説明

車両の空調装置

【課題】低コストで且つ車重の増大を防ぎながら、車内全体の空調をバランスよく行なうことを可能とするとともに、車内の部分的な空調制御も可能とすることで、種々の態様で車内の空調をきめ細やかに制御することができるようにする。
【解決手段】
車室13の前部13Aから後部13Cに亘って設けられその内部で空気が流通する空調管路15内に空気を供給する送風機21と、車室13の前部13Aにおける空調管路15上に設けられた前部送風口17と、車室13の後部13Cにおける空調管路15上に設けられた後部送風口19と、前部送風口17と後部送風口19との間における空調管路15上に設けられた中部送風口18と、後部送風口18の上流側における空調管路15内に設けられ管路内空気の流量を可変に制限する空気流量制限手段26とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車内の空調を図る空調装置が、種々開発されている。
例えば、以下の特許文献1には、前席1列、後席2列という比較的大型の乗用車に、2つのヒータユニット(フロントヒータおよびリアヒータ)を設け、これらの双方から送出される暖気により、車内の空調を行なう技術が開示されている。
【特許文献1】特許3541815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1の技術のように、暖気を送出するヒータユニットを複数設ける構成とすると、コストの増大及び設置に伴うレイアウトの自由度低下は避けられず、また、車両重量が増加するという課題が生じる。
他方、ヒータユニットを1つにするという手法も考えられるが、このような手法では、例えば、車内の特定の部分における気温が高くなりすぎたり低くなりすぎたりする現象が生じ、きめ細やかな空調制御をすることはできない。
【0004】
また、運転席および助手席にのみ乗員が着座しているような場合であっても、車内後方の空調も行なわざるを得なくなり、空調効率も悪い。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、低コストで且つ車重の増大を防ぎ、レイアウトの自由度を確保しながら、車内全体の空調をバランスよく行なうことを可能とするとともに、車内の部分的な空調制御も可能とすることで、種々の態様で車内の空調をきめ細やかに制御することができる、車両の空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両の空調装置(請求項1)は、車内の前部から後部に亘って設けられその内部で空気が流通する空調管路と、該空調管路内に空気を供給する送風機と、該車内の前部における該空調管路上に設けられ該空調管路内を流れる空気である管路内空気を該車内へ送出する前部送風口と、該車内の後部における該空調管路上に設けられ該管路内空気を該車内へ送出する後部送風口と、該前部送風口と該後部送風口との間における該空調管路上に設けられ該管路内空気を該車内へ送出する中部送風口と、該後部送風口の上流側における該空調管路内に設けられ該管路内空気の流量を可変に制限する空気流量制限手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載の本発明の車両の空調装置は、請求項1記載の内容において、該送風機に近接して設けられた第1ヒータと、該後部送風口よりも上流側の該空調管路内に設けられた第2ヒータとを備えることを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の車両の空調装置は、請求項1または2記載の内容において、該車内の前部に設けられ、該前部送風口,該中部送風口および該後部送風口のうち該空気流量制限手段よりも下流側に位置するものから送出される空気に対する空調指示が入力される第1操作部と、該車内の中部および後部に近接して設けられ、該空調指示が入力される第2操作部と、該第1操作部または該第2操作部からの該空調指示に応じて該空気流量制限手段による該管路内空気の流量の制限度合いを変更する空気流量制御手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、請求項4記載の本発明の車両の空調装置は、請求項1〜3いずれか1項記載の内容において、該空気流量制限手段が該管路内空気の流通を許可している場合に該第2ヒータを作動させる第2ヒータ制御手段とを備えることを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の車両の空調装置は、請求項4記載の内容において、第2ヒータ制御手段は、該第1操作部または該第2操作部からの該空調指示に応じて該第2ヒータを作動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両の空調装置によれば、前部送風口,中部送風口および後部送風口に対して共通の送風機から空気を送出することで、車重の増大を抑制しながらコストダウンを図り、且つ、車内全体の空調をバランスよく行なうことを可能としながら、後部送風口から車内への空気導入量を可変に制限することで、車内の部分的な空調制御も可能とし、種々の態様で車内の空調をきめ細やかに制御することができる(請求項1)
