説明

車両の後部構造

【課題】車外の騒音が車体の後部に設けられたベンチレーション用の開口から車室内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止する。
【解決手段】車両の後方に設けられた荷室の側方部に沿って設置されたフェンダパネル13および荷室内側のトリム部材16に形成された第1,第2開口17,24により、ホイールアーチ沿いの空間部を経由してエアベンチレーションが行われるように構成され、フェンダパネル13よりも内側に位置するパネル部材等にエアの流通路となる開口部が形成されるとともに、上記パネル部材には、その外方側部において上記フェンダパネルとの間に設けられた空間部を上下に区画する第1仕切部材25が設けられ、かつ上記トリム部材16の背面側には第1仕切部材25と当接する第2仕切部材26が設けられ、該第1,第2仕切部材25,26により区画された下方の空間部28を介してエアベンチレーションが行われるように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方に設けられた荷室の側方部に沿って設置されたフェンダパネルおよび荷室内側のトリム部材を備えた車両の後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両後部の車幅方向両側に配置されるクォータアウタパネル部材と、クォータアウタパネル部材の車幅方向内側に配置されるクォータインナパネル部材と、クォータインナパネル部材よりも後方でクォータアウタパネル部材間に接合され、一方のパネル部材から他方のパネル部材まで連続するフロア面を形成するフロアパネル部材と、フロアパネル部材の後端に接合およびクォータアウタパネル部材の後端に接合されたリヤエンドパネル部材とを有し、クォータインナパネル部材の後端からリヤエンドパネル部材までの間に、クォータアウタパネル部材で区画した荷室部を形成してなる車体後部と、荷室部をなすクォータアウタパネル部材とフロアパネル部材との接合部に沿って配置され、前端部がクォータインナパネル部材に接合され、後端部がリヤエンド部材に接合され、中間部がフロアパネル部材およびクォータアウタパネル部材と3点打点溶接で接合されてなる接合プレート部材とを有した構造とすることにより、既にあるフロアパネル部材とクォータアウタパネル部材との接合構造を流用して、クォータインナパネル部材とリヤエンドパネル部間に接合プレートを設け、車体後部の剛性強度を高めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された車両の車体構造では、車両の軽量化を図るために、サイドドアパネルのうち車体後部を形成するクォータアウタパネル部の内面のうち、後輪アーチ部の付近から前方側だけに、クォータインナパネル部材を設けたセダンタイプの車両において、上記クォータアウタパネル部材とフロアパネル部材とに沿って該クォータアウタパネル部材およびフロアパネル部材とリヤエンド部材とを接合する上記接合プレート部材を設けため、簡単な構成で、荷室部のフロア高さの低下に伴う車体剛性の低下を効果的に抑制することが可能である。
【0005】
しかし、上記車体後部の荷室部を区画するクォータアウタパネル部材に設けられたベンチレーション用開口部から後部車体内に侵入した車外の騒音が、上記クォータアウタパネルとのその内方側に配設されたトリム部材との間においてホイールアーチ沿いに形成された大きな空間部に伝播され、該空間部から車室内に上記騒音が侵入し易いという問題がある。特に、上記後部荷室と車室内部とが完全に区画された状態にないハッチバックタイプの車両では、車外の騒音が車室内に進入するのを効果的に防止することができないため、上記トリム部材の裏面の広範囲に吸音材を設置する等の手段を講じる必要があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車外の騒音が車体の後部に設けられたベンチレーション用の開口から車室内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止できる車両の後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車両の後方に設けられた荷室の側方部に沿って設置されたフェンダパネルおよび荷室内側のトリム部材に形成された第1,第2開口により、ホイールアーチ沿いの空間部を経由してエアベンチレーションが行われるように構成された車両の後部構造であって、上記フェンダパネルよりも内側に位置するパネル部材、または該パネル部材と車体後壁部との間にエアの流通路となる開口部が形成されるとともに、上記パネル部材には、その外方側部において上記フェンダパネルとの間に設けられた空間部を