説明

車両周辺監視システム

【課題】車載の撮像装置を通じて得られた画像において人間等の対象物体が背景に紛れ込んだ場合でも、この対象物体の存在を高精度で認識しうる車両周辺監視システムを提供する。
【解決手段】本発明の車両周辺監視システム10によれば、第1処理部11によって赤外線カメラ102を通じて得られた2値化画像における高輝度領域の輪郭Cが認識され、当該輪郭Cのうち対象物体Pの形状に応じた1次要件を満たす部分が1次輪郭部分C1として認識される。また、第2処理部により、1次輪郭部分C1の実空間位置が測定され、当該測定位置が対象物体Pのサイズに応じた2次要件を満たすか否かに応じて、1次輪郭部分C1が対象物体Pの輪郭部分である2次輪郭部分C2に該当するか否かが判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた画像に基づいて当該車両の周辺を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載の赤外線カメラにより撮像された車両の周辺画像に基づき、当該車両と接触する可能性がある人間等の物体の有無を判定する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−6096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、人間と当該建造物等とが重なると、車両の周辺画像のグレースケール画像において図4に示されているように人間(対象物体)Pが背景の建造物に紛れ込んでしまい、対象物体Pの存在を認識することが困難となる場合がある。すなわち、図4に示されているグレースケール画像から図5に示されているように4つの高輝度領域(白抜き部分)を含む2値化画像が得られても、これらの高輝度領域の輪郭Cやサイズからただちに人間Pの存在を認識することは困難な場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両に搭載された撮像装置を通じて得られた画像において人間等の対象物体が背景に紛れ込んだ場合でも、この対象物体の存在を高精度で認識しうる車両周辺監視システムを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の車両周辺監視システムは、車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた画像に基づいて当該車両の周辺を監視するシステムであって、前記画像における高輝度領域の輪郭を認識し、当該輪郭のうち対象物体の形状に応じた1次要件を満たす部分を1次輪郭部分として認識する第1処理部と、前記第1処理部により認識された前記1次輪郭部分の実空間における位置又はサイズを測定し、当該1次輪郭部分の実空間における位置又はサイズが前記対象物体のサイズに応じた2次要件を満たすか否かに応じて、前記1次輪郭部分が当該対象物体の輪郭部分である2次輪郭部分に該当するか否かを判定する第2処理部とを備え、前記第1処理部が、前記高輝度領域の輪郭が前記対象物体である人間の肩に相当する段差部分を有し、かつ、当該段差部分より上側にある部分の鉛直方向のサイズが、当該段差部分より下側にある部分の鉛直方向のサイズよりも小さいことを前記1次要件として前記1次輪郭部分を認識することを特徴とする。
【0007】
本発明の車両周辺監視システムによれば、撮像装置を通じて得られた画像において高輝度領域の輪郭が認識される。高輝度領域の存在は撮像装置の撮像範囲における物体の存在を示しているので、その輪郭には対象物体の輪郭(2次輪郭部分)が含まれている可能性がある。高輝度領域の輪郭から2次輪郭部分を抽出するため、当該輪郭のうち対象物体の形状に応じた「1次要件」を満たす部分が「1次輪郭部分」として認識される。これにより、対象物体の形状に鑑みて、高輝度領域の輪郭のうち当該対象物体の輪郭部分に該当する可能性が高い部分が認識又は抽出されうる。
【0008】