また、第1ヒータにより前部送風口および中部送風口から車内に導入される空気を加熱することが可能となるとともに、第1ヒータから離れた位置にある後部送風口から車内に導入される空気を第2ヒータにより再加熱することもできる。(請求項2)
また、車内の中部あるいは後部にいる乗員だけではなく、車内の前部にいる乗員であっても車内の空調を行なうことができ、各乗員のニーズにあった車内空調を実現することができる。(請求項3)
また、空気流量制限手段が管路内空気の流通を許可している場合に第2ヒータを作動させるので、第2ヒータによって暖められた空気を適切に車内へ導入することができる。(請求項4)
また、第1操作部または第2操作部に入力された空調指示に応じて第2ヒータを作動させるので、不要な電力消費を避けることができる。(請求項5)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る車両の空調装置について説明すると、図1はその全体構成を示す模式図、図2および図3はともに図1の模式的なII−II断面図、図4はフロント制御パネルを示す模式的な正面図、図5はリア制御パネルを示す模式的な正面図、図6および図7は空調ECUによる制御内容を模式的に示すフローチャートである。
【0010】
車両10の前部には、エンジンルーム11が形成され、このエンジンルーム11内にはエンジン12が搭載されている。また、このエンジン12は水冷式のエンジンであって、このエンジン12に形成された図示しないウォータジャケット内を冷却水が流通することにより、エンジン12の温度を適温に保つことができるようになっている。
また、この車両10には、エンジンルーム11の後方に車室13が設けられている。
【0011】
そして、この車室13の前部13Aには、いずれも図示しない運転席と助手席とが設けられている。これらの運転席と助手席とを1列目シートという。
また、車室13の中部13Bには、図示しない乗員席が2つ設けられている。この車室中部13Bに備えられている乗員席を2列目シートという。
また、車室13の後部13Cにも、図示しない乗員席が2つ設けられている。この車室後部13Cに設けられている乗員席を3列目シートという。
【0012】
また、車室13の最前部にはヒータコア(第1ヒータ)14が設けられている。このヒータコア14は、エンジン12のウォータジャケットと接続され、エンジン12を冷却した後の冷却水に含まれる熱を空気中に放出させる放熱器である。そして、このヒータコア14によって暖められた空気はエアダクト15内に導入されるようになっている。
また、このヒータコア14とエアダクト15との間には、エアミックスダンパ(図示略)が設けられ、ヒータコア14を通過してエアダクト15に導入される空気の量を変更することができるようになっている。
【0013】
エアダクト15は、車室13の床上に車室前部13Aから車室後部13Cに亘って配設された管路であって、前端に空気導入口であるインレット16が設けられ、他方、車室13の車室前部13Aに2箇所,中部13Bに2箇所,後部13Cに2箇所、空気排出口であるアウトレット17,18,19がそれぞれ設けられている。
なお、車室13の前部13Aに設けられたアウトレットを1列目アウトレット(前部送風口)17,車室13の中部13Bに設けられたアウトレットを2列目アウトレット(中部送風口)18,そして、車室13の後部13Cに設けられたアウトレットを3列目アウトレット(後部送風口)19という。また、1列目アウトレット17から車室13に導入される空気(図1中矢印F17参照)の量を「1列目送風量」といい、また、2列目アウトレット18から車室13に導入される空気(図1中矢印F18参照)の量を「2列目送風量」といい、また、3列目アウトレット19から車室13に導入される空気(図1中矢印F19参照)の量を「3列目送風量」という。
【0014】
また、インレット16近傍にはブロアファン(送風機)21が設けられ、インレット16から導入された空気を車両10の後方へ向けてエアダクト15内で流通させることができるようになっている。なお、このブロアファン21は図示しないファンモータにより駆動され、また、このファンモータは後述する空調ECU40からの指令を受け、その回転数が変化するようになっている。
