説明

車両用のガラスアンテナ

【課題】防曇用加熱線条の余白部にAM放送波用アンテナとFM放送波アンテナを別々に設け、FM放送波を高受信利得、かつ無指向特性を得る。
【解決手段】間隔を隔てた複数本の水平線条に、少なくとも2本の垂直線条を離隔して直交させ、最上部の水平線条より引出線を介して設けた位置をAM用給電点とするAM放送波用アンテナと、AM用給電点の左右両側に設けた2つのFM用給電点よりAM放送波用アンテナの最外周部の一部に沿って互いに時計回り及び反時計回りの逆方向に延ばし、前記AM放送波用アンテナを左右一対のFM放送波用アンテナによって挟んで囲み、一方のFM放送波用アンテナが前記AM放送波用アンテナの複数本の水平線条の片端側部のすべての端部を囲み、他方のFM放送波用アンテナの複数の水平線条の他端側の端部の一部だけを取り囲んで、前記AM放送波用アンテナの水平線条とFM放送波用アンテナの水平線条を近接かつ容量結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両の後部窓ガラスに設けたAMラジオ放送波受信用アンテナとFMラジオ放送波受信用アンテナを夫々別々のアンテナとしたガラスアンテナに関し、特に国内外のFMラジオ放送波の電波を受信するのに好適なガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、AMラジオ放送波とFMラジオ放送波の受信用のガラスアンテナについては、良好な受信利得を得る為に比較的大きな面積を必要とし、自動車の後部窓ガラスに設けることが多く、また、自動車の後部窓ガラスにはその中央部領域に雨天走行時の後方視界を確保するための防曇用加熱線条が設けられていることが多い。このため、ガラスアンテナを後部窓ガラスに設ける場合には前記防曇用加熱線条の上部余白部や下部余白部に設けざるを得なかった。
【0003】
さらに、AMラジオ放送波とFMラジオ放送波の電波の受信については防曇用加熱線条の上部余白部に設けた1つのアンテナで両方の電波を受信し、これらAMラジオ帯/FMラジオ帯の電波を受信するアンテナとして、1つの給電点を共有とした接地型のアンテナパターンとするケースが殆どであった。
【0004】
このような、AMラジオ放送波の電波とFMラジオ放送波の電波を1つのガラスアンテナで受信する場合には、通常、アンテナ給電点とチューナー間にアンテナアンプを設け、チューナーに入力するには不十分だった起電力を増幅させて、チューナーに入力させるケースが一般的に良く行われていた。
【0005】
また、アンテナ給電点とチューナー間のフィーダー線による受信利得の低減ロスを最小限に抑えるためにインピーダンスマッチング回路を設け、チューナーに入力するのに十分となる起電力を維持してチューナーに入力させる工夫も行われていた。
【0006】
尚、AM放送波とFM放送波のアンテナを共有した場合には、前記アンプについては、AM放送波用アンプとFM放送波用アンプを別々に設け、受信電力を増幅したのち、チューナーに入力させるケースが多い。あるいは、前記インピーダンスマッチング回路についても、AM放送波用インピーダンスマッチング回路とFM放送波用インピーダンスマッチング回路によってアンテナで受信した電波をチューナーに伝送する経路で受信感度のロスによる低減を抑えるようにするケースが多い。
【0007】
車両の後部窓ガラスの上部余白部にガラスアンテナを設け、アンプによって増幅するようにしたものとして、例えば、実願昭63−89982号(実開平2−13311号)のマイクロフイルムには、自動車窓ガラス板の所定の位置にアンテナ導体が設けられたガラスアンテナと、上記ガラスアンテナの受信感度を増幅させる為のアンプとを有し、該アンプは上記ガラスアンテナの給電端子部分にハンダ付け、ロウ付け、または導電性接着剤付け等の手段により直接接続されてなり、これによりガラスアンテナとアンプとの間の給電線部分での容量損失によるゲイン損失を低減させた自動車用ガラスアンテナのアンプ取付け構造が記載されている(特許文献1)。
【0008】
さらに、特開平11−205023号公報には、第1のコイル、第2のコイル、車両の窓ガラス板に設けられた第1のアンテナ導体及び該窓ガラス板に設けられた第2のアンテナ導体を備え、第1のアンテナ導体のインピーダンスと第1のコイルのインダクタンスとを共振要素として含む第1の共振を生じさせており、第2のアンテナ導体のインピーダンス第2のコイルのインダクタンスとを共振要素として含む第2の共振を生じさせており、第2のアンテナ導体は第1の受信周波数帯用としての導体長及び導体形状を有し、第1のアンテナ導体は第1の受信周波数帯より高周波数の第2の受信周波数帯用としての導体長及び導体形状を有し、第1の共振の共振周波数及び第2の共振の共振周波数は、それぞれ第1の受信周波数帯の感度が向上するような周波数であり、第1のアンテナ導体と第2のアンテナ導体とが電気的に接続されていることを特徴とする車両用ガラスアンテナ装置について記載されている(特許文献2)。
【特許文献1】実願昭63−89982号(実開平2−13311号)のマイクロフイルム
【特許文献2】特開平11−205023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1には、自動車の後部窓ガラスの余白部にAM放送波受信用とFM放送波受信用のアンテナを一系統としたアンテナが設けられ、該アンテナの給電端子にガラスアンテナの受信感度を増幅させる為のアンプが取付けられた構造が記載されている。
【0010】
しかしながら、このようなAM用アンテナとFM用アンテナを同一のアンテナとする場合には、AM帯とFM帯の両方の周波数帯を満足するようにチューニングを行わなければならないため、チューニング作業が複雑となり作業工数が掛かるといった問題点や、AMラジオ放送波帯域とFMラジオ放送波帯域の両帯域を1つのアンテナで受信するため、FMラジオ放送波を受信するときに高い受信感度が得られないといった問題点があった。
【0011】
一方、前記特許文献2には、自動車の後部窓ガラスのデフォッガの上部に高域用の第1のアンテナ、低域用の第2のアンテナの2つの放送波帯用のアンテナを設け、2つのアンテナを容量結合させ、それぞれのアンテナによって別々の共振を利用して2つの周波数帯の感度を向上させるようにしたものであり、AMラジオ帯とFMラジオ帯の両周波数帯を別々にチューニングを行うことができるため、チューニング作業は簡略化できるが、本発明のガラスアンテナを量産するときには、各回路の素子のばらつきによって必ずしも満足のいく受信特性が得られるものではないといった問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち、自動車の後部窓ガラスの防曇用加熱線条の余白部に設けるAM放送波とFM放送波を受信するアンテナにおいて、特にFMラジオ放送波の受信利得を高利得、かつ指向特性の優れたアンテナを提供するものである。
