説明

車両ステッカー用粘着フィルム

【課題】 高い隠蔽性と遮光性を有し、剥離時に基材破壊が生じにくく、かつ接炎下での優れた耐燃焼性を有する車両ステッカー用粘着フィルムを簡便かつ安価に実現する。
【解決手段】 少なくとも白色樹脂フィルム層及び隠蔽層を有する隠蔽性基材と、粘着剤層とを有し、前記白色樹脂フィルム層が二酸化チタンの含有量が5〜30質量%、厚さ25〜100μmの無延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする車両ステッカー用粘着フィルムにより、高い遮光性と隠蔽性を実現でき、窓ガラスに貼付しても反対面側の図柄が透けて視認されることがなく、各種鉄道車両用材料を被着体として貼付後に鉄道車両用燃焼試験を実施しても燃焼しないため、好適な鉄道車両用ステッカーを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両などの車内広告に使用される車両ステッカー用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両などの車内広告に使用される車両ステッカーには、基材の遮光性が乏しいと、印刷の見栄えが悪くなるおそれがあることから、高い遮光性が求められている。特に、車両窓に貼付する場合には、ステッカーの両面が視認されるため、基材を光が透過すると反対面の印刷が透けて見える問題があるため高い遮光性が必要となる。
【0003】
高隠蔽性や高遮光性を有するステッカーとしては、プラスチックフィルムに無機物等の微細粉末を添加して延伸する等の方法により、内部に微細な空孔を多数形成し、白色度および遮光性を高めた発泡基材を使用したステッカーが広く一般的に使用されている。しかし、当該延伸発泡基材を使用したステッカーは剥離時に、基材が層間で破壊しやすく、再剥離性に乏しいものであった。また貼付される被着体の種類によっては、耐燃焼性に問題があり、鉄道車両用材料燃焼試験により燃焼を生じる場合があった。
【0004】
こうした問題に対し、高い隠蔽性と遮光性を有しつつ、再剥離性を向上させたステッカー用粘着フィルムとして、2枚のベース基材を隠蔽層を介して積層した印刷用基材を使用した粘着フィルムが開示されている(特許文献1参照)。当該粘着フィルムは、上記構成の一定の特性を有する印刷基材を使用することで、優れた隠蔽性、遮光性および優れた再剥離性を実現するものである。しかし、近年、車両内の安全性の要請が高まっており、車両ステッカーに使用する粘着フィルムにおいても、上記の特性に加えて、厳しい燃焼試験条件での耐燃焼性を実現することが望まれている。
【0005】
上記課題を解決するために特許文献2〜5に、難燃化処理されたオーバーラミネート層を表面に積層する方法が開示されている。しかしながらかかる特殊なオーバーラミネート層は、透明性(可視光透過率)が低いために、ステッカー図柄印刷層の意匠性を損ねたり、また大幅なコストアップが避けられないものが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−068214号公報
【特許文献2】特開2002−356073号公報
【特許文献3】特開2003−033976号公報
【特許文献4】特開2003−048270号公報
【特許文献5】特開2003−048378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高い隠蔽性と遮光性を有し、剥離時に基材破壊が生じにくく、かつ接炎下での優れた耐燃焼性を有する車両ステッカー用粘着フィルムを簡便かつ安価に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、少なくとも白色樹脂フィルム層の一面に隠蔽層を有する隠蔽性基材であって、前記白色樹脂フィルム層が二酸化チタンの含有量が5〜30質量%、厚さ25〜100μmの無延伸フィルムを使用することにより、高い隠蔽性、遮光性、良好な再剥離性と共に、優れた耐燃焼性を実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、高い隠蔽性と遮光性、及び白色度を有することから、着色や図案等の広告印刷が設けられて車両ステッカーを形成した際に印刷面の見栄えが良好であり、両面が視認される際にも好適に視認面の着色や図案等が視認できる。また、車両ステッカーを貼り替える際にステッカーの破壊が生じにくいことから、良好に貼り替え作業を行うことができる。また、接炎下でも燃焼しにくいことから、ライターやたばこ等の火種に接触した際にも燃焼しにくく、安全性が高い。
【0010】
また、難燃性を実現するに際し、表面に特別な難燃化処理層の形成を必要とせず、表面に一般的な材料をオーバーラミネート層として使用することが可能なのでステッカーの意匠性を損ねることがない。また一般的な材料を使用することができるので原料調達が容易でかつコスト的にも安価である。また難燃化処理を施していないのでステッカー使用(ステッカー剥離)後には焼却処分することが可能である。ポリ塩化ビニル樹脂系の材料を使用していないのでハロゲン元素の含有率も低いと考えられる。よって焼却時も有害なガスが発生する可能性が低いので環境汚染や人体への影響も小さいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】鉄道車両燃焼試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、車両内に貼り付けられる車両ステッカーに使用する粘着フィルムであり、少なくとも白色樹脂フィルム層及び隠蔽層を有する隠蔽性基材と、粘着剤層とを有し、前記白色樹脂フィルム層が二酸化チタンの含有量が5〜30質量%、厚さ25〜100μmの無延伸樹脂フィルムからなるものである。
