車両用アンテナ装置
【課題】UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることのできる車両用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】この車両用アンテナ装置は、車両のドアハンドルの内部に設けられたダイポールアンテナ50を備え、同アンテナ50を通じて車両ドアに周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する。ここでは、車両ドアのアウタパネル40とダイポールアンテナ50との間に間隙を形成した上で、ダイポールアンテナ50と間隙を置いて対向配置されるアウタパネル40の内壁面を反射面として利用する。そして、通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にてダイポールアンテナ50からアウタパネル40に向けて放射される無線電波を通信エリアに向けて反射する。
【解決手段】この車両用アンテナ装置は、車両のドアハンドルの内部に設けられたダイポールアンテナ50を備え、同アンテナ50を通じて車両ドアに周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する。ここでは、車両ドアのアウタパネル40とダイポールアンテナ50との間に間隙を形成した上で、ダイポールアンテナ50と間隙を置いて対向配置されるアウタパネル40の内壁面を反射面として利用する。そして、通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にてダイポールアンテナ50からアウタパネル40に向けて放射される無線電波を通信エリアに向けて反射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両ボディの周辺に設定された通信エリアに無線電波を放射するための車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近したときに車両ドアのアンロックなどを自動的に実行する、いわゆる電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図10に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図10に示されるように、この電子キーシステムでは、例えば車両80のドアに設けられた送信装置81から車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアSにリクエスト信号を放射する。また、この電子キーシステムでは、上記送信装置81から放射されたリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対して識別コード(IDコード)などを含む応答信号を送信する携帯機90をユーザが所持する。すなわち、携帯機90を所持したユーザが通信エリアSに進入することによって、同携帯機90から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、携帯機90から送信された応答信号は車室内に設けられた受信装置82によって受信されるとともに、車両80にかかる各種制御を統括的に実行する車両制御装置83に伝達される。同制御装置83では、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同制御装置83内のメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨を判断すると、例えば車両ドアに設けられているドアロック装置84を通じて車両ドアをアンロックする。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両80の各種操作が自動的に行われるようになるため、車両80の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような電子キーシステムに用いられる携帯機90は、一般に、内蔵される電池を電源としているため、電池切れが生じると、車両80との無線通信を行うことができなくなってしまう。このためユーザは、電池切れが生じる度に携帯機90の電池を交換する必要があり、こうした作業をユーザが煩わしく感じるおそれがある。
【0006】
そこで発明者らは、無線電力伝送技術を利用することにより、携帯機90に内蔵された電池を排除するといった方法を提案している。具体的には、携帯機90の電源電圧となるUHF帯の無線電波を車両80から携帯機90に放射する。そして携帯機90では、車両80から放射された無線電波を受信すると、同無線電波を整流して電源電圧を得る。こうした方法を採用すれば、ユーザによる携帯機90の電池交換が不要となるため、上述したユーザの煩わしさを好適に解消することが可能となる。
【0007】
ただし、上述した電子キーシステムでは、携帯機90が上記通信エリアS内に進入したときに同携帯機90が無線通信を行うことができる状態になっている必要があることから、上記UHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射する必要がある。このため、UHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射することのできる高利得なアンテナ装置が望まれているといった実情がある。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることのできる車両用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボディに設けられたアンテナを備え、該アンテナを通じて前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する車両用アンテナ装置であって、前記車両ボディの外周面と前記アンテナとの間に間隙が形成されるとともに、前記アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ボディの外周面を反射面として利用し、前記通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にて前記アンテナから前記車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を前記通信エリアに向けて反射する電波反射構造を有することを要旨としている。
【0010】
同構成によれば、アンテナから通信エリアに向けて無線電波を放射する際に、同アンテナから車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を電波反射構造によって通信エリアに反射することができるため、反射された無線電波を利用して通信エリアに向けて放射される無線電波の強度を強めることができるようになる。このため、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることができるようになる。
【0011】
そしてこの場合、具体的には請求項2に記載の発明によるように、前記アンテナが、前記車両ボディの外周面に沿うように配設されるとともに、前記車両ボディの前記アンテナが対向する部分には、前記間隙を形成する態様にて凹部が形成され、前記反射面が、前記アンテナに対向する前記凹部の内壁面からなるといった構成を採用すれば、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙を形成するといった構造を容易に実現することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用アンテナ装置において、前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアが、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアであって、前記アンテナが、前記車両ドアに設けられたドアハンドルの内部に配設されるとともに、前記凹部が、ユーザが前記ドアハンドルを把持する際に手を挿入する部分として前記車両ドアの外周面に凹設された溝部からなることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、ユーザがドアハンドルを把持する際に自身の指を挿入する部分として車両ドアの外周面に凹設される溝部を上記凹部として流用することができるため、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙を形成するといった構造を更に容易に実現することができるようになる。
【0014】
そしてこの場合、具体的には請求項4に記載の発明によるように、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとして、例えばダイポールアンテナを用いるようにすれば、ドアハンドルの内部にアンテナを容易に配設することができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用アンテナ装置において、前記無線電波の波長を「λ」とするとき、前記2本のエレメントの長さが「λ/4」の長さにそれぞれ設定されるとともに、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離をLとするとき、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足することを要旨としている。
【0016】
UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにした場合には、同アンテナから反射面までの距離Lを「5mm」から「λ/4(>5mm)」の範囲の長さに設定すると、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成しつつ、ダイポールアンテナの利得がその絶対利得よりも大きくなることが発明者らによって確認されている。このため、上記構成によるように、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足することが、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高める上で有効である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用アンテナ装置において、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離Lが、「λ/4」の長さに設定されてなることを要旨としている。
【0018】
UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにした場合には、アンテナから反射面までの距離を「λ/4」の長さに設定すると、ダイポールアンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなることが発明者らによって確認されている。したがって、上記構成によるように、アンテナから反射面までの距離を「λ/4」の長さに設定すれば、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるとともに、ダイポールアンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる車両用アンテナ装置によれば、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる車両用アンテナ装置の一実施形態について同装置を利用した車両の電子キーシステムのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の車両用アンテナ装置が設けられる車両のドアハンドル装置の破断断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の車両用アンテナ装置の構造を模式的に示す平面図。
【図4】(a)〜(d)は、ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離を「1mm」、「5mm」、「10mm」、及び「20mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナの指向特性を示す指向性図。
【図5】(a)〜(d)は、ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離を「40mm」、「80mm」、「160mm」、及び「320mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナの指向特性を示す指向性図。
【図6】ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離と同ダイポールアンテナの給電点での反射係数との関係を示すグラフ。
【図7】同実施形態の車両用アンテナ装置の変形例についてその構造を模式的に示す平面図。
【図8】(a),(b)は、ダイポールアンテナ及びV型ダイポールアンテナのそれぞれの指向特性を示す指向性図。
【図9】同実施形態の車両用アンテナ装置の他の変形例についてその構造を模式的に示す平面図。
【図10】従来の車両の電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる車両用アンテナ装置を、電子キーシステムの車両のアンテナ装置に適用した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、この電子キーシステムの基本構成は、先の図10に例示した電子キーシステムと同様である。図1は、こうした電子キーシステムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作をより具体的に説明する。
【0022】
同図1に示されるように、この電子キーシステムでも、車両側に搭載された車載装置10とユーザが携帯所持する携帯機20との間で、無線通信による各種通信制御が実行される。
【0023】
ここで、車載装置10には、UHF帯のリクエスト信号を上記通信エリアSに放射する送信装置11とともに、携帯機20から送信されるUHF帯の応答信号を受信する受信装置12が設けられている。また、この車載装置10には、携帯機20の電源電圧となるUHF帯の無線電波である電力電波を上記通信エリアSに放射する無線電力送信装置13も設けられている。そして、送信装置11による上記リクエスト信号の放射制御、受信装置12を通じて受信される上記応答信号の処理、並びに無線電力送信装置13による上記電力電波の放射制御が、同じく車載装置10に設けられている車両制御装置14を通じて統括的に実行される。ちなみにこの車両制御装置14は、例えば前述したドアロック装置などの制御対象15を制御する部分でもある。
【0024】
一方、携帯機20には、車載装置10から放射される上記リクエスト信号を受信する受信装置21とともに、受信したリクエスト信号に対して上記応答信号を車載装置10に送信する送信装置22が設けられている。そして、受信装置21を通じて受信されるリクエスト信号に基づく上記応答信号の生成、及びこの生成した応答信号の上記送信装置22を通じての送信制御が、同じく携帯機20に設けられている携帯機制御装置23を通じて統括的に行われる。また、この携帯機20には、車載装置10から放射される上記電力電波を受信してこれを整流する整流装置24とともに、同整流装置24で整流された電気エネルギを蓄積して携帯機制御装置23などを動作させる電源電圧を生成する電源装置25も設けられている。
【0025】
このように構成された電子キーシステムにあって、無線電力送信装置13からアンテナ装置A1を介して上記通信エリアSに対して電力電波が放射されているとするとき、ユーザが所持する携帯機20がこの通信エリアSに進入したとすると、次のような態様にて車載装置10及び携帯機20の間で信号の授受が実行される。すなわちこのシステムでは、上記無線電力送信装置13から放射された電力電波が上記整流装置24によりアンテナ装置A3を介して受信されるとともに、同整流装置24では、同電力電波を整流してその電気エネルギを電源装置25に伝達する。電源装置25では、こうして電気エネルギが伝達されると、同電気エネルギを蓄積して電源電圧を生成するとともに、生成した電源電圧を受信装置21や携帯機制御装置23などの携帯機20に搭載される各種電子部品に印加してこれらを駆動させる。続いて、上記送信装置11からアンテナ装置A4を介して上記通信エリアSに対してリクエスト信号が放射されると、この放射されたリクエスト信号が受信装置21によりアンテナ装置A2を介して受信されるとともに、受信したリクエスト信号が上記携帯機制御装置23に伝達される。携帯機制御装置23ではこうしてリクエスト信号が伝達されると、内蔵するメモリに記憶されている識別コード(IDコード)を含む応答信号を生成してこれを上記送信装置22へ伝達するとともに、この応答信号をアンテナ装置A2を介して車載装置10に送信する。このようにして応答信号が送信されることにより、上記受信装置12ではアンテナ装置A4を介してこれを受信するとともに、受信した応答信号を上記車両制御装置14に伝達する。これにより車両制御装置14では、前述のように、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同制御装置14が内蔵するメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨が判断されることに基づいて、制御対象であるドアロック機構を通じて車両ドアのアンロックなどを実行する。
【0026】
ところで、こうした電子キーシステムでは、上述のように、UHF帯のリクエスト信号や電力電波を上記通信エリアSに、すなわち車両ドアの周辺に設定された半円形状のエリアに放射する必要がある。そこで、本実施形態では、通信エリアSにリクエスト信号や電力電波を放射し易くするために、車両ドアに設けられたドアハンドルに上記アンテナ装置A1,A4を設けるようにしている。
【0027】
次に、図2を参照して、車両ドアに設けられたドアハンドル装置の構造について詳述する。図2は、このドアハンドル装置の部分断面構造を示したものである。
同図2に示されるように、この車両ドアのアウタパネル40の外周面には、ユーザの手が挿入される部分となる溝部41が凹設されており、ドアハンドル装置30では、この溝部41の内壁面との間に間隙GPを隔てて、アウタパネル40に沿うようにドアハンドル31が配設されている。ちなみに、ドアハンドル31は、高剛性を有する樹脂材料により形成され、アウタパネル40は、高張力鋼などの金属材料により形成されている。そして、ドアハンドル31の溝部41に対向する部分には、ユーザが把持する部分となる把持部31aが形成されている。また、このドアハンドル31の一方の端部には、アウタパネル40を貫通してその内部に設けられた支持部材42に回動可能に支持される回動部33が導出されている。さらに、ドアハンドル31の他方の端部には、同じくアウタパネル40を貫通してその内部に設けられたドア開閉機構のレバー(図示略)を操作するための操作部32が導出されている。すなわち、このドアハンドル装置30では、ユーザが間隙GPに手を挿入して把持部31aを把持した後、ドアハンドル31を図中の矢印aで示す方向に引張り操作したとすると、上記支持部材42を回転軸として上記操作部32が引き出される方向にドアハンドル31が回動する。そしてこのとき、車両ドアがロック状態になければ、上記操作部32によってレバーが操作されて車両ドアが開放される。
