説明

車両接近物検知装置

【課題】車載カメラの撮影画像に対して画像認識処理を行って車両に接近する物体を検出する技術において、従来よりも画像認識処理の処理負荷を低減する。
【解決手段】車両1の作動状態を示す車両信号が、後退中を示している場合、範囲Aを物体検出範囲として選択し、停止を示している場合、範囲Bを物体検出範囲として選択し、ウインカが作動している場合、ウインカの方向に応じて範囲BまたはCを物体検出範囲として選択し、選択した物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の周囲を撮影する車載カメラの撮影した撮影画像に対して画像認識処理を行うことで、車両に接近する物体を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001―239832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、画像認識処理の対象が車載カメラの撮影画像の全体となっているので、画像認識処理の処理負荷が高くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、車載カメラの撮影画像に対して画像認識処理を行って車両に接近する物体を検出する技術において、従来よりも画像認識処理の処理負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両(1)に搭載され、前記車両の周囲を撮影する車載カメラ(5)の撮影した撮影画像に画像認識処理を行うことで、接近する物体を検出する車両接近物検知装置であって、前記車両の作動状態を示す車両信号を取得する取得手段(110)と、前記撮影画像内で、前記取得手段が取得した車両信号の内容に応じた部分を、物体検出範囲として選択する選択手段(115、120、125、140、155、170)と、前記選択手段が選択した前記物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、前記車両に接近する物体の検出を試みる検出手段(130、145、160、175)と、を備えた車両接近物検知装置である。
【0007】
このように、車両の作動状態を示す車両信号に応じた部分内に限定して撮影画像の画像認識処理を行うことで、従来のように撮影画像全体に画像認識処理を行う場合に比べて、画像認識処理の処理負荷を低減することができる。しかも、車両の状態に合わせて適切な範囲を選択することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両接近物検知装置において、前記選択手段は、前記車両が後退していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像から、前記車両の後端の所定の近傍が撮影された範囲を除くと共に前記車両の後方の所定の遠方が撮影された範囲を除く範囲を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする。
【0009】
車両が後退する場合は、車両の後端よりも少し後方に離れた地点に道路があり、その道路を走行する他の車両との接触の危険性が比較的高いので、上記のようにすることで、車両の危険を適切に検知することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両接近物検知装置において、前記車両に対する周囲の道路の傾き角を検出する傾き検出手段(105)を備え、前記選択手段は、前記傾き検出手段が検出した傾き角に基づいて、前記道路に沿って伸びる範囲を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする。
【0011】
このように、車両に対する周囲の道路の傾き角を検出し、その傾き角に基づいて、当該道路に沿って伸びる範囲を、物体検出範囲に含めることで、車両の危険をより適切に検知することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近物検知装置において、前記選択手段は、前記車両が停止していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像のうち、前記車両の左側後方が写った部分を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする。
【0013】
車両が停止しているときは、乗員が後部座席から左側に降車する場合が多く、そのような場合には、車両の左後方の接近物が危険になる可能性が高い。したがって、上記のようにすることで、乗員の危険を適切に検知することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近物検知装置において、前記選択手段は、前記車両の左ウインカまたは右ウインカが作動していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像のうち、前記車両の後方かつ作動しているウインカの側が写った部分を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする。
