説明

車両の加速ペダル装置

【課題】運転者が安全で経済的な運転ができ、さらには、運転者に特定の信号を送ることができる機能をもたせた車両の加速ペダル装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両の加速ペダル装置は、ペダルが連結され、回動可能に設けられたペダルアームと、直線変位を発生させ、前記ペダルアームをリターン方向に加圧することができるように備えられた直線アクチュエータと、前記直線アクチュエータを制御するコントローラと、を含んで構成され、前記直線アクチュエータは、前記ペダルアームに向かって長さ方向に直線移動可能に備えられた動力伝達ロッドと、前記動力伝達ロッドに直線運動力を発生させるように備えられた電磁気力駆動装置と、前記動力伝達ロッドを特定位置に復帰させるように備えられたロッド復帰手段と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加速ペダル装置に関し、より詳しくは、運転者の加速ペダル操作に対して制限を加えるか、積極的に運転者に信号を送るなどの機能を共に遂行できるようにした車両の加速ペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の加速ペダルは、単に運転者の操作力を受け、車両に搭載されたエンジンのような動力発生装置の作動を制御するための信号を発生させる役割だけをする単純な機構的構成に過ぎなかった。
しかし、最近、車両に対する様々な要求と共に、運転者が経済的に車両を運行できる機能および運転者の安全運転を誘導する機能などの付随的な機能を加速ペダル装置にもたせる要求が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−508060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加速ペダルに積極的な機能を付加することにより、運転者が安全で経済的な運転ができるようにし、さらには、運転者に特定の信号を送ることができる機能をもたせた車両の加速ペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような目的を達成するための本発明に係る車両の加速ペダル装置は、ペダルが連結され、回動可能に設けられたペダルアームと、直線変位を発生させ、前記ペダルアームをリターン方向に加圧することができるように備えられた直線アクチュエータと、前記直線アクチュエータを制御するコントローラと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0006】
前記直線アクチュエータは、前記ペダルアームに向かって長さ方向に直線移動可能に備えられた動力伝達ロッドと、前記動力伝達ロッドに直線運動力を発生させるように備えられた電磁気力駆動装置と、前記動力伝達ロッドを特定位置に復帰させるように備えられたロッド復帰手段と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
前記動力伝達ロッドは前記ロッド復帰手段によって復帰した状態で前記ペダルアームから離隔するように設けられ、前記ペダルアームには前記動力伝達ロッドの先端が接触する部位に衝撃吸収部材が備えられ、前記動力伝達ロッドの先端は半球型で形成されることを特徴とする。
【0008】
前記ロッド復帰手段は、前記動力伝達ロッドの表面に備えられた傾斜面および前記傾斜面に連結された傾斜溝と、前記動力伝達ロッドの傾斜面および傾斜溝に接触して前記動力伝達ロッドの長さ方向に垂直に加圧されるロッドピンと、前記ロッドピンを前記動力伝達ロッドに弾性的に加圧するように備えられた弾性部材と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0009】
前記ロッドピンと弾性部材を内部に取り付け、前記ロッドピンをガイドするピンガイド部が形成されたピンハウジングをさらに備え、前記ピンハウジングには、前記動力伝達ロッドの外側を囲むように形成され、前記動力伝達ロッドの直線運動をガイドする役割を兼ねるロッドガイド部が一体に備えられることを特徴とする。
【0010】
前記ピンハウジングのピンガイド部は、前記ロッドピンと弾性部材の挿入のために、前記ピンガイド部の内部を開放した状態と囲む状態を切り替えることができるように形成されたピンカバーを備えることを特徴とする。
【0011】
前記電磁気力駆動装置は、前記動力伝達ロッドが前記ペダルアームに向かう方向にだけ直線移動力を発生させる単方向ソレノイド装置であることを特徴とする。
