説明

車両の車体構造

【課題】簡単な構成で車体後部の剛性を確保することができる車両の車体構造を提供する。
【解決手段】荷室フロア22に、リアシートフロア部21と同一レベルの高さで連続する凹部23と、凹部23の後方に凹設するスペアタイヤパン25とを形成するとともに、これらの間に、凹部23の後部壁部23aとスペアタイヤパン25の前部壁部25aとを前後壁部とする断面略ハット形状をなすリアクォータクロスメンバ24を一体形成し、当該リアクォータクロスメンバ24をリアクォータピラー33の下部と荷重伝達可能に連結する。これにより、部品点数の増加等を招くことなく、簡単な構成で車体後部の剛性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ワゴンタイプの車両等に好適な車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リアゲートを装備するワゴンタイプの車両等では、リアゲート用開口部が大きいため、セダンタイプの車両と比較して車体のねじり剛性が低くなりやすい。
【0003】
そこで、車体後部の剛性を確保するため、例えば、特許文献1には、リアルーフボウの左右両端を、それぞれ左右のクォータピラー(リアクォータピラー)の上端部に連結するとともに、荷室を構成するリアフロアパネルの下面に断面略逆ハット状のリアクロスメンバを設け、このリアクロスメンバの両端部に、クォータピラーの下部を、ホイールハウスメンバを介して連結することにより、略環状の骨格である強度部材を構成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−34916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の技術において、リアクロスメンバは、別部材としてリアフロアパネルに固設されるため、構造を複雑化し、車体重量の増加や組付工数の増大等を招く虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で車体後部の剛性を確保することができる車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2列目シートが設置されるシートフロア部の後方に、当該シートフロア部よりも主面部が高く設定された荷室フロアが連設する車両の車体構造であって、上記シートフロア部と同一レベルの高さで連続する凹部と、上記凹部の後方に凹設されたスペアタイヤパンと、上記凹部の後部壁面と上記スペアタイヤパンの前部壁面とを前後壁面として兼用するクロスメンバと、を上記荷室フロアに一体形成し、上記クロスメンバの端部にリアクォータピラーの下部を荷重伝達可能に連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の車体構造によれば、簡単な構成で車体後部の剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はシートの配列構造を示す説明図、図2は車体の後部フロア構造を示す斜視図、図3,4はシートとフロアパネル及び燃料タンクの関係を示す説明図、図5は車体後部におけるピラーからの荷重伝達経路を示す説明図である。
【0009】
図1において符号1は車両を示し、本実施形態においては、例えば、ワゴンタイプの車両を示す。この車両1の車室2内には、例えば、左右一対の1列目シート5と、3人掛けの2列目シート6とが前後に配設され、さらに、2列目シート6の後方に設定された荷室3内に、例えば、エマージェンシ的な用途を目的とした左右一対の3列目シート7が配設されている。
【0010】
図3に示すように、本実施形態において、各シート5〜7が設置されるフロアパネルは、主として、車室2内の前部に配設されるフロントフロアパネル10と、このフロントフロアパネル10の後部に連設するリアフロアパネル20とで分割形成されている。
【0011】
フロントフロアパネル10には、1列目シート5を設置するためのフロントシートフロア部12が設定され、このフロントシートフロア部12の前方には、1列目シート5に着座した乗員のための足元スペース11が設定されている。
【0012】
ここで、1列目シート5は、シートクッション5aとシートバック5bとを有して構成され、シートクッション5aがスライド機構5cを介してフロントシートフロア部12に取り付けられている。そして、1列目シート5は、スライド機構5cを介して支持されることにより、車体前後方向への移動が可能となっている。
【0013】
