説明

車両シート装置

【課題】車椅子から車両シートに車椅子利用者を移乗させるにあたり、この移乗を補助する者の車椅子利用者を抱き上げるための中腰姿勢の負荷を少なくする。
【解決手段】離席時には車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態となって車両シート21の高さ位置の昇降とともに高さ位置が変更される可動式アームレスト60が設けられている。車椅子から車両シート21に車椅子利用者(乗員)Pを移乗させるにあたり、この可動式アームレスト60に車椅子利用者Pを掴まらせておくと、車両シート21の高さ位置の昇降とともに可動式アームレスト60の高さ位置の変更に応じて、車椅子から車椅子利用者Pの腰を上げさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車両シート装置に関する。詳しくは、足腰が弱い車椅子利用者にとって車両の乗降がし易くなるように、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載される車両シートにあっては、足腰が弱い車椅子利用者が着席あるいは離席する場合であっても、この着席あるいは離席する動作が有利となるように設計される車両シート装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両シート装置にあっては、車両に乗車する乗員として着座する車両シートと、この車両シートの位置を変える移動機構とを備える。また、この移動機構としては、車両室内で車両シートの向きを変えるシート回転機構と、車両室内と車両室外との間で車両シートをスライド移動させるシートスライド移動機構と、車両室外で車両シートを昇降させるシート昇降機構とを備える。この車両シート装置によれば、車椅子から車両シートに移乗できる或いは車両シートから車椅子に移乗できる車両室外の移乗位置と、車両を運転できるように乗車状態となる車両室内の乗車位置との間で、車両シートを移動させることができる。
他方、また、自動車等の車両に搭載される車両シートにあっては、姿勢を楽にするための肘掛としてアームレストが設けられるものが知られている。このような車両シートに設けられるアームレストにあっては、単に肘掛としてだけではなく、適宜の機能が付加されるように可動式に構成されるものが知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4033031
【特許文献2】特開2005−119442
【特許文献3】実開平7−30793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車椅子利用者が車椅子から車両シートに移乗する着席動作の場合や、車椅子利用者が車両シートから車椅子に移乗する離席動作の場合には、この車椅子利用者の移乗の動作を補助する者(以下、『移乗補助者』と称する)が必要である。すなわち、車椅子利用者が車椅子から車両シートに移乗する場合、この車椅子利用者を車椅子から抱きかかえる必要がある。そうすると、移乗補助者は、車椅子利用者を抱き上げるために中腰姿勢をとらざるを得ず、それゆえに腰痛に悩まされることが多かった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置において、車椅子から車両シートに車椅子利用者を移乗させるにあたり、この移乗を補助する者の車椅子利用者を抱き上げるための中腰姿勢の負荷を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明に係る車両シート装置は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両シート装置は、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置であって、前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、着席時には該車両シートの構成部品あるいは該車両シート内に収納される収納部品として構成され、且つ離席時には該車両シートの幅方向の外側に拡張した状態となって該車両シートの高さ位置の昇降とともに高さ位置が変更される掴まりアームが設けられていることを特徴とする。
この第1の発明に係る車両シート装置によれば、離席時には車両シートの幅方向の外側に拡張した状態となって車両シートの高さ位置の昇降とともに高さ位置が変更される掴まりアームが設けられている。このため、車椅子から車両シートに車椅子利用者を移乗させるにあたり、この掴まりアームに車椅子利用者を掴まらせておくと、車両シートの高さ位置の昇降とともに掴まりアームの高さ位置の変更に応じて、掴まりアームに掴まっていた車椅子利用者を車椅子から腰を上げさせることができる。これによって、車椅子から車両シートに車椅子利用者を移乗させるにあたっての、この移乗を補助する者の中腰姿勢をとる機会を少なくすることができる。もって、移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。なお、この掴まりアームは、着席時には車両シートの構成部品あるいは車両シート内に収納される収納部品として構成されるので、着席時には邪魔にはならない。
