説明

車両ドアアンロック用通信システム

【課題】車両に搭載された車載システムと当該車両のユーザが携帯する携帯機とが通信を行うことで車両がドアアンロックスタンバイ状態に移行する技術において、ユーザが車両の位置を把握し易くしつつも、車両に不正侵入される可能性を低減する。
【解決手段】車載システムは、まず、照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲に入った(ステップ115)ことに応じて照明装置を点灯させ(ステップ130)、その後、アンロック用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲よりも強い所定のアンロック用受信強度範囲に入ったことに応じて(ステップ140)ドアアンロックスタンバイ状態に入る(ステップ155)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアアンロック用通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車載システムと、当該車両のユーザが携帯する携帯機とが通信を行い、車載システムが携帯機の認証に成功した段階で、車両の照明を点灯させると共に、当該車両に対するユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行する技術が知られている。このようにすることで、ユーザが車両の位置を把握し易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−90706
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような技術においては、車両と携帯機との距離が長いときに認証が成功すると、ユーザが車両から離れているのに当該車両が誰でもアンロック可能となる上に、照明が点灯することで、アンロック可能となった車両の位置も他人に明白になってしまうので、車両に不正に侵入される恐れがある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、車両に搭載された車載システムと当該車両のユーザが携帯する携帯機とが通信を行うことで車両がドアアンロックスタンバイ状態に移行する技術において、ユーザが車両の位置を把握し易くしつつも、車両に不正侵入される可能性を低減することを第1の目的とする。
【0006】
また近年、携帯機の近傍と車両の近傍に通信中継器を配置し、車両と携帯機が遠く離れているにもかかわらず、あたかも携帯機が車両の近くにいるかのように偽装し、車両に進入するリレーアタックという手法が問題になっている。
【0007】
そこで本発明は、車両に搭載された車載システムと当該車両のユーザが携帯する携帯機とが通信を行うことで車両がドアアンロックスタンバイ状態に移行する技術において、リレーアタックに対する新規な防御手法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両のユーザに携帯される携帯機(1)と、前記車両内に搭載される車載システム(30)とを備えた車両ドアアンロック用通信システムであって、前記携帯機(1)は、無線受信するための携帯側受信部(3)と、無線送信するための携帯側送信部(5)と、前記携帯側受信部(3)および前記携帯側送信部(5)を用いて無線送受信可能な携帯側制御部(6)と、を備え、
前記車載システム(30)は、前記携帯機(1)から無線受信するための携帯側受信部(11)と、前記携帯機(1)に無線送信するための車両側送信部(13)と、前記車両側受信部(11)および前記車両側送信部(13)を用いて前記携帯機(1)と無線通信可能な車両側制御部(14)と、を備え、前記車両側制御部(14)は、照明点灯用コードを繰り返し無線送信し、前記携帯側制御部(6)は、前記車両側制御部(14)が送信した前記照明点灯用コードを前記携帯側受信部(3)を介して受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記照明点灯用コードを受信したときの受信強度である照明点灯用コード受信強度を取得し、取得した前記照明点灯用コード受信強度の情報と、記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、前記車両側制御部(14)は、無線送信した照明点灯用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む前記応答信号を受信すると、受信した前記応答信号に含まれる前記照明点灯用コード受信強度の情報に基づいて、当該照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲内であるか否かを判定し、照明点灯用受信強度範囲内であると判定した場合は、前記車両の照明装置(16)を点灯させると共に、アンロック用コードを繰り返し無線送信し、前記携帯側制御部(6)は、前記携帯側受信部(3)を介して前記アンロック用コードを受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記アンロック用コードを受信したときの受信強度であるアンロック用コード受信強度を取得し、取得した前記アンロック用コード受信強度の情報と、前記記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、車両側制御部(14)は、無線送信した前記アンロック用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む応答信号を受信すると、受信した当該応答信号に含まれるアンロック用コード受信強度の情報に基づいて、前記照明点灯用受信強度範囲の下限値よりも大きい下限値を有する所定のアンロック用受信強度範囲内に当該アンロック用コード受信強度が入っているか否かを判定し、前記アンロック用受信強度範囲内であると判定した場合は、ユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行するか、または、ドアをアンロックすることを特徴とする車両ドアアンロック用通信システムである。
【0009】
このように、携帯機(1)が、車載システム(30)から信号(照明点灯用コードまたはアンロック用コード)を受信したときの受信強度を取得して車載システム(30)に送信することで、車載システム(30)は、携帯機(1)までの距離に相関のある物理量(すなわち受信強度)を取得することができる。
【0010】
そして車載システム(30)は、まず、照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲に入ったことに応じて照明装置(16)を点灯させ、その後、アンロック用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲よりも強い所定のアンロック用受信強度範囲に入ったことに応じてドアアンロックスタンバイ状態に入る。つまり、ユーザがまず車両に対してある距離範囲(照明点灯用受信強度範囲に応じた距離範囲)内に入ると照明装置(16)を点灯させ、その後ユーザが更に車両に近づいてアンロック用受信強度範囲に応じた距離範囲に入ると、ドアがアンロック可能となる。