【0028】
一方、アウタパネル40の内部には、上記送信装置11や受信装置12、無線電力送信装置13(図示略)などが設けられるとともに、これら送信装置11などと給電線11aを介して接続された上記アンテナ装置A1,A4がドアハンドル31の内部に設けられている。なお、同図では、便宜上、アンテナ装置A4の図示を割愛している。そして、例えば送信装置11や無線電力送信装置13が給電線11aを介してアンテナ装置A1,A4への給電を行ったとすると、これらのアンテナ装置A1,A4から上記通信エリアSに対してリクエスト信号や電力電波が放射されることとなる。
【0029】
このように、本実施形態では、ドアハンドル31の内部にアンテナ装置A1を配設することにより、アウタパネル40の外周面とアンテナ装置A1との間に、換言すれば車両ボディの外周面とアンテナ装置A1との間に間隙GPを形成するようにしている。ちなみに、このようにドアハンドル31の内部にアンテナ装置A1を配設すれば、上記溝部41を利用してアンテナ装置A1と車両ボディの外周面との間に間隙を容易に形成することができるようになる。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態にかかるアンテナ装置A1の構造について詳述する。図3は、アンテナ装置A1の構造を模式的に示したものである。
同図3に示されるように、このアンテナ装置A1は、基本的には、ダイポールアンテナ50によって構成されるものであって、上記溝部41の内壁面と略平行に、換言すればアウタパネル40と略平行に配設された2本のエレメント51,52と、上記給電線11aに接続されてエレメント51,52への給電を行う給電点53とを有している。ちなみに、このダイポールアンテナ50は、上記UHF帯の無線電波の波長を「λ」とするとき、それぞれのエレメント51,52の長さが「λ/4」の長さに、すなわちアンテナの全長が「λ/2」の長さに設定された、いわゆる半波長ダイポールアンテナである。
【0031】
ところで、上述した電子キーシステムでは、上記リクエスト信号や電力電波といったUHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射する必要があるため、アンテナ装置A1の利得が高いことが望まれている。
【0032】
そこで、本実施形態では、上記ダイポールアンテナ50と間隙GPをおいて対向配置されるアウタパネル40の内壁面を、より詳細には溝部41の内壁面を反射面として利用し、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40に向けて放射される無線電波を上記通信エリアSに向けて反射するようにしている。そして、このような電波反射構造を通じて反射された無線電波(反射波)を利用して通信エリアSに放射される無線電波の強度を強めることで、アンテナの利得を高めるようにしている。具体的には、上述した構成を有するアンテナ装置A1にあっては、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「5mm」から「λ/4(>5mm)」の範囲の長さに設定することが、上記通信エリアSを形成して且つ、ダイポールアンテナ50の利得を高める上で有効である。特に、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「λ/4」の長さに設定することが、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとる上で非常に有効となる。このことは発明者らのシミュレーションによって確認されたものである。
【0033】
図4〜図6は、発明者らによるシミュレーション結果を示したグラフである。次に、これら図4〜図6を参照して、発明者らによって確認された内容について詳述する。
はじめに、図4及び図5を参照して、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lとダイポールアンテナ50の利得との関係について説明する。図4(a)〜(d)、及び図5(a)〜(d)は、同距離Lを「1mm」、「5mm」、「10mm」、「20mm」、「40mm」、「80mm(≒λ/4)」、「160mm」、「360mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナ50の指向特性をそれぞれ示したグラフである。なお、これらの図では、先の図3に示されるように、上記給電点53を原点として、上記2本のエレメント51,52が延びる方向をx軸、同x軸に直交する軸をy軸とするときに、x軸から給電点53を中心とした時計回りの角度θ(単位は「°」)を円周方向の軸に、無線電波の強度(単位は[dBi])を径方向の軸にとっている。また、図中の上方向を車両ドアの外側の方向にとるとともに、図中の下方向をアウタパネル40側の方向にとっている。さらにここでは、上記アウタパネル40を無限鉄板と仮定している。
【0034】
同図4(a)〜(d)、及び図5(a),(b)に示されるように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50を中心に車両ドアの外側に略半円形状に広がるように無線電波が放射される。一方、図5(c),(d)に示されるように、同距離Lを「160mm」、あるいは「360mm」に設定した場合には、ダイポールアンテナ50を中心に車両ドアの外側にハート型状に、あるいは変形ハート型状に広がるように無線電波が放射される。したがって、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアSに無線電波を放射するためには、上記距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定することが望ましい。
【0035】
次に、上記距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定したときのアンテナの利得について検証する。まず、同図4(a)に示されるように、上記距離Lを「1mm」の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50の利得は「−3.62[dBi]」となり、ダイポールアンテナの絶対利得(2.15[dBi])よりも小さくなってしまう。一方、図4(b)〜(d)、及び図5(a),(b)に示されるように、上記距離Lを「5mm」から「80mm」の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50の利得をその絶対利得よりも大きくすることができ、上記通信エリアSに放射される無電電波の強度を強めることができる。
【0036】
このように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離をLとしたときに、「5mm≦L≦80mm(≒λ/4)」なる関係を満足することが、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高める上で有効である。
【0037】
続いて、図6を参照して、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lと、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合の関係について説明する。図6は、同距離Lを横軸に、上記給電点53での反射係数を縦軸にとって、それらの関係を示したグラフである。
【0038】
同図6に示されるように、ダイポールアンテナ50の反射係数は、上記距離Lが短くなるほど大きくなるといった傾向があり、特に距離Lが「40mm」よりも短い範囲で急激に大きくなる。すなわち、上記距離Lが「40[mm]」よりも短い範囲では、給電線11aからダイポールアンテナ50への給電が行われ難くなり、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとることが難しいことがわかる。このことは、上記距離Lが短くなるほど、すなわちダイポールアンテナ50とアウタパネル40とが近づくほどダイポールアンテナ50のインピーダンスが小さくなることに起因している、といったことも発明者らによって確認されている。したがって、このグラフによれば、距離Lを「80mm」よりも長く設定すれば、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合を取り易くなることがわかる。
【0039】
そこで、本実施形態の車両用アンテナ装置では、先の図4〜図6に例示したシミュレーション結果をもとに、上記距離Lを「80mm」、すなわち「λ/4」の長さに設定するようにしている。こうした構成によれば、シミュレーション結果からも明らかなように、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるようになるとともに、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用アンテナ装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ドアハンドル31の内部にダイポールアンテナ50を配設した上で、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを、すなわちダイポールアンテナ50から車両ボディまでの距離を「λ/4」の長さに設定するようにした。これにより、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるようになるとともに、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0041】