【0013】
[白色樹脂フィルム層]
本発明に使用する白色樹脂フィルム層には、延伸のなされていない白色の無延伸樹脂フィルムを使用する。本発明においては、白色とすることで高隠蔽性を確保すると共に、無延伸のフィルムを使用することで、接炎時樹脂が軟化した際に収縮が生じにくく大孔(直径が5mm以上)が発生しにくい。接炎時にステッカーに大孔が生じると当該孔の周囲から急速に燃焼が進行するが、本発明で使用する無延伸フィルムは、このような燃焼のきっかけが生じにくいため優れた耐燃焼性を実現できる。
【0014】
無延伸樹脂フィルムを形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、66ナイロン、6ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられる。なかでも、白色化された無延伸樹脂フィルムを、安価にかつ容易に入手しやすいことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレンテレフタレートの少なくとも一種を主たる樹脂成分とする白色樹脂フィルムを好ましく使用でき、ポリプロピレンを主たる樹脂成分とする白色樹脂フィルムは汎用性が高いため特に好ましく使用できる。また、樹脂成分として塩化ビニルを含有しないものは、環境汚染対応(廃棄処分時等)の観点及び、接炎時に有害ガス(HCl,Cl)や有害物(ダイオキシン類等)の発生が抑制できるため人体への影響も小さく好ましく使用できる。また、これら無延伸樹脂フィルムは発泡処理のなされていないものが剥離時の基材破壊を生じにくいため好ましい。
【0015】
なかでも、樹脂成分がポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリブチレンテレフタレートからなる無延伸の樹脂フィルム、特に無延伸のポリプロピレンフィルムは、薄い厚さで白色着色剤を多く含有しても良好な柔軟性を有することからステッカーとして好適に使用でき、剥離時に層間割れを生じにくい車両ステッカーを実現できる。
【0016】
白色樹脂フィルム層には、二酸化チタンにより白色化された無延伸樹脂フィルムを使用する。白色樹脂フィルム層中の二酸化チタンの含有量は5〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。当該含有量とすることで、積層する隠蔽インキ層と相まって高い隠蔽性と、低い透明性を実現でき、かつフィルムの柔軟性が損なわれることがない。また、大きな熱容量を確保できるため好適に耐燃焼性を実現できる。
【0017】
白色樹脂フィルム層の厚さは25〜100μm、好ましくは50〜100μm、より好ましくは80〜100μmである。当該厚さとすることによりステッカー加工時、またはステッカーとして使用する際の貼付作業時や剥離作業時に必要な適度な強度や剛度となり、必要な遮光性を確保することができる。
【0018】
白色樹脂フィルム層は、JIS K 7361−1に規定された測定方法による全光線透過率(τt)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。さらに隠蔽層を設けることにより特に高い遮光性を実現できる。
【0019】
白色樹脂フィルム層は、表面層の白色度が75%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。当該白色度とすることで、得られる車両ステッカーの印刷面の視認性を好適に向上できる。
【0020】
[隠蔽層]
本発明に使用する隠蔽層としては、着色インキ層又は金属薄膜層を使用できる。着色インキ層としては、遮光性を付与できるものであれば特に制限されないが、黒色や濃色のインキからなる着色インキ層を隠蔽層とすることで遮光性を付与しやすいため好ましい。具体的には、例えば、カーボーンブラックを着色剤として含有する黒色インキを好ましく使用でき、その他、二酸化チタンや、色調を調整するために各種無機、有機系の顔料を使用することもできる。また、隠ぺい層に使用するインキのバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂系が好適で適度な柔軟性と基材密着性を有し好適である。また隠蔽層を印刷した後にロール状に巻き取る場合、表面の可飾層とブロッキングを防止するために、シリカ等のブロッキング防止剤を適宜添加してもなんら差し支えない。隠蔽層用に使用されるインキは、印刷方式によって適宜選択して使用することになるが一例を挙げるならば、グラビア印刷方式を選択した場合、ポリウレタン樹脂系が好適でありポリウレタン樹脂系インキとしては例えば、大日精化工業(株)製グラビアインキである「ハイラミック」、DICグラフィクス(株)製「ユニビアNT」などが挙げられる。
【0021】
隠蔽層の全光線透過率は5%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい。隠蔽層として黒色インキを使用する場合には、インキ中のカーボーンブラックの含有質量%を0.1%〜10%の範囲で適宜調整することで、全光線透過率を好適に低減できる。
【0022】
また、隠蔽インキ層の厚さとしては、使われるインキの顔料濃度によって異なるが、1〜10μm好ましくは、2〜8μm、より好ましくは4〜6μmである。インキ層の厚みを1μm以上とすることで遮光性を確保しやすくなり、10μm以下とすることで、フィルムの柔軟性が損なうことなく好適な貼付作業性を得やすくなる。
【0023】
