説明

車両の走行支援システム及び方法

【課題】交差点において安全且つドライバーの意思に沿った車両の走行支援を行う。
【解決手段】走行支援システム(1)は、交差点における車両の走行を支援する。走行状態を検出する走行状態検出手段と、運転操作情報を検出する運転操作情報検出手段と、交差点情報を検出する交差点情報検出手段と、検出された走行状態、運転操作情報及び交差点情報を関連付けて、走行パターンとして記憶する学習手段と、検出された交差点情報が学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、車両を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点を走行する車両の挙動を支援可能な車両の走行支援システム及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の走行支援システムでは、交差点における車両の挙動を学習し、その学習内容に従ってドライバーの運転を支援するものがある。つまり、過去の交差点における走行履歴に基づいて、車両の挙動が制御される。このような走行支援は、ドライバー自身の過去の走行履歴に基づいて行われるため、交差点における車両の挙動を安全且つ自然に(即ちドライバーに違和感を覚えさせることなく)サポートすることが可能とされている。
【0003】
例えば特許文献1には、交差点に設置された路側機から、当該信号機の点灯状態に関する情報を受信する受信装置を車両に搭載することによって、信号機の点灯状態に適した走行支援を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、交差点に設置された信号機が矢灯器を備える場合、当該矢灯器が表示する進行方向によって、走行支援の開始タイミングを変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2004−252718号公報
【特許文献2】特願2009−42823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術では、特定のタイミングで信号機の点灯状態を認識することによって、交差点における走行支援を好適に行うことができるとされている。しかしながら、信号機の点灯状態は時間の経過と共に刻々と変化するため、特定のタイミングで信号機の点灯状態を把握したとしても、実際に車両が交差点に差し掛かった際に点灯状態が変化することにより、好適な走行支援が実施されないおそれがある。例えば、交差点から相当の距離だけ離れたある地点で信号機の点灯状態が青色であったとしても、車両が交差点に接近した際には点灯状態が赤色に変化している可能性がある。このような場合、あるタイミングにおける点灯状態のみによって走行支援のパターンを決定する上記技術では対応することが困難である。
【0007】
また、ドライバーは、車両が交差点に進入する前から(即ち交差点に車両が接近する前から)信号機の点灯状態を視覚的に認識することにより、車両の制御パターンを適宜変更する。例えば、交差点から相当距離離れた地点において信号機の点灯状態が赤色であることを認識した場合には、早いタイミングで車両の減速を開始し、交差点までの長い距離の間にゆっくりとした減速度で減速行動を行う。一方、車両が比較的交差点の近くまで接近した時に点灯状態が赤色に変化した場合には、遅いタイミングで急な減速度で車両の停止を試みる。上記技術では、このような信号機の切り替えに伴うドライバーの意図を考慮していないため、このような状況に対処することが困難である。
【0008】
本発明は、例えばこのような問題点に鑑みてなされたものであり、交差点において安全且つドライバーの意思に沿った車両の走行支援を実現させ得る車両の走行支援システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明に係る車両の走行支援システムは、交差点における車両の走行状態を支援する車両の走行支援システムであって、前記車両の前記走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出手段と、前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習する学習手段と、前記検出された交差点情報が、前記学習手段によって過去に学習された前記走行パターンである学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する制御手段とを備える。
【0010】
本発明に係る車両の走行支援システムは、交差点における車両の走行状態を支援することによって、車両を運転するドライバーの負担を軽減することができる。ここで、本発明における「走行状態」とは、走行路上における車両の挙動、例えば車両の位置、速度、加速度、舵角及び進行方向等を意味する。また、本発明における「走行状態を支援する」とは、主にドライバーの運転操作によって決定される走行状態を変更することを意味する。例えば、ドライバーはアクセルペダルやブレーキペダルを操作することによって車両の走行状態を意図する走行状態に近づけようとするが、ドライバー以外の要素、例えばPCU等の電子デバイスによって、当該アクセルペダルやブレーキペダルを電子的に補助駆動させることを意味する。尚、このような走行状態の支援は、以下に詳述するように、種々の条件に応じて必要に応じて実行される。尚、本発明に係る「交差点」とは、二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路の交わる部分であり、例えば、T字路、十字路、五差路等の各種形態が含まれ、広義には鋭角或いは鈍角に曲がる「曲がり角」も含まれる。
【0011】
本発明に係る車両の走行支援システムは、走行状態検出手段、交差点情報検出手段、学習手段及び制御手段を備える。
【0012】
本発明に係る「走行状態検出手段」は、車両の走行状態を検出する。走行状態検出手段は、例えば、車速センサやGPSシステム等を介して車両の位置、速度、加速度、舵角及び進行方向等の各種のパラメータを計測することによって走行状態を検出する。
【0013】
本発明に係る「交差点情報検出手段」は、交差点情報を検出する。「交差点情報」とは、交差点を特定するための情報であり、例えば、交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等の道路線形情報を始めとする各種のパラメータである。尚、交差点情報は、後述する制御手段によって、交差点同士の同一性又は類似性を判断する際の基準となるため、このような判断に必要な情報が含まれている限りにおいて、何ら限定されない。
【0014】
本発明に係る「学習手段」は、走行状態検出手段によって検出された走行状態を、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習する。ここで、「学習する」とは、検出された交差点情報及び走行パターンに基づいて、当該交差点情報に対応する交差点に対する適切な走行パターンを特定し、記憶すること意味する。例えば、特定の交差点情報に対応する走行パターンとして、特定の走行パターンが複数回検出された場合には、当該走行パターンが、当該交差点に対する適切な走行パターンであるとして記憶することによって学習する。走行パターンは、例えば、後述する制御手段により適宜読み出すことができるように、メモリ等の記憶手段に記憶するとよい。ここで、「互いに関連づけて」とは、「対応するように」との意味であり、走行状態検出手段によって検出された走行状態が、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報に対応することが明確である限りにおいて限定されない。
【0015】
本発明に係る「制御手段」は、まず、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報が、学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似であるか否かを判断する。ここで、「学習済み走行パターン」とは、学習手段によって過去に学習された走行パターンである。交差点情報には、上述のように、例えば交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等の道路線形情報が含まれる。また、本発明における「類似である」とは、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報と、学習済み走行パターンに含まれる交差点情報との差が、学習済み走行パターンに基づいて車両の走行状態を行った場合に、安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能な程度に、小さいことを意味する。かかる「違和感がない走行状態」は、車種等を固定した上で、各種の走行パターンに対してドライバーが感じる違和感を、実験的、経験的或いはシミュレ−ション等により求め、その度合いがドライバーの許容できるレベルに比べて小さくなる走行状態として予め設定すればよい。すると、その後は、制御手段は、学習済み走行パターンに基づいて車両の走行状態を制御した場合に、安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能か否かによって、同一又は類似であるか否かを判断すればよい。
