説明

車両後部の車体構造

【課題】車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車両後部の車体構造とする。
【解決手段】上下に延びてホイールハウスインナ5との間で閉断面形状を形成するブレース本体24をホイールハウス4に接合し、車幅方向に延びて配されるリヤシェルフ31にブレース本体24の上面開口を接合し、ブレース閉断面部とリヤシェルフ閉断面部とを連結し、ブレース本体24の水平断面の面積を上面開口に向かい広くし、応力分布が抑制された最小限の大きさのブレース本体24によりリヤシェルフ31との接続面積を確保してホイールハウス4の剛性を充分に高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤホイールハウスとリヤシェルフが備えられた車両後部の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば、乗用車の後部の車室(荷室)内側にはリヤホイールハウスが配設され、リヤホイールハウスのインナパネルやアウタパネルの変形防止や強度確保の構造が種々採用されている。(例えば、下記特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1で提案された構造は、ホイールハウスの側面部位にストラットハウスに沿って延びる閉断面形状のサイドステーを接合し、リヤホイールハウスのインナパネルやアウタパネルの変形を防止すると共に強度を確保して剛性を高めている。また、特許文献2で提案された構造は、リヤホイールハウスのインナパネルとリヤクォータパネルのインナパネルとを閉断面形状のコーナーブラケットで接合し、主にリヤホイールハウスの上部の変形を防止すると共に強度を確保して剛性を高めている。
【0004】
一方、リヤホイールハウスの上部には車幅方向に延びるリヤシェルフが配設され、リヤシェルフにより車体の構造剛性が確保された車両が知られている。リヤホイールハウスと一体にストラットハウスが備えられる車両では、ストラットハウスの頂部をリヤシェルフに接合することにより、ストラットハウスからの入力をリヤシェルフに分散して全体の剛性を確保している(例えば、下記特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−78674号公報
【特許文献2】実開平5−78675号公報
【特許文献3】実開昭63−69679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、生活スタイルの変化や価値観の多様化等に伴い様々な使用目的に対応できる車両が求められてきており、車両に対する要求は多岐にわたる状況にある。乗り心地や居住性、燃費に対する要求が重視される一方で、走行性能に対する要求も重視され、相反する要求に対しても高い次元で要求を満足する車両が求められてきている。車体の補強構造に関しても、乗り心地や居住性を向上させるために補強部材による車体の重量増加やスペースの拡大を抑えつつ、走行中の乗り心地を安定させるために高次元での剛性が確保できることが要求される状況となっている。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車両後部の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車両後部の車体構造は、車両後輪の車幅方向内側に設けられ、上部が車幅方向外側へ湾曲するリヤホイールハウスインナと、前記リヤホイールハウスインナの車幅方向の内側面に接合され、前記内側面に沿って上下に延びると共に、前記リヤホイールハウスインナと共に水平断面が閉断面となるブレース閉断面部を形成するブレースと、前記ブレースの上方で、車幅方向に延びて配されるリヤシェルフとを備える車両後部の車体構造であって、前記リヤシェルフの下面に接合され、前記リヤシェルフに沿って車幅方向に延びると共に、前記リヤシェルフと共に車幅方向に垂直な断面が閉断面となるリヤシェルフ閉断面部を形成するクロスメンバ部材とを更に備え、前記クロスメンバ部材の端部と前記ブレースの上端部とを結合させて、前記ブレース閉断面部と前記リヤシェルフ閉断面部とを連結するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、閉断面形成部材でリヤシェルフに閉断面を形成し、閉断面形成部材の端部とブレースの上端部とを結合させることで、リヤシェルフ閉断面部とブレース閉断面部とを連結して形成させることが可能となり、閉断面形状の連結により、高次元での車体剛性を確保することができる。特に車体の捩りに対する剛性確保に有効である。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項1に記載の車両後部の車体構造において、前記ブレース閉断面部は、その水平断面の面積が上方に向かって広くなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、応力分布が抑制された最小限の大きさのブレースによりリヤシェルフとの接続面積を確保して剛性を充分に高めることができる。