説明

車両周辺監視装置

【課題】車両と対象物との接触可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両周辺監視装置によれば、対象物が人間であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域A1に含まれている場合、自車両10とこの対象物との接触可能性が高いことが通報される。一方、対象物が四足動物であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域A2に含まれている場合、当該通報がなされる。ここで、第2の接触判定領域A2は、第1の接触判定領域A1との重なり領域と、第1の接触判定領域A1から少なくとも一部がはみ出した領域とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された撮像装置によって得られる撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺に存在する動物等の対象物の時系列的な位置データに基づいてその対象物の実空間における移動ベクトルを算出し、この移動ベクトルに基づいて車両と対象物との接触可能性の高低を判定し、当該接触可能性が高いと判定した場合にはその旨を運転者に通報する車両周辺監視装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−006096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、対象物が鹿等の四足動物である場合、一般的にその行動を予測するのが困難であるため、移動ベクトルに基づいて接触可能性の高低が判定されると、運転者への通報タイミングが遅れる場合がある。一方、人間のようにその行動を比較的容易に予測しうる対象物にもかかわらず、単に通報タイミングを早めるだけでは、運転者への通報頻度がいたずらに高くなる場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、車両と対象物との接触可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる車両周辺監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両周辺監視装置は、車両に搭載された撮像装置によって得られる撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、前記撮像画像から対象物を抽出する対象物抽出手段と、前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物の実空間位置を測定する位置測定手段と、前記車両と前記対象物との接触可能性の高低を判定するための接触判定領域を設定する接触判定領域設定手段と、前記接触判定領域設定手段により設定された前記接触判定領域に前記位置測定手段により測定された実空間位置の前記対象物が含まれる場合、運転者に対して前記対象物の存在を通報する対象物通報手段と、前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物が人間および四足動物のいずれに該当するかを判定する対象物判定手段とを備え、前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が人間であると判定された場合に第1の前記接触判定領域を設定し、前記対象物判定手段により前記対象物が四足動物であると判定された場合、前記第1の接触判定領域との重なり領域と、前記第1の接触判定領域から少なくとも一部がはみ出した領域とを有する第2の前記接触判定領域を設定することを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両周辺監視装置によれば、対象物が人間であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域に含まれている場合、車両とこの対象物との接触可能性が高い状況にあることが通報される。一方、対象物が四足動物であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域に含まれている場合、当該通報がなされる。ここで、第2の接触判定領域は、第1の接触判定領域との重なり領域と、第1の接触判定領域から少なくとも一部がはみ出した領域とを有している。このため、対象物が四足動物である場合、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域に含まれていなくても第2の接触判定領域のうち第1の接触判定領域からはみだした領域に含まれていれば通報がなされるので、対象物が人間である場合と比較して通報タイミングを早めることができる。一方、対象物が人間である場合、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域のうち第1の接触判定領域からはみだした領域に含まれていても通報が無条件になされることはないので、車両と人間とが接触する可能性が高いことを運転者に通報する頻度がいたずらに高くなることが防止される。したがって、車両と対象物が接触する可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる。
