車両用シート
【課題】 摺動構造のヘッドレスト駆動機構の摺動性を確保でき、かつ、衝突時に頭部拘束性が低下することを防止できる車両用シートを提供する。
【解決手段】 シートバック12は、ヘッドレスト13のステ−15を挿入するサポートブラケット60と、サポートブラケット60を上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケット65と、ヘッドレスト駆動機構67などを有している。ヘッドレスト駆動機構67は、受圧部材75が後方に移動したときサポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くようにサポートブラケット60を駆動する。摺動ガイドブラケット65に押圧部70と横方向規制部71が設けられている。押圧部70は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢する。
【解決手段】 シートバック12は、ヘッドレスト13のステ−15を挿入するサポートブラケット60と、サポートブラケット60を上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケット65と、ヘッドレスト駆動機構67などを有している。ヘッドレスト駆動機構67は、受圧部材75が後方に移動したときサポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くようにサポートブラケット60を駆動する。摺動ガイドブラケット65に押圧部70と横方向規制部71が設けられている。押圧部70は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドレストを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の追突時等に乗員の頭部を拘束するために、ヘッドレストを前方に移動させる可動ヘッドレスト装置が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されているように、ヘッドレストのステ−の下部にガイドピンを設け、このガイドピンを上下方向に延びる長孔に沿って移動可能としたヘッドレスト駆動機構が知られている。この従来例では、衝突時の乗員の慣性荷重によって受動部材を作動させ、前記ガイドピンが前記長孔に沿って上方に移動することにより、ヘッドレストが前方に傾きながら上方に移動するようにしている。(下記特許文献1参照)
また、下記特許文献2に記載されているように、パッドの背部に受圧部材を設け、衝突時に受圧部材を介してアーマチュアパイプを押し上げる構造のヘッドレスト駆動機構が知られている。この従来例では、衝突時にアーマチュアパイプの上下方向中間部のピンが長孔に沿って前上方に移動することにより、ヘッドレストが前方に傾きながら上方に移動するようにしている。(下記特許文献2参照)
【特許文献1】特開2001−163099号公報
【特許文献2】特開2000−210155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1,2のヘッドレスト駆動機構では、長孔に沿ってピンが摺動することによってヘッドレストが作動する構造となっている。このような摺動構造では、ピンと長孔との摺動性を確保するために、ピンと長孔との間に比較的大きなクリアランスを設定する必要がある。このクリアランスによってヘッドレストががたつき、衝突時に乗員頭部の拘束性が低下する原因となる。
【0004】
従って本発明の目的は、摺動構造のヘッドレスト駆動機構の摺動性を確保でき、かつ、衝突時に頭部拘束性が低下することを防止できる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用シートは、シートバックフレームを有するシートバックと、該シートバックの上部に設けるヘッドレスト本体および該ヘッドレスト本体の下方に延びるステ−を有するヘッドレストと、前記ヘッドレストのステ−を挿入するサポートブラケットであって、その背面が前記シートバックフレームのアッパフレーム部材に当接するサポートブラケットと、前記シートバックフレームに設けられ、前記サポートブラケットを上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケットと、前記シートバックに設けられ、乗員によって押されたとき後方に移動する受圧部材と、前記受圧部材が後方に移動したとき前記サポートブラケットが基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くように駆動するヘッドレスト駆動機構と、前記摺動ガイドブラケットに設けられ、前記サポートブラケットを前記アッパフレーム部材に向けて付勢する押圧部とを具備している。
【0006】
本発明の好ましい形態では、前記アッパフレーム部材は、前記サポートブラケットが前記基準位置にあるとき該サポートブラケットに接する第1の接点と、前記サポートブラケットが前記上昇位置に移動したとき該サポートブラケットに接する第2の接点とを有し、これら第1および第2の接点間の領域に向けて、前記押圧部が前記サポートブラケットを付勢するとよい。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記摺動ガイドブラケットに、前記サポートブラケットの側面に接触可能な横方向規制部が設けられているとよい。
【0008】
