説明

車両の高電圧ケーブルの配策構造

【課題】車両の高電圧ケーブルの配策構造において、高電圧ケーブルを車両中央に配索して、外力作用時の車体変形でも高電圧ケーブルの損傷を回避することにある。
【解決手段】高電圧ケーブル(32)は、燃料タンク(26)と上下に重なる後部フロアパネル(21)の上方位置であって、且つ車幅方向(Y)の中央部に車両(1)の前後中心軸(1C)に沿うよう配策されるとともに、燃料タンク(26)と重なる位置の前側位置にて後部フロアパネル(21)の標準面よりも車室(4)内に入り込みその前方では前部フロアパネル(20)の標準面よりも下方を通るように配策される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の高電圧ケーブルの配策構造に係り、特にハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池車(FCHEV)等を含めた広義の電気自動車(EV)に搭載される高電圧のエネルギシステムにおいて、バッテリと発電機・駆動モータあるいはインバータとの間を繋ぐように用いられる車両の高電圧ケーブルの配策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池車(FCHEV)等を含めた広義の電気自動車(EV)(以下「車両」という)においては、図6に示すように、車両101の後部にバッテリ(電池)125と燃料タンク126とを共に搭載するとともに、この燃料タンク126よりも車両後方且つ荷室105の後部フロアパネルの上方にバッテリ125を配置し、バッテリ125に接続され車両前部に向かって延出するよう高電圧ケーブル132を設けている。
この場合、エンジンルーム103内に配置したインバータ131と後席用シート座127の後方のバッテリ125とを繋ぐ高電圧ケーブル132の配策において、燃料タンク126が存在するために、燃料タンク126の前方付近で、一旦車両外側へ行き(室外ルート:R2)、その後、グロメット137で貫通して車室104内(室内ルート:R1)へ配策するレイアウトとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148850号公報
【特許文献2】特許第3838505号公報
【0004】
特許文献1に係る車両用バッテリの配管構造は、保持手段によって排気ホースを電力線に沿わせて保持し、排気ホースと電力線とを一体化して貫通孔から車室外に延出したものである。
特許文献2に係る車両の電力線の配設構造は、走行用モータとバッテリとの間を連絡する電力線を、小さい曲率で湾曲させることなくサイドメンバに沿って配設したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、図6に係る車両の高電圧ケーブルの配策構造においては、図7に示すように、車両外側を高電圧ケーブル132が通るため、側方からの外力作用時に、車体変形Pによって高電圧ケーブル132が損傷するおそれがあった。
また、燃料タンク126付近を高電圧ケーブル132が通るため、外力作用時の車体変形Pによる燃料タンク126と高電圧ケーブル132とが接触して高電圧ケーブル132が損傷するおそれがあり、改善が望まれていた。
【0006】
また、従来では、電気自動車の性能は、バッテリ開発の進捗に大きく依存しており、多くの電気自動車(EV)が、航続距離を確保するために、電気容量も体積重量も大型のバッテリ(パック)を搭載する必要がある。
いわゆるガソリン車やディーゼル車に匹敵する車両性能(例えば、1回に連続して走行できる航続距離)を確保しようとして、車両の大きさに関わらず、バッテリ類が大型化する傾向にある。
電気自動車(EV)では、そのような大型のバッテリを搭載するために、当初は、車体のフロアパネル下方の地面との間の空間が大きな車両をベースとしていた。その車両の後部下方に燃料タンクを備えている場合、バッテリは、燃料タンクの前方のフロアパネルの下方、あるいは、燃料タンクの上方のフロアパネルの上方に搭載することが行われている。この位置にバッテリを搭載することによって、大きな車両ならば、重量物であるバッテリを車両中心付近に据えることができ、車両の走行安定性や乗り心地を高く確保できるだけでなく、車両後部の荷室空間を縮小することがなく、使い勝手の点で車両の商品性を確保できるメリットがある。
また、高電圧エネルギシステムを車両中央付近のフロアパネルの下方にある程度集中させることができるとともに、高電圧ケーブルを配策する範囲も狭いため、車両への前後左右からの外力に対して高電圧エネルギシステムの保護が容易となることもあって、配慮すべき制約を減らすことができることもメリットである。
