説明

車両前部構造

【課題】有効に荷重入力を伝達することにより、補強材等の付加による重量の増大を抑制しつつ、充分な車体剛性を得られる車両前部構造を提供する。
【解決手段】フードリッジレインフォース部材11は、主に、フロントピラー部材7,7に接合された後端部11bから、車両前方へ向けて、断面ボックス形状を呈して、上面視で直線状の接合直線部11eと、この接合直線部11eに一体に連設されて、車幅方向内側に向けて、内部の中空断面を屈曲することにより、延設角度を車幅方向内側に向けて傾ける湾曲部11fによって、タイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側位置まで、直線状の前側直線部11gによって導かれ、サスペンションタワー10,10の荷重入力面10aに、前端部11aが接続されている。
このフードリッジレインフォース部材11の前端部11aより前方に延びる仮想延設部Vが、この荷重入力面10a,10aの入力中心Mを通るように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンションタワー付近の剛性を向上させる車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車両前部構造としては、車両の前部に設けられたエンジンルームの車幅方向両側縁部に沿って、サイドメンバ部材が、一対設けられている。
【0003】
このサイドメンバ部材の上方には、サスペンションタワーとしてのストラットタワーが、車両外方にオフセットされた状態で、上面側に固定されている。
【0004】
このストラットタワーは、エンジンルーム後方で、乗員室前方両コーナ部に位置するフロントピラー部材から延設されるフードリッジレインフォース部材に、ストラットハウジング補強ガセット部材を介して、車幅方向外側が、連結されている。
【0005】
また、前記フロントピラー部材前面部から、延設される連結メンバ部材が、別途設けられて、ストラットタワーの後側面部に連結されたものも知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2007−230489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の車両前部構造においては、サスペンションの突き上げ方向の荷重入力が、前記ストラットタワーに加わると、前記車幅方向外側に設けられたガセットストラットハウジング補強部材を介して、回転モーメントとして、前記フードリッジレインフォース部材に、伝達される。
【0007】
このため、前記フードリッジレインフォース部材に、捩れ方向の変形を生じさせる方向の力が加わり、フロントピラー部材や、或いはサイドシル部材に、効果的に伝達させることが困難であるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、有効に荷重入力を伝達することにより、補強材等の付加による重量の増大を抑制しつつ、充分な車体剛性を得られる車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンルームに設けられたサイドメンバ部材と、サイドメンバ部材の上方に、サスペンション装置の上縁部が固定され、サスペンション装置からの荷重が入力する荷重入力面を有するサスペンションタワーとを、前記エンジンルーム後方のコーナ部に設けられたフロントピラー部材と、前記フロントピラー部材から、前方に延設されるフードリッジレインフォース部材とを有し、該フードリッジレインフォース部材の前端部が、前記荷重入力面に接続されて、該フードリッジレインフォース部材の前端部より前方に延びる仮想延設部が、前記荷重入力面の入力中心を通るように設定されている車両前部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記フードリッジレインフォース部材の前端部が、前記サスペンションタワーの荷重入力面に接続されていて、該フードリッジレインフォース部材の前端部より前方に延びる仮想延設部が、該荷重入力面の入力中心を通る。
【0011】
該荷重入力面に、入力された荷重は、前記フードリッジレインフォース部材を介して、前記エンジンルーム後方のコーナ部に設けられたフロントピラー部材に伝達されて、分散される。
【0012】
この際、前記フードリッジレインフォース部材に加わる荷重入力は、車両上下方向の剪断力として加わるので、該フードリッジレインフォース部材を曲げ方向に対して、強度を有する。
【0013】
このため、別途、補強の為に用いられる補強部材等を省略若しくは減少させることが出来、重量の増大を抑制しつつ、容易に所望の車体剛性を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施の形態の車両前部構造を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至図5は、この発明の実施の形態の車両前部構造を示すものである。
