説明

車両前部構造

【課題】車両前部との衝突によって車幅方向に広がりを備えていない障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時であっても、この障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制できる車両前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】サブフレーム10は、フロントサイドフレーム7に沿って車両前後方向に延びる左右一対の側方フレーム部11A、11Aと、車幅方向に延びて該側方フレーム部11A、11Aの前部同士を連結するクロスメンバ12とを有しており、側方フレーム部11Aの前端部は、フロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両側部において車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの下方に配設されたサブフレームとを備えた車両前部構造車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室内の乗員を確実に保護するという観点から、障害物に対して車両前部が衝突した時、障害物の車室内への侵入をいかにして抑制するかが課題となっており、この課題を解決すべく、今日までに様々な構造が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントサイドフレームの略真下に配設されたサブフレームの前端部とフロントサイドフレームとの間に衝突荷重伝達部材を介装したものが開示されている。
【0004】
下記特許文献1は、ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に車両前部が衝突した時を想定したものであり、上記障害物の衝突時にその衝突荷重がサブフレームに加わると、上記衝突荷重伝達部材を介して上記衝突荷重をフロントサイドフレームに分散させることが可能になっている。この場合、最終的には、フロントサイドフレームが有する衝突エネルギー吸収機能によって上記衝突荷重を吸収することができる。
【0005】
また、この他にも、下記特許文献2では、車両前後方向に延びるサイドビーム(フロントサイドフレーム)の側面に、その中間部から車両前方かつ車幅方向外側に向けて斜めに延出する斜方向ビームを設けたものが開示されている。
【0006】
下記特許文献2では、車両前部が障害物と衝突した時、サイドビームが圧縮変形して所定以上縮むと、バンパービーム(バンパレインフォースメント)の押圧によって上述した斜方向ビームがサイドビームに衝当するようになっている。そして、これをトリガとして、サイドビームの曲げ変形が誘発されるようになっており、このサイドビームの曲げ変形によって、衝突時における乗員減速度の低減、つまりは乗員の傷害低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−83258号公報
【特許文献2】特開2000−53022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、車両前部がポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突した時、特にフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制したいというニーズが高まっている。
【0009】
ここで、上記特許文献1について見てみると、該特許文献1では、あくまでも上記障害物が車両前部の車幅方向中央部に衝突、侵入した時を想定しているに過ぎない。従って、フロントサイドフレームの略真下に配設されたサブフレームで上記障害物の衝突荷重を受け止める上記特許文献1の構成では、フロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内へ侵入することを確実に抑制できない。
【0010】
また、上記特許文献2について見てみると、該特許文献2では、斜方向ビームがサイドビームの車幅方向外側に配設されているため、車幅方向外側から侵入した上記障害物の衝突荷重を斜方向ビームによって受け止めることができるようにも見える。
【0011】
しかしながら、斜方向ビームの前部は、いずれの部材にも連結されていない自由端となっている。このため、車幅方向外側から上記障害物が侵入した時には、斜方向ビームが車幅方向外側へ倒れるように折れ曲がってしまい、上記障害物の衝突荷重を受け止めることができない虞がある。従って、このような構成では、フロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内へ侵入することを確実に抑制できない。
【0012】
この発明は、車両前部との衝突によって車幅方向に広がりを備えていない障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時であっても、この障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制できる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の車両前部構造は、車両側部において車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの下方に配設されたサブフレームとを備えた車両前部構造であって、上記サブフレームは、上記フロントサイドフレームに沿って車両前後方向に延びる左右一対の側方フレーム部と、車幅方向に延びて該側方フレーム部の前部同士を連結する前側連結部とを有しており、上記側方フレーム部の前端部は、上記フロントサイドフレームの前端部よりも車幅方向外側に位置しているものである。