例えば前記押圧部と前記横方向規制部は、合成樹脂によって一体に成形されている。あるいは前記押圧部と前記横方向規制部は、ばね性を有する1枚の金属板を成形してなる。あるいは前記押圧部と前記横方向規制部は、ばね性を有する1本の金属ワイヤを成形してなる。前記押圧部がコイルばねからなり、前記横方向規制部が前記摺動ガイドブラケットの側壁の内面に突設された凸部からなるものであってもよい。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記サポートブラケットと前記アッパフレーム部材とが互いに接触する部位に、金属よりも摩擦係数の小さいコーティング層が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摺動構造のヘッドレスト駆動機構を有する車両用シートにおいて、ヘッドレスト駆動機構の摺動性を確保できるとともに、ヘッドレストががたつくことを防止でき、衝突時に頭部の拘束性が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1は車両用シート10を示している。車両用シート10は、座部11と、シートバック12と、ヘッドレスト13を備えている。ヘッドレスト13は、シートバック12の上部に設けるヘッドレスト本体14と、ヘッドレスト本体14の下方に延びる左右一対のステ−15を有している。
【0012】
図2と図3はシートバック12の内部を示している。シートバック12は、シートバックフレーム20と、ばねアッセンブリ21と、ばねアッセンブリ21を覆うように配置されるパッド部材22(図3に2点鎖線で示す)と、パッド部材22の外面を覆うカバー部材23(図1に示す)などを有している。
【0013】
シートバックフレーム20は、左右一対のサイドフレーム部材30,31と、上側に位置するアッパフレーム部材32と、下側に位置するロアフレーム部材33などによって構成されている。サイドフレーム部材30,31とロアフレーム部材33は、金属板をプレス加工することにより、所定の形状に成形されている。アッパフレーム部材32は、例えば断面が円形のパイプからなり、その両端がサイドフレーム部材30,31の上部に溶接されている。ロアフレーム部材33の両端はサイドフレーム部材30,31の下部に溶接されている。
【0014】
ばねアッセンブリ21の一例は、平面ばね35と、複数の引張りばね36などによって構成されている。平面ばね35は、上下方向に延びる複数本の縦ワイヤ37と、水平方向に延びる横ワイヤ38によって構成されている。平面ばね35の両側部が、引張りばね36によって、サイドフレーム部材30,31に支持されている。
【0015】
図2に示すように、シートバック12の内部に2系統のケーブル41,42が配置されている。図3は、一方のケーブル41を代表して示している。これらのケーブル41,42は、それぞれ、アウタチューブ43と、アウタチューブ43に挿入されたワイヤ44とを有している。ケーブル41,42の長手方向中間部は、リテーナ45(図3に示す)によって、例えばアッパフレーム部材32に支持されている。
【0016】
ワイヤ44は線条体の一例である。図2と図3に示すように、アウタチューブ43は、一端43aと他端43bを有している。ワイヤ44も一端44aと他端44bを有している。
【0017】
図2〜図4に示すように、シートバックフレーム20のアッパフレーム部材32の両端部に、それぞれ、ガイド孔50を有する長孔ブラケット51が設けられている。ガイド孔50は、その一端50aが他端50bよりも下方に位置するよう傾斜した形状をなし、斜め上下方向におおむね直線状に延びている。これら一対の長孔ブラケット51間にサブフレーム55が設けられている。
【0018】
サブフレーム55は、水平方向に延びる横架部56と、横架部56の両端に形成された一対の腕部57とを備えている。腕部57は、横架部56の両端から斜め下前方に延びている。各腕部57の端部にスライド部材(例えばスライドピン)58が設けられている。スライド部材58は、長孔ブラケット51のガイド孔50に挿入されている。スライド部材58は、ガイド孔50に沿って、ガイド孔50の一端50aと他端50bとにわたって上下方向(ガイド孔の長手方向)に移動できるよう、ガイド孔50に係合している。
【0019】
長孔ブラケット51は、ガイド孔50の長手方向に沿うガイド面50cを有している。このガイド面50cは、ガイド孔50の前側の内面壁を構成するものであり、スライド部材58がガイド孔50に沿って上方に移動する際に、スライド部材58が常に接することになる。スライド部材58は、図4に示す接点αにおいてガイド孔50のガイド面50cに接している。
【0020】
スライド部材58がガイド孔50に沿って上方に移動する途中、あるいは上方に移動したのち、ヘッドレスト本体14に頭部拘束による後方荷重が入力すると、前記ガイド面50cにスライド部材58が押付けられることによって、ヘッドレスト本体14がロックされるようになっている。
【0021】
言い換えると、ヘッドレスト本体14から後方荷重が入力したときに、スライド部材58がガイド面50cを滑って移動しないように、接点αにおけるガイド面50cとスライド部材58との摩擦係数や、接点αでの圧力角および荷重ベクトル等が設定されている。
【0022】
サブフレーム55の横架部56に、左右一対のサポートブラケット60の下部が固定されている。各サポートブラケット60にヘッドレスト13のステ−15が挿入される。サポートブラケット60は筒状をなし、上端にグロメット61が設けられている。アッパフレーム部材32に摺動ガイドブラケット65が設けられている。
【0023】
サポートブラケット60の上下方向中間部の背面60aは、下記押圧部70によってアッパフレーム部材32に向けて押付けられている。摺動ガイドブラケット65には、サポートブラケット60と接する部位に、合成樹脂製の摺動ガイド部材66が設けられている。摺動ガイド部材66の詳細については後で述べる。
【0024】
サポートブラケット60は、摺動ガイド部材66によって、アッパフレーム部材32に対して上下方向に円滑に摺動できる。すなわちこのサポートブラケット60は、作動前の位置(図6に実線で示す基準位置P1)から、作動後の位置(図6に2点鎖線で示す上昇位置P2)にわたって、上下方向に移動可能である。
【0025】
図6に示すようにアッパフレーム部材32は、第1の接点C1と第2の接点C2とを有している。サポートブラケット60が前記基準位置P1にあるとき、サポートブラケット60の背面60aは、アッパフレーム部材32の第1の接点C1に接する。サポートブラケット60が前記上昇位置P2まで移動したとき、サポートブラケット60の背面60aは、アッパフレーム部材32の第2の接点C2に接する。第1の接点C1は第2の接点C2よりも上に位置している。
【0026】
