所定温度β以下となるまでの時間、すなわち内燃機関2が停止状態に維持される時間を一層長くすることができる。また、冷却水温THWの推定及び送風量低減制御の実行の有無の設定を、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち1度だけ実行すればよいことから、これらのための制御構成を簡易なものとすることができるようになる。
【0062】
(4)EV走行の継続時間tsumがバッテリの充電状態SOCに基づき設定される所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが、当該EV走行を終了して内燃機関2の再始動を行う所定温度β以下となると推定される場合に送風量低減制御を実行することで、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を長くすることができるようにはなる。しかし、車室内の暖房要求が高いときにまで上記送風量低減制御を実行することとすると、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるおそれがある。この点、上記実施形態によれば、電子制御装置20は、車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、送風量低減制御を禁止するようにしている。具体的には、空調装置の設定温度Tsetが判定温度αよりも高い場合には、車室内の暖房要求が高いとして、送風量低減制御を禁止するようにしている。これにより、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるといった問題の発生を抑制することができる。
【0063】
(5)EV走行中におけるバッテリの充電状態SOCの推移は、例えばバッテリの放電態様や回生ブレーキ等によるバッテリの充電態様といった車両の走行態様によって異なるものとなる。そのため例えば、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち、バッテリの充電状態SOC1のみに基づいて上記所定時間tstの設定を1度だけ行うものとすると、EV走行中における車両の走行態様によっては上記所定時間tstが的確に設定されず、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができないおそれがある。この点、上記実施形態によれば、電子制御装置20は、EV走行中における車両の走行態様を推定するとともに、推定される車両の走行態様とバッテリの充電状態SOCとの双方に基づき所定時間tstを設定するようにしている。具体的には、バッテリの充電状態SOC1及び平均車速Vave1の双方に基づいて所定時間tstを設定するようにしている。このため、EV走行中におけるバッテリの充電状態SOCの推移を精度良く把握することができ、上記所定時間tstを的確に設定することができるようになる。従って、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができるようになる。
【0064】
(6)電子制御装置20は、ブロワモータ18による送風量を設定するマップとして、多量側の送風量となる第1のマップと、少量側の送風量となる第2のマップとを備え、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に際して、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度βよりも高くなると推定される場合には第1のマップを使用して送風量の設定を行い、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度β以下となると推定される場合には第2のマップを使用して送風量の設定を行うようにしている。このように、ブロワモータ18による送風量を設定するに際して、第1のマップと第2のマップとを適宜選択して使用することにより、送風量低減制御を簡易且つ的確に実現することができるようになる。
【0065】
尚、本発明に係る車両の制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・本発明に係る冷却水回路は上記実施形態にて例示したものに限られるものではなく、内燃機関2の内部とヒータコア6とを通って冷却水が循環するものであれば、その構成を任意に変更することができる。
【0066】
・上記実施形態では、本発明に係るモータをモータジェネレータ22として具体化しているが、これに代えて、発電機としての機能を有さないモータとすることもできる。
・上記実施形態では、車両の平均車速Vave1からEV走行における車両の走行態様を推定するようにしているが、他に例えば、ナビゲーションシステムを備える車両にあっては、ナビゲーションシステムによる位置情報に基づいて車両の走行態様を推定するようにすることもできる。
【0067】
・上記実施形態では、空調装置の設定温度Tsetが判定温度αよりも高い場合には、車室内の暖房要求が高いとして、送風量低減制御を禁止するようにしている。しかし、車室内の暖房要求が高いことを推定する態様はこれに限られるものではなく、他に例えば、室内温度Trが基準温度よりも低い場合に、車室内の暖房要求が高いと推定することもできる。また、設定温度Tsetと室内温度Trとの双方に基づいて車室内の暖房要求が高いことを推定するようにしてもよい。
【0068】
・上記実施形態によるように、車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、送風量低減制御を禁止することが、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるといった問題の発生を抑制する上では望ましい。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、車室内の暖房要求の高低に拘わらず、送風量低減制御を実行するようにすることもできる。この場合、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を常に長くすることができるようにはなる。またこの場合、車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、低いと推定される場合に比べて、送風量低減制御による送風量の低減度合を緩和するようにしてもよい。これにより、要求される暖房性能が十分に確保されなくなるといった問題の発生をある程度は抑制するができるようになる。
【0069】
・上記実施形態によるように、冷却水温THWstの推定及び送風量低減制御の実行の有無の設定を、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち1度だけ実行するようにすることが、これらのための制御構成を簡易なものとする上では望ましい。しかし、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、EV走行中における冷却水温THWの変化態様は、EV走行中における外気温や車速Vといったブロワモータ18による送風量以外の要因によっても異なるものとなる。そこで、冷却水温THWstをEV走行中に所定期間毎に推定し、冷却水温THWstが推定される毎に送風量低減制御の実行の有無を設定するようにすることもできる。これにより、EV走行中においてブロワモータ18の作動を開始した後に初めて、冷却水温THWが所定温度β以下となると推定された場合であっても、その時点から送風量低減制御を実行することができるようになる。従って、ブロワモータ18による送風量の低減によって、要求される暖房性能が確保されなくなることを的確に抑制しつつ、車両走行中に内燃機関2が停止状態に維持される時間を的確に長くすることができるようになる。
