説明

車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置

【課題】左右輪インホイールモータユニット間で、攪拌抵抗の差による駆動力差が発生して、車両の走行安定性が損なわれるのを回避可能な潤滑制御装置を提供する。
【解決手段】オイル攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速域(VSP≧VSP1)において、左右インホイールモータユニットのオイルレベルが異なると、左右輪間におけるオイル攪拌抵抗の差が大きくなって、大きな左右輪間駆動力差により車両の走行安定性が悪化する。そのため高車速域(VSP≧VSP1)においては、左右インホイールモータユニットのオイルポンプをそれぞれ、オイル吸送量Qがともに、ユニット要求油量対応の一定流量Qconstに保たれるよう駆動制御する。これにより、左右インホイールモータユニットのオイルレベルが同じにされ続け、左右インホイールモータユニット内でのオイル攪拌抵抗が同じになって、左右輪間に駆動力差を発生させることがなく、走行安定性の悪化を回避し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を個々の電動モータにより駆動して走行可能な電気自動車に用いられる、車輪ごとの駆動ユニット(以下、インホイールモータユニットと称する)に有用な潤滑制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータユニットは、例えば特許文献1に記載のように、上記の電動モータに加えて、遊星歯車組などの減速歯車機構を具え、これらを1ユニットに構成し、
電動モータからの回転動力を減速歯車機構による減速下に車輪に伝達して、当該車輪を駆動するものである。
【0003】
従ってインホイールモータユニットは、上記の減速歯車機構を潤滑する必要がある。
しかしそのための潤滑を、インホイールモータユニット内の回転体による掻き上げ油に頼るのでは、オイル攪拌抵抗がインホイールモータユニット(電動モータ)の消費電力を増大させ、電気自動車にとって最重要課題である電費の大幅な悪化を招く。
【0004】
そこで従来は、特許文献1にも記載されている通り、オイル攪拌抵抗による消費電力に比べて遙かに消費電力が少ないオイルポンプを用いて、インホイールモータユニット内下部におけるオイルを吸入し、このオイルを潤滑要求箇所へ向け供給して所定の潤滑を行うことが多い。
【0005】
この潤滑に際し特許文献1所載の潤滑制御技術は、左右で対をなす車輪のインホイールモータユニット内における油温が相互に異なる場合、高温側インホイールモータユニットの潤滑油量(オイルポンプによるオイル吸送量)を、低温側インホイールモータユニットの潤滑油量(オイルポンプによるオイル吸送量)よりも多くして、左右インホイールモータユニット間の油温差をなくそうとするものである。
【0006】
かかるインホイールモータユニットの潤滑制御技術によれば、左右インホイールモータユニット間の油温差に起因した左右輪駆動力差が緩和され、インホイールモータ駆動式電気自動車(インホイールモータ駆動車両)の走行安定性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−195233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1に記載のごとく、左右インホイールモータユニットの潤滑油量(オイルポンプによるオイル吸送量)を異ならせる技術では、左右インホイールモータユニット内下部におけるオイルレベルを異ならせることとなり、以下のような問題を生ずる。
【0009】
つまり、インホイールモータユニット内の電動モータは、特許文献1にも図示されている通り、減速歯車機構よりも大径であり、
インホイールモータユニットの径方向寸法をできるだけ小さくして、要求される搭載性を確保する必要があることを考えると、電動モータとインホイールモータユニットケースとの間に大きな隙間を設定することができない。
【0010】
一方で、車両の振動時や傾斜時もオイルポンプはインホイールモータユニットケース内下部のオイルを吸送する必要があり、これら振動時や傾斜時もオイルポンプがオイルを吸入し得るよう、インホイールモータユニットケース内下部のオイルレベルを相当に高くしなければならない。
これらの理由から、大径の電動モータ(回転ロータ)がインホイールモータユニット内下部のオイル中に浸漬されるのは必至である。
【0011】
ところで特許文献1に記載のように、左右インホイールモータユニットの潤滑油量(オイルポンプによるオイル吸送量)を異ならせるのでは、左右インホイールモータユニットケース内下部におけるオイルのレベルを異ならせることとなり、以下のような問題を生ずる。
【0012】
つまり、上記のように左右インホイールモータユニットケース内下部のオイルレベルが異なるということは、
オイルレベルよりも下方に位置している電動モータ(回転ロータ)のオイル浸漬量が左右インホイールモータユニット間で相違することを意味する。
【0013】
このように電動モータ(回転ロータ)のオイル浸漬量が左右インホイールモータユニット間で異なると、電動モータ(回転ロータ)によるオイル攪拌抵抗も左右インホイールモータユニット間で異なり、左右輪間に駆動力差を発生させてしまい、インホイールモータ駆動車両の走行安定性を悪化させるという問題を生ずる。
【0014】
