説明

車両用エンジンアセンブリ

本発明は車両用エンジンアセンブリに関し、本エンジンアセンブリは、エンジンに接続されるタイロッド(2)と、車両シャーシに取り付けられるサスペンション手段(3)と、エンジンに固定される中間手段(4)であって、タイロッド(2)及びサスペンション手段(3)の取り付け先となる中間手段とを備え、コネクタ手段(4)によってタイロッド(2)がサスペンション手段(3)から物理的に分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、自動車のような車両のエンジンのサスペンションの分野に関し、特に車体へのエンジンの取り付けに関する。
【0002】
車体から振り子のようにエンジンを吊るす公知の設計によれば、車体へのエンジンの取り付けポイントが2つある。即ち前部右サスペンション及び前部左サスペンションである。大きなトルクを発生するエンジンでは、多くの場合、2つの連結ロッドを用いてトルクに対処する必要があり、一般に下部連結ロッドはパワープラントの重心の近くに位置し、上部連結ロッドは前部右サスペンションの近くに位置する。
現時点では、上部連結ロッドはエンジンの前部右サスペンションに固定されている。この種の取り付けは、上部連結ロッドを受け入れるために、エンジンパーツを設計し直し、それに伴って右サスペンションに簡単な変更を加える必要を回避することができる。
【0003】
この設計にの一つの欠点は、前部右サスペンション、エンジン、及び上部連結ロッドにより構成されるアセンブリが非常に大きな質量を有する単一アセンブリになることである。このアセンブリは、キャビン内部の音響特性に悪影響を及ぼす周波数帯においてアセンブリ固有の自然変形モードを生成する。
【0004】
図1は、現在使用されているエンジンアセンブリ10の一実施例を示す。このエンジンアセンブリ10は、エンジンシリンダヘッド1及びシリンダブロック5を備える。エンジンサスペンション手段3はねじれロッド2とともに同じパーツ8によって支持されており、このパーツ8自体はエンジン端部でエンジン支持部4に固定されている。
アセンブリ10は、非常に大きな質量を有し、且つエンジンの軸から大きくずれているので、非常に大きな振動を生成し、この振動が車体に直接伝わり、キャビンに伝わって中周波数(通常、300〜600Hz)騒音が発生する。
【0005】
この状態を改善するために、本発明は、第1の態様において、エンジンの機構に接続される連結ロッドと、車両の車体に固定されるサスペンション手段と、エンジンに固定され、且つ連結ロッド及びサスペンション手段の取り付け先となる中間手段とを備え、中間手段がサスペンション手段との接続から連結ロッドを物理的に分離するように構成されていることを特徴とする車両用エンジンアセンブリを提案する。
従って、特に、連結ロッドとサスペンション手段の間の荷重の伝達を最小化することができる。
【0006】
本発明の他の特徴は次の通りである。
−中間手段の表面は窪んでおり、この窪んだ表面の上に連結ロッドが取り付けられる。
−中間手段は、連結ロッドの旋回ピンを収容する延長部分を含む。
−中間手段は、連結ロッドによって伝達される荷重に対処する溝を有する;
−中間手段はエンジンブロックに固定されるパーツである。
−中間手段はエンジンブロックに固定されるアルミニウムパーツである。
−前記パーツは、連結ロッドから伝わる荷重を弱めるのに十分な硬度を持つ材料により作製される。
−連結ロッドはねじれロッドである。
−連結ロッドはエンジンの上方に取り付けられる連結ロッドである。
−連結ロッドを中間手段に固定するために使用される旋回ピンはエンジンの軸にほぼ平行である。
−サスペンション手段は、車体に固定される減衰手段及びアームを含み、アームは減衰手段から、アームの固定先である中間手段まで延びる。
【0007】
第2の態様では、本発明は、このようなエンジンアセンブリを備える車両を提案する。
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、純粋に例示を目的とし、本発明を制限しない後述の説明を、添付図面と関連付けながら一読することにより明らかになる。
【実施例】
【0008】
例えばパワープラント型のエンジンアセンブリの各コンポーネントは、固有の自然変形モード、特にエンジンを車体から吊るす要素を有する。エンジンが作動しているとき、これらの自然モードはエンジンの高調波による影響を受け、振動の原因となる。エンジンサスペンションでは、振動は車体に直接伝わり、キャビン内の騒音の原因となる。車両の音響特性を改善するために、この振動を小さくすることが必要である。
ここに提案する一解決法では、ねじれロッドからエンジンサスペンションが物理的に分離され、それらのモードが分離するので、各系は自然モード同士が相互作用することなく個別に振動することができる。
【0009】
このために、図2及び3に示すように、本発明によるエンジンアセンブリは:
・エンジン5に取り付けることができる連結ロッド2、可能であればねじれロッド、
・車両の車体に固定することができるサスペンション手段3、及び
・エンジン5に固定され、且つ連結ロッド2及びサスペンション手段3の取り付け先となる中間手段又はパーツ4
を備える。
本明細書の残りの部分では、連結ロッド2を上部連結ロッド、即ちエンジンが車両の正規の場所に位置するときにエンジン5の上方に位置するロッドと考える。ここでは、このようにして、シリンダブロック5の上方でエンジンのシリンダヘッド1に連結ロッド2が取り付けられる。しかしながら、当業者であれば、このエンジンアセンブリは、明白且つ直接的な方法により、下部位置又は中間位置に取り付けられる連結ロッド2を備えることもできることが分かるであろう。
【0010】
連結ロッド2の旋回ピン20は、荷重に効果的に対処できるという理由により、エンジンの軸にほぼ平行であると有利である。従って、オーバーハング質量が小さくなり、伝わる振動がそれに従って小さくなる。連結ロッド2は中間手段4を介してシリンダヘッド1に取り付けられる。
中間手段4は、エンジン(この場合、シリンダヘッド5)と一体形成されるか、又はエンジンに固定される中間パーツ4として形成される。
【0011】
図2及び3は、中間パーツ4が、当業者に公知のネジ又は他の固定手段7によってエンジンに固定される場合を示している。
中間パーツ4は、連結ロッド2の取り付け先となる。従って、中間パーツ4は、連結ロッド2の固定先である旋回ピン20の取り付け先となる領域まで延びる延長部分4Aを含むことができる。中間手段又はパーツ4の構造は、連結ロッド2が取り付けられる窪んだ表面9も含むことができる。従って、この窪んだ表面9は、連結ロッド2の少なくとも一部を収容する空洞を画定するので、エンジンが占有する空間を小さくすることができる。