(2)ドアハンドル31の内部にダイポールアンテナ50を配設した上で、ユーザがドアハンドル31を把持する際に手を挿入する部分としてアウタパネル40の外周面に凹設された溝部41を利用してダイポールアンテナ50とアウタパネル40の外周面との間に間隙を形成するようにした。これにより、ダイポールアンテナ50とアウタパネル40の外周面との間に間隙を形成するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0042】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「λ/4」の長さに設定するようにしたが、「5mm≦L<80mm(≒λ/4)」なる関係を満足するように距離Lを設定するようにしてもよい。このような構成であっても、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアSを形成して且つ、アンテナの利得を高める上では有効である。
【0043】
・上記実施形態では、UHF帯の無線電波を送信するアンテナとしてダイポールアンテナ50を用いるようにしたが、これに代えて、例えば図7に示されるように、上記2本のエレメント61,62を車両ボディ側にV字状に折り曲げ形成した、いわゆるV型ダイポールアンテナ60を用いるようにしてもよい。図8(a),(b)は、先の図4及び図5に対応する図として、発明者らによるシミュレーションを通じて求められた上記ダイポールアンテナ50及びV型ダイポールアンテナ60の指向特性を示したグラフである。なおここでは、便宜上、アウタパネル40を「500mm」四方の板材と仮定している。また、同板材をその中心がy軸上に位置するように配置するとともに、ダイポールアンテナ50と板材との距離、及びV型ダイポールアンテナ60と板材との距離を「15mm」にそれぞれ設定している。さらに、先の図7に示されるように、V型ダイポールアンテナ60の折り曲げ角度をφとしたとき、同角度φを「160°」に設定した場合について例示している。同図8(a),(b)に示されるように、ダイポールアンテナ50では、x軸上の電波強度が「−9.9[dBi]」となるが、V型ダイポールアンテナ60では、x軸上の電波強度が「−6.6[dBi]」となる。すなわち、ダイポールアンテナ50と比較すると、V型ダイポールアンテナ60の方がアンテナの指向性をx軸の方向に、すなわち車両ボディに沿った方向に強めることができるようになる。このため、上記通信エリアSを車両ボディに沿った方向に広げることができるため、通信エリアS上のヌル点を改善することができるようになる。
【0044】
・また、ダイポールアンテナ50に代えて、例えば図9に示すように、2本のエレメント71,72の先端部をエレメント73によってそれぞれ接続した構造からなる折り返しダイポールアンテナ70を用いるようにしてもよい。上述のように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離が短くなるほどダイポールアンテナ50のインピーダンスが小さくなり、給電線とアンテナとの間のインピーダンス整合を取り難くなることが発明者らによって確認されている。したがって、ダイポールアンテナよりもインピーダンスの高い折り返しダイポールアンテナ70を用いるようにすれば、アンテナからアウタパネルまでの距離を例えば「λ/4」よりも短くする場合であれ、給電線とアンテナとの間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0045】
・上記実施形態では、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにしたが、各種車両のドアハンドルの形状などに合わせて、例えばモノポールアンテナなどの線状アンテナ、あるいは逆Fアンテナや逆Lアンテナなどの板状アンテナを用いるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態及びその変形例では、ダイポールアンテナ50などのアンテナと車両ボディとの間に間隙を設けるために、同アンテナをドアハンドル31の内部に設けるようにした。これに代えて、例えば適宜の樹脂ケースなどにアンテナを収容するとともに、同樹脂ケースを車両ボディの外周面に沿って固定配設した上で、車両ボディのアンテナが対向する部分に適宜の凹部を形成することにより、アンテナと車両ボディとの間に間隙を設けるようにしてもよい。このような構成を採用すれば、例えばドアハンドルの内部にアンテナを設けることが難しい車両に対しても本実施形態にかかる車両用アンテナ装置を搭載することが可能となる。要は、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙が形成されるとともに、車両ボディの外周面を反射面として利用し、車両ボディの周辺に設定された通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にてアンテナから車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を通信エリアに向けて反射する構造が設けられていればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0047】
(イ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記ダイポールアンテナは、同アンテナを構成する2本のエレメントが前記車両ボディの側にV字状に折り曲げ形成されてなることを特徴とする車両用アンテナ装置。同構成によれば、車両ボディの外周面と平行となるように2本のエレメントを配置した場合と比較すると、ダイポールアンテナの指向性を車両ボディの外周面に沿った方向に強めることができるため、上記通信エリアを車両ボディの外周面に沿った方向に広げることができるようになる。
【0048】
(ロ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記アンテナは、前記2本のエレメントの先端部をエレメントによってそれぞれ接続した構造からなる折り返しダイポールアンテナであることを特徴とする車両用アンテナ装置。アンテナから反射面までの距離が短くなるほど、アンテナのインピーダンスが小さくなり、アンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり難くなることが発明者らによって確認されている。この点、上記構成によるように、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとして、いわゆる折り返しダイポールアンテナを採用すれば、アンテナのインピーダンスを大きくすることができるため、アンテナから反射面までの距離を短くする場合であれ、アンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【符号の説明】
【0049】
L…距離、S…通信エリア、A1,A2,A3,A4…アンテナ装置、GP…間隙、10…車載装置、11,22,81…送信装置、11a…給電線、12,21,82…受信装置、13…無線電力送信装置、14,83…車両制御装置、15…制御対象、20,90…携帯機、23…携帯機制御装置、24…整流装置、25…電源装置、30…ドアハンドル装置、31…ドアハンドル、31a…把持部、32…操作部、33…回動部、40…アウタパネル、41…溝部、42…支持部材、50…ダイポールアンテナ、51,52,61,62,71〜73…エレメント、53…給電点、60…V型ダイポールアンテナ、70…折り返しダイポールアンテナ、80…車両。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両ボディの周辺に設定された通信エリアに無線電波を放射するための車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近したときに車両ドアのアンロックなどを自動的に実行する、いわゆる電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図10に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図10に示されるように、この電子キーシステムでは、例えば車両80のドアに設けられた送信装置81から車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアSにリクエスト信号を放射する。また、この電子キーシステムでは、上記送信装置81から放射されたリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対して識別コード(IDコード)などを含む応答信号を送信する携帯機90をユーザが所持する。すなわち、携帯機90を所持したユーザが通信エリアSに進入することによって、同携帯機90から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、携帯機90から送信された応答信号は車室内に設けられた受信装置82によって受信されるとともに、車両80にかかる各種制御を統括的に実行する車両制御装置83に伝達される。同制御装置83では、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同制御装置83内のメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨を判断すると、例えば車両ドアに設けられているドアロック装置84を通じて車両ドアをアンロックする。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両80の各種操作が自動的に行われるようになるため、車両80の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような電子キーシステムに用いられる携帯機90は、一般に、内蔵される電池を電源としているため、電池切れが生じると、車両80との無線通信を行うことができなくなってしまう。このためユーザは、電池切れが生じる度に携帯機90の電池を交換する必要があり、こうした作業をユーザが煩わしく感じるおそれがある。