【0007】
しかしながら、採用できるベース車両が比較的大きな車両に限られてしまうか、専用設計の車体を設ける必要があるかの選択となり、いずれにしても、コンパクトな小型車両で低価格な車両を提供することが難しいという不都合があった。
また、そのことは、渋滞等の発車・停車が多く、少人数で、一回のトリップ距離が短い都市部での利用では、燃費経済性の観点から、車両としてはコンパクトな小型車両の方が向くと考えられることに対して矛盾している。
コンパクトな小型車両に搭載した例としては、例えば、上記の特許文献1等がある。これは、基本的に、エンジンをパワーユニットとするガソリン車に電動発電機やバッテリ等を付加して設け、駆動アシストしたり、回生発電したりすることを可能とするよう改造したハイブリッド車両である。
そして、この特許文献1に係る車両は、モータのみでの走行ができないので、車両としては電気自動車とはいえないが、ハイブリッド自動車ではある。バッテリ、発電機・駆動モータ、インバータ及び高電圧ケーブルを含む高電圧エネルギシステムと、エンジン及び燃料タンクとを搭載している。
改造車として、車体の変更は極めて少なく制限してあるものの、高電圧ケーブルに注目すれば、車両後部に搭載したバッテリ及びインバータから車両前部のエンジンまで燃料タンクの下方やフロアパネルの下方を外部に露出するようにして配策している。
とりわけ、燃料タンクの設置範囲を通る高電圧ケーブルの配策位置は、車幅方向中央ではあるものの、燃料タンク下方を通る配策となっている。極めて車両前後長の短いコミュータというべき小型車両であることもあって、直線的に簡素な取り回しとなっているが、保安上で必要な性能を確保している。
【0008】
また、コンパクトな小型車両をベースとして電気自動車(EV)を構成する場合、車両中央付近は乗員スペースの確保、快適性の確保に費やす比率が高くなる。
従って、大型のバッテリを搭載するには、荷室等の積載性や利便性といった付加価値を犠牲にして、車両後部に電気容量も体積重量も大型のバッテリを搭載することになる。
ところで、電気自動車(EV)がハイブリッド車両であり、揮発性の高い燃料(特にガソリンや軽油、アルコール混合燃料等の液体燃料)の燃料タンク及びそのパワーユニットヘの供給システム等を搭載している場合、それら燃料と電気の関わり合いに充分配慮する必要があり、特に激しい燃焼を誘発するような相互影響をできる限り与えないようにして、通常使用の範囲での安全性を確保するよう努める必要がある。
そして、車両後部に、電気容量も体積重量も大型のバッテリと燃料タンクとを共に搭載する場合、車両が外力によって損傷を受けるような場合であっても、できる限り燃料と電気の相互影響し合うことを避ける必要がある。即ち、電気を燃料から隔離し、漏電の可能性を極めて低くすることになる。
また、上記の特許文献1等では、インバータをも荷室に収容しているため、電流の流れを考慮しても、なるべく車室内を通さない方が好ましく、室外の配策であっても当然保護部材を備えることによって、破損することがないように必要な性能を確保していると言える。けれども、より一層の保護性の向上を図る構造を採ることが望ましい。
さらに、その一方で、バッテリに、それを充電する充電器を付設した場合、その充電器を使って充電を行う際の発熱が大きく、冷却するための工夫が必要になっていた。
【0009】
そこで、この発明の目的は、車両が外力によって大きく変形するような損傷を受けるような場合にも、できる限り高電圧ケーブルヘの影響を避け、燃料と電気の相互影響を避けること、高電圧ケーブル等の保護のための艤装部品を少なく保つこと、バッテリに繋がる高電圧ケーブルの敷設を利用してバッテリを充電する充電器を温度調節できる構造とした車両の高電圧ケーブルの配策構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車両後部にバッテリと燃料タンクとを共に搭載するとともに、前記燃料タンクよりも車両後方且つフロアパネルの上方に前記バッテリを配置し、前記バッテリに接続され車両前部に向かって延出するように高電圧ケーブルを設ける車両の高電圧ケーブルの配策構造において、前記高電圧ケーブルを、前記燃料タンクと上下に重なる前記フロアパネルの上方位置であって、且つ車幅方向中央部に車両の前後中心軸に沿うよう配策するとともに、前記燃料タンクと重なる位置の前側位置にて前記フロアパネルの標準面より車室内に入り込みその前方では前記フロアパネルの標準面よりも下方を通るように配策することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明の車両の高電圧ケーブルの配策構造は、高電圧ケーブルを車両中央に配索して、外力作用時の車体変形でも高電圧ケーブルの損傷を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は高電圧ケーブルを配索した車両の概略構成図である。(実施例)