【0014】
この構成によれば、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突し、この障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時には、側方フレーム部によって上記障害物の衝突荷重を受け止めることができる。
【0015】
そして、前側連結部によって側方フレーム部の前部同士を連結することで、側方フレーム部が車幅方向外側へ倒れるように折れ曲がることを防止できる。これにより、上記障害物の衝突荷重を確実に受け止めることができ、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記フロントサイドフレームの車幅方向外側に、前輪が配設されており、上記側方フレーム部の前端部は、上記前輪よりも車幅方向内側に位置しているものである。
【0017】
この構成によれば、フロントサイドフレームや前輪によって衝突荷重を受け止めることが困難な両者間の領域に上記障害物が侵入しても、その衝突荷重を確実に受け止めることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記フロントサイドフレームと上記側方フレーム部の前端部とを、連結部材を介して上記フロントサイドフレームの前端部よりも車幅方向外側で連結したものである。
【0019】
この構成によれば、上記障害物の衝突荷重を連結部材で受け止めることができ、この衝突荷重の一部を確実にフロントサイドフレームに伝達させることができる。このため、上記衝突荷重を、フロントサイドフレームを介して確実に車両後方に伝達、分散させることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記側方フレーム部が、上記フロントサイドフレームに沿って車両前後方向に延びる第1フレーム部と、該第1フレーム部の前端部から車幅方向外側に向かって延びる第2フレーム部とを有すると共に、上記第1フレーム部と上記第2フレーム部との連結部から上記前側連結部に向かって延びる延出部を有しているものである。
【0021】
この構成によれば、第1フレーム部と第2フレーム部との連結部から前側連結部に向かって延びる延出部を前側連結部と連結したことで、側方フレーム部と前側連結部とは、フロントサイドフレームの略真下で連結されることになる。この場合、左右一対のフロントサイドフレーム間の車幅方向中央部で車両の前部が障害物と正面衝突あるいはオフセット衝突した時には、その衝突荷重を延出部で受け止めることができる。従って、正面衝突やオフセット衝突に伴う衝突荷重もサブフレームの側方フレーム部で受け止めることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記フロントサイドフレームの前端部に、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントが連結され、上記側方フレーム部の前端部には、上記バンパレインフォースメントに向かって延びる延出部材が設けられているものである。
【0023】
この構成によれば、上記障害物の衝突荷重の一部を延出部材の変形によって吸収することができ、これによって、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記フロントサイドフレームの前端部に、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントが連結され、該バンパレインフォースメントは、上記側方フレーム部の前端部の前方位置まで車幅方向外側に延出しているものである。
【0025】
この構成によれば、上記障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時には、バンパレインフォースメントからフロントサイドフレームの前端部に衝突荷重を伝達させることができる。このため、フロントサイドフレームと側方フレーム部との協働により、上記障害物の衝突荷重を確実に受け止めることができ、この障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突し、この障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時には、側方フレーム部によって上記障害物の衝突荷重を受け止めることができる。
【0027】
そして、前側連結部によって側方フレーム部の前部同士を連結することで、側方フレーム部が車幅方向外側へ倒れるように折れ曲がることを防止できる。これにより、上記障害物の衝突荷重を確実に受け止めることができ、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両前部を示す側面図。
【図2】図1の底面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【図4】図3のX−X線矢視断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両前部を示す要部拡大図。
【図6】図4のY−Y線矢視断面図。
【図7】延出部を有する側方フレーム部の変形例を示す図。