【0007】
第2の発明に係る車両シート装置は、前記第1の発明に係る車両シート装置において、前記車両シートの高さ位置の昇降は、前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、該車両シートの高さ位置を高くできるチルト機構によりなされることを特徴とする。
この第2の発明に係る車両シート装置によれば、車両シートの高さ位置の昇降は、車両シートの高さ位置を高くできるチルト機構によりなされるので、座面を高くするための機能を兼ねた機構とすることができる。これによって、座面が高くなるために車両シートに着座する乗員の重心位置も高くできて、乗員にとって立ち上がり姿勢となり易くする。したがって、移乗を補助する者の乗員を抱き上げるにあたっての中腰姿勢をとる機会を減らすことができる。
【0008】
第3の発明に係る車両シート装置は、前記第1または前記第2の発明に係る車両シート装置において、前記車両シートの高さ位置の昇降は、前記車両シートが前記車両室外に前記車両シートが移動した場合に操作することができる操作コントローラによりなされることを特徴とする。
この第3の発明に係る車両シート装置によれば、車両シートの高さ位置の昇降は、車両シートが車両室外に車両シートが移動した場合に操作することができる操作コントローラによりなされるので、操作コントローラを操作するだけで車両シートの高さ位置を決めることができて便利となる。これによって、車両シートに着座する乗員の立ち上がり姿勢に応じて、車両シートの高さ位置を決めることができるので、移乗を補助する者が乗員を抱き上げるにあたって、中腰姿勢をとる機会を減らすのに有利な車両シートの高さ位置に設定することができる。
【0009】
第4の発明に係る車両シート装置は、前記第1から前記第3のいずれかの発明に係る車両シート装置において、前記車両シートの高さ位置の昇降を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された情報に基づいて該車両シートの高さ位置の昇降が制御されることを特徴とする。
この第4の発明に係る車両シート装置によれば、記憶手段に記憶された情報に基づいて車両シートの高さ位置の昇降が制御されるので、他の操作手段や検知手段に基づく制御を省略することができて、掴まりアームの高さ位置を自動的に調節することができる。これによって、移乗する者(車椅子利用者)が記憶された情報に合致する場合に、掴まりアームの高さ位置の調節を自動かつ簡略化することができ、この移乗する者を移乗させ易くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る車両シート装置によれば、この移乗を補助する者の中腰姿勢をとる機会を少なくすることができ、移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。
第2の発明に係る車両シート装置によれば、移乗を補助する者の乗員を抱き上げるにあたっての中腰姿勢をとる機会を減らすことができる。
第3の発明に係る車両シート装置によれば、移乗を補助する者が乗員を抱き上げるにあたって、中腰姿勢をとる機会を減らすのに有利な車両シートの高さ位置に設定することができる。
第4の発明に係る車両シート装置によれば、シートクッションの高さ位置の調節を自動かつ簡略化することができ、この移乗する者を移乗させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両シートの移動動作の流れを示す平面模式図である。
【図2】車両シート装置の座面上昇動作前を示す側面模式図である。
【図3】車両シート装置の座面上昇動作後を示す側面模式図である。
【図4】可動式アームレストとともにシートバックを模式的に示す斜視図である。
【図5】車椅子に着座する着座者の車椅子から車両シートへの移乗を段階的に示す第1段階側面模式図である。
【図6】車両シートへの移乗を段階的に示す第2段階側面模式図である。
【図7】車両シートへの移乗を段階的に示す第3段階側面模式図である。
【図8】車両シートへの移乗を段階的に示す第4段階側面模式図である。
【図9】図2および図3と比較できるように図示するチルト機構の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両シート装置を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は、車両シート装置20について模式的に示す図である。なお、図1の(a)〜(e)は、車両シート21の移動動作の流れを示す平面模式図である。また、図2および図3は、図1(e)における車両シート装置20を側面視した場合の側面模式図である。