本発明は、左右インホイールモータユニットケース内下部のオイルレベルが同じに保たれるようオイルポンプを一定流量制御することにより、上記の問題を解消し得るようにした車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のため、本発明の車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となるインホイールモータ駆動車両、および、これに用いられるインホイールモータユニットの潤滑制御装置を説明するに、
インホイールモータ駆動車両は、少なくとも左右一対の車輪を、個々のインホイールモータユニットにより駆動して走行可能なものであり、また、
この車両に用いられるインホイールモータユニットの潤滑制御装置は、左右で対をなす上記インホイールモータユニット内を、個々のオイルポンプがインホイールモータユニットケース内下部から吸送したオイルにより潤滑するものである。
【0016】
本発明は、かかるインホイールモータユニットの潤滑制御装置に対し、
上記オイルポンプを、該オイルポンプからのオイル吸送量が上記左右インホイールモータユニットのケース内下部におけるオイルレベルを同じとなす一定量に保たれるよう駆動制御するオイルポンプ駆動制御手段を設けた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明による車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置にあっては、 オイルポンプからのオイル吸送量が、左右インホイールモータユニットのケース内下部におけるオイルレベルを同じとなす一定量に保たれることから、左右インホイールモータユニットのケース内下部におけるオイルレベルが同じに保たれていることとなる。
【0018】
このため、インホイールモータユニット内における大径回転メンバのオイル浸漬量が左右インホイールモータユニット間で同じであり、当該大径回転メンバによるオイル攪拌抵抗も左右インホイールモータユニット間で同じになる。
従って、左右輪間に駆動力差を発生させることがなく、インホイールモータ駆動車両の走行安定性が悪化するという前記の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例になる潤滑制御装置を具えたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【図2】図1におけるインホイールモータユニットのオイルギャラリ内に設置したオイルガイドを示し、 (a)は、図2(b)のII−II線上で断面とし、矢の方向に見て示すオイルガイドの詳細縦断側面図、 (b)は、図2(a)の右側から見て示すオイルガイドの詳細正面図である。
【図3】図1におけるオイルポンプコントローラが実行する潤滑制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】図3の潤滑制御プログラムによって駆動制御されるオイルポンプのオイル吸送量制御特性を示す特性線図である。
【図5】図1におけるインホイールモータユニットの油温変化特性を、ロータのオイル浸漬量ごとに示すタイムチャートである。
【図6】図4の一定流量制御域で、同図に示す一定流量を実現するのに必要なオイルポンプ目標回転数の変化特性を示す特性線図である。
【図7】図4におけるオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0に関した変化特性を、要求駆動トルクの積分値をパラメータとして示す変化特性図である。
【図8】図4におけるオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0に関した変化特性を、オイルポンプ停止状態での走行距離をパラメータとして示す変化特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる潤滑制御装置を具えたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
この図において、1は、インホイールモータユニットのケース本体、2は、該ケース本体1のリヤカバーで、これらケース本体1およびリヤカバー2の相互合体により、インホイールモータユニットのユニットケース3を構成する。
【0021】
図1に示すインホイールモータユニットは、ユニットケース3内に電動モータ4および遊星歯車式減速歯車組5(以下、単に「減速歯車組」と言う)を収納して構成する。
電動モータ4は、ケース本体1の内周に嵌合して固設した円環状のステータ6と、かかる円環状ステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配したロータ7とで構成する。
【0022】
減速歯車組5は、同軸に突き合わせて対向配置した入力軸8および出力軸9間を駆動結合する用をなし、
サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し出力軸9に接近する軸線方向へずらせて同心配置した固定のリングギヤ12と、これらサンギヤ11およびリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン(段付きピニオン)13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するピニオンシャフト14と、該ピニオンシャフト14を支持したキャリア15a,15bとにより構成する。
【0023】