また隠蔽層として使用する金属薄膜層としては、金属蒸着やスパッタリングにより形成される金属蒸着層や、薄い金属箔からなる金属箔層等を使用できる。金属薄膜層に使用する金属としては必要な遮光性が得られれば特にこれらに限定されるものではないが、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、ニッケル、ステンレス等を使用することができ、特にアルミニウムが重量や経済性からより好適である。金属箔としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製「スーパーホイル」6〜15μ等がある。
【0024】
[隠蔽性基材]
本発明に使用する隠蔽性基材は、少なくとも、上記白色樹脂フィルム層と、上記隠蔽層とを有する基材である。白色樹脂フィルム層と隠蔽層との積層は使用する材料や設ける隠蔽層に応じて適宜調整すればよい。例えば白色樹脂フィルム層に直接着色インキ層からなる隠蔽層を設ける場合には、白色樹脂フィルム層の一面又は両面にオフセット印刷方式やグラビア印刷方式等により、着色インキを印刷して設けることができる。また、白色樹脂フィルム層に着色インキからなる隠蔽層を積層する際には、必要に応じて、白色樹脂フィルム層表面に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線や電子線照射等の表面処理を行ってもよい。
【0025】
また、白色樹脂フィルム層に直接金属薄膜層からなる隠蔽層を設ける場合には、白色樹脂フィルム層の一面又は両面に蒸着やスパッタリングにより金属蒸着層を密着させても良い。また、金属箔を使用し、接着剤を用いてドライラミネート法やホットメルト法により金属箔を白色樹脂フィルム層に貼合わせても良い。
【0026】
また、白色樹脂フィルム層に隠蔽層を積層する際には、隠蔽層が設けられた市販の樹脂フィルムを、上記白色樹脂フィルム層と積層して隠蔽性基材としてもよい。例えば、市販されている20nm〜80nm(200〜800Å)の厚みをもつ蒸着膜付きフィルム、例えば、三井化学東セロ(株)社製メタライン(ML)フィルムCPグレード「CPWA−25」等のアルミニウム蒸着膜付き無延伸フィルムをドライラミネート法やヒートシール法にて、上記白色樹脂フィルムと貼り合せることで、隠蔽性基材としてもよい。
【0027】
隠蔽層が設けられた市販の樹脂フィルムを、白色樹脂フィルム層と積層する場合には、貼り合せる白色樹脂フィルム層と同組成の樹脂フィルムを使用するとことが、ラミネートフィルムのカール防止の観点から好ましい。
【0028】
隠蔽性基材の構成としては、少なくとも一方の表面を白色樹脂フィルム層とした構成、特に、一方の表面が白色樹脂フィルム層、他方の表面が隠蔽層である構成がステッカーとする際に加飾層を設けやすく、加飾層の視認性も良好となるため好ましい。また、白色樹脂フィルム層を二層以上有する構成は、高隠蔽性を得やすいため好ましい。
【0029】
隠蔽性基材の好ましい構成例としては、例えば、(1)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層を有する構成、(2)白色樹脂フィルム層の両面に隠蔽層を有する構成、(3)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層を有し、当該隠蔽層上に、さらに白色樹脂フィルム層を有する構成、(4)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層を有する基材同士を、一方の隠蔽層と、他方の白色樹脂フィルム層が積層するよう貼りあわされた構成、(5)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層が設けられた基材同士を、隠蔽層同士又は白色樹脂フィルム層同士が積層するよう貼りあわされた構成、等を例示できる。なかでも、(1)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層を有する構成は、構成が簡易であるため好ましく、(4)白色樹脂フィルム層の片面に隠蔽層を有する基材同士を、一方の隠蔽層と、他方の白色樹脂フィルム層が積層するよう貼りあわされた構成は特に優れた遮光性を実現しやすいため好ましい。なお、これら隠蔽性基材において、白色樹脂フィルム層の片面又は両面に隠蔽層を有する構成は、上記したように直接積層しても隠蔽層を有する樹脂フィルムを白色樹脂フィルム層に積層しても良いが、白色樹脂フィルム層の表面に着色インキ塗布や金属蒸着、あるいは接着剤による金属箔の貼り付けにより、隠蔽層を直接積層したものを好ましく使用できる。
【0030】
本発明に使用する隠蔽性基材は、JIS K 7361−1に規定されている全光透過率(τt)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下とすることが特に好ましい。当該光透過率とすることで、車両ステッカーが両面から視認される形態で使用された際にも、印刷面の視認性を向上させることができる。
【0031】
隠蔽性基材の厚さは25〜250μm、好ましくは70〜220μm、より好ましくは100〜170μmである。当該厚さとすることで、ステッカー加工品に加工する際、ステッカー加工品を使用する際に、適度な基材強度と剛度(腰)を確保でき加工が容易となり、使用時の貼り作業性、使用後の剥離作業を効率よく行うことができる。また、必要かつ十分な遮光性を確保することができる。
【0032】
[粘着剤層]
本発明に使用する粘着剤層は、特に限定されるものではないが、車両ステッカー用途として好適な耐候性や接着強度、使用後の再剥離性、耐燃焼性などを得やすい点から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層が好ましい。
【0033】