【0012】
中間パーツ4はまた、有利には、連結ロッド2からの荷重を吸収するのに十分な剛性を有するよう選択される。溝(図示せず)を追加して硬度を高めることにより、特にエンジントルクが大きくなるときに、連結ロッド2から伝達される荷重に対処できる。
中間パーツ4をアルミニウムから作製することを選択することができる。
【0013】
従って、連結ロッド2は、適切なねじ山を有する旋回ピン20を中間パーツ4の厚み方向にねじ込むことにより、最初に取り付けることができる。
本発明によるエンジンアセンブリのサスペンション手段3は、車両の車体に固定される。サスペンション手段は、車体に固定される減衰手段3Aと、この減衰手段3Aから取り付け先である中間パーツ4に延びるアーム3Bとを含む。アーム3Bは、例えばネジ6を使用して中間パーツ4に取り付けることができる。
【0014】
従って、サスペンション手段3と連結ロッド2は物理的に別々に設けられ、これらの部品の自然変形モードが分離される。
更に、このように分離されていることにより、これらの自然モードの振動周波数が高まり、従ってエンジンマウントのようなフィルタ要素によって良好にフィルタリングされる周波数帯に分布する。
【0015】
エンジンアセンブリは、例えばパワープラントとすることができ、車体から振り子方式で吊るされる。
次に、連結ロッド2が当該ロッドの旋回ピン20に固定される。
【0016】
従来の構成と比較すると、本発明によって特に、連結ロッド2をエンジンサスペンション手段3から分離することができ、それにより特に以下の利点が得られる。
−サスペンション手段3から連結ロッド2が物理的に分離されていることにより、上部連結ロッドとサスペンションとは、相互作用することなく、且つモードの移動に伴う質量が小さいために連結ロッド2がサスペンション手段3に機械的に接続される構成の系より高い周波数で、個別のモードを持つ。従って、これらのモードは、エンジン始動高調波より高い周波数で伝達される。従って、振動変形の影響が低減する。
−連結ロッド2とサスペンション手段3が物理的に分離されているので、車体に入力されるこれらの2つの部品の地点での荷重は、例えばこれらの部品それぞれのエンジンマウントによって個別にフィルタリングすることができる。
−連結ロッド2は旋回ピン20及び中間手段4を介してエンジンに固定されるので、動的増幅率が連結ロッドの自然モードに与える影響を小さくすることができる。
−連結ロッド2の旋回ピン20がエンジン5の軸にほぼ平行であるので、エンジンの軸と連結ロッド2の間のオーバーハングが小さくなり、従ってこの連結ロッドにおける振動の振幅が更に小さくなる。
−支持されない質量を小さくすることにより、エンジンサスペンションの振動も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】公知のエンジンアセンブリの立体図である。
【図2】本発明によるエンジンアセンブリの立体図である。
【図3】図2によるエンジンアセンブリの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続される連結ロッド(2)と、車両の車体に固定されるサスペンション手段(3)と、エンジンに固定される中間手段(4)であって、連結ロッド(2)及びサスペンション手段(3)の取り付け先となる中間手段とを備え、中間手段(4)により連結ロッド(2)がサスペンション手段(3)から物理的に分離されることを特徴とする、車両エンジンアセンブリ。
【請求項2】
中間手段(4)が窪んだ表面(9)を有し、この窪んだ表面に連結ロッド(2)が取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項3】
中間手段(4)が、連結ロッド(2)の旋回ピン(20)を収容する延長部分(4A)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項4】
中間手段(4)が、連結ロッド(2)によって伝達される荷重に対処する溝を有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項5】
中間手段(4)が、エンジンブロックに固定されるパーツであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項6】
中間手段(4)が、エンジンブロックに固定されるアルミニウムパーツであることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項7】
前記パーツが、連結ロッド(2)からの荷重を弱めるのに十分な硬度を有する材料により作製されることを特徴とする、請求項5又は6に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項8】
連結ロッド(2)がねじれロッドであることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項9】
連結ロッド(2)が、エンジンの上方に取り付けられる連結ロッドであることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項10】
連結ロッド(2)を中間手段(4)に固定するために使用される旋回ピン(20)が、エンジンの軸にほぼ平行であることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項11】
サスペンション手段(3)が、アーム(3B)と、車体に固定される減衰手段(3A)とを含み、アーム(3B)は減衰手段(3A)から、アーム(3B)の固定先である中間手段(4)まで延びることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のエンジンアセンブリを備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−537712(P2008−537712A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505935(P2008−505935)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050315
【国際公開番号】WO2006/108982
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】