説明

車両ドア下部構造

【課題】フェンダ下面からプロテクタ下面にかけて跨るように氷が成長することを抑制し得、ドア開時に必要な力を低減して乗降性向上を図り得る車両ドア下部構造を提供する。
【解決手段】プロテクタ6からフェンダ5側に向け車両幅方向へ延び且つドア4下部とフェンダ5との間の隙間を覆うように配設される遮蔽部6aと、該遮蔽部6aより下方へ垂下するよう前記フェンダ5の下方位置に配設される延出部11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドア下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図3に示される如く、車両としてのトラック1のキャブ2の左右両側面には、運転室に出入するための車体開口3が形成され、該車体開口3に対しドア4が開閉自在に設けられているが、該ドア4の下部は、図4に示されるような構造を有している。
【0003】
即ち、図4に示される如く、前記ドア4の車体開口3下部におけるフェンダ5と対峙する内面側下部には、プロテクタ6が取り付けられる一方、前記フェンダ5の下端縁部外面側にはモール7が取り付けられ、該モール7に対し前記ドア4の閉時に密着するウェザストリップ8が前記プロテクタ6の上部に設けられている。
【0004】
又、前記プロテクタ6のウェザストリップ8より下側には、フェンダ5側に向け車両幅方向へ略水平に延び且つ前記ドア4下部とフェンダ5との間の隙間を覆うように配設される遮蔽部6aが形成されている。
【0005】
尚、図3及び図4中、9はトラック1のタイヤを示している。
【0006】
又、前述の如き車両ドア下部構造と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−126944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の車両ドア下部構造では、前記タイヤ9が跳ね飛ばした泥や水或いは雪等を、前記プロテクタ6に形成された遮蔽部6aによりブロックし、前記ウェザストリップ8を保護しつつ、前記ドア4下部とフェンダ5との間の隙間から運転室内に異物が入り込むことを極力抑えるようになっている。
【0009】
しかしながら、特に寒冷地の場合、気温の低下が著しい夜間の走行時、或いは駐車時に、フェンダ5下面やプロテクタ6下面に着氷し、その氷10が、図4に示される如く、フェンダ5下面からプロテクタ6下面にかけて跨るように成長してしまい、フェンダ5にドア4が前記氷10を介して強く固着される形となり、ドア4を開けるのに非常に大きな力が必要になるという場合があった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、フェンダ下面からプロテクタ下面にかけて跨るように氷が成長することを抑制し得、ドア開時に必要な力を低減して乗降性向上を図り得る車両ドア下部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車体開口に対しドアを開閉自在に設け、該ドアの車体開口下部におけるフェンダと対峙する内面側下部にプロテクタを取り付けてなる車両ドア下部構造において、
前記プロテクタからフェンダ側に向け車両幅方向へ延び且つ前記ドア下部とフェンダとの間の隙間を覆うように配設される遮蔽部と、
該遮蔽部より下方へ垂下するよう前記フェンダの下方位置に配設される延出部と
を備えたことを特徴とする車両ドア下部構造にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
寒冷地において、気温の低下が著しい夜間の走行時、或いは駐車時に、フェンダ下面やプロテクタ下面に着氷しても、フェンダ下面の氷は、前記延出部に沿って下方へ垂下するように成長するため、ドア側のプロテクタ下面の氷とはつながりにくく、フェンダ下面からプロテクタ下面にかけて跨るように成長してしまうことが避けられ、フェンダにドアが前記氷を介して強く固着されず、ドアを通常時と変わることなく大きな力を必要とせずに開けることが可能となる。
【0014】
前記車両ドア下部構造においては、前記フェンダに取り付けられるモールの下部に前記延出部を形成することができる。
【0015】
前記車両ドア下部構造においては、前記フェンダを下方へ延長させることにより前記延出部を形成しても良い。
【0016】
前記車両ドア下部構造においては、前記プロテクタの遮蔽部の先端から垂下されるよう前記延出部を設けることもできる。
【0017】
前記車両ドア下部構造においては、前記延出部の垂下量を10[mm]以上30[mm]以下とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両ドア下部構造によれば、フェンダ下面からプロテクタ下面にかけて跨るように氷が成長することを抑制し得、ドア開時に必要な力を低減して乗降性向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の車両ドア下部構造の第一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の車両ドア下部構造の第二実施例を示す断面図である。
【図3】車両としてのトラックのキャブを示す側面図である。