【0016】
続いて、制御手段は、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報が、学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合、当該学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する。ここで、「走行状態を制御する」とは、車両の走行状態を決定する、例えばアクセルペダルやブレーキペダルをドライバー以外の要素、例えばPCU等の電子デバイスによって、補助的に駆動させることを意味する。つまり、制御手段は、ドライバーの運転操作によって決定された走行状態が当該同一又は類似の交差点情報を有する学習済み走行パターンの内容に近づくように変更することを意味する。ここで、学習済み走行パターンは、過去にドライバーが実際に行った車両の走行パターンであるため、このような支援が行われた車両の挙動は、ドライバーにとって極めて自然であり、違和感を覚えにくい。
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両の走行支援システムによれば、交差点において安全且つドライバーの意思に沿った車両の走行支援を実現することができる。
【0018】
本発明に係る車両の走行支援システムの一の態様では、前記制御手段は、前記検出された交差点情報が、前記学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似でない場合に、予め用意されたデフォルト走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する。
【0019】
本態様によれば、学習手段によって過去に学習された学習済みパターンの中に、現に車両が走行しようとする交差点と同一又は類似の交差点情報を有するものが存在しない場合には、学習済みパターンではなく、デフォルト走行パターンに従って走行支援が行われる。つまり、本態様において走行支援の基準とされるデフォルト走行パターンは、学習手段によって形成されるのではなく、例えば、交差点において安全且つドライバーにとって違和感がない走行パターンに沿って行われる減速行動を、実際の公道上におけるテストドライバーによる現地実験、或いはこのような現地実験を理論的又はシミュレーション的な手法よって再現することによって規定するとよい。
【0020】
このように、本態様では、車両が走行しようとする交差点と同一又は類似の交差点に対応する学習済みパターンが存在しない場合であっても、デフォルト走行パターンに従って車両を制御することにより、安全且つドライバーにとって違和感の少ない走行支援を実現することができる。
【0021】
本発明に係る車両の走行支援システムの一の態様では、前記車両に対するドライバーの操作に関する情報である操作情報を検出する操作情報検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記ドライバーの操作を支援するように前記車両の前記走行状態を制御する。
【0022】
本態様における操作情報検出手段は、操作情報を検出する。操作情報とは、車両に対してドライバーが行う操作を広く意味し、例えば、車速を加減速するためにアクセルペダルやブレーキペダルの踏み込む操作や、車両の進行方向を変更させるためにステアリングホイルを回転させる操作が含まれる。具体的には、アクセルペダルやブレーキペダルの操作量(即ちペダルを踏み込む量又は緩める量)及び操作タイミング(即ちペダルの操作を開始するタイミング)等を操作情報として検出するとよい。
【0023】
本態様における制御手段は、ドライバーの操作を支援するように車両の走行状態を制御する。言い換えれば、制御手段による車両の制御は、車両の走行状態を決定する、例えばアクセルペダルやブレーキペダルをドライバー以外の要素、例えばPCU等の電子デバイスによって、補助的に駆動させることによって行われるが、この補助的な駆動は、ドライバーの運転操作によって決定される走行状態が、車両が取るべき走行状態から乖離している場合にその差を少なくなるように行われる。
【0024】
本発明に係る車両の走行支援システムの他の態様では、前記交差点に設置された信号機の点灯状態検出する信号機検出手段を更に備え、前記学習手段は、前記検出された点灯状態を、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶することによって学習し、前記制御手段は、前記検出された点灯状態が、前記学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似である場合に、前記学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する。
【0025】
本態様に係る「信号機検出手段」は、交差点に設置された信号機の点灯状態を検出する。この検出動作は、例えば、車載カメラ等から取りこまれた画像を解析することによって行われてもよいし、交差点付近に設置され、信号機の有無及び点灯状態に関する信号機情報を発信する路側機からの信号を受信することによって行われてもよい。ここで、「点灯状態」は、交差点に設置されている信号機が備える灯器のうち、点灯している灯器の数、灯色及び点灯内容を含む情報であり、例えば、点灯している灯色、信号機に矢灯器や歩行者用信号が備えられている場合にはその表示の有無及び表示方向の如何、及び赤信号が点灯するまでの残り時間等が含まれる。
【0026】
本態様における学習手段は、信号機検出手段が検出した点灯状態を、走行状態検出手段及び交差点情報検出手段によって夫々検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習を行う。つまり、本態様では、走行状態、運転操作情報及び交差点情報に加えて、信号機の点灯状態も併せて関連付けて記憶することによって学習が行われる。要するに、本態様における「学習する」とは、交差点情報及び走行パターンに加えて点灯状態に基づいて、当該交差点に対する適切な走行パターンを特定し、記憶すること意味する。例えば、特定の交差点情報における特定の点灯状態に対応する走行パターンとして、特定の走行パターンが複数回検出された場合には、当該走行パターンが、適切な走行パターンであるとして記憶することによって学習が行われる。
【0027】
本態様に係る制御手段は、まず、検出された点灯状態が、学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似であるか否かを判断する。上述のように、点灯状態には、例えば、交差点に設置されている信号機が備える灯器のうち、点灯している灯器の数、灯色及び点灯内容を含む情報であり、例えば、点灯している灯色、信号機に矢灯器や歩行者用信号が備えられている場合にはその表示の有無及び表示方向の如何、及び赤信号が点灯するまでの残り時間等が含まれる。制御手段は、これらの各種表示が、現に車両が走行しようとしている交差点に設置された信号機と、学習済み走行パターンに対応する過去に学習が行われた交差点に設置された信号機について同一又は類似であるかを判断する。ここで、「類似である」とは、検出された点灯状態と、学習済み走行パターンに含まれる点灯状態との差が、当該学習済み走行パターンに基づいて車両の走行状態を行った場合に、安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能な程度に、小さいことを意味する。その結果、信号機の点灯状態が一致した場合には、両交差点は同一と判断される。また、点灯状態が完全に一致していなくとも、その差が安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能な程度であれば、類似するものと判断される。
【0028】
続いて、制御手段は、検出された点灯状態が、学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、車両の走行状態を制御する。つまり、過去にドライバーが同一又は類似の交差点において、同一又は類似の信号機の点灯状態にある際に行った走行を再現するように、当該交差点における車両の走行状態を支援する。このように、実際に過去にドライバーが行った走行パターンに基づいて、車両の走行状態を支援するため、ドライバーは違和感を覚えることなく、安全に交差点を走行することができる。
【0029】
特に本態様では、上述のように交差点情報に加えて、信号機の点灯状態についても類否判断を行って車両の走行状態を制御するので、よりドライバーの感覚に近い走行支援を実現することができる。
【0030】
上述の信号機検出手段を備える態様では、前記制御手段は、前記検出された点灯状態が、前記学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似でない場合に、前記学習済み走行パターンのうち、相対的に大きな減速量を有し、且つ、減速タイミングが相対的に早い走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御するとよい。