しかもこのサポートブラケット60は、前記基準位置P1から上昇位置P2に移動する際に、アッパフレーム部材32の接点C1〜C2間の領域Sを支点として、前後方向にある程度の角度範囲θ1(図3と図6に示す)で傾くことができるように、摺動ガイドブラケット65とアッパフレーム部材32とによって、傾動可能に支持されている。
【0027】
前記長孔ブラケット51と、サブフレーム55と、スライド部材58と、サポートブラケット60と、摺動ガイドブラケット65などによって、ヘッドレスト13を前後方向に傾動可能に支持するためのヘッドレスト駆動機構67が構成されている。
【0028】
このヘッドレスト駆動機構67は、スライド部材58がガイド孔50に沿って斜め上後方(図3,図4に矢印Aで示す方向)に移動したときに、ヘッドレスト本体14とサポートブラケット60が上方に移動しつつ前側に傾くように、前記接点α,C1,C2の位置と、サブフレーム55の腕部57の長さと、腕部57とサポートブラケット60のなす角度θ2(図3に示す)などが設定されている。
【0029】
このヘッドレスト駆動機構67は、下記受圧部材75が後方に移動したときヘッドレスト本体14を作動させるためのものである。すなわちヘッドレスト駆動機構67は、受圧部材75が後方に移動したときに、スライド部材58がガイド孔50に沿って移動することに伴い、ヘッドレスト本体14が上方に移動しつつ前側に傾くようサブフレーム55を駆動する機能を有している。
【0030】
図5と図6は、摺動ガイドブラケット65と摺動ガイド部材66の詳細を示している。摺動ガイドブラケット65は金属製であり、上方から見てコ字状をなしている。この摺動ガイドブラケット65は、アッパフレーム部材32に溶接等の固定手段によって固定されている。摺動ガイドブラケット65の前壁65aに凹部69が形成されている。
【0031】
摺動ガイド部材66は合成樹脂の一体成形品であり、サポートブラケット60に向かって突出する凸部である押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、前側に突出するストッパ部72とを備えている。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。
【0032】
図6に示すように押圧部70は、サポートブラケット60の前面に対し第3の接点C3において接している。この押圧部70は、前後方向(図6に矢印Fで示す方向)に撓むことが可能なばね性を有し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向かって付勢する機能を有している。
【0033】
さらに詳しくは、図6に示すように、押圧部70は前記第3の接点C3において、前記第1の接点C1と第2の接点C2との間の領域Sの中間位置に向けて、サポートブラケット60を付勢している。すなわち、第1の接点C1が通る線分Jと第2の接点C2が通る線分Kとの間に、第3の接点C3が通る線分Gが位置している。こうすることにより、サポートブラケット60が基準位置P1から上昇位置P2に移動する際に、移動前後での押圧位置の変化が小さくて済み、安定した押圧力が得られるとともに、押圧部70の応力変化も小さく、設計自由度を大きくすることができる。なお、角度β1,β2は互いに異なっていてもよい。
【0034】
また、サポートブラケット60とアッパフレーム部材32とが互いに接触する部位(第1の接点C1と第2の接点C2を含む部位)に、金属よりも摩擦係数が小さい材料(例えば低摩擦合成樹脂)からなるコーティング層73(図6に1点鎖線で示す)が形成されていてもよい。
【0035】
ヘッドレスト13のステ−15は、グロメット61の孔からサポートブラケット60の内部に挿入されている。各ステ−15は、それぞれ、サポートブラケット60に対して上下方向に移動可能である。ステ−15は、ヘッドレスト本体14を所望高さに調節した状態において、図示しないロック機構によってサポートブラケット60に固定される。
【0036】
図2および図3に示すようにシートバック12の内部には、ばねアッセンブリ21の下部、すなわち乗員(着座者)の腰部付近の後方に位置するように受圧部材75が設けられている。受圧部材75は、ばねアッセンブリ21に取付けられている。ばねアッセンブリ21が乗員によって押されて後方に撓んだときに、受圧部材75が、ばねアッセンブリ21と共に、前側の位置から後側の位置に向かって移動することができる。受圧部材75の一部に、後方に突出する凸部76が形成されている。
【0037】
受圧部材75の後面と対向する位置に増速ユニット79が設けられている。増速ユニット79は、ロアフレーム部材33に固定されたベースブラケット80と、ベースブラケット80に設けられた第1のアーム81および第2のアーム82を有している。この増速ユニット79は、第1のアーム81が上側に位置し、第2のアーム82が下側に位置するように、上下方向に縦置きの姿勢、すなわちベースブラケット80の長手方向が上下方向に沿う姿勢で、ロアフレーム部材33に配置されている。
【0038】
図3と図7に示すように、ベースブラケット80のケーブル支持部85に、前記一対のケーブル41,42の各アウタチューブ43の一端43aが接続されている。ケーブル41,42の各ワイヤ44の一端44aは、それぞれベースブラケット80のワイヤ支持部86に接続されている。
【0039】
第1のアーム81の一端(上端)は、第1のピン90によって、ベースブラケット80に回動可能に支持されている。ベースブラケット80には、第1のピン90を中心に回転可能なガイドプーリ91が設けられている。
【0040】
第1のアーム81と第2のアーム82は、側面方向から見て横向きのV形をなすように、第2のピン92によって互いに回動可能に接続されている。言い換えると、第1のアーム81と第2のアーム82によって、<形のリンク機構が構成され、第1のアーム81と第2のアーム82が受圧部材75の方向に突き出ている。第1のアーム81と第2のアーム82とのなす角度θ3は、好ましくは90°以上(鈍角)である。
【0041】
