説明

車両前部構造

【課題】車両前方衝突時に、車両前部に配設された車両骨格部材への衝突荷重の伝達を確実且つ十分に行うことができる車両前部構造を提供する。
【解決手段】フロントサイドメンバ12の下部に固定されたサスペンションメンバ16の左右両側前端部の車両前側にスタビライザ22を配設し、サスペンションメンバ16の左右両側前端部に、スタビライザキャッチャ30を設ける。車両前面衝突時に、車両前方側から衝突荷重を入力されたスタビライザ22を、スタビライザキャッチャ30で受けて、該衝突荷重をフロントサイドメンバ12及びサスペンションメンバ16に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方衝突時における衝突荷重を車両前部において吸収することを目的とした車両前部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記構造でも車両前方衝突時のEA(エネルギ吸収)性能は得られると思うが、例えば、衝突体がポール等の車両上下方向に細長い剛体であり、且つ、アルミボディである場合等には、バンパからフロントサイドメンバ等の車両骨格部材への荷重伝達が十分に行われず、車両前部において衝突荷重を十分に吸収できないこともあり得る。
【特許文献1】特開平10−230869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、車両前方衝突時に、車両前部に配設された車両骨格部材への衝突荷重の伝達性能を確保できる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両前部構造は、車両前部において車両前後方向に延在する左右一対の車両骨格部材と、左右一対の前記車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されたスタビライザと、前記スタビライザの車両後方側に配設され、車両前方側から荷重を入力された前記スタビライザを受けて該荷重を左右の前記車両骨格部材へ伝達する左右一対の荷重伝達手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の車両前部構造では、車両前部において、左右一対の車両骨格部材が車両前後方向に延在し、スタビライザが左右の車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されている。スタビライザの車両後方側には、左右一対の荷重伝達手段が配設されている。
【0007】
この左右一対の荷重伝達手段は、スタビライザに対して車両前方側から荷重が入力された際に、該スタビライザを受けて該荷重を車両骨格部材へ伝達する。よって、例えば、車両前方衝突時における衝突体がポール等の車両上下方向に細長い剛体であり、且つ、アルミ製の車体であるような場合でも、車両前部に配設された車両骨格部材への衝突荷重の伝達性能を確保できる。
【0008】
請求項2に記載の車両前部構造は、請求項1に記載の車両前部構造であって、前記車両骨格部材は、フロントサイドメンバであり、車両前部において車幅方向に延在し、左右両側を左右の前記フロントサイドメンバに固定されたサスペンションメンバを有しており、前記荷重伝達手段は、前記サスペンションメンバの左右両側前端部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の車両前部構造では、車両前部において、左右一対のフロントサイドメンバが車両前後方向に延在し、車幅方向に延在するサスペンションメンバの左右両側が、左右一対のフロントサイドメンバに固定されている。
【0010】
サスペンションメンバの左右両側前端部には、荷重伝達手段が設けられており、車両前方衝突によりスタビライザに車両前方側から衝突荷重が入力された際には、該スタビライザが、サスペンションメンバの左右両側前端部により受けられ、衝突荷重がフロントサイドメンバのみならずサスペンションメンバにも伝達される。
【0011】
よって、車両前方衝突時の車両前部におけるEA性能をより一層向上できる。
【0012】
請求項3に記載の車両前部構造は、車両前部において車両前後方向に延在する左右一対の第1車両骨格部材と、車両前部において車幅方向に延在し、左右両側を左右の前記第1車両骨格部材に固定された第2車両骨格部材と、前記第2車両骨格部材の左右両側前端部の車両前方側に、左右の前記第1車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されたスタビライザと、前記第2車両骨格部材の左右両側前端部に設けられ、車両前方側から荷重を入力された前記スタビライザを受けて該荷重を前記第1車両骨格部材及び前記第2車両骨格部材の少なくとも一方へ伝達する左右一対の荷重伝達手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の車両前部構造では、車両前部において、左右一対の第1車両骨格部材が車両前後方向に延在し、車幅方向に延在する第2車両骨格部材の左右両側が、左右の第1車両骨格部材に固定されている。また、第2車両骨格部材の左右両側前端部の車両前方側には、スタビライザが、左右の第1車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されている。