【0031】
本態様によれば、学習手段によって過去に学習された学習済みパターンの中に、現に車両が走行しようとする交差点と同一又は類似である交差点情報を有するものがあったとしても、信号機の点灯状態が同一又は類似でない場合、過去に学習された学習済み走行パターンの中から、相対的に大きい減速量(言い換えれば、学習済み走行パターンのうち減速量が大きい方の部類に入るもの、或いは選択対象となる複数の走行パターンのうち減速量が大きい方のもの)及び相対的に早い減速タイミング(言い換えれば、学習済み走行パターンのうち減速タイミングが早い方の部類に入るもの、或いは選択対象となる複数の走行パターンのうち減速タイミングが早い方のもの)を有する走行パターンが選択される。つまり、過去に学習された学習済み走行パターンの中で比較した場合に、相対的に大きな減速量及び相対的に早い減速タイミングを有する走行パターンに従って走行状態が制御される。尚、選択される走行パターンは、減速量が相対的に大きく、減速タイミングが相対的に早ければよいが、特に、過去に学習された学習済み走行パターンの中で比較した場合に、最大の減速量及び最も早い減速タイミングを有する走行パターンが選択されることが好ましい。
【0032】
このような走行パターンに従って車両を制御することにより、最も安全に車両の走行状態を支援することが可能となる。
【0033】
本発明に係る車両の走行支援システムの他の態様では、前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、学習する。
【0034】
この態様によれば、上述の車両の走行支援は、交差点における車両の減速時に適用される。つまり、学習制御は車両が交差点において減速行動をとった場合に走行パターンを学習し、制御手段は車両が交差点を走行する際に減速行動が必要になった場合に走行パターンに基づいて車両を制御する。その結果、交差点における車両の減速行動を支援することができるので、交差点における車両の挙動を安全に維持することが可能となる。
【0035】
上述の信号機検出手段を備える態様では、前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、前記車両が減速を開始した時点における信号機の点灯状態を、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶するとよい。
【0036】
この場合、減速行動を開始するタイミング、即ち、ドライバーが信号機の点灯状態を認識して車両に対して運転操作を行うタイミングで学習が行われるため、学習される走行パターンには交差点におけるドライバーの意図が的確に反映される。そのため、このような走行パターンに従って車両の走行状態を支援することによって、より自然な走行支援が可能となる。
【0037】
この場合、前記交差点に設置され、前記信号機情報を発信する信号機情報発信手段を更に備え、前記信号機情報検出手段は、前記信号機情報発信手段から発信された前記信号機情報を受信することにより前記交差点から離れた位置において前記信号機情報を検出するとよい。
【0038】
信号機情報発信手段は、交差点に設置された信号機情報を発信するための装置であり、例えば、インフラ設備として交差点に設置される。この場合信号機情報検出手段は当該交差点情報を受信することにより、交差点情報を検出する。ここで、信号機情報は例えば電波で送受信されるため、信号機情報検出手段は、交差点から離れた所定の範囲内で信号機情報を取得することができる。その結果、車両が交差点に接近する前のタイミング、即ち、車両が減速行動を開始する前のタイミングで学習を行うことができるため、このように学習された走行パターンに従って車両の走行状態を支援することができる。実際にドライバーは交差点に進入する前から信号機情報を目視等によって認識して、減速タイミングや減速量を判断するため、このようなタイミングで信号機情報を取得することによって、よりドライバーの意思に従った自然な走行支援が可能となる。
【0039】
更に、前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、前記車両が減速を開始した時点における前記信号機の前記点灯状態と前記交差点から離れた位置において検出した前記信号機情報とを、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶することによって学習するとよい。
【0040】
この場合、減速行動を開始するタイミング、即ち、ドライバーが信号機の点灯状態を認識して車両に対して運転操作を行うタイミングと、車両が交差点に接近する前のタイミング、即ち、車両が減速行動を開始する前のタイミングで学習が行われるため、車両が交差点に接近する間に信号機の点灯状態が変化した場合でも、適切な走行パターンを学習することができる。例えば、信号機の点灯状態が切り替わるタイミングを走行パターンの一部として把握することによって、信号状態の切替りタイミングをも考慮した走行支援を実現することができる。その結果、よりドライバーの意思に従った自然な走行支援が可能となる。
【0041】
上述した課題を解決するため本発明に係る車両の走行支援方法は、交差点における車両の走行状態を支援する車両の走行支援方法であって、前記車両の前記走行状態を検出する走行状態検出工程と、前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出工程と、前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習する学習工程と、前記検出された交差点情報が、前記学習工程によって過去に学習された前記走行パターンである学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する制御工程とを備える。
【0042】
本発明に係る車両の走行支援方法によれば、上述した本発明に係る車両の走行支援システムの場合と同様に、ドライバーの意思に従った自然な走行支援が可能となる。
【0043】
尚、本発明に係る車両の走行支援方法においても、上述した本発明に係る車両の走行支援システムと同様の各種態様を採ることが可能である。
【0044】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態に係る走行支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御に関するフローチャート図である。
【図3】第1実施形態に係る走行支援システムによって実行される支援制御に関するフローチャート図である。
【図4】第2実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御に関するフローチャート図である。
【図5】第3実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御に関するフローチャート図である。
【図6】第4実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御に関するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
図1から図3を参照して、本発明に係る「車両の走行支援装置」の一例である車両に組み込まれた走行支援システム1の構成及び動作について説明する。
【0047】
図1は、第1実施形態に係る走行支援システム1の概略構成を示すブロック図である。尚、図1において、各ブロック間の実線は、信号の入出力が可能なラインを示している。
【0048】
走行支援システム1は、GPS受信機2、前方カメラ3、ミリ波レーダ4、インフラ通信装置5、車速センサ6、ディスプレイ7、ACCスイッチ8、PCSスイッチ9、コントローラ10、地図情報データベース11、カーナビゲーション12、ブレーキアクチュエータ13、アクセルアクチュエータ14及びスピーカ15を備える。
【0049】
GPS受信機2は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波を受信する。受信された電波は、電気信号としてコントローラ10に供給されることによって、緯度及び経度情報等から当該走行支援システム1を備える車両の位置を検出することができる。
【0050】
前方カメラ3は、車両の前部に設置されており、車両の進行方向の様子(例えば道路、交差点及び交差点に設置された信号機の点灯状態等)を画像として取り込むことが可能である。前方カメラ3によって取り込まれたこれらの画像は電気信号として、コントローラ10に供給される。コントローラ10はこの供給された電気信号を分析することによって、車両の走行状態、交差点情報及び信号機情報等を含む各種情報を取得することができる。また、車両の前方に別の車両が存在する場合には、コントローラ10は前方カメラ3から取得した画像に基づいて、当該別の車両との車間距離を算出することも可能である。
【0051】