第1のアーム81と第2のアーム82との接続部にローラ95が設けられている。ローラ95は当接部材の一例である。このローラ95は、第2のピン92を中心に回転自在である。このローラ95は、受圧部材75の後面に突出する凸部76と対向するよう配置され、受圧部材75が後方(図3と図7に矢印Bで示す方向)に移動したときに、凸部76がローラ95に当接するようになっている。
【0042】
第2のアーム82の他端(下端)に、第3のピン96と、第3のピン96を中心に回転自在なプーリ97が設けられている。第3のピン96は、ベースブラケット80に形成されたガイド孔100に挿入され、ガイド孔100に沿ってガイド孔100の長手方向に移動できるようになっている。
【0043】
前記第3のピン96とガイド孔100によって、ガイド手段が構成されている。ガイド手段は、ローラ95が受圧部材75によって後方に押されたときに、第1および第2のアーム81,82のなす角度θ3が大きくなるようにプーリ97の移動を案内するものである。
【0044】
ローラ95が受圧部材75よって図7中の矢印B方向に押されると、第1のアーム81と第2のアーム82のなす角度θ3が増加する。ここで第1のピン90はベースブラケット80に支持されているから、第3のピン96はガイド孔100の一端(上端)100aから他端(下端)100bに向かって移動する。このため、第1のピン90から第3のピン96までの距離が次第に大きくなってゆく。すなわち、プーリ97がガイド孔100に沿って下方に移動する。
【0045】
図7に示すようにガイド孔100は、第1のピン90に近い側に位置する第1の部分101と、第1のピン90から遠い側に位置する第2の部分102とを有している。第1の部分101は、第1のピン90と第3のピン96とを結ぶ延長線L1に対し、角度θ4をなして斜め下後方に延びている。第2の部分102は、前記延長線L1に対して第1の部分101とは逆側(斜め下前方)に曲がっている。
【0046】
このため、プーリ97が、ガイド孔100に沿ってガイド孔100の一端100aから他端100bに向かって移動する際、第3のピン96が第1の部分101に沿って容易に移動できる。そして第3のピン96が第2の部分102に沿って移動するときには、プーリ97の移動速度が第1の部分101を移動するときよりも大きくなる。
【0047】
図7に示すように、ガイドプーリ91の一部に、前記一対のケーブル41,42のそれぞれのワイヤ44の一部44cが接している。その下方に位置するプーリ97には、各ワイヤ44の他端側の部位44dが、それぞれ半周程度巻掛けられている。言い換えると、ワイヤ44の他端側の部位44dは、プーリ97によって方向がほぼ180°変換(Uターン)した状態で、それぞれの一端44aがベースブラケット80のワイヤ支持部86に固定されている。
【0048】
このためプーリ97がガイド孔100に沿って、ガイド孔100の一端100aから他端100bに向かって移動すると、プーリ97が動滑車のように下方に移動することにより、各ワイヤ44が、プーリ97の移動量の2倍の距離に相当する長さ分だけ引かれる。言い換えると、受圧部材75が後方(矢印B方向)に移動するときに、受圧部材75の動きが増速ユニット79によって増速され、ワイヤ44が速やかに引かれるようになっている。
【0049】
前記一対のケーブル41,42の各ワイヤ44の他端44b(図3に示す)は、ヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58に接続されている。このため増速ユニット79によって各ワイヤ44が図3に矢印Dで示す方向に引かれると、ヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が矢印Aで示す方向に移動する。
【0050】
次に上記構成の車両用シート10の作用について説明する。
衝突時に乗員がシートバック12に押し付けられると、乗員の腰部付近からシートバック12に入力する荷重によって、受圧部材75が後方に押される。このことにより、受圧部材75が増速ユニット79のローラ95を押すため、第1のアーム81と第2のアーム82のなす角度θ3(図7に示す)が大きくなる方向に、第2のアーム82が移動する。
【0051】
このとき第3のピン96がガイド孔100に沿って下方に移動することにより、プーリ97が下方に移動する。プーリ97には、一対のケーブル41,42の各ワイヤ44が半周程度U形に巻掛けられているため、いわゆる動滑車の原理により、プーリ97の移動速度の約2倍の速度でワイヤ44が図7に矢印Eで示す方向に引かれる。このためヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が図3に矢印Aで示す方向に移動する。
【0052】
ガイド孔100の第1の部分101は、第1および第3のピン90,96の延長線L1に対して角度θ4をなして後方に傾いているため、ローラ95が矢印B方向に押されるときに、最初のうちは、第3のピン96が第1の部分101に沿って少し後方に移動しながら下方に移動する。このため、ワイヤ44をアウタチューブ43から容易に引出すことができる。
【0053】
そののち、第3のピン96が第2の部分102に沿って移動するため、ワイヤ44の引出し速度が大きくなる。このようなガイド孔100は、第1の部分101の傾き角度θ4を変更することや、第1の部分101に対して第2の部分102のなす角度を変更することなどにより、ワイヤ44の引出し速度を調整することができる。
【0054】
前記増速ユニット79によってケーブル41,42の各ワイヤ44が同時に引かれることにより、左右一対のヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が、それぞれ、ガイド孔50に沿って、斜め上後方(図3と図4に矢印Aで示す方向)に移動する。
【0055】
このとき、サブフレーム55の腕部57が上後方に移動することに伴い、サポートブラケット60が上昇しつつ、接点C1〜C2間の領域S(図6に示す)を支点として、前方に倒れるように移動する。接点C1〜C2間の領域S自体は前方に移動することなく同一位置にとどまるため、乗員の首下の拘束を早めることなく、ヘッドレスト本体14が図4に矢印M1で示すような軌跡を描いて前上方に移動する。このことにより、首下が拘束される前に頭部がヘッドレスト本体14によって速やかに拘束される。