【0006】
そこで発明者らは、無線電力伝送技術を利用することにより、携帯機90に内蔵された電池を排除するといった方法を提案している。具体的には、携帯機90の電源電圧となるUHF帯の無線電波を車両80から携帯機90に放射する。そして携帯機90では、車両80から放射された無線電波を受信すると、同無線電波を整流して電源電圧を得る。こうした方法を採用すれば、ユーザによる携帯機90の電池交換が不要となるため、上述したユーザの煩わしさを好適に解消することが可能となる。
【0007】
ただし、上述した電子キーシステムでは、携帯機90が上記通信エリアS内に進入したときに同携帯機90が無線通信を行うことができる状態になっている必要があることから、上記UHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射する必要がある。このため、UHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射することのできる高利得なアンテナ装置が望まれているといった実情がある。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることのできる車両用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボディに設けられたアンテナを備え、該アンテナを通じて前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する車両用アンテナ装置であって、前記車両ボディの外周面と前記アンテナとの間に間隙が形成されるとともに、前記アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ボディの外周面を反射面として利用し、前記通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にて前記アンテナから前記車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を前記通信エリアに向けて反射する電波反射構造を有することを要旨としている。
【0010】
同構成によれば、アンテナから通信エリアに向けて無線電波を放射する際に、同アンテナから車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を電波反射構造によって通信エリアに反射することができるため、反射された無線電波を利用して通信エリアに向けて放射される無線電波の強度を強めることができるようになる。このため、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることができるようになる。
【0011】
そしてこの場合、具体的には請求項2に記載の発明によるように、前記アンテナが、前記車両ボディの外周面に沿うように配設されるとともに、前記車両ボディの前記アンテナが対向する部分には、前記間隙を形成する態様にて凹部が形成され、前記反射面が、前記アンテナに対向する前記凹部の内壁面からなるといった構成を採用すれば、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙を形成するといった構造を容易に実現することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用アンテナ装置において、前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアが、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアであって、前記アンテナが、前記車両ドアに設けられたドアハンドルの内部に配設されるとともに、前記凹部が、ユーザが前記ドアハンドルを把持する際に手を挿入する部分として前記車両ドアの外周面に凹設された溝部からなることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、ユーザがドアハンドルを把持する際に自身の指を挿入する部分として車両ドアの外周面に凹設される溝部を上記凹部として流用することができるため、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙を形成するといった構造を更に容易に実現することができるようになる。
【0014】
そしてこの場合、具体的には請求項4に記載の発明によるように、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとして、例えばダイポールアンテナを用いるようにすれば、ドアハンドルの内部にアンテナを容易に配設することができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用アンテナ装置において、前記無線電波の波長を「λ」とするとき、前記2本のエレメントの長さが「λ/4」の長さにそれぞれ設定されるとともに、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離をLとするとき、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足することを要旨としている。
【0016】
UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにした場合には、同アンテナから反射面までの距離Lを「5mm」から「λ/4(>5mm)」の範囲の長さに設定すると、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成しつつ、ダイポールアンテナの利得がその絶対利得よりも大きくなることが発明者らによって確認されている。このため、上記構成によるように、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足することが、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高める上で有効である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用アンテナ装置において、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離Lが、「λ/4」の長さに設定されてなることを要旨としている。
【0018】
UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにした場合には、アンテナから反射面までの距離を「λ/4」の長さに設定すると、ダイポールアンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなることが発明者らによって確認されている。したがって、上記構成によるように、アンテナから反射面までの距離を「λ/4」の長さに設定すれば、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるとともに、ダイポールアンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる車両用アンテナ装置によれば、UHF帯の無線電波を放射するにあたり、アンテナの利得を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる車両用アンテナ装置の一実施形態について同装置を利用した車両の電子キーシステムのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の車両用アンテナ装置が設けられる車両のドアハンドル装置の破断断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の車両用アンテナ装置の構造を模式的に示す平面図。
【図4】(a)〜(d)は、ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離を「1mm」、「5mm」、「10mm」、及び「20mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナの指向特性を示す指向性図。
【図5】(a)〜(d)は、ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離を「40mm」、「80mm」、「160mm」、及び「320mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナの指向特性を示す指向性図。
【図6】ダイポールアンテナからアウタパネルまでの距離と同ダイポールアンテナの給電点での反射係数との関係を示すグラフ。
【図7】同実施形態の車両用アンテナ装置の変形例についてその構造を模式的に示す平面図。