【0015】
車両のウインカが作動しているときは、そのウインカの示す方向の後方から来る車両と接触する危険性が高くなる場合が多い。したがって、上記のようにすることで、車両の危険を適切に検知することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、車両(1)に搭載され、前記車両の周囲を撮影する車載カメラ(5)の撮影した撮影画像に画像認識処理を行うことで、接近する物体を検出する車両接近物検知装置であって、前記車両に対する周囲の道路の傾き角を検出する傾き検出手段(105)と、前記傾き検出手段が検出した傾き角に基づいて、前記撮影画像のうち、前記道路の傾きに沿って伸びる範囲を、前記物体検出範囲として選択する選択手段(125)と、前記選択手段が選択した前記物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、前記車両に接近する物体の検出を試みる検出手段(130)と、を備えた車両接近物検知装置である。
【0017】
このように、車両に対する周囲の道路の傾き角を検出し、その傾き角に基づいて、当該道路の傾きに沿って伸びる範囲を、物体検出範囲に含めることで、従来のように撮影画像全体に画像認識処理を行う場合に比べて、画像認識処理の処理負荷を低減することができる。しかも、車両周辺の道路上の物体を検知することができる。
【0018】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における車載システムの構成図である。
【図2】第1実施形態においてECUが実行する処理のフローチャートである。
【図3】車両1に対する範囲A、B、Cの位置を示す図である。
【図4】撮影画像中の点線21、22に囲まれた範囲Aを示す図である。
【図5】撮影画像中の点線31、32に囲まれた範囲Bおよび点線33、324囲まれた範囲Cを示す図である。
【図6】第2実施形態においてECUが実行する処理のフローチャートである。
【図7】車両1に対する道路の傾き角θを算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。この車載システムは、車両1に搭載され、車両1、ディスプレイ2、車両信号取得部3、電動スライドドア4、車載カメラ5、ECU6(車両接近物検知装置の一例に相当する)を備えている。
【0021】
ディスプレイ2は、ECU6の制御に従って画像を車両1の車室内の乗員に表示する装置であり、車載カメラ5の撮影画像等を表示するようになっている。車両信号取得部3は、車両1の作動状態を示す車両信号を取得してECU6に出力する装置である。車両信号取得部3が取得する車両信号としては、車両のシフトポジションを示すシフトポジション信号、車両1の車速を示す車速信号、車両の左右のウインカの作動の有無を示すウインカ信号等がある。電動スライドドア4は、車両1の後部座席乗員用の左側ドスライドドアであり、ECU6の制御に従って開閉する。
【0022】
車載カメラ5は、車両1の後部に取り付けられ、車両1の後方を撮影する広角カメラである。図1に示すように、この車載カメラ5の撮影範囲5aは、車両1の後方正面を中心とする180度の範囲である。車載カメラ5が撮影した撮影画像は、定期的(例えば1秒に60回)にフレーム単位でECU6に入力される。
【0023】
ECU6は、CPU、RAM、ROM等を備えたマイクロコントローラであり、CPUがROM中のプログラムを実行してRAMを作業領域として用いることで各種処理を実現する。
【0024】
以下、上記のような構成の車載システムの作動について説明する。図2に、車両の主電源(例えばIG)のオン時にECU6が実行する処理のフローチャートを示す。まずECU6は、ステップ110で、車両信号取得部3が取得した車両信号を車両信号取得部3から取得し、続いてステップ115で、取得した車両信号に対する判定を行う。そして、取得した車両信号が、シフトポジションがR(後退)であることを示すシフトポジション信号(車両1が後退していることを示す車両信号の一例に相当する)である場合は、ステップ125に進み、また、取得した車両信号が、車速がゼロ(または最低速度未満)であることを示す車速信号(車両が停止していることを示す車両信号の一例に相当する)である場合は、ステップ140に進む。
【0025】
また、取得した車両信号が、左ウインカまたは右ウインカが作動中であることを示すウインカ信号である場合は、ステップ120に進み、更にステップ120では、取得したウインカ信号に基づいて、右ウインカと左ウインカのどちらが作動しているかを判定し、左ウインカが作動している場合はステップ155に進み、右ウインカが作動している場合はステップ170に進む。
【0026】
車両1が後退している場合に実行されるステップ125では、車載カメラ5の撮影画像のうち、所定の一部の範囲A内の画像を、物体検出範囲として選択する。図3に、車両1に対する範囲Aの位置を示す。
【0027】