【0011】
したがって、ユーザが車両に近づくとき、早い段階で照明装置(16)が点灯することで、ユーザが車両の位置を把握し易くなり、それと共に、照明装置(16)が点灯してからユーザが更に車両に近づいた段階で、ドアがアンロック可能となることで、車両に不正侵入される可能性が低減される。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両ドアアンロック用通信システムにおいて、前記携帯側受信部(3)が無線受信のために用いるアンテナ(2)は、角度ダイバシティを実現する3つのアンテナを含むことを特徴とする。
【0013】
携帯機(1)は、ユーザが携帯するものなので、その姿勢は不定であることが多い。その場合でも、上記のようになっていることで、携帯側受信部(3)の受信強度と車載システム(30)から携帯機(1)までの距離との関係は、携帯機(1)の姿勢に影響を受けにくくなる。その結果、照明装置(16)の点灯タイミング、ドアアンロックスタンバイ状態への移行(またはドアのアンロック)のタイミングが安定化する。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1ないし3に記載の車両ドアアンロック用通信システムにおいて、前記車両側制御部(14)は、前記照明点灯用コード受信強度が前記照明点灯用受信強度範囲に入る前に前記照明点灯用受信強度範囲を上回った場合は、前記車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、照明点灯用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする。
【0015】
リレーアタック装置の中継器ペアの一方を車両の近くに配置し、他方を携帯機(1)の近くに配置し、その上で中継器ペアを作動させた場合、携帯機(1)における信号の受信強度は、携帯機(1)から携帯機(1)側の中継器までの距離に応じた受信強度まで急に変化する。その場合、車両側制御部(14)は上記のように、照明点灯用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲に入る前に照明点灯用受信強度範囲を上回ったと判定し、車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止する。したがって、上記のような一般的な方法でリレーアタック装置を使用しても、車両への不正侵入は失敗に終わる可能性が高い。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両ドアアンロック用通信システムにおいて、前記照明点灯用受信強度範囲は前記アンロック用受信強度範囲と重なる部分がないことを特徴とする。
【0017】
また仮に、リレーアタック装置の携帯機(1)側の中継器を作動させたときに、偶々携帯機(1)における受信強度が照明点灯用受信強度範囲内となった場合は、車両側制御部(14)は、照明を点灯させ、中継器ペアを介して携帯機(1)から応答信号を受信してしまう。しかしこの場合も、上記のように照明点灯用受信強度範囲とアンロック用受信強度範囲は重なる部分がなければ、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲の範囲内にないと判定するので、直ちにドアアンロックスタンバイ状態なることはない。したがって、リレーアタック装置を用いても、運良く簡単にドアロック可能になるということがない。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の車両ドアアンロック用通信システムにおいて、前記照明点灯用受信強度範囲の上限値は、前記アンロック用受信強度範囲の下限値よりも小さく、前記車両側制御部(14)は、前記アンロック用コード受信強度が前記アンロック用受信強度範囲に入る前に前記アンロック用受信強度範囲を上回った場合、前記車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする。
【0019】
仮に、照明点灯用受信強度範囲がアンロック用受信強度範囲と重なる部分がないことに対応するため、リレーアタック装置の携帯機(1)側の中継器が、携帯機(1)に送信する電波の強度を、強、弱の2段階に設定できるようになっていたとする。この場合、リレーアタックを企てる者は、まず弱い方の強度で車載システム(30)発の照明点灯用コードを携帯機(1)に中継し、次に、強い方の強度に切り替えて車載システム(30)発のアンロック用コードを携帯機1に中継すれば、運良く携帯機(1)が照明点灯用受信強度範囲(51)で照明点灯用コードを受信し、かつアンロック用受信強度範囲(52)でアンロック用コードを受信する可能性もある。しかし、照明点灯用受信強度範囲(51)にもアンロック用受信強度範囲(52)にも上限が設けられているので、偶然両方の範囲内に入るという可能性は非常に低いと考えられる。したがって、偶々携帯機(1)が照明点灯用受信強度範囲(51)で照明点灯用コードを受信しても、次に携帯機(1)がアンロック用受信強度範囲(52)でアンロック用コードを受信する可能性はほとんどなく、アンロック用受信強度範囲(52)の上限を超えた強度でアンロック用コードを受信する可能性もある。
【0020】
そのような場合、車両側制御部(14)は、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲に入る前にアンロック用受信強度範囲を上回っていると判定して、車両の吹鳴装置17を吹鳴させるか、照明点灯用コードの再送信を所定期間だけ停止する。
【0021】
また、上記第2の目的を達成するための請求項6に記載の発明は、車両のユーザに携帯される携帯機(1)と、前記車両内に搭載される車載システム(30)とを備えた車両ドアアンロック用通信システムであって、前記携帯機(1)は、無線受信するための携帯側受信部(3)と、無線送信するための携帯側送信部(5)と、前記携帯側受信部(3)および前記携帯側送信部(5)を用いて無線送受信可能な携帯側制御部(6)と、を備え、前記車載システム(30)は、アンロック用コードを繰り返し無線送信し、前記携帯側制御部(6)は、前記携帯側受信部(3)を介して前記アンロック用コードを受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記アンロック用コードを受信したときの受信強度であるアンロック用コード受信強度を取得し、取得した前記アンロック用コード受信強度の情報と、前記記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、車両側制御部(14)は、無線送信した前記アンロック用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む応答信号を受信すると、受信した当該応答信号に含まれるアンロック用コード受信強度の情報に基づいて、当該アンロック用コード受信強度が所定のアンロック用受信強度範囲内であるか否かを判定し、前記アンロック用受信強度範囲内であると判定した場合は、ユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行するか、または、ドアをアンロックし、また前記車両側制御部(14)は、当該アンロック用コード受信強度が前記アンロック用受信強度範囲に入る前に前記アンロック用受信強度範囲を上回った場合、車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする車両ドアアンロック用通信システムである。