入力軸8は、出力軸9に近い内端に前記のサンギヤ11を一体成形して具え、この入力軸8をサンギヤ11からリヤカバー2に向かう後方へ延在させる。
出力軸9は、減速歯車組5から反対方向(前方)に延在させて、ケース本体1の前端(図の右側)開口より突出させ、この突出箇所において出力軸9に後述のごとく車輪16を結合する。
【0024】
これら入力軸8および出力軸9は、両者の同軸突き合わせ端部を相互に相対回転可能に貫入させ合って、両者間にボールベアリングを可とするベアリング17を介在させることにより、入出力軸間軸受嵌合部を設定する。
このベアリング17から軸線方向に離間した入力軸8および出力軸9の箇所をそれぞれ、ボールベアリングを可とするベアリング18および複列アンギュラベアリングを可とするベアリング19でユニットケース3に軸受する。
【0025】
なおベアリング19は、ケース本体1の前端開口を塞ぐ端蓋20の内周と、ケース本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ21の外周との間に介在させる。
【0026】
前記の電動モータ4は、そのロータ7を入力軸8に結合し、この結合位置を、減速歯車組5とベアリング18との間における軸線方向位置とする。
【0027】
ケース本体1の前端開口内に前記のリングギヤ12を廻り止め、且つ抜け止めして固設し、この抜け止めに際しては、ケース本体1の前端開口を塞ぐシールアダプタ22により当該リングギヤ12の抜け止めを行う。
シールアダプタ22はボルト22aによりケース本体1の前端に取着し、このシールアダプタ22に対し端蓋20をボルト20aで取着する。
【0028】
段付きプラネタリピニオン13は、入力軸8上のサンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、およびリングギヤ12に噛合して段付きプラネタリピニオン13をリングギヤ12の内周に沿い転動させる小径ギヤ部13bを一体に有した段付きピニオン(遊星歯車)とする。
この段付きプラネタリピニオン13は、大径ギヤ部13aが出力軸9から遠い側に位置し、小径ギヤ部13bが出力軸9に近い側に位置するような向きに配置する。
【0029】
段付きプラネタリピニオン13は、例えば4個一組として円周方向等間隔に配置し、この円周方向等間隔配置を保って段付きプラネタリピニオン13を共通なキャリア15a,15bによりピニオンシャフト14を介し回転自在に支持する。
キャリア15a,15b は、減速歯車組5の出力回転メンバとして機能させ、入力軸8に近い出力軸9の内端に設けてこれに一体化するよう結着する。
このため、キャリア15a,15bおよび段付きプラネタリピニオン13(ピニオンシャフト14)は、出力軸9から入力軸8側へ張り出して出力軸9に取り付けられることとなる。
【0030】
次に、出力軸9に対する車輪16の結合要領を詳述する。
ホイールハブ21に同心に、ブレーキドラム25を一体結合して設け、これらホイールハブ21およびブレーキドラム25を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト26を植設する。
車輪16の取り付けに際しては、そのホイールディスクに穿ったボルト孔にホイールボルト26が貫通するよう当該ホイールディスクをブレーキドラム25の底面に密接させ、この状態でホイールボルト26にホイールナット27を緊締螺合することにより、出力軸9に対する車輪16の取り付けを行う。
【0031】
<インホイールモータユニットの作用>
電動モータ4のステータ6に通電すると、これからの電磁力で電動モータ4のロータ7が回転駆動され、その回転駆動力は入力軸8を介して減速歯車組5のサンギヤ11に伝達される。
これによりサンギヤ11は、大径ギヤ部13aを介して段付きプラネタリピニオン13を回転させるが、このとき固定のリングギヤ12が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン13は、小径ギヤ部13bがリングギヤ12に沿って転動するような遊星運動を行う。
かかる段付きプラネタリピニオン13の遊星運動はキャリア15a,15bを介して出力軸9に伝達され、出力軸9を入力軸8と同方向に回転させる。
【0032】
上記の伝動作用により減速歯車組5は、電動モータ4から入力軸8への回転を、サンギヤ11の歯数およびリングギヤ12の歯数により決まる比で減速して出力軸9に伝達する。
出力軸9への回転は、これに結合したホイールハブ21およびホイールボルト26を介して車輪16に伝達され、この車輪16を回転駆動させることができる。
【0033】
なお、車輪16と対をなす左右方向反対側における車輪(図示せず)も、図1におけると同様な同仕様のインホイールモータユニットで同様に回転駆動され、これら対をなす左右輪の同じ駆動力での回転駆動により車両を走行させることができる。
車両の制動に際しては、ブレーキドラム25のドラム内周面にブレーキシュー27を押し付けることにより車輪16を摩擦制動させる。
【0034】
<インホイールモータユニットの潤滑油路>
上記したインホイールモータユニットにおいては、入力軸8および出力軸9間における減速歯車組5の潤滑が必要である。
【0035】
なお、電動モータ4は潤滑する必要がないことから、電動モータ4と減速歯車組5との間に配してケース本体1内に隔壁を設け、電動モータ4の収納室と、減速歯車組5の収納室とを区画することも考えられるが、