【図8】図7のZ−Z線矢視断面図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る車両前部を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図4に示す第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両前部を示す側面図であり、図2は、同底面図である。また、図3は、図2の要部拡大図であり、図4は、図3のX−X線矢視断面図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示し、矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0030】
図1において符号1で示す部材はダッシュパネルであり、ダッシュパネル1によって車室2とエンジンルームEとが仕切られている。車室2は、その床面が、ダッシュパネル1の下端に前端を連結したフロアパネル3によって形成され、車室2には、インスツルメントパネル4、ブレーキペダル5やアクセルペダル等が設けられている。なお、図1において符号6で示す部材はフロントウインドウであり、図1〜図3においてフロントサイドフレーム7の車幅方向外側に配設された符号Wで示す二点鎖線の部材は、前輪である。
【0031】
エンジンルームEの下方域には、車両側部において車両前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム7が配設されており、フロントサイドフレーム7は、図4に示すように、車幅方向内側の断面略ハット状をなすインナパネル7aと、車幅方向外側の断面略ハット状をなすアウタパネル7bとを有している。そして、フロントサイドフレーム7は、図1〜図3に示すように、インナパネル7aの上下のフランジ7a1、7a2(図4参照)と、アウタパネル7bの上下のフランジ7b1、7b2(図4参照)との接合により閉断面構造を有している。
【0032】
また、左右一対のフロントサイドフレーム7の前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント8が筒状のクラッシュカン9を介して連結されている。
【0033】
さらに、エンジンルームEの下方域には、フロントサイドフレーム7よりも下方に位置するサブフレーム10としてのペリメータフレームが配設されている。なお、
サブフレーム10は、フロントサイドフレーム7に沿って車両前後方向に延びる左右一対の側方フレーム部11A、11Aと、車幅方向に延びて側方フレーム部11A、11Aの後端部同士を連結する後側連結部11Bとが一体形成されたフレーム本体11を有している。そして、サブフレーム10は、車幅方向に延びて側方フレーム部11A、11Aの前(端)部同士を連結する前側連結部としてのクロスメンバ12を有し、図2に示すように、底面視で略矩形の枠形状をなしている。
【0034】
但し、本発明は、側方フレーム部11A、11Aと後側連結部11Bとを一体形成することに必ずしも限定されるものではなく、例えば、左右一対の側方フレーム部、後側連結部、及び前側連結部のそれぞれを別部材で構成してもよい。また、本発明は、少なくともサブフレームが側方フレーム部と前側連結部とを有していればよく、必ずしもペリメータフレームとすることに限定されない。
【0035】
ところで、側方フレーム部11Aは、図2、図3に示すように、底面視で2つの領域に区分して見ることができ、フロントサイドフレーム7の下方においてこれに沿って車両前後方向に延びる第1フレーム部11aと、該第1フレーム部11aの前端部から車幅方向外側に向かって延びる第2フレーム部11bとを有する。
【0036】
第1フレーム部11aは、後述するサスペンション機構20(図2、図3参照)に含まれるロアアーム21、22の取付部を構成するものである。また、第2フレーム部11bは、その前端部にクロスメンバ12が連結されており、その前端部は、フロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側でかつ前輪Wよりも車幅方向内側に位置している。
【0037】
サブフレーム10には、図2、図3に示す前輪Wのサスペンション機構20に含まれる第1、第2のロアアーム21、22の車幅方向内端ピボット点21a、22a(図2参照)が設けられており、このピボット点21a、22aは、サブフレーム10の左右一対の側方フレーム部11Aにおける第1フレーム部11aに配設されている。
【0038】
また、サブフレーム10では、その側方フレーム部11Aの前端部に、前端部プレート13を介して筒状のペリメータ延長フレーム14が連結されている。このペリメータ延長フレーム14は、上述したバンパレインフォースメント8に向かって車両前方に延びるように配設されている。
【0039】
また、サブフレーム10のうち、側方フレーム部11Aの前端部は、フロントサイドフレーム7の車幅方向外側で第1ボルト15によりクロスメンバ12の両端部に連結されている。そして、側方フレーム部11Aの第1フレーム部11aから後方に延長した左右一対の後端延出部11cが、図1、図2に示すように、第2ボルト16によって左右のフロアフレーム30に連結されている。なお、図2において符号31で示す部材は、フロアパネル3の左右の側縁に沿って延びるサイドシルである。
【0040】
ここで、側方フレーム部11Aの前端部及びその周辺部についてさらに詳しく説明すると、側方フレーム部11Aの前端部は、図4に示すように、第1ボルト15によってクロスメンバ12の上面パネル12aの車幅方向端部に連結されている。
【0041】
サブフレーム10では、サブフレーム本体11及びクロスメンバ12が、図4に示すように、それぞれ上面パネル11d、12aと下面パネル11e、12bとにより構成されており、上面パネル11dと下面パネル11eとの接合、上面パネル12aと下面パネル12bとの接合により、それぞれ略矩形の閉断面構造を有している。