図1〜図3に示す車両シート装置20は、車両としての自動車10に搭載される自動車乗員用のシートである。この車両シート装置20は、図2および図3に示すように、乗員が着座する車両シート21と、この車両シート21を移動させるための移動機構50とを備える。なお、この車両シート装置20は、自動車10の助手席として搭載されており、足腰が弱い車椅子利用者にとって乗降のし易いものとするものである。このため、この車両シート21は、図1に示すように、自動車10の内部の車両室内11から、自動車10の外部の車両室外12までの区間で移動可能に構成されている。なお、図1に示す(a)〜(e)は、この移動機構50により車両シート21が車両室内11位置から車両室外12位置に移動する一連の移動動作を示している。
【0013】
すなわち、図1の(a)〜(e)に示す車両シート21の一連の移動動作は、一部のみが図示される移動機構50によりなされる。移動機構50は、詳細構造に関する図示を省略するが、上記した自動車10の車体(不図示)に取り付けられており、車両シート21を移動可能に支持する。この移動機構50は、図示していない、車両室内11で車両シート21の向きを変える回転機構と、車両室内11と車両室外12との間で車両シート21をスライド移動させるスライド移動機構と、車両室外12で車両シート21を昇降させる昇降機構(四節リンク機構52)とを備える。つまり、移動機構50は、具備される回転機構により車両シート21を回転移動させ、具備されるスライド移動機構により車両シート21をスライド移動させ、この移動機構50に具備される昇降機構(四節リンク機構52)により車両シート21を昇降移動させる。
なお、この移動機構50による車両シート21の移動動作は、操作コントローラ55によってなされる。つまり、操作コントローラ55は、上記した各種の機構(回転機構、スライド移動機構、昇降機構)を含む移動機構50に対して、コントロール制御可能に接続されている。そして、乗員(着座者)や移乗補助者が操作コントローラ55を操作することにより、操作コントローラ55から移動機構50に操作入力されることとなる。このように操作入力がされた移動機構50は、操作コントローラ55からの操作入力に基づき、車両シート21を次のような一連の移動動作させる。
【0014】
図1の(a)〜(e)を参照しながら、車両シート21の一連の移動動作について説明する。
この図1の(a)に示す車両シート21は、車両室内11位置となる乗車状態位置となる車両シート21を示している。これに対して図1の(e)に示す車両シート21は、車両室外12位置となる車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両シート21を示している。このようにして、図1に示す(a)〜(e)の並び順で、乗車位置となる車両室内11位置から、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12位置に、車両シート21を移動する動作を示している。逆に言えば、(e)〜(a)の順で、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12位置から、乗車位置となる車両室内11位置に、車両シート21を移動する動作を示している。
【0015】
具体的には、図1(a)は、乗車状態となる車両室内11に位置する車両シート21を示す。なお、符号15はセンターコンソール、符号16は助手席ドア、符号17はセンターピラーである。これに対して図1(b)は、第1移動動作をした車両シート21を示す。この図1(b)の車両シート21は、図1(a)の車両シート21と比較して助手席ドア16側となる外側に向くように左回転移動している。図1(c)は、第2移動動作をした車両シート21を示す。図1(c)の車両シート21は、図1(b)の車両シート21と比較して、着座する乗員の脚が車両室外12に向くまで、更に助手席ドア16側となる外側に向くように左回転移動している。このように左回転移動する車両シート21は、この回転移動とともに車両室外12に向けてスライド移動している。図1(d)は、第3移動動作をした車両シート21を示す。図1(d)の車両シート21は、図1(c)の車両シート21と比較して、車両室内11から車両室外12に向かってスライド移動している。図1(e)は、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12に位置する車両シート21を示す。図1(e)の車両シート21は、図1(d)の車両シート21と比較して、車両室外12で降下移動した位置となっている。このように車両室外12で降下移動した車両シート21は、乗員が着席あるいは離席することができるように、移動した位置となっている。なお、この乗員が着席あるいは離席することができるほどに降下移動した車両シート21の位置は、図2および図3に示すように、この車両シート21に着座する乗員(着座者)Pの足が地面Gに着地するまで降下移動した車両シート21の位置である。