【図2】図2は車両の平面図である。(実施例)
【図3】図3は車両の車室内で上方からの斜視図である。(実施例)
【図4】図4は車両のフロアパネルの下方からの底面図である。(実施例)
【図5】図5は車両の後部で上方からの斜視図である。(実施例)
【図6】図6は従来において高電圧ケーブルを配索した車両の概略構成図である。(従来例)
【図7】図7は従来において高電圧ケーブルを配索した車両において側方から外力が作用して車体変形が生じた状態を示す説明図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明は、外力作用時の車体変形でも高電圧ケーブルの損傷を回避する目的を、高電圧ケーブルを車両中央に配索して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
図1、図2において、1はハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池車(FCHEV)等を含めた広義の電気自動車(EV)(以下「車両」という)、2は車体、3は車両前部のエンジンルーム、4は車両中央部の車室、5は車両後部の荷室、6・6は前輪、7・7は後輪、8・8はヘッドライト、9・9はサイドフレーム、10は車体2のフロアパネル、11はダッシュパネルである。
エンジンルーム3には、搭載ユニット(エンジンASSY)12を構成するエンジン発電機ユニット13と駆動モータギヤケースユニット14とが配設される。
また、エンジンルーム3の前部には、内燃機関用冷却システムのラジエータや発電機・駆動モータ用冷却システムのラジエータ、空調システム用のコンデンサ等の機器が配設されている。エンジンルーム3の下部には、空調システム用の電動コンプレッサ、発電機・駆動モータ用冷却システムのウオータポンプ等の機器が配設されている。上記の発電機・駆動モータ用冷却システムでは、後述する発電機16、駆動モータ17、インバータ31を夫々冷却する。
【0015】
エンジン発電機ユニット13は、車両1の走行中且つ任意のタイミングで駆動/停止を切替可能なエンジン15と、このエンジン15に機械的に駆動連結した発電機16とを一体化して構成され、直接的な車両推進力を発生せず、駆動モータギヤケースユニット14を駆動するための電力を発生する。即ち、車両1は、シリーズ形ハイブリッド駆動方式であり、エンジン発電機ユニット13を省略すれば、狭義の電気自動車となるものである。
エンジン発電機ユニット13は、後述するバッテリ25の充電量が減った等の特定条件が成立した際に、エンジン15を始動し駆動し、発電機16を回して発電し、長手方向が車幅方向に指向されており、その左右の両端部において、マウントを介して車体2のサイドフレーム9・9に固定される。エンジン15のクランク軸や発電機16の回転軸の高さは、後述する駆動モータ17の回転軸と比べて低くなり、重心を低い位置に保つことに寄与する。
【0016】
駆動モータギヤケースユニット14は、車両1を推進させるの真のユニットであり、車両推進力を発生して駆動力を伝達するように、車両推進力を発生する駆動モータ17と、この駆動モータ17に付随して動力を伝達するギヤケース18とを一体化して構成される。
この駆動モータギヤケースユニット14は、弾性部材によって防振するリアマウントを介して車体2のサブフレーム(サスペンションフレーム)19の上面側に固定され、ギヤケース18からアクスル軸に駆動力を伝達し、また、左右の駆動輪へのバランスや振動等を考慮して、必要に応じて、中間軸を介して駆動力を伝達する。
ギヤケース18は、上部に、駆動モータ17の回転軸と同軸の入力軸を有し、下部には、アクスル軸に繋がる出力軸を有し、内部には、減速ギヤ及び作動装置を収容する。このギヤケース18の外形は、比較的上下方向に長く車両前後方向に短く形成できる。なお、駆動モータ17の下方には、中間軸が配設される。
【0017】
エンジン発電機ユニット13と駆動モータギヤケースユニット14とは、互いに最も近づく部位において機械的に一体的となるよう連結した上で、3つのマウント(左右のマウントとリアマウント)を介して車体2に搭載されている。この3つのマウントによって、通常は、安定的に支持される一方、前方からの外力による荷重が加わった場合に、エンジン発電機ユニット13と駆動モータギヤケースユニット14とを一体化した搭載ユニット12を、車両後方に向かって略水平に移動可能とする。