また、フロントフロアパネル10において、フロントシートフロア部12の後方には、2列目シート6に着座した乗員のための足元スペース13が設定され、さらに、足元スペース13の後方には、車体後方に傾斜するキックアップ部14が形成されている。
【0014】
そして、キックアップ部14の上端部にリアフロアパネル20の前端部が連結されることにより、リアフロアパネル20は、フロントフロアパネル10よりも相対的に高所に配設されている。
【0015】
リアフロアパネル20の前部には、2列目シート6を設置するためのリアシートフロア部21が設定され、このリアシートフロア部21の後方には、荷室フロア22が設定されている。
【0016】
ここで、2列目シート6は、シートクッション6aとシートバック6bとを有して構成され、シートクッション6aがスライド機構を介してリアシートフロア部21に取り付けられている。そして、2列目シート6は、スライド機構6cを介して支持されることにより、後述する凹部23を含む領域において、車体前後方向への移動が可能となっている。
【0017】
図2,3に示すように、荷室フロア22は、主面部22aがリアシートフロア部21よりも相対的に高所に設定された床面で構成されている。
【0018】
荷室フロア22の前部には、リアシートフロア部21と同一レベルの高さで連続する凹部23が凹設されている。また、荷室フロア22には、凹部23から所定間隔後方に離間した位置に、スペアタイヤ26を収容するためのスペアタイヤパン25が凹設されている。そして、これら凹部23とスペアタイヤパン25との間には、断面略ハット形状をなすリアクォータクロスメンバ24が形成されている。すなわち、本実施形態において、荷室フロア22には、リアフロアパネル20の折曲等により、凹部23の後部壁部23aとスペアタイヤパン25の前部壁部25aとを前後壁部として兼用するリアクォータクロスメンバ24が一体形成されている。
【0019】
また、リアクォータクロスメンバ24が荷室フロア22に一体形成されることにより、リアフロアパネル20の下部には、リアシートフロア部21の下部からリアクォータクロスメンバ24の下部にかけて連続する一連の空間部が形成されており、この空間部が燃料タンク28を収容するためのタンク収容室27として設定されている。
【0020】
図3に示すように、タンク収容室27に収容される燃料タンク28は、その上面形状がリアフロアパネル20の凹凸形状に沿って形成されており、これにより、燃料タンク28の後部には上方に突出する空気室28aが形成されている。すなわち、本実施形態において、燃料タンク28の後部にはフロートバルブ等を収容する空気室28aが突出形成されており、この空気室28aが、リアフロアパネル20の下部において他の領域よりも上方に突出した内部空間を有するリアクォータクロスメンバ24の内部に収容されている。
【0021】
また、図2,4に示すように、リアフロアパネル20の側部には、リアエプロンパネル30が接続され、このリアエプロンパネル30に形成されたホイールハウスメンバ31に、リアクォータクロスメンバ24の端部が荷重伝達可能に連設されている。また、ホイールハウスメンバ31の上部には、リアクォータピラー33のインナパネル33aが一体形成されており、これにより、リアクォータピラー33とリアクォータクロスメンバ24との間で荷重伝達可能となっている。すなわち、図5にハッチングを付して示すように、リアクォータピラー33の下部は、ホイールハウスメンバ31を介してリアクォータクロスメンバ24の端部に連結され、これにより、車体後部に環状の骨格構造が構成されている。
【0022】
また、本実施形態において、リアクォータクロスメンバ24は、荷室3内に3列目シート7を設置するためのシートフロア部としての機能を有する。3列目シート7は、シートクッション7aとシートバック7bとを有して構成され、シートクッション7aが図示しないブラケットを介してリアクォータクロスメンバ24に固設されている。
【0023】
なお、図3中の符号35は荷室3内においてリアフロアパネル20の上方に配設されるフロアボードを示し、図中に一点鎖線で示すように、シートバック7bは、前側への倒伏時にフロアボード35と面一となるよう設定されている。
【0024】