上下に区画する第1仕切部材が設けられ、かつ上記トリム部材の背面側には第1仕切部材と当接する第2仕切部材が設けられ、該第1,第2仕切部材により区画された下方の空間部を介してエアベンチレーションが行われるように構成されたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部構造において、第1仕切部材が、上記パネル部材に設けられた保持部材と、該保持部材に取り付けられた熱発泡性樹脂材からなるシート部材とを有し、該シート部材が車体の塗装乾燥工程で加熱されて発泡することにより上記フェンダパネルおよびパネル部材に密着した状態となるよう構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部構造において、第2仕切部材が、上記トリム部材の裏面側に取り付けられるとともに、上記保持部材の内側面に密着する帯状弾性体を備えたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部構造において、帯状弾性体が、上記保持部材の内側面に密着する横長部分と、その一端側に連続して上記パネル部材に密着する縦長部分とを備えたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部構造において、車体の後部にバックドアが開閉可能に設置された後方開口部と、その周辺部に沿って設置された車体後壁部とを有するとともに、上記パネル部材としてのホイールハウスアウタパネルの後端部が上記車体後壁部の側辺部と所定距離を置いてその前方側に配設されることにより、上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間にエアの流通路となる開口部が形成され、かつ上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間に上記第1仕切部材が設置されたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記第1仕切部材および第2仕切部材を介して車体側壁部に形成された大容量の空間部を上下に区画してエアベンチレーションが行われるように構成したため、例えばサイドドアの閉止時に、上記トリム部材の第2開口から上記空間部内に流入した空気を上記エア流通用の開口部とフェンダパネルに形成された第1開口とを介して車外に排出させることができ、上記サイドドアの閉止時等に、車室内の圧力が上昇することに起因して乗員が不快感を受けることを効果的に防止できるという利点がある。そして、上記フェンダパネルの第1開口から車体側壁部に侵入した車外の騒音が、ホイールアーチ沿いにその上方の空間部に伝達されるのを上記第1仕切部材および第2仕切部材により効果的に防止することができるため、上記トリム部材の裏面の広範囲に吸音材を設置する等の手段を講じることなく、上記車外の騒音が車室内に進入するのを簡単な構成で効果的に防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ホイールハウスアウタパネル等からなるパネル部材に設けられた保持部材と、該保持部材に取り付けられた熱発泡性樹脂材からなるシート部材とにより上記第1仕切部材を構成し、上記シート部材を車体の塗装乾燥工程で加熱して発泡させることによりフェンダパネルおよび上記パネル部材に密着させるよう構成したため、該フェンダパネルおよびパネル部材が複雑な形状を有する場合においても、上記塗装乾燥工程の熱を利用して該パネル部材等に上記シート部材を確実に密着させることができ、上記シート部材を有する第1仕切部材を利用して車体側壁部に形成された大容量の空間部を適正に区画できるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明では、トリム部材の裏面側に取り付けられた帯状弾性体により上記第2仕切部材を構成したため、該帯状弾性体をトリム部材に取り付けた状態で、これらを一体的に車体へ組み付けることができる。また、上記トリム部材および第1,第2仕切部材の形状精度やその取付位置にバラツキがあっても、上記帯状弾性体と第1仕切部材を構成する上記保持部材とをピッタリと密着させた状態で設置することができるため、第1,第2仕切部材により上記空間部を効果的に区画できるという利点もある。
【0015】