ミリ波レーダ4は、ミリ波を射出することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差に基づいて、対象物との距離や相対速度を測定することが可能である。例えば、電波が車両の進行方向に射出されるようにミリ波レーダ4を設置することによって、車両の進行方向に他の走行車両や障害物が存在するか否か、及び走行車両や障害物と当該車両との距離を把握することができる。
【0052】
インフラ通信装置5は、インフラ設備として交差点に設置されている路側機(図不示)から発信された交差点情報を受信可能な通信装置である。路側機は、当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等に関する道路線形情報を含む交差点情報を発信しており、インフラ通信装置5は当該交差点情報を受信することにより、コントローラ10は当該交差点情報を取得することができる。
【0053】
車速センサ6は、車両の速度を検知可能なセンサである。速度センサ6は、車両の速度に対応する電気信号をコントローラ10に対して供給する。コントローラ10は供給された電気信号に応じて、車両の速度を検出することができる。
【0054】
ディスプレイ7は、車速センサ6が検出した車両の速度を表示する表示装置である。ディスプレイ7は、例えばアナログメータやデジタルメータなどによって構成され、運転者から見やすい場所に設置される。
【0055】
ACCスイッチ8は、車両を運転するドライバーがオンオフを切り替えることによって、本実施形態に係る走行支援システム1を作動させるか否かを選択可能なスイッチである。つまり、ACCスイッチ8がオフに設定されている場合、走行支援システム1は機能しない。以下の説明では、ACCスイッチ8がオンに設定されていることによって、走行支援システム1が機能している状態について説明を進める。
【0056】
コントローラ10は、図不示のCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器等を含んで構成される。コントローラ10は、走行支援システム1を構成する各ブロックから入出力される信号に基づいて、種々の制御・処理を行う。即ち、本発明に係る各種手段は、コントローラ10によって走行支援システム1の各部位が制御されることによって実現されている。具体的に言えば、コントローラ10は、本発明に係る「走行状態検出手段」、「運転操作情報検出手段」、「交差点情報検出手段」、「学習手段」及び「制御手段」の一例として機能する。尚、コントローラ10は、車両内のECU(Engine Control Unit)として構成されていてもよい。
【0057】
地図データベース11は、地図情報や、道路形状、車線、高速道路、建物などの道路環境情報に関するデータベースであり、メモリ等の記憶手段(図不示)に記憶されている。コントローラ10は、地図データベース11を参照することにより、そこに記憶されている地図情報等を取り込むことができる。
【0058】
カーナビゲーション12は、前述の地図データベース11やVICS(Vehicle Information Communication System)等からの交通情報を利用して、道路状況や走行時間帯などの環境に応じて車両の位置を算出することができる。
【0059】
ブレーキアクチュエータ13は、車両の減速手段の一例であるブレーキ(図不示)を駆動させるためのアクチュエータであり、コントローラ10によって制御することが可能である。基本的にブレーキはドライバーがブレーキペダルを踏み込むことによって制御されるが、ブレーキアクチュエータ13を介してコントローラ10によっても制御することが可能である。つまり、コントローラ10はブレーキアクチュエータ13の操作を介して車両の走行支援を実現する。このような車両の走行支援は、コントローラ10によって指定された所定の制御量及び制御タイミングでブレーキアクチュエータ13を駆動させることによって、好適に実行することができる。
【0060】
アクセルアクチュエータ14は、車両の動力源の一例であるエンジン(図不示)の出力量を制御するためのアクチュエータであり、コントローラ10によって制御することが可能である。基本的にエンジンの出力量はドライバーがアクセルペダルを踏み込むことによって制御されるが(アクセルペダルの踏み込み具合によって、例えば、エンジンの吸気量を調整し、出力を制御することができる)、アクセルアクチュエータ14を介してコントローラ10によっても制御することが可能である。つまり、コントローラ10はアクセルアクチュエータ14の操作を介して車両の走行支援を実現することができる。
【0061】
スピーカ15は、走行支援システム1によって行われる走行支援内容を、ドライバーに報知する装置である。後述するように、走行支援システム1によって実行される走行支援がドライバーの意思と完全に一致すれば問題はないが、多少のずれがあったとしても、実際に走行支援が行われるに先じて予めドライバーに支援内容を報知することによって、ドライバーの心理的な不安を軽減することができる。
<実施形態の動作>
以下、適宜図面を参照し、本実施形態の動作について説明する。
<学習制御>
始めに、図2を参照して、走行支援システム1により実行される学習制御について説明する。学習制御は、交差点においてドライバーによって行われる車両の減速行動を走行パターンとして学習するための制御である。図2は、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。
【0062】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、学習制御の実行に必要な交差点情報が取得可能か否かを判断する(ステップS101)。具体的には、例えば、道路線形情報、即ち当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、見通し等に関するパラメータ、停止線から交差点の中央部分までの距離、並びに道路線形情報等を発信するためのインフラ設置位置から車両までの距離等をコントローラ10が把握可能か否かによって判断するとよい。尚、前方を走行する他の車両が存在する場合には、当該他の車両との車間距離が一定値以上確保されている否か、或いは車両の速度が一定値以上であるか否か等の学習制御を的確に行うための各種条件を総合的に考慮することによって行ってもよい。
【0063】
交差点情報が取得不能であると判断された場合(ステップS101:NO)、コントローラ10は学習制御の実行に必要な情報を得ることができなので、学習制御の実行を断念し、処理を終了する(END)。
【0064】
一方、交差点情報を取得可能であると判断された場合(ステップS101:YES)、コントローラ10は、当該交差点に信号機が備えられているか否かを判断する(ステップS102)。具体的には、前方カメラ3によって取得した画像を解析することによって当該画像中に信号機を認識することが可能であるか否か、交差点にインフラ設備としての路側機が設置されている場合には、当該路側機から発信される信号機情報をインフラ通信装置5によって受信可能であるか否か、或いはメモリ等の記憶手段(図不示)に記録された過去の走行データを参照することによって経験的に当該交差点における信号機の有無を判断することが可能であるか否か等を総合的に考慮することによって、信号機の有無が判断される。
【0065】
当該交差点に信号機が備えられていないと判断された場合(ステップS102:NO)、コントローラ10は車両が減速行動をとったか否かを判断する(ステップS104)。この判断は、車速センサ6を介してコントローラ10が車両の速度を把握することによって行われる。例えば、車両の速度が所定の時間或いは走行距離の間に、予め規定された範囲を超えて減少したか否かによって判断するとよい。
【0066】
車両が減速行動をとっていない場合(ステップS104:NO)、学習すべき対象(即ち車両の減速行動)が存在しないため、コントローラ10は処理をステップS101に戻し、再びステップS101から順次上述の処理を繰り返す。
【0067】
一方、車両が減速行動をとった場合(ステップS104:NO)、コントローラ10は、当該交差点における車両の減速行動を交差点情報と関連付けることによって、走行パターンとして学習する(ステップS105)。つまり、当該交差点における車両の減速行動を、当該交差点の交差点情報に対応付けて走行パターンとして、メモリ等の記憶手段に記録する。このように学習された走行パターンは、本発明に係る「学習済み走行パターン」の一例であり、後述する制御手段によって適宜参照されることによって、好適な走行支援を実行することができる。
【0068】
ここで、学習される車両の減速動向は、例えば、車両の速度、位置、加速度、それらの経時変化及びジャーク等の種々のパラメータによって規定されるとよい。また、交差点情報は、例えば、当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等に関するパラメータなどを含む道路線形情報によって規定されるとよい。尚、交差点の道路線形情報の一例である交差点形状は、例えば、停止線から交差点の中央部分までの距離、道路線形情報等を発信するためのインフラ設置位置から車両までの距離等によって規定されてもよい。