【0007】
第2発明の車両周辺監視装置は、第1発明の車両周辺監視装置において、前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が人間であると判定された場合に前記第1の接触判定領域の外側に第3の前記接触判定領域を設定し、前記位置測定手段で異なる時点において測定された前記対象物の複数の実空間位置から前記対象物の移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出手段を備え、前記対象物通報手段は、前記移動ベクトル算出手段で算出された前記第3の接触判定領域に存在する前記人間の移動ベクトルが前記第1の接触判定領域に向かっている場合に、前記運転者に対して前記人間の存在を通報し、前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が四足動物であると判定された場合に、前記第1の接触判定領域と前記第3の接触判定領域のうち一部または全部とを合わせた領域を前記第2の接触判定領域として設定することを特徴とする。
【0008】
第2発明の車両周辺監視装置によれば、対象物が人間であると判定され、この対象物の実空間位置が第3の接触判定領域に含まれ、かつ、この対象物の移動ベクトルが第1の接触判定領域に向かっている場合、車両とこの対象物との接触可能性が高いことが通報される。このため、人間の実空間位置が第3の接触判定領域に含まれ、人間の移動ベクトルが第1の接触判定領域に向かっていない場合には通報がされることがないので、車両と人間とが接触する可能性が高いことを運転者に通報する頻度がいたずらに高くなることが防止される。一方、対象物が四足動物であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域の一部としての第3の接触判定領域に含まれていればその移動ベクトルの向きとは関係なく通報がなされるので、対象物が人間である場合と比較して通報タイミングを早めることができる。したがって、車両と対象物が接触する可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる。
【0009】
第3発明の車両周辺監視装置は、第1または2発明の車両周辺監視装置において、前記接触判定領域設定手段は、前記車両の前方において、前記車両の進行方向に対して平行に延び前記車両の左右両側に所定の余裕を加えた幅を有する領域を、前記第1の接触判定領域として設定することを特徴とする。
【0010】
第3発明の車両周辺監視装置によれば、対象物が人間であると判定された場合、第1の接触判定領域は、車両の前方において、車両の進行方向に対して平行に延び車両の左右両側に所定の余裕を加えた幅を有する領域に設定される。当該領域は、車両とこの対象物とが接触する可能性が高い領域であり、当該領域の外側の領域は、車両とこの対象物とが接触する可能性が必ずしも高くない領域であることに鑑みて、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域に含まれている場合、運転者に対して車両とこの対象物とが接触可能性が高いことが適当な頻度で通報される。また、第1の接触判定領域の外側は、この対象物の実空間位置が当該領域に含まれていても当該通報がなされることはないので、運転者に通報する頻度がいたずらに高くなることが防止される。一方、第1の接触判定領域の外側には第2の接触判定領域が含まれるため、対象物が四足動物である場合には、対象物が人間である場合と比較して通報タイミングを早めることができる。したがって、車両と対象物が接触する可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる。
【0011】
第4発明の車両周辺監視装置は、第1〜3のいずれかの発明の車両周辺監視装置において、前記接触判定領域設定手段は、前記撮像装置により撮像される撮像領域を前記第2の接触判定領域に設定することを特徴とする。
【0012】