【0013】
すなわち、本発明は、車両の後部窓ガラスの防曇用加熱線条の上部余白部に設けるアンテナであって、間隔を隔てて設けた複数本の水平線条と、該水平線条と直交する垂直線条を少なくとも2本離隔して設け、該垂直線条間で、かつ最上部の水平線条上、あるいは該最上部の水平線条の該部より引出線を介して設けた位置をAM用給電点とするAM放送波受信用のアンテナと、前記AM放送波受信用アンテナの最上部の水平線条より上部位置、かつAM用給電点の左右両側に設けた2つのFM用給電点よりAM放送波受信用アンテナの最外周部の一部に沿ってそれぞれFM放送波受信用アンテナを互いに逆方向となるように時計回り及び反時計回りの方向に設けて延ばし、前記AM放送波受信用アンテナを左右一対のFM放送波受信用アンテナによって挟んで囲むとともに、前記AM放送波受信用のアンテナの最上部と最下部の水平線条に近接かつ容量結合するようにしたことを特徴とする車両用のガラスアンテナである。
【0014】
あるいは、本発明は、前記2つのFM用給電点のそれぞれより互いに逆方向かつ水平方向に延ばしたFM放送波受信用アンテナの第2の水平線条が、前記AM放送波受信用のアンテナの水平線条と近接かつ容量結合し、さらにその先端より前記AM放送波受信用アンテナの複数本の水平線条の外側に沿って略垂直方向又は円弧状に延ばした少なくとも1本の垂直線条を少なくとも有するコ字状のエレメントとしたことを特徴とする上述の車両用のガラスアンテナである。
【0015】
あるいはまた、本発明は、前記2つのFM放送用給電点の各端子の中心間の距離を100mm以上400mm以下とすることを特徴とする上述のいずれかの車両用のガラスアンテナである。
【0016】
あるいはまた、本発明は、前記AM用給電点と、FM放送用給電点間の中心間の距離を50mm以上350mm以下の位置に設けたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0017】
あるいはまた、本発明は、前記FM放送波受信用アンテナの先端部を折返した折返水平線条を1本又は複数本とし、AM放送波受信用の水平線条の先端部に近接かつ容量結合させることを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0018】
あるいはまた、本発明は、前記FM放送波受信用アンテナは、ループ形状を有することを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0019】
あるいはまた、本発明は、前記FM放送波受信用アンテナのループ形状が、AM放送波受信用アンテナの上部位置、又は下部位置、あるいはその両方に存在することを特徴とする上述に記載の車両用のガラスアンテナである。
【0020】
あるいはまた、本発明は、前記2系統のFM放送波受信用アンテナをダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信させることを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0021】
あるいはまた、本発明は、前記AM放送波受信用アンテナの水平線条を、前記防曇用加熱線条の水平線条に近接させて容量結合するようにしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0022】
あるいはまた、本発明は、前記防曇用加熱線条のバスバーの上端部より上方に延ばした補助垂直線条が、前記FM放送波受信用アンテナの第2の垂直線条の外側に沿って近接し、容量結合するようにしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0023】
あるいはまた、本発明は、前記防曇加熱線条の最下部の加熱線条の略中央部より分岐し、左右のいずれか一方向、または両方向の水平方向に延ばした水平補助線条を少なくとも有することを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0024】
あるいはまた、本発明は、前記水平補助線条の最下部の水平補助線条を、ボディフランジの開口部に近接させ、容量結合するようにしたことを特徴とする前述の車両用のガラスアンテナである。
【0025】
あるいはまた、本発明は、前記FM用給電点から延ばしたFM放送波受信用アンテナの先端までの総線条長さを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向け、及び88〜108MHz帯の日本国外向けのいずれもアンテナ長を800〜2,500mmとし、
該FM放送波受信用のアンテナの第2の水平線条と、前記AM放送波受信用のアンテナの最上部の水平線条とが互いに近接し、容量結合する部分の各水平線条の合計長さ、および該部分の線条の間隔のそれぞれを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向けと88〜108MHz帯の日本国外向けのFM放送波受信用アンテナ共に800〜2500mm、2〜30mmとしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0026】
あるいはまた、本発明は、前記防曇用加熱線条の複数本の水平線条を横切るように設けた垂直線条を少なくとも1本設けたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【発明の効果】
【0027】
車両の後部窓ガラスの防曇用加熱線条(デフォッガ)の上部余白部に設けたAM放送波受信用アンテナと、その両側に設けた左右一対のFM放送波受信用のアンテナとを別々に設けたので、各アンテナのチューニングに要する工数、時間を大幅に短縮できた。
【0028】
また、AM放送波受信用アンテナをその両側に設けた左右一対のFM放送波受信用のアンテナによって囲むように設け、FM放送波受信用のアンテナの第2の水平線条を、AM放送波受信用アンテナの最上部の水平線条に近接して容量結合させ、さらに折返水平線条を該AM放送波受信用アンテナの最下部の水平線条または最下部寄りの水平線条の一部に近接して容量結合させたことによって、FM放送波受信用アンテナの受信感度を大幅に向上させた。
【0029】
また、防曇用加熱線条(デフォッガ)の最上部の水平線条と、AM放送波受信用のアンテナの最下部の水平線条とを近接させ、容量結合させたので、防曇用加熱線条(デフォッガ)が受信したAM放送波をピックアップすることができ、AM放送波受信用のアンテナ4だけで受信する場合に比べてより受信特性を向上させることができる。