【0012】
前記電磁気力駆動装置は、前記動力伝達ロッドが前記ペダルアームに向かう方向およびその反対方向に各々直線移動力を発生させられるように形成された両方向ソレノイド装置であることを特徴とする。
【0013】
前記電磁気力駆動装置はリニアモータからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の加速ペダル装置を単に運転者の加速操作意志を動力発生装置に伝達するための機能にとどめず、加速ペダルに積極的な作用を加えることにより、運転者が安全で経済的な運転ができるようにし、さらには、運転者に特定の信号を送る機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両の加速ペダル装置の構成を示す図である。
【図2】図1の主要部品の分解斜視図である。
【図3】図2のロッド復帰手段を詳細に例示した図である。
【図4】本発明の作用を比較して説明した図である。
【図5】本発明で実現可能な作動例を各々説明したグラフである。
【図6】本発明で実現可能な作動例を各々説明したグラフである。
【図7】本発明で実現可能な作動例を各々説明したグラフである。
【図8】本発明で実現可能な作動例を各々説明したグラフである。
【図9】本発明で実現可能な作動例を各々説明したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図4に示す通り、本発明の実施形態は、ペダルが連結され、回動可能に設けられたペダルアーム1と、直線変位を発生させ、ペダルアーム1をリターン方向に加圧できるように備えられた直線アクチュエータ3と、直線アクチュエータ3を制御するコントローラ5とを含んで構成される。
コントローラ5が各種の状況に合わせて直線アクチュエータ3を作動させることにより、ペダルアーム1に作用力を付与している。
勿論、コントローラ5は、別に備えられた運転者による操作スイッチからの信号や、車両の作動状態を把握できる各種センサからの信号の伝達を受け、予め定められたロジックに応じて直線アクチュエータ3を制御するように構成される。
【0017】
ペダルアーム1は、ペダルを運転者が踏めば、ヒンジ軸7を中心に回動するようになっており、この方向を作動方向とする時、運転者がペダルを踏まなければ、リターンスプリング9によって元の位置に復帰する方向をリターン方向とすることにする。
直線アクチュエータ3は、ペダルアーム1に向かって長さ方向に直線移動可能に備えられた動力伝達ロッド11と、動力伝達ロッド11に直線運動力を発生させるように備えられた電磁気力駆動装置13と、動力伝達ロッド11を特定位置に復帰させるように備えられたロッド復帰手段15とを含んで構成される。
【0018】
電磁気力駆動装置13は、コイルによって発生する電磁気力を利用して動力伝達ロッド11の直線運動力を発生させられる装置であり、動力伝達ロッド11がペダルアーム1に向かう方向にだけ直線移動力を発生させる単方向ソレノイド装置と、ペダルアーム1に向かう方向およびその反対方向の直線移動力も発生させられる両方向ソレノイド装置またはリニアモータなどで構成される。
ここで、単方向ソレノイド装置は、構成も相対的に簡単であり、後述するロッド復帰手段15と連動して作動することにより、コントローラ5の制御ロジックも簡単に構成することができるという長所がある。
【0019】
動力伝達ロッド11はロッド復帰手段15によって復帰した状態でペダルアーム1から離隔するように設けられ、ペダルアーム1には動力伝達ロッド11の先端が接触する部位に衝撃吸収部材17が備えられ、動力伝達ロッド11の先端は半球型で形成される。
したがって、動力伝達ロッド11がペダルアーム1を加圧する方向に移動して、動力伝達ロッド11の先端部が衝撃吸収部材17と接触する時に発生する衝撃が衝撃吸収部材17によって吸収され、それと共に半球型の動力伝達ロッド11の先端はペダルアーム1がいずれの状態で回動している間にも一定の点接触状態を実現することができるため、一貫して安定してペダルアーム1に作用力を提供することができる。
【0020】
ロッド復帰手段15は、動力伝達ロッド11の表面に備えられた傾斜面19および傾斜面19に隣接する傾斜溝21と、動力伝達ロッド11の傾斜面19および傾斜溝21に接触して動力伝達ロッド11の円周方向に加圧するロッドピン23と、ロッドピン23を動力伝達ロッド11に加圧する弾性部材25とを含んで構成される。
ロッドピン23は弾性部材25による圧力により、動力伝達ロッド11の傾斜面19および傾斜溝21に加わる力の長さ方向分力だけ動力伝達ロッド11を定められた特定位置に移動させる。