第4発明の車両周辺監視装置によれば、対象物が四足動物であると判定された場合、第2の接触判定領域は、車両が認識できる最大限の範囲である撮像装置により撮像される撮像領域に設定されることに鑑みて、この対象物の実空間位置が当該領域に含まれている場合、車両とこの対象物の接触可能性が高いことの通報タイミングを早めることができる。一方、対象物が人間であると判定された場合、第1の接触判定領域は、当該撮像領域に対して限定された領域に設定され、この対象物の実空間位置が当該領域からはみ出した領域に含まれていても当該通報が無条件になされることはないことに鑑みて、運転者に通報する頻度がいたずらに高くなることが防止される。したがって、車両と対象物が接触する可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を以下に図1〜図6を参照して説明する。まず、本実施形態の車両周辺監視装置の構成について説明する。図1および図2を参照して本実施形態の車両周辺監視装置は画像処理ユニット1を備える。画像処理ユニット1には、自車両10の前方の画像を撮像する撮像装置としての2つの赤外線カメラ2R,2Lが接続されると共に、自車両10の走行状態を検出するセンサとして、自車両10のヨーレートを検出するヨーレートセンサ3、自車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ4、および自車両10のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサ5とが接続されている。さらに、画像処理ユニット1には、音声などによる聴覚的な通報情報を出力するためのスピーカ6、および赤外線カメラ2R,2Lにより撮像された撮像画像や視覚的な通報情報を表示するための表示装置7が接続されている。なお、赤外線カメラ2R,2Lが本発明における撮像装置に相当する。
【0014】
画像処理ユニット1は、詳細な図示は省略するが、A/D変換回路、マイクロコンピュータ(CPU、RAM、ROM等を有する)、画像メモリなどを含む電子回路により構成され、赤外線カメラ2R,2L、ヨーレートセンサ3、車速センサ4およびブレーキセンサ5から出力されるアナログ信号が、A/D変換回路によりデジタルデータ化されて、マイクロコンピュータに入力される。そして、マイクロコンピュータは、入力されたデータを基に、人(歩行者、自転車に乗っている者)などの対象物を検出し、検出した対象物が所定の通報要件を満す場合にスピーカ6や表示装置7により運転者に通報を発する処理を実行する。なお、画像処理ユニット1は、本発明における対象物抽出手段、対象物判定手段、および接触領域設定手段としての機能を備えている。
【0015】
図2に示されているように、赤外線カメラ2R,2Lは、自車両10の前方を撮像するために、自車両10の前部(図ではフロントグリルの部分)に取り付けられている。この場合、赤外線カメラ2R,2Lは、それぞれ、自車両10の車幅方向の中心よりも右寄りの位置、左寄りの位置に配置されている。それら位置は、自車両10の車幅方向の中心に対して左右対称である。赤外線カメラ2R,2Lは、それらの光軸が互いに平行に自車両10の前後方向に延在し、且つ、それぞれの光軸の路面からの高さが互いに等しくなるように固定されている。赤外線カメラ2R,2Lは、遠赤外域に感度を有し、それにより撮像される物体の温度が高いほど、出力される映像信号のレベルが高くなる(映像信号の輝度が高くなる)特性を有している。実空間座標系は図2に示されているように車両10の前端中央部を原点Oとし、車両10の右方向を+X方向、鉛直下方を+Y方向、車両10の前方を+Z方向として定義されている。
【0016】
また、本実施形態では、表示装置7として、自車両10のフロントウィンドウに画像情報を表示するヘッド・アップ・ディスプレイ7a(以下、HUD7aという)を備えている。なお、表示装置7として、HUD7aの代わりに、もしくは、HUD7aと共に、自車両10の車速などの走行状態を表示するメータに一体的に設けられたディスプレイ、あるいは、車載ナビゲーション装置に備えられたディスプレイを用いてもよい。
【0017】
次に、前記構成の車両周辺監視装置の基本的な機能について図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートの基本的な処理内容は、例えば本出願人による特開2001−6096号の図3および特開2007−310705号の図3に記載されている処理内容と同様である。
【0018】
具体的にはまず、画像処理ユニット1は、赤外線カメラ2R、2Lの出力信号から赤外線画像が入力される(図3/STEP11)。次いで、画像処理ユニット1は、赤外線カメラ2R、2Lの出力信号をA/D変換する(図3/STEP12)。そして、画像処理ユニット1は、A/D変換された赤外線画像からグレースケール画像を取得する(図3/STEP13)。その後、画像処理ユニット1は、基準画像(右画像)を2値化する(図3/STEP14)。次いで、画像処理ユニット1は、前記2値化画像に対してSTEP15〜17の処理を実行し、該2値化画像から対象物(より正確には対象物に対応する画像領域)を抽出する。具体的には、前記2値化画像の高輝度領域を構成する画素群をランレングスデータに変換する(図3/STEP15)。次いで、基準画像の縦方向に重なりを有するライン群のそれぞれにラベル(識別子)を付する(図3/STEP16)。そして、ライン群のそれぞれを対象物として抽出する(図3/STEP17)。その後、画像処理ユニット1は、上記の如く抽出した各対象物の重心の位置(基準画像上での位置)、面積、および外接四角形の縦横比を算出する(図3/STEP18)。次いで、画像処理ユニット1は、前記STEP18で抽出した対象物の時刻間追跡、すなわち、画像処理ユニット1の演算処理周期毎の同一対象物の認識を行なう(図3/STEP19)。そして、画像処理ユニット1は、前記車速センサ4およびヨーレートセンサ5の出力(車速の検出値およびヨーレートの検出値)を読み込む(図3/STEP20)。