【0030】
さらに、FM放送波受信用のメインアンテナ5やサブアンテナ5’の最下部に位置する折返線条部5c、5c’を、防曇用加熱線条(デフォッガ)の最上部の水平線条に近接させ容量結合させたので、防曇用加熱線条(デフォッガ)が受信したFM放送波をピックアップすることができ、FM放送波受信用のメインアンテナ5やサブアンテナ5’を単独で受信する場合に比べてより受信特性を向上させることができる。
【0031】
このようにAM放送波受信用アンテナ4とFM放送波受信用アンテナ5、5’の2つのアンテナに分けたことによって、AM放送波受信用アンテナとFM放送波受信用のアンテナのそれぞれに対して独立してチューニングすれば効率よく、チューニング作業が容易となり、少ない作業工数でチューニングができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、AM放送波受信アンテナ4と、FM放送波受信アンテナ5の2つのアンテナを車両用後部窓ガラス1の防曇用加熱線条2の上部余白部に、それぞれ近接した位置に全く別系統で設けたアンテナである。前記防曇用加熱線条2(通称デフォッガという)は、車両用後部窓ガラス1の中央領域に、略水平な加熱線条2aを複数本平行に配設し、それらの両端を導電性のバスバー3、3’で接続して、通電加熱により窓ガラス表面の水分を蒸発させることにより、曇りを除去する機能を持たせるようにしたものである。
【0033】
図1〜図4に示したように、前記AM放送波受信用のアンテナ4は、間隔を隔てて設けた複数本の水平線条と、該水平線条と直交し、少なくとも2本離隔して設けた垂直線条とからなり、該少なくとも2本の垂直線条間で、かつ最上部の水平線条上に、あるいは該最上部の水平線条の該部より引出線を介して設けた位置をAM用給電点7としたものである。
【0034】
前記AM放送波受信用アンテナ4の少なくとも2本の垂直線条は、最上部位置の水平線条を起点として、少なくとも1本の垂直線条がすべての水平線条と直交するように延ばし、他の垂直線条については前記水平線条の全て、または一部と直交させて接続する。
【0035】
また、前記複数本の水平線条4a、4a、・・と交差し接続する前記垂直線条4b、4bは、前記複数本の水平線条4a、4a、・・を略3等分する位置の近傍としたが、前記複数本の水平線条4a、4a、・・が同一長さではなく、左右にずれているケースや、左右の一方の長さが若干短い場合もあり、必ずしも左右対称でなくとも良い。
【0036】
尚、略三等分する位置近傍とは、水平線条4a、4a、・・の最大幅を略三等分した位置近傍とするが、これに限らず、左右方向に垂直線条4b、4bをさらに離隔させて、略4等分位置の最左右両側の位置程度まで移動させた位置としても良い。
【0037】
前記AM放送波受信用アンテナ4の最下線の水平線条4a、または一方の垂直線条の下端に接続した水平線条4a’を、前記防曇用加熱線条2の最上部の水平線条2aに近接させて容量結合するようにすると、デフォッガ2に載ったAMラジオ放送波用の電波をピックアップすることができるため望ましい。
【0038】
また、FM放送波受信用のアンテナ5、5’は、前記AM放送波用アンテナ4の最上部の水平線条4aより上部位置、かつAM用給電点7の左右両側に設けた2つのFM用給電点8、8’より前記AM放送波受信用アンテナ4の最外周部の一部に沿って、一対のFM放送波受信用アンテナ5、5’を互いに逆方向となるように時計回り又は反時計回りの方向に延ばし、前記AM放送波受信用アンテナ4を左右一対のFM放送波受信用アンテナ5、5’によって挟んで囲むとともに、前記AM放送波受信用のアンテナ4の水平線条4aの少なくとも一部に近接かつ容量結合するようにしたものである。
【0039】
前記FM放送波受信用アンテナ5、5’のFM用給電点8、8’より延ばした第2の水平線条5a、5a’が、前記AM放送波受信用のアンテナ4の最上部の水平線条4aに近接かつ容量結合し、さらに第2の水平線条5aの先端より前記AM放送波受信用のアンテナ4の複数本の水平線条4a、4a、・・の外側の概略輪郭形状に沿って略垂直方向又は円弧状に延ばした第2の垂直線条5bを設け、該第2の垂直線条5bの先端よりコ字状に折り返した折返水平線条5c、5c’を、AM放送波受信用のアンテナ4の最下部の水平線条4aの下部に近接させるのが良いが、最上部の加熱線条と最下部の加熱線条の途中部にある水平線条4a、4a、・・に沿って近接させ、容量結合させるようにしても良い。
【0040】
また、前記第2の水平線条5aを2本設けるようにしても良く、さらには該2本の第2の水平線条5a、5aの両先端部を連結して閉ループ形状とすることもできる。
【0041】
前記2つのFM放送用給電点8、8’の各端子の中心間の距離を100mm以上400mm以下とするのが好ましく、また、前記AM用給電点7と、FM放送用給電点8、8’間の中心間の距離を50mm以上350mm以下の位置に設けると好都合である。
【0042】
すなわち、前記AM用給電点7と、一方のFM放送用給電点8間の中心間の距離を例えば50mmとすれば、前記AM用給電点7と、他方のFM放送用給電点8’間の中心間の距離を50以上350mm以下とするのが良い。
【0043】
これは、端子自体に幅があるので、2つの給電点を余り接近させすぎる場合に、互いに悪影響をあたえることになり、一方離しすぎると配線上不都合である。
【0044】
前記FM放送波受信用アンテナ5の先端部を折り返した折返水平線条5cは、1本又は2本とし、該折返した1本又は2本の折返水平線条5cの一部分をAM放送波受信用アンテナ4の水平線条4a、4a、・・の先端の一部に近接させて容量結合させる。また、図2、図3に示したように、2本の折返線条の両先端を連結した閉ループ形状とすることもできる。
【0045】
図1〜図4に示したように、前記FM放送波受信用アンテナ5、5’のそれぞれに閉ループ形状の線条を有し、AM放送波受信用アンテナ4の上部位置、又は下部位置に設けるようにしたが、図2、図3に示したようにAM放送波受信用アンテナ4の上部位置、及び下部位置の両方に閉ループ形状部を有するようにしても良い。
【0046】
この折返水平線条5cを2本とする場合には、AM放送波受信用アンテナ4の最下線の水平線条4a、またはその近傍に位置する水平線条4a、4a、・・のいずれかの水平線条4aの先端の一部を挟むようにするとAM放送波受信用アンテナ4に載った電波を該近接部から効率良くピックアップできるので好ましい。
【0047】