【0022】
リレーアタック装置の中継器ペアの一方を車両の近くに配置し、他方を携帯機(1)の近くに配置し、その上で中継器ペアを作動させた場合、携帯機(1)における信号の受信強度は、携帯機(1)から携帯機(1)側の中継器までの距離に応じた受信強度まで急に変化する。その場合、車両側制御部(14)が上記のように、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲に入る前に前記アンロック用受信強度範囲を上回ったと判定し、前記車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止する。したがって、上記のような一般的な方法でリレーアタック装置を使用しても、車両への不正侵入は失敗に終わる可能性が高い。
【0023】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車両ドアアンロック用通信システムの構成図である。
【図2】車両側制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図3】携帯側制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図4】車両からの距離の区分を示す図である。
【図5】車両のLFアンテナから携帯機までの距離と受信強度の関係を示すグラフである。
【図6】車両のLFアンテナから携帯機までの距離と受信強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両ドアアンロック用通信システムの構成を示す。この図に示すように、車両ドアアンロック用通信システムは、車両のユーザに携帯される携帯機1と、車両内に搭載される車載システム30とを備えている。
【0026】
携帯機1は、LFアンテナ2、LF受信部3、RFアンテナ4、RF送信部5、携帯側制御部6を含んでいる。
【0027】
LFアンテナ2は、LF帯域(周波数が30kHzから300kHzまでの長波帯域)で無線受信するための3つのアンテナコイルを備えている。これら3つのアンテナコイルの軸方向は、互いに直交している。このように、3つのアンテナコイルの軸方向が同一平面内にないことで、角度ダイバシティを実現している。LF帯の通信は、磁界結合を利用しているので、一般的に指向性が強い。角度ダイバシティを実現するのは、このような強い指向性があっても、携帯機1の姿勢によらず良好に車載システム30と通信するためである。
【0028】
LF受信部3(携帯側受信部の一例に相当する)は、LFアンテナ2を用いてLF帯の無線信号を受信し、受信した信号に対して増幅、復調等の処理を施して携帯側制御部6が処理可能な形式に変換し、その変換結果の信号を携帯側制御部6に出力する。
【0029】
またLF受信部3は、RSSI回路(図示せず)を有しており、このRSSI回路は、LF受信部3が受信した信号の受信強度(具体的には磁界強度)を検出して携帯側制御部6に出力するようになっている。
【0030】
RFアンテナ4は、RF帯域(周波数が300MHzから400MHzまでの帯域)の無線送信を行うためのアンテナである。RF帯域の通信は、磁界結合ではなく電磁結合を利用しているので、LF帯域の通信ほど指向性を気にする必要はなく、したがって、1個のアンテナのみを用いてもよい。ただし、複数個のアンテナを用いて角度ダイバシティを実現しても構わない。
【0031】
RF送信部5(携帯側送信部の一例に相当する)は、RFアンテナ4を用いてRF帯の無線信号を送信する装置であり、携帯側制御部6からの制御に従い、携帯側制御部6から出力された信号に増幅、変調等の処理を施し、その結果の信号をRFアンテナ4に出力することで、RF帯の無線送信を実現する。
【0032】
携帯側制御部6は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えた周知のマイクロコントローラであり、CPUがROMに記録されたプログラムを実行することで、LF受信部3およびRF送信部5を用いた車載システム30との通信等の処理を実現する。
【0033】
車載システム30は、RFアンテナ10、RF受信部11、LFアンテナ12、LF送信部13、車両側制御部14、ドアスイッチ15、照明装置16、吹鳴装置17、ドアロック機構18、ボデーECU20等を有している。
【0034】
RFアンテナ10は、RF帯域で携帯機1から無線受信するためのアンテナである。RF受信部11(車両側受信部の一例に相当する)は、RFアンテナ10を用いてRF帯の無線信号を受信し、受信した信号に対して増幅、復調等の処理を施して車両側制御部14が処理可能な形式に変換し、その変換結果の信号を車両側制御部14に出力する。
【0035】
LFアンテナ12は、LF帯域で携帯機1に無線送信するためのアンテナコイルを1つ(または複数でもよい)有する。LF送信部13(車両側送信部の一例に相当する)は、LFアンテナ12を用いてLF帯の無線信号を送信する装置であり、車両側制御部14からの制御に従い、車両側制御部14から出力された信号に増幅、変調等の処理を施し、その結果の信号をLFアンテナ12に出力することで、LF帯の無線送信を実現する。
【0036】
車両側制御部14は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えた周知のマイクロコントローラであり、CPUがROMに記録されたプログラムを実行することで、RF受信部11およびLF送信部13を用いた車載システム30との通信等の処理を実現する。
【0037】
ドアスイッチ15は、車両のドアのドアノブ等に取り付けられ、ドアをアンロックするためのユーザの所定の操作(例えばドアスイッチ15に触る操作)を受けることで、当該操作があった旨の信号を車両側制御部14に出力する。
【0038】
照明装置16は、ヘッドライト等の、車両の外部を照明する装置であり、ボデーECU20によって作動、非作動が制御される。吹鳴装置17は、車両の外部に警告音を鳴らす装置であり、ボデーECU20によって作動、非作動が制御される。ドアロック機構18は、ドアのロック(施錠)、アンロック(解錠)を実現する周知のアクチュエータであり、ボデーECU20によってその作動が制御される。