【図8】(a),(b)は、ダイポールアンテナ及びV型ダイポールアンテナのそれぞれの指向特性を示す指向性図。
【図9】同実施形態の車両用アンテナ装置の他の変形例についてその構造を模式的に示す平面図。
【図10】従来の車両の電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる車両用アンテナ装置を、電子キーシステムの車両のアンテナ装置に適用した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、この電子キーシステムの基本構成は、先の図10に例示した電子キーシステムと同様である。図1は、こうした電子キーシステムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作をより具体的に説明する。
【0022】
同図1に示されるように、この電子キーシステムでも、車両側に搭載された車載装置10とユーザが携帯所持する携帯機20との間で、無線通信による各種通信制御が実行される。
【0023】
ここで、車載装置10には、UHF帯のリクエスト信号を上記通信エリアSに放射する送信装置11とともに、携帯機20から送信されるUHF帯の応答信号を受信する受信装置12が設けられている。また、この車載装置10には、携帯機20の電源電圧となるUHF帯の無線電波である電力電波を上記通信エリアSに放射する無線電力送信装置13も設けられている。そして、送信装置11による上記リクエスト信号の放射制御、受信装置12を通じて受信される上記応答信号の処理、並びに無線電力送信装置13による上記電力電波の放射制御が、同じく車載装置10に設けられている車両制御装置14を通じて統括的に実行される。ちなみにこの車両制御装置14は、例えば前述したドアロック装置などの制御対象15を制御する部分でもある。
【0024】
一方、携帯機20には、車載装置10から放射される上記リクエスト信号を受信する受信装置21とともに、受信したリクエスト信号に対して上記応答信号を車載装置10に送信する送信装置22が設けられている。そして、受信装置21を通じて受信されるリクエスト信号に基づく上記応答信号の生成、及びこの生成した応答信号の上記送信装置22を通じての送信制御が、同じく携帯機20に設けられている携帯機制御装置23を通じて統括的に行われる。また、この携帯機20には、車載装置10から放射される上記電力電波を受信してこれを整流する整流装置24とともに、同整流装置24で整流された電気エネルギを蓄積して携帯機制御装置23などを動作させる電源電圧を生成する電源装置25も設けられている。
【0025】
このように構成された電子キーシステムにあって、無線電力送信装置13からアンテナ装置A1を介して上記通信エリアSに対して電力電波が放射されているとするとき、ユーザが所持する携帯機20がこの通信エリアSに進入したとすると、次のような態様にて車載装置10及び携帯機20の間で信号の授受が実行される。すなわちこのシステムでは、上記無線電力送信装置13から放射された電力電波が上記整流装置24によりアンテナ装置A3を介して受信されるとともに、同整流装置24では、同電力電波を整流してその電気エネルギを電源装置25に伝達する。電源装置25では、こうして電気エネルギが伝達されると、同電気エネルギを蓄積して電源電圧を生成するとともに、生成した電源電圧を受信装置21や携帯機制御装置23などの携帯機20に搭載される各種電子部品に印加してこれらを駆動させる。続いて、上記送信装置11からアンテナ装置A4を介して上記通信エリアSに対してリクエスト信号が放射されると、この放射されたリクエスト信号が受信装置21によりアンテナ装置A2を介して受信されるとともに、受信したリクエスト信号が上記携帯機制御装置23に伝達される。携帯機制御装置23ではこうしてリクエスト信号が伝達されると、内蔵するメモリに記憶されている識別コード(IDコード)を含む応答信号を生成してこれを上記送信装置22へ伝達するとともに、この応答信号をアンテナ装置A2を介して車載装置10に送信する。このようにして応答信号が送信されることにより、上記受信装置12ではアンテナ装置A4を介してこれを受信するとともに、受信した応答信号を上記車両制御装置14に伝達する。これにより車両制御装置14では、前述のように、伝達された応答信号に含まれるIDコードと同制御装置14が内蔵するメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨が判断されることに基づいて、制御対象であるドアロック機構を通じて車両ドアのアンロックなどを実行する。
【0026】
ところで、こうした電子キーシステムでは、上述のように、UHF帯のリクエスト信号や電力電波を上記通信エリアSに、すなわち車両ドアの周辺に設定された半円形状のエリアに放射する必要がある。そこで、本実施形態では、通信エリアSにリクエスト信号や電力電波を放射し易くするために、車両ドアに設けられたドアハンドルに上記アンテナ装置A1,A4を設けるようにしている。
【0027】
次に、図2を参照して、車両ドアに設けられたドアハンドル装置の構造について詳述する。図2は、このドアハンドル装置の部分断面構造を示したものである。
同図2に示されるように、この車両ドアのアウタパネル40の外周面には、ユーザの手が挿入される部分となる溝部41が凹設されており、ドアハンドル装置30では、この溝部41の内壁面との間に間隙GPを隔てて、アウタパネル40に沿うようにドアハンドル31が配設されている。ちなみに、ドアハンドル31は、高剛性を有する樹脂材料により形成され、アウタパネル40は、高張力鋼などの金属材料により形成されている。そして、ドアハンドル31の溝部41に対向する部分には、ユーザが把持する部分となる把持部31aが形成されている。また、このドアハンドル31の一方の端部には、アウタパネル40を貫通してその内部に設けられた支持部材42に回動可能に支持される回動部33が導出されている。さらに、ドアハンドル31の他方の端部には、同じくアウタパネル40を貫通してその内部に設けられたドア開閉機構のレバー(図示略)を操作するための操作部32が導出されている。すなわち、このドアハンドル装置30では、ユーザが間隙GPに手を挿入して把持部31aを把持した後、ドアハンドル31を図中の矢印aで示す方向に引張り操作したとすると、上記支持部材42を回転軸として上記操作部32が引き出される方向にドアハンドル31が回動する。そしてこのとき、車両ドアがロック状態になければ、上記操作部32によってレバーが操作されて車両ドアが開放される。
【0028】
一方、アウタパネル40の内部には、上記送信装置11や受信装置12、無線電力送信装置13(図示略)などが設けられるとともに、これら送信装置11などと給電線11aを介して接続された上記アンテナ装置A1,A4がドアハンドル31の内部に設けられている。なお、同図では、便宜上、アンテナ装置A4の図示を割愛している。そして、例えば送信装置11や無線電力送信装置13が給電線11aを介してアンテナ装置A1,A4への給電を行ったとすると、これらのアンテナ装置A1,A4から上記通信エリアSに対してリクエスト信号や電力電波が放射されることとなる。
【0029】
このように、本実施形態では、ドアハンドル31の内部にアンテナ装置A1を配設することにより、アウタパネル40の外周面とアンテナ装置A1との間に、換言すれば車両ボディの外周面とアンテナ装置A1との間に間隙GPを形成するようにしている。ちなみに、このようにドアハンドル31の内部にアンテナ装置A1を配設すれば、上記溝部41を利用してアンテナ装置A1と車両ボディの外周面との間に間隙を容易に形成することができるようになる。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態にかかるアンテナ装置A1の構造について詳述する。図3は、アンテナ装置A1の構造を模式的に示したものである。
同図3に示されるように、このアンテナ装置A1は、基本的には、ダイポールアンテナ50によって構成されるものであって、上記溝部41の内壁面と略平行に、換言すればアウタパネル40と略平行に配設された2本のエレメント51,52と、上記給電線11aに接続されてエレメント51,52への給電を行う給電点53とを有している。ちなみに、このダイポールアンテナ50は、上記UHF帯の無線電波の波長を「λ」とするとき、それぞれのエレメント51,52の長さが「λ/4」の長さに、すなわちアンテナの全長が「λ/2」の長さに設定された、いわゆる半波長ダイポールアンテナである。
【0031】
ところで、上述した電子キーシステムでは、上記リクエスト信号や電力電波といったUHF帯の無線電波を上記通信エリアS全体に放射する必要があるため、アンテナ装置A1の利得が高いことが望まれている。
【0032】
そこで、本実施形態では、上記ダイポールアンテナ50と間隙GPをおいて対向配置されるアウタパネル40の内壁面を、より詳細には溝部41の内壁面を反射面として利用し、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40に向けて放射される無線電波を上記通信エリアSに向けて反射するようにしている。そして、このような電波反射構造を通じて反射された無線電波(反射波)を利用して通信エリアSに放射される無線電波の強度を強めることで、アンテナの利得を高めるようにしている。具体的には、上述した構成を有するアンテナ装置A1にあっては、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「5mm」から「λ/4(>5mm)」の範囲の長さに設定することが、上記通信エリアSを形成して且つ、ダイポールアンテナ50の利得を高める上で有効である。特に、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「λ/4」の長さに設定することが、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとる上で非常に有効となる。このことは発明者らのシミュレーションによって確認されたものである。