【0069】
尚、本実施形態に係る学習制御では、減速行動をとった場合に走行パターンとして学習を行うように制御されるが、減速行動をとらない場合であっても交差点を通過する際の車両の挙動を走行パターンとして学習するように制御を行ってもよい。
【0070】
ステップS102において当該交差点に信号機が備えられていると判断された場合(ステップS102:YES)、コントローラ10は、当該交差点に備えられた信号機の点灯状態に関する情報(以下、適宜「信号機情報」という)が把握可能か否かを判断する(ステップS103)。具体的には、前方カメラ3によって取得した画像を解析することによって当該画像中に含まれる信号機の点灯状態を認識することが可能であるか否か、交差点にインフラ設備としての路側機が設置されている場合には、当該路側機から発信される信号機情報をインフラ通信装置5によって受信可能することによって取得することが可能であるか否か、或いはメモリ等の記憶手段(図不示)に記録された過去の走行データを参照することによって経験的に当該交差点における信号機情報を取得することが可能であるか否か等を総合的に考慮することによって、信号機情報の取得の可否が判断される。
【0071】
尚、信号機情報は、点灯している灯器の種類及び点灯内容を含む情報であり、例えば、点灯している灯色、信号機に矢灯器や歩行者用信号が備えられている場合にはその表示の有無及び表示方向の如何、及び赤信号が点灯するまでの残り時間等が含まれてもよい。
【0072】
信号機情報を把握することができない場合(ステップS103:NO)、コントローラ10は、上述のステップS104を実行し、当該交差点における車両の減速行動を、当該交差点の交差点情報に対応付けて走行パターンとして、メモリ等の記憶手段に記録する(ステップS105)。
【0073】
一方、信号機情報を把握可能である場合(ステップS103:YES)、ステップS104と同様に、コントローラ10は車両が減速行動をとったか否かを判断する(ステップS106)。
【0074】
ここで、車両が減速行動をとっていない場合(ステップS106:NO)、学習すべき対象(即ち車両の減速行動)が存在しないため、コントローラ10は処理をステップS101に戻し、再びステップS101から順次上述の処理を繰り返す。
【0075】
一方、車両が減速行動をとった場合(ステップS106:NO)、当該交差点における車両の走行状態を、交差点情報及び信号機情報と関連付けることによって走行パターンとして学習する(ステップS107)。つまり、上述のステップS105とは異なり、車両の走行状態は、交差点情報に加えて、信号機情報とも関連付けられて走行パターンとしてメモリ等の記憶手段(図不示)に記録されることとなる。このように学習された走行パターンは、本発明に係る「学習済み走行パターン」の一例であり、後述する制御手段によって適宜参照されることによって、好適な走行支援が実行される。
【0076】
ステップS105及びS107において走行パターンの学習が行われた後、コントローラ10は、車両が交差点を通過したか否かを判断する(ステップS108)。ここで、車両が交差点を通過していないと判断された場合(ステップS108:NO)、コントローラ10は処理をステップS101に戻し、再び学習制御を実行する。一方、車両が交差点を通過したと判断された場合(ステップS108:YES)、コントローラ10は学習処理が完了したものとして学習制御を終了する(END)。
【0077】
尚、このような学習制御は、上述のような減速挙動に関して実行される他に、ドライバーのステアリング操作やシフト操作等に適用してもよい。
【0078】
以上説明したように走行支援システム1によって実行される学習制御では、交差点において車両がとる減速行動を走行パターンとして学習することができる。
<支援制御>
続いて、図3を参照し、走行支援システム1により実行される支援制御について説明する。支援制御は、上述の学習制御において学習された走行パターンに基づいて車両の走行状態を支援することにより、ドライバーの運転負担を軽減することができる。図3は、本実施形態に係る走行支援システム1の実行する支援制御のフローチャート図である。
【0079】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、支援制御の実行に必要な交差点情報を取得することが可能であるか否かを判断する(ステップS201)。具体的には、例えば、道路線形情報、即ち当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、見通し等に関するパラメータ、停止線から交差点の中央部分までの距離、並びに道路線形情報等を発信するためのインフラ設置位置から車両までの距離等をコントローラ10が把握可能か否かによって判断するとよい。尚、前方を走行している他の車両が存在する場合には、当該他の車両との車間距離が一定値以上であるか否か、或いは当該車両の速度が一定範囲内であるか否か等の、当該支援制御を好適に行うための条件を総合的に考慮することによって行われてもよい。
【0080】
交差点情報が取得不能であると判断された場合(ステップS201:NO)、コントローラ10は、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、デフォルト走行パターンを選択する(ステップ202)。ここで、デフォルト走行パターンは、上述の学習制御によって学習される走行パターンではなく、予めメモリ等の記憶手段に記録されているものである。デフォルト走行パターンは、例えば、安全且つ確実に車両を減速可能な車両の走行パターンとして、予め理論的、実験的、経験的及びシミュレーション的な手法によって規定するとよい。
【0081】
一方、交差点情報を取得可能であると判断された場合(ステップS201:YES)、コントローラ10は、メモリ等の記憶手段に記録された学習済み走行パターンのなかに、当該交差点と同一又は類似の交差点情報を有する走行パターンがあるか否かを判断する(ステップS203)。具体的には、コントローラ10は、学習済み走行パターンが記憶されているメモリ等の記憶手段を参照し、当該交差点と同一又は類似の交差点情報に関連付けられて記録された学習済みパターンがないか検索を行う。
【0082】
学習済み走行パターンのなかに当該交差点と同一又は類似の交差点情報を有する走行パターンがない場合(ステップS203:NO)、コントローラ10は、メモリ等の記憶手段に記録された学習済み走行パターンの中から、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、最大の減速量を有すると共に、減速タイミングが最も早い学習済み走行パターンを選択する(ステップS204)。つまり、コントローラ10は過去に学習された複数の学習済みの減速パターンの中から、最も緩やかな減速度で安全に停止することのできる走行パターンを選択する。
【0083】
一方、学習済み走行パターンのなかに交差点情報が同一又は類似の走行パターンがある場合(ステップS203:NO)、コントローラ10は、ステップS102(図2を参照)と同様に、当該交差点に信号機が備えられているか否かを判断する(ステップS205)。
【0084】
当該交差点に信号機が備えられていない場合(ステップS205:NO)、コントローラ10は、上述のステップS204を実行し、メモリ等の記憶手段に記録された学習済み走行パターンの中から、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、最大の減速量を有すると共に、減速タイミングが最も早い学習済み走行パターンを選択する(ステップS204)。
【0085】
一方、当該交差点に信号機が備えられている場合(ステップS205:YES)、コントローラ10は、ステップS203において選択された学習済み走行パターンの中に、信号機の状態毎に走行パターンが学習されている走行パターンが含まれているか否かを判断する(ステップS206)。信号機は一般的に、時間の経過と共にその表示状態が変化するが、ここでの「信号機の状態毎」とは、時間の経過と共に変化する信号機の表示状態の夫々についてという意味である。例えば、赤色、黄色及び青色に対応する灯器が夫々点灯した状態や、矢印を表示可能な矢灯器を備える信号機の場合には、当該矢灯器が表示された状態について夫々学習がされているか否かが判断される。
【0086】
信号機状態毎に学習がされていない場合(ステップS206:NO)、コントローラ10はステップS204を実行し、メモリ等の記憶手段に記録された学習済み走行パターンの中から、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、最大の減速量を有すると共に、減速タイミングが最も早い学習済み走行パターンを選択する(ステップS204)。
【0087】
一方、信号機状態毎に学習がされている場合(ステップS206:YES)、コントローラ10は、当該交差点における信号状態と同一又は類似の信号状態に対応する走行パターンを学習済み走行パターンの中から選択する(ステップS207)。
【0088】