【0039】
ボデーECU20は、上述の通り、照明装置16、吹鳴装置17、ドアロック機構18等の車内のボデー機器を制御する周知の装置である。このボデーECU20は、車両側制御部14からの命令を受けると、その命令に応じた制御を行う。
【0040】
以下、このような構成の車両ドアアンロック用通信システムの作動について説明する。なお以下では、車両側制御部14による受信は、RF受信部11を用いたRF波帯の受信であり、車両側制御部14による送信は、LF送信部13を用いたLF波帯の送信であり、携帯側制御部6による受信は、LF受信部3を用いたLF波帯の受信であり、携帯側制御部6による送信は、RF送信部5を用いたRF波帯の送信である。
【0041】
図2に、車両側制御部14が実現する処理のフローチャートを示し、図3に、携帯側制御部6が実現する処理のフローチャートを示す。なお、車両側制御部14では、CPUがROM中の所定のプログラムを実行することで、図2の処理が実現する。また、携帯側制御部6では、CPUがROM中の所定のプログラムを実行することで、図3の処理が実現する。
【0042】
まず、携帯機1を携帯したユーザが遠くから車両に近づき、ドアスイッチ15を操作してドアをアンロックするという、通常のアンロック手順について説明する。図4に、車載システム30が搭載された車両からの距離(より正確には車両に搭載されたLFアンテナ12からの距離)の区分を示す。
【0043】
車両側制御部14は、ボデーECU20がドアロック機構18を制御してドアをロックすると、ボデーECU20はドアがロックされた旨の通知を車両側制御部14に出力する。その通知を受けた車両側制御部14は、図2に示す処理の実行を開始する。図2に示す処理の開始時点では、車両側制御部14は、ユーザがドアスイッチ15に対して所定の操作を行っても、ドアをアンロックするための作動を行わない。つまり、ドアアンロック禁止状態にある。
【0044】
図2に示す処理において車両側制御部14は、まずステップ110で、照明点灯用コードの送信および応答信号の受信を行う。具体的には、携帯機1から正規の応答信号を受信するまで、照明点灯用コードを含むポーリング信号を繰り返し定期的に(例えば0.1秒周期で)送信する。
【0045】
また、携帯側制御部6は、常時図3の処理を実行しており、まずステップ210で、車両側制御部14から所定のコード(照明点灯用コードまたはアンロック用コード)を含むポーリング信号を受信したか否かを、当該ポーリング信号を受信したと判定するまで繰り返す。
【0046】
携帯機1が車両から遠く離れており、車両側制御部14が送信したポーリング信号が携帯機1で受信できない場合は、車両側制御部14の処理はステップ110内に留まり、携帯側制御部6の処理はステップ210の繰り返しが継続される。
【0047】
携帯機1を携帯したユーザが歩いて徐々に車両に近づき、LFアンテナ12から携帯機1までの距離(以下、離間距離という)が照明点灯用受信強度範囲内に入ると、第1距離信号を携帯側制御部6が受信できるようになる。したがって、第1距離31は、通信可能距離である。
【0048】
すると車両側制御部14は、図3のステップ210で、照明点灯用コードを含むポーリング信号を受信したと判定し、続いてステップ220に進み、LF受信部3が当該ポーリング信号を受信したときの受信強度(磁界強度)を示す信号を、LF受信部3のRSSI回路から取得する。以下、この受信強度を、照明点灯用コード受信強度という。
【0049】
続いて車両側制御部14はステップ230で、受信した照明点灯用コードに対する応答信号を作成する。この応答信号には、取得した照明点灯用コード受信強度の情報と、携帯側制御部6の記憶媒体(具体的にはROMまたはフラッシュメモリ)に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含める。この記憶媒体に記録されているキーは、携帯機1に固有のキーである。キーに基づいたキーコードとしては、キーそのものであってもよいし、キーに対して所定の加工を施したコードであってもよい。続いてステップ230では、作成した応答信号を携帯機1に送信し、その後処理をステップ210に戻す。
【0050】
すると、車両側制御部14はステップ110において、照明点灯用コードの応答として携帯機1から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号が携帯機1からの正規の応答信号であるか否かを判定し、正規の応答信号であればステップ115に進み、正規の信号でなければステップ110の処理を継続する。なお、受信した応答信号が携帯機1からの正規の応答信号であるか否かは、応答信号中のキーコードが、車両側制御部14の記憶媒体(ROMまたはフラッシュメモリ)にあらかじめ記録されたマスタキーコードに対応するものであるか否かで判定する。キーコードがマスタキーコードに対応しているか否かの判定は、キーコードとマスタキーコードが同じ値であるかで判定してもよいし、キーコードとマスタキーコードとの関係が所定の対応関係式(例えばキーコードとマスタキーコードの和がゼロ)に従っているか否で判定してもよい。
【0051】
本事例では、車両側制御部14は携帯機1から正規の応答信号を受信しているので、ステップ115に進む。ステップ115では、受信した応答信号に含まれる照明点灯用コード受信強度の情報に基づいて、当該照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲内であるか否かを判定する。
【0052】
ここで、この照明点灯用受信強度範囲について説明する。図5の実線41に示すように、携帯機1が携帯側制御部6からLF帯で受ける信号の受信強度(縦軸)は、携帯機1とLFアンテナ12の離間距離(横軸)に応じて変化する。したがって、この受信強度を、離間距離の指標として用いることができる。
【0053】
具体的には、離間距離が第1距離31(図5の例では10m)から第1距離31よりも短い距離(図5例では8m)までの距離範囲33(図4、図5参照)に対応する受信強度範囲51をあらかじめ(例えば携帯機1および携帯側制御部6の製造時に)算出しておき、その受信強度範囲51を照明点灯用受信強度範囲として車両側制御部14の記憶媒体(ROMまたはフラッシュメモリ)に記録しておき、ステップ115では、その記録した値を用いる。
【0054】
ステップ115で照明点灯用受信強度範囲内でないと判定した場合は、ステップ120に進む。本事例では、携帯機1を携帯するユーザが照明許可距離範囲33に入った時点でステップ115が実行されるので、受信した応答信号に含まれる照明点灯用コード受信強度は、照明点灯用受信強度範囲内に入っていると判定し、続いてステップ130に進む。
【0055】