前記防曇用加熱線条2のバスバー3、3’の上端部より上方に延ばした補助垂直線条2c、2c’が、前記FM放送波受信用アンテナ5の少なくとも第2の垂直線条5bの外側に沿って近接し、容量結合するようにするのが望ましい。これは、防曇用加熱線条2に載ったFMラジオ放送波用の電波を補助垂直線条2c、2c’を介してピックアップすることができるためである。
【0048】
前記AM放送波受信用のアンテナ4のAM用給電点7を挟み、その両側に設けた2つのFM用給電点8、8’のそれぞれよりAM放送波受信用アンテナ4の最外周部に、時計回りと反時計回りに延ばし、別々に2系統設けたFM放送波受信用アンテナ5、5’については、ダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信させるようにした。
【0049】
前記FM用給電点8,8’から延ばしたFM放送波受信用アンテナ5,5’の先端までの線条長さを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向け、及び88〜108MHz帯の日本国外向けのいずれもアンテナ長を800〜2500mmとした。
【0050】
また、該FM放送波受信用のアンテナの第2の水平線条5a、5a’と前記AM放送波受信用のアンテナの最上部の水平線条、および最下部の折返水平線条5c、5c’と、前記AM放送波受信用のアンテナの最下部の水平線条とが互いに近接し、容量結合する部分の各水平線条の合計長さ、および該部分の線条の間隔のそれぞれを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向けと88〜108MHz帯の日本国外向けのFM放送波受信用アンテナ共に800〜2500mm、2〜30mmとしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナである。
【0051】
前記FM放送波受信用のアンテナ5,5’を、いずれか片方だけとしても十分満足できる受信特性を有するが、一方をメインアンテナ、他方をサブアンテナとして、ダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信させ、チューナー図示しないに入力すると、FM放送波受信用のアンテナ5、5’のいずれか片方だけで単独で受信しチューナー(図示しない)に入力する場合に比べて指向特性が改善されるので好ましい。
【0052】
尚、前記防曇用加熱線条2は、後部窓ガラス1の中央領域に設け、略水平な加熱線条2aを複数本略水平に配設し、それらの両端を導電性のバスバー3、3’で接続し、図示しない直流電源によって通電加熱するものである。
【0053】
また、前記防曇用加熱線条2の複数本の略水平線条2aのそれぞれを略3等分した点を結んだ垂直線条2bは通電されない電位の中立な線条であって防曇用の加熱線条ではなく、防曇用加熱線条2全体をアンテナとしても機能させ、防曇用加熱線条2が受信した電波を利用してAM/FM放送波の電波の受信利得を向上させるのに有効であるが、必ずしもなくても良い。
【0054】
さらに、前記防曇加熱線条2の最下部の加熱線条の略中央部より分岐する水平補助線条2d、2d’を、左右のいずれか一方向に1箇所、または両方向に2箇所延ばして、水平補助線条2d、2d’を設けたことによって、各アンテナの指向特性を改善することができる。この水平補助線条2d、2d’はそれぞれ上下2本設け、上側の水平補助線条2d、2d’によってインピーダンスを調整し、下方側の水平補助線条2d、2d’によって、金属ボディの後部窓用のフランジ枠9に近接させて、ボディに載ったAMラジオ放送波用の電波や、FMラジオ放送波用の電波をピックアップすることができるため望ましい。
【0055】
図4に示されるような、前記防曇用加熱線条2の2つのバスバー3、3’の上端部より上方に延ばした補助垂直線条2c、2c’については、必ずしも必要な垂直線条ではないが、補助垂直線条2c、2c’を、前記FM放送波受信用アンテナ5、5’の第2の垂直線条5b、5b’の外側、及び第2の水平線条5a、5a’の上部側に沿って近接し、容量結合させることによって、防曇用加熱線条2に載ったFMラジオ放送波用の電波を補助垂直線条2c、2c’を介してFM放送波受信用アンテナ5、5’がピックアップすることができ、周波数特性の広帯域化、受信感度の向上に有効に作用する。
【0056】
尚、本発明のFM放送波受信用のアンテナ5、5’は、該FM放送波受信用アンテナ5、5’のFM用給電点とチューナー間にアンプやインピーダンスマッチング回路を接続しなくても良好な受信感度が得られるが、アンプやインピーダンスマッチング回路を接続させれば、さらに一層の受信感度の向上が得られるのは言うまでもない。
【0057】
続いて、本発明の作用について説明する。
【0058】
本発明において、AM放送波受信用のアンテナ4とFM放送波受信用のアンテナ5とは別々の独立したアンテナとして設けたので、それぞれの受信周波数に適した線条長さにチューニングすることができ、チューニング作業も容易である。
【0059】
前記AM放送波受信用アンテナの最上部の水平線条より上部位置、かつAM用給電点の左右両側に設けた2つのFM用給電点よりAM放送波受信用アンテナの最外周部の一部に沿ってそれぞれFM放送波受信用アンテナを互いに逆方向となるように時計回り及び反時計回りの方向に設けて延ばし、前記AM放送波受信用アンテナを左右一対のFM放送波受信用アンテナによって挟んで囲むとともに、前記AM放送波受信用のアンテナの水平線条の少なくとも一部に近接かつ容量結合するようにした。
【0060】
一方、AM放送波受信用アンテナ4を左右一対のFM放送波受信用アンテナ5、5’によって挟んでと囲むとともに、前記AM放送波受信用アンテナ4の最上部側の水平線条4aに前記FM放送波受信用アンテナ5、5’のそれぞれの第2の水平線条5a、5a’を近接かつ容量結合させるとともに、前記AM放送波受信用アンテナ4の最下部側の水平線条4aに折返水平線条5c、5c’を近接かつ容量結合させることによって、より確実な容量結合となりAM放送波用のアンテナ4が受信したFM放送波帯の電波をFM放送波用のアンテナ5、5’によってピックアップでき、これによってFM放送波受信用アンテナ5、5’の受信感度を向上させ、安定した性能が得られる。
【0061】
図4に示すように、前記加熱用導電線条2のバスバー3、3’の上端部より上方に延ばした補助垂直線条2c、2c’を、前記FM放送波受信用アンテナ5の少なくとも第2の垂直線条5b、5b’の外側に沿って近接し、容量結合するようにしたのは、防曇用加熱線条2に載ったFMラジオ放送波用の電波を補助垂直線条2c、2c’を介してピックアップし、受信利得の向上を図ることができるためである。
【0062】