【0070】
・上記実施形態では、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstを推定するとともに、推定される冷却水温THWstが所定温度β以下となると判断される場合には送風量低減制御を実行するようにしている。しかし、本発明はこれに限られるものではない。他に例えば、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度βよりも高くなると判断される場合においても、その冷却水温THWstに応じて送風量低減制御による送風量の低減度合を可変設定するようにしてもよい。また、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが所定温度β以下となると判断される場合においても、その冷却水温THWstに応じて送風量低減制御による送風量の低減度合を可変設定するようにすることもできる。要するに、冷却水温THWstが高いと推定される場合には低いと推定される場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減するものであればよい。
【0071】
・上記実施形態では、EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstを推定するための演算を繰り返し行うようにしているが、本発明はこれに限られるものではない。他に例えば、EV走行中におけるブロワモータ18の作動に先立ち、そのときの冷却水温THW1、設定温度Tset、室内温度Tr1、外気温のみに基づいて、予め実験等を通じて得られたマップを参照することにより、当該EV走行の継続時間tsumが所定時間tstとなるときの冷却水温THWstが高いか否かを推定するようにするものであってもよい。そしてこの場合には、冷却水温THWstが高いと推定される場合には低いと推定される場合に比べてブロワモータ18による送風量を低減するようにすればよい。
【符号の説明】
【0072】
2…内燃機関、4…電動ウォータポンプ、6…ヒータコア、8…排気熱回収器、10…EGRクーラ、12…スロットルボディ、14…ラジエータ、16…サーモスタット、18…ブロワモータ、20…電子制御装置、22…モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用の内燃機関と、内燃機関の内部とヒータコアとを通って冷却水が循環する冷却水回路と、車室内の暖房のための温風を形成すべく前記ヒータコアに対して送風するブロワモータと、バッテリからの給電により駆動される車両駆動用のモータとを備える車両に適用され、内燃機関を停止状態とするとともに前記モータを駆動することにより車両のEV走行を行う一方、冷却水の温度が所定温度以下となると当該EV走行を終了して内燃機関の再始動を行う車両の制御装置において、
EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記バッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が低いと推定される場合には高いと推定される場合に比べて前記ブロワモータによる送風量を低減する送風量低減制御を実行する送風量低減制御手段を備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記送風量低減制御手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記バッテリの充電状態に基づき設定される所定時間となるときの冷却水の温度が、前記所定温度以下となると推定される場合にはそうでない場合に比べて前記ブロワモータによる送風量を低減する送風量低減制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定する温度推定手段を備え、
前記送風量低減制御手段は、前記温度推定手段により推定される冷却水の温度が前記所定温度以下となると判断される場合には前記送風量低減制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御装置において、
前記温度推定手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に先立ち、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定し、
前記送風量低減制御手段は、EV走行中における前記ブロワモータの作動に先立ち、前記送風量低減制御の実行の有無を設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両の制御装置において、
前記温度推定手段は、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を当該EV走行中に所定期間毎に推定し、
前記送風量低減制御手段は、前記温度推定手段により冷却水の温度が推定される毎に前記送風量低減制御の実行の有無を設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記温度推定手段は、そのときの冷却水の温度と前記ブロワモータによる送風量とに基づいて単位時間当たりの冷却水の放熱量を推定するとともに、当該放熱量に基づいて単位時間後の冷却水の温度を推定し、推定される冷却水の温度に基づいて当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度を推定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
車室内の暖房要求が高いと推定される場合には、前記送風量低減制御を禁止する送風量低減制御禁止手段を備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記送風量低減制御手段は、当該EV走行中における車両の走行態様を推定するとともに、推定される車両の走行態様とそのときの前記バッテリの充電状態との双方に基づき前記所定時間を設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記送風量低減制御手段は、前記ブロワモータによる送風量を設定するマップとして、多量側の送風量となる第1のマップと、少量側の送風量となる第2のマップとを備え、
EV走行中における前記ブロワモータの作動に際して、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度が前記所定温度よりも高くなると推定される場合には前記第1のマップを使用して前記送風量の設定を行い、当該EV走行の継続時間が前記所定時間となるときの冷却水の温度が前記所定温度以下となると推定される場合には前記第2のマップを使用して前記送風量の設定を行う
ことを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148439(P2011−148439A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12207(P2010−12207)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】