ステップ130では、ボデーECU20に点灯命令を出力することで、車両の照明装置16を点灯させる。この点灯命令を受けたボデーECU20は、照明装置16を点灯させる。これにより、ユーザは、自分の車両がどこにあるのかがわかるようになる。ただしこの時点では、車両側制御部14はドアアンロック禁止状態にあるので、仮に誰かがドアスイッチ15に対して所定の操作を行ったとしても、ドアはアンロックされない。
【0056】
続いて車両側制御部14はステップ135に進み、アンロック用コードを含むポーリング信号の送信および応答信号の受信を行う。具体的には、携帯機1から正規の応答信号を受信するまで、アンロック用コードを含むポーリング信号を繰り返し定期的に(例えば0.1秒周期で)送信する。なお、アンロック用コードの内容は、照明点灯用コードの内容と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
このとき携帯機1は、照明許可距離範囲33に入っている状態なので、このポーリング信号を受信することができる。すると携帯側制御部6は、アンロック用コードを含むポーリング信号を受信したと判定し、続いてステップ220に進み、LF受信部3が当該ポーリング信号を受信したときの受信強度(磁界強度)を示す信号を、LF受信部3のRSSI回路から取得する。以下、この受信強度を、アンロック用コード受信強度という。
【0058】
続いて車両側制御部14はステップ230で、受信したアンロック用コード受信強度に対する応答信号を作成する。この応答信号には、取得したアンロック用コード受信強度の情報と、携帯側制御部6の記憶媒体(具体的にはROMまたはフラッシュメモリ)に記録されている上述のキーに基づいたキーコード(アンロック用コードを受信したときのキーコードと同じであってもよいし、違っていてもよい)と、を含める。続いてステップ230では、作成した応答信号を携帯機1に送信し、その後処理をステップ210に戻す。
【0059】
すると、車両側制御部14はステップ135において、アンロック用コードの応答として携帯機1から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号が携帯機1からの正規の応答信号であるか否かを、ステップ115と同じ方法で判定し、正規の応答信号であればステップ140に進み、正規の信号でなければステップ135の処理を継続する。
【0060】
本事例では、車両側制御部14は携帯機1から正規の応答信号を受信しているので、ステップ140に進む。ステップ140では、受信した応答信号に含まれる照明点灯用コード受信強度の情報に基づいて、当該照明点灯用コード受信強度が所定のアンロック用受信強度範囲内であるか否かを判定する。
【0061】
ここで、このアンロック用受信強度範囲について、図6のグラフを用いて説明する。アンロック用受信強度範囲は、照明点灯用受信強度範囲と同様に、所定の距離範囲に対応する受信強度範囲として車両側制御部14の記憶媒体(ROMまたはフラッシュメモリ)にあらかじめ記録されている。ただしこのアンロック用受信強度範囲に対応する距離範囲は、図4に示すように、照明許可距離範囲33よりも短い第2距離32から、第2距離32よりも短い距離までの、距離範囲34としている。図6の例では、この距離範囲34は、1.3メートル(第2距離32)から1.1メートルまでの距離範囲34に相当し、図5の実線41と同じ物理量を表す実線42に従い、アンロック用受信強度範囲52が決まる。
【0062】
このようにして決まるアンロック用受信強度範囲は、照明点灯用受信強度範囲よりも強い強度の範囲である。より詳しくは、図4に示したように、照明許可距離範囲33の下限距離(最も内側の位置の距離)が、アンロック許可距離範囲34の上限距離(最も外側の位置の距離)よりも大きいので、照明点灯用受信強度範囲51の上限値は、アンロック用受信強度範囲52の下限値よりも小さい。
【0063】
また、図5、図6に示すように、携帯機1における受信強度と離間距離の関係は、離間距離が大きくなるほど、単位距離変化量当たりの強度(単位はdBuV/m)の変化量が小さくなる。そこで、照明点灯用受信強度範囲51とアンロック用受信強度範囲52が同程度の大きさになるよう、照明許可距離範囲33よりもアンロック許可距離範囲34の方を短くしている。
【0064】
本事例では、まだ携帯機1が照明許可距離範囲33内にいるので、ステップ140では、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52内にないと判定し、ステップ145に進む。
【0065】
またステップ145では、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52を上回っている(アンロック用受信強度範囲52の上限値よりも大きい)か否かを判定し、上回っていると判定した場合、続いてステップ150に進み、上回っていないと判定した場合、ステップ135に戻る。本事例では、携帯機1はアンロック許可距離範囲34よりも車両から遠い位置にいるので、アンロック用コード受信強度はアンロック用受信強度範囲52を上回っているのではなく下回っている。したがって、ステップ145からステップ135に戻る。
【0066】
ユーザは、携帯機1を持ったまま徐々に車両に近づいていくが、アンロック許可距離範囲34内に入るまでは、ステップ140でアンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52内でないと判定し、ステップ145でアンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52を上回っていないと判定するので、ステップ135、140、145の処理を繰り返す。
【0067】
そして、携帯機1がアンロック許可距離範囲34内に入ると、ステップ140で、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52内であると判定し、ドアアンロック禁止状態からドアアンロックスタンバイ状態に移行する。具体的には、ステップ155に進み、ドアノブに取り付けられたドアスイッチ15に対して所定の操作(例えば接触操作)が行われた旨の信号をドアスイッチ15から受けるまで待ち、受けると、ボデーECU20に対してアンロック命令を出力する。このアンロック命令を受けたボデーECU20は、ドアロック機構18を制御してドアをアンロックする。このように、ドアアンロックスタンバイ状態は、ドアスイッチ15に対して所定の操作が行われればドアをアンロックする状態である。
【0068】
このように、携帯機1の携帯側制御部6は、車載システム30からポーリング信号(照明点灯用コードまたはアンロック用コードを含む)を受信したときの受信強度を取得して車載システム30に送信することで、車載システム30の車両側制御部14は、LFアンテナ12から携帯機1までの離間距離に相関のある指標(すなわち受信強度)を取得することができる。
【0069】