【0033】
図4〜図6は、発明者らによるシミュレーション結果を示したグラフである。次に、これら図4〜図6を参照して、発明者らによって確認された内容について詳述する。
はじめに、図4及び図5を参照して、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lとダイポールアンテナ50の利得との関係について説明する。図4(a)〜(d)、及び図5(a)〜(d)は、同距離Lを「1mm」、「5mm」、「10mm」、「20mm」、「40mm」、「80mm(≒λ/4)」、「160mm」、「360mm」にそれぞれ設定したときのダイポールアンテナ50の指向特性をそれぞれ示したグラフである。なお、これらの図では、先の図3に示されるように、上記給電点53を原点として、上記2本のエレメント51,52が延びる方向をx軸、同x軸に直交する軸をy軸とするときに、x軸から給電点53を中心とした時計回りの角度θ(単位は「°」)を円周方向の軸に、無線電波の強度(単位は[dBi])を径方向の軸にとっている。また、図中の上方向を車両ドアの外側の方向にとるとともに、図中の下方向をアウタパネル40側の方向にとっている。さらにここでは、上記アウタパネル40を無限鉄板と仮定している。
【0034】
同図4(a)〜(d)、及び図5(a),(b)に示されるように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50を中心に車両ドアの外側に略半円形状に広がるように無線電波が放射される。一方、図5(c),(d)に示されるように、同距離Lを「160mm」、あるいは「360mm」に設定した場合には、ダイポールアンテナ50を中心に車両ドアの外側にハート型状に、あるいは変形ハート型状に広がるように無線電波が放射される。したがって、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアSに無線電波を放射するためには、上記距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定することが望ましい。
【0035】
次に、上記距離Lを「1mm」から「80mm」の範囲の長さに設定したときのアンテナの利得について検証する。まず、同図4(a)に示されるように、上記距離Lを「1mm」の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50の利得は「−3.62[dBi]」となり、ダイポールアンテナの絶対利得(2.15[dBi])よりも小さくなってしまう。一方、図4(b)〜(d)、及び図5(a),(b)に示されるように、上記距離Lを「5mm」から「80mm」の長さに設定した場合には、ダイポールアンテナ50の利得をその絶対利得よりも大きくすることができ、上記通信エリアSに放射される無電電波の強度を強めることができる。
【0036】
このように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離をLとしたときに、「5mm≦L≦80mm(≒λ/4)」なる関係を満足することが、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高める上で有効である。
【0037】
続いて、図6を参照して、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lと、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合の関係について説明する。図6は、同距離Lを横軸に、上記給電点53での反射係数を縦軸にとって、それらの関係を示したグラフである。
【0038】
同図6に示されるように、ダイポールアンテナ50の反射係数は、上記距離Lが短くなるほど大きくなるといった傾向があり、特に距離Lが「40mm」よりも短い範囲で急激に大きくなる。すなわち、上記距離Lが「40[mm]」よりも短い範囲では、給電線11aからダイポールアンテナ50への給電が行われ難くなり、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとることが難しいことがわかる。このことは、上記距離Lが短くなるほど、すなわちダイポールアンテナ50とアウタパネル40とが近づくほどダイポールアンテナ50のインピーダンスが小さくなることに起因している、といったことも発明者らによって確認されている。したがって、このグラフによれば、距離Lを「80mm」よりも長く設定すれば、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合を取り易くなることがわかる。
【0039】
そこで、本実施形態の車両用アンテナ装置では、先の図4〜図6に例示したシミュレーション結果をもとに、上記距離Lを「80mm」、すなわち「λ/4」の長さに設定するようにしている。こうした構成によれば、シミュレーション結果からも明らかなように、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるようになるとともに、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用アンテナ装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ドアハンドル31の内部にダイポールアンテナ50を配設した上で、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを、すなわちダイポールアンテナ50から車両ボディまでの距離を「λ/4」の長さに設定するようにした。これにより、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアを形成して且つ、アンテナの利得を高めることができるようになるとともに、給電線11aとダイポールアンテナ50との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0041】
(2)ドアハンドル31の内部にダイポールアンテナ50を配設した上で、ユーザがドアハンドル31を把持する際に手を挿入する部分としてアウタパネル40の外周面に凹設された溝部41を利用してダイポールアンテナ50とアウタパネル40の外周面との間に間隙を形成するようにした。これにより、ダイポールアンテナ50とアウタパネル40の外周面との間に間隙を形成するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0042】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離Lを「λ/4」の長さに設定するようにしたが、「5mm≦L<80mm(≒λ/4)」なる関係を満足するように距離Lを設定するようにしてもよい。このような構成であっても、車両ドアの周辺に半円形状の通信エリアSを形成して且つ、アンテナの利得を高める上では有効である。
【0043】
・上記実施形態では、UHF帯の無線電波を送信するアンテナとしてダイポールアンテナ50を用いるようにしたが、これに代えて、例えば図7に示されるように、上記2本のエレメント61,62を車両ボディ側にV字状に折り曲げ形成した、いわゆるV型ダイポールアンテナ60を用いるようにしてもよい。図8(a),(b)は、先の図4及び図5に対応する図として、発明者らによるシミュレーションを通じて求められた上記ダイポールアンテナ50及びV型ダイポールアンテナ60の指向特性を示したグラフである。なおここでは、便宜上、アウタパネル40を「500mm」四方の板材と仮定している。また、同板材をその中心がy軸上に位置するように配置するとともに、ダイポールアンテナ50と板材との距離、及びV型ダイポールアンテナ60と板材との距離を「15mm」にそれぞれ設定している。さらに、先の図7に示されるように、V型ダイポールアンテナ60の折り曲げ角度をφとしたとき、同角度φを「160°」に設定した場合について例示している。同図8(a),(b)に示されるように、ダイポールアンテナ50では、x軸上の電波強度が「−9.9[dBi]」となるが、V型ダイポールアンテナ60では、x軸上の電波強度が「−6.6[dBi]」となる。すなわち、ダイポールアンテナ50と比較すると、V型ダイポールアンテナ60の方がアンテナの指向性をx軸の方向に、すなわち車両ボディに沿った方向に強めることができるようになる。このため、上記通信エリアSを車両ボディに沿った方向に広げることができるため、通信エリアS上のヌル点を改善することができるようになる。
【0044】
・また、ダイポールアンテナ50に代えて、例えば図9に示すように、2本のエレメント71,72の先端部をエレメント73によってそれぞれ接続した構造からなる折り返しダイポールアンテナ70を用いるようにしてもよい。上述のように、ダイポールアンテナ50からアウタパネル40までの距離が短くなるほどダイポールアンテナ50のインピーダンスが小さくなり、給電線とアンテナとの間のインピーダンス整合を取り難くなることが発明者らによって確認されている。したがって、ダイポールアンテナよりもインピーダンスの高い折り返しダイポールアンテナ70を用いるようにすれば、アンテナからアウタパネルまでの距離を例えば「λ/4」よりも短くする場合であれ、給電線とアンテナとの間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【0045】