この場合、電動モータ4および減速歯車組5を図1に示すごとく径方向へオーバーラップするよう相互に接近させて配置することができなくなり、インホイールモータユニットがその軸線方向長大化により搭載性が低下する。
【0036】
そこで本実施例においては図1に示すごとく、電動モータ4の収納室および減速歯車組5の収納室を共通化し、電動モータ4および減速歯車組5を径方向オーバーラップ状態でケース本体1内の同じ室内に接近配置し、インホイールモータユニットの軸線方向寸法を短縮することによりその搭載性を向上させる。
【0037】
その上で本実施例においては、減速歯車組5の潤滑と、入出力軸8,9間におけるベアリング17の潤滑と、入力軸8およびユニットケース3間におけるベアリング18の潤滑とを、以下のような潤滑制御装置により行うこととする。
【0038】
先ず図1に基づきそのための潤滑油路を説明するに、ユニットケース3内の下部に図1のごとく潤滑オイル31を貯留し、その下部に電動式のオイルポンプ32を設ける。
オイルポンプ32は吸入ポート32aおよび吐出ポート32bを有し、吸入ポート32aはオイルフィルタ33を経てユニットケース3内の下部におけるオイル31の貯留部に開口させる。
【0039】
なおオイル31の貯留量は、そのレベル31aが車両の振動や傾斜によっても吸入ポート32aよりも低くなることのないような量とし、車両の振動時や傾斜時もオイルポンプ32が吸入ポート32aからオイル31を吸入し得るようにし、
全てのインホイールモータ駆動車輪についてオイル31の貯留量は、インホイールモータユニット内下部の静的オイルレベル31aが同じになるようなものとする。
【0040】
リヤカバー2には、入力軸8に同心の円形オイルギャラリ34を形成し、このオイルギャラリ34にオイルポンプ32の吐出ポート32bを通じさせる。
オイルギャラリ34は、出力軸9から遠い入力軸8の端面およびベアリング18の端面と、これら両端面に対向するようリヤカバー2に嵌着したオイルキャップ35との間に画成して、リヤカバー2に形成する。
【0041】
出力軸9から遠い入力軸8の端面およびベアリング18の端面と、オイルキャップ35との間にオイルガイド38を介在させる。
このオイルガイド38は、図2(a),(b)に明示するごとく全体を円板状とし、その中心部にガイド筒38aを突設し、周辺部にガイド孔38bを穿設する。
【0042】
上記のオイルガイド38は、図1に示すように入力軸8の中心に設けた中空孔8aの対応端にガイド筒38aを挿入して設置し、中空孔8aの反対端を、入出力軸8,9の相互嵌合空所内に開口させる。
【0043】
キャリア15aには、径方向外方へ延在する径方向油孔42を設け、この径方向油孔42に整列させて入力軸8にも径方向油孔8bを設ける。
キャリア15aに設けた径方向油孔42の径方向外端は、ピニオンシャフト14の中心における中空孔43に通じさせる。
ピニオンシャフト14には更に、その中空孔43から径方向外方に延在するオイル噴出孔44を設け、該オイル噴出孔44から遠心力によりオイルを減速歯車組5の潤滑要求箇所へ供給し得るようになす。
【0044】
入力軸8には更に、その中空孔8aから、入出力軸8,9の相互嵌合部に介在させたベアリング17に向けて延在する径方向油孔8cを設け、ここからベアリング17へもオイルを供給し得るようにする。
【0045】
図1,2につき上述した潤滑油路の作用を以下に説明する。
インホイールモータユニットの作動中、ベアリング17,18および減速歯車組5の潤滑が必要である場合は、オイルポンプ32を駆動させる。
オイルポンプ32を駆動させると、インホイールモータユニットケース3内の下部における潤滑オイル31が図1の矢印で示すように、ポート32aを経て吸入され、ポート32bから吐出され、その後この吐出オイルはオイルギャラリ34に至る。
【0046】
インホイールモータユニットによる車輪16の回転駆動中は、ピニオンシャフト14の中空孔43およびオイル噴出孔44内のオイルが遠心力を受けて、図1に矢印で示すようにオイル噴出孔44から噴出され、減速歯車組5の潤滑要求箇所へ供給される。
かかる噴出孔44からのオイル噴出分は、図1に矢印で示すごとく、オイルギャラリ34からオイルガイド38のガイド筒38a、入力軸8の中空孔8a、径方向油孔8b、および径方向油孔42を経てピニオンシャフト中空孔43に向かうオイルにより補充され、減速歯車組5へのオイル供給を継続的に行うことができる。
【0047】
オイルギャラリ34内の貯留オイルは他方で、オイルガイド38に設けた周辺部ガイド孔38bを通過して、図1に矢印で示すごとくベアリング18に向かい、当該ベアリング18の潤滑に供される。
オイルギャラリ34からオイルガイド38のガイド筒38aを経て入力軸8の中空孔8aに達したオイルは同時に、図1に矢印で示すごとく径方向油孔8cを経て、入出力軸8,9間のベアリング17に達し、当該ベアリング17の潤滑にも供される。
【0048】
ところで減速歯車組5は、機械要素であるため伝動中に金属粉が発生し、この金属粉は、上記のごとく循環しているオイル中に混入する。
かように金属粉が混入したオイルは、ポンプ32から入力軸中空孔8a、減速歯車組5、電動モータ4を経てハウジング3内の下部オイル溜まりに至り、再びポンプ32により吸入されて循環する。
【0049】
この循環中、オイル内に混入した金属粉は、一部が電動モータ4内の永久磁石に吸着され、時間の経過とともに電動モータ4への金属粉付着量が増大する。
かように電動モータ4への金属粉付着量が増大すると、電動モータ4の性能低下を招き、インホイールモータ式電気自動車の動力性能が低下する。
【0050】