【0016】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両前部構造では、車両1の前部に位置するエンジンルーム2の車幅方向両側縁部2a,2aには、左,右一対のサイドメンバ部材3,3が、長手方向を、車両前後方向に沿わせて設けられている。
【0017】
このサイドメンバ部材3,3の各後端部3a,3aは、このエンジンルーム2の後方に位置する乗員室4の両側縁部4a,4a下側に設けられるサイドシル部材5,5に、略平板状を呈して、車幅方向に延設されるダッシュパネル部材6を介して、連結されている。
【0018】
このダッシュパネル部材6の左,右側縁部には、前記サイドシル部材5,5の前端部が結合されるフロントピラー部材7,7が、立設されている。
【0019】
また、前記サイドメンバ部材3,3の上方には、タイヤホイールハウス8,8の一部を構成するサスペンションタワー10,10が設けられている。
【0020】
このサスペンションタワー10,10には、図示省略のサスペンションアーム部材を支持するショックアブソーバ装置及びスプリング部材等が設けられたサスペンション装置9,9が収容されている。
【0021】
このサスペンション装置9,9の上端部には、サスペンション装置9,9の上縁部を下面側に当接させて受け止める荷重入力面10a,10aが設けられている。
【0022】
また、このエンジンルーム2の後方の乗員室4のうち、前側コーナ部4b,4bには、前記ダッシュパネル部材6の左,右側縁部上端面6a,6a近傍で、前記各フロントピラー部材7,7から、車両前方方向へ向けて一体となるようにフードリッジレインフォース部材11,11の後端部11b,11bが接続されている。
【0023】
この実施の形態のフードリッジレインフォース部材11は、主に、前記フロントピラー部材7,7に接合された前記後端部11bから、車両前方へ向けて、断面ボックス形状を呈して、上面視で直線状の接合直線部11eと、この接合直線部11eに一体に連設されて、車幅方向内側に向けて、内部の中空断面を屈曲することにより、延設角度を車幅方向内側に向けて傾ける湾曲部11fと、この湾曲部11fによって、湾曲された中空断面を、前記タイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側位置まで導き、前記サスペンションタワー10,10に、直線状に接続する前側直線部11gとを有して、主に構成されている。
【0024】
すなわち、これらのフードリッジレインフォース部材11,11のうち、前記前側直線部11g,11gの前端部11a,11aは、前記サスペンションタワー10,10の前記荷重入力面10a,10aに接続されている。
【0025】
そして、図3に示す様に、このフードリッジレインフォース部材11,11の中空断面11c,11cの延設方向Gが、この荷重入力面10a,10aの入力中心M方向を向いて、図3に示す様に、このフードリッジレインフォース部材11の前端部11aより前方に延びる仮想延設部Vが、この荷重入力面10a,10aの入力中心Mを通るように設定されている。
【0026】
また、この実施の形態では、図3及び図4に示す様に、前記サイドメンバ部材3は、サイドメンバインナ部材3b及びサイドメンバアウタ部材3cとが車幅方向に接合されて、略中空閉断面形状を呈し、長手方向を、車両前後方向に沿わせて延設するように構成されている。
【0027】
更に、前記サスペンションタワー10は、このサイドメンバインナ部材3bの上端部から、車両上方に向けて延設される筒状内側面部10bを有している。
【0028】
そして、この筒状内側面部10bの上部に、前記荷重入力面10aを設けることにより、前記サイドメンバ部材3の真上に、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aの入力中心Mが位置するように構成されている。
【0029】
また、この実施の形態では、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面の延設方向Gが、図2に示す様に、前記サスペンションタワー10の車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス8内に設けられて、前記サスペンション装置9によって支持される車輪12の内側に向けられている。
【0030】
しかも、この実施の形態では、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cが、図3に示す様に、前記サスペンションタワー10の車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス8内の空間と、車両上下方向で連続するこのサスペンションタワー10内のサスペンション装置9を収納する収容空間13と連通されて、前記フードリッジレインフォース部材11の前端部11aの上面部11dの車両上下方向位置を、前記サスペンションタワー10上部に設けられた前記荷重入力面10aが形成された車両上下方向の位置に近接させて、略面一となるように一体に接続されている。
【0031】
次に、この実施の形態の車両前部構造の作用効果について説明する。
【0032】