【0056】
本実施形態では、摺動ガイドブラケット65に摺動ガイド部材66を設けているため、ヘッドレスト作動時にサポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって円滑に移動することができる。しかも摺動ガイド部材66の押圧部70がサポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢しているため、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0057】
また、摺動ガイド部材66に横方向規制部71が設けられていることにより、サポートブラケット60が作動する際の横方向の振れを抑制することができ、ヘッドレスト作動時に、サポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって円滑に移動することができる。従ってこのシートバック12は、摺動部にがたつきが生じることを抑制でき、ヘッドレスト13の作動性に優れ、むち打ち障害値低減に効果的である。
【0058】
本実施形態のシートバック12では、受圧部材75の後方への動きが、増速ユニット79から一対のケーブル41,42の各ワイヤ44を介して、ヘッドレスト駆動機構67へと伝達されるため、増速ユニット79からヘッドレスト駆動機構67までの距離が大きくても、ワイヤ44によって受圧部材75の動きをヘッドレスト駆動機構67に速やかに伝達することができる。
【0059】
このため、増速ユニット79からヘッドレスト駆動機構67までの距離が比較的大きくても、受圧部材75とヘッドレスト駆動機構67とを含む装置全体を軽量に構成することができる。また、シートバック12の内部に増速ユニット79とヘッドレスト駆動機構67を組付けることが容易である。
【0060】
しかも本実施形態の車両用シート10は、衝突時の受圧部材75の移動速度を増速ユニット79によって増速し、ワイヤ44を介してヘッドレスト駆動機構67を作動させる構成であるため、応答性に優れており、作動遅れを生じない。この増速ユニット79は、受圧部材75から独立して構成されているため、シートバックフレーム20への組付性が良い。
【0061】
図8と図9は、本発明の第2の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66も合成樹脂の一体成形品であり、ばね部110を有する押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを有している。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。押圧部70は、サポートブラケット60の前面に当接し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このように構成された第2の実施形態も、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0062】
図10と図11は、本発明の第3の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66も合成樹脂の一体成形品であり、ばね性を有する押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを有している。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。押圧部70は、サポートブラケット60の前面に当接し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このように構成された第3の実施形態も、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0063】
図12と図13は、本発明の第4の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66は、ばね性を有する1枚の金属板を成形することにより、押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを設けている。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の上端面に当接することにより、上下方向の位置が定まる。ばね性を有する押圧部70は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。この実施形態のように、薄板ばねからなる摺動ガイド部材66を用いれば、大きな寸法ばらつきを吸収することが可能である。
【0064】
図14と図15は、本発明の第5の実施形態の摺動ガイドブラケット120を示している。この摺動ガイドブラケット120は、ばね性を有する1枚の金属板からなり、リベットあるいはボルト等の固定用部品121によって、アッパフレーム部材32に固定されている。摺動ガイドブラケット120の前壁に、後側に突出する押圧部122が形成されている。摺動ガイドブラケット120の両側部に左右一対の横方向規制部123が形成されている。横方向規制部123は、サポートブラケット60の側面に接することができる。押圧部122は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。
【0065】
このような第5の実施形態によれば、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。しかも組付性の向上と、部品点数の削減が可能である。
【0066】
図16と図17は、本発明の第6の実施形態の摺動ガイド部材130を示している。この摺動ガイド部材130は、ばね性を有する1本のワイヤ(金属線材)を成形することにより、押圧部131と、左右一対の横方向規制部132とを設けている。押圧部131と横方向規制部132は、それぞれ、摺動ガイドブラケット65に形成された孔133に挿入される。押圧部131は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このような摺動ガイド部材130であれば、構造がさらに簡単となり、組付性も向上する。