図1のインホイールモータユニットには、この問題解決のため、以下のような対策を施す。
オイル溜まりに浸漬したステータ6の下部6aが嵌合するハウジング内周面3aに軸線方向溝47を設け、軸線方向溝47の両端47a,47bをそれぞれ、電動モータ4の軸線方向両側における空間45,46に開口させ、
減速歯車組5が位置する側のハウジング空間45と反対側におけるハウジング空間46との間におけるオイル31の往来が、ほとんど軸線方向溝47を経て行われるようにする。
【0051】
また、減速歯車組5が位置する側のハウジング空間45に近い軸線方向溝47の開口端47aに接近させてハウジング3内に永久磁石48を固設する。
なおステータ6は、少なくとも下部6aを、オイルが浸透しないようモールド成形するのが良い。
【0052】
かくして、オイルが減速歯車組5を通過するときに混入した金属粉を、減速機収納空間45内のオイル溜まりから軸線方向溝47の開口端47aに入るときに永久磁石37で吸着して、オイル内から除去することができる。
これにより、電動モータ4に金属粉が付着するのを防止することができ、金属粉の付着で電動モータ4が性能を低下されて、インホイールモータ式電気自動車の動力性能が低下するという上記の問題を回避することができる。
【0053】
<インホイールモータユニットの潤滑制御>
インホイールモータユニット(減速歯車組5およびベアリング17,18)の前記潤滑に際し、図1のオイルポンプコントローラ51はオイルポンプ32の駆動制御を介し、以下のごとくに当該潤滑を制御する。
【0054】
そのためオイルポンプコントローラ51には、潤滑オイル31の油温Tempを検出する油温センサ52からの信号と、車速VSPを検出する車速センサ53からの信号と、車両の要求駆動トルクTdを演算する要求駆動トルク演算部54からの信号と、オイルポンプ32が停止状態である間における車両走行距離Lを計測する走行距離計55からの信号とをそれぞれ入力する。
【0055】
なお要求駆動トルク演算部54は、運転者が操作するアクセル開度と、車速VSPなどの回転速度情報とから、周知の演算により要求駆動トルクTdを演算することができる。
また走行距離計55は、停車時に0にリセットされ、オイルポンプ停止状態での車両走行距離を積算して上記の走行距離Lを計測することができる。
【0056】
オイルポンプコントローラ51は、上記の入力情報をもとに図3の制御プログラムを実行して、オイルポンプ32によるオイル吸送量が図4に例示するようなものとなるよう、オイルポンプ32を駆動制御する。
【0057】
図3のステップS11においては、車速VSPが図4の設定車速VSP1以上か否かをチェックする。
この設定車速VSP1は、ロータ7が大径であるため図1にDで示すごとくオイル31中に浸漬しているロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベル(殆ど無視できるようなレベル)を超える高車速域の下限車速(例えば30km/h)である。
この高車速域においては、左右輪間でインホイールモータユニットケース内下部のオイルレベル31aが異なっていると、左右輪間でロータ7のオイル浸漬量D、つまりロータ7へのオイル攪拌抵抗が大きく違って、左右輪間に大きな駆動力差を発生させ、車両の走行安定性が悪化するという問題を生ずる。
【0058】
図5により付言するに、この図5は、設定車速VSP1以上の或る車速VSPのもと無負荷状態で、ロータ7のオイル浸漬量Dに応じてインホイールモータユニット内の油温Tempが如何様に変化するかを示した特性図である。
ロータ7のオイル浸漬量Dが大きいほど、油温Tempの時間変化割合が急であり、このことは、ロータ7のオイル浸漬量Dが大きいほど、ロータ7へのオイル攪拌抵抗が大きくなって、動力損失による車輪駆動力低下が激しいことを意味する。
【0059】
従って、ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速域(VSP≧VSP1)では、左右インホイールモータユニットのオイルレベル31aが異なっていると、左右輪間におけるロータ7のオイル浸漬量Dが違うことに起因したロータ7へのオイル攪拌抵抗差が大きくなって、左右輪間に大きな駆動力差を発生させ、車両の走行安定性が悪化するという問題を生ずる。
【0060】
そこで本実施例においては、ステップS11において車速VSPが設定車速VSP1以上であると判定する場合、図3のステップS12において、左右インホイールモータユニットのオイルポンプ32をそれぞれ、オイル吸送量Qがともに図4の一定流量Qconstに保たれるように駆動制御する。
従ってステップS12は、本発明におけるオイルポンプ駆動制御手段に相当する。
【0061】
この駆動制御に当たってオイルポンプコントローラ51は、オイルポンプ32の同じ回転速度のもとでも、そのオイル吸送量Qが油温Tempに応じて異なるため、この特性を考慮した例えば図6の一定流量(Qconst)実現特性を基に油温Tempからオイルポンプ目標回転数Nopを求めて、これを図1のごとくオイルポンプ32へ指令し、オイルポンプ32がこの目標回転数Nopとなるよう駆動制御する。
かかる駆動制御によれば、如何なる油温Tempのもとでも、オイルポンプ32はオイルポンプ吸送量Qを、高車速域(VSP≧VSP1)での図4に示す一定流量Qconstに制御することができる。
【0062】
そして上記の一定流量Qconstは、インホイールモータユニット内の減速歯車組5を潤滑するのに必要な最小限のユニット必要油量とし、例えばこのユニット必要油量が最も多くなる車速時の油量に設定する。