さらに、1次輪郭部分の実空間における位置又はサイズが対象物体のサイズに応じた「2次要件」を満たす場合、この1次輪郭部分が「2次輪郭部分」として認識される。これにより、前記画像において人間等の対象物体が背景に紛れ込んだ場合でも、2次輪郭部分が高い精度で認識又は抽出され、ひいてはこの2次輪郭部分を有する対象物体の存在が高い精度で認識されうる。具体的には、対象物体としての人間の肩に相当する段差部分を有する(又は囲う)2次輪郭部分、ひいては当該2次輪郭部分を有する人間(対象物体)の存在が高い精度で認識されうる。特に、前記のように車両の前方等、撮像装置の撮像範囲に建造物や森林が広がって画像においてこの建造物や森林に人間等の対象物体が紛れ込むことが起こりうる環境下で車両が走行している状況ではその真価が発揮されうる。
【0009】
本発明の車両周辺監視システムにおいて、前記第2処理部が前記1次輪郭部分の前記段差部分の実空間における鉛直位置を測定し、当該測定した鉛直位置が当該対象物体である人間の肩の標準的な高さに応じた範囲に含まれることを前記2次要件として前記2次輪郭部分を認識することが好ましい。
【0010】
当該構成の車両周辺監視システムによれば、対象物体としての人間の肩に相当する段差部分を有する2次輪郭部分、ひいては当該2次輪郭部分を有する人間(対象物体)の存在が高い精度で認識されうる。なお、実空間の鉛直座標軸の原点が地面と同じ高さに設定されている場合、段差部分の当該実空間における鉛直位置は、当該段差部分の地面からの高さ(サイズ)と同義である。
【0011】
本発明の車両周辺監視システムにおいて、前記第2処理部が前記1次輪郭部分の実空間における横幅を測定し、当該測定した横幅が当該対象物体である人間の標準的な肩幅に応じた範囲に含まれることを前記2次要件として前記2次輪郭部分を認識することが好ましい。
【0012】
当該構成の車両周辺監視システムによれば、対象物体としての人間の肩に相当する段差部分を有する2次輪郭部分、ひいては当該2次輪郭部分を有する人間(対象物体)の存在が高い精度で認識されうる。
【0013】
本発明の車両周辺監視システムにおいて、前記第2処理部により前記2次輪郭部分に該当すると認識された前記1次輪郭部分の時系列的な測定位置に基づき前記車両と当該2次輪郭部分を有する前記対象物体との接触可能性を評価する第3処理部をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
当該構成の車両周辺監視システムによれば、前記のように撮像装置を通じて得られた画像において対象物体が背景に紛れ込んだ場合でも、2次輪郭部分が高い精度で認識(又は抽出)され、この2次輪郭部分を有する対象物体の存在が高い精度で認識されうるので、車両とこの対象物体とが接触する可能性も高い精度で評価されうる。
【0015】
本発明の車両周辺監視システムにおいて、前記第3処理部が前記車両と前記対象物体との接触可能性の評価に基づき、当該対象物体の存在を知らせる又は強調する情報を車載の情報出力装置に出力させる、あるいは当該車両の挙動を制御するもしくは車載機器に制御させることが好ましい。
【0016】
当該構成の車両周辺監視システムによれば、前記のように車両と対象物体との接触可能性が高い精度で評価されうるので、車両と対象物体との接触回避等の観点から、当該対象物体又はその複数の対象部分を強調等する情報が適当に出力されうる。ここで、情報の出力とは、視覚、聴覚、触覚等、五感を通じて当該情報を車両の運転者等に認識させうるあらゆる形態で情報が出力されることを意味する。これにより、車両の運転者に対象物体の存在を認識させ、車両と対象物体との接触を回避するために車両の減速や操舵等、車両の挙動を適当に制御させることができる。
【0017】
また、前記のように高精度で評価された車両と対象物体との接触可能性に基づいて車載機器が制御される。これにより、車両と対象物体との接触を回避する観点から、車両の減速や操舵等、車両の挙動が適当に制御されうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両、車両周辺監視システム及び当該車両周辺監視システムの構築システムの構成説明図。
【図2】本発明の車両周辺監視システムの構成説明図。