このため、車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車両後部の車体構造となる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項1もしくは請求項2に記載の車両後部の車体構造において、前記ブレースの上部が車幅方向内側へ湾曲していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、ブレースの上部が車幅方向内側へ湾曲しているので、ブレースの上端部とクロスメンバ部材の端部との結合部分が滑らかとなって結合剛性を確保することができ、閉断面形状の連結剛性を充分に高めることができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の車両後部の車体構造は、 請求項3に記載の車両後部の車体構造において、前記ブレースの上端部にバルクヘッドが接合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、バルクヘッドを介在させているので、ブレース閉断面部の強度を確保しつつ、リヤシェルフ閉断面部に連結させてブレースをリヤシェルフに接合することができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、前記リヤホイールハウスインナの下部には、前記車両のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部が配され、前記ブレースの下部が前記サスペンション支持部に接合されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、ブレースの下部がサスペンション支持部に接合されているのでサスペンション装置から車体への入力をリヤシェルフに分散させることができる。
【0018】
また、請求項6に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、車両の前後方向に延びるサイドメンバに前記ブレースの下端が接合されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、ブレースの下端がサイドメンバに接合されているので、リヤホイールハウスインナからの入力をリヤシェルフ及びサイドメンバに分散することができる。
【0020】
また、請求項7に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、前記ブレースには、前記ブレースの上端の前記ブレース閉断面部よりも断面積が狭い部位に補強部位を設けたことを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る本発明では、ブレースの補強状況を補強部位で任意に設定することができる。
【0022】
また、請求項8に係る本発明の車両後部の車体構造は、請求項7に記載の車両後部の車体構造において、前記補強部位は、前記ブレースの外側に被せられるリンホースであることを特徴とする。
【0023】
請求項8に係る本発明では、所望の部位のブレースの外側にリンホースを被せることで、容易に補強状況を任意に設定することができる。
【0024】
また、請求項9に係る車両後部の車体構造は、請求項7に記載の車両後部の車体構造において、前記補強部位は、上下方向に分割されたブレース分割材が互いに接続されて前記ブレースを構成することで形成されることを特徴とする。
【0025】
請求項9に係る本発明では、所望の部位のブレース分割材を必要な強度に設定することで、確実に補強状況を任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の車両後部の車体構造は、車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車体構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
第1実施形態例を説明する。
【0028】
図1には本発明の第1実施形態例に係る車両後部の車体構造を現す斜視状況、図2には図1の矢印II方向の状況、図3には図1の分解状況、図4には図2中のIV−IV線断面、図5には図4中の矢印V部の詳細、図6にはブレースの取付き状態を表す斜視状況、図7には図6中の矢印VII方向の状況、図8にはリヤシェルフの部位の車両前側からの詳細、図9には図8中のIX−IX線断面、図10には図8中のX−X線断面を示してある。
【0029】
図1〜図5に示すように、車両後部の車体構造は、前後方向に延びるサイドメンバ1としてハット形断面のサイドメンバロア2と、サイドメンバロア2の上面開口部を覆うように配設されるフロアパネル3とで構成され、さらに、フロアパネル3の左右両端部には後輪を収容するためのホイールハウス4(リヤホイールハウス)を構成するホイールハウスインナ5と、ホイールハウスインナ(リヤホイールハウスインナ)5の外側に接合されるクォータインナ6が配設される。クォータインナ6は、下方部がホイールハウス4のアウタ側を構成し、上方部はリヤピラー7のインナ側を構成する。ホイールハウス4のホイールハウスインナ5は車両の車室(荷室)側に膨出した形状をなし(即ち、上部が車幅方向外側へ湾曲している)、ホイールハウスインナ5の車室の外側に後輪(図示省略)が収容される。
【0030】
ホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面の下部中央部には凹状の開口8が形成され、開口8の下方にはスプリングハウス9(サスペンション支持部)が接合されている。スプリングハウス9はスプリングハウスパネル10及びスプリングハウスブラケット11が接合されて構成されている。スプリングハウスブラケット11にサスペンション装置(ショックアブソーバやばね部材)の上部が支持され、スプリングハウスパネル10がホイールハウスインナ5の壁面に接合される。
【0031】
また、フロアパネル3の車両外側部にはスプリングハウスブラケット11が嵌合する凹部12が形成され、凹部12に対応する位置でスプリングハウスブラケット11がサイドメンバロア2の縦壁に接合されることで、スプリングハウス9がサイドメンバ1に接合された状態になっている(主に図4、図5参照)。
【0032】
一方、ホイールハウス4の開口8の部位にはハット型断面形状のリンホース21が配され、リンホース21の断面内側で開口8を覆うようにリンホース21の側縁部21aがホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面に接合されている。また、リンホース21の下縁部21bはスプリングハウスブラケット11の壁部に挟まれた状態でサイドメンバロア2の縦壁に接合されている(図5参照)。つまり、リンホース21の下部がサイドメンバ1及びスプリングハウス9に接合されている。
【0033】
リンホース21の上縁にはリンホース21の断面形状に連続するハット型断面形状のブレース本体24の下部が接合され、ブレース本体24の断面形状の面積(水平断面の面積)は上部の開口に向かい広くなっている。ブレース本体24は、車両の前後方向に二分割された前ブレース25と後ブレース26とで構成され、ハット型断面の底面となる面で前ブレース25の面縁25aと後ブレース26の面縁26aが互いに重ねられて接合された状態になっている。
【0034】
そして、前ブレース25の側部の縦縁と後ブレース26の側部の縦縁がホイールハウス4の膨出形状に沿った湾曲状に形成され、前ブレース25の縦縁に連続する側縁部25bと後ブレース26の縦縁に連続する側縁部26bがホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面に接合され、ブレース本体24がホイールハウス4に接合された状態になっている。
【0035】
つまり、リンホース21とブレース本体24によりブレースが構成され、ブレースはホイールハウスインナ5の車幅方向内側面に溶接されて上下に延び、ブレースはホイールハウスインナ5と共に水平断面が閉断面となるブレース閉断面部が形成されてホイールハウス4に接合されている。また、ブレースの下端(リンホース21の下部)がサイドメンバ1及びスプリングハウス9に接合されている。
【0036】
尚、リンホース21とブレース本体24によりブレースを構成したが、ブレース本体24だけでブレースを構成することも可能である。また、ブレース本体24を前ブレース25及び後ブレース26で構成して部材の加工を容易にしているが、絞り加工が可能であれば一つのハット型断面で断面積が上に向かって広くなる形状のブレースを用いることも可能である。また、リンホース21とブレース本体24の上下方向の重なりを適宜設定することにより(適宜の状態で被せることにより)、ホイールハウス4の部位の補強を任意に設定することが可能である。
【0037】
図6、図7に示すように、ブレース本体24は上部の開口に向かい断面積が広くなっており、前述したブレース閉断面部は水平断面の面積が上方に向かって広くなっている。つまり、ブレース本体24のホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面に対応する部位(下方)の断面積S(図に点線で囲んで示してある)に対して、ブレース本体24の上部の開口に向かい面積が車両の前後方向及び左右方向に漸次広げられた状態になり、ブレース本体24(ブレース)の上部が車幅方向内側に湾曲した状態になっている。ブレース本体24(リンホース21)は、ハット型断面形状及びホイールハウスインナ5の壁面及びスプリングハウスブラケット11(図3、図4参照)で囲まれた袋構造とされている。
【0038】
ブレース本体24の後ブレース26の上部の開口には上面縁26cが形成され、前ブレース25の上縁と後ブレース26の上面縁26cがリヤシェルフ31に接合される。前ブレース25及び後ブレース26によりホイールハウス4の強度確保が行われると共に、前ブレース25及び後ブレース26は図示しないリヤシートのシートバックの補強部材として機能する。
【0039】
図1〜図4、図8〜図10に示すように、ホイールハウス4の上方には車両の幅方向に延びるリヤシェルフ31が配され、リヤシェルフ31の両端部が左右のホイールハウス4の上部の車体壁面に接合されて車体のねじり剛性が確保されている。リヤシェルフ31の端部は板状部材としてのリヤシェルフアッパブレース32とクロスメンバ部材としてのバルクヘッドブレース33(バルクヘッド)とで構成され、図10に示すように、リヤシェルフアッパブレース32の車両の前方側の車幅方向に延びる縁部32aの内側にバルクヘッドブレース33の前側の縁部33aが接合されている。
【0040】
また、図10に示すように、リヤシェルフアッパブレース32の縁部32aとバルクヘッドブレース33の縁部33aとの接合部にはブレース本体24の前ブレース25の上縁が接合されている。更に、リヤシェルフアッパブレース32の車両の後方側の縁部には、ブレース本体24の後ブレース26の上面縁26cが接合され、後ブレース26の途中部にはバルクヘッドブレース33の後側の縁部33bが接合されている。