請求項4に係る発明では、上記第2仕切部材の帯状弾性体を、保持部材の内側面に密着する横長部分と、その一端側に連続してホイールハウスアウタパネル等からなるパネル部材に密着する縦長部分とにより構成したため、該縦長部分により上記トリム部材とパネル部材との間を適正にシールして上記第1,第2仕切部材による仕切機能を充分に満足できるものとすることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、車体の後部にバックドアが開閉可能に設置された後方開口部と、その周辺部に沿って設置された車体後壁部とを有する車両の後部構造において、上記ホイールハウスアウタパネルの後端部を上記車体後壁部の側辺部と所定距離を置いてその前方側に配設することにより、上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間にエアの流通路となる開口部を形成し、かつ上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間に上記第1仕切部材を設置したため、車体重量を効果的に低減しつつ、上記開口部を介してエアベンチレーション機能を充分に確保することができ、かつ上記フェンダパネルに形成された第1開口から車体側壁部に侵入した車外の騒音がホイールアーチ沿いに上記空間部の上方に伝播するのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両の後部構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記車両の後部構造の具体的構成を示す平面断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】トリム部材を取り外した状態を示す図1相当図である。
【図6】第1仕切部材の具体的構成を示す斜視図である。
【図7】第2仕切部材をトリム部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図5は、本発明に係る車両の後部構造の実施形態を示している。該車両は、車体の底面部を構成するフロアパネル1と、車体の後部に設けられた荷室2と、その側方部に沿って設置された車体側壁部3と、車体の後端部に設けられた車体後壁部4とを有している。該車体後壁部4には、図略のバックドアが開閉可能に設置された後方開口部5の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラー6が設けられている。上記フロアパネル1は、乗員用シート(図示せず)が設置される車室内フロア部7と、その後方に設けられたリヤフロア部8とを具備し、該リヤフロア部8の上方に上記荷室2が形成されている。
【0019】
上記リヤフロア部8の左右両側辺部には、リヤサイドフレーム10が車両の前後方向に延びるように設置されている。図3に示すように、該リヤサイドフレーム10は、フロアパネル1の上方へ膨出した段部を形成する上側部材11と、フロアパネル1の下方に凹入した断面コ字状部を有する下側部材12とを有し、これらの上側部材11および下側部材12により車両の前後方向に延びる閉断面がそれぞれ形成されている。
【0020】
上記車体側壁部3は、図3および図4に示すように、車体の外側壁を構成するフェンダパネル13と、その車幅方向内方側に配設されたホイールハウスアウタパネル14およびホイールハウスインナパネル15とを有し、該ホイールハウスインナパネル15の荷室内側にはトリム部材16が所定距離を置いて配設されている。上記フェンダパネル13の後部下方には、エアベンチレーション用の第1開口17が、図示を省略したリヤバンパの側端部により覆われる位置に形成されている。
【0021】
上記ホイールハウスアウタパネル14には、リヤホイールの収容部となる第1膨出部18が車外側に向けて突設されている。そして、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部が、上記車体後壁部4のリヤピラー6と所定距離を置いてその前方側に配設されることにより、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部と車体後壁部4のリヤピラー6との間に、エアの流通路となる開口部19が形成されている(図5参照)。
【0022】
上記ホイールハウスインナパネル15には、リヤホイールの収容部となる第2膨出部20が車内側に向けて突設されている。また、上記ホイールハウスインナパネル15の後端部は、上記ホイールハウスアウタパネル14と同様に、車体後壁部4のリヤピラー6と所定距離を置いてその前方側に配設されている。
【0023】
上記トリム部材16には、ホイールハウスインナパネル15の第2膨出部20と所定距離を置いてその車内側面部を覆うように車内側に突出した膨出部21が形成されている。また、上記トリム部材16の後部には、図1〜図3に示すように、ホイールハウスアウタパネル14の後端部と車体後壁部4との間に形成されたエア流通用の開口部19に沿って車外側に凹入した凹入部22が設けられている。
【0024】