当該アクリル系粘着剤組成物としては、(a)炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(粘着性モノマー(ホモポリマーが低Tgを示すモノマー))、(b)極性基含有ビニルモノマー(凝集性モノマー)、(c)架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーを必須成分とするアクリル共重合体を粘着剤主剤として、該粘着剤主剤に架橋剤を添加したものが好ましい。上記のようなアクリル共重合体は、再剥離性に適している。
【0034】
粘着性モノマー(a)としては、炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中から選択される少なくとも一種類のモノマーをモノマーの総量に対して50質量%以上使用することが好ましい。
【0035】
極性基含有ビニルモノマー(b)としては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。窒素含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノアクリレート等が挙げられる。その他の凝集性ビニルモノマーとしては、無水マレイン酸、アクリロニトリル、等が挙げられる。
【0036】
架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)において、架橋剤と反応する官能基としては、水酸基やアミノ基、グリシジル基などが挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アミノ基含有モノマーとしては、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。さらに、グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートが挙げられる。特に好適なモノマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
また、その他のモノマーとして、ホモポリマーが高Tgを示すモノマーも必要に応じて使用することができる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル等がある。
【0037】
アクリル共重合体を100質量部とした場合、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の配合量は50質量部以上、極性基含有ビニルモノマー(b)の配合量は0.1〜5質量部、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)の配合量は、0.01〜5質量部とされる。炭素数1から14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の配合量が50質量部以上とすることで好適な初期接着性を得やすく、高極性ビニルモノマー(b)の配合量を0.1質量部以上とすることで凝集力を得やすく、被着体から粘着フィルムを剥離する際の糊残りが生じにくい。また、高極性ビニルモノマー(b)の配合量を5質量部以下とすることで、良好な低温接着性を得やすくなる。また、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)の配合量を、0.01質量部以上とすることで、架橋反応性が好適となりやすく、アクリル共重合体を十分に架橋でき、5質量部を以下とすることで、粘着剤溶液のポットライフが特に好適となり、粘着剤溶液の取扱い性が良好となる。
【0038】
モノマーを共重合して生成する粘着剤主剤のガラス転移点温度が−70℃〜−20℃になるようにモノマーの配合量を適宜設定することが好ましい。粘着剤主剤の製造方法は種々の公知の方法を用いることができるが、例えば、有機溶剤中でモノマーをラジカル重合させることにより製造することができる。有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。使用する重合触媒は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
また、接着力向上のためロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、スチレン樹脂、およびキシレン系樹脂等の粘着付与剤(粘着付与樹脂)を配合することが一般的に行われているが、本発明では粘着フィルムを剥がした際に、粘着剤が被着体に残ったり、汚染物質付着の原因となる恐れがあるので、粘着付与樹脂を使用しないことが好ましい。
【0040】
上記粘着剤主剤には、凝集力向上や基材との投錨性向上のために、架橋剤を添加する。架橋剤には、例えば、イソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。特に好ましくはイソシアネート系で、さらに好ましくは多官能イソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物である。架橋剤の使用量は特に制限されないが、架橋剤の添加量が少ないと架橋が不十分で接着力上昇や再剥離の際の粘着剤残りの原因になる。また、添加量が多いと架橋が過度になり粘着フィルムの浮きの原因になる。したがって、架橋剤の添加量は粘着剤主剤100質量部に対して0.2〜5.0質量部であるのが好ましい。さらに好ましくは0.5〜2.0質量部である。
【0041】