上述のステップS202、S204及びS207において、夫々の条件に応じた好適な学習済み走行パターンが選択されると、コントローラ10は、減速支援実施条件が成立したか否かを判断する(ステップS208)。ここで、減速支援実施条件とは、例えば、ドライバーがアクセルペダルを緩めたり、ブレーキペダルを踏み込むことによってコントローラ10が減速行動を行おうとするドライバーの意思を認識したか否か、或いは、信号機の表示状態が赤色や黄色に切り替わるなどすることにより車両に減速行動が要求されるか否かを総合的に含む条件である。
【0089】
減速支援実施条件が不成立である場合(ステップS208:NO)、コントローラ10は処理をステップS201に戻し、上述の各ステップを繰り返す。一方、減速支援実施条件が成立する場合(ステップS208:YES)、コントローラ10はステップS202、S204及びS207において選択された学習済み走行パターンに基づいて、ブレーキアクチュエータ13及びアクセルアクチュエータ14を制御し、車両の走行支援を実行する(ステップS209)。このような走行支援は、車両の置かれている条件にマッチングした学習済み走行パターンに基づいて行われるため、車両の挙動はユーザの意思に沿ったものになる。コントローラ10は、走行支援を実行した後、支援制御を終了する(END)。
【0090】
尚、このような支援制御は、上述のような減速挙動に関して実行される他に、ドライバーのステアリング操作やシフト操作等にも適用してもよい。
<信号機状態の推定制御>
上述の実施形態では、例えば、ステップS103(図2参照)において、信号機情報を把握することができない場合は、信号機情報を把握できる場合と処理を分けて実行している。但し、以下に説明する推定制御を実行することによって、信号機情報を把握することができない場合であっても、車両又はドライバーの減速挙動から信号機情報を推定することによって、実質的に信号機情報を把握できる場合と同様に扱ってもよい。
【0091】
例えば、あるタイミングで減速行動が開始された場合(例えば、コントローラ10がアクセルペダルの踏み込みが緩められた場合や、ブレーキペダルが踏み込まれことを検知した場合)、交差点の停止線から当該車両までの残り距離が所定の値より大きいか否かを判断することによって、信号機情報を推定してもよい。具体的には、当該残り距離が所定の値より大きい場合に、信号機の灯色を赤色であると推定し、当該残り距離が所定の値より小さい場合には、コントローラ10は、信号機の灯色が青色であると推定すればよい。つまり、早いタイミングで減速行動を開始した場合、ドライバーが信号機の赤色表示を認識することによって減速行動を行ったものと考えられるので、コントローラ10は信号機の表示状態を赤色であると推定することができる。一方、遅いタイミングで減速行動を開始した場合、当初は信号機の灯色が青色であったが、後になって赤色又は黄色に切り替わったためにドライバーが急に減速行動を行ったものと考えられるので、当初の信号機の表示状態が青色だったものと推定することができる。尚、この場合、信号機情報を推定するための条件として、当該車両の前方に他の走行車両が存在する場合には、当該他の走行車両との車間距離が一定値以上であることを追加してもよい。
【0092】
また、コントローラ10によって、ドライバーがアクセルペダルのオン及びオフの動作を繰り返したことが検知された場合(ブレーキペダルについても同様)、信号機の点灯状態が黄色信号或いは歩行者優先を意味する信号機の点滅状態であると推定してもよい。
【0093】
また、交差点の特定の位置における車両の速度が、所定値よりも大きい場合には信号機が青色であると推定してもよい。
【0094】
また、ドライバーがシフト操作によりギアをシフトアップした場合には、信号機が青信号であると推定し、一方シフトダウンした場合には赤信号であると推定してもよい。
【0095】
このように信号機の表示状態を推定することによって、信号機情報を把握することができない場合であっても、車両又はドライバーの減速挙動から信号機情報を推定することによって、実質的に信号機情報を把握することで、より広い条件下で上述の学習制御及び支援制御を実行することが可能となる。その結果、より広い走行状態においてドライバーの運転を支援可能な走行支援システムを実現することができる。
<第2実施形態>
本実施形態では、コントローラ10が車両の減速行動の開始時点における信号機の灯色を把握することにより、交差点において車両が減速行動をとった場合に、当該減速行動が信号機の表示に基づいて行われたものであるか、或いはその他の要因に基づいて行われたものであるかを分類して走行パターンを学習する点において、上述の第1実施形態と異なる。尚、本実施形態における支援制御及び推定制御は、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略し、学習制御に関して詳細に説明することとする。
【0096】
図4を参照しながら、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御についてステップ毎に説明する。図4は、第2実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。尚、上述の第1実施形態と共通するステップについては、共通の符号を付し、適宜説明を省略することとする。
【0097】
信号機情報を把握可能である場合(ステップS103:YES)、ステップS104と同様に、コントローラ10は車両が減速行動をとったか否かを判断する(ステップS106)。そして、車両が減速行動をとった場合(ステップS106:YES)、コントローラ10は当該交差点における車両の減速行動を走行パターンとしてメモリ等の記憶手段に記録する(ステップS301)。
【0098】
減速行動が記録されると、コントローラ10は車両の減速行動が終了したか否か、或いは車両が交差点を通過したか否かを判断する(ステップS302)。ここで、車両の減速行動がまだ終了していない、或いは車両がまだ交差点を通過していない場合には(ステップS302:NO)、コントローラ10は再びステップS301を実行する。一方、車両の減速行動が終了、或いは車両が交差点を通過した場合には(ステップS302:YES)、コントローラ10は当該ループ処理を終了する(ステップS303)。このようにして、ステップS301における減速行動の記録は、減速行動が終了するか或いは交差点を通過するまで繰り返し実行される。
【0099】
続いて、コントローラ10は、減速行動が開始された際の信号機の灯色に基づいて、ステップS301において記録された走行パターンを学習する。
【0100】
まず、コントローラ10は、車両の減速行動が開始された際の信号灯色が赤色であるか否かを判断する(ステップS303)。車両の減速開始時の信号灯色が赤色である場合(ステップS303:YES)、コントローラ10は、ステップS301において記録された走行パターンを赤色の信号灯色に対応する走行パターンとして分類する(ステップS304)。
【0101】
一方、車両の減速行動が開始された際の信号灯色が赤色でない場合(ステップS303:NO)、コントローラ10は、車両の減速行動が開始された際の信号灯色が黄色であるか否かを判断する(ステップS305)。車両の減速行動が開始された際の信号灯色が黄色である場合(ステップS305:YES)、コントローラ10は、ステップS301において記録された走行パターンを黄色の信号灯色に対応する走行パターンとして分類する(ステップS306)。
【0102】
一方、車両の減速行動が開始された際の信号灯色が黄色でない場合(ステップS305:NO)、コントローラ10は、当該減速行動を信号機以外の要因に伴う走行パターンであるとして分類して、メモリ等の記憶手段に記録する(ステップS307)。つまり、信号機の灯色が赤色でもなく、且つ黄色でもない場合は、典型的には信号機の灯色は青色と考えられる。このような場合に行われる減速行動は、例えばドライバーが交差点に歩行者がいたり、或いは前方の走行車両との車間距離が少ない等の信号機以外の要因によって行われたものと考えられる。
【0103】
上述のステップS105、S304、S306及びS307において分類処理が完了すると、コントローラ10は学習制御を終了する(END)。
【0104】
このように学習された走行パターン(即ち学習済み走行パターン)は、第1実施形態と同様の支援手段によって適宜参照されることにより、車両の走行支援に反映される。本実施形態では特に、学習された走行パターンは、信号機の点灯状態に起因して行われた減速行動であるか否かに基づいて分類されているため、信号機以外の要因によってドライバーが減速行動を行う際にも適切な走行支援を行うことが可能となる。言い換えると、仮に信号機の表示状態が切り替わるタイミング(即ち信号機の表示サイクル)が不明な場合であっても、信号機以外の要因による走行パターンを参照することによって、適切な走行支援を実現することができる。
<第3実施形態>
本実施形態では、車両が交差点から所定の距離だけ離れた地点に位置する際の信号機の点灯状態に基づいて走行パターンを分類して学習制御が実行される点において、上述の各実施形態と異なる。つまり、上述の他の実施形態では、減速行動が開始された時点における信号機の表示状態に基づいて走行パターンの学習が行われていたが、本実施形態では交差点から離れた地点において前もって取得した信号機情報に基づいて走行パターンの学習が行われる。尚、本実施形態における支援制御及び推定制御は、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