【0015】
また、このエアダクト15は、車両10の長手方向に延在する主管路22と、この主管路22と1列目アウトレット17とを接続する1列目副管路23と、主管路22と2列目アウトレット18とを接続する2列目副管路24と、主管路22と3列目アウトレット19とを接続する3列目副管路25とから主に構成されている。
また、主管路22のうち、1列目副管路23と2列目副管路24との間の部分をA管路22Aといい、また、2列目副管路24と3列目副管路25との間の部分をB管路22Bという。
【0016】
そして、B管路内22Bには、図2に示すように、シャットダンパ(空気流量制限手段)26と、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ27とが設けられている。
これらのうち、シャットダンパ26は、B管路22B内を開閉することで、このB管路22B内を流れる空気の流量を可変に制限するものである。なお、この図2においては、シャットダンパ26の開度が全開である場合を示し、また、図3においては、シャットダンパ26の開度が全閉である場合を示している。
【0017】
このシャットダンパ26には、図示しない電動のステッパモータが接続され、このステッパモータが作動することにより、シャットダンパ26を開閉することができるようになっている。なお、このステッパモータは、後述する空調ECU40からの制御を受けて作動するようになっている。
なお、このステッパモータ(開閉検出手段)には、ポジションフィードバック機能が備えられており、シャットダンパ26が開状態であるのか或いは閉状態であるのかを検出するようになっている。
【0018】
また、PTCヒータ(第2ヒータ)27は、シャットダンパ26の下流側で且つシャットダンパ26に近接してB管路22B内に設けられた熱源であって、図示しないバッテリから電力の供給を受けることで、特に外部から温度制御を受けず、自己制御により、適温を保ちながら発熱することができるようになっている。
また、車室13の1列目シートよりも前方には、インストルメントパネル(図示略)が設けられ、そして、このインストルメントパネルには図4に示すフロント操作パネル30が設けられている。
【0019】
また、このフロント操作パネル30には、温度調整スイッチ31,風量調節スイッチ32,リア送風スイッチ(第1操作部)33が設けられている。
このうち、温度調整スイッチ31は、ダイアル式のスイッチであって、時計回り方向に回動されることにより、ヒータコア14下流のエアミックスダンパ(図示略)の開度を増大させ、ヒータコア14を通過する風量を増やすことにより、エアダクト15内を流通する空気(管路内空気)の温度を上昇させることができるようになっている。
【0020】
風量調節スイッチ32も、ダイアル式のスイッチであって、時計回り方向に回動されることにより、ブロアファン21のファンモータへ供給される電流が段階的に増大し、ブロアファン21の回転速度を段階的に増大させるようになっている。
他方、このフロント風量スイッチ32が反時計回り方向に回動されることにより、ブロアファン21のファンモータへ供給される電流が段階的に減少し、ブロアファン21の回転速度を段階的に減少させ、また、最終的にオフ位置まで回動されることにより、ファンモータへ供給される電流がゼロとなり、ブロアファン21の回転を停止させるようになっている。
【0021】
リア送風スイッチ33は、1列目アウトレット17,2列目アウトレット18および3列目アウトレット19のうち、後述するシャットダンパ26よりも下流側に位置するもの、即ち、3列目アウトレット19から送出される空気F19の空調に関する乗員のリクエスト(空調指示)が入力されるものである。
つまり、このリア送風スイッチ33は、乗員が3列目アウトレット19から車室13内へ暖かい空気F19を導入したいと希望する場合に、乗員によりプッシュ操作され、他方、乗員が3列目アウトレット19から車室13内へ導入されている暖かい空気F19の導入を停止したいと希望する場合に、乗員によりプッシュ操作されるものである。
【0022】
さらに、車室中部13Bと車室後部13Cとに近接した位置、より具体的には、2列目シートと3列目シートとの間における天井(図示略)において、図5に示すリア操作パネル50が設けられている。