駆動モータ17の回転軸は、エンジン15のクランク軸及び発電機16の回転軸よりも高い位置に配設されている。これによって、平面視(又は下面視)で、発電機16のケーシングと駆動モータ17のケーシングとを、上下方向で一部が重なるように配置して、搭載ユニット12の車両前後方向Xの長さをコンパクトにするとともに、車体2の搭載空間に対する移動寸法を大きく採ることができ、特にダッシュパネル11と駆動モータ17のケーシングとの間の寸法を確保している。
【0018】
車体2のフロアパネル10は、車両前部の前部フロアパネル20と車両後部の後部フロアパネル21とからなる。この後部フロアパネル21の標準面は、前部フロアパネル20の標準面よりも高く設定されている。前部フロアパネル20には、車幅方向Yの中央部位でセンタトンネル22が車両前後方向に指向して形成されているとともに、前部でステアリング取付部23が形成されている。
エンジン15の排気システムを構成する排気管24は、エンジン15の下方を通り、二段階のクランク状の曲げ部を形成して、前部フロアパネル20のセンタトンネル22の内部空間を通って、車両後部に延出する。この排気管24の二段階のクランク状の曲げ部によって、ギヤケース18を迂回するような囲み形状を呈するとともに、エンジン15からの距離を大きくすることで幅射熱の影響を低減できる。
車両後部において、後部フロアパネル21の上方となる荷室5には、バッテリ(パック)25と燃料タンク26とが共に搭載されている。
図3、図4に示すように、前部フロアパネル20の標準面F1と後部フロアパネル21の標準面F2との高低差Hは、燃料タンク26の高さと同等に設定されている。燃料タンク26は、後部フロアパネル21の下方、且つ後輪の懸架装置あるいは車軸よりも前方で後部フロアパネル21に支持固定される。
【0019】
バッテリ25は、燃料タンク26よりも車両後方且つ後部フロアパネル21の上方に配置される。
燃料タンク26は、外形の形状が上下方向及び車両前後方向Xに扁平であり、長手方向が車幅方向Yに一致して搭載される。燃料タンク26の内部には、揮発性があり常温で液状の燃料が貯留される。
燃料タンク26の上方には、後部フロアパネル21を挟んで上方にシート座としての後席用シート座27が設けられる。
燃料タンク26よりも車両後方の後部フロアパネル21には、実質的に後輪車軸よりも後方で、前部フロアパネル20の標準面F1と後部フロアパネル21の標準面F2との高低差Hと同程度の高さを有する内部空間28を備えたハウジング29が形成されている。
【0020】
また、車両1には、高電圧のエネルギシステム30が搭載される。
この高電圧のエネルギシステム30においては、エンジンルーム3の上部に、バッテリ25と繋がって駆動モータ17を制御するインバータ31が配設されている。このインバータ31は、前側の発電機16と後側の駆動モータ17との両方の上方を覆うように配設されている。
また、エンジン15の上部には吸気系の補機が配設されていることから、車両1への搭載の際には、インバータ31や搭載ユニット12と一緒に全てをアッセンブリして一括して車両1に搭載する。
バッテリ25の端部には、全体として概ね車両前部に向かって延出してインバータ31に接続する高電圧ケーブル32が接続される。
つまり、高電圧のエネルギシステム30は、発電機16と駆動モータ17とバッテリ25とインバータ31と高電圧ケーブル32とを含むものである。
高電圧ケーブル32は、保護チューブで被覆され、主にバッテリ25とインバータ31との間を繋ぐものであるため、略定電圧の直流電流が流れることになり、電磁的な影響が極めて少ないものである。
高電圧ケーブル32は、図1、図2に示すように、一部が車室4内に配索されるものであり、後部フロアパネル21の上方で、バッテリ25の一端から前方に延出した後、バッテリ25の周囲に沿うように車両中央方向に折れ曲がり、車幅方向Yの中央付近に至ると、再び車両前方に向かって延出する。
高電圧ケーブル32は、前部フロアパネル20から後部フロアパネル21が立ち上がる付近において、後部フロアパネル21の上方から下方に前部フロアパネル20を貫通し、さらに、前部フロアパネル20の下面に沿って車両前後方向Xで車両前部に向かって延出する。
【0021】