上記粘着剤は、ゲル分率が50%以上、損失正接(tanδ)のピーク温度が−20℃以下、10〜40℃の温度範囲内における損失正接が0.2〜0.8の範囲内であり、被着体に対する粘着力が5〜20N/25mmであることが好ましく、更に、10〜15N/25mmであることがより好ましい。ゲル分率が50%以上であると、粘着剤に適度な凝集力が得られ高温(40℃)下でも糊残りし難い。tanδのピーク温度が−20℃以下の場合、低温においても良好な粘着性を保つことができる。10〜40℃の温度範囲内における損失正接が0.2〜0.8の範囲内であれば、使用温度(10〜40℃)における動的粘弾性特性が最適のものとなり、接着性と再剥離性を兼ね備えたものとなる。さらに、被着体に対する粘着力が5〜20N/25mm、好ましくは10〜15N/25mmの範囲内であれば、使用時にステッカーを支持するには十分な接着性を有し、かつ貼り替え作業時にも剥離作業性を損なわない再剥離性能を兼ね備えたものとなる。
【0042】
粘着剤層の塗布量は、10〜40g/mの範囲が好ましく、特に好ましくは、23〜33g/mである。10g/m以上であると好適な接着力が得られやすく、40g/m以下であると加飾層の印刷や型抜き加工時に粘着剤のはみ出しが発生し難く良好な加工性を得られやすい。
【0043】
[車両ステッカー用粘着フィルム]
本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、上記の隠蔽性基材の一面に粘着剤層が設けられた粘着フィルムである。隠蔽性基材の一面が隠蔽層、他面が白色樹脂フィルム層からなる場合には、粘着剤層を隠蔽層側に設けることが好ましい。本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、当該構成により、高い隠蔽性や低い全光線透過率、良好な再剥離性、さらには優れた耐燃焼性を実現できることから、鉄道車両などの車内広告に使用される車両ステッカーに好適に使用でき、特に両面から視認される車両窓部や車両内壁(メラミン樹脂化粧板)に貼付される車両ステッカーに好適に使用できる。特に、車両内壁に好適に用いられるメラミン樹脂化粧板は、ガラス等の被着体よりも耐燃焼性が得られにくいものであるが、本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、メラミン樹脂化粧板を被着体とする場合にも好適な耐燃焼性を実現できる。
【0044】
本発明の車両ステッカー用粘着フィルムは、隠蔽性基材の一面に、着色や文字、図案等を印刷した加飾層を設けることで、車両ステッカーとして使用される。隠蔽性基材が白色樹脂フィルム層からなる表面を有する場合には当該白色樹脂フィルム層側に加飾層を設けることが好ましい。当該加飾層は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、シルクスクリーン印刷方式等により、適宜の文字や図案を印刷することにより形成することができる。また、両面に印刷層を設け、両面から視認される車両ステッカーとする場合には、隠蔽性基材の他面(粘着剤層を設ける面)にも同様にして加飾層を設ければよい。
【0045】
また、隠蔽性基材への加飾層の密着性を向上させるために、隠蔽性基材の白色樹脂フィルム層表面や隠蔽インキ層表面に、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ放電処理等の表面処理を施したり、アンカーコート剤を塗布しても良い。アンカーコート剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリルアミン系樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが環境保護の観点から塩素原子を含まないものが好ましい。
【0046】
さらに、隠蔽性基材の隠蔽層又は隠蔽層表面に設けられた加飾層への粘着剤層の密着性を向上させるために、これら表面に、アンカーコート剤を塗布してもなんら差し支えない。
【0047】
本発明においては、車両ステッカーとする際の加飾層は、通常の印刷に使用される印刷方式、印刷インキを使用できる。また、必要に応じて加飾層の表面にオーバーラミネート層を設けてもよいが、当該オーバーラミネート層も、一般的に使用される二軸延伸法により製造された、厚さ20〜40μmの透明なポリプロピレン(OPP)フィルムや厚さ12〜25μmのポリエステル(PET)フィルム、厚さ25〜50μmのポリメタクリル樹脂(PMMA)系フィルム、耐候性や防汚性が求められる場合には厚さ25〜50μmフッ素樹脂系(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン系(アクリルアロイ)樹脂フィルム)等のラミネートフィルムを積層できる。本発明の粘着フィルムによれば、これら通常の印刷インキによる加飾層や、一般的オーバーラミネート層であっても、好適な耐燃焼性を実現できる。
【0048】
オーバーラミネート層の厚さは、ステッカー用途として通常使用される範囲であれば特に制限されないが、100μm以下、好ましくは80μm以下の範囲であると特に好適な耐燃焼性を得やすいため好ましい。
【0049】
本発明の車両ステッカー用粘着フィルムの厚さは、35〜300μmの範囲が好ましく特に好ましくは、100〜200μmである。粘着フィルムの総厚みを当該範囲とすることで、原料コストを低減でき、また、被着体に対する好適な貼り付け作業性や剥離作業性を得やすくなるため好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらになんら限定されるものではない。尚、実施例中の「部」「%」とあるのは特に断りがないかぎり質量基準を示す。
【0051】
[隠蔽層の形成]
<隠蔽性インキ1(黒)>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」795R墨を100部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤10重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌した。