そして車両側制御部14は、まず、照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲に入ったことに応じて(ステップ115)照明装置16を点灯させ(ステップ130)、その後、アンロック用コード受信強度が所定のアンロック用受信強度範囲に入ったことに応じて(ステップ140)、ドアアンロックスタンバイ状態に入る(155)。つまり、ユーザがまず車両に対してある距離範囲(照明点灯用受信強度範囲51に応じた照明許可距離範囲33)内に入ると照明装置16を点灯させ、その後ユーザが更に車両に近づいてアンロック用受信強度範囲52に応じたアンロック許可距離範囲34に入ると、車両のドアがアンロック可能となる。
【0070】
したがって、ユーザが車両に近づくとき、早い段階で照明装置16が点灯することで、ユーザが車両の位置を把握し易くなり、それと共に、照明装置16が点灯してからユーザが更に車両に近づいた段階で、ドアがアンロック可能となることで、車両に不正侵入される可能性が低減される。つまり、図4の第1距離31から第2距離32までの距離範囲において、他者が照明装置16の点灯を目印に当該車両に侵入を試みても、ドアがアンロックされないので失敗に終わる。
【0071】
また、LF受信部3が無線受信のために用いるLFアンテナ2は、コイルの軸の向きが同一平面内にないことで角度ダイバシティを実現する3つのアンテナから構成される。携帯機1は、ユーザが携帯するものなので、その姿勢は不定であることが多い。その場合でも、上記のようになっていることで、携帯側受信部3の受信強度と車載システム30から携帯機1までの距離との関係は、携帯機1の姿勢に影響を受けにくくなる。その結果、照明装置16の点灯タイミング、ドアアンロックスタンバイ状態への移行タイミングが安定化する。
【0072】
次に、この車両に対してリレーアタックが試みられる事例について説明する。リレーアタックとは、リレーアタック装置を用いて携帯機と車載システムとの間の通信の信号を増幅して中継することで、携帯機が車載システムから遠くに離れていても車両のドアをアンロックして侵入できるようにする手法である。
【0073】
このリレーアタック装置は、2つの互いに通信可能な中継器を備えている。そして、一方の中継器を目標の車両の近傍に設置して作動させ、他方の中継器を当該車両の携帯機(車両のユーザが携帯している)の近傍に配置して作動されれば、携帯機と車載システムとがこの2つの中継器を介して通信を行うので、従来の車両ドアアンロック用通信システムであればドアがアンロックされてしまう。
【0074】
しかし、本実施形態の車両ドアアンロック用通信システムは、このリレーアタック装置による攻撃をある程度防ぐことができる。
【0075】
例えば、リレーアタックを企てる者が、一方の中継器を本実施形態の車両の近傍に設置して作動させ、他方の中継器を携帯機1の近傍に配置して作動させた場合、携帯側制御部6は、これら中継器を介して車載システム30のポーリング信号を受信するが、その際、図3のステップ220で取得する受信強度は、携帯機1側に配置された中継器から携帯機1への送信強度および当該中継器から携帯機1までの距離によって決まる。
【0076】
通常のリレーアタックでは、携帯機1側の中継器は携帯機1に十分近づけてから作動させるので、この場合、携帯側制御部6が取得して応答信号に含めて送信する照明点灯用コード受信強度は、ほとんどの場合、照明点灯用受信強度範囲51よりも強いものになる。したがって、携帯機1から送信され、これら中継器で中継された応答信号を車両側制御部14が受信すると、車両側制御部14は、ステップ110で、携帯機1の正規な応答信号を受信したと判定してステップ115に進むが、応答信号に含まれる照明点灯用コード受信強度は、照明点灯用受信強度範囲51よりも大きいので、ステップ115では、照明点灯用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲51内でないと判定し、続いてステップ120に進む。
【0077】
ステップ120では、車両の吹鳴装置17を吹鳴させると共に、照明点灯用コードの再送信を所定期間だけ停止する。このように、吹鳴装置17を吹鳴させることで、周囲に不正侵入を伝えると共に、リレーアタック行為者を威嚇し、また、照明点灯用コードの再送信を所定期間(例えば15分)だけ停止することで、再度のリレーアタックの試みを防止することができる。所定期間の経過後、再度ステップ110に戻る。
【0078】
このように、車両側制御部14は、照明点灯用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲にまだ入る前の段階で実行されるステップ115の判定で、照明点灯用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲51内でないと判定し、続いてステップ120で、吹鳴装置17を吹鳴させると共に、照明点灯用コードの再送信を所定期間だけ停止する。
【0079】
つまり、リレーアタック装置の中継器ペアの一方を車両の近くに配置し、他方を携帯機1の近くに配置し、その上で中継器ペアを作動させた場合、携帯機1における信号の受信強度は、携帯機1から携帯機1側の中継器までの距離に応じた受信強度まで急に変化する。その場合、車両側制御部14は上記のように、照明点灯用コード受信強度が照明点灯用受信強度範囲に入る前に照明点灯用受信強度範囲の上限値を上回ったと判定し、車両の吹鳴装置17を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止する。したがって、上記のような一般的な方法でリレーアタック装置を使用しても、車両への不正侵入は失敗に終わる可能性が高い。
【0080】
また仮に、携帯機1側の中継器を作動させたときに、偶々携帯機1における受信強度が照明点灯用受信強度範囲51内となった場合は、車両側制御部14は、ステップ115からステップ130に進んで照明を点灯させ、ステップ135で中継器ペアを介して携帯機1から応答信号を受信してしまう。しかしこの場合も、照明点灯用受信強度範囲51とアンロック用受信強度範囲52は重なる部分がなく、照明点灯用受信強度範囲51の上限値はアンロック用受信強度範囲52の下限値よりも小さくなっているので、ステップ140では、アンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52の範囲内にないと判定してステップ145に進み、ステップ145ではアンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52を上回っていると判定してステップ135に戻るので、直ちにドアアンロックスタンバイ状態なることはない。したがって、リレーアタック装置を用いても、運良く簡単にドアロック可能になるということがない。つまり、携帯機1が特定の2段階の強度範囲でコードを受信しなければ、ドアのアンロックが可能にならない。
【0081】