【図3】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図4】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図5】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図6】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図7】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図8】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図9】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【図10】本発明の車両周辺監視システムの機能に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両周辺監視システムの構成について図1を用いて説明する。
【0020】
図1に示されているように車両1には、車両周辺監視システム10と、車両1の前方部において車幅方向中央部にほぼ対称に配置された一対の赤外線カメラ(撮像装置)102と、フロントウィンドウにおいて運転者の視界を妨げないように配置されたHUD104とが搭載されている。また、図2に示されているように車両1には、ヨーレートセンサ122や速度センサ124等の種々のセンサが搭載されている。
【0021】
車両周辺監視システム10は車載の一対の撮像装置を通じて得られた画像に基づいて車両の周辺を監視するシステムである。車両周辺監視システム10は、車両1に搭載されたハードウェアとしてのECU又はコンピュータ(CPU,ROM,RAM,I/O等により構成されている。)と、メモリに格納され、当該コンピュータに諸機能を付与するソフトウェアとしての本発明の車両周辺監視プログラムとにより構成されている。なお、車両周辺監視プログラムは最初から車載コンピュータのメモリ(ROM等)に格納されていてもよいが、車載コンピュータからのリクエストがあったとき等の任意のタイミングでこのプラグラムの一部又は全部がサーバ(構築システムを構成する。)20からネットワークや衛星を介して当該車載コンピュータにダウンロードされ、そのメモリ(EEPROM、RAM等)に格納されてもよい。
【0022】
車両周辺監視システム10は図2に示されているように、第1処理部11と、第2処理部12と、第3処理部13とを備えている。
【0023】
第1処理部11は赤外線カメラ102により得られた画像における高輝度領域の輪郭Cを認識する。また、第1処理部11は当該輪郭Cのうち対象物体である人間の形状に応じた「1次要件」を満たす部分を1次輪郭部分C1として認識する。
【0024】
第2処理部12は第1処理部11により認識された1次輪郭部分C1の実空間における高さ(Y座標)を測定し、1次輪郭部分C1の実空間高さが人間のサイズに応じた「2次要件」を満たすか否かに応じて、1次輪郭部分C1が人間Pの輪郭部分(2次輪郭部分)C2に該当するか否かを判定する。
【0025】
第3処理部13は第2処理部12により2次輪郭部分C2に該当すると認識された1次輪郭部分C1の時系列的な測定位置に基づき、車両1と人間Pとの接触可能性を評価する。また、第3処理部13は車両1と人間Pとの接触可能性の評価に応じて、当該人間Pの存在を知らせる又は強調する画像をHUD(情報出力装置)104に表示させる等、車載機器の動作を制御する。
【0026】
前記構成の車両1及び車両周辺監視システム10の機能について図3〜図10を用いて説明する。
【0027】
まず、第1処理部11が「第1処理」を実行する(図3/S11)。
【0028】
第1処理部11はメモリから2値化画像を読み出し、この2値化画像における高輝度領域の輪郭Cを認識する(図3/S111)。この2値化画像は、一対の赤外線カメラ102により撮像された赤外線画像がA/D変換されることで得られたグレースケール画像が2値化処理されることで得られたものである。たとえば図4に示されているグレースケール画像から図5に示されている2値化画像が得られた場合、図5に白抜き部分として示されている高輝度領域の輪郭Cが認識される。画像における高輝度領域のランレングスコードの始点又は終点により構成される線分(曲がっている形状の線分も含まれる。)が、当該高輝度領域の輪郭Cとして認識される。
【0029】