尚、前記FM放送波受信用の2つのアンテナは、便宜上、一方をメインアンテナ5、他方をサブアンテナ5’としたが、いずれをメインアンテナとしても良い。
【0063】
前記FM放送波受信用のサブアンテナ5’を防曇用加熱線条2の上部余白部に配置すると、FM放送波受信用のメインアンテナ5とほぼ同レベルのアンテナ感度を得ることができ、このメインアンテナ5とサブアンテナ5’をダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信することによって、受信特性、および指向特性の低い部分を互いに補完することができる。
【0064】
尚、図2、図3の防曇用加熱線条2の図には、図1、図4に示したような複数本の水平な加熱線条2a、2a・・が省略されており、記載されていない図となっているが、図1、図4の防曇用の加熱熱線条と同様の複数本の加熱線条2aがあるものと看做す。
【実施例】
【0065】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0066】
[実施例1]
図1に示すように、自動車用の後部窓ガラスの防曇用加熱線条2の上部余白部に、AM放送波受信用のアンテナ4と、周波数が76MHz〜90MHz帯の国内向けFM放送波帯のメインとサブのFM放送波受信用アンテナ5、5’を設けた。
【0067】
前記AM放送波受信用のアンテナ4は、間隔を隔てて設けた8本の水平線条4a、4a・・と、該水平線条4a、4a・・と直交するように設けた2本の垂直線条4b、4b’とからなり、2本の垂直線条4b、4b’は、水平線条4aを略3等分する位置に設け、一方側の垂直線条4bは、最上部から最下部迄の8本の水平線条4a、4a・・と直交させ、他方の垂直線条4b’は、該水平線条4a、4a・・の上部側から数えて3本目から7本目までの水平線条4a、4a・・に直交させ、該垂直線条4b’の上下両端よりそれぞれ上下両方向に延長した垂直線条の各先端及び途中部より前記水平線条4a、4a・・とは別の水平線条4a’、4a’・・を接続して設け、さらに、前記垂直線条4bの上端より引出線を介してAM放送波受信用のアンテナ4の上方に設けたAM用給電点7に接続した。
【0068】
また、前記複数本の水平線条4a、4a、・・の内、最上部から1、2本目と最下部から1、2本目の水平線条4aの長さは、中間部の水平線条4a、4a、・・に比べて短くし、該短くしたことによるスペースに前記垂直線条4b’と接続した別の水平線条4a’、4a’・・を配置し、該別の水平線条4a’の最下部の水平線条4a’を防曇用加熱線条2の最上部の加熱線条2aと近接して容量結合させた。
【0069】
一方、前記メインのFM放送波受信用アンテナ5は、前記AM放送波受信用アンテナ4の垂直線条4bの上端部位置近傍、かつAM用給電点7の近傍位置に設けたFM用給電点8より反時計回りの方向に、前記AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4aに沿って、互いに近接し容量結合するように第2の水平線条5aを延ばし、さらに、前記AM放送波受信用アンテナ4のすべての水平線条4a、4a・・の左端部を取り囲むように略垂直方向の第2の垂直線条5bを延ばし、その先端より折返した2本の折返水平線条5c、5cを設け、該折返水平線条5c、5cを最下部の水平線条4aに近接させて容量結合させるようにしたコ字状のアンテナ線条であり、前記2本の第2の水平線条5a、5aの両端を接続して閉ループ状とした。
【0070】
また、サブのFM放送波受信用アンテナ5’は、前記AM放送波受信用アンテナ4の垂直線条4b’の上端部位置近傍に設けたFM用給電点8’より時計回りの方向に、前記AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4a’に沿って、互いに近接させ容量結合するように第2の水平線条5a’を延ばし、さらに、前記AM放送波受信用アンテナ4の各水平線条4a’、4a’・・、4a、4a・・の右端部を取り囲むように略垂直方向の第2の垂直線条5b’を延ばし、その先端より折返した2本の折返し水平線条5c’、5c’を設け、該折返水平線条5c’、5c’を最下部の水平線条4aに近接させて容量結合させるようにしたコ字状のアンテナ線条であり、前記2本の第2の水平線条5a’、5a’の両端を接続して閉ループ状とした。
【0071】
前記AM放送波受信用のアンテナ4のAM用給電点7と図示しないチューナーに接続し、FM放送波受信用のアンテナ5、5’についても、FM用給電点8、8’より同様に図示しないチューナーに接続した。
【0072】
ガラス板1は略台形状で、その概略寸法は、上辺が1,200mm、下辺が1,360mm、高さが500mmであり、窓枠のフランジの内径寸法は、上辺が1,100mm、下辺が1,100mm、高さが400mmである。
【0073】
また、本発明のAM放送波受信用アンテナ4の各線条長さは以下の通りである。
【0074】
上部側より1、2番目の水平線条4aの各長さ=650mm、495mm
上部側より3〜6番目の水平線条4aの各長さ=各1100mm
下部側より1、2番目の水平線条4aの各長さ=650mm、650mm
上部側より1、2番目の水平線条4a’の各長さ=370mm、495mm
下部側より1番目の水平線条4a’の長さ=400mm
各水平線条4a間の間隔=10mm
垂直線条4b、4b’の各長さ=100mm、60mm
垂直線条4b、4b’間の各間隔=310mm
また、本発明のFM放送波受信用アンテナ5、5’の各線条の長さは以下の通りである。
【0075】
第2の水平線条5a、5a’の各長さ=300mm、350mm
第2の垂直線条5b、5b’の各長さ=90mm、80mm
折返水平線条5c、5c’の各長さ=400mm、210mm
FM放送波受信用アンテナ5、5’の第2の水平線条5a、5a’と、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4a間の間隔、及びFM放送波受信用アンテナ5’の折返水平線条5c、5c’と、AM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4a間の間隔は、それぞれ5mmとした。
【0076】
AM用給電点7の位置は、ガラス板1の中心線より150mm左寄りの位置にあり、該位置はAM放送波受信用アンテナ4の垂直線4b、およびデフォッガ2の垂直線条2b’の略延長上にある。
【0077】
一方、FM放送波受信用メインアンテナ5の第2の水平線条5aは、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4aの左端より310mmの長さ分で近接し、折返水平線条5cとAM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4aの左端より400mmの長さ分で近接させるようにした。