この図に示すように、範囲Aは、車両1の後端から所定距離だけ車両後方に離れ、所定幅で車両左右方向に左無限遠から右無限遠まで伸びる帯状の範囲である。この範囲を車載カメラ5の撮影画像中で表すと、図4に示す撮影画像20中の点線21と点線22で挟まれた範囲内となる。つまり、撮影画像中の範囲Aは、撮影画像から、車両1の後端の所定の近傍が撮影された範囲(図4における点線22より下の範囲)を除くと共に前記車両の後方の所定の遠方が撮影された範囲(図4における点線21より上の範囲)を除く範囲である。
【0028】
続いてステップ130では、ステップ125で選択した範囲A内に限定して、複数フレームの撮影画像を用いた画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。範囲A内の画像を用いて車両1に接近する物体を検出する方法としては、周知の方法を用いればよい。例えば、範囲Aを対象として動き検出を行うことで、車両1に近づく方向に移動する物体の有無を判定する。
【0029】
続いてステップ135では、ステップ130で車両1に接近する物体の検出を試みた結果に応じた制御を行う。例えば、ステップ130で車両1に接近する物体が検出されたときは、車両1の乗員に警告するため、車室内の音声出力装置(図示せず)に警告音を出力させてもよいし、ディスプレイ2に撮影画像を表示させ、さらにその撮影画像中の範囲Aで検出された車両1への接近物体を強調表示するようになっていてもよいし、あるいは、車両1のエンジン、ブレーキアクチュエータ等を介入制御することで、車両1の移動を制限するようになっていてもよい。
【0030】
車両1が後退する場合(特に、駐車マスから後退して出る場合)は、車両1の後端よりも少し後方に離れた地点に道路23(図4参照)があり、その道路を走行する他の車両との接触の危険性が比較的高いので、上記のようにすることで、車両1の危険を適切に検知することができる。
【0031】
また、ステップ130で車両1に接近する物体が検出されなかった場合は、上記の制御のうち、ディスプレイ2に撮影画像を表示させる制御のみ行い、他の制御は行わないようにする。ステップ135の後、処理はステップ110に戻る。
【0032】
車両1が停止している場合に実行されるステップ140では、車載カメラ5の撮影画像のうち、所定の一部の範囲B内の画像を、物体検出範囲として選択する。図3に、車両1に対する範囲Bの位置を示す。
【0033】
この図に示すように、範囲Bは、車両1の左側において、車両1の後端から車両後方に無限遠まで伸びる帯状の範囲である。この範囲を車載カメラ5の撮影画像中で表すと、図5に示す撮影画像30中の点線31と点線32で挟まれた範囲内となる。つまり、撮影画像中の範囲Bは、撮影画像のうち、車両1の左側後方が写った部分である。
【0034】
続いてステップ145では、ステップ140で選択した範囲B内に限定して、複数フレームの撮影画像を用いた画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。限定した範囲内で車両1に接近する物体を検出する方法はステップ130と同じである。
【0035】
続いてステップ150では、ステップ145で車両1に接近する物体の検出を試みた結果に応じた制御を行う。例えば、ステップ145で車両1に接近する物体が検出されたときは、車両1の乗員に警告するため、車室内の音声出力装置(図示せず)に警告音を出力させてもよいし、ディスプレイ2に撮影画像を表示させ、さらにその撮影画像中の範囲Bで検出された車両1への接近物体を強調表示するようになっていてもよいし、あるいは、電動スライドドア4が開かないように介入制御してもよい。
【0036】
車両1が停止しているときは、乗員が後部座席から左側に降車する場合が多く、そのような場合には、車両の左後方の接近物が危険になる可能性が高い。したがって、上記のようにすることで、乗員の危険を適切に検知することができる。
【0037】
また、ステップ145で車両1に接近する物体が検出されなかった場合は、上記の制御のうち、ディスプレイ2に撮影画像を表示させる制御のみ行い、他の制御は行わないようにする。ステップ150の後、処理はステップ110に戻る。
【0038】
左ウインカが作動している場合に実行されるステップ155では、ステップ140と同様、車載カメラ5の撮影画像のうち、所定の一部の範囲B内の画像を、物体検出範囲として選択する。
【0039】
続いてステップ160では、ステップ155で選択した範囲B内に限定して、複数フレームの撮影画像を用いた画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。限定した範囲内で車両1に接近する物体を検出する方法はステップ130と同じである。
【0040】
続いてステップ165では、ステップ160で車両1に接近する物体の検出を試みた結果に応じた制御を行う。例えば、ステップ160で車両1に接近する物体が検出されたときは、車両1の乗員に警告するため、車室内の音声出力装置(図示せず)に警告音を出力させてもよいし、ディスプレイ2に撮影画像を表示させ、さらにその撮影画像中の範囲Bで検出された車両1への接近物体を強調表示するようになっていてもよい。
【0041】
車両のウインカが作動しているときは、そのウインカの示す方向の後方から来る車両と接触する危険性が高くなる場合が多い。したがって、上記のようにすることで、車両の危険を適切に検知することができる。