このように構成された実施の形態の車両前部構造では、図3に示す様に、前記フードリッジレインフォース部材11の前端部11aが、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aに接続されていて、フードリッジレインフォース部材11の中空断面の延設方向Gが、荷重入力面10aの入力中心Mを通る。
【0033】
このため、この荷重入力面10aの下面側に、前記サスペンション装置9から入力された車両上下方向の荷重は、前記フードリッジレインフォース部材11を介して、図1又は図2に示す前記エンジンルーム2の後方の乗員室4の前側コーナ部4b,4bに設けられたフロントピラー部材7に伝達されて、分散される。
【0034】
この際、比較例として示す図5中二点鎖線で記載された従来のフードリッジレインフォース部材21の位置では、サスペンションタワー10の入力中心Mから、このフードリッジレインフォース部材21の断面中心Rが、車幅方向に一定の寸法L離間されて配置されているので、このフードリッジレインフォース部材21の断面に、回転モーメントmとして伝達されて、図3中白抜き矢印で示される様に、捻れ方向の力となってしまう。
【0035】
これに対して、本実施の形態の車両前部構造では、前記フードリッジレインフォース部材11に加わる荷重入力Fは、車両上下方向の剪断力として加わる。
【0036】
このため、前記フードリッジレインフォース部材11を曲げ方向に対して、強度を有する、例えば、中空断面形状となるように構成することにより、効率的に荷重入力Fが伝達されて、前記フロントピラー部材7に、受け止めさせて分散、吸収させることができる。
【0037】
このため、別途、補強の為に用いられる補強部材等を省略若しくは減少させることが出来、重量の増大を抑制しつつ、容易に所望の車体剛性を得られる。
【0038】
また、この実施の形態では、前記サイドメンバ部材3に、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aから、前記筒状内側面部10bを介して、伝わる荷重入力Fが、車両上下方向の剪断力として加わるので、効率的にこの荷重入力Fが分散されて、サイドメンバ部材3に受け止められる。
【0039】
しかも、前記サイドメンバ部材3の前端部から、車両後方へ向けて荷重入力が加わる場合でも、前記サスペンションタワー10へ、前記サイドメンバインナ部材3bを介して、伝わる荷重入力が、前記荷重入力面10aに加わる車両上下方向の荷重入力Fと同様に、前記フードリッジレインフォース部材11に、車両上下方向の剪断力として伝達される。
【0040】
このため、更に、フードリッジレインフォース部材11の曲げ剛性を高めることにより、車両前部に加わる荷重入力が、効率的に伝達されて、前記フロントピラー部材7或いは、サイドシル部材5等の車体の主骨格部材に受け止めさせることができる。
【0041】
また、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面の延設方向Gが、前記サスペンションタワー10の車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側に向けられている。
【0042】
このため、直接、図3に示す様に、前記フードリッジレインフォース部材11の前端部11aを、上方から被せるように、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aの周縁に、容易に接続出来、従来、サスペンションタワー10と、前記フードリッジレインフォース部材11等との間を連結するストラットハウジング補強ガセット部材20を省略若しくは、小型化することにより、重量の増大を抑制出来る。
【0043】
また、図2に示す様に、このフードリッジレインフォース部材11は、前記車輪12の内側に向けて、内側空間である中空断面を延設している。
【0044】
このため、図5に示す様に、従来の二点鎖線で示すフードリッジレインフォース部材21の位置よりも、この実施の形態のフードリッジレインフォース部材11の位置を、車輪12上方から、車幅方向内側にずらして、このフードリッジレインフォース部材11の周縁に、空間を設けることが出来る。
【0045】
このため、この二点鎖線で示すフードリッジレインフォース部材21の位置により、制約を受けていたこのフードリッジレインフォース部材11の周囲に位置するエンジンフード部材22又は、フェンダパネル部材23等の造形の自由度を向上させることができる。
【0046】
具体的には、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cが、車幅方向内側に寄せられて、車輪12上方から、図5中二点鎖線で示す中空断面21aが、図5中実線で示す中空断面11c位置まで、車幅方向内側に移動して無くなることにより、この前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cの厚み分h1、空間を増大させて、エンジンフード部材22の裏面側と、前記車輪12との間に、間隙h3(この実施の形態では、h3=約65mm)を拡大させて、確保出来る。