【0019】
一方、画像処理ユニット1は、STEP19,20の処理と並行して、STEP31の処理を実行する。まず、前記基準画像のうち、各対象物に対応する領域(例えば該対象物の外接四角形の領域)を探索画像として抽出する(図3/STEP31)。次いで、左画像中から探索画像に対応する画像(対応画像)を探索する探索領域を設定し、相関演算を実行して対応画像を抽出する(図3/STEP32)。そして、対象物の自車両10からの距離(自車両10の前後方向における距離)を算出する(図3/STEP33)。
【0020】
次いで、画像処理ユニット1は、各対象物の実空間上での位置(自車両10に対する相対位置)である実空間位置を算出する(図3/STEP21)。そして、画像処理ユニット1は、対象物の実空間位置(X,Y,Z)のうちのX方向の位置Xを前記STEP20で求めた回頭角の時系列データに応じて補正する(図3/STEP22)。その後、画像処理ユニット1は、対象物の自車両10に対する相対移動ベクトルを推定する(図3/STEP23)。次いで、STEP23において、相対移動ベクトルが求められたら、検出した対象物との接触の可能性を判定し、その可能性が高いときに通報を発する通報判定処理を実行する(図3/STEP24)。以上が本実施形態の周辺監視装置の全体的作動である。なお、画像処理ユニット1によりSTEP11〜18の処理を実行する構成が、本発明の対象物抽出手段に相当する。
【0021】
次に、本発明の車両周辺監視装置の主要な機能である通報処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
まず、対象物抽出手段により抽出された対象物が人間、および四足動物のいずれかであるかを判定する対象物判定処理を実行する(図4/STEP100)。
【0023】
具体的には、グレースケール画像上で対象物の画像領域の形状や大きさ、輝度分散等の特徴から対象物の種類を判定する。たとえば、頭部(具体的には第1の高輝度画像領域に相当する)と、肩部、胴部、腕部または脚部(具体的には第1の高輝度画像領域の下側に存在し、かつ、第1の高輝度画像領域に対して、頭部に対する肩部等の標準的な配置関係と同じ配置関係を有する第2の高輝度画像領域)とを有する対象物が人間であると判定される。また、胴部(具体的には第1の高輝度画像領域)と、頭部または脚部(具体的には第1の高輝度画像領域の横側または下側に位置し、かつ、第1の高輝度画像領域より小さい第2の高輝度画像領域)とを有する対象物が鹿、羊、犬または馬等の四足動物であると判定される。さらに、対象物の外形と、メモリにあらかじめ記憶されている対象物の外形とのパターンマッチングにより対象物の種類が判定されてもよい。
【0024】
そして、対象物が人間であると判定された場合(図4/STEP100‥A)、第1の接触判定領域A1および第3の接触判定領域A3が設定される(図4/STEP102)。具体的には、図5(a)に示されているように赤外線カメラ2R、2Lにより監視可能な三角形領域A0の内側において、Z方向に平行に延び、かつ、X方向について自車両10の車幅αの左右両側に第1の余裕β(たとえば50〜100cm)を加えた幅を有する領域が第1の接触判定領域A1として設定される(斜線部分参照)。第1の接触判定領域A1の車両1からみたZ方向の奥行きZ1は自車両10と対象物との相対速度Vsに、余裕時間Tを積算して得られた距離に定められている。また、図5(a)に示されているように三角形領域A0において第1の接触判定領域の左右両側に隣接する領域が第3の接触判定領域A3L.A3Rとして設定される。
【0025】
さらに、対象物の実空間位置が第1の接触判定領域A1に含まれるか否かが判定される(図4/STEP104)。なお、対象物の実空間位置は、図3のSTEP21で測定される。画像処理ユニット1によりSTEP21の処理を実行する構成が、本発明の位置測定手段に相当する。第1の接触判定領域A1内に対象物の実空間位置が存在すると判定される場合(図4/STEP104‥YES)、通報出力判定処理が実行される(図4/STEP106)。一方、第1の接触判定領域A1内に対象物が存在しないと判定された場合(図4/STEP104‥NO)、対象物が第3の接触判定領域A3R,A3Lに存在し、かつ、STEP23で求めた対象物の移動ベクトルが第1の接触判定領域A1に向かっているか否かを判定する(図4/STEP105)。
【0026】
当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP105‥YES)、ブレーキセンサ5の出力から自車両10の運転者が適切なブレーキ操作を行なっているか否かが判定される(図4/STEP106)。車両10の運転者が適切なブレーキ操作を行なっていないと判定された場合(図4/STEP106‥NO)、運転者に対して車両と対象物との接触可能性が高い状況である旨が通報される(図4/STEP108)。具体的には、スピーカ6を介して音声が出力することにより当該状況が通報される。また、HUD7aにおいて対象物を強調表示することによっても当該状況が通報される。なお、STEP106の判定処理は省略されてもよい。