また仮に、このような2段階の対策に対応するため、リレーアタック装置の携帯機1側の中継器が、携帯機1に送信する電波の強度を、強、弱の2段階に設定できるようになっていたとする。この場合、リレーアタックを企てる者は、まず弱い方の強度で車載システム30発の照明点灯用コードを携帯機1に中継し、次に、強い方の強度に切り替えて車載システム30発のアンロック用コードを携帯機1に中継すれば、運良く携帯機1が照明点灯用受信強度範囲51で照明点灯用コードを受信し、かつアンロック用受信強度範囲52でアンロック用コードを受信する可能性もある。しかし、照明点灯用受信強度範囲51にもアンロック用受信強度範囲52にも上限が設けられているので、偶然両方の範囲内に入るという可能性は非常に低いと考えられる。したがって、偶々携帯機1が照明点灯用受信強度範囲51で照明点灯用コードを受信しても、次に携帯機1がアンロック用受信強度範囲52でアンロック用コードを受信する可能性はほとんどなく、アンロック用受信強度範囲52の上限を超えた強度でアンロック用コードを受信する可能性もある。
【0082】
そのような場合、車両側制御部14は、ステップ140でアンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲52の範囲内にないと判定してステップ145に進み、ステップ145ではアンロック用受信強度範囲52の範囲を上回っていると判定してステップ150に進み、ステップ120と同様、車両の吹鳴装置17を吹鳴させると共に、照明点灯用コードの再送信を所定期間だけ停止する。このように、吹鳴装置17を吹鳴させることで、周囲に不正侵入を伝えると共に、リレーアタック行為者を威嚇し、また、照明点灯用コードの再送信を所定期間(例えば15分)だけ停止することで、再度のリレーアタックの試みを防止することができる。所定期間の経過後、再度ステップ135に戻る。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0084】
(1)車両ドアアンロック用通信システムにおいて、リレーアタック対策が不要な場合は、図2のステップ120、145、150は必要なく、車両側制御部14は、ステップ115で照明点灯用受信強度範囲内でないと判定した場合は、直ちにステップ110に戻り、ステップ140でアンロック用受信強度範囲内でないと判定した場合は、直ちにステップ135に戻るようになっていてもよい。
【0085】
この場合は、アンロック用受信強度範囲52の下限値が照明点灯用受信強度範囲51の下限値よりも大きければよく、照明点灯用受信強度範囲51の上限値は、アンロック用受信強度範囲52の下限値よりも大きくなっていてもよい。つまり、照明点灯用受信強度範囲51とアンロック用受信強度範囲52の範囲は一部が重なり合っていてもよい。例えば、照明点灯用受信強度範囲51の上限値は無限大(すなわち、上限値なし)であってもよいし、同様に、アンロック用受信強度範囲52の上限値も無限大(すなわち、上限値なし)であってもよい。
【0086】
(2)また、車両ドアアンロック用通信システムにおいて、リレーアタック対策のみに特化し、照明装置16の点灯後の車両への不正侵入を防止する必要がなければ、図2のステップ110〜130を省略し、車両側制御部14は、図2の処理を、ステップ135から開始するようになっていてもよい。
【0087】
(3)図2のステップ145の判定は、通常の方法でAより内側かつB外で車両のユーザが車載システム30に近づいているときにときにまでアラーム吹鳴が行われることを防ぐためのものである。しかし、必ずしもこの方法で防がなくともよい。
【0088】
例えば、車両側制御部14は、ステップ135において、アンロック用コードを含むポーリング信号の送信電力を、Bより外で携帯機1が受信できず、B内では受信できる程度のものに抑制させるようになっていれば、ステップ145は必ずしも必要なく、ステップ140でアンロック用受信強度範囲内でないと判定した場合、直ちにステップ150に進むようになっていてもよい。
【0089】
また例えば、携帯側制御部6は、照明点灯用コードを含むポーリング信号に対する応答信号を車載システム30に送信した後、直ちに、LF受信部3の受信感度を低減させ、
アンロック用コードを含むポーリング信号をBより外で受信できず、B内では受信できる程度のものに抑制させるようになっていれば、車両側制御部14におけるステップ145は必ずしも必要なく、ステップ140でアンロック用受信強度範囲内でないと判定した場合、直ちにステップ150に進むようになっていてもよい。
【0090】
(4)上記実施形態に対して更にリレーアタック対策を強化したい場合は、携帯機1が第1距離31から第2距離32までの間にいるとき、すなわち、ステップ135、140、145をこの順に繰り返しているとき、ステップ135で繰り返し受信する応答信号中のアンロック用コード受信強度が、少しずつ大きくなっているか否かを判定し、少しずつ大きくなっている場合は、ステップ135、140、145の処理を続け、少しずつ大きくなっていない場合は、ステップ150に処理を進めて、吹鳴装置17を吹鳴し、アンロック用コードの再送信を所定時間停止するようになっていてもよい。
【0091】
少しずつ大きくなっているか否かは、最後に受信した応答信号中のアンロック用コード受信強度Aと、それより1回前に受信した応答信号中のアンロック用コード受信強度Bとを比較し、アンロック用コード受信強度Aがアンロック用コード受信強度Bよりも大きく、かつ、アンロック用コード受信強度Bからアンロック用コード受信強度Aへの変化量が所定の閾値よりも小さい場合に限り、少しずつ大きくなっていると判定し、そうでない場合、少しずつ大きくなっていないと判定する。
【0092】
あるいは、携帯機1を携帯したユーザが何らかの理由で車両から一旦遠ざかる可能性もあるので、ステップ135、140、145をこの順に繰り返しているとき、ステップ135で繰り返し受信する応答信号中のアンロック用コード受信強度の変化量の絶対値が所定の閾値より小さいか否かを判定し、小さい場合は、ステップ135、140、145の処理を続け、小さくない場合は、ステップ150に処理を進めて吹鳴装置17を吹鳴し、アンロック用コードの再送信を所定時間停止するようになっていてもよい。
【0093】
(5)また上記実施形態では、車両側制御部14はステップ155で、ユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行するようになっている。しかし、ステップ155の処理を省略して、ステップ140でアンロック用コード受信強度がアンロック用受信強度範囲内にあると判定した場合、直ちにステップ160に進んでドアをアンロックするようになっていてもよい。
【0094】
(6)また、上記の実施形態において、携帯側制御部6、車両側制御部14がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 携帯機
2 LFアンテナ
3 LF受信部
5 RF送信部
6 携帯側制御部
11 RF受信部
13 LF送信部
14 車両側制御部
15 ドアスイッチ
16 照明装置
17 吹鳴装置
18 ドアロック機構
20 ボデーECU
30 車載システム
33 照明許可距離範囲
34 アンロック許可距離範囲