【0067】
図18と図19は、本発明の第7の実施形態を示している。この実施形態では、押圧部として機能するコイルばね140が摺動ガイドブラケット65に取付けられている。コイルばね140は、摺動ガイドブラケット65に形成された凹部69に挿入されている。また、摺動ガイドブラケット65の両側壁の内面に、凸部からなる横方向規制部141が形成されている。
【0068】
この第7の実施形態では、押圧部として機能するコイルばね140が、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このため、簡単な構造でありながら、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。また、摺動ガイドブラケット65の側壁に横方向規制部141を設けたことにより、サポートブラケット60が作動する際の横方向の振れを抑制することができ、ヘッドレストを円滑に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す車両用シートの斜視図。
【図2】図1に示された車両用シートのシートバックの内部を示す斜視図。
【図3】図1に示された車両用シートのシートバックの内部を示す側面図。
【図4】図1に示された車両用シートのヘッドレスト駆動機構の側面図。
【図5】図1に示された車両用シートの摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材を示す斜視図。
【図6】図5に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の縦断面図。
【図7】図1に示された車両用シートの増速ユニットの側面図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図9】図8に示された摺動ガイド部材の断面図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図11】図10に示された摺動ガイド部材の縦断面図。
【図12】本発明の第4の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図13】図12に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【図14】本発明の第5の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図15】図14に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【図16】本発明の第6の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図17】図16に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材を一部断面で示す平面図。
【図18】本発明の第7の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図19】図18に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【符号の説明】
【0070】
10…車両用シート
12…シートバック
13…ヘッドレスト
14…ヘッドレスト本体
15…ステー
20…シートバックフレーム
32…アッパフレーム部材
60…サポートブラケット
65…摺動ガイドブラケット
66…摺動ガイド部材
67…ヘッドレスト駆動機構
70…押圧部
71…横方向規制部
120…摺動ガイドブラケット
122…押圧部
123…横方向規制部
130…摺動ガイド部材
131…押圧部
132…横方向規制部
140…コイルばね(押圧部)
141…横方向規制部
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドレストを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の追突時等に乗員の頭部を拘束するために、ヘッドレストを前方に移動させる可動ヘッドレスト装置が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されているように、ヘッドレストのステ−の下部にガイドピンを設け、このガイドピンを上下方向に延びる長孔に沿って移動可能としたヘッドレスト駆動機構が知られている。この従来例では、衝突時の乗員の慣性荷重によって受動部材を作動させ、前記ガイドピンが前記長孔に沿って上方に移動することにより、ヘッドレストが前方に傾きながら上方に移動するようにしている。(下記特許文献1参照)
また、下記特許文献2に記載されているように、パッドの背部に受圧部材を設け、衝突時に受圧部材を介してアーマチュアパイプを押し上げる構造のヘッドレスト駆動機構が知られている。この従来例では、衝突時にアーマチュアパイプの上下方向中間部のピンが長孔に沿って前上方に移動することにより、ヘッドレストが前方に傾きながら上方に移動するようにしている。(下記特許文献2参照)
【特許文献1】特開2001−163099号公報
【特許文献2】特開2000−210155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1,2のヘッドレスト駆動機構では、長孔に沿ってピンが摺動することによってヘッドレストが作動する構造となっている。このような摺動構造では、ピンと長孔との摺動性を確保するために、ピンと長孔との間に比較的大きなクリアランスを設定する必要がある。このクリアランスによってヘッドレストががたつき、衝突時に乗員頭部の拘束性が低下する原因となる。
【0004】