【0027】
その一方、対象物が四足動物であると判定された場合(図4/STEP100‥B)、第2の接触判定領域A2が設定される(図4/STEP202)。具体的には、図5(b)に示されているように、赤外線カメラ2R、2Lにより監視可能な三角形領域A0の内側において、Z方向に平行に延び、かつ、X方向について自車両10の車幅αの左右両側に第1の余裕βよりも大きい第2の余裕γを加えた幅を有する領域が第2の接触判定領域A2として設定される(斜線部分参照)。第2の接触判定領域A2の車両1からみたZ方向の奥行きZ1は、第1の接触判定領域A1と同様に自車両10と対象物との相対速度Vsに、余裕時間Tを積算して得られた距離に定められている。第2の接触判定領域A2は第1の接触判定領域A1の全部に重なる領域と、第1の接触判定領域A1の左右両側に第2の余裕γおよび第1の余裕βの偏差(γ−β)だけはみ出した領域とを有する。
【0028】
次いで、対象物の実空間位置が第2の接触判定領域A2に含まれるか否かを判定する(図4/STEP204)。なお、対象物の実空間位置は、図3のSTEP21で測定される。対象物の実空間位置が第2の接触判定領域A2に存在すると判定された場合(図4/STEP204‥YES)、ブレーキセンサ5の出力から自車両10の運転者が適切なブレーキ操作を行なっているか否かが判定される(図4/STEP206)。自車両10の運転者が適切なブレーキ操作を行なっていないと判定された場合(図4/STEP206‥NO)、運転者に対して車両10と対象物との接触可能性が高い旨が通報される(図4/STEP208)。
【0029】
なお、画像処理ユニット1によりSTEP100の処理を実行する構成が、本発明の対象物判定手段に、STEP102およびSTEP202の処理を実行する構成が、本発明の接触判定領域設定手段に、STEP108およびSTEP208の処理を実行する構成が、本発明の対象物通報手段にそれぞれ相当する。
【0030】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置によれば、対象物が人間であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域A1に含まれている場合、自車両10とこの対象物との接触可能性が高いことが通報される(図4/S100‥A,S102〜108、図5(a)参照)。一方、対象物が四足動物であると判定され、かつ、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域A2に含まれている場合、当該通報がなされる(図4/S100‥B,S202〜208、図5(b)参照)。ここで、第2の接触判定領域A2は、第1の接触判定領域A1との重なり領域と、第1の接触判定領域A1から少なくとも一部がはみ出した領域とを有している(図5(a)(b)参照)。このため、対象物が四足動物である場合、この対象物の実空間位置が第1の接触判定領域A1に含まれていなくても第2の接触判定領域A2のうち第1の接触判定領域A1からはみだした領域に含まれていれば通報がなされるので、対象物が人間である場合と比較して通報タイミングを早めることができる。一方、対象物が人間である場合、この対象物の実空間位置が第2の接触判定領域A2のうち第1の接触判定領域A1からはみだした領域に含まれていても通報が無条件になされることはないので、自車両10と人間とが接触する可能性が高いことを運転者に通報する頻度がいたずらに高くなることが防止される。したがって、自車両10と対象物が接触する可能性が高い状況にあることを、この対象物の種類に鑑みて適当なタイミングまたは頻度で通報することができる。
【0031】
なお、前記実施形態において、図5(b)に示されている第2の接触判定領域A2は、図5(a)に示されている第1の接触判定領域A1の全部と重なるように設定されたが、図6(a)に示されているように、第2の接触判定領域A2(斜線部分)が第1の接触判定領域A1の一部と重なるように設定されてもよい。また、前記実施形態では第2の接触判定領域A2において、第1の接触判定領域A1との重なり領域と、第1の接触判定領域A1からのはみ出し領域とは隣接していたが、図6(b)に示されているように当該重なり領域および当該はみ出し領域が相互に離れていてもよい。さらに、第2の接触判定領域A2のうち、第1の接触判定領域A1からのはみ出し領域は、第1の接触判定領域との重なり領域の左右いずれか一方の側にのみ設けられていてもよく、左右非対称な形状または配置とされていてもよい。また、前記実施形態では第2の接触判定領域A2は、自車両10の車幅αの両側に第2の余裕γ(γ>β)を加えた範囲に対応する領域に設定したが、第1の接触判定領域A1と第3の接触判定領域A3R,A3Lとを合わせた領域を第2の接触判定領域A2としてもよい。
【0032】