そして、このリア操作パネル50には、リア送風停止スイッチ(停止スイッチ)52,リア送風弱スイッチ(弱スイッチ)53,リア送風中スイッチ(中スイッチ)54およびリア送風強スイッチ(強スイッチ)55が設けられている。なお、リア操作パネル50におけるこれらの弱スイッチ53,中スイッチ54および強スイッチ55のそれぞれを、リア風量調節スイッチ(第2操作部)という。
【0023】
そして、これらの停止スイッチおよびリア風量調節スイッチ53,54,55には、3列目アウトレット19から送出される空気F19の空調に関する乗員のリクエスト(空調指示)が入力され、入力された空調指示に基づいて、後述する空調ECU40が、ブロアファン21,シャットダンパ26およびPTCヒータ27を適宜制御するようになっている。
【0024】
また、図1に示すように、この車両10には、空調ECU40が設けられている。この空調ECU40は、いずれも図示しないインターフェース,メモリ,CPUなどを有する電子制御ユニットである。そして、この空調ECU40には、いずれもソフトウェアとして、シャットダンパ制御部(空気流量制限手段)41,PTCヒータ制御部(第2ヒータ制御手段)42およびファン制御部43が設けられている。
【0025】
これらのうち、シャットダンパ制御部41は、ブロアファン21が作動している場合に、シャットダンパ26を駆動するステッパモータに対してパルス信号を送信することで、シャットダンパ26の開閉を制御するものである。
なお、このシャットダンパ制御部41は、フロント制御パネル30の風量調節スイッチ32がオフ位置になければブロアファン21が作動していると判定するようになっている。
【0026】
PTCヒータ制御部42は、以下の条件(A)および(B)が満たされた場合、或いは、条件(A),(C)および(D)が満たされた場合に、PTCヒータ27への給電を許可し、PTCヒータ27を作動させるものである。
条件(A):シャットダンパ26を駆動するステッパモータから受信した信号に基づき、シャットダンパ26が開状態であると判定されること。
【0027】
条件(B):リア制御パネル50の中スイッチ54、または、強スイッチ55がオン状態となったこと。
条件(C):フロント制御パネル30のリア送風スイッチ33がオン状態となったこと。
【0028】
条件(D):前回シャットダンパ26が開状態であった際に、PTCヒータ27が作動していたこと。
また、このPTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させているか否かを示す情報(PTCヒータ作動情報)を、空調ECU40のメモリ内に記録するようになっている。これにより、条件(C)が満たされているか否かが判定することができるようになっている。
【0029】
ファン制御部43は、フロント制御パネル30の風量調節スイッチ32の位置に応じて、ブロアファン21のブロアモータに供給される電流を段階的に変更することで、ブロアファン21のオフ・オン、および、その回転速度を段階的に制御するものである。
また、このファン制御部43は、上記の条件(A)および以下の(E)が満たされた場合に、ブロアファン21のブロアモータに供給される電流を1段階増大させ、ブロアファン21の回転速度を1段階増大させるものである。
【0030】
条件(E):リア制御パネル50の強スイッチ55がオン状態となったこと。
なお、ファン制御部43は、上記の条件(A)および(E)が満たされたとしても、ブロアモータに供給されている電流が既に最大である場合には、その最大電流を維持するようになっている。
【0031】
本発明の一実施形態に係る車両の空調装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
まず、図6を用いてリア操作パネル50が操作された場合について説明する。
図6のステップS11に示すように、シャットダンパ制御部41は、リア操作パネル50の弱スイッチ53,中スイッチ54,強スイッチ55のうちいずれか1つがプッシュ操作されると(ステップS11のYesルート)、ブロアファン21が作動しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0032】
このとき、シャットダンパ制御部41は、フロント制御パネル30の風量調節スイッチ32がオフ位置にあれば、ブロアファン21は作動していないと判定してリターンする(ステップS12のNoルート)。他方、風量調節スイッチ32がオフ位置になければブロアファン21が作動していると判定する(ステップS12のYesルート)。
そして、シャットダンパ制御部41は、ブロアファン21が作動していると判定すると(ステップS12のYesルート)、シャットダンパ26のステッパモータに対してパルス信号を送信し、シャットダンパ26を開く(ステップS13)。