【0042】
また、ステップ160で車両1に接近する物体が検出されなかった場合は、上記の制御のうち、ディスプレイ2に撮影画像を表示させる制御のみ行い、他の制御は行わないようにする。ステップ165の後、処理はステップ110に戻る。
【0043】
右ウインカが作動している場合に実行されるステップ170では、車載カメラ5の撮影画像のうち、所定の一部の範囲C内の画像を、物体検出範囲として選択する。図3に、車両1に対する範囲Cの位置を示す。
【0044】
この図に示すように、範囲Cは、車両1の右側において、車両1の後端から車両後方に無限遠まで伸びる帯状の範囲である。この範囲を車載カメラ5の撮影画像中で表すと、図5に示す撮影画像30中の点線33と点線34で挟まれた範囲内となる。つまり、撮影画像中の範囲Cは、撮影画像のうち、車両1の右側後方が写った部分である。
【0045】
続いてステップ175では、ステップ170で選択した範囲C内に限定して、複数フレームの撮影画像を用いた画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。限定した範囲内で車両1に接近する物体を検出する方法はステップ130と同じである。
【0046】
続いてステップ180では、ステップ175で車両1に接近する物体の検出を試みた結果に応じた制御を行う。例えば、ステップ175で車両1に接近する物体が検出されたときは、車両1の乗員に警告するため、車室内の音声出力装置(図示せず)に警告音を出力させてもよいし、ディスプレイ2に撮影画像を表示させ、さらにその撮影画像中の範囲Bで検出された車両1への接近物体を強調表示するようになっていてもよい。
【0047】
また、ステップ175で車両1に接近する物体が検出されなかった場合は、上記の制御のうち、ディスプレイ2に撮影画像を表示させる制御のみ行い、他の制御は行わないようにする。ステップ180の後、処理はステップ110に戻る。
【0048】
以上のように、本実施形態のECU6は、車載カメラ5の撮影画像内で、車両信号取得部3を介して取得した車両信号の内容に応じた部分を、物体検出範囲として選択し、選択した物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、車両1に接近する物体の検出を試みる。
【0049】
このように、車両の作動状態を示す車両信号に応じた部分内に限定して撮影画像の画像認識処理を行うことで、従来のように撮影画像全体に画像認識処理を行う場合に比べて、画像認識処理の処理負荷を低減することができる。しかも、車両の状態に合わせて適切な範囲を選択することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、ECU6が、図2の処理に変えて図6の処理を実行する点であり、他の部分は、第1実施形態と同じである。なお、図2と図6のフローチャートにおいては、同じ処理を行うステップには同一のステップ番号を付している。
【0051】
図6の処理が図2の処理と異なる点は、ステップ110の前に、ステップ105で、車両1の左右方向に対する周囲(具体的には車両後方)の道路の傾き角θを検出する処理を行う点と、ステップ125の前に、ステップ123で、検出した傾き角θに基づいて物体検出範囲A’を選択する点、および、ステップ125では、当該物体検出範囲A’を画像認識処理の対象として選択する点である。
【0052】
まず、ステップ105における傾き角θの算出方法について説明する。図7に示すように、区切り線51〜54で区切られた駐車マスの左右方向47に対して、道路の進行方向48が角度θだけ傾いている場合に、この駐車マスに沿って車両1を停車させると、車両1の左右方向に対して車両後方の道路が角度θだけ傾くことになる。
【0053】
このような場合において、ステップ105では、車載カメラ5の撮影画像を用いて道路の向きを特定する。撮影画像から道路の向きを特定する方法としては、撮影画像に対して歪み補正、二値化、ハフ変換を用いた周知の白線検出(あるいは道路境界線検出、道路の轍検出)を用いて、道路上の白線41〜46(あるいは道路境界線、道路の轍)の伸びる方向を特定し、特定した方向を道路の向きとして決定する。そして、そのように検出した道路の向きの、自車両1の左右方向に対する角度θを算出する。
【0054】
次に、取得した車両信号がシフトポジションがR(後退)であることを示すシフトポジション信号であるとステップ115で判定された場合に実行されるステップ123について説明する。ステップ123では、ステップ105で算出した傾きθに基づいて物体検出範囲A’を選択する。
【0055】
具体的には、図7に示すように、当該道路の方向に沿って平行に、無限遠から車載カメラ5の撮影可能範囲の端まで伸びる帯状の範囲61と、当該範囲61の端部から当該撮影可能範囲の端部に沿って車両右方向に無限遠まで伸びる帯状の範囲62と、の和を、物体検出範囲A’とする。
【0056】
続くステップ130では、選択した物体検出範囲A’に限定して車両1への接近物体の検出を試み、ステップ135では、その検出結果に応じて既に説明した通りの制御を行う。
【0057】