【0078】
また、FM放送波受信用サブアンテナ5’の第2の水平線条5a’とAM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4a’の右端より370mmの長さ分で近接し、折返水平線条5c’とAM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4aの右端より210mmの長さ分で近接させるようにした。
【0079】
尚、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4aと、ボディフランジ9の上辺側内側との間隔を30mm離し、最下部の水平線条4aと最上部側の加熱線条2aとの間隔については20mm離すようにした。
【0080】
これらのAM放送波受信用アンテナ4、FM放送波受信用メインアンテナ5、FM放送波受信用サブアンテナ5’、および加熱用導電線条2、各給電点7、8、8’、バスバー3、3’を銀ペースト等の導電ペーストによりガラス板面にプリントし、焼成して形成する。
【0081】
このようにして得られた窓ガラス板を自動車の後部窓に装着し、さらに、AM放送波受信用アンテナ4のAM用給電点よりフィーダー線によって図示しないチューナーに接続し、FM放送波受信用アンテナ5、5’については、FM用給電点8、8’よりそれぞれフィーダー線により図示しないチューナーに接続した。
【0082】
尚、前記FM放送波受信用のメインアンテナ5とサブアンテナ5’とは、指向特性を向上させるためにダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信させるようにしたものであり、いずれをメインアンテナであっても良い。
【0083】
前記FM用のメインアンテナ5とFM用サブアンテナ5 ’でそれぞれ受信をした結果、図5に示したように、76MHz〜90MHzの日本国内向けFM放送波帯の水平偏波の平均受信利得が、それぞれ−17.4dBd、−17.7dBd(ダイポールアンテナ比)となり、前記FM用のメインアンテナ5と、FM用サブアンテナ5’の2系統のFM用のアンテナでダイバーシティ受信をした結果では、前記76MHz〜90MHzのFM放送波帯の水平偏波の平均受信利得が−13.9dBd(ダイポールアンテナ比)となり、従来と比べて非常に優れた受信利得が得られることがわかった。
【0084】
また、AM放送波については、従来と同様AM放送波帯用アンプによって増幅しているので実用上なんら問題ない。
【0085】
このようなAM放送波受信用アンテナの水平線条と、FM放送波受信用アンテナの第2の水平線条を図1に示すように近接かつ容量結合させたことにより、AM放送波とFM放送波のいずれも受信特性が向上した。
【0086】
[実施例2]
図2に示す実施例2は、自動車用の後部窓ガラスの防曇用加熱線条2の上部余白部に、AM放送波受信用のアンテナ4と、周波数が88MHz〜108MHzの米国、欧州、豪州を初めとする国外向けFM放送波帯のメインとサブのFM放送波受信用アンテナ5、5’を設けたものである。
【0087】
実施例1と同様に、防曇用加熱線条の上部余白部に設けた7本の水平線条およびこれと直交する2本の垂直線条からなるAM放送波受信用アンテナ4と、該AM放送波受信用アンテナ4の両側より挟み込むような形状の略コ字状のFM放送波受信用メインアンテナ5とサブアンテナ5’を近接して設けたものである。
【0088】
実施例1と異なる点は、AM放送波受信用アンテナの水平線条が7本であり、FM放送波受信用のメインアンテナ5の2本の折返水平線条5cの線条長さが約2倍となり、その途中部が接続されて閉ループ形状としたこと、さらに、AM放送波受信用アンテナ4の垂直線条4b’を下方に延ばし、その上端部にL字状に水平線条4a’を1本設けて、該水平線条4a’にサブのFM放送波受信用アンテナ5’の第2の水平線条5a’を近接させ、さらに前記垂直線条4b’の下端部にもL字状に水平線条4a’を設けて、防曇用加熱線条の最上部の水平線条に近接させ、それぞれ容量結合した点である。
【0089】
また、本発明のAM放送波受信用アンテナ4の各線条長さは以下の通りである。
【0090】
上部側より1番目の水平線条4aの長さ=555mm
上部側より2〜5番目の水平線条4aの各長さ=各1,100mm
上部側より6番目の水平線条4aの長さ=900mm
上部側より7番目の水平線条4aの長さ=690mm
上部側より1番目の水平線条4a’の長さ=345mm
最下部側の水平線条4a’の長さ=195mm
各水平線条4a間の間隔=10mm
垂直線条4b、4b’の各長さ=95mm、60mm
垂直線条4b、4b’間の各間隔=310mm
また、本発明のFM放送波受信用アンテナ5、5’の各線条の長さは以下の通りである。
【0091】
第2の水平線条5a、5a’の各長さ=310mm、350mm
第2の垂直線条5b、5b’の各長さ=90mm、80mm
折返水平線条5cの各長さ=700mm、700mm
折返水平線条5c’の各長さ=390mm、390mm
FM放送波受信用アンテナ5、5’の第2の水平線条5a、5a’と、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4a、4a’間の間隔、及びFM放送波受信用アンテナ5、5’の折返水平線条5c、5c、および5c’、5c’の各上方側線条と、AM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4a間の間隔は、それぞれ5mmとした。
【0092】
FM放送波受信用アンテナ5、5’の折返水平線条5c、5c’と、防曇用加熱線条2の最上部の加熱線条2a間の間隔は実施例1と同様の10mmとし、AM用給電点7、及びFM用給電点8、8’の位置は、実施例1とほぼ同位置に設けた。
【0093】
一方、FM放送波受信用メインアンテナ5の第2の水平線条5aは、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4aの左端より280mmの長さ分で近接し、FM放送波受信用サブアンテナ5’の第2の水平線条5a’は、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4a’の長さ345mmで近接させ、折返水平線条5cは、AM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4aの左端より690mmの長さ分で近接させ、折返水平線条5c’は、AM放送波受信用アンテナ4の最下部の水平線条4aの右端より380mmの長さ分で近接させるようにした。