【0063】
左右インホイールモータユニットのオイルポンプ32によるオイル吸送量Qがともに上記の一定流量Qconstに保たれるようオイルポンプ32を駆動制御する場合、
前記した通り左右インホイールモータユニット内下部の静的オイルレベル31aが同じであることによって、オイルポンプ32の作動中も左右インホイールモータユニット内下部のオイルレベル31aが同じにされ続けることとなる。
【0064】
かようにオイルポンプ32の作動中も左右インホイールモータユニット内下部のオイルレベル31aが同じに保たれることにより、ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速域(VSP≧VSP1)であっても、左右インホイールモータユニット内におけるロータ7へのオイル攪拌抵抗が同じに保たれ、左右輪間に駆動力差を発生させることがなくて、車両の走行安定性が悪化するという上記の問題を回避することができる。
【0065】
しかも、図4における上記の一定流量Qconstをインホイールモータユニット内の減速歯車組5を潤滑するのに必要な最小限のユニット必要油量としたため、減速歯車組5を最小限のオイル(最小限のポンプ消費電力)で要求通りに潤滑しつつ、上記の問題解決を実現することができる。
【0066】
図3のステップS11において(VSP<VSP1)の低車速域であると判定する場合、制御を、本発明におけるオイルポンプ駆動制御手段に相当するステップS13に進め、オイルポンプ32を以下のように可変流量制御する。
その理由は、低車速域(VSP<VSP1)である場合、ロータ7の回転速度が遅く、オイル攪拌抵抗が許容レベル以下であって、上記の走行安定性に関する問題を生ずることがないと共に、潤滑要求度が低くて、電費の節約およびオイルポンプ騒音の観点からもオイルポンプ32の作動をできるだけ避けたいためである。
【0067】
ちなみにオイルポンプ32は、遮音対策が可能な車体内方に位置するものでなく、車外にむき出しにされているインホイールモータユニットに設置するため、遮音対策が不能であり、
特に、インホイールモータ駆動車両が無音走行状態となる低車速域(VSP<VSP1)では、オイルポンプ32の作動音が、乗員はもとより車外周辺の人にも、違和感のある騒音となるため、オイルポンプ32の回転数を可能な限り低くしたり、オイルポンプ32を可能な限り非作動状態にするのが好ましく、電費節約の観点からも、そのようにするのが良い。
【0068】
そのため、ステップS13で実行する低車速域(VSP<VSP1)におけるオイルポンプ32の可変流量制御に当たっては、
要求駆動トルクTdが0であり、且つ、オイルポンプ停止状態での走行距離Lが0である場合、図4の低車速域(VSP<VSP1)における実線特性(基本特性)で示すように、車速VSPがオイルポンプ起動車速VSP0に上昇するまでは、オイルポンプ32によるオイル吸送量Qを0にしてオイルポンプ32を停止状態にしておき、
車速VSPがオイルポンプ起動車速VSP0から上昇して前記の設定車速VSP1に達するまでの間に、オイルポンプ32を、オイル吸送量Qが0から前記の一定流量Qconstまで二次曲線的に増大するよう駆動制御する。
【0069】
この駆動制御に際してもオイルポンプコントローラ51は、上記のごとく0から一定流量Qconstまでの間で変化するオイル吸送量Qを実現するためのオイルポンプ目標回転数Nopを、図6につき前述したと同様な考え方により油温Tempに応じ求めて、これを図1のごとくオイルポンプ32へ指令する。
かかる駆動制御によれば、如何なる油温Tempのもとでも、オイルポンプ32はオイルポンプ吸送量Qを、低車速域(VSP<VSP1)での図4に実線で示す特性に沿うよう制御することができる。
【0070】
ここでオイルポンプ起動車速VSP0は、インホイールモータユニットによる車輪駆動の開始によって、オイルギャラリ34からオイル噴出孔44までの潤滑油路内に貯まっていた残留オイルが遠心力で噴出され始め、この残留オイルが全て無くなるときの車速、若しくは残留オイルが所定量未満になるときの車速とする。
その理由は、このように定めたオイルポンプ起動車速VSP0に達した後もオイルポンプ32を停止させたままにすると、減速歯車組5へ潤滑オイルが一時的に供給されないこととなり、減速歯車組5が一時的な潤滑不良により損傷されるためである。
【0071】
しかして、要求駆動トルクTdが0よりも大きくなると、減速歯車組5の要求潤滑油量が多くなり、オイルポンプ起動車速VSP0は図4に波線特性で示すごとくに低下させて、早期にオイルポンプ32を起動させる必要がある。
例えば登坂路で電動モータ4のトルクにより停車させておく所謂「ヒルホールド」時は、車速VSPが0であっても、減速歯車組5がトルク伝達状態であるため、これを潤滑する必要があり、車速VSPが0の停車状態であっても減速歯車組5の要求潤滑油量は図4にQoで例示するごときものとなる。
【0072】
そこで本実施例においては、図4にΔVSP0で示したオイルポンプ起動車速VSP0の低下代に関するマップとして、要求駆動トルクTdの積分値ΣTdの増大に応じ、例えば図7に示すごとくに大きくなるオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0に関したマップを、実験などにより予め求め、用意しておく。