また、第1処理部11は輪郭Cのうち、対象物体である人間Pの形状に応じた「1次要件」を満たす部分があるか否かを判定する(図3/S112)。たとえば、図6に示されているように正面又は背面からみた人間(破線)の頭部から肩を経て腕にいたる輪郭を特徴付ける基準輪郭部分(太線で示されている。)C0は、肩に相当する段差部分を有している。また、基準輪郭部分C0は当該段差部分より上側にある部分の高さ(鉛直方向のサイズ)H1が、当該段差部分より下側にある部分の高さH2よりも小さいという傾向がある。そこで、基準輪郭部分C0と同じ特徴を有すること、すなわち(1)(滑らかに変化する)段差部分があり、かつ(2)当該段差部分より上側にある部分の高さ(鉛直方向のサイズ)が、当該段差部分より下側にある部分の高さよりも小さいことが1次要件とされる。
【0030】
なお、たとえば図5に示されているような4つの高輝度領域の最上位点を基準とする、ランレングスコードの始点又は終点の上下方向の変化パターンに基づいて1次輪郭部分C1の有無が認識されてもよい。また、たとえば図6に示されている基準輪郭部分C0を含むテンプレートを用いたテンプレート・マッチングにより、当該基準輪郭部分に類似することを1次要件として1次輪郭部分C1の有無が認識されてもよい。さらに、たとえば図7に示されているように歩行中の人間を横向きで見た際に胴体部から横に突出する上肢部又は下肢部に相当する、下方に延びた突出部分を囲う基準輪郭部分C0と同じ特徴を有することを1次要件として1次輪郭部分C1の有無が判定されてもよい。
【0031】
そして、第1処理部11は輪郭Cのうち1次要件を満たす部分がある場合(図3/S112‥YES)、当該部分を1次輪郭部分C1として認識する(図3/S113)。これにより、たとえば図6に示されている基準輪郭部分C0に形状が類似する、図8に示されているような1次輪郭部分C1が認識される。
【0032】
次に、第2処理部12が「第2処理」を実行する(図3/S12)。
【0033】
第2処理部12は一対の赤外線カメラ102の視差を利用して、第1処理部11により認識された1次輪郭部分C1の重心(又は代表点)の実空間における位置(Y座標)を測定する(図3/S121)。この際、第2処理部12はヨーレートセンサ122及び速度センサ124のそれぞれの出力に基づき、車両1の回頭による、画像における位置ずれを補正する。回頭角補正されたエッジEPの測定位置は時系列的にメモリに保存される。ここで実空間位置とは、図1に示されているように一対の赤外線カメラ102の取り付け位置の中点を原点Oとし、水平方向、鉛直方向及び前後方向をそれぞれX、Y及びZ軸とする座標系における位置を意味する。実空間位置の測定方法及び回頭角補正方法はたとえば前記特許文献1において説明されているので本願明細書では詳細な説明を省略する。
【0034】
さらに、第2処理部12は、1次輪郭部分E2の実空間位置(Y座標)が、人間の標準的な肩の高さに応じた範囲(メモリに格納されている。)に含まれるという2次要件が満たされるか否かを判定する(図3/S122)。
【0035】
そして、第2処理部12は当該要件が満たされていると判定した場合(図3/S122‥YES)、1次輪郭部分C1が2次輪郭部分C2、すなわち人間(対象物体)Pの輪郭部分に該当すると認識する(図3/S123)。これにより、たとえば図8に示されている1次輪郭部分C1が2次輪郭部分C2として認識され、同じく図8に破線で示されているような人間Pの存在が認識される。
続いて、第3処理部13が「第3処理」を実行する(図3/S13)。
【0036】
第3処理部13は第2処理部12により2次輪郭部分C2に該当すると認識された1次輪郭部分C1の時系列的な測定位置をメモリから読み取り、読み取った時系列的な測定位置に基づき車両1を基準とした人間Pの相対速度(大きさ及び向きを含む。)を算出する(図3/S131)。
【0037】
また、第3処理部13は車両1と当該人間Pとの接触可能性を評価する(図3/S132)。たとえば、図9に示されているように赤外線カメラ102により監視可能な三角形領域A0よりも、車両1に対する人間Pの相対速度vsと余裕時間Tとの積(vs×T)だけ低い三角形領域(警報判定領域)が定義される。また、当該三角形領域のうち、Z軸を中心とするX方向の幅がα+2β(α:車幅、β:余裕幅)の第1領域(接近判定領域)A1と、第1領域A1の左右の第2領域(侵入判定領域)A2L及びA2Rとが定義される。そして、人間Pが第1領域A1にある場合や、人間Pが左右の第2領域A2にあって、その相対速度ベクトルvsに鑑みて第1領域A1に侵入してくることが予測される場合、この人間Pと車両1とが接触する可能性が高く評価される。