【0016】
次に、図2および図3を参照しながら、車両シート21の上昇動作(チルトアップ)について説明する。図2は、上記した図1(e)において車両シート21の座面221の上昇動作前を示す側面模式図である。この図2は、座面221の上昇動作前となる通常乗車位置に位置している。図3は、上記した図1(e)において車両シート21の座面221の上昇動作後を示す側面模式図である。この図3は、座面221の上昇動作後となる移乗可能位置に位置している。
車両シート21は、図示するように、着座する際の座となるシートクッション22と、着座した際の背凭れとなるシートバック23と、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト24とを備える。また、図2および図3に示す符号Pは、シートクッション22に着座する乗員を示している。また、図2および図3に示す符号221は、シートクッション22の座面を示している。
【0017】
なお、上記した車両シート21は、四節リンク機構52に支持されるようにシートベース25を備える。このシートベース25は、上記したシートクッション22を支持している。なお、このシートクッション22は、シートバック23およびヘッドレスト24を支持している。
車両シート21は、図2および図3に示すように、上記した車両シート21を支持するシートベース25を介して、四節リンク機構52により支持されている。この四節リンク機構52は、移動機構50の昇降機構を構成している。なお、移動機構50の昇降機構をなす四節リンク機構52は、車両シート21を降下させるものとした昇降機能を有して構成される。このため、昇降機構をなす四節リンク機構52は、図2および図3に示すように、この車両シート21に着座する乗員Pの足が地面Gに着地するまで、車両シート21を降下させている。
【0018】
ところで、上記したシートベース25とシートクッション22との間には、チルト機構30が設けられている。このチルト機構30は、図2および図3に示すように、シートクッション22の後側部分を昇降させるように機能する。このチルト機構30は、概略、シートクッション22の前側部分に設けられる回転軸支部31と、シートクッション22の後側部分に設けられる昇降駆動部33とを備える。
シートクッション22の前側部分に配設される回転軸支部31は、シートベース25に対してシートクッション22を回転可能にしている。また、昇降駆動部33は、回転駆動する駆動モータ35と、この駆動モータ35の回転駆動力を出力するピニオンギヤ36と、このピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37とを備える。駆動モータ35は、シートベース25に支持されている。ピニオンギヤ36は、駆動モータ35の回転軸に取り付けられている。このため、ピニオンギヤ36は、駆動モータ35の回転駆動に応じて回転する。ドリブンギヤ37は、シートベース25に回転可能に支持されている。このドリブンギヤ37は、ピニオンギヤ36と噛合しており、この噛合するピニオンギヤ36の回転駆動力を受けて回転する。
【0019】
ここで、ドリブンギヤ37には、この回転径方向に沿って延びる連結リンク部38が設けられている。この連結リンク部38の先端は、シートクッション22に設けられたガイドスリット39に嵌挿されるようにしてシートクッション22に連結されている。これにより、連結リンク部38が、ピニオンギヤ36の回転駆動を受けてドリブンギヤ37と一体回転すると、連結リンク部38の先端はガイドスリット39内で相対移動しつつシートクッション22を昇降させるように機能することとなる。なお、このシートクッション22のうち、連結リンク部38が連結されて昇降支持される部分は、着座する乗員の臀部が当たる部分に相当する。ここで、チルト機構30は、本発明に係る座面上昇手段に相当する。すなわち、チルト機構30は、車両室外12に移動した位置(図1(e))で、上記した乗員が着席あるいは離席可能となるように、着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くするようにシートクッション22の座面221を高くするように機能する。
このチルト機構30によるシートクッション22の昇降は、上記した操作コントローラ55からの操作入力により行われるようになっている。なお、操作コントローラ55は、図1(e)に示す乗員が着席あるいは離席可能となるように車両室外12に移動した位置でのみ、チルト機構30に対するシートクッション22の昇降の操作入力が可能となっている。
【0020】