【0021】
ここで、特定位置とは、ロッドピン23が傾斜溝21に挿入された状態、すなわち、図4の左側に示すような状態をいい、この場合、動力伝達ロッド11の先端はペダルアーム1から離隔された状態となる。
したがって、動力伝達ロッド11に電磁気力駆動装置13からの作用力がなければ、動力伝達ロッド11はロッドピン23が傾斜溝21に挿入される状態に自動的に移動する。
【0022】
前記のような動力伝達ロッド11の自動的な復帰機能がロッド復帰手段15によって実現されることにより、電磁気力駆動装置13の一例である単方向ソレノイド装置を使う場合にも、動力伝達ロッド11をペダルアーム1に押して単方向ソレノイド装置の電源を遮断すれば、動力伝達ロッド11は、ロッド復帰手段15により、ロッドピン23が傾斜溝21に挿入される状態に自動的に復帰する。
ここで、傾斜溝21は、図3に示すように傾斜面19に隣接され、傾斜面19より深く陥没した構造で形成されることにより、ロッドピン23が傾斜溝21に挿入された状態は、電磁気力駆動装置13が作動しない場合、外部の振動などから動力伝達ロッド11を一定の状態に維持する機能を有する。
【0023】
本実施形態においては、ロッドピン23をガイドするピンガイド部27がピンハウジング29に装着され、ロッドピン23と弾性部材25が内部に取り付けられる。ピンハウジング29は、動力伝達ロッド11の外側を囲むように形成され、動力伝達ロッド11の直線運動をガイドする役割をもつロッドガイド部31が一体に備えられる。
また、ピンハウジング29のピンガイド部27は、ロッドピン23と弾性部材25を挿入するために、取外した場合、内部が露出されるピンカバー33を備えた構造にしている。
【0024】
以下、上記のように構成された本発明の作用を説明する。
先ず、本発明の車両の加速ペダル装置が一般的な作動状態にある時は、電磁気力駆動装置13は駆動されない。
したがって、動力伝達ロッド11は傾斜溝21にロッドピン23が挿入された状態で一定に維持され、動力伝達ロッド11の先端はペダルアーム1と接触しない状態となる。
運転者がペダルを踏めば、ペダルアーム1の回動ストロークに対する踏力の変化は図5に示すように一般的な加速ペダル装置の特性を示す。
【0025】
図6は、踏力モードであり、この場合、電磁気力駆動装置13は動力伝達ロッド11をペダルアーム1側に押してペダルアーム1の踏力を増加させる作用をする。
すなわち、車両の燃費向上のためのECOモード走行が必要な場合、コントローラ5は、電磁気力駆動装置13を駆動してペダルアーム1の踏力を図6のように増加させ、運転者は相対的にペダルを少なめに踏むことで車両の燃費を向上させることができる。
【0026】
図7は、振動モードを説明したものであり、コントローラ5は、各種センサにより、前車との距離が一定レベル以上に近くなったり、車線から離脱することを発見したり、運転者が居眠り運転をしていたりということを検知した場合、電磁気力駆動装置13を駆動してペダルアーム1に振動を発生させ、これによって運転者が感知できるようにする。
電磁気力駆動装置13が単方向ソレノイド装置である場合には、コントローラ5は、単方向ソレノイド装置に電気を供給したり遮断したりすることを繰り返すことにより、電気が供給される時には単方向ソレノイド装置によって動力伝達ロッド11がペダルアーム1を加圧し、電気が遮断される場合にはロッド復帰手段15によって動力伝達ロッド11が後退することを繰り返す。
勿論、電磁気力駆動装置13が両方向ソレノイド装置である場合には、コントローラ5が交互に両側方向に両方向ソレノイド装置を駆動することにより、上記のようにペダルに振動を発生させることができる。
【0027】
図8は、移動制限モードを示すものである。このモードは主に車両の安全運行を図るために使われ、運転者が加速ペダルを過度に多く踏んで危険な状況を招くと判断されれば、コントローラ5が電磁気力駆動装置13を駆動し、動力伝達ロッド11がペダルアーム1の踏力を急激に増加させ、運転者がペダルをあるレベル以上に押すことができないようにして安全な車両の運行を図るようにしたものである。
【0028】
図9は、TICKモードであり、コントローラ5が運転者にある信号を提供する時に使われる。すなわち、手動変速機の変速時点が到来し、運転者に変速を誘導する信号を送ろうとする時や、車両の位置把握装置と連動して特定地域で車両速度の低減を知らせようとする場合などである。この場合、コントローラ5は、電磁気力駆動装置13を瞬間的に作動あるいは解除することにより、ペダルを踏んでいる運転者の足に定められた特別な信号を提供し、運転者がそれに応じた適切な行動を取るように誘導する場合に適用される。