上記凹入部22には、ホイールハウスアウタパネル14と車体後壁部4との間に形成された上記開口部19を介して上記フェンダパネル13の第1開口17に対向する位置に吸音材23が設けられるとともに、その上方にエアベンチレーション用の第2開口24が形成されている(図3参照)。これにより、上記ホイールハウスアウタパネル14の第1膨出部18と、ホイールハウスインナパネル15の第2膨出部20とからなるホイールアーチ沿いの空間部を介してエアベンチレーションが行われるようになっている。
【0025】
上記ホイールハウスアウタパネル14には、その外方側部において上記フェンダパネル13との間に設けられた空間部を上下に区画する第1仕切部材25が設けられている。また、上記トリム部材16の背面側には、第1仕切部材25と当接する第2仕切部材26が設けられている。そして、上記第1,第2仕切部材25,26によりフェンダパネル13とトリム部材16との間が上下の空間部27,28に区画され、該下方の空間部28を経由してエアベンチレーションが行われるように構成されている。
【0026】
上記第1仕切部材25は、ホイールハウスアウタパネル14に取り付けられる合成樹脂製のブラケットからなる保持部材29と、該保持部材29に取り付けられた熱発泡性樹脂材からなるシート部材30とを有している。上記第1仕切部材25の保持部材29は、図6および図7に示すように、前端部に設けられた固定部31と、該固定部31から車体の後方側に延びる所定幅の縦壁部32と、該縦壁部32の後端に設けられた断面コ字状部の係止部33とを有している。
【0027】
また、上記保持部材29の縦壁部32には、補強用リブ34と、上記シート部材30の取付板35とが車外側に向けて突設され、該取付板35の上面にシート部材30が接着される等により固定されている。そして、上記保持部材29の固定部31がホイールハウスアウタパネル14の後辺部にボルト止めされるとともに、車体後壁部4のリヤピラー6に設けられたフランジ部に上記係止部33が外嵌されて係止されることにより、上記保持部材29が車体側壁部3に取り付けられるように構成されている(図3および図5参照)。
【0028】
上記保持部材29が車体側壁部3に取り付けられた状態で車体の塗装乾燥部に搬入され、上記取付板35に固定されたシート部材30が所定温度に加熱されて発泡することにより、図3に破線で示す状態から実線で示すように、上記シート部材30が膨張するように構成されている。これにより該シート部材30がフェンダパネル13の車内側面に密着した状態となるとともに、上記ホイールハウスアウタパネル14からなるパネル部材、具体的には上記リヤホイールの収容部となる第1膨出部18および上記リヤピラー6の外側面に密着した状態となる。
【0029】
上記第2仕切部材26は、トリム部材16の裏面から車外側に向けて突設された取付板40と、その先端面に取り付けられた合成ゴム製の帯状弾性体36とからなっている。該帯状弾性体36は、その先端部が上記保持部材29の内側面に圧接されて密着した状態となる横長部分37と、その後端側に連続して下方側に延びるとともに、その先端部が上記ホイールハウスアウタパネル14からなるパネル部材、具体的には上記リヤホイールの収容部となる第2膨出部20に圧接されて密着した状態となる縦長部分38とにより構成されている。なお、上記トリム部材16の後部に設けられた凹入部22の上面には、図7に示すように、リヤコンビランプ(図示せず)のメンテナンスを行うための開口部39が形成され、該開口部39には図外のカバー部材が着脱可能に係止されるようなっている。
【0030】
上記のように車両の後方に設けられた荷室2の側方部に沿って設置されたフェンダパネル13および荷室内側のトリム部材16に形成された第1,第2開口17,24により、ホイールアーチ沿いの空間部を経由してエアベンチレーションが行われるように構成された車両の後部構造であって、上記フェンダパネル13よりも内側に位置するホイールハウスアウタパネル14等からなるパネル部材、または該パネル部材と車体後壁部4との間にエアの流通路となる開口部19が形成されるとともに、上記パネル部材には、その外方側部において上記フェンダパネル13との間に設けられた空間部を上下に区画する第1仕切部材25が設けられ、かつ上記トリム部材16の背面側には第1仕切部材25と当接する第2仕切部材26が設けられ、該第1,第2仕切部材25,26により区画された下方の空間部28を介してエアベンチレーションが行われるように構成したため、車外の騒音が車体の後部に設けられたベンチレーション用の開口から車室内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。
【0031】