このような実施形態によれば、荷室フロア22に、リアシートフロア部21と同一レベルの高さで連続する凹部23と、凹部23の後方に凹設するスペアタイヤパン25とを形成するとともに、これらの間に、凹部23の後部壁部23aとスペアタイヤパン25の前部壁部25aとを前後壁部とする断面略ハット形状をなすリアクォータクロスメンバ24を一体形成することにより、リアフロアパネル20の下部に、リアシートフロア部21の下部からリアクォータクロスメンバ24の下部にかけての広域に連続するタンク収容室27を形成することができ、燃料タンク28の有効容量等を犠牲にすることなく、荷室3内を必要に応じて乗員スペースとして有効利用することができる。
【0025】
すなわち、荷室フロア22にリアクォータクロスメンバ24を一体形成することにより、タンク収容室27をリアクォータクロスメンバ24の下部まで拡張することができ、燃料タンク28の容量を十分に確保することができる。
【0026】
しかも、上方に突出する燃料タンク28の空気室28aをリアクォータクロスメンバ24の内部空間に収容することができるので、2列目シート6の直後方の床面を空気室28aの収容部として突出させる必要がなく、リアシートフロア部21と同一レベルの高さで連続する凹部23を荷室フロア22に凹設することができ、3列目シート7に着座する乗員の足元スペースを十分な低位置に確保することができる。
【0027】
さらに、荷室3内において、凹部23の直後方には剛性部材であるリアクォータクロスメンバ24が形成されているため、このリアクォータクロスメンバ24を3列目シート7を設置するためのシートフロア部として有効利用することができる。
【0028】
また、スライド機構6cを介して2列目シート6をリアシートフロア部21に支持すれば、例えば、3列目シート7に乗員が着座していない場合に、凹部23を利用して2列目シート6を荷室3側へ後退させる等、2列目シート6の可動領域を拡大して豊富なシートアレンジを実現することができる。
【0029】
さらに、荷室フロア22にリアクォータクロスメンバ24を一体形成して、当該リアクォータクロスメンバ24をリアクォータピラー33の下部と荷重伝達可能に連結することにより、部品点数の増加等を招くことなく、簡単な構成で車体後部の剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】シートの配列構造を示す説明図
【図2】車体の後部フロア構造を示す斜視図
【図3】シートとフロアパネル及び燃料タンクの関係を示す説明図
【図4】シートとフロアパネル及び燃料タンクの関係を示す説明図
【図5】車体後部におけるピラーからの荷重伝達経路を示す説明図
【符号の説明】
【0031】
1 … 車両
2 … 車室
3 … 荷室
5 … 1列目シート
5a … シートクッション
5b … シートバック
5c … スライド機構
6 … 2列目シート
6a … シートクッション
6b … シートバック
6c … スライド機構
7 … 3列目シート
7a … シートクッション
7b … シートバック
10 … フロントフロアパネル
11 … 足元スペース
12 … フロントシートフロア部
13 … 足元スペース
14 … キックアップ部
20 … リアフロアパネル
21 … リアシートフロア部(シートフロア部)
22 … 荷室フロア
22a … 主面部
23 … 凹部
23a … 後部壁部
24 … リアクォータクロスメンバ(クロスメンバ)
25 … スペアタイヤパン
25a … 前部壁部
26 … スペアタイヤ
27 … タンク収容室
28 … 燃料タンク
28a … 空気室
30 … リアエプロンパネル
31 … ホイールハウスメンバ
33a … インナパネル
33 … リアクォータピラー
35 … フロアボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2列目シートが設置されるシートフロア部の後方に、当該シートフロア部よりも主面部が高く設定された荷室フロアが連設する車両の車体構造であって、
上記シートフロア部と同一レベルの高さで連続する凹部と、
上記凹部の後方に凹設されたスペアタイヤパンと、
上記凹部の後部壁面と上記スペアタイヤパンの前部壁面とを前後壁面として兼用するクロスメンバと、を上記荷室フロアに一体形成し、
上記クロスメンバの端部にリアクォータピラーの下部を荷重伝達可能に連結したことを特徴とする車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−149779(P2008−149779A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337354(P2006−337354)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】