【0094】
尚、AM放送波受信用アンテナ4の最上部の水平線条4aと、図示しないフランジの上辺側内側との間隔を30mm離し、最下部の水平線条4aと最上部側の加熱線条2aとの間隔については20mm離すようにした。
【0095】
これらのAM放送波受信用アンテナ4、FM放送波受信用メインアンテナ5、FM放送波受信用サブアンテナ5’、および加熱用導電線条2、各給電点、バスバーを銀ペースト等の導電ペーストによりガラス板面にプリントし、焼成して形成する。
【0096】
このようにして得られた窓ガラス板を自動車の後部窓に装着し、さらに、実施例1と同様に、AM放送波受信用アンテナ4のAM用給電点、およびFM放送波受信用アンテナ5、5’のFM用給電点8、8’より、それぞれフィーダー線により図示しないチューナーに接続した。
【0097】
前記FM用のメインアンテナ5とFM用サブアンテナ5’ でそれぞれ受信をした結果、図6に示したように、88MHz〜108MHzの国外向けFM放送波帯の垂直偏波の平均受信利得が、それぞれ−10.9dBd、−11.1dBd(ダイポールアンテナ比)となり、前記FM用のメインアンテナ5と、FM用サブアンテナ5’の2系統のFM用のアンテナでダイバーシティ受信をした結果では、前記88MHz〜108MHzのFM放送波帯の垂直偏波の平均受信利得が−7.7dBd(ダイポールアンテナ比)となり、従来と比べて大幅に受信利得の改善が得られることがわかった。
【0098】
また、AM放送波については、従来と同様AM放送波帯用アンプによって増幅しているので実用上なんら問題ない。
【0099】
このようなAM放送波受信用アンテナの水平線条4a、4a’と、FM放送波受信用アンテナの第2の水平線条5a、5a’または折返水平線条5c、5c’を図2に示すように近接かつ容量結合させたことにより、AM放送波とFM放送波のいずれも高い受信特性が得られた。
【0100】
[実施例3]
図3に示す実施例3は、実施例2の変形例であって、周波数が88〜108MHz帯の国外向けFM放送波受信用として使用するメインアンテナ5、及びサブアンテナ5’を略コ字状のパターンとして、AM放送波受信用アンテナを両側部から囲うように設けたものであり、防曇用加熱線条の最下線より分岐する補助水平線条2dを設けるとともに、該補助水平線条2dをボディフランジの開口部の下辺に近接させた点が大きく相違し、AM放送波受信用アンテナ4、およびFM放送波受信用アンテナ5、5’については、AM放送波受信用アンテナの上から1番目の水平線条4aの長さを若干短くした点、FM放送波受信用アンテナ5の折返水平線条5cの防曇加熱線条に近接する側の線条の長さを若干短くした点以外は、殆ど実施例2と同じパターン、寸法である。
【0101】
防曇用加熱線条の最下線より分岐する補助水平線条2dを設けたことによって、該補助水平線条2dを設けない実施例1、2と比べると、FM放送波の電波が水平偏波、垂直偏波となっている北米、欧州等の日本国外においては、指向特性が大幅に改善した。
【0102】
本実施例の前記FM用のメインアンテナ5とFM用サブアンテナ5’ でそれぞれ88MHz〜108MHzの国外向けFM放送波を受信をした結果、垂直偏波の平均受信利得が、それぞれ−12.5dBd、−11.8dBd(ダイポールアンテナ比)となり、前記FM用のメインアンテナ5と、FM用サブアンテナ5’の2系統のFM用のアンテナでダイバーシティ受信をした結果では、前記FM放送波帯の垂直偏波の平均受信利得が−8.9dBd(ダイポールアンテナ比)となり、従来と比べて大幅に受信利得の改善が得られることがわかった。
【0103】
また、AM放送波については、従来と同様AM放送波帯用アンプによって増幅しているので実用上なんら問題ない。
【0104】
このようなAM放送波受信用アンテナの水平線条4a、4a’と、FM放送波受信用アンテナの第2の水平線条5a、5a’または折返水平線条5c、5c’を図2に示すように近接かつ容量結合させたことにより、AM放送波とFM放送波のいずれも高い受信特性が得られた。
【0105】
[実施例4]
図4に示す実施例4は、実施例1の変形例であって、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向けのFM放送波受信用として使用するメインアンテナ5、及びサブアンテナ5’を略コ字状のパターンとして、AM放送波受信用アンテナを両側部から囲うように設けたものであり、防曇用加熱線条の最下線より分岐した補助水平線条2dを設けた点、及び前記防曇用加熱線条の2つのバスバー3、3’の上端部より上方に延ばした補助垂直線条2c、2c’が、前記FM放送波受信用アンテナ5、5’の第2の垂直線条5b、5b’および第2の水平線条5a、5a’の外側に沿って近接し、容量結合するようにした点が実施例1と比べて異なる以外は、実施例1とほぼ同じである。
【0106】
前記防曇用加熱線条の最下線より分岐する補助水平線条2dを設けたことによって、該補助水平線条2dを設けない実施例1、2と比べると、FM放送波の電波が水平偏波、垂直偏波となっている北米、欧州等の日本国外においては、指向特性が大幅に改善した。
【0107】
また、前記防曇用加熱線条の2つのバスバーの上端部より上方に延ばした補助垂直線条2c、2c’が、前記FM放送波受信用アンテナの第2の垂直線条5b、5b’および第2の水平線条5a、5a’の外側に沿って近接し、容量結合させたことによって、該補助垂直線条2c、2c’を設けない実施例1〜3と比べると、デフォッガとの容量結合が増し、デフォッガに載ったFM放送波を有効にピックアップでき、受信性能が大幅に改善した。
【0108】
本実施例の前記FM用のメインアンテナ5とFM用サブアンテナ5’ でそれぞれ76〜90MHzの国内向けFM放送波を受信をした結果、水平偏波の平均受信利得が実施例1〜3と同等の性能になり、従来と比べて大幅に受信利得の改善が得られることがわかった。
【0109】
また、AM放送波については、従来と同様AM放送波帯用アンプによって増幅しているので実用上なんら問題ない。
【0110】
このようなAM放送波受信用アンテナの水平線条4a、4a’と、FM放送波受信用アンテナの第2の水平線条5a、5a’または折返水平線条5c、5c’を図2に示すように近接かつ容量結合させたことにより、AM放送波とFM放送波のいずれも高い受信特性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の車両用後部窓ガラスに設けた実施例1を示す正面図。
【図2】本発明の車両用後部窓ガラスに設けた実施例2を示す正面図。