即ち、電圧ケーブル31は、図1、図2に示すように、燃料タンク26と上下に重なる後部フロアパネル21の上方位置であって、且つ車幅方向Yの中央部に車両1の前後中心軸1Cに沿うよう配策されるとともに、料タンク26と重なる位置の前側位置にて後部フロアパネル21の標準面F2より車室4内に入り込み(室内ルート:R2)、そして、その前方では車両1の前後中心軸1Cよりも車幅方向Yの右側では前部フロアパネル20の標準面F1よりも下方を通るように配策される。
また、高電圧ケーブル32は、前部フロアパネル20の下面では(室外ルート:R1)、サイドフレーム9・9及びセンタトンネル22の間でそれに沿うように車両前後方向Xに延出する。前部フロアパネル20がダッシュパネル11と繋がる位置では、図3、図4に示すように、高電圧ケーブル32は、センタトンネル22の端部空間内に部分的に入り込んだ後、ギヤケース18の背面に対向するダッシュパネル11の表面に沿って延出する。ダッシュパネル11の下方位置では、サブフレーム19が設けられ、エンジン発電機ユニット13のリアマウントを設置する位置でもある。
高電圧ケーブル32は、センタトンネル22の前端の内部空間において、また、サブフレーム19と挟まれる空間をも含めた空間において、テアリング・ラックとの干渉を避けて配置されている。
更に、高電圧ケーブル32は、排気管24とは車幅方向Yでの反対側に互いに離間して配策されており、狭く限られた空間内での熟影響及び干渉を避けている。それと同時に、高電圧ケーブル32は、センタトンネル22の内部空間の上部となる高い位置からダッシュパネル11の前面の前方に延出することにより、ダッシュパネル11と搭載ユニット12との間に挟まれる長さ範囲を小さくして、変形によりダッシュパネル11と搭載ユニット12との間に空間が縮小した際に、ダッシュパネル11と搭載ユニット12との両者に高電圧ケーブル32の挟み込みを防止している。
また、後部フロアパネル21において、ハウジング29の内部空間28には、図5に示すように、バッテリ25に付随する充電器33が収容される。ハウジング29には、クロスメンバ34を含む補助的なフレームが設けられており、後方や側方からの外力に対して抗力を発し変形を抑止する構造が備えられている。
【0022】
そして、高電圧ケーブル32は、平面視で、バッテリ25の一端から前方に延出した後、バッテリ25の周囲に沿うように車両中央方向に折れ曲がり、車幅方向Yの中央付近に至ると再び車両前方に向かって延出する。また、この部分の高電圧ケーブル32は、上下方向で、内部空間28を備えたハウジング29内に入り込み、充電器33の周囲の空間を通るように配策されている。
後部フロアパネル21が前部フロアパネル20から立ち上がる位置の前側近傍位置において、前部フロアパネル20の下方に配策された前側の高電圧ケーブル32は、後部フロアパネル21の上方に配策された後側の高電圧ケーブルとなるように、後部フロアパネル21の標準面F2より車室4内に入り込むように配策されてある。同位置では、図3に示すように、燃料タンク26の前面との間には、後部フロアパネル21の立上部35が挟まれている。
この高電圧ケーブル32が前部フロアパネル20を貫通する貫通部36は、前部フロアパネル20のセンタトンネル22を避け、車両1の中心部1Cより車幅方向Yへ少し偏移した位置としている。
また、高電圧ケーブル32は、後部フロアパネル21の上方であって車幅方向Yの中央で車両前方に延出する部位では、前後に横断するように燃料タンク26と上下方向で重なる。
【0023】
高電圧ケーブル32が前部フロアパネル20を貫通する部位には、図4に示すように、グロメット37が設けられている。
また、このグロメット37及び車室4側の車内ルートR1の高電圧ケーブル32は、第1のカバー部材(板金製カバー)38によって被覆されている。
この第1のカバー部材38は、高電圧ケーブル32の配策上の後部フロアパネル21の標準面よりも車室4内に入り込む貫通部36と後部フロアパネル21の立上部35と後席用シート座27に対応する対応部39とを被覆する。
【0024】
図5に示すように、高電圧ケーブル32と並行して、充電器33の温度調節するように冷却用送風を通る換気ダクト40が設けられている。
この換気ダクト40は、樹脂製であり、高電圧ケーブル32と同様に、後部フロアパネル21の上方であって車幅方向Yの中央で車両前方に延出する部位では、前後に横断するように燃料タンク26と上下に重なる。
この換気ダクト40は、内部空間28を備えたハウジング29に納めた充電器33を駆動する際に、温度上昇する充電器33を冷却するための送風を通すものである。