なお、オイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0は、最大値αが図4から明らかなようにVSP0であり、図7のマップは、要求駆動トルクTdの積分値ΣTdが或る値ΣTdm以上であるとき、ΔVSP0=αによりオイルポンプ起動車速VSP0を0となし、停車状態からオイルポンプ32を駆動して、例えば上記したヒルホールド時の要求を満足させ得ることを意味する。
【0073】
オイルポンプコントローラ51は、低車速域(VSP<VSP1)で図3のステップS13を実行するに際し、
要求駆動トルクTdの積分値ΣTdが0である場合は、前記した制御によりオイルポンプ32を、オイル吸送量Qが図4の実線特性によって変化するよう駆動制御するが、
要求駆動トルクTdの積分値ΣTdが0を超えたら、図7のマップから要求駆動トルクTdの積分値ΣTdに応じたオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0を求め、(VSP0−ΔVSP0)をオイルポンプ起動車速とする、図4に波線で例示したようなオイル吸送量Qの変化特性が達成されるようにオイルポンプ32を駆動制御する。
【0074】
一方で、オイルポンプ停止状態での走行距離Lが車両の発進により0よりも大きくなると、前記残留オイル量が遠心力による噴出で低下されることから、オイルポンプ起動車速VSP0を図4に波線特性で示すごとくに低下させて、早期にオイルポンプ32を起動させる必要がある。
【0075】
そこで本実施例においては、オイルポンプ停止状態での走行距離Lの増大に応じ、例えば図8に示すごとくに大きくなるオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0に関したマップを、実験などにより予め求め、用意しておく。
なお図8のマップは、オイルポンプ停止状態での走行距離Lが或る値Lm以上であるとき、ΔVSP0=αによりオイルポンプ起動車速VSP0を0となし、停車状態からオイルポンプ32を駆動して、L≧Lmにより前記の残留オイルが無くなっていたり、所定量未満であるのにもかかわらず、オイルポンプ32の非作動期間が発生して潤滑不良の事態が発生することのないようにする。
【0076】
そしてオイルポンプコントローラ51は、低車速域(VSP<VSP1)で図3のステップS13を実行するに際し、
オイルポンプ停止状態での走行距離Lが0である場合は、前記した制御によりオイルポンプ32を、オイル吸送量Qが図4の実線特性によって変化するよう駆動制御するが、
オイルポンプ停止状態での走行距離Lが0を超えたら、図8のマップからオイルポンプ停止状態での走行距離Lに応じたオイルポンプ起動車速VSP0の低下代ΔVSP0を求め、(VSP0−ΔVSP0)をオイルポンプ起動車速とするがごとき、図4に波線で例示したようなオイル吸送量Qの変化特性が達成されるようオイルポンプ32を駆動制御する。
【0077】
<実施例の効果>
上記した本実施例の構成になるインホイールモータユニットの潤滑制御にあっては、
ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速域(VSP≧VSP1)で、左右インホイールモータユニットのオイルポンプ32をそれぞれ、オイル吸送量Qがともに図4の一定流量Qconstに保たれるよう駆動制御するため、
左右インホイールモータユニット内下部の静的オイルレベル31aが同じであることによって、オイルポンプ32の作動中も左右インホイールモータユニット内下部のオイルレベル31aが同じにされ続けることとなる。
【0078】
従って、ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速域(VSP≧VSP1)であっても、左右インホイールモータユニット内におけるロータ7へのオイル攪拌抵抗が同じに保たれ、左右輪間に駆動力差を発生させることがなくて、車両の走行安定性が悪化するという問題を回避することができる。
そしてこの効果を、オイルポンプ32の単純な一定流量制御により達成するため、コスト上も益するところ大なるものである。
【0079】
しかも、図4における上記の一定流量Qconstをインホイールモータユニット内の減速歯車組5を潤滑するのに必要な最小限のユニット必要油量としたため、減速歯車組5を最小限のオイル(最小限のポンプ消費電力)で要求通りに潤滑しつつ、上記の問題解決を実現することができる。
【0080】
更に、上記オイルポンプ32の駆動制御に際し、図6に例示したオイルポンプ32の一定流量(Qconst)実現特性を基に油温Tempからオイルポンプ目標回転数Nopを求め、オイルポンプ32がこの目標回転数Nopとなるよう駆動制御するため、
如何なる油温Tempのもとでも、オイルポンプ32はオイルポンプ吸送量Qを、高車速域(VSP≧VSP1)での図4に示す一定流量Qconstに制御することができ、上記の効果を確実に奏し得る。
【0081】
また本実施例おいては、上記オイルポンプ32の一定流量制御を、ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベルを超え、発明解決課題である「走行安定性の問題」を生ずる高車速域(VSP≧VSP1)のみに実行し、
ロータ7へのオイル攪拌抵抗が許容レベル未満であって、「走行安定性の問題」を生ずることのないと共に減速歯車組5の潤滑要求度が低い低車速域(VSP<VSP1)においては、オイルポンプ32を、オイル吸送量Qが図4に示すごとく一定流量Qconstよりも少なく、且つ車速VSPが低いほど少ないオイル吸送量となるよう、可変流量制御するため、以下の効果を得ることができる。