【図3】本発明の車両用後部窓ガラスに設けた実施例3を示す正面図。
【図4】本発明の車両用後部窓ガラスに設けた実施例4を示す正面図。
【図5】本発明の実施例1の水平偏波の周波数特性図。
【図6】本発明の実施例2の垂直偏波の周波数特性図。
【符号の説明】
【0112】
1 窓ガラス板
2 防曇用加熱線条
2a 加熱線条
2b、2b’ 垂直線条
2c、2c’ 補助垂直線条
2d、2d’ 補助水平線条
3、3’ バスバー
4 AM放送波受信用アンテナ
4a、4a’ 水平線条
4b、4b’ 垂直線条
5、5’ FM放送波受信用アンテナ
5a、5a’ 第2の水平線条
5b、5b’ 第2の垂直線条
5c、5c’ 折返水平線条
7 AM用給電点
8、8’ FM用給電点
9 フランジ枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部窓ガラスの防曇用加熱線条の上部余白部に設けるアンテナであって、間隔を隔てて設けた複数本の水平線条と、該水平線条と直交する垂直線条を少なくとも2本離隔して設け、該垂直線条間で、かつ最上部の水平線条上、あるいは該最上部の水平線条の該部より引出線を介して設けた位置をAM用給電点とするAM放送波受信用のアンテナと、
前記AM放送波受信用アンテナの最上部の水平線条より上部位置、かつAM用給電点の左右両側に設けた2つのFM用給電点よりAM放送波受信用アンテナの最外周部の一部に沿ってそれぞれFM放送波受信用アンテナを互いに逆方向となる時計回り及び反時計回りの方向に設けて延ばし、前記FM放送波受信用アンテナの一方は、前記AM放送波受信用アンテナの複数本の水平線条の片端側のすべての端部を取り囲むような略コ字状のアンテナとし、さらにFM放送波受信用アンテナの他方は、前記複数の水平線条の他端側の端部の一部を取り囲むような略コ字状のアンテナとして、前記2つのFM放送波受信用アンテナのそれぞれの第2の水平線条がAM放送波受信用アンテナの水平線条に近接かつ容量結合するようにしたことを特徴とする車両用のガラスアンテナ。
【請求項2】
前記2つのFM用給電点のそれぞれより互いに逆方向かつ水平方向に延ばしたFM放送波受信用アンテナの第2の水平線条が、前記AM放送波受信用のアンテナの水平線条と近接かつ容量結合し、さらにその先端より前記AM放送波受信用アンテナの複数本の水平線条の外側に沿って略垂直方向又は円弧状に延ばした少なくとも1本の第2の垂直線条を少なくとも有するコ字状のエレメントとしたことを特徴とする請求項1記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項3】
前記2つのFM放送用給電点の各端子の中心間の距離を100mm以上400mm以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項4】
前記AM用給電点と、FM放送用給電点間の中心間の距離を50mm以上350mm以下の位置に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項5】
前記FM放送波受信用アンテナの先端部を折返した折返水平線条を1本又は複数本とし、AM放送波受信用の水平線条の先端部に近接かつ容量結合させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項6】
前記FM放送波受信用アンテナは、ループ形状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項7】
前記FM放送波受信用アンテナのループ形状が、AM放送波受信用アンテナの上部位置、又は下部位置、あるいはその両方に存在することを特徴とする請求項6に記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項8】
前記2系統のFM放送波受信用アンテナをダイバーシティ受信又はフェイズダイバーシティ受信させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項9】
前記AM放送波受信用アンテナの水平線条を、前記防曇用加熱線条の水平線条に近接させて容量結合するようにしたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項10】
前記防曇用加熱線条のバスバーの上端部より上方に延ばした補助垂直線条が、前記FM放送波受信用アンテナの第2の垂直線条の外側に沿って近接し、容量結合するようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項11】
前記防曇加熱線条の最下部の加熱線条の略中央部より分岐し、左右のいずれか一方向、または両方向の水平方向に延ばした水平補助線条を少なくとも有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項12】
前記水平補助線条の最下部の水平補助線条を、ボディフランジの開口部に近接させ、容量結合するようにしたことを特徴とする請求項11に記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項13】
前記FM用給電点から延ばしたFM放送波受信用アンテナの先端までの総線条長さを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向け、及び88〜108MHz帯の日本国外向けのいずれもアンテナ長を800〜2,500mmとし、該FM放送波受信用のアンテナの第2の水平線条と、前記AM放送波受信用のアンテナの最上部の水平線条とが互いに近接し、容量結合する部分の各水平線条の合計長さ、および該部分の線条の間隔のそれぞれを、周波数が76〜90MHz帯の日本国内向けと88〜108MHz帯の日本国外向けのFM放送波受信用アンテナ共に800〜2,500mm、2〜30mmとしたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。
【請求項14】
前記防曇用加熱線条の複数本の水平線条を横切るように設けた垂直線条を少なくとも1本設けたことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の車両用のガラスアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88057(P2010−88057A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257782(P2008−257782)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】