【0052】
<隠蔽性インキ2(ベージュ)>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」701R白100部に、同795R墨を0.3部、同722R黄0.5部、同902R赤0.2部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤5重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌した。
【0053】
[ドライラミネート接着剤Dの調製]
接着剤主剤(DICグラフィクス(株)製、ディックドライLX−901)90質量部と硬化剤(DICグラフィクス(株)製、商品名:KW75)10質量部を配合し、酢酸エチル10質量部にて希釈して、よく攪拌することにより、ドライラミネート接着剤Dを調製した。
【0054】
[隠蔽性基材の作成]
<隠蔽性基材1>
白色樹脂フィルム層として、(株)タツノ化学製白色無延伸ポリエチレン(PE)フィルム「タフパーTKP ADI 0.08」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)17.6%)のコロナ放電処理面側に、ワイヤーバーを用いて乾燥後の隠ぺい層の厚さが4μmになるように隠蔽性インキ1を塗布し80℃で1分乾燥し隠蔽層1を形成し隠蔽性基材1を得た。
【0055】
<隠蔽性基材2>
隠蔽性インキ2を使用したこと以外は隠蔽性基材1と同様にして、隠蔽層2を形成し隠蔽性基材2を得た。
<隠蔽性基材3>
白色樹脂フィルム層として、(株)タツノ化学製白色無延伸ポリエチレン(PE)フィルム「タフパーTKP ADI 0.08」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)17.6%)のコロナ放電処理面側に、10−2Paの減圧化、蒸着法により、アルミニウム蒸着膜を45±5nmの厚さになるように形成した。
【0056】
<隠蔽性基材4>
白色樹脂フィルム層として、(株)タツノ化学製白色無延伸ポリエチレン(PE)フィルム「タフパーTKP ADI 0.08」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)17.6%)コロナ放電処理面側に、接着剤Dを乾燥後の塗布量が2±1g/mになるように塗布し80℃1分加熱乾燥後に東洋アルミニウム(株)製アルミニウム箔「スーパーホイル」12μmを貼り合せた後40℃48時間養生した。
【0057】
<隠蔽性基材5>
白色樹脂フィルム層として、三菱樹脂(株)製白色無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム「アートプライW」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)15.2%)を使用したこと以外は隠蔽性基材1と全く同様にして隠蔽性基材5を得た。
【0058】
<隠蔽性基材6>
白色樹脂フィルム層として、三菱樹脂(株)製白色無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム「アートプライW」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)15.2%)を使用したこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材6を得た。
【0059】
<隠蔽性基材7>
東洋鋼鈑(株)製「白色無延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム」(厚さ100μm、全光線透過率(τt)13.7%)を用いたこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材7を得た。
【0060】
<隠蔽性基材8>
隠蔽性基材1の隠蔽性インキ1塗布面側に、ドライラミート接着剤D乾燥後の塗布量が2.0±1.0g/mになるように塗布し80℃1分加熱乾燥後、隠蔽性基材2の隠蔽層2の反対面側を貼り合せた後40℃48時間養生し隠蔽性基材8を得た。
【0061】
<隠蔽性基材9>
隠蔽性基材5の隠蔽性インキ1塗布面側に、ドライラミート接着剤D乾燥後の塗布量が2.0±1.0g/mになるように塗布し80℃1分加熱乾燥後、隠蔽性基材6の隠蔽層2の反対面側を貼り合せた後40℃48時間養生し隠蔽性基材9を得た。
【0062】
<隠蔽性基材10>
白色基材としてユポコーポレーション(株)製発泡延伸ポリプロピレン(発泡PP)フィルム「ユポSGS80」(厚さ80μm、全光線透過率(τt)17.8%)を用いたこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材10を得た。
【0063】
<隠蔽性基材11>
白色基材として東洋紡績(株)製発泡延伸ポリエステルフィルム(発泡PET)「クリスパーK2411」(厚さ50μm、全光線透過率(τt)13.4%)を用いたこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材11を得た。
【0064】
<隠蔽性基材12>
白色樹脂フィルム層として、中本パックス(株)製発泡延伸ポリプロピレン(発泡PP)フィルム「カルレTNRK」(厚さ70μm、全光線透過率(τt)18.0%)を使用したこと以外は隠蔽性基材1と全く同様にして隠蔽性基材12(a)を得た。
【0065】
白色樹脂フィルム層として、中本パックス(株)製発泡延伸ポリプロピレン(発泡PP)フィルム「カルレTNRK」(厚さ70μm、全光線透過率(τt)18.0%)を使用したこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材12(b)を得た