【0047】
しかも、更に、図4中、二点鎖線に示す前記ストラットハウジング補強ガセット部材20を省略若しくは、小型化することにより、エンジンフード部材22の裏面側に容易に、空間を確保出来、エンジンフード部材22の造形の自由度を向上させることができる。
【0048】
更に、この実施の形態では、図2に示す様に、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cの延設方向Gが、前記サスペンションタワー10の車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側に向けられて、直接、前記フードリッジレインフォース部材11の前端部11aを、上方から被せるように、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aの周縁に、接続している。
【0049】
このため、充分な車体剛性を得られるので、図4中二点鎖線で示すストラットハウジング補強ガセット部材20が不要となり、構造を合理化して軽量化を図ることが出来る。
【0050】
また、前記車輪12の真上に、空間を容易に確保出来ると共に、エンジンフード部材22の裏面側22aと、フードリッジレインフォース部材11の上面部11dとの間に設けられる空間部の車両上下方向の寸法を、更に、大きく設定することが出来る。
【0051】
具体的には、中空断面11cが、図5中実線で示す様に、車輪12の上方に存在せず、図4中二点鎖線で示すストラットハウジング補強ガセット部材20を設けない場合、このストラットハウジング補強ガセット部材20が加えられた中空断面21aを有するフードリッジレインフォース部材1の厚み分h2、エンジンフード部材22の裏面側22aの下縁と、前記車輪12との間の間隙h3(この実施の形態では、h3=約80mm)、を拡大させて、確保出来る。
【0052】
従って、ストラットハウジング補強ガセット部材20の有無に拘わらず、歩行者保護の為のストロークを十分確保出来、例えば、別途設けられる歩行者保護装置を、省略若しくは簡略化することが出来るので、更に、重量の増大が抑制される。
【0053】
しかも、この実施の形態では、図1若しくは図3に示される様に、前記フードリッジレインフォース部材11の上面部11dの車両上下方向位置が、前記サスペンションタワー10の上部に設けられた前記荷重入力面10aの車両上下方向の形成位置に近接されて、少ない段差で連続するように設けられている。
【0054】
このため、フードリッジレインフォース部材11の上面部11dと、前記荷重入力面10aの車両上下方向の位置とが、略面一となり、何れの箇所でも、前記エンジンフード部材22の裏面側22aに対して、同程度の車両上下方向寸法を確保することが出来る。
【0055】
従って、更に、前記エンジンフード部材22の造形の自由度を増大させることが出来る。
【実施例1】
【0056】
図4は、この発明の実施の形態の実施例1の車両前部構造を示している。
【0057】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0058】
まず、構成上の相違点を中心に、この実施例1の車両前部構造を説明すると、この実施例1では、図4中二点鎖線に示すように、前記サスペンションタワー10の車幅方向外側縁部10cに、ストラットハウジング補強ガセット部材20の内側縁部20aが、上方から重なり合わされて接合されている。
【0059】
次に、この実施例1の車両前部構造の作用効果について説明する。
【0060】
この実施例1では、前記実施の形態の車両前部構造の作用効果に加えて、更に、前記サスペンションタワー10の車幅方向外側縁部10cに、上方から重なり合わされて接合されているストラットハウジング補強ガセット部材20の内側縁部20aによって、前記荷重入力面10aに、車両下側から上方向に加わる荷重入力が受け止められる。
【0061】
このため、更に、車体剛性を向上させることができる。
【0062】
しかも、この実施例1では、前記実施の形態と同様に、前記フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cの延設方向Gが、前記サスペンションタワー10の車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側に向けられている。
【0063】
このため、前記ストラットハウジング補強ガセット部材20は、小型化出来、短い車幅方向寸法で、前記サスペンションタワー10と、前記フードリッジレインフォース部材11との間を、一部若しくは全部連結することができる。
【0064】
従って、更に、補強材等の付加による重量の増大を抑制しつつ、車体剛性を向上させることが出来る。
【0065】
更に、この実施例1では、図4に示す様に、前記サスペンションタワー10の車幅方向外側縁部10cが、荷重入力面10aよりも一段低い位置に一体形成されたフランジ部10dを有していて、このフランジ部10dの上面側に、ストラットハウジング補強ガセット部材20の内側縁部20aが、上方から重なり合わされて接合されている。