【0042】
そして、クロスメンバ12では、下面パネル12bの車幅方向端部の位置が上面パネル12aよりも車幅方向内側に設定され、上面パネル12aの車幅方向端部が底面視で露出した状態となっている。これにより、サブフレーム10の組付け時には、上面パネル12aの挿通孔に対して第1ボルト15を車両下方から挿通可能となっている。
【0043】
また、フロントサイドフレーム7のアウタパネル7bと側方フレーム部11Aの前端部との間には、図1、図4に示すように、アウタパネル7bから車幅方向外側に延出する第1ブラケット32と、該第1ブラケット32から下方に延出する第2ブラケット33とが配設されている。
【0044】
第1ブラケット32は、略箱型をなしており、図4に示すように、その車幅方向内側の上下端がフロントサイドフレーム7のアウタパネル7bに形成された上下のフランジ7b1、7b2と接合されている。
【0045】
一方、第2ブラケット33は、第1ブラケット32と同様略箱型をなしており、その上端部が第1ブラケット32の底面に接合されている。
【0046】
そして、第2ブラケット33の底面には、上面にウェルドナット34が固着され、上記底面とクロスメンバ12の上面パネル12aとの間には、側方パネル部11Aの前端部に固着されたスリーブ35と、その外周を覆うラバーブッシュ36とが配設されている。第1ボルト15は、クロスメンバ12の上面パネル12a及びスリーブ35(側方フレーム部11A)を貫通するように下方から挿通され、第2ブラケット33のウェルドナット34に螺着されている。
【0047】
このように、第1ボルト15がウェルドナット34に螺着されることで、側方フレーム部11Aの前端部とクロスメンバ12の車幅方向端部とが連結されると共に、側方フレーム部11Aの前端部とフロントサイドフレーム7(アウタパネル7b)とが、第1、第2ブラケット32、33の他、ウェルドナット34、スリーブ35、ラバーブッシュ36等を介してフロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側で連結されている。つまり、第1ボルト15、第1、第2ブラケット32、33、ウェルドナット34、スリーブ35、及びラバーブッシュ36により、フロントサイドフレーム7と側方フレーム部11Aの前端部とをフロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側で連結する連結部材が構成されている。
【0048】
ここで、本実施形態に係る車両において、その前部が車幅方向に広がりを備えていないポールP(図1、図3参照)に衝突し、このポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時を考えてみる。この時、ポールPは、車幅方向において、図2に示すフロアフレーム30(フロントサイドフレーム7)とサイドシル31との間に位置することになる。このため、ポールPが車両後方に向かってさらに侵入すると、フロアフレーム30(フロントサイドフレーム7)とサイドシル31との間の比較的剛性の低い領域を経て、ポールPは車室1へと接近する虞がある。
【0049】
そこで、本実施形態では、サブフレーム10を構成する側方フレーム部11Aの前部同士をクロスメンバ12で連結すると共に、側方フレーム部11Aの前端部をフロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側に配置している。これにより、車両前部が車幅方向に広がりを備えていないポールPに衝突し、このポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、図1、図3にて二点鎖線で示すように、先ず、ペリメータ延長フレーム14が、ポールPの衝突荷重により車両前後方向に圧縮変形して上記衝突荷重を吸収する。
【0050】
そして、サブフレーム10では、上記衝突荷重により、第1、第2フレーム部11a、11b間の連結部、及びクロスメンバ12が変形し、側方フレーム部11Aの前端部が後退する。この時、サブフレーム10は、上述した変形によって、上記衝突荷重をさらに吸収することができる。
【0051】
このように、本実施形態では、フロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側に側方フレーム部11Aの前端部を配置することで、ポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、側方フレーム部11AによってポールPの衝突荷重を受け止めることができる。
【0052】
そして、クロスメンバ12によって側方フレーム部11Aの前(端)部同士を連結することで、側方フレーム部11Aが車幅方向外側へ倒れるように折れ曲がることを防止できる。これにより、ポールPの衝突荷重を確実に受け止めることができ、ポールPがフロントサイドフレーム7とサイドシル31との間の領域を経て車室2内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0053】
ところで、ポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側に侵入した時であっても、例えば、ポールPの車幅方向における位置が、前輪Wと略同じ位置であれば、前輪Wが衝撃吸収部材として機能することにより、ポールPの衝突荷重を前輪Wで受け止めることが可能である。本実施形態では、上述したように、側方フレーム部11Aの前端部を前輪Wよりも車幅方向内側に配置したことで、フロントサイドフレーム7や前輪Wによって衝突荷重を受け止めることが困難な両者間の領域にポールPが侵入しても、その衝突荷重を確実に受け止めることができる。