ここで、シートクッション22の高さ位置が図2に示す通常乗車位置となっている場合に、シートクッション22の高さ位置を高くするように操作コントローラ55に操作入力をする。そうすると、この操作コントローラ55の操作入力に基づいてチルト機構30は駆動することとなる。具体的には、チルト機構30は、駆動モータ35によりピニオンギヤ36を回転駆動させ、ピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37を回転駆動させる。これにより、連結リンク部38に連結されるシートクッション22の後側部分に位置する座面221を、図2に示す状態から図3に示す状態に移行するように上昇(チルトアップ)させる。このシートクッション22のチルトアップは、本発明に係る座面上昇動作に相当する。また、この車両シート21のシートバック23は、シートクッション22に連結されて構成されている。このため、この車両シート21のシートバック23も、シートクッション22の上昇動作(チルトアップ)および下降動作(チルトダウン)と連動して上昇および下降するようになっている。
【0021】
これとは逆に、シートクッション22の高さ位置が図3に示す移乗可能位置となっている場合に、シートクッション22の高さ位置を低くするように操作コントローラ55に操作入力をする。そうすると、この操作コントローラ55の操作入力に基づいてチルト機構30は駆動することとなる。具体的には、チルト機構30は、駆動モータ35によりピニオンギヤ36を回転駆動させ、ピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37を回転駆動させる。これにより、連結リンク部38に連結されるシートクッション22の後側部分に位置する座面221を、図3に示す状態から図2に示す状態に移行するように下降(チルトダウン)させる。このシートクッション22のチルトダウンは、本発明に係る座面下降動作に相当する。なお、この操作コントローラ55は、上記したチルト機構30(座面上昇手段)によるシートクッションの高さ位置を高くする操作を行うための、本発明に係る高さ操作手段に相当する。さらに言えば、この操作コントローラ55は、使用者となる乗員により操作入力される本発明に係る操作入力手段に相当する。
なお、この操作コントローラ55により操作入力された操作信号は、上記したチルト機構30を制御する制御コントローラ(不図示)に送信される。ここで、この検知信号を受信した制御コントローラは、この検知信号の内容に基づいて、シートクッション22の高さ位置を高くしたり、或いは低くしたりする操作を、チルト機構30に対して行うものとなっている。
【0022】
図4は、可動式アームレスト60とともにシートバック23を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、上記した車両シート21のシートバック23には、可動式アームレスト60が設けられている。この可動式アームレスト60は、本発明に係る掴まりアームに相当する。この可動式アームレスト60は、着席時には車両シート21の肘掛として機能する車両シート21の構成部品である。すなわち、可動式アームレスト60は、概略、アームレスト本体61と、シート連結部65とを備える。アームレスト本体61は、広く利用されているアームレストと同様、肘掛として機能できるように設定されている。このアームレスト本体61は、基端部がシート連結部65によりシートバック23の幅方向の外側となる側部231に連結されている。このシート連結部65は、特に図示しないが、シートバック23のフレームにより支持されている。このようにシートバック23のフレームに支持されるシート連結部65は、アームレスト本体61の基端部分を回転可能に軸支する。すなわち、シート連結部65は、アームレスト本体61の先端部分が円弧を描いてアームレスト本体61を回転させるように、このアームレスト本体61を支持連結している。
【0023】
詳しく言えば、シート連結部65を回転の支点としてアームレスト本体61の先端部分が円弧を描くことができるように、シート連結部65は、図4に示す破線と実線との間でアームレスト本体61を回転移動可能にアームレスト本体61を支持連結している。このため、アームレスト本体61は、着席時には図示破線で示すように車両シート21の構成部品となり、離席時には図示実線で示すように車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態となる。そして、このアームレスト本体61はシート連結部65で支持連結されているため、この車両シート21の高さ位置の昇降とともに、このアームレスト本体61の高さ位置も変更されることとなる。つまり、アームレスト本体61は、着席離席可能となる車両室外12に車両シート21が移動している位置では、車両シート21の幅方向外側に拡張した状態とすることができる。ここで、アームレスト本体61の高さ位置は、車両シート21の高さ位置の昇降とともに変更される。具体的には、この幅方向外側に拡張した状態のアームレスト本体61の高さ位置は、シートクッション22の上昇動作(チルトアップ)および下降動作(チルトダウン)と連動して上昇および下降するシートバック23と一体的に上昇および下降するようになっている。なお、上記したように、車両シート21の高さ位置の昇降は、車両シート21が車両室外12に車両シート21が移動した場合に操作することができる操作コントローラ55によりなされる。