【0033】
その後、PTCヒータ制御部42は、シャットダンパ26を駆動するステッパモータから受信した信号に基づき、実際にシャットダンパ26が開状態になったか否かを判定する(ステップS14)。つまり、このステップS14における判定とは、上記の条件(A)が成立したか否かの判定である。
その後、PTCヒータ制御部42は、リア操作パネル50の強スイッチ55がオン状態となったことが検出されたか否かを判定する(ステップS15)。つまり、このステップS15における判定とは、上記の条件(B)が成立したか否かの判定である。
【0034】
ここで、強スイッチ55がオン状態となったと検出された場合には(ステップS15のYesルート)、PTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させ(ステップS16)、B管路22B内を流れる空気を熱する。
また、このとき、ファン制御部43は、ブロアファン21のブロアモータに供給される電流を1段階増大させ、ブロアファン21の回転速度を1段階増大させる。
【0035】
つまり、ステップS14においてシャットダンパ26が開状態であり(即ち、上記の条件(A)が満たされ)、さらに、ステップS15においてリア制御パネル50の強スイッチ55がオン状態になったことが検出されている(即ち、上記の条件(E)が満たされている)ことに基づき、ファン制御部43は、ブロアファン21の回転速度を1段階増大させるのである。
【0036】
もっとも、ブロアファン21の回転速度が既に最大速度である場合(即ち、ブロアモータに供給されている電流が既に最大である場合)、ファン制御部43は、その最大速度を維持する。
他方、ステップS15において、強スイッチ55が操作されたのではなく(ステップS15のNoルート)、中スイッチ54が操作された場合(ステップS18のYesルート)においても、PTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させる(ステップS19)。
【0037】
つまり、このステップS19におけるPTCヒータ27の作動も、上記の条件(A)が満たされ(ステップS14のYesルート)、且つ、上記の条件(B)が満たされている(ステップS18のYesルート)ことに基づいている。
他方、弱スイッチ53が操作された場合(ステップS18のNoルート)、PTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させず、また、ファン制御部43もブロアファン21の回転速度を変更しない。
【0038】
このように、強スイッチ55がオン状態になった場合には、PTCヒータ27が作動することに加え(ステップS16)、ブロアファン21の回転速度が1段階増大するが(ステップS17)、これに対し、中スイッチ54がオン状態になった場合は、ブロアファン21に対する制御は特に行なわれず、PTCヒータ26のみが作動する(ステップS19)。また、弱スイッチ53がオン状態となった場合は、ブロアファン21に対する制御は特に行なわれず、また、PTCヒータ27も作動しない。
【0039】
これは、車両10の乗員が、車室後部13Cをどの程度積極的に暖めたいのかというリクエストの程度に応じて、適切に空調を行なっているものである。
また、シャットダンパ制御部41からシャットダンパ26のステッパモータに対して、シャットダンパ26を開状態にするパルス信号が送信されたにもかかわらず、何らかの理由により、実際にはシャットダンパ26が開状態になっていない場合(ステップS14のNoルート)、PTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させず、また、ファン制御部43もブロアファン21の制御を特に変更せず、そのままリターンする。
【0040】
なお、リア操作パネル50の弱スイッチ53,中スイッチ54および強スイッチ55のいずれもがオン状態になっていない場合(ステップS11のNoルート)、または、ブロアファン21が作動していない場合(ステップS12のNoルート)、PTCヒータ制御部42およびファン制御部43のいずれも、特に制御を実行せずリターンする。
次に、図7を用いてフロント操作パネル30が操作された場合について説明する。
【0041】
図7のステップS21に示すように、シャットダンパ制御部41は、フロント操作パネル30のリア送風スイッチ33がプッシュ操作されると(ステップS21のYesルート)、ブロアファン21が作動しているか否かを判定する(ステップS22)。なお、このステップステップS21における判定とは、上記の条件(C)が成立したか否かの判定である。