【0054】
また、フロントサイドフレーム7と側方フレーム部11Aの前端部とを、連結部材(第1ボルト15、第1、第2ブラケット32、33、ウェルドナット34、スリーブ35、及びラバーブッシュ36)を介してフロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側で連結したことにより、ポールPの衝突荷重を上記連結部材で受け止めることができ、この衝突荷重の一部を確実にフロントサイドフレーム7に伝達させることができる。このため、上記衝突荷重を、フロントサイドフレーム7を介して確実に車両後方に伝達、分散させることができる。
【0055】
また、側方フレーム部11Aの前端部に、バンパレインフォースメント8に向かって延びるペリメータ延長フレーム14を設けたことにより、ポールPの衝突荷重の一部をペリメータ延長フレーム14の変形によって吸収することができる。このため、ポールPが車室2内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図5〜図8に示す第2実施形態について説明する。なお、図5〜図8において、図1〜図4に示す第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、図5、図6に示すように、サブフレーム50の側方フレーム部50Aが、第1フレーム部11a、第2フレーム部11bを有すると共に、両フレーム部11a、11bの連結部からクロスメンバ52に向かって延びる延出部57を有している。
【0058】
延出部57は、図5、図6に示すように、サブフレーム本体11やクロスメンバ52と同様、それぞれ上面パネル57aと下面パネル57bとから構成されており、これら上面パネル57aと下面パネル57bとの接合により略矩形の閉断面構造を有している。
【0059】
そして、延出部57の前端部は、図6に示すように、第3ボルト58によってクロスメン52の上面パネル52aに連結されている。
【0060】
また、クロスメンバ52では、下面パネル52bの車幅方向端部の位置が上面パネル52aよりも車幅方向内側に設定され、上面パネル52aの車幅方向端部が、延出部57の下方位置まで底面視で露出した状態となっている。これにより、サブフレーム50の組付け時には、上面パネル52aの挿通孔に対して第1、第3ボルト15、58を車両下方から挿通可能となっている。
【0061】
そして、第3ボルト58は、クロスメンバ52の上面パネル52a及び延出部57の上面パネル57a、下面パネル57bを貫通するように下方から挿通され、ナット59に螺着されている。
【0062】
このように、第3ボルト58がナット59に螺着されることで、延出部57の前端部とクロスメンバ52の車幅方向端部とが連結されている。
【0063】
ところで、上述した第1実施形態では、側方フレーム部11Aとクロスメンバ12とがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側で連結されているのみであり、フロントサイドフレーム7の略真下では、両者は連結されない構成となっている。
【0064】
これに対し、本実施形態では、第1フレーム部11aと第2フレーム部11bとの連結部からクロスメンバ52に向かって延びる延出部57をクロスメンバ52と連結したことで、側方フレーム部11Aとクロスメンバ52とは、フロントサイドフレーム7の略真下で連結されていることになる。この場合、フロントサイドフレーム7、7の間の車幅方向中央部で車両の前部が障害物と正面衝突あるいはオフセット衝突した時には、その衝突荷重を延出部57で受け止めることができる。従って、正面衝突やオフセット衝突に伴う衝突荷重もサブフレーム50の側方フレーム部50Aで受け止めることができる。
【0065】
一方、ポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、第1実施形態と同様、側方フレーム部11Aの第2フレーム部11bの前端部によってポールPの衝突荷重を受け止めることができる。
【0066】
なお、図5、図6では、第1フレーム部11a及び第2フレーム部11bとをフレーム本体11Aにより一体形成する一方、延出部57を別部材で構成しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図7(a)に示すサブフレーム60のように、第1フレーム部61a及び延出部61bをフレーム本体61により一体形成する一方、第2フレーム部67を別部材で構成してもよい。この場合、第2フレーム部67は、図示のように、その後端部が第1フレーム部61aと延出部61bとの連結部から車幅方向外側部に向かって延出するように連結される。そして、サブフレーム60では、第1フレーム部61aと、延出部61bと、第2フレーム部67とによって側方フレーム部60Aが形成されている。
【0067】
また、サブフレーム60では、ペリメータ延長フレーム64が、前端部プレート63を介して延出部67の前端部に連結されている。
【0068】
また、本発明では、第2フレーム部(側方フレーム部)の前端部とフロントサイドフレームとを車幅方向外側で連結することに必ずしも限定されない。
例えば、図7(b)、図8に示すサブフレーム70では、フロントサイドフレーム7のインナパネル7aと延出部57との間に、インナパネル7aから下方に延出するブラケット72が配設されている。
【0069】