本実施形態に係る走行支援システム1は、交差点から所定の距離だけ離れた地点において信号機の点灯状態を把握するために、交差点にインフラ設備として設置された路側機から発信された交差点情報(以下、適宜「ビーコン」という)を、インフラ通信手段5によって受信する。
【0106】
図5を参照しながら、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御についてステップ毎に説明する。図5は、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。尚、上述の各種実施形態と共通するステップについては、共通の符号を付し、適宜説明を省略することとする。
【0107】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、学習制御の実行に必要な交差点情報が取得可能か否かを判断する(ステップS101)。交差点情報の取得が不可能である場合(ステップS101:NO)、コントローラ10は、学習処理を終了する(END)。
【0108】
一方、交差点情報の取得が可能である場合(ステップS101:YES)、コントローラ10は更に、学習制御の実行に必要な信号機情報の把握が可能であるか否か判断する(ステップS103)。信号機情報の把握が不可能である場合(ステップS103:NO)、学習制御を行うことができないとして、コントローラ10は学習制御の処理を終了する(END)。
【0109】
一方、信号機情報の把握が可能な場合(ステップS103:YES)、コントローラ10は、ビーコンを受信した際の信号機の灯色を、メモリ等の記録手段(図不示)に記録する(ステップS401)。この場合、コントローラ10は更に、記録されたビーコン受信時の灯色が赤色か否かを判断する(ステップS402)。
【0110】
記録された信号灯色が赤色でない場合(ステップS402:NO)、コントローラ10は当該信号機が切替るタイミングを記録する(ステップS403)。つまり、ビーコンを受信した時点では、信号機の灯色が赤色でないにしても、車両が交差点に差し掛かる際に信号機の灯色が黄色若しくは赤色に切り替わることによって、ドライバーが減速行動をとることが考えられる。ステップS403では、このように信号機の灯色がビーコンの受信時から切替るタイミングを記録する。
【0111】
一方、ステップS403の処理終了後、及び、ステップS401において記録された信号灯色が赤色である場合(ステップS402:YES)、コントローラ10は車両の減速行動が開始されたか否かを判断する(ステップS404)。つまり、交差点において減速行動がとられる要因として、交差点の手前でビーコンを受信した時に信号機の灯色が赤色であって(即ち、ステップS402:YESの場合を経てステップS404が実行された場合)、車両が交差点に差し掛かってもなお、信号機の灯色が赤色のままであった場合が考えられる。また、ビーコンを受信した時点では信号機の灯色が赤色でないものの、車両が交差点に差し掛かる際に信号機の灯色が黄色若しくは赤色に切り替わることによって、ドライバーが減速行動をとる場合(即ち、ステップS402:NOの場合を経てステップS404が実行される場合)が考えられる。
【0112】
ここで、交差点において減速行動が開始された場合(ステップS404:YES)は、次に説明するステップS405において減速行動が走行パターンとして学習されるが、減速行動がとられなかった場合は(ステップS404:NO)、学習すべき減速行動が存在しないため、ステップ405のように学習を行うことはできない。この場合、コントローラ10は、再度ステップS101を実行し、上述の処理を繰り返す。
【0113】
ステップS404において車両の減速行動が開始されたと判断された場合(ステップS404:YES)、コントローラ10は当該減速行動をメモリ等の記憶手段に走行パターンとして記録する(ステップS405)。
【0114】
走行パターンが記録されると、コントローラ10は車両の減速行動が終了したか否か、又は車両が交差点を通過したか否かを判断する(ステップS406)。ここで、車両の減速行動がまだ終了していない、又は車両がまだ交差点を通過していない場合には(ステップS406:NO)、コントローラ10は再びステップS405を実行する。一方、車両の減速行動が終了、又は車両が交差点を通過した場合には(ステップS406:YES)、コントローラ10は当該ループ処理を終了する(ステップS407)。このようにステップS405における減速行動の記録は、減速行動が終了するか又は車両が交差点を通過するまで走行パターンの記録が繰り返し実行される。
【0115】
続いて、コントローラ10は、ビーコン受信時の信号灯色に基づいて、ステップS405において記録された走行パターンを分類することによって学習する。
【0116】
まず、コントローラ10は、ビーコン受信時の信号灯色が赤色であるか否かを判断する(ステップS407)。ビーコン受信時の信号灯色が赤色である場合(ステップS407:YES)、コントローラ10は、当該減速行動が、ビーコンを受信した時点において赤色だった信号機の灯色が、車両が減速行動を開始した時点(即ち、車両が交差点に接近した時点)までそのまま維持されていたために、ドライバーが交差点で車両を停止させるために行われたものとして学習する(ステップS408)。この場合、コントローラ10は、減速行動が開始された際の状況(例えば、車両の位置や速度等)を併せてメモリ等の記憶手段に記録するとよい。
【0117】
一方、ビーコン受信時の信号灯色が赤色でない場合(ステップS407:NO)、コントローラ10は、当該減速行動が、ビーコンを受信した時点では信号機の灯色が赤色でないものの、車両が交差点に差し掛かる際に信号機の灯色が黄色若しくは赤色に切り替わったために行われたものとして学習する(ステップS409)。この場合、コントローラ10は、信号機の灯色が赤色又は黄色に切り替わってから減速行動が開始されるまでに要した時間及び車両の走行距離等を併せてメモリ等の記憶手段に記録するとよい。
【0118】
上述のステップS4088及びS409において走行パターンの学習が完了すると、コントローラ10は学習制御を終了する(END)。
【0119】
このように学習された走行パターンは、第1実施形態と同様の支援手段によって適宜参照されることにより、車両の走行支援に反映される。本実施形態では特に、交差点から離れた地点において前もって取得した信号機情報に基づいて走行パターンの学習が行われるため、よりドライバーの感覚に近い走行支援が可能となる。つまり、ドライバーが信号機を備える交差点において減速行動を取る場合には、交差点に差し掛かる前に視覚的に得た信号機情報に基づいて減速行動を開始するタイミングや減速量を判断するため、このように、交差点から離れた地点において前もって取得した信号機情報に基づいた学習を行うことで、よりドライバーの感覚に近い走行パターンを取得することができる。
<第4実施形態>
本実施形態では、上述の第2及び第3実施形態における学習処理を組み合わせた学習処理を行う点において、上述の各実施形態と異なる。尚、本実施形態における支援制御及び推定制御は、上述の各実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0120】
図6を参照しながら、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御について説明する。図6は、第4実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。尚、上述の各種実施形態と共通するステップについては、共通の符号を付し、適宜説明を省略することとする。
【0121】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、学習制御の実行に必要な交差点情報が取得可能か否かを判断する(ステップS101)。交差点情報の取得が不可能である場合(ステップS101:NO)、コントローラ10は、学習処理を終了する(END)。
【0122】
一方、交差点情報の取得が可能である場合(ステップS101:YES)、コントローラ10は車両が減速行動をとったか否かを判断する(ステップS501)。ここで、車両が減速行動をとったか否かは、車速センサ6を介して取得される走行速度に基づいて行われる。例えば、車両の速度が所定の時間或いは走行距離の間に、予め規定された範囲を超えて減少したか否かによって判断されるとよい。
【0123】
車両が減速行動をとっていない場合(ステップS501:NO)、学習対象である減速行動が存在しないので、コントローラ10は処理をステップS101に戻し、再度当該交差点において学習制御の実行が可能か否かを判断する(ステップS101)。一方、車両が減速行動をとった場合(ステップS501:YES)、コントローラ10は減速行動が開始された際における信号灯色が赤色であるか否かを判断する(ステップS502)。