【0042】
このとき、シャットダンパ制御部41は、フロント制御パネル30の風量調節スイッチ32がオフ位置にあれば、ブロアファン21は作動していないと判定してリターンする(ステップS22のNoルート)。他方、風量調節スイッチ32がオフ位置になければブロアファン21が作動していると判定する(ステップS22のYesルート)。
そして、シャットダンパ制御部41は、ブロアファン21が作動していると判定すると(ステップS22のYesルート)、シャットダンパ26のステッパモータに対してパルス信号を送信し、シャットダンパ26を開く(ステップS23)。
【0043】
その後、PTCヒータ制御部42は、シャットダンパ26を駆動するステッパモータから受信した信号に基づき、実際にシャットダンパ26が開状態になったか否かを判定する(ステップS24)。つまり、このステップS24における判定とは、上記の条件(A)が成立したか否かの判定である。
その後、PTCヒータ制御部42は、空調ECU40のメモリから、PTCヒータ作動情報を読込み、前回シャットダンパ26が開状態になった際にPTCヒータ27が作動していたと判定した場合には(ステップS25のYesルート)、PTCヒータ27を作動させ(ステップS26)、B管路22B内を流れる空気を熱する。つまり、このステップS25における判定とは、上記の条件(D)が成立したか否かの判定である。
【0044】
他方、シャットダンパ制御部41からシャットダンパ26のステッパモータに対して、シャットダンパ26を開状態にするパルス信号が送信されたにもかかわらず、何らかの理由により、実際にはシャットダンパ26が開状態になっていない場合(ステップS24のNoルート)、PTCヒータ制御部42はPTCヒータ27を作動させず、そのままリターンする。
【0045】
同様に、ステップS25において、PTCヒータ制御部42は、空調ECU40のメモリから読込んだPTCヒータ作動情報に基づき、前回シャットダンパ26が開状態になった際にPTCヒータ27が作動していなかったと判定した場合にも(ステップS25のNoルート)、PTCヒータ制御部42は、PTCヒータ27を作動させず、そのままリターンする。
【0046】
なお、フロント操作パネル30のリア送風スイッチ33がオン状態になっていない場合(ステップS21のNoルート),ブロアファン21が作動していない場合(ステップS22のNoルート)、PTCヒータ制御部42およびファン制御部43は、いずれも、特に制御を実行せずリターンする。
このように、本発明の一実施形態に係る車両の空調装置によれば、1列目アウトレット17,2列目アウトレット18および3列目アウトレット19に対して共通のブロアファン21から空気を送出する構成とすることで、複数のブロアファンを設けることを廃し、車両10の重量増大を抑制するとともにコストダウンを図ることができ、且つ、車室13全体の空調をバランスよく行なうことができる。
【0047】
また、シャットダンパ26により3列目アウトレット19から車室13への空気F19の導入量、即ち、3列目送風量を変更することで、車室13の部分的な空調を可能とし、種々の態様で車室13の空調をきめ細やかに制御することができる。
また、車室13の最前部に設けられたヒータコア14により、主に、1列目アウトレット17から車室13に導入される空気F17および2列目アウトレット18から車室13に導入される空気F18を加熱することが可能となるとともに、ヒータコア14から離れた位置にある3列目アウトレット19から車室13に導入される空気F19をPTCヒータ27により再加熱することも可能となる。これにより、車室13を効率よく暖めることができる。
【0048】
また、3列目アウトレット19から車室13に導入される空気F19を重点的に暖める場合にのみPTCヒータ27を作動させるので、不要な電力消費を避けることが可能となる。
また、3列目アウトレット19から車室13に導入される空気F19を、車室13の前部にいる乗員、即ち、運転席に着座しているドライバや、助手席に着座している乗員が、フロント操作パネル30により調整することができるとともに、車室13の中部あるいは後部にいる乗員、即ち、2列目シートや3列目シートに着座している乗員も、リア操作パネル50により調整することができるので、各乗員のニーズにあった車室13の空調を実現することができる。
【0049】
次に、上述の実施形態に係る車両の空調装置の変形例について、図8を用いて説明する。なお、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略し、また、上述の実施形態を説明するのに用いた図を用いる場合もある。なお、本変形例においては、エアダクト65の構成が、上述した図1における車両10のエアダクト15と大きく異なっているので、この点を中心に説明する。