【0066】
このため、前記サスペンションタワー10の荷重入力面10aと、ストラットハウジング補強ガセット部材20の上面部20bの車両上下方向の位置を、略水平方向で面一とすることが出来、何れの箇所でも、図示省略の前記エンジンフード部材22の裏面側22a或いは、フェンダパネル部材23の裏面側と一定の間隔を設けることが出来、エンジンフード部材22或いは、フェンダパネル部材23の造形の自由度を、更に、増大させることが出来る。
【0067】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0068】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0069】
即ち、前記実施の形態では、前記フードリッジレインフォース部材11が、主に、前記フロントピラー部材7,7に接合された前記後端部11bから、車両前方へ向けて、断面ボックス形状を呈して、上面視で直線状の接合直線部11eと、この接合直線部11eに一体に連設されて、車幅方向内側に向けて、内部の中空断面を屈曲することにより、延設角度を車幅方向内側に向ける湾曲部11fと、この湾曲部11fによって、湾曲された中空断面を、前記タイヤホイールハウス8内に設けられた車輪12の内側位置まで導き、前記サスペンションタワー10,10に、直線状に接続する前側直線部11gとを有して、構成されているが、特にこれに限らず、前記接合直線部11eを設けずに、前記フロントピラー部材7,7に接合された前記後端部11bから、車幅方向内側に向けて、斜めに設けられる前側直線部11gを、前記サスペンションタワー10に向けて延設したり、或いは、前記湾曲部11fを複数の曲線を組み合わせた形状とする等、フードリッジレインフォース部材11の中空断面11cの延設方向が、サスペンションタワー10の荷重入力面10a方向を向いて、仮想延設部Vが、入力中心Mを通るように設定されているものであれば、フードリッジレインフォース部材11の形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態の車両前部構造で、全体の構成を説明するエンジンルーム周縁の斜視図である。
【図2】実施の形態の車両前部構造で、要部の構成を説明し、左前側車輪の周縁を車両上方から見た平面図である。
【図3】実施の形態の車両前部構造で、要部の構成を説明する左前側車輪の周縁の車幅方向一部断面斜視図である。
【図4】実施の形態の車両前部構造で、要部の構成を説明する左前側車輪の周縁の図3中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図5】実施の形態の車両前部構造で、車輪の動きと、車体要部の位置関係を説明する要部の模式的な車幅方向断面図である。
【符号の説明】
【0071】
2 エンジンルーム
2a,2a 車幅方向両側縁部
3,3 サイドメンバ部材
7,7 フロントピラー部材
8,8 タイヤホイールハウス
10,10 サスペンションタワー
10a,10a 荷重入力面
10c 車幅方向外側縁部
11 フードリッジレインフォース部材
11a 前端部
11b 後端部
11c 中空断面
11d 上面部
12,12 車輪
20 ストラットハウジング補強ガセット部材
20a 内側縁部
22 エンジンフード部材
23 フェンダパネル部材
F 荷重入力
G 延設方向
M 入力中心
R 断面中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームに設けられたサイドメンバ部材と、サイドメンバ部材の上方に、サスペンション装置の上縁部が固定され、サスペンション装置からの荷重が入力する荷重入力面を有するサスペンションタワーとを、前記エンジンルーム後方のコーナ部に設けられたフロントピラー部材と、前記フロントピラー部材から、前方に延設されるフードリッジレインフォース部材とを有し、該フードリッジレインフォース部材の前端部が、前記荷重入力面に接続されて、該フードリッジレインフォース部材の前端部より前方に延びる仮想延設部が、前記荷重入力面の入力中心を通るように設定されていることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記サイドメンバ部材の真上に、前記荷重入力面の入力中心が位置するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記フードリッジレインフォース部材は、開放部を有するハット断面であり、該開放部が、前記サスペンションタワーの車幅方向外方に位置するタイヤホイールハウス内に設けられた車輪の内側に向けられていることを特徴とする請求項1又は2のうち、何れか一項記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−155559(P2010−155559A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335397(P2008−335397)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】