【図4】従来の車両ドア下部構造の一例を示す断面図であって、図3のIV−IV断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の車両ドア下部構造の第一実施例であって、図中、図3及び図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図3及び図4に示す従来のものと同様であるが、本第一実施例の特徴とするところは、図1に示す如く、プロテクタ6からフェンダ5側に向け車両幅方向へ略水平に延び且つドア4下部とフェンダ5との間の隙間を覆うように配設される遮蔽部6aと、該遮蔽部6aより下方へ垂下するよう前記フェンダ5の下方位置に配設される延出部11とを備えた点にある。
【0022】
本第一実施例の場合、前記延出部11は、前記フェンダ5に取り付けられるモール7の下部に形成してある。
【0023】
又、前記延出部11の垂下量Hは、10[mm]以上30[mm]以下の範囲で適宜選定することが好ましい。
【0024】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0025】
寒冷地において、気温の低下が著しい夜間の走行時、或いは駐車時に、フェンダ5下面やプロテクタ6下面に着氷しても、フェンダ5下面の氷10Fは、図1に示す如く、前記モール7の下部に形成された延出部11に沿って下方へ垂下するように成長するため、ドア4側のプロテクタ6下面の氷10Pとはつながりにくく、フェンダ5下面からプロテクタ6下面にかけて跨るように成長してしまうことが避けられる。
【0026】
この結果、フェンダ5にドア4が前記氷10F,10Pを介して強く固着されず、ドア4を通常時と変わることなく大きな力を必要とせずに開けることが可能となる。
【0027】
尚、前記フェンダ5に対し遮蔽部6aは、上下方向高さ位置をずらし且つ車両幅方向でオーバラップさせているため、タイヤ9が跳ね飛ばした泥や水或いは雪等をブロックし、凍結を防止する上で有効になっていると共に、前記ウェザストリップ8を保護しつつ、前記ドア4下部とフェンダ5との間の隙間から運転室内に異物が入り込むことを抑える上で有効になっており、しかも、ドア4開閉時に前記フェンダ5と遮蔽部6aとが互いに干渉することも避けられる。
【0028】
こうして、フェンダ5下面からプロテクタ6下面にかけて跨るように氷が成長することを抑制し得、ドア4開時に必要な力を低減して乗降性向上を図り得る。
【0029】
図2は本発明の車両ドア下部構造の第二実施例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本第二実施例の特徴とするところは、図2に示す如く、フェンダ5を下方へ延長させることにより前記延出部11を形成した点にある。
【0030】
本第二実施例の場合、モール7が設けられていない例を示している。
【0031】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0032】
寒冷地において、気温の低下が著しい夜間の走行時、或いは駐車時に、フェンダ5下面やプロテクタ6下面に着氷しても、フェンダ5下面の氷10Fは、図2に示す如く、前記フェンダ5を下方へ延長させることによって形成された延出部11に沿って下方へ垂下するように成長するため、ドア4側のプロテクタ6下面の氷10Pとはつながりにくく、フェンダ5下面からプロテクタ6下面にかけて跨るように成長してしまうことが避けられ、フェンダ5にドア4が前記氷10F,10Pを介して強く固着されず、ドア4を通常時と変わることなく大きな力を必要とせずに開けることが可能となる。
【0033】
こうして、図2に示す第二実施例の場合、図1に示す第一実施例と同様、フェンダ5下面からプロテクタ6下面にかけて跨るように氷が成長することを抑制し得、ドア4開時に必要な力を低減して乗降性向上を図り得る。
【0034】
尚、本発明の車両ドア下部構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 トラック(車両)
3 車体開口
4 ドア
5 フェンダ
6 プロテクタ
6a 遮蔽部
7 モール
9 タイヤ
10F 氷
10P 氷
11 延出部
H 垂下量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体開口に対しドアを開閉自在に設け、該ドアの車体開口下部におけるフェンダと対峙する内面側下部にプロテクタを取り付けてなる車両ドア下部構造において、
前記プロテクタからフェンダ側に向け車両幅方向へ延び且つ前記ドア下部とフェンダとの間の隙間を覆うように配設される遮蔽部と、
該遮蔽部より下方へ垂下するよう前記フェンダの下方位置に配設される延出部と
を備えたことを特徴とする車両ドア下部構造。
【請求項2】
前記フェンダに取り付けられるモールの下部に前記延出部を形成した請求項1記載の車両ドア下部構造。
【請求項3】
前記フェンダを下方へ延長させることにより前記延出部を形成した請求項1記載の車両ドア下部構造。
【請求項4】
前記延出部の垂下量を10[mm]以上30[mm]以下とした請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両ドア下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218602(P2012−218602A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87135(P2011−87135)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】