すなわち、上記実施形態では、車体の後部にバックドアが開閉可能に設置された後方開口部5と、その周辺部に沿って設置された車体側壁部3を構成するリヤピラー6とが設けられたいわゆるハッチバックタイプの車両において、ホイールハウスアウタパネル14の後端部を上記車体後壁部4の側辺部、つまり上記リヤピラー6の前方側に配設して、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部とリヤピラー6との間にエアの流通路となる開口部19を形成し、上記第1仕切部材25の前端部をホイールハウスアウタパネル14の後端部に支持させるとともに、上記第1仕切部材25の後端部をリヤピラー6の前面に支持させることにより、該第1仕切部材25と上記トリム部材16の背面側に設けられた第2仕切部材26とを介して、上記車体側壁部3に形成された大容量の空間部を上下に区画し(図2参照)、下方の空間部28を介してエアベンチレーションが行われるように構成したため、例えばサイドドアの閉止時に、上記トリム部材16に形成された第2開口24から該空間部28内に流入した空気を、上記エア流通用の開口部19とフェンダパネル13に形成された第1開口17とを介して車外に排出させることができる。これにより上記サイドドアの閉止時等に、車室内の圧力が上昇することに起因して乗員が不快感を受けることを効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
そして、上記フェンダパネル13の第1開口17から車体側壁部3に侵入した車外の騒音が、上記ホイールハウスアウタパネル14の第1膨出部18およびホイールハウスインナパネル15の第2膨出部20からなるホイールアーチ沿いにその上方の空間部27に伝達されるのを、上記第1仕切部材25と第2仕切部材26により効果的に防止することができる。したがって、上記トリム部材16の裏面の広範囲に吸音材を設置する等の手段を講じることなく、例えば上記フェンダパネル13の第1開口17に対向した部分等の限られた位置に吸音材23が設けるという簡単な構成で、上記フェンダパネル13とその内方側に配設されたトリム部材16との間においてホイールアーチ沿いに形成された上方空間部27から車室内に上記車外の騒音が車室内に進入するのを効果的に防止することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、ホイールハウスアウタパネル14からなるパネル部材に取り付けられた保持部材29と、該保持部材29の取付板35に固定された熱発泡性樹脂材からなるシート部材30とにより第1仕切部材25を構成し、該シート部材30を車体の塗装乾燥工程で加熱して発泡させることによりフェンダパネル13およびホイールハウスアウタパネル14に密着させるよう構成したため、該フェンダパネル13およびホイールハウスアウタパネル14等からなるパネル部材が複雑な形状を有する場合においても、上記塗装乾燥工程の熱を利用して該パネル部材に上記シート部材30を確実に密着させることができる。
【0034】
したがって、上記ホイールハウスアウタパネル14等からなるパネル部材に対応した複雑な形状にシート部材30を予め形成したり、該シート部材30を上記パネル部材に密着させた状態で取り付けたりする等の繁雑な作業を要することなく、上記シート部材30を有する第1仕切部材25を利用して車体側壁部3に形成された大容量の空間部を適正に区画できるという利点がある。
【0035】
また、上記実施形態に示すように、トリム部材16の裏面側に取り付けられた第2仕切部材26の帯状弾性体36を上記保持部材29の内側面に密着させるように構成した場合には、上記帯状弾性体36をトリム部材16に取り付けた状態でこれらを一体的に車体へ組み付けることができる。そして、上記トリム部材16および第1,第2仕切部材25,26の形状精度や、その取付位置にバラツキがあっても、上記第2仕切部材26の帯状弾性体36と、第1仕切部材25を構成する上記保持部材29とをピッタリと密着させた状態で設置することができるため、第1,第2仕切部材25,26により上記空間部を効果的に区画できるという利点がある。
【0036】
さらに、上記第2仕切部材26の帯状弾性体36を、上記保持部材29の内側面に密着する横長部分37と、その一端側に連続して上記ホイールハウスアウタパネル14からなるパネル部材に密着する縦長部分38とにより構成した場合には、該縦長部分38により上記トリム部材16とホイールハウスアウタパネル14との間を適正にシールして上記第1,第2仕切部材25,26による仕切機能を充分に満足できるものとすることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、車体の後部にバックドアが開閉可能に設置された後方開口部5と、その周辺部に沿って設置された車体後壁部4とを有するとともに、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部を、上記車体後壁部4のリヤピラー6からなる側辺部と所定距離を置いてその前方側に配設することにより、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部と車体後壁部5のリヤピラー6との間にエアの流通路となる大きな開口部19を形成したため、車体重量を効果的に低減できるとともに、上記開口部19を介してエアベンチレーション機能を充分に確保できるという利点がある。