【0014】
第2車両骨格部材の左右両側前端部には、荷重伝達手段が設けられており、車両前方衝突によりスタビライザに車両前方側から衝突荷重が入力された際には、該スタビライザが、第2車両骨格部材の左右両側前端部により受けられ、衝突荷重が第1車両骨格部材と第2車両骨格部材との少なくとも一方に伝達される。
【0015】
よって、車両前方衝突時に、車両前部に配設された左右一対の第1車両骨格部材や第2車両骨格部材への衝突荷重の伝達性能を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、車両前方衝突時に、車両前部に配設された車両骨格部材への衝突荷重の伝達性能を確保できる車両前部構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の車両前部構造の一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0018】
図1〜図3に示すように、車両10の前部では、左右一対のフロントサイドメンバ(車両骨格部材、第1車両骨格部材)12が、車両前後方向に延在している。フロントサイドメンバ12の前端部には、クラッシュボックス14が結合されており、左右のクラッシュボックス14の前端部は、バンパリインホース15により車幅方向に連結されている。
【0019】
また、左右のフロントサイドメンバ12の車両下側には、サスペンションメンバ(第2車両骨格部材、サブフレーム)16が配設されている。このサスペンションメンバ16は、フロントサイドメンバ12の下部に溶接等により固定された左右一対のサイド部18と、左右一対のサイド部18を車幅方向に連結するクロス部20(図3参照)とを備えている。なお、これらの車両骨格部材は、軽量化等を目的としてアルミニウム製とされている。
【0020】
各サイド部18は、各フロントサイドメンバ12と平面視(車両上下方向視)にて重合するように配設されている。また、各サイド部18の前端部は、フロントサイドメンバ12の前端部よりも車両後方側に配置されている。
【0021】
また、左右のフロントサイドメンバ12の車両下側には、所々で屈曲されたスタビライザ22が、左右一対のフロントサイドメンバ12と平面視にて交差(略直交)するように配設されている。スタビライザ22の軸方向中央部はクランク状に屈曲されたクランク部22Aとされ、その両側は、スタビライザブラケット24を介してフロントサイドメンバ12の下面12Aに回転可能に支持される直線状の支持部22Bとされ、さらに、その両側は、スタビライザリンク(図示省略)を介してロアアーム(図示省略)に連結される連結部22Cとされている。該スタビライザ22は、一対のロアアームの回動位置の差を低減して、一対の前輪の上下方向位置の差を低減可能にされている。
【0022】
スタビライザブラケット24は、L字状に屈曲され、フロントサイドメンバ12の下部に固定されるベース部24Aと、ベース部24Aの(後述の)下壁部24Dにボルトにより締結されたU字状のブラケット部24Bと、ブラケット部24Bとベース部24Aとの間に嵌め込まれた半円状のラバーブッシュ24Cとにより構成されている。
【0023】
ベース部24Aは、フロントサイドメンバ12の下面12Aに対向して配設される下壁部24Dと、フロントサイドメンバ12の側面12Bに溶接される側壁部24Eとで構成されている。下壁部24Dは矩形板状に構成されている。また、側壁部24Eは、上側中央部が凹とされており、上側中央部から斜め後方下側へ延在するビードB(脆弱部、低剛性部)を形成されている。また、側壁部24Eには、ビードBから斜め後方上側へ延出する固定部24Fが形成されており、この固定部24Fが側面12Bに溶接されている。
【0024】
また、ブラケット部24Bの両端には、下壁部24Dにボルト締結されるフランジ24Gが形成されている。このフランジ24Gは、車両前後方向に並列されている。また、ラバーブッシュ24Cには、車幅方向へ円孔24Hが貫通されている。この円孔24Hには、スタビライザ22の支持部22Bが回転可能に嵌合される。
【0025】
ここで、支持部22B及びスタビライザブラケット24は、サイド部18の前端部と平面視にて一部(若しくは全体)が重合するように配置されている。サイド部18の前端部には、荷重伝達手段としてのスタビライザキャッチャ30が設けられている。このスタビライザキャッチャ30は、全体的に車両前方側へかけて車両下側へ傾斜しており、その上面30Aの前端部は、僅かな隙間を介してブラケット部24Bに対向し、また、上面30Aは、前端部から後端部にかけて車両上方側へ傾斜した傾斜面とされている。
【0026】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0027】
図4に示すように、車両前面衝突により、バンパリインホース15に対して車両前方側から衝突荷重が入力された場合には、まず、バンパリインホース15から左右のクラッシュボックス14を介して左右のフロントサイドメンバ12へ衝突荷重が伝達される。