51 照明点灯用受信強度範囲
52 アンロック用受信強度範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザに携帯される携帯機(1)と、前記車両内に搭載される車載システム(30)とを備えた車両ドアアンロック用通信システムであって、
前記携帯機(1)は、無線受信するための携帯側受信部(3)と、無線送信するための携帯側送信部(5)と、前記携帯側受信部(3)および前記携帯側送信部(5)を用いて無線送受信可能な携帯側制御部(6)と、を備え、
前記車載システム(30)は、前記携帯機(1)から無線受信するための携帯側受信部(11)と、前記携帯機(1)に無線送信するための車両側送信部(13)と、前記車両側受信部(11)および前記車両側送信部(13)を用いて前記携帯機(1)と無線通信可能な車両側制御部(14)と、を備え、
前記車両側制御部(14)は、照明点灯用コードを繰り返し無線送信し、
前記携帯側制御部(6)は、前記車両側制御部(14)が送信した前記照明点灯用コードを前記携帯側受信部(3)を介して受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記照明点灯用コードを受信したときの受信強度である照明点灯用コード受信強度を取得し、取得した前記照明点灯用コード受信強度の情報と、記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、
前記車両側制御部(14)は、無線送信した照明点灯用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む前記応答信号を受信すると、受信した前記応答信号に含まれる前記照明点灯用コード受信強度の情報に基づいて、当該照明点灯用コード受信強度が所定の照明点灯用受信強度範囲内であるか否かを判定し、照明点灯用受信強度範囲内であると判定した場合は、前記車両の照明装置(16)を点灯させると共に、アンロック用コードを繰り返し無線送信し、
前記携帯側制御部(6)は、前記携帯側受信部(3)を介して前記アンロック用コードを受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記アンロック用コードを受信したときの受信強度であるアンロック用コード受信強度を取得し、取得した前記アンロック用コード受信強度の情報と、前記記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、
車両側制御部(14)は、無線送信した前記アンロック用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む応答信号を受信すると、受信した当該応答信号に含まれるアンロック用コード受信強度の情報に基づいて、前記照明点灯用受信強度範囲の下限値よりも大きい下限値を有する所定のアンロック用受信強度範囲内に当該アンロック用コード受信強度が入っているか否かを判定し、前記アンロック用受信強度範囲内であると判定した場合は、ユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行するか、または、ドアをアンロックすることを特徴とする車両ドアアンロック用通信システム。
【請求項2】
前記携帯側受信部(3)が無線受信のために用いるアンテナ(2)は、角度ダイバシティを実現する3つのアンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両ドアアンロック用通信システム。
【請求項3】
前記車両側制御部(14)は、前記照明点灯用コード受信強度が前記照明点灯用受信強度範囲に入る前に前記照明点灯用受信強度範囲を上回った場合は、前記車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、照明点灯用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする請求項1ないし3に記載の車両ドアアンロック用通信システム。
【請求項4】
前記照明点灯用受信強度範囲は前記アンロック用受信強度範囲と重なる部分がないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両ドアアンロック用通信システム。
【請求項5】
前記照明点灯用受信強度範囲の上限値は、前記アンロック用受信強度範囲の下限値よりも小さく、
前記車両側制御部(14)は、前記アンロック用コード受信強度が前記アンロック用受信強度範囲に入る前に前記アンロック用受信強度範囲を上回った場合、前記車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする請求項3に記載の車両ドアアンロック用通信システム。
【請求項6】
車両のユーザに携帯される携帯機(1)と、前記車両内に搭載される車載システム(30)とを備えた車両ドアアンロック用通信システムであって、
前記携帯機(1)は、無線受信するための携帯側受信部(3)と、無線送信するための携帯側送信部(5)と、前記携帯側受信部(3)および前記携帯側送信部(5)を用いて無線送受信可能な携帯側制御部(6)と、を備え、
前記車載システム(30)は、アンロック用コードを繰り返し無線送信し、
前記携帯側制御部(6)は、前記携帯側受信部(3)を介して前記アンロック用コードを受信すると、前記携帯側受信部(3)が前記アンロック用コードを受信したときの受信強度であるアンロック用コード受信強度を取得し、取得した前記アンロック用コード受信強度の情報と、前記記憶媒体に記録されているキーに基づいたキーコードと、を含む応答信号を作成し、作成した応答信号を前記携帯機(1)に無線送信し、
車両側制御部(14)は、無線送信した前記アンロック用コードの応答として前記携帯機(1)から送信された前記キーコードを含む応答信号を受信すると、受信した当該応答信号に含まれるアンロック用コード受信強度の情報に基づいて、当該アンロック用コード受信強度が所定のアンロック用受信強度範囲内であるか否かを判定し、前記アンロック用受信強度範囲内であると判定した場合は、ユーザの所定の操作に応じてドアアンロックを行うドアアンロックスタンバイ状態に移行するか、または、ドアをアンロックし、
また前記車両側制御部(14)は、当該アンロック用コード受信強度が前記アンロック用受信強度範囲に入る前に前記アンロック用受信強度範囲を上回った場合、車両の吹鳴装置(17)を吹鳴させるか、または、ドアアンロック用コードの再送信を所定期間停止することを特徴とする車両ドアアンロック用通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46918(P2012−46918A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188312(P2010−188312)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】