【0038】
そして、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部と車体後壁部5のリヤピラー6との間に上記第1仕切部材25を設置して、ホイールハウスアウタパネル14とフェンダパネル13との間に位置する空間部を上下に区画するように構成したため、上記フェンダパネル13に形成された第1開口17から車体側壁部3に侵入した車外の騒音がホイールアーチ沿いに上記空間部の上方に伝播するのを効果的に防止することができる。
【0039】
なお、上記ホイールハウスアウタパネル14の後端部と車体後壁部5のリヤピラー6との間にエアの流通路となる開口部19を形成してなる上記実施形態に代え、ホイールハウスアウタパネル14の後部を切り欠くことによりエアの流通路となる開口部を形成した構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
2 荷室
4 車体後壁部
13 フェンダパネル
14 ホイールハウスアウタパネル
15 ホイールハウスインナパネル
16 トリム部材
17 第1開口
19 エアの流通路となる開口部
24 第2開口
25 第1仕切部材
26 第2仕切部材
27 下方の空間部
29 保持部材
30 シート部材
37 横長部分
38 縦長部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方に設けられた荷室の側方部に沿って設置されたフェンダパネルおよび荷室内側のトリム部材に形成された第1,第2開口により、ホイールアーチ沿いの空間部を経由してエアベンチレーションが行われるように構成された車両の後部構造であって、上記フェンダパネルよりも内側に位置するパネル部材、または該パネル部材と車体後壁部との間にエアの流通路となる開口部が形成されるとともに、上記パネル部材には、その外方側部において上記フェンダパネルとの間に設けられた空間部を上下に区画する第1仕切部材が設けられ、かつ上記トリム部材の背面側には第1仕切部材と当接する第2仕切部材が設けられ、該第1,第2仕切部材により区画された下方の空間部を介してエアベンチレーションが行われるように構成されたことを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
第1仕切部材が、上記パネル部材に設けられた保持部材と、該保持部材に取り付けられた熱発泡性樹脂材からなるシート部材を有し、該シート部材が車体の塗装乾燥工程で加熱されて発泡することにより上記フェンダパネルおよびパネル部材に密着した状態となるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
第2仕切部材が、上記トリム部材の裏面側に取り付けられるとともに、上記保持部材の内側面に密着する帯状弾性体を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
帯状弾性体が、上記保持部材の内側面に密着する横長部分と、その一端側に連続して上記パネル部材に密着する縦長部分とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
車体の後部にバックドアが開閉可能に設置された後方開口部と、その周辺部に沿って設置された車体後壁部とを有するとともに、上記パネル部材としてのホイールハウスアウタパネルの後端部が上記車体後壁部の側辺部と所定距離を置いてその前方側に配設されることにより、上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間にエアの流通路となる開口部が形成され、かつ上記ホイールハウスアウタパネルの後端部と車体後壁部の側辺部との間に上記第1仕切部材が設置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−144155(P2012−144155A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4242(P2011−4242)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】