【0028】
その際、例えば、衝突体1が図示するようにポール等の車両上下方向に細長い剛体であり、且つ、衝突荷重が過大であるような場合には、衝突体1が、車両10に対して相対的に車両後方側へ移動し、スタビライザ22に当接し、または、衝突体1とスタビライザ22との間に介在する物をスタビライザ22に当接させる。
【0029】
そして、図5に示すように、車両前方側からスタビライザ22に入力された衝突荷重が、ビードBに潰れ変形を生じさせ、また、スタビライザブラケット24のブラケット部24Bをスタビライザキャッチャ30の上面30Aに当接させることにより、ベース部24Aの下壁部24Dが、スタビライザ22を支持しているブラケット部24Bと共に斜め後方上側へ変位される。
【0030】
ここで、スタビライザ22は剛体であるため、図中点線矢印で示すように、スタビライザ22に入力された衝突荷重は、フロントサイドメンバ12及びサスペンションメンバ16のサイド部18に伝達される。
【0031】
従って、例えば、本実施形態のように、車両前方衝突時に、バンパリインホース15からフロントサイドメンバ12への衝突荷重の伝達が行われなくなったような場合でも、車両10の前部に配設された左右のフロントサイドメンバ12やサスペンションメンバ16への衝突荷重の伝達性能を確保できる。
【0032】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態では、荷重伝達手段としてのスタビライザキャッチャ30を、サスペンションメンバ16の左右両側前端部に設けたが、図6に示すように、スタビライザキャッチャ30は、サスペンションメンバ16の別部材17に設ける等してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、スタビライザ22に車両前方から入力された衝突荷重をフロントサイドメンバ12及びサスペンションメンバ16に伝達させたが、例えば、上述の図6に示す構成のようにフロントサイドメンバ12のみ、あるいはサスペンションメンバ16にのみ伝達させる等、適宜設定可能である。なお、フロントサイドメンバ12への荷重伝達性能を優先的に確保することが好ましく、サスペンションメンバ16への荷重伝達性能も併せて確保できればより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両前部構造の作用を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両前部構造の作用を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両前部構造の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
12 フロントサイドメンバ(車両骨格部材、第1車両骨格部材)
16 サスペンションメンバ(第2車両骨格部材)
22 スタビライザ
30 スタビライザキャッチャ(荷重伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部において車両前後方向に延在する左右一対の車両骨格部材と、
左右一対の前記車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されたスタビライザと、
前記スタビライザの車両後方側に配設され、車両前方側から荷重を入力された前記スタビライザを受けて該荷重を前記車両骨格部材へ伝達する左右一対の荷重伝達手段と、
を有することを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記車両骨格部材は、フロントサイドメンバであり、
車両前部において車幅方向に延在し、左右両側を左右の前記フロントサイドメンバに固定されたサスペンションメンバを有しており、
前記荷重伝達手段は、前記サスペンションメンバの左右両側前端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
車両前部において車両前後方向に延在する左右一対の第1車両骨格部材と、
車両前部において車幅方向に延在し、左右両側を左右の前記第1車両骨格部材に固定された第2車両骨格部材と、
前記第2車両骨格部材の左右両側前端部の車両前方側に、左右の前記第1車両骨格部材と車両平面視にて交差するように配設されたスタビライザと、
前記第2車両骨格部材の左右両側前端部に設けられ、車両前方側から荷重を入力された前記スタビライザを受けて該荷重を前記第1車両骨格部材及び前記第2車両骨格部材の少なくとも一方へ伝達する左右一対の荷重伝達手段と、
を有することを特徴とする車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−40299(P2009−40299A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209124(P2007−209124)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】