【0038】
そして、第3処理部13は車両1と人間(対象物体)Pとの接触可能性を高く評価した場合(図3/S133‥YES)、「第1制御処理」を実行する(図3/S134)。これにより、たとえば人間Pの存在を強調するため、図10に示されているように2次輪郭部分C2を囲む矩形状の橙色のフレームfが「第1情報」としてHUD104に表示される。なお、フレームfが2次輪郭部分C2の全部又は大部分を包含するものであれば、その形状やサイズは任意に変更されてもよい。また、第1情報として「ピッピッピッ」等の音声がスピーカ(図示略)から出力されてもよい。
【0039】
一方、第3処理部13は車両1と人間Pとが接触する可能性が低いと判定した場合(図3/S133‥NO)、「第2制御処理」を実行する(図3/S135)。これにより、たとえば人間Pの存在を控えめに強調するため、図10に示されているように2次輪郭部分C2を囲む矩形状の黄色のフレームfが「第2情報」としてHUD104に表示される。なお、第2情報として「ピッ」等、第1情報よりも短い(又は音量が小さい)音声がスピーカ(図示略)から出力されてもよい。
【0040】
前記機能を発揮する本発明の車両周辺監視システム10によれば、赤外線カメラ(撮像装置)102を通じて得られた画像(2値化画像)において高輝度領域の輪郭Cが認識される(図3/S111、図5)。高輝度領域の存在は赤外線カメラ102の撮像範囲における物体の存在を示しているので、その輪郭Cには対象物体(人間)Pの輪郭(2次輪郭部分)C2が含まれている可能性がある。高輝度領域の輪郭Cから2次輪郭部分C2を抽出するため、当該輪郭Cのうち人間Pの形状に応じた「1次要件」を満たす部分が1次輪郭部分C1として認識される(図3/S113、図8)。これにより、人間の形状に鑑みて、高輝度領域の輪郭Cのうち人間の輪郭部分に該当する可能性が高い1次輪郭部分C1が認識又は抽出されうる。
【0041】
さらに、1次輪郭部分C1の実空間における鉛直位置(地面からの高さ)が人間のサイズに応じた「2次要件」を満たす場合、この1次輪郭部分C1が2次輪郭部分C2として認識される(図3/S121〜S123、図8)。これにより、前記画像において人間Pが背景に紛れ込んだ場合でも、2次輪郭部分C2が高い精度で認識又は抽出され、ひいてはこの2次輪郭部分C2を有する人間Pの存在が高い精度で認識されうる。特に、車両1の前方等、撮像装置の撮像範囲に建造物や森林が広がり、画像(2値化画像)においてこの建造物等に人間等の対象物体が紛れ込みやすい環境下で車両1が走行している状況ではその真価が発揮されうる。
【0042】
また、前記のように人間Pが背景に紛れ込んだ場合でも、2次輪郭部分C2、さらには2次輪郭部分C2を有する人間Pの存在が高い精度で認識されうるので、車両1と人間Pとが接触する可能性も高い精度で評価されうる(図3/S132)。
【0043】
さらに、前記のように車両1と人間Pとの接触可能性が高い精度で評価されうるので、車両1と人間Pとの接触回避等の観点から、当該人間P又はその部分を強調する第1又は第2情報が適当にHUD104に表示(出力)されうる(図3/S134,S135、図9、図10)。これにより、車両1の運転者に人間Pの存在を認識させ、車両1と人間Pとの接触を回避するために車両1の減速や操舵等、車両1の挙動を適当に制御させることができる。
【0044】
なお、前記実施形態では人間Pの輪郭部分が2次輪郭部分C2として認識されたが、他の実施形態として同様の方法に基づいて犬や猫等の動物のエッジが2次輪郭部分として認識されてもよい。
【0045】