【0024】
上記した実施の形態の車両シート装置20によれば、次の作用効果を奏することができる。
すなわち、車椅子Cに着座する車椅子利用者(乗員)Pは、次に説明する移乗動作を段階的に行うことにより、着座していた車椅子Cから上記した車両シート装置20の車両シート21に移乗することができる。図5〜図8は、車椅子Cに着座する着座者Pの車椅子Cから車両シート21への移乗を段階的に示す側面模式図であり、図5は第1段階側面模式図、図6は第2段階側面模式図、図7は第3段階側面模式図、図8は第4段階側面模式図である。なお、図5〜図8には、車椅子Cから車両シート21に移乗するにあたって、この移乗を補助するための移乗補助者(例えば介護者等)に関する図示を省略している。
図5に示す車両シート21は、図1(e)に示す車椅子Cから移乗可能な乗降位置となる車両室外12に位置する車両シート21である。図5に示すように、車椅子利用者(乗員)Pが着座する車椅子Cは、この乗降位置に位置する車両シート21に隣接するように留めている。具体的には、乗降位置に位置する車両シート21の可動式アームレスト60配設側に、車椅子利用者(乗員)Pが着座する車椅子Cが留めてある。ここで可動式アームレスト60のアームレスト本体61にあっては、車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態としてある。このため、車両シート21に隣接するように留めてある車椅子Cの前側に、この可動式アームレスト60のアームレスト本体61が位置することとなる。つまり、車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態で位置するアームレスト本体61は、車椅子Cに着座する車椅子利用者(乗員)Pの目の前に存することとなる。
【0025】
ここで、図5に示すように、この車椅子Cに着座する車椅子利用者(乗員)Pは、この可動式アームレスト60のアームレスト本体61を脇の下に入れるようにする。このように脇の下にアームレスト本体61を入れた車椅子利用者Pは、次第に前傾姿勢になることによってアームレスト本体61に体を預けていく。つまり、車椅子利用者Pは、このアームレスト本体61に体重を乗せていく。ここで車椅子利用者Pが、上記した操作コントローラ55を操作することにより図3に示すシートクッション22の上昇動作(チルトアップ)させると、この幅方向外側に拡張した状態のアームレスト本体61もシートバック23とともに上昇する。そうすると、車椅子利用者Pは、アームレスト本体61に体重を乗せているため、着座していた車椅子Cから腰が浮いた状態となる。ここで、不図示の移乗補助者が車椅子Cを車両室内11に収容すると、図6に示す状態となる。
【0026】
さらにここで、操作コントローラ55を操作入力することにより、車両室外12で車両シート21を昇降させる四節リンク機構52(移動機構50(昇降機構))を駆動させて車両シート21を上昇させると、図7に示す状態となる。この際、アームレスト本体61に体重を乗せた車椅子利用者Pの臀部がシートクッション22に着座するように、車椅子利用者Pの体を回転させると、図8に示す状態となる。そして、車椅子利用者Pの臀部がシートクッション22に着座させて、四節リンク機構52(移動機構50(昇降機構))を駆動させて車両シート21を下降させると、図3に示す状態となる。なお、車椅子利用者Pの臀部をシートクッション22に着座させるに際しては、移乗補助者が適宜に補助するものであってよい。
なお逆に、着座していた車両シート21から車椅子Cに移乗するにあたっては、上記した順序とは逆の順序、すなわち図3、図8、図7、図6、図5の順序で移乗動作を段階的に行うことにより、車両シート21に着座する車椅子利用者(乗員)Pは、車椅子Cに移乗することができる。
【0027】
上記した車両シート装置20によれば、離席時には車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態となって車両シート21の高さ位置の昇降とともに高さ位置が変更される可動式アームレスト60が設けられている。このため、車椅子Cから車両シート21に車椅子利用者(乗員)Pを移乗させるにあたり、この可動式アームレスト60に車椅子利用者Pを掴まらせておくと、車両シート21の高さ位置の昇降とともに可動式アームレスト60の高さ位置の変更に応じて、車椅子Cから車椅子利用者Pの腰を上げさせることができる。これによって、車椅子Cから車両シート21に車椅子利用者Pを移乗させるにあたっての、この移乗を補助する者の中腰姿勢をとる機会を少なくすることができる。もって、移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。なお、この可動式アームレスト60は、着席時には車両シート21の構成部品となる肘掛として構成されるので、着席時には邪魔にはならない。
【0028】