このように、車両1に対する周囲の道路の傾き角を検出し、その傾き角に基づいて、当該道路に沿って伸びる範囲を、物体検出範囲に含めることで、車両の危険をより適切に検知することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態では、ECU6が、ステップ110を実行することで取得手段の一例として機能し、ステップ115、120、125、140、155、170を実行することで選択手段の一例として機能し、ステップ130、145、160、175を実行することで検出手段の一例として機能し、ステップ105を実行することで傾き検出手段の一例として機能する。
【0059】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0060】
例えば、車載カメラ5は、車両の後方を撮影するに限らず、車両の前方を撮影するようになっていてもよいし、車両の全周囲を撮影するようになっていてもよい。その場合も、車両の作動状態を示す車両信号に応じた部分内に限定して撮影画像の画像認識処理を行うことで、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 ディスプレイ
3 車両信号取得部
4 電動スライドドア
5 車載カメラ
6 ECU
20、30 撮影画像
23 道路
35 道路側端
36、41〜46 白線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載され、前記車両の周囲を撮影する車載カメラ(5)の撮影した撮影画像に画像認識処理を行うことで、接近する物体を検出する車両接近物検知装置であって、
前記車両の作動状態を示す車両信号を取得する取得手段(110)と、
前記撮影画像内で、前記取得手段が取得した車両信号の内容に応じた部分を、物体検出範囲として選択する選択手段(115、120、125、140、155、170)と、
前記選択手段が選択した前記物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、前記車両に接近する物体の検出を試みる検出手段(130、145、160、175)と、を備えた車両接近物検知装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記車両が後退していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像から、前記車両の後端の所定の近傍が撮影された範囲を除くと共に前記車両の後方の所定の遠方が撮影された範囲を除く範囲を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする請求項1に記載の車両接近物検知装置。
【請求項3】
前記車両に対する周囲の道路の傾き角を検出する傾き検出手段(105)を備え、
前記選択手段は、前記傾き検出手段が検出した傾き角に基づいて、前記道路に沿って伸びる範囲を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする請求項2に記載の車両接近物検知装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記車両が停止していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像のうち、前記車両の左側後方が写った部分を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両接近物検知装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記車両の左ウインカまたは右ウインカが作動していることを示す車両信号を前記取得手段が取得したことに基づいて、前記車両の後方が撮影された前記撮影画像のうち、前記車両の後方かつ作動しているウインカの側が写った部分を、前記物体検出範囲に含めることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両接近物検知装置。
【請求項6】
車両(1)に搭載され、前記車両の周囲を撮影する車載カメラ(5)の撮影した撮影画像に画像認識処理を行うことで、接近する物体を検出する車両接近物検知装置であって、
前記車両に対する周囲の道路の傾き角を検出する傾き検出手段(105)と、
前記傾き検出手段が検出した傾き角に基づいて、前記撮影画像のうち、前記道路の傾きに沿って伸びる範囲を、前記物体検出範囲として選択する選択手段(125)と、
前記選択手段が選択した前記物体検出範囲内に限定して画像認識処理を行うことで、前記車両に接近する物体の検出を試みる検出手段(130)と、を備えた車両接近物検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−17024(P2013−17024A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148272(P2011−148272)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】