第1のカバー部材38は、前端部が後部フロアパネル21の立上部35に沿うように折れ曲がっている。この第1のカバー部材35の前端面(縦壁部)には、開口が形成されて、室内空気と換気ダクト40内とが連通可能としている。
一方、高電圧ケーブル32は、開口から外れるように通して、車室4内に単純露出しない構造となっている。これらにより、若干、後席用シート座27の足元空間を減らすように突出するが、シート座面に対してアンダーカットとなる範囲として、居住性等に実質的な影響が出ないようにしている。後席用シート座27に対応する位置のフロアパネル10面の周囲のフレーム構造によって元々剛性は高いが、より高めることができ、変形を抑制できる。
【0025】
高電圧ケーブル32と換気ダクト40と第1のカバー部材38とは、略同時に敷設することができるため、カバー部材の一体共通化、取付箇所の共用が可能となって、製造上の都合が良い。
つまり、充電器33の温度調節用の換気ダクト40を高電圧ケーブル32と並べて設け、第1のカバー部材38の中には、高電圧ケーブル32と換気ダクト40とを入れて通している。また、後席用シート座27の下方にシートを固定するために車幅方向Yに延出して設けた構造部材(クロスメンバやヒンジ用座部等)があり、その間に挟まれるようにして通している。
燃料タンク26よりも車両後方の位置であって、後部フロアパネル21の上方、且つ実質的に充電器33の上方には、バッテリ25を配置している。また、バッテリ25は、バッテリフレームに支持されて、上下方向に扁平に並べたバッテリ列を上下に段重ねして設けたバッテリ群であり、また、高電圧バッテリであって、長手方向を車幅方向に一致させて搭載され、左右一対のサイドフレーム9・9に挟まれる範囲に収まるものである。
バッテリ25の長手方向の両端に臨む隣接した位置には、ホイールハウスとの間のスペースを利用して、ツールや補機用バッテリ(低電圧バッテリ)を配置して設けられている。
バッテリ25の上部には、DC/DCコンバータをアッセンブリして搭載している。また、バッテリ25の後側には、後面を覆うようにクラッシヤブルな保護部材を備えている。
バッテリ25及び充電器33は、温度調節するための空冷ファンを備えており、室内空気等の低い温度の空気を導入して、個々のバッテリ(単位セル)や充電器33のコントローラ(基盤)を主に冷却するに用いられる温度調節用の換気ダクト構造を併せ持っている。
なお、第1のカバー部材38の中に通す換気ダクト40は、バッテリ25に直接的に接続される換気ダクトとすることも可能である。
【0026】
また、図4に示すように、車外ルートR2において、高電圧ケーブル32は、前部フロアパネル20の下面に取り付けた第2のカバー部材(保護カバー)41によって被覆されている。
更に、高電圧ケーブル32の車外ルートR2の前部は、第3のカバー部材(保護カバー)42によって被覆され、そして、ステアリング取付部23付近を通って車両前部に向かって延出している。
【0027】
この結果、請求項1に係る発明において、高電圧ケーブル32は、燃料タンク26と上下に重なる後部フロアパネル21の上方位置であって、且つ車幅方向Yの中央部に車両1の前後中心軸1Cに沿うよう配策されるとともに、燃料タンク26と重なる位置の前側位置にて後部フロアパネル21の標準面F2より車室4内に入り込みその前方では前部フロアパネル20の標準面F1よりも下方を通るように配策される。
これにより、高電圧ケーブル32の配策を、車両側面及び後面から十分離れた位置とすることができ、図1に示すように、外力及びそれに基づく車体変形Pから影響を受ける可能性を極めて低くすることができる。それと同時に、燃料タンク26からも隔離することができ、二次的な損害を招く可能性をも極めて低くできる。更に、高電圧ケーブル32がフロアパネル10の下方で外部露出長さが短くなり、通常走行における直接的な破損も減ずることができる。つまり、図1に示すように、燃料タンク26手前から車室4内へ入り、後席用シート座27の下方で車両中央付近に高電圧ケーブル32を縦断配策した。
これにより、車両中央配策のため、側方からの外力作用時、高電圧ケーブル32の損傷を回避させ、また、燃料タンク26付近を通らないため、高電圧ケーブル32の接触を低くできる。
また、請求項2に係る発明において、高電圧ケーブル32は車両前部に搭載したインバータ31に繋がり、高電圧ケーブル32の車室4側を被覆する第2のカバー部材41を設け、この第2のカバー部材41は、高電圧ケーブル配策上の後部フロアパネル21の標準面よりも車室4内に入り込む貫通部36と後部フロアパネル21の立上部35とシート座に対応する対応部39とを被覆する。