また、上記した車両シート装置20によれば、車両シート21の高さ位置の昇降は、車両シート21の高さ位置を高くできるチルト機構30によりなされるので、座面221を高くするための機能を兼ねた機構とすることができる。これによって、座面221が高くなるために車両シート21に着座する乗員(車椅子利用者)Pの重心位置も高くできて、乗員Pにとって立ち上がり姿勢となり易くする。したがって、移乗を補助する者の乗員Pを抱き上げるにあたっての中腰姿勢をとる機会を減らすことができる。
また、上記した車両シート装置20によれば、車両シート21の高さ位置の昇降は、車両シート21が車両室外12に車両シート21が移動した場合に操作することができる操作コントローラ55によりなされるので、操作コントローラ55を操作するだけで車両シート21の高さ位置を決めることができて便利となる。これによって、車両シート21に着座する乗員Pの立ち上がり姿勢に応じて、車両シート21の高さ位置を決めることができるので、移乗を補助する者が乗員Pを抱き上げるにあたって、中腰姿勢をとる機会を減らすのに有利な車両シート21の高さ位置に設定することができる。
【0029】
なお、本発明に係る車両シート装置にあっては、上記した実施の形態の車両シート装置20に限定されるものではなく、次のように適宜箇所を変更して構成するようにしてもよい。なお、以下の他の実施の形態における説明の図示については省略する。
すなわち、上記した車両シート装置20にあっては、シートクッション22の座面221部分に着座センサ(不図示)を設けるものであってもよい。着座センサとしては、着座する乗員Pの体重の荷重変化を検出する適宜の圧力センサが挙げられる。つまり、この着座センサは、本発明に係る荷重変化検知手段に相当する。この着座センサは、シートクッション22に着座する乗員Pの体重の荷重の変化に基づき、検知信号を上記したチルト機構30を制御する制御コントローラ(不図示)に送信する。ここで、この検知信号を受信した制御コントローラは、この検知信号の内容に基づいて、シートクッション22の高さ位置を高く或いは低くする操作を、チルト機構30に対して行うものとなっている。
なお、図1の(b)〜(d)の区間のシートクッション22には、乗員Pの足は地面Gから浮き上がった状態であるため、このシートクッション22にかかる着座者の体重は、着座者の全体重となる。これに対して、図1(e)に示す状態の車両シート21においては、乗員Pの足は地面Gに着地したものとなっているため、シートクッション22にかかる着座者の体重は、着座者の全体重から僅かながら減少した体重となる。このため、上記した着座センサによる乗員Pの体重の荷重変化の検知は容易に行えるものとなっている。
【0030】
さらに、上記した制御コントローラ(不図示)にあっては、この制御コントローラにより行われた過去のチルト機構30の操作を記憶するように記憶メモリが設けられるものであってもよい。なお、この記憶メモリは、本発明に係る記憶手段に相当する。このようにチルト機構30に記憶メモリが設けられる場合には、この記憶メモリに記憶された情報に基づいてチルト機構30よるアームレスト本体61(シートクッション22)の高さ位置を高くする操作を行うことができる。このように記憶メモリに記憶された情報に基づいてチルト機構30によるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行うと、上記したような操作コントローラ55や着座センサ(不図示)に基づく制御を省略することができて、アームレスト本体61の高さ位置を自動的に調節することができる。これによって、車椅子利用者Pが記憶された情報に合致する場合に、アームレスト本体61の高さ位置の調節を自動かつ簡略化することができ、この車椅子利用者Pを移乗させ易くすることができる。
【0031】
また、上記した実施の形態にあっては、本発明に係る掴まりアームとして可動式アームレストを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明に係る掴まりアームとしては、これに限定されるものではなく、車両シート内に収納される収納部品として構成されるものであってもよい。つまり、本発明に係る掴まりアームとしては、例えば、シートバック23の内部に収納可能にされ、離席時に車両シート21の幅方向の外側に拡張した状態となるアーム状に構成されるものであってもよい。
また、上記した実施の形態にあっては、図7に示す状態から図8に示す状態となるにあたっては、アームレスト本体61に体重を乗せた車椅子利用者Pの臀部がシートクッション22に着座するように車椅子利用者Pの体を回転させるものとなっていた。しかしながら、本発明に係る掴まりアームとしては、これに限定されることなく、例えば、適宜の駆動機構と操作機能とが付加されるものであってもよい。つまり、本発明に係る掴まりアームとしては、例えば、シート連結部65にアームレスト本体61を回転移動させるための駆動モータを内蔵させ、この駆動モータを上記した操作コントローラ55により操作できるようにしてもよい。このように構成した場合には、図7に示す状態から図8に示す状態となるにあたって、車椅子利用者Pの体を回転させるのを、車椅子利用者Pの操作コントローラ55からの操作によって回転駆動する、アームレスト本体61の回転移動によってなされるものであってもよい。