【0124】
減速行動が開始された際の信号灯色が赤色でない場合(ステップS502:NO)、コントローラ10は更に、減速行動が開始された際の信号灯色が黄色であるか否かを判断する(ステップS503)。ここで、信号灯色が黄色である場合(ステップS503:YES)、コントローラ10は、当該減速行動はドライバーが信号灯色が黄色になったことを認識することによって行われたものであると判断し、信号機の灯色が黄色に切り替わってから当該減速行動が開始されるまでに要した時間を記録する(ステップS504)。一方、減速開始時点の信号灯色が黄色でない場合(ステップS503:NO)、コントローラ10は、学習処理を終了する(END)。
【0125】
一方、減速行動が開始された際の信号灯色が赤色である場合(ステップS502:YES)、コントローラ10は更にビーコンを受信した際の信号灯色が赤色であるか否かを判断する(ステップS505)。ビーコンを受信した際の信号灯色が赤色でない場合(ステップS505:NO)、コントローラ10は、当該減速行動は車両がビーコンを受信した時には信号の灯色が青色だったが、その後信号機の灯色が赤色に切り替わったために行われたものと判断し、信号機の灯色が赤色に切り替わった時点から減速行動が開始されるまでに要した時間を記録する(ステップS506)。
【0126】
ビーコンを受信した際の信号灯色が赤色である場合(ステップS505:YES)、コントローラ10は、ビーコンを受信した時点において赤色だった信号機の灯色が、車両が減速行動を開始した時点(即ち、車両が交差点に接近した時点)までそのまま維持されていたために、ドライバーが交差点で車両を停止させるために行われたものと判断し、ビーコンを受信したときから減速行動が開始されるまでに要した時間を記録する(ステップS507)。
【0127】
上述のステップS504、S506及びS507において、夫々の条件に対する減速行動が開始されたタイミングが記録されると、コントローラ10は、交差点から当該車両までの距離及び当該車両の速度等を算出する(ステップS508)。その後、コントローラ10は、ステップS504、S506及びS507において記録された内容(即ち減速行動が開始されるタイミング)と、ステップS508において記録された内容(即ち、車両の位置から交差点までの距離及び速度等)を対応付けて、メモリ等の記憶手段に走行パターンとして記録し(ステップS509)、学習処理を終了する(END)。
【0128】
以上説明したように、本実施形態において実行される学習制御では、ビーコン受信時及び減速行動の開始時においてそれぞれ信号灯色を判断することによって、信号機の表示が切り替わることを考慮しつつ、信号機の表示に基づいて行われた減速行動であるか否かによっても分類して走行パターンを学習することができる。その結果、よりドライバーの意図に近い分類制御をすることができるので、ドライバーにとって違和感の少ない走行支援を実現することができる。
【0129】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の運転支援装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、例えば、交差点において車両を安全に停止させるための車両の運転支援装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…走行支援システム1、2…GPS受信機、3…前方カメラ、4…ミリ波レーダ、5…インフラ通信装置、5…車速センサ、7…ディスプレイ、8…ACCスイッチ、10…コントローラ、11…地図情報データベース、12…カーナビゲーション、13…ブレーキアクチュエータ、14…アクセルアクチュエータ、15…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点における車両の走行状態を支援する車両の走行支援システムであって、
前記車両の前記走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出手段と、
前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習する学習手段と、
前記検出された交差点情報が、前記学習手段によって過去に学習された前記走行パターンである学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両の走行支援システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出された交差点情報が、前記学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似でない場合に、予め用意されたデフォルト走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行支援システム。
【請求項3】
前記車両に対するドライバーの操作に関する情報である操作情報を検出する操作情報検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記ドライバーの操作を支援するように前記車両の前記走行状態を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の走行支援システム。
【請求項4】
前記交差点に設置された信号機の点灯状態検出する信号機検出手段を更に備え、
前記学習手段は、前記検出された点灯状態を、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶することによって学習し、
前記制御手段は、前記検出された点灯状態が、前記学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似である場合に、前記学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の走行支援システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検出された点灯状態が、前記学習済み走行パターンに含まれる点灯状態と同一又は類似でない場合に、前記学習済み走行パターンのうち、相対的に大きな減速量を有し、且つ、減速タイミングが相対的に早い走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行支援システム。
【請求項6】
前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、学習することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の走行支援システム。
【請求項7】
前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、前記車両が減速を開始した時点における信号機の点灯状態を、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶することによって学習することを特徴とする請求項4又は5に記載の車両の走行支援システム。
【請求項8】
前記交差点に設置され、前記信号機情報を発信する信号機情報発信手段を更に備え、
前記信号機情報検出手段は、前記信号機情報発信手段から発信された前記信号機情報を受信することにより前記交差点から離れた位置において前記信号機情報を検出することを特徴とする請求項7に記載の車両の走行支援システム。
【請求項9】
前記学習手段は、前記車両が前記交差点において減速行動を行った場合に、前記車両が減速を開始した時点における前記信号機の前記点灯状態と前記交差点から離れた位置において検出した前記信号機情報とを、前記検出された走行状態及び交差点情報に関連付けて、前記走行パターンとして記憶することによって学習することを特徴とする請求項8に記載の車両の走行支援システム。
【請求項10】
交差点における車両の走行状態を支援する車両の走行支援方法であって、
前記車両の前記走行状態を検出する走行状態検出工程と、
前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出工程と、
前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報に関連付けて、走行パターンとして記憶することによって学習する学習工程と、
前記検出された交差点情報が、前記学習工程によって過去に学習された前記走行パターンである学習済み走行パターンに含まれる交差点情報と同一又は類似である場合に、当該学習済み走行パターンに従って、前記車両の前記走行状態を制御する制御工程と
を備えることを特徴とする車両の走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−70356(P2011−70356A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220214(P2009−220214)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】