・上記実施形態では、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにしたが、各種車両のドアハンドルの形状などに合わせて、例えばモノポールアンテナなどの線状アンテナ、あるいは逆Fアンテナや逆Lアンテナなどの板状アンテナを用いるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態及びその変形例では、ダイポールアンテナ50などのアンテナと車両ボディとの間に間隙を設けるために、同アンテナをドアハンドル31の内部に設けるようにした。これに代えて、例えば適宜の樹脂ケースなどにアンテナを収容するとともに、同樹脂ケースを車両ボディの外周面に沿って固定配設した上で、車両ボディのアンテナが対向する部分に適宜の凹部を形成することにより、アンテナと車両ボディとの間に間隙を設けるようにしてもよい。このような構成を採用すれば、例えばドアハンドルの内部にアンテナを設けることが難しい車両に対しても本実施形態にかかる車両用アンテナ装置を搭載することが可能となる。要は、車両ボディの外周面とアンテナとの間に間隙が形成されるとともに、車両ボディの外周面を反射面として利用し、車両ボディの周辺に設定された通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にてアンテナから車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を通信エリアに向けて反射する構造が設けられていればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0047】
(イ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記ダイポールアンテナは、同アンテナを構成する2本のエレメントが前記車両ボディの側にV字状に折り曲げ形成されてなることを特徴とする車両用アンテナ装置。同構成によれば、車両ボディの外周面と平行となるように2本のエレメントを配置した場合と比較すると、ダイポールアンテナの指向性を車両ボディの外周面に沿った方向に強めることができるため、上記通信エリアを車両ボディの外周面に沿った方向に広げることができるようになる。
【0048】
(ロ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用アンテナ装置において、前記アンテナは、前記2本のエレメントの先端部をエレメントによってそれぞれ接続した構造からなる折り返しダイポールアンテナであることを特徴とする車両用アンテナ装置。アンテナから反射面までの距離が短くなるほど、アンテナのインピーダンスが小さくなり、アンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり難くなることが発明者らによって確認されている。この点、上記構成によるように、UHF帯の無線電波を放射するアンテナとして、いわゆる折り返しダイポールアンテナを採用すれば、アンテナのインピーダンスを大きくすることができるため、アンテナから反射面までの距離を短くする場合であれ、アンテナとその給電線との間のインピーダンス整合をとり易くなる。
【符号の説明】
【0049】
L…距離、S…通信エリア、A1,A2,A3,A4…アンテナ装置、GP…間隙、10…車載装置、11,22,81…送信装置、11a…給電線、12,21,82…受信装置、13…無線電力送信装置、14,83…車両制御装置、15…制御対象、20,90…携帯機、23…携帯機制御装置、24…整流装置、25…電源装置、30…ドアハンドル装置、31…ドアハンドル、31a…把持部、32…操作部、33…回動部、40…アウタパネル、41…溝部、42…支持部材、50…ダイポールアンテナ、51,52,61,62,71〜73…エレメント、53…給電点、60…V型ダイポールアンテナ、70…折り返しダイポールアンテナ、80…車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに設けられたアンテナを備え、該アンテナを通じて前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する車両用アンテナ装置であって、
前記車両ボディの外周面と前記アンテナとの間に間隙が形成されるとともに、前記アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ボディの外周面を反射面として利用し、前記通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にて前記アンテナから前記車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を前記通信エリアに向けて反射する電波反射構造を有する
ことを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナが、前記車両ボディの外周面に沿うように配設されるとともに、前記車両ボディの前記アンテナが対向する部分には、前記間隙を形成する態様にて凹部が形成され、前記反射面が、前記アンテナに対向する前記凹部の内壁面からなる
請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアが、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアであって、前記アンテナが、前記車両ドアに設けられたドアハンドルの内部に配設されるとともに、前記凹部が、ユーザが前記ドアハンドルを把持する際に手を挿入する部分として前記車両ドアの外周面に凹設された溝部からなる
請求項2に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記車両ボディの外周面と平行となるように配設された2本のエレメントを有して構成されるダイポールアンテナである
請求項3に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項5】
前記無線電波の波長を「λ」とするとき、前記2本のエレメントの長さが「λ/4」の長さにそれぞれ設定されるとともに、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離をLとするとき、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足する
請求項4に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離Lが、「λ/4」の長さに設定されてなる
請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項1】
車両ボディに設けられたアンテナを備え、該アンテナを通じて前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアに向けてUHF帯の無線電波を放射する車両用アンテナ装置であって、
前記車両ボディの外周面と前記アンテナとの間に間隙が形成されるとともに、前記アンテナと前記間隙を置いて対向配置される前記車両ボディの外周面を反射面として利用し、前記通信エリアに放射される無線電波の強度を強める態様にて前記アンテナから前記車両ボディの外周面に向けて放射される無線電波を前記通信エリアに向けて反射する電波反射構造を有する
ことを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナが、前記車両ボディの外周面に沿うように配設されるとともに、前記車両ボディの前記アンテナが対向する部分には、前記間隙を形成する態様にて凹部が形成され、前記反射面が、前記アンテナに対向する前記凹部の内壁面からなる
請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記車両ボディの周辺に設定された通信エリアが、車両ドアの周辺に設定された半円形状の通信エリアであって、前記アンテナが、前記車両ドアに設けられたドアハンドルの内部に配設されるとともに、前記凹部が、ユーザが前記ドアハンドルを把持する際に手を挿入する部分として前記車両ドアの外周面に凹設された溝部からなる
請求項2に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記車両ボディの外周面と平行となるように配設された2本のエレメントを有して構成されるダイポールアンテナである
請求項3に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項5】
前記無線電波の波長を「λ」とするとき、前記2本のエレメントの長さが「λ/4」の長さにそれぞれ設定されるとともに、前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離をLとするとき、「5mm≦L≦λ/4」なる関係を満足する
請求項4に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記ダイポールアンテナから前記反射面までの距離Lが、「λ/4」の長さに設定されてなる
請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−97350(P2011−97350A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249147(P2009−249147)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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