【0032】
また、上記した車両シート装置20のチルト機構30にあっては、図9に示すチルト機構30Aのように構成されるものであってもよい。すなわち、図9の(A)は、変形例となるチルト機構30Aの座面上昇動作前を示す側面模式図である。また、図9の(B)は、変形例となるチルト機構30Aの座面上昇動作後を示す側面模式図である。この変形例となるチルト機構30Aは、上記した実施の形態のチルト機構30と比較して、回転軸支部31Aをリンクを有した構造とした点で相違する。なお、上記した実施の形態のチルト機構30と同一構成となる箇所については、同一符号を用いて説明を省略する。
つまり、回転軸支部31Aは、回転軸支部本体321と、この回転軸支部本体321にて軸支される軸支リンク部322と、を具備するリンク構造にて構成される。この回転軸支部本体321は、上記した実施の形態の回転軸支部31と同一に構成される。また、軸支リンク部322は、棒状にて構成され、基端が回転軸支部本体321に回転可能に連結され、先端もシートクッション22に回転可能に連結される。また、昇降駆動部33Aの連結リンク部38Aの先端は、ガイドスリット39に嵌挿せずに、シートクッション22に相対移動せずに回転可能に連結されている。このようにチルト機構30Aを構成した場合でも、上記した実施の形態と同様、図9の(A)および(B)に示すように、シートクッション22の後側部分を昇降させるように機能する。
また、上記した車両シート装置20にあっては、図示するようにシートクッション22とシートバック23とが一体的に連動するものであったが、シートクッション22を固定状態にしてシートバック23のみを動くように構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 自動車(車両)
11 車両室内
12 車両室外
15 センターコンソール
16 助手席ドア
17 センターピラー
20 車両シート装置
21 車両シート
22 シートクッション
221 座面
23 シートバック
24 ヘッドレスト
25 シートベース
30,30A チルト機構(座面上昇手段)
31,31A 回転軸支部
321 回転軸支部本体
322 軸支リンク部
33,33A 昇降駆動部
35 駆動モータ
36 ピニオンギヤ
37 ドリブンギヤ
38,38A 連結リンク部
39 ガイドスリット
50 移動機構
52 四節リンク機構
55 操作コントローラ(高さ操作手段、操作入力手段)
60 可動式アームレスト(掴まりアーム)
61 アームレスト本体
65 シート連結部
G 地面
P 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置であって、
前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、着席時には該車両シートの構成部品あるいは該車両シート内に収納される収納部品として構成され、且つ離席時には該車両シートの幅方向の外側に拡張した状態となって該車両シートの高さ位置の昇降とともに高さ位置が変更される掴まりアームが設けられていることを特徴とする車両シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両シート装置において、
前記車両シートの高さ位置の昇降は、前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、該車両シートの高さ位置を高くできるチルト機構によりなされることを特徴とする車両シート装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両シート装置において、
前記車両シートの高さ位置の昇降は、前記車両シートが前記車両室外に前記車両シートが移動した場合に操作することができる操作コントローラによりなされることを特徴とする車両シート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両シート装置において、
前記車両シートの高さ位置の昇降を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された情報に基づいて該車両シートの高さ位置の昇降が制御されることを特徴とする車両シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60090(P2013−60090A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199315(P2011−199315)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】