【0041】
つまり、バルクヘッドブレース33にブレース本体24の上部の開口が接合されることでリヤシェルフ31の下側にブレース本体24の上部が接合される。そして、リヤシェルフアッパブレース32の縁部に後ブレース26の上面縁26cが接合されると共に、後ブレース26の途中部にバルクヘッドブレース33の縁部33bが接合されることで、リヤシェルフアッパブレース32の部位が、後ブレース26の上部とバルクヘッドブレース33とで閉断面状態にされる。即ち、リヤシェルフ31の閉断面形状がブレース本体24(ブレース)の上面開口の接合部で連続されている。
【0042】
ブレース本体24の上部が接合される両端部の間に位置するリヤシェルフ31は、図3、図9に示すように、車幅方向に延びるリヤシェルフパネル35の下側に車幅方向に延びるクロスメンバ部材としてのリヤシェルフエクステンション36の縁部が接合され、リヤシェルフパネル35と共に車幅方向に垂直な断面が閉断面となるリヤシェルフ閉断面部が形成されている。
【0043】
図9、図10に示すように、リヤシェルフパネル35の形状はリヤシェルフアッパブレース32の形状に車幅方向で連続し、リヤシェルフエクステンション36の形状は後ブレース26の上部とバルクヘッドブレース33とで形成される形状に連続している。これにより、リヤシェルフ31の閉断面形状が両端部まで連続して形成され、ブレース本体24の上部が連続した閉断面形状の部位に袋構造を保って接合される。
【0044】
つまり、リヤシェルフエクステンション36の端部とブレース本体24(ブレース)の上端部とが結合され、前述したブレース閉断面部とリヤシェルフ閉断面部とが連結されている。
【0045】
上記構成の車両後部の車体構造では、上下に延びてホイールハウス4との間で閉断面形状を形成するブレース本体24及びリンホース21がホイールハウス4のホイールハウスインナ5に接合され、ブレース本体24の上部の開口が車幅方向に延びるリヤシェルフ31に接合されている。このため、ホイールハウス4の補強をブレース本体24及びリンホース21とリヤシェルフ31で行うことができる。
【0046】
そして、ブレース本体24の断面形状が上面開口に向かい広くなっているので、即ち、ブレース本体24の上部が車幅方向内側へ湾曲しているので、リヤシェルフ31との接合面積が広く確保され、車体のねじり剛性を向上させることができる。また、ブレース本体24の下側の断面形状の面積を最小限に抑えて、ブレース本体24の上端部とリヤシェルフ31のリヤシェルフエクステンション36の端部の部分との結合部が滑らかとなって結合剛性を確保することができ、閉断面形状の連結剛性を充分に高めることができる。このため、車両後部の車室(荷室)内の容積を犠牲にすることなく、しかも、重量の増加が最小限に抑えて応力分布を抑制したブレースにより剛性を確保することができる。
【0047】
また、ブレース本体24の上面開口が接合される部位のリヤシェルフ31がリヤシェルフアッパブレース32とされ、リヤシェルフエクステンション36に連続するバルクヘッドブレース33を介してブレース本体24の上面開口がリヤシェルフアッパブレース32に接合されているので、リヤシェルフ31の閉断面形状を連続にしてブレース本体24を接合することができる。
【0048】
つまり、閉断面形成部材であるリヤシェルフエクステンション36でリヤシェルフ31に閉断面を形成し、リヤシェルフエクステンション36の端部のバルクヘッドブレース33とブレース本体24とを結合させることで、リヤシェルフ閉断面部とブレース閉断面部とを連結して形成させることが可能になる。閉断面形状の連結により、高次元で車体剛性を確保することができる。特に、車体の捩りに対する剛性確保に有効である。従って、部品点数を増やすことなくブレース本体24の袋構造の確保とリヤシェルフ31の閉断面形状の連続化を図ることができ、周辺構造のリヤシェルフ31による剛性確保を向上させることができる。
【0049】
また、バルクヘッドブレース33を介在させているので、ブレース閉断面部の強度を確保しつつ、リヤシェルフ閉断面部に連結させて、ブレース本体24(ブレース)をリヤシェルフ31に接合することができる。
【0050】
また、ブレース本体24の下部がリンホース21を介してホイールハウス4に接合されているので、サスペンション装置からの入力をリヤシェルフ31に分散することができ、重量増加を伴うことなく強度の確保が特に必要なスプリングハウス9の近傍の補強を実施することができる。また、ブレース本体24の下部がサイドメンバ1に接合されているので、ホイールハウスインナ5からの入力をリヤシェルフ31及びサイドメンバ1に分散することができる。
【0051】
また、ブレース本体24の上面開口よりも断面積が狭い部位の補強部位として、リンホース21とブレース本体24の上下方向の重なりを持たせることができ、補強の要求が高いホイールハウス4のスプリングハウス9の近傍のブレース本体24による補強状況を任意に設定することができる。
【0052】
尚、上下方向に分割されたブレース分割材を互いに接続してブレース本体を構成することで、ブレース分割材の板厚等を所望の値にすることができ、必要な箇所だけの補強を補って、確実に補強状況を任意に設定することができる。また、必要に応じてブレース分割材を重ね合わせて必要な部位の剛性を高めることも可能である。
【0053】