前記実施形態では1次輪郭部分C1の実空間におけるY座標(鉛直位置)が人間(対象物体)の標準的な肩の高さ(サイズ)に鑑みた適当な範囲に含まれているという1次要件が満たされているか否かに応じて1次輪郭部分C1が2次輪郭部分C2に該当するか否かが判定されたが(図3/S122)、他の実施形態として1次輪郭部分C1の実空間における横又は縦の広がりが、人間(対象物体)の標準的な肩幅等(サイズ)に応じた範囲に属するという2次要件を満たしているか否かに応じて1次輪郭部分C1が2次輪郭部分C2に該当するか否かが判定されてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では第3処理部13が、第1又は第2制御処理としてこの対象物体の存在を強調する第1又は第2情報をHUD104に表示させたが(図9、図10)、他の実施形態として第3処理部13が、第1又は第2制御処理として車両1の挙動を制御するためにステアリングシステムやブレーキシステム等の車載機器を制御する、又は当該車載機器に車両1の挙動を制御させてもよい。当該構成の車両周辺監視システム10によれば、前記のように高精度で評価された車両1と人間Pとの接触可能性に基づいて車載機器が制御され、これにより、車両1と人間Pとの接触を回避する観点から、車両1の減速や操舵等、その挙動が適当に制御されうる。
【符号の説明】
【0047】
1‥車両、10‥車両周辺監視システム、11‥第1処理部、12‥第2処理部、13‥第3処理部、20‥サーバ(車両周辺監視システムの構築システム)、102‥赤外線カメラ(撮像装置)、104‥HUD(情報出力装置(車載機器))、122‥ヨーレートセンサ、124‥速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた画像に基づいて当該車両の周辺を監視するシステムであって、
前記画像における高輝度領域の輪郭を認識し、当該輪郭のうち対象物体の形状に応じた1次要件を満たす部分を1次輪郭部分として認識する第1処理部と、
前記第1処理部により認識された前記1次輪郭部分の実空間における位置又はサイズを測定し、当該1次輪郭部分の実空間における位置又はサイズが前記対象物体のサイズに応じた2次要件を満たすか否かに応じて、前記1次輪郭部分が当該対象物体の輪郭部分である2次輪郭部分に該当するか否かを判定する第2処理部とを備え、
前記第1処理部が、前記高輝度領域の輪郭が前記対象物体である人間の肩に相当する段差部分を有し、かつ、当該段差部分より上側にある部分の鉛直方向のサイズが、当該段差部分より下側にある部分の鉛直方向のサイズよりも小さいことを前記1次要件として前記1次輪郭部分を認識することを特徴とする車両周辺監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両周辺監視システムにおいて、
前記第2処理部が前記1次輪郭部分の前記段差部分の実空間における鉛直位置を測定し、当該測定した鉛直位置が当該対象物体である人間の肩の標準的な高さに応じた範囲に含まれることを前記2次要件として前記2次輪郭部分を認識することを特徴とする車両周辺監視システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両周辺監視システムにおいて、
前記第2処理部が前記1次輪郭部分の実空間における横幅を測定し、当該測定した横幅が当該対象物体である人間の標準的な肩幅に応じた範囲に含まれることを前記2次要件として前記2次輪郭部分を認識することを特徴とする車両周辺監視システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の車両周辺監視システムにおいて、
前記第2処理部により前記2次輪郭部分に該当すると認識された前記1次輪郭部分の時系列的な測定位置に基づき前記車両と当該2次輪郭部分を有する前記対象物体との接触可能性を評価する第3処理部をさらに備えていることを特徴とする車両周辺監視システム。
【請求項5】
請求項4記載の車両周辺監視システムにおいて、
前記第3処理部が前記車両と前記対象物体との接触可能性の評価に基づき、当該対象物体の存在を知らせる又は強調する情報を車載の情報出力装置に出力させる、あるいは当該車両の挙動を制御するもしくは車載機器に制御させることを特徴とする車両周辺監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142966(P2012−142966A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31157(P2012−31157)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2006−188476(P2006−188476)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】