これにより、乗員の占有スペース及び居住性を保ちながら、高電圧ケーブル32を隔離し、乗員も高電圧ケーブル32も共に保護することができる。また、略定電圧の直流電流であるので、車室4内への電磁的な影響も少ない。
更に、請求項3に係る発明において、充電器33の温度調節用の換気ダクト40を高電圧ケーブル32と並べて設け、第2のカバー部材41の中には高電圧ケーブル32と換気ダクト40を入れて通している。
これにより、高電圧ケーブル32と換気ダクト40とカバー部材41とを、共通化によって部品点数を減らせるだけでなく、略同時に設置することができ、製造上好ましい。
【0028】
なお、この実施例においては、後席用シート座下で、高電圧ケーブルと充電器冷却用樹脂ダクトとを車両中央で並走させ、一つの板金カバーで、後席用シート座から高電圧ケーブルと換気ダクトの二つの部品を後席用シート座から保護すれば、高電圧ケーブルと充電器の冷却用樹脂ダクトとをカバーする板金カバーを各々設定する必要が無く、部品点数の削減を図ることができる。
また、エンジン発電機ユニットと駆動モータギヤケースユニットとを一体化することによってコンパクトに搭載することができるが、駆動力の伝達はしていないので、必ずしも機械的に連結する必要はなく、搭載ユニットを駆動モータ及びギヤケースから構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明の高電圧ケーブルの配策構造では、シリーズ方式のハイブリッド電気自動車を例示したが、車両の推進力を発生する駆動モータのケーシングと減速ギヤによって構成するギヤケースとが、同様にダッシュパネルの前方空間に搭載される配置となっていれば、純粋な電気自動車や、他の駆動方式(パラレル方式、スプリット方式等)のハイブリッド自動車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両
2 車体
3 エンジンルーム
4 車室
5 荷室
10 フロアパネル
11 ダッシュパネル
12 搭載ユニット
13 エンジン発電機ユニット
14 駆動モータギアケースユニット
15 エンジン
16 発電機
17 駆動モータ
18 ギヤケース
20 前部フロアパネル
21 後部フロアパネル
22 センタトンネル
24 排気管
25 バッテリ
26 燃料タンク
27 後席用シート座
29 ハウジング
30 高電圧エネルギシステム
31 インバータ
32 高電圧ケーブル
33 充電器
35 立上部
36 貫通部
37 グロメット
38 第1のカバー部材
39 対応部
40 換気ダクト
41 第2のカバー部材
43 第3のカバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部にバッテリと燃料タンクとを共に搭載するとともに、前記燃料タンクよりも車両後方且つフロアパネルの上方に前記バッテリを配置し、前記バッテリに接続され車両前部に向かって延出するように高電圧ケーブルを設ける車両の高電圧ケーブルの配策構造において、前記高電圧ケーブルを、前記燃料タンクと上下に重なる前記フロアパネルの上方位置であって、且つ車幅方向中央部に車両の前後中心軸に沿うよう配策するとともに、前記燃料タンクと重なる位置の前側位置にて前記フロアパネルの標準面より車室内に入り込みその前方では前記フロアパネルの標準面よりも下方を通るように配策することを特徴とする車両の高電圧ケーブルの配策構造。
【請求項2】
前記高電圧ケーブルは車両前部に搭載したインバータに繋がるものであり、前記高電圧ケーブルの車室側を被覆するカバー部材を設け、このカバー部材は、前記高電圧ケーブルの配策上の前記フロアパネルの標準面よりも前記車室内に入り込む貫通部と前記フロアパネルの立上部とシート座に対応する対応部とを被覆することを特徴とする請求項1に記載の車両の高電圧ケーブルの配策構造。
【請求項3】
前記バッテリは付随して設けられる充電器を備え、この充電器の温度調節用の換気ダクトを前記高電圧ケーブルと並べて設け、前記カバー部材の中には前記高電圧ケーブルと前記換気ダクトを入れて通したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の高電圧ケーブルの配策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−68187(P2011−68187A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218937(P2009−218937)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】