さらに、第2の接触判定領域AR4を赤外線カメラ2R,2Lにより撮像される撮像領域としてもよい。また、本実施形態においては、画像処理ユニット1の処理結果に基づいて、所定の通報を行うように構成されているが、該処理結果に基づいて車両挙動を制御するように構成してもよい。さらに、前記実施形態では、2台の赤外線カメラ2R,2Lを備えたが、1台の赤外線カメラを自車両10に搭載するようにしてもよい。この場合には、対象物との距離をレーダーなどにより検出するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車両の周辺監視装置の一実施形態の全体構成を示す図
【図2】図1の周辺監視装置を備えた車両の斜視図
【図3】図1の周辺監視装置に備えた画像処理ユニットの処理を示すフローチャート
【図4】本実施形態における通報判定処理を示すフローチャート
【図5】本実施形態における撮像装置で撮像される接触判定領域を示す図
【図6】本実施形態における撮像装置で撮像される接触判定領域の変形例を示す図
【符号の説明】
【0034】
1…画像処理ユニット(対象物抽出手段、対象物判定手段、接触領域設定手段)、2R,2L…赤外線カメラ(撮像装置)、6…スピーカ(対象物通報手段)、7a…HUD(対象物通報手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像装置によって得られる撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、
前記撮像画像から対象物を抽出する対象物抽出手段と、
前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物の実空間位置を測定する位置測定手段と、
前記車両と前記対象物との接触可能性の高低を判定するための接触判定領域を設定する接触判定領域設定手段と、
前記接触判定領域設定手段により設定された前記接触判定領域に前記位置測定手段により測定された実空間位置の前記対象物が含まれる場合、運転者に対して前記対象物の存在を通報する対象物通報手段と、
前記対象物抽出手段により抽出された前記対象物が人間および四足動物のいずれに該当するかを判定する対象物判定手段とを備え、
前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が人間であると判定された場合に第1の前記接触判定領域を設定し、前記対象物判定手段により前記対象物が四足動物であると判定された場合、前記第1の接触判定領域との重なり領域と、前記第1の接触判定領域から少なくとも一部がはみ出した領域とを有する第2の前記接触判定領域を設定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両周辺監視装置において、
前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が人間であると判定された場合に前記第1の接触判定領域の外側に第3の前記接触判定領域を設定し、
前記位置測定手段で異なる時点において測定された前記対象物の複数の実空間位置から前記対象物の移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出手段を備え、
前記対象物通報手段は、前記移動ベクトル算出手段で算出された前記第3の接触判定領域に存在する前記人間の移動ベクトルが前記第1の接触判定領域に向かっている場合に、前記運転者に対して前記人間の存在を通報し、
前記接触判定領域設定手段は、前記対象物判定手段により前記対象物が四足動物であると判定された場合に、前記第1の接触判定領域と前記第3の接触判定領域のうち一部または全部とを合わせた領域を前記第2の接触判定領域として設定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両周辺監視装置において、
前記接触判定領域設定手段は、前記車両の前方において、前記車両の進行方向に対して平行に延び前記車両の左右両側に所定の余裕を加えた幅を有する領域を、前記第1の接触判定領域として設定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1つに記載の車両周辺監視装置において、
前記接触判定領域設定手段は、前記撮像装置により撮像される撮像領域を前記第2の接触判定領域として設定することを特徴とする車両周辺監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−301283(P2009−301283A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154408(P2008−154408)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【特許番号】特許第4377439号(P4377439)
【特許公報発行日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】