【0066】
隠蔽性基材12(a)の隠蔽性インキ1塗布面側に、ドライラミート接着剤D乾燥後の塗布量が2g/mになるように塗布し80℃1分加熱乾燥後、隠蔽性基材12(b)の隠蔽層2の反対面側を貼り合せた後40℃48時間養生し隠蔽性基材12を得た。
【0067】
<隠蔽性基材13>
樹脂フィルムとして、三井化学東セロ(株)製、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「OP U−1」(厚さ50μm、を使用したこと以外は隠蔽性基材2と全く同様にして隠蔽性基材13を得た。
【0068】
<アクリル共重合体の調製>
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗、および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、表2の組み合わせに配合したモノマー混合物100質量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部とを、酢酸エチル100質量部に溶解し、80℃で8時間重合してアクリル共重合体A、Bの溶液を得た。
なお、表2で用いたモノマーの略号の意味は、以下のとおりである。
【0069】
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
VA:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0070】
<粘着剤主剤溶液A,Bの調製>
表3の粘着剤主剤A,B,は、アクリル共重合体100質量部を、トルエンを混合して希釈することにより、それぞれ、固形分45%の粘着剤主剤溶液を得た。
【0071】
<粘着フィルムの作成>
上記粘着剤主剤A,B,の溶液に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL−45)を、表3の通りに添加して攪拌後、乾燥後の塗布量が28g/mになるように剥離処理をした剥離紙(王子製紙(株)社製セパレート110EPS(P)(3)ブルー)に塗工し、80℃で2分乾燥することにより、それぞれ、粘着剤A1,B1,からなる粘着剤層を形成した。
さらに、表4〜5に示すように、粘着剤層A1,B1,を塗布した剥離紙を、上記隠蔽性基材1〜9と組み合わせて貼合わせることにより、粘着フィルム1〜13(実施例1〜9及び比較例1〜4)を得た。
【0072】
上記隠蔽性基材、粘着フィルム及び車両ステッカーの評価は、下記の試験により行った。得られた結果を、各々の表に示す。
【0073】
<全光線透過率(τt)測定法>
隠蔽性基材の全光線透過率は、JIS K 7361−1に従って測定した。測定機は(株)村上色彩技術研究所製、ヘーズ透過率測定機「HR−100」を用いて測定した。
【0074】
<白色度測定法>
隠蔽性基材の白色度は、JIS P 8148に従って、(株)村上色彩技術研究所製、ISO白色度・不透明度測定機「WMS−1」を用いて測定した。
【0075】
<重量平均分子量の測定>
粘着剤主剤A、Bの平均分子量は、GPC装置(東ソー社製、品番SC−8020)と、高分子量カラム(東ソー社製、品番TSKgelGMHR−H)を用い、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレン換算で、アクリル共重合体の重量平均分子量を測定した。
【0076】
<動的粘弾性の測定>
粘着剤主剤に架橋剤を添加して得られた粘着剤層A1〜B1を、5mm厚みまで重ね合わせて試験片を作製した。粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)に7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃まで貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)を測定し、tanδピーク温度、10〜40℃のtanδ値を得た。損失正接tanδは、以下の計算式より算出した。
損失正接tanδ=G’’/G’
【0077】
<ゲル分率の測定>
粘着剤主剤に架橋剤を添加して得られた粘着剤層を、乾燥後の厚みが25μmになるように、ポリエステルフィルム(剥離処理したもの)の上に設けて試験片を調製した。試験片を20mm×100mmの大きさに切断し、ポリエステルフィルムを剥がして、トルエン抽出前の重量aを測定した。次に、同一試験片をトルエン中に24時間浸漬後、ゲル物を取り出し、100℃で2時間乾燥し、トルエン抽出後の重量bを測定した。ゲル分率は、以下の計算式より算出した。
ゲル分率(%)=(b/a)×100
【0078】
<粘着力の測定>
各粘着フィルムについて、各種被着体に対する粘着力を、JIS Z 0237の2000年度版の条件に従って23℃、50%RHの環境下にて貼付し1時間後に測定した。被着体はメラミン樹脂化粧板(日立化成工業社製ALH−8725S)を使用した。
【0079】
<再剥離性評価法>
各粘着フィルムから幅25mm×長さ100mmのサンプルを切り出し、室温環境下(23℃×50%RH)にて、各種被着体(粘着力の測定で使用したものと同じもの)に貼付後、2kgローラにて1往復させて圧着する。その後40℃の環境下に、168時間放置後、引っ張り試験機を用いて被着体に対して90度方向に20m/分の速度で引きはがした時の糊のこりの状態により、粘着フィルムの再剥離性を、以下の基準で目視評価した。
◎:全面糊残りなし(糊残り5%未満)
○:剥離きっかけまたは剥離最後に糊のこり有り(糊残り5%以上10%未満)
△:わずかに糊残り有り(糊残り10%以上20%未満)