従って、上述した車体構造では、車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車体構造となる。
【0054】
尚、上述した車体構造における艤装順序は、接合の態様(スポット溶接、連続溶接)等により限定されるものではないが、例えば、リヤシェルフ31の端部の部位とブレース本体24がアッパ部材としてサブで組み立てられ、サイドメンバ1とスプリングハウス9及びリンホース21がアンダー部材としてサブで組み立てられる。
【0055】
第2実施形態例を説明する。
【0056】
図11には本発明の第2実施形態例に係る車両後部の車体構造を現す斜視状況、図12には図1の分解状況、図13には図11中の矢印XIII方向の状況、図14には図13中のXIV−XIV線矢視を示してある。尚、第2実施形態例はスプリングハウスの構成が異なる例であるため、第1実施形態例と同一部材及び同一機能部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0057】
ホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面の中央部には凹状の開口51が形成され、開口51にはスプリングハウス52(サスペンション支持部)が車室(荷室)側に突出した状態で接合されている。スプリングハウス52はスプリングハウス筒53と、スプリングハウス筒53の上部開口部に接合されるスプリングハウスブラケット54とで構成されている。スプリングハウスブラケット54にサスペンション装置(ショックアブソーバやばね部材)の上部が支持され、スプリングハウス筒53がホイールハウスインナ5の壁面に接合される。スプリングハウス筒53の下部にはスプリングハウスロア55が接合されている。
【0058】
また、フロアパネル3の車両外側部にはスプリングハウスロア55が嵌合する凹部12が形成され、凹部12に対応する位置でスプリングハウスロア55がサイドメンバロア2の縦壁に接合されることで、スプリングハウス52がサイドメンバ1に接合された状態になっている(図14参照)。
【0059】
一方、ホイールハウス4の開口51の部位にはハット型断面形状のリンホース57が配され、リンホース57の断面内側で開口51を覆うようにリンホース57の側縁部57aがホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面に接合されている。また、リンホース57の下縁部57bはスプリングハウスブラケット54の周縁に接合されている。
【0060】
リンホース57の上縁にはリンホース57の断面形状に連続するハット型断面形状のブレース本体58の下部が接合され、ブレース本体58の断面形状の面積は上部の開口に向かい広くなって、ブレース本体58(ブレース)の上部が車幅方向内側に湾曲した状態になっている。ブレース本体58は、車両の前後方向に二分割された前ブレース59と後ブレース60とで構成され、ハット型断面の底面となる面で前ブレース59の面縁と後ブレース60の面縁が互いに重ねられて接合された状態になっている。
【0061】
そして、前ブレース59の側部の縦縁と後ブレース60の側部の縦縁がホイールハウス4の膨出形状に沿った湾曲状に形成され、前ブレース59の縦縁に連続する側縁部と後ブレース60の縦縁に連続する側縁部がホイールハウス4のホイールハウスインナ5の壁面に接合され、ブレース本体58がホイールハウス4に接合された状態になっている。
【0062】
つまり、リンホース57とブレース本体58によりブレースが構成され、ブレースは上下に延びてホイールハウス4との間で閉断面形状が形成されてホイールハウス4に接合されている。また、ブレースの下端(リンホース21の下部)がスプリングハウス52に接合されている。このため、ブレースはスプリングハウス52を介してサイドメンバ1に接合された状態になっている。
【0063】
ブレース本体58は第1実施形態例のブレース本体24(図1、図2参照)と略同一の構成であり、第2実施形態例ではスプリングハウス52がホイールハウス4から膨出してホイールハウス4の上部にリンホース57と共に配されるので、ブレース本体58は上下方向の長さが短いものとされている。
【0064】
ブレース本体58は上部の開口に向かい面積が車両の前後方向及び左右方向に漸次広げられた状態になっている。ブレース本体58(リンホース57)は、ハット型断面形状及びホイールハウスインナ5の壁面及びスプリングハウスブラケット54で囲まれた袋構造とされている。
【0065】
そして、第1実施形態例と同様の構造により、ブレース本体58の上部開口がリヤシェルフ31のバルクヘッドブレース33に接合され、リヤシェルフ31の閉断面形状を連続にしてブレース本体24が接合される。
【0066】
第2実施形態例の車両後部の車体構造では、ホイールハウス4から膨出したスプリングハウス52を備えた構造であっても、第1実施形態例と同様に、ホイールハウス4の補強をブレース本体58及びリンホース57とリヤシェルフ31で行うことができる。また、重量の増加が最小限に抑えられると共に応力分布が抑制されたブレースにより剛性を確保することができる。
【0067】