ブラケット72は、略箱型をなしており、その上端部がフロントサイドフレーム7(インナパネル7a)の下面に接合されている。また、ブラケット72の底面にはウェルドナット79が固着されると共に、上記底面とクロスメンバ52の上面パネル52aとの間には、延出部57の前端部に固着されたスリーブ75と、ラバーブッシュ76とが配設されている。第3ボルト58は、クロスメンバ52の上面パネル52a及びスリーブ75(延出部57)を貫通するように下方から挿通され、ウェルドナット79に螺着されている。
【0070】
このように、第3ボルト58がウェルドナット79に螺着されることで、延出部57の前端部とクロスメンバ52の車幅方向端部とがフロントサイドフレーム7の略真下で連結されると共に、延出部57(側方フレーム部50A)の前端部とフロントサイドフレーム7(インナパネル7a)とが、ブラケット72を介してフロントサイドフレーム7の略真下で連結されている。
【0071】
一方、第2フレーム部11bでは、その前端部が、図8に示すように、第1ボルト15によってクロスメンバ52の上面パネル52aに連結されている。
【0072】
第1ボルト15は、クロスメンバ52の上面パネル52a及び第2フレーム部11bの上面パネル11d、下面パネル11eを貫通するように下方から挿通され、ナット77に螺着されている。
【0073】
このように、第1ボルト15がナット77に螺着されることで、第2フレーム部11bの前端部とクロスメンバ52の車幅方向端部とが連結されている。
【0074】
そして、サブフレーム70では、ペリメータ延長フレーム74が、前端部プレート73を介して延出部57の前端部に連結されている。
【0075】
なお、本発明では、例えば、図7(c)に示すサブフレーム80のように、ペリメータ延長フレーム84を、前端部プレート83を介して延出部61bの前端部に連結してもよい。
【0076】
また、上述したサブフレーム10、50、60、70、80では、いずれもペリメータ延長フレーム14、64、74、84を設けているが、本発明では、ペリメータ延長フレームを必ずしも設けなくてよい。
【0077】
(第3実施形態)
次に、図9に示す第3実施形態について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る車両前部を示す要部拡大図である。なお、図9において、図1〜図4に示す第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、図9に示すように、サブフレーム110が、フロントサイドフレーム7に沿って車両前後方向に延びる左右一対の側方フレーム部111A、111Aと、車幅方向に延びて側方フレーム部111A、111Aの前端部同士を連結する前側連結部111Bとが一体形成されたフレーム本体111を有すると共に、車幅方向に延びて側方フレーム部111A、111Aの後端部同士を連結する後側連結部としてのクロスメンバ112を有し、底面視で略矩形の枠形状をなしている。
【0079】
側方フレーム部111Aは、図9に示すように、底面視で2つの領域に区分して見ることができ、フロントサイドフレーム7の下方においてこれに沿って車両前後方向に延びる第1フレーム部111aと、該第1フレーム部111aの前端部から車幅方向外側に向かって延びる第2フレーム部111bとを有する。
【0080】
そして、第2フレーム部111bの前端部は、フロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側でかつ前輪Wよりも車幅方向内側に位置している。
【0081】
また、側方フレーム部111Aの第2フレーム部111bと、前側連結部111Bの車幅方向端部との間には、両者を橋渡すように板状の補強部材111Cが配設されており、この補強部材111Cによって第2フレーム部111bと前側連結部111Bとが連結されている。
【0082】
また、前側連結部111Bの前部には、フロントサイドフレーム7と対応する位置に、上方に向かって延出するブラケット132が取付けられている。このブラケット132には、スリーブ135と、その外周を覆うラバーブッシュ136とが配設されており、第1ボルト115が、ブラケット132及びスリーブ136を貫通するように下方から挿通され、フロントサイドフレーム7の図示しないウェルドナットに螺着されている。
【0083】
このように、第1ボルト115が上記ウェルドナットに螺着されることで、前側連結部111Bとフロントサイドフレーム7とが、ブラケット132の他、スリーブ135、及びラバーブッシュ136等を介して連結されている。
【0084】
なお、図9において符号108、109で示す部材は、それぞれバンパレインフォースメント、クラッシュカンであり、その機能等は、第1実施形態のバンパレインフォースメント8、クラッシュカン9と略同様である。
【0085】
ここで、本実施形態に係る車両において、その前部がポールP(図1、図2参照)に衝突し、このポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、図9にて二点鎖線で示すように、ポールPの衝突荷重により、第1、第2フレーム部111a、111bとの間の連結部、及び前側連結部111Bが変形し、これによって、第2フレーム部111bと前側連結部111Bとの間の連結部が後退する。この時、サブフレーム110は、上述した変形によって、上記衝突荷重を吸収することができる。
【0086】
このように、本実施形態では、フロントサイドフレーム7の前端部よりも車幅方向外側に側方フレーム部111Aの前端部を配置することで、ポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、上述した先の実施形態と同様、側方フレーム部111AによってポールPの衝突荷重を受け止めることができる。
【0087】