×:広範囲に糊残り有り(糊残り20%以上)
××:基材の層間破壊
【0080】
<燃焼試験方法>
燃焼試験は、鉄道車両燃焼試験方法に従い以下のとおり実施し、判定基準に従って評価した。
図1に示すとおりB5判の供試材(182mm×257mm)を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試材の下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する。
燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は供試材への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。
試験室内の条件は温度15℃〜30℃、湿度60%〜75%の範囲の中で実施する。
判定基準を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
燃焼試験用試験片サンプルの調整
試験に用いた車両ステッカーの試験片サンプルは、上記粘着フィルム(実施例1〜9及び比較例1〜3)それぞれの表面に適宜UVオフセット印刷により多色刷り意匠を施した後に、三井化学東セロ(株)社製2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「OPU−1」(20μm)を接着剤D(乾燥後の塗布量1.0±0.5g/m)を用いて貼り合わせものを使用した。
試験に用いた被着体は、日立化成工業(株)製ALH−8725S(メラミン樹脂化粧板;t=1.4mm)を使用した。粘着フィルムを表面が清浄な上記規定サイズの被着体全面に可能な限り空気溜まりが残らないように貼付し室温にて24時間以上養生後試験した。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
以上示したように、実施例1〜9のフィルムは、いずれも高い遮光性を保持し、剥離の際は基材破壊や糊残りが起きなかった。また無延伸フィルムを用いているので鉄道車両用材料燃焼試験の結果において不燃性を示した。さらにポリ塩化ビニル系の素材や難燃剤を用いていないので環境負荷低減にも貢献できる。
比較例1〜4は、いずれも隠蔽性基材のベースフィルムとして延伸フィルムを使用しているので鉄道車両燃焼試験において緩燃性であった。また、比較例1〜2では、再剥離性試験の際に層間破壊を起こし、また比較例4は、良好な全光線透過率が得られないものであった。
【符号の説明】
【0088】
1 試験片
2 アルコール容器
3 容器受台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に貼り付けられる車両ステッカーに使用する粘着フィルムであって、
少なくとも白色樹脂フィルム層及び隠蔽層を有する隠蔽性基材と、粘着剤層とを有し、
前記白色樹脂フィルム層が二酸化チタンの含有量が5〜30質量%、厚さ25〜100μmの無延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項2】
前記隠蔽性基材が、前記白色樹脂フィルム層を二層有する隠蔽性基材である請求項1に記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項3】
前記白色樹脂フィルム層の全光線透過率が20%以下である請求項1又は2に記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項4】
前記隠蔽性基材の全光線透過率が5%以下であり、少なくとも一方の表面の白色度が75%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項5】
前記白色樹脂フィルム層が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはポリブチレンテレフタレート樹脂の少なくとも一種を主たる樹脂成分とし、かつポリ塩化ビニル樹脂を含有しない樹脂フィルムからなる請求項1〜4のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項6】
前記隠蔽層が、着色インキ層又は金属薄膜層である請求項1〜5のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム
【請求項7】
前記隠蔽性基材の厚さが25〜220μmである請求項1〜6のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層が、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを50質量%以上、極性基含有ビニルモノマーを0.1〜5質量%、及び、架橋剤と反応する官能基を含有するビニルモノマー0.01〜5質量%含有するアクリル系共重合体を架橋した粘着剤層である請求項1〜7のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項9】
前記粘着剤層のゲル分率が50〜80%である請求項1〜8のいずれかに記載の車両ステッカー用粘着フィルム。
【請求項10】
前記車両ステッカー用粘着フィルムの隠蔽性基材の少なくとも一面に加飾層を有することを特徴とする車両ステッカー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−181418(P2012−181418A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45025(P2011−45025)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】