従って、上述した車体構造では、スプリングハウスがホイールハウスから膨出した構造であっても、車体の重量増加の抑制と高次元での剛性確保を両立させることができる車体構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、リヤホイールハウスとリヤシェルフが備えられた車両後部の車体構造の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る車両後部の車体構造を現す斜視図である。
【図2】図1中の矢印II方向の詳細図である。
【図3】図1の分解図である。
【図4】図2中のIV−IV線断面図である。
【図5】図4中の矢印V部の詳細図である。
【図6】ブレースの取付き状態を表す斜視図である。
【図7】図6中の矢印VII方向から見た図である。
【図8】リヤシェルフの部位の車両前側からの詳細図。
【図9】図8中のIX−IX線断面図である。
【図10】図8中のX−X線断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態例に係る車両後部の車体構造を現す斜視図である。
【図12】図11の分解図である。
【図13】図11中の矢印XIII方向から見た図である。
【図14】図13中のXIV−XIV線矢視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 サイドメンバ
2 サイドメンバロア
3 フロアパネル
4 ホイールハウス
5 ホイールハウスインナ
6 クォータインナ(下方:ホイールハウスアウタ部)
7 リヤピラー(クォータインナの上方)
8、51 開口
9、52 スプリングハウス(サスペンション支持部)
10 スプリングハウスパネル
11、54 スプリングハウスブラケット
12 凹部
21、57 リンホース
24、58 ブレース本体
25、59 前ブレース
26、60 後ブレース
31 リヤシェルフ
32 リヤシェルフアッパブレース
33 バルクヘッドブレース
35 リヤシェルフパネル
36 リヤシェルフエクステンション
53 スプリングハウス筒
55 スプリングハウスロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後輪の車幅方向内側に設けられ、上部が車幅方向外側へ湾曲するリヤホイールハウスインナと、
前記リヤホイールハウスインナの車幅方向の内側面に接合され、前記内側面に沿って上下に延びると共に、前記リヤホイールハウスインナと共に水平断面が閉断面となるブレース閉断面部を形成するブレースと、
前記ブレースの上方で、車幅方向に延びて配されるリヤシェルフと
を備える車両後部の車体構造であって、
前記リヤシェルフの下面に接合され、前記リヤシェルフに沿って車幅方向に延びると共に、前記リヤシェルフと共に車幅方向に垂直な断面が閉断面となるリヤシェルフ閉断面部を形成するクロスメンバ部材と
を更に備え、
前記クロスメンバ部材の端部と前記ブレースの上端部とを結合させて、前記ブレース閉断面部と前記リヤシェルフ閉断面部とを連結するように構成されている
ことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両後部の車体構造において、
前記ブレース閉断面部は、その水平断面の面積が上方に向かって広くなっている
ことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の車両後部の車体構造において、
前記ブレースの上部が車幅方向内側へ湾曲している
ことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両後部の車体構造において、
前記ブレースの上端部にバルクヘッドが接合されている
ことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、
前記リヤホイールハウスインナの下部には、前記車両のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部が配され、前記ブレースの下部が前記サスペンション支持部に接合されていることを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、
車両の前後方向に延びるサイドメンバに前記ブレースの下端が接合されていることを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両後部の車体構造において、
前記ブレースには、前記ブレースの上端の前記ブレース閉断面部よりも断面積が狭い部位に補強部位を設けたことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項8】
請求項7に記載の車両後部の車体構造において、
前記補強部位は、前記ブレースの外側に被せられるリンホースであることを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項9】
請求項7に記載の車両後部の車体構造において、
前記補強部位は、上下方向に分割されたブレース分割材が互いに接続されて前記ブレースを構成することで形成されることを特徴とする車両後部の車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−162297(P2008−162297A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350608(P2006−350608)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】