【0082】
つまり、かかる低車速域(VSP<VSP1)、特に停車を含むVSP<VSP0の極車速領域においては、インホイールモータ駆動車両が無音走行状態であることから、オイルポンプ32の作動音が、乗員にとっても、車外周辺の人にとっても、違和感のある騒音となるため、オイルポンプ32の回転数を可能な限り低くしたり、オイルポンプ32をできれば非作動状態にするのが好ましく、電費節約の観点からも、そのようにするのが良い。
【0083】
本実施例では、上記の低車速域(VSP<VSP1)でオイルポンプ32を、オイル吸送量Qが図4に示すごとく一定流量Qconstよりも少なく、且つ車速VSPが低いほど少ないオイル吸送量となるよう、可変流量制御するため、上記の要求を実現することができる。
特に停車を含むVSP<VSP0の極車速領域においては、潤滑の観点から作動が不要である間、オイルポンプ32を停止させるようにしたため、オイルポンプ32の作動音が「騒音」となるのを防止することができると共に、オイルポンプ32の消費電力が不要な作動で多くなるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 ケース本体
2 リヤカバー
3 インホイールモータユニットケース
4 電動モータ
5 減速歯車組
6 ステータ
7 ロータ
8 入力軸
9 出力軸
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 段付きプラネタリピニオン
14 ピニオンシャフト
15a,15b キャリア
16 車輪
17,18,19 ベアリング
20 端蓋
21 ホイールハブ
22 シールアダプタ
26 ホイールボルト
27 ホイールナット
31 潤滑オイル
31a オイルレベル
32 オイルポンプ
32a 吸入ポート
32b 吐出ポート
33 オイルフィルタ
34 オイルギャラリ
35 オイルキャップ
38 オイルガイド
38a ガイド筒
38b ガイド孔
42 径方向油孔
43 中空孔
44 オイル噴出孔
51 オイルポンプコントローラ
52 油温センサ
53 車速センサ
54 要求駆動トルク演算部
55 走行距離計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左右一対の車輪を、個々のインホイールモータユニットにより駆動して走行可能なインホイールモータ駆動車両に用いられ、
左右で対をなす前記インホイールモータユニット内を、個々のオイルポンプがインホイールモータユニットケース内下部から吸送したオイルにより潤滑するインホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプを、該オイルポンプからのオイル吸送量が前記左右インホイールモータユニットのケース内下部におけるオイルレベルを同じとなす一定量に保たれるよう駆動制御するオイルポンプ駆動制御手段を設けたことを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイル吸送量に関した一定量は、前記インホイールモータユニット内の潤滑に必要な最小限のオイル量であることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプ駆動制御手段は前記オイルポンプを、オイル吸送量が温度変化に係わらず前記一定量に保たれるよう、オイル温度に応じて駆動制御するものであることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項4】
前記左右インホイールモータユニットのケース内下部にそれぞれ、同じオイルレベルのオイルが貯留されたインホイールモータ駆動車両に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプ駆動制御手段は、左右で対をなす前記オイルポンプによるオイル吸送量が同じになるよう、これらオイルポンプを駆動制御するものであることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプ駆動制御手段は、前記インホイールモータユニットケース内下部のオイルによる攪拌抵抗が許容レベルを超える高車速領域で、前記オイルポンプの駆動制御を遂行するものであることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプ駆動制御手段は、前記高車速領域よりも低車速領域において、前記オイル吸送量が前記一定量よりも少なくなるよう前記オイルポンプを駆動制御するものであることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載された車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置において、
前記オイルポンプ駆動制御手段は、前記低車速領域において低車速ほど前記オイル吸送量が少なくなるよう、前記オイルポンプを駆動制御するものであることを特徴とする車両用インホイールモータユニットの潤滑制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229795(P2012−229795A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201798(P2011−201798)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】