【符号の説明】
【0029】
1 ・・・ペダルアーム
3 ・・・直線アクチュエータ
5 ・・・コントローラ
7 ・・・ヒンジ軸
9 ・・・リターンスプリング
11 ・・・動力伝達ロッド
13 ・・・電磁気力駆動装置
15 ・・・ロッド復帰手段
17 ・・・衝撃吸収部材
19 ・・・傾斜面
21 ・・・傾斜溝
23 ・・・ロッドピン
25 ・・・弾性部材
27 ・・・ピンガイド部
29 ・・・ピンハウジング
31 ・・・ロッドガイド部
33 ・・・ピンカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルが連結され、回動可能に設けられたペダルアームと、
直線変位を発生させ、前記ペダルアームをリターン方向に加圧することができるように備えられた直線アクチュエータと、
前記直線アクチュエータを制御するコントローラと、
を含んで構成されることを特徴とする車両の加速ペダル装置。
【請求項2】
前記直線アクチュエータは、
前記ペダルアームに向かって長さ方向に直線移動可能に備えられた動力伝達ロッドと、
前記動力伝達ロッドに直線運動力を発生させるように備えられた電磁気力駆動装置と、
前記動力伝達ロッドを特定位置に復帰させるように備えられたロッド復帰手段と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項3】
前記動力伝達ロッドは前記ロッド復帰手段によって復帰した状態で前記ペダルアームから離隔するように設けられ、
前記ペダルアームには前記動力伝達ロッドの先端が接触する部位に衝撃吸収部材が備えられ、
前記動力伝達ロッドの先端は半球型で形成されること
を特徴とする請求項2に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項4】
前記ロッド復帰手段は、
前記動力伝達ロッドの表面に備えられた傾斜面および前記傾斜面に連結された傾斜溝と、
前記動力伝達ロッドの傾斜面および傾斜溝に接触して前記動力伝達ロッドの円周方向に加圧されるロッドピンと、
前記ロッドピンを前記動力伝達ロッドに弾性的に加圧するように備えられた弾性部材と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項3に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項5】
前記ロッドピンと弾性部材を内部に取り付け、前記ロッドピンをガイドするピンガイド部が形成されたピンハウジングをさらに備え、
前記ピンハウジングには、前記動力伝達ロッドの外側を囲むように形成され、前記動力伝達ロッドの直線運動をガイドする役割を兼ねるロッドガイド部が一体に備えられることを特徴とする請求項4に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項6】
前記ピンハウジングのピンガイド部は、前記ロッドピンと弾性部材の挿入のために、前記ピンガイド部の内部を開放した状態と囲む状態を切り替えることができるように形成されたピンカバーを備えることを特徴とする請求項5に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項7】
前記電磁気力駆動装置は、前記動力伝達ロッドが前記ペダルアームに向かう方向にだけ直線移動力を発生させる単方向ソレノイド装置であることを特徴とする請求項5に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項8】
前記電磁気力駆動装置は、前記動力伝達ロッドが前記ペダルアームに向かう方向およびその反対方向に各々直線移動力を発生させられるように形成された両方向ソレノイド装置であることを特徴とする請求項5に記載の車両の加速ペダル装置。
【請求項9】
前記電磁気力駆動装置はリニアモータからなることを特徴とする請求項5に記載の車両の加速ペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−108866(P2012−108866A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94642(P2011−94642)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(509117241)株式会社東熙産業 (7)
【Fターム(参考)】