【0050】
この図8に示すエアダクト65は、車室13の床上に前部13Aから後部13Cに亘って配設された管路であって、前端に空気導入口であるインレット66が設けられ、また、このインレット66近傍にはブロアファン21が設けられ、インレット66から導入された空気をエアダクト65内で流通させることができるようになっている。
そして、このエアダクト65は、車両60の長手方向に延在する2本の主管路72から主に構成され、インレット66からエアダクト65内に導入された空気は、これらの2本の主管路72を通じて1〜3列目アウトレット17,18,19に送出されるようになっている。
【0051】
また、これらの主管路72のうち、1列目アウトレット17と2列目アウトレット18との間の部分をA管路72Aといい、また、2列目アウトレット18と2列目アウトレット19との間の部分をB管路72Bという。
そして、B管路内72Bには、それぞれ、シャットダンパ26と、PTCヒータ27とが設けられている。
【0052】
また、このシャットダンパ26には、図示しない電動のステッパモータが接続され、このステッパモータが作動することにより、シャットダンパ26を開閉することができるようになっている。なお、このステッパモータは、空調ECU40からの制御を受けて作動するようになっている。
なお、このステッパモータ(開閉検出手段)には、ポジションフィードバック機能が備えられており、シャットダンパ26が開状態であるのか或いは閉状態であるのかを検出することができるようになっている。なお、この空調ECU40は、図1に示す空調ECU40と同じものであるので、ここでは、空調ECU40による制御内容や作用などについての説明は省略する。
【0053】
このように、図8に示す変形例に係る車両の空調装置によれば、車室13の車幅中心近傍にエアダクトを配設できないような場合であっても、上述の実施形態の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0054】
図8に示す上述の変形例においては、2つのシャットダンパ26の開閉が一律に制御される場合を例にとって説明したが、このような場合に限定されるものではなく、一方のシャットダンパ26と他方のシャットダンパ26をそれぞれ独立して制御するように構成してもよい。これにより、よりきめ細やかな空調制御を行なうこともできる。
また、上述の実施形態および変形例においては、シャットダンパ26が、単に全開/全閉となる構成について説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、シャットダンパ26の開度を自在に変更できるようにしてもよい。また、このシャットダンパ26に換えて、空気流量を調整できる空気流量調整弁を用いるようにしてもよい。
【0055】
また、シャットダンパ26の開度に応じてブロアファン21の回転速度制御を行なうようにしてもよい。これにより、よりきめ細やかな空調制御を行なうことができる。
また、上述の実施形態および変形例においては、車室13にヒータコア14を設け、また、B管路22A,72B内にPTCヒータ27を設けた場合について説明したが、このような構成に限定するものではない。例えば車室13やB管路22A,72B内にエアコン装置のエバポレータを設け、車室13を冷却する構成としてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態および変形例においては、フロント操作パネル30のみに、ブロアファン21の回転速度を変更する風量調節スイッチ32を設ける構成としたが、このような構成に限定するものではない。例えば、リア操作パネル50に風量調節スイッチ32と同様の機能を持ったスイッチを設け、2列目シート或いは3列目シートにいる乗員がブロアファン21の回転速度を調節できるような構成としてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態および変形例においては、リア操作パネル50に弱スイッチ53,中スイッチ54および強スイッチ55を設け、3列目アウトレット19から車室13に導入される空気F19の調整を行なうことができるようにしたが、このような場合に限定するものではない。例えば、これらの弱スイッチ53,中スイッチ54および強スイッチ55に相当するスイッチを、フロント操作パネル30に設け、1列目シートに着座した乗員が、車室後部13Cの空調を行なえるようにしてもよい。
【0058】