従って本発明の目的は、摺動構造のヘッドレスト駆動機構の摺動性を確保でき、かつ、衝突時に頭部拘束性が低下することを防止できる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用シートは、シートバックフレームを有するシートバックと、該シートバックの上部に設けるヘッドレスト本体および該ヘッドレスト本体の下方に延びるステ−を有するヘッドレストと、前記ヘッドレストのステ−を挿入するサポートブラケットであって、その背面が前記シートバックフレームのアッパフレーム部材に当接するサポートブラケットと、前記シートバックフレームに設けられ、前記サポートブラケットを上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケットと、前記シートバックに設けられ、乗員によって押されたとき後方に移動する受圧部材と、前記受圧部材が後方に移動したとき前記サポートブラケットが基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くように駆動するヘッドレスト駆動機構と、前記摺動ガイドブラケットに設けられ、前記サポートブラケットを前記アッパフレーム部材に向けて付勢する押圧部とを具備している。
【0006】
本発明の好ましい形態では、前記アッパフレーム部材は、前記サポートブラケットが前記基準位置にあるとき該サポートブラケットに接する第1の接点と、前記サポートブラケットが前記上昇位置に移動したとき該サポートブラケットに接する第2の接点とを有し、これら第1および第2の接点間の領域に向けて、前記押圧部が前記サポートブラケットを付勢するとよい。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記摺動ガイドブラケットに、前記サポートブラケットの側面に接触可能な横方向規制部が設けられているとよい。
【0008】
例えば前記押圧部と前記横方向規制部は、合成樹脂によって一体に成形されている。あるいは前記押圧部と前記横方向規制部は、ばね性を有する1枚の金属板を成形してなる。あるいは前記押圧部と前記横方向規制部は、ばね性を有する1本の金属ワイヤを成形してなる。前記押圧部がコイルばねからなり、前記横方向規制部が前記摺動ガイドブラケットの側壁の内面に突設された凸部からなるものであってもよい。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記サポートブラケットと前記アッパフレーム部材とが互いに接触する部位に、金属よりも摩擦係数の小さいコーティング層が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摺動構造のヘッドレスト駆動機構を有する車両用シートにおいて、ヘッドレスト駆動機構の摺動性を確保できるとともに、ヘッドレストががたつくことを防止でき、衝突時に頭部の拘束性が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1は車両用シート10を示している。車両用シート10は、座部11と、シートバック12と、ヘッドレスト13を備えている。ヘッドレスト13は、シートバック12の上部に設けるヘッドレスト本体14と、ヘッドレスト本体14の下方に延びる左右一対のステ−15を有している。
【0012】
図2と図3はシートバック12の内部を示している。シートバック12は、シートバックフレーム20と、ばねアッセンブリ21と、ばねアッセンブリ21を覆うように配置されるパッド部材22(図3に2点鎖線で示す)と、パッド部材22の外面を覆うカバー部材23(図1に示す)などを有している。
【0013】
シートバックフレーム20は、左右一対のサイドフレーム部材30,31と、上側に位置するアッパフレーム部材32と、下側に位置するロアフレーム部材33などによって構成されている。サイドフレーム部材30,31とロアフレーム部材33は、金属板をプレス加工することにより、所定の形状に成形されている。アッパフレーム部材32は、例えば断面が円形のパイプからなり、その両端がサイドフレーム部材30,31の上部に溶接されている。ロアフレーム部材33の両端はサイドフレーム部材30,31の下部に溶接されている。
【0014】
ばねアッセンブリ21の一例は、平面ばね35と、複数の引張りばね36などによって構成されている。平面ばね35は、上下方向に延びる複数本の縦ワイヤ37と、水平方向に延びる横ワイヤ38によって構成されている。平面ばね35の両側部が、引張りばね36によって、サイドフレーム部材30,31に支持されている。
【0015】
図2に示すように、シートバック12の内部に2系統のケーブル41,42が配置されている。図3は、一方のケーブル41を代表して示している。これらのケーブル41,42は、それぞれ、アウタチューブ43と、アウタチューブ43に挿入されたワイヤ44とを有している。ケーブル41,42の長手方向中間部は、リテーナ45(図3に示す)によって、例えばアッパフレーム部材32に支持されている。
【0016】
ワイヤ44は線条体の一例である。図2と図3に示すように、アウタチューブ43は、一端43aと他端43bを有している。ワイヤ44も一端44aと他端44bを有している。
【0017】
図2〜図4に示すように、シートバックフレーム20のアッパフレーム部材32の両端部に、それぞれ、ガイド孔50を有する長孔ブラケット51が設けられている。ガイド孔50は、その一端50aが他端50bよりも下方に位置するよう傾斜した形状をなし、斜め上下方向におおむね直線状に延びている。これら一対の長孔ブラケット51間にサブフレーム55が設けられている。
【0018】
サブフレーム55は、水平方向に延びる横架部56と、横架部56の両端に形成された一対の腕部57とを備えている。腕部57は、横架部56の両端から斜め下前方に延びている。各腕部57の端部にスライド部材(例えばスライドピン)58が設けられている。スライド部材58は、長孔ブラケット51のガイド孔50に挿入されている。スライド部材58は、ガイド孔50に沿って、ガイド孔50の一端50aと他端50bとにわたって上下方向(ガイド孔の長手方向)に移動できるよう、ガイド孔50に係合している。
【0019】
長孔ブラケット51は、ガイド孔50の長手方向に沿うガイド面50cを有している。このガイド面50cは、ガイド孔50の前側の内面壁を構成するものであり、スライド部材58がガイド孔50に沿って上方に移動する際に、スライド部材58が常に接することになる。スライド部材58は、図4に示す接点αにおいてガイド孔50のガイド面50cに接している。