そして、側方フレーム部111Aと前側連結部111Bとを一体形成して、側方フレーム部111Aの前端部を前側連結部111Bで連結することにより、側方フレーム部111Aが車幅方向外側へ倒れるように折れ曲がることを防止できる。このため、ポールPの衝突荷重を確実に受け止めることができ、ポールPがフロントサイドフレーム7とサイドシル31(図2参照)との間の領域を経て車室2(図2参照)内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0088】
(その他の実施形態)
なお、本発明では、図3にて二点鎖線で示すバンパレインフォースメント208のように、その車幅方向端部を、側方フレーム部11Aの前端部の前方位置まで延出させてもよい。
【0089】
この場合、ポールPがフロントサイドフレーム7の車幅方向外側から侵入した時には、バンパレインフォースメント208からクラッシュカン9を介してフロントサイドフレーム7の前端部に衝突荷重を伝達させることができる。このため、フロントサイドフレーム7と側方フレーム部11Aとの協働により、ポールPの衝突荷重を確実に受け止めることができ、ポールPが車室2(図2参照)内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0090】
また、上述した各実施形態では、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突した例として、車両前部がポールPに衝突した時について説明したが、車幅方向に広がりを備えていない障害物であれば、必ずしもポールPに限定されるものではない。
例えば、車幅方向に広がりを備えていない障害物を、自動車道の中央分離帯や、ガードレールの端部、ブロック塀等としてもよい。
【0091】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、前側連結部は、クロスメンバ12、52、及び前側連結部111Bに対応し、
以下同様に、
連結部材は、第1ボルト15、第1ブラケット32、第2ブラケット33、ウェルドナット34、スリーブ35、及びラバーブッシュ36に対応し、
延出部材は、ペリメータ延長フレーム14、64、74、84に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
7…フロントサイドフレーム
8、208…バンパレインフォースメント
10、50、60、70、80、110…サブフレーム
11A、50A、60A、111A…側方フレーム部
11a、61a…第1フレーム部
11b、67…第2フレーム部
12、52…クロスメンバ
14、64、74、84…ペリメータ延長フレーム
15…第1ボルト
32…第1ブラケット
33…第2ブラケット
34…ウェルドナット
35…スリーブ
36…ラバーブッシュ
57、61b…延出部
111B…前側連結部
W…前輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部において車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、
該フロントサイドフレームの下方に配設されたサブフレームとを備えた車両前部構造であって、
上記サブフレームは、上記フロントサイドフレームに沿って車両前後方向に延びる左右一対の側方フレーム部と、
車幅方向に延びて該側方フレーム部の前部同士を連結する前側連結部とを有しており、
上記側方フレーム部の前端部は、上記フロントサイドフレームの前端部よりも車幅方向外側に位置している
車両前部構造。
【請求項2】
上記フロントサイドフレームの車幅方向外側には、前輪が配設されており、
上記側方フレーム部の前端部は、上記前輪よりも車幅方向内側に位置している
請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
上記フロントサイドフレームと上記側方フレーム部の前端部とを、連結部材を介して上記フロントサイドフレームの前端部よりも車幅方向外側で連結した
請求項1または2記載の車両前部構造。
【請求項4】
上記側方フレーム部は、上記フロントサイドフレームに沿って車両前後方向に延びる第1フレーム部と、
該第1フレーム部の前端部から車幅方向外側に向かって延びる第2フレーム部とを有すると共に、
上記第1フレーム部と上記第2フレーム部との連結部から上記前側連結部に向かって延びる延出部を有している
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【請求項5】
上記フロントサイドフレームの前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントが連結され、
上記側方フレーム部の前端部には、上記バンパレインフォースメントに向かって延びる延出部材が設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【請求項6】
上記フロントサイドフレームの前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントが連結され、
該バンパレインフォースメントは、上記側方フレーム部の前端部の前方位置まで車幅方向外側に延出している
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166739(P2012−166739A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30854(P2011−30854)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】