また、フロント操作パネル30やリア操作パネル50に設けられる各種スイッチ、ダイアル等は、上記実施例の形態に限定するものではなく、例えばリア操作パネル50に設けた弱スイッチ53,中スイッチ54および強スイッチ55をダイアルによって操作するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置の要部構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置の要部構成を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置のフロント制御パネルを示す模式的な正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置のリア制御パネルを示す模式的な正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置の作用を示す模式的なフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両の空調装置の作用を示す模式的なフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態の変形例に係る車両の空調装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
10 車両
13 車内
13A 車内前部
13C 車内後部
14 ヒータコア(第1ヒータ)
15,65 エアダクト(空調管路)
17 1列目アウトレット(前部送風口)
18 2列目アウトレット(中部送風口)
19 3列目アウトレット(後部送風口)
21 ブロアファン(送風機)
26 シャットダンパ(空気流量制限手段)
27 PTCヒータ(第2ヒータ)
33 リア送風スイッチ(第1操作部)
41 シャットダンパ制御部(空気流量制限手段)
42 PTCヒータ制御部(第2ヒータ制御手段)
53 リア送風弱スイッチ(リア風量調節スイッチ)
54 リア送風中スイッチ(リア風量調節スイッチ)
55 リア送風強スイッチ(リア風量調節スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の前部から後部に亘って設けられその内部で空気が流通する空調管路と、
該空調管路内に空気を供給する送風機と、
該車内の前部における該空調管路上に設けられ該空調管路内を流れる空気である管路内空気を該車内へ送出する前部送風口と、
該車内の後部における該空調管路上に設けられ該管路内空気を該車内へ送出する後部送風口と、
該前部送風口と該後部送風口との間における該空調管路上に設けられ該管路内空気を該車内へ送出する中部送風口と、
該後部送風口の上流側における該空調管路内に設けられ該管路内空気の流量を可変に制限する空気流量制限手段とを備える
ことを特徴とする、車両の空調装置。
【請求項2】
該送風機に近接して設けられた第1ヒータと、
該後部送風口よりも上流側の該空調管路内に設けられた第2ヒータとを備える
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項3】
該車内の前部に設けられ、該前部送風口,該中部送風口および該後部送風口のうち該空気流量制限手段よりも下流側に位置するものから送出される空気に対する空調指示が入力される第1操作部と、
該車内の中部および後部に近接して設けられ、該空調指示が入力される第2操作部と、
該第1操作部または該第2操作部からの該空調指示に応じて該空気流量制限手段による該管路内空気の流量の制限度合いを変更する空気流量制御手段とを備える
ことを特徴とする、請求項1または2記載の車両の空調装置。
【請求項4】
該空気流量制限手段が該管路内空気の流通を許可している場合に該第2ヒータを作動させる第2ヒータ制御手段とを備える
ことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載の車両の空調装置。
【請求項5】
第2ヒータ制御手段は、該第1操作部または該第2操作部からの該空調指示に応じて該第2ヒータを作動させる
ことを特徴とする、請求項4記載の車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−253802(P2007−253802A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81120(P2006−81120)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】