【0020】
スライド部材58がガイド孔50に沿って上方に移動する途中、あるいは上方に移動したのち、ヘッドレスト本体14に頭部拘束による後方荷重が入力すると、前記ガイド面50cにスライド部材58が押付けられることによって、ヘッドレスト本体14がロックされるようになっている。
【0021】
言い換えると、ヘッドレスト本体14から後方荷重が入力したときに、スライド部材58がガイド面50cを滑って移動しないように、接点αにおけるガイド面50cとスライド部材58との摩擦係数や、接点αでの圧力角および荷重ベクトル等が設定されている。
【0022】
サブフレーム55の横架部56に、左右一対のサポートブラケット60の下部が固定されている。各サポートブラケット60にヘッドレスト13のステ−15が挿入される。サポートブラケット60は筒状をなし、上端にグロメット61が設けられている。アッパフレーム部材32に摺動ガイドブラケット65が設けられている。
【0023】
サポートブラケット60の上下方向中間部の背面60aは、下記押圧部70によってアッパフレーム部材32に向けて押付けられている。摺動ガイドブラケット65には、サポートブラケット60と接する部位に、合成樹脂製の摺動ガイド部材66が設けられている。摺動ガイド部材66の詳細については後で述べる。
【0024】
サポートブラケット60は、摺動ガイド部材66によって、アッパフレーム部材32に対して上下方向に円滑に摺動できる。すなわちこのサポートブラケット60は、作動前の位置(図6に実線で示す基準位置P1)から、作動後の位置(図6に2点鎖線で示す上昇位置P2)にわたって、上下方向に移動可能である。
【0025】
図6に示すようにアッパフレーム部材32は、第1の接点C1と第2の接点C2とを有している。サポートブラケット60が前記基準位置P1にあるとき、サポートブラケット60の背面60aは、アッパフレーム部材32の第1の接点C1に接する。サポートブラケット60が前記上昇位置P2まで移動したとき、サポートブラケット60の背面60aは、アッパフレーム部材32の第2の接点C2に接する。第1の接点C1は第2の接点C2よりも上に位置している。
【0026】
しかもこのサポートブラケット60は、前記基準位置P1から上昇位置P2に移動する際に、アッパフレーム部材32の接点C1〜C2間の領域Sを支点として、前後方向にある程度の角度範囲θ1(図3と図6に示す)で傾くことができるように、摺動ガイドブラケット65とアッパフレーム部材32とによって、傾動可能に支持されている。
【0027】
前記長孔ブラケット51と、サブフレーム55と、スライド部材58と、サポートブラケット60と、摺動ガイドブラケット65などによって、ヘッドレスト13を前後方向に傾動可能に支持するためのヘッドレスト駆動機構67が構成されている。
【0028】
このヘッドレスト駆動機構67は、スライド部材58がガイド孔50に沿って斜め上後方(図3,図4に矢印Aで示す方向)に移動したときに、ヘッドレスト本体14とサポートブラケット60が上方に移動しつつ前側に傾くように、前記接点α,C1,C2の位置と、サブフレーム55の腕部57の長さと、腕部57とサポートブラケット60のなす角度θ2(図3に示す)などが設定されている。
【0029】
このヘッドレスト駆動機構67は、下記受圧部材75が後方に移動したときヘッドレスト本体14を作動させるためのものである。すなわちヘッドレスト駆動機構67は、受圧部材75が後方に移動したときに、スライド部材58がガイド孔50に沿って移動することに伴い、ヘッドレスト本体14が上方に移動しつつ前側に傾くようサブフレーム55を駆動する機能を有している。
【0030】
図5と図6は、摺動ガイドブラケット65と摺動ガイド部材66の詳細を示している。摺動ガイドブラケット65は金属製であり、上方から見てコ字状をなしている。この摺動ガイドブラケット65は、アッパフレーム部材32に溶接等の固定手段によって固定されている。摺動ガイドブラケット65の前壁65aに凹部69が形成されている。
【0031】
摺動ガイド部材66は合成樹脂の一体成形品であり、サポートブラケット60に向かって突出する凸部である押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、前側に突出するストッパ部72とを備えている。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。
【0032】
図6に示すように押圧部70は、サポートブラケット60の前面に対し第3の接点C3において接している。この押圧部70は、前後方向(図6に矢印Fで示す方向)に撓むことが可能なばね性を有し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向かって付勢する機能を有している。
【0033】
さらに詳しくは、図6に示すように、押圧部70は前記第3の接点C3において、前記第1の接点C1と第2の接点C2との間の領域Sの中間位置に向けて、サポートブラケット60を付勢している。すなわち、第1の接点C1が通る線分Jと第2の接点C2が通る線分Kとの間に、第3の接点C3が通る線分Gが位置している。こうすることにより、サポートブラケット60が基準位置P1から上昇位置P2に移動する際に、移動前後での押圧位置の変化が小さくて済み、安定した押圧力が得られるとともに、押圧部70の応力変化も小さく、設計自由度を大きくすることができる。なお、角度β1,β2は互いに異なっていてもよい。
【0034】
また、サポートブラケット60とアッパフレーム部材32とが互いに接触する部位(第1の接点C1と第2の接点C2を含む部位)に、金属よりも摩擦係数が小さい材料(例えば低摩擦合成樹脂)からなるコーティング層73(図6に1点鎖線で示す)が形成されていてもよい。
【0035】
ヘッドレスト13のステ−15は、グロメット61の孔からサポートブラケット60の内部に挿入されている。各ステ−15は、それぞれ、サポートブラケット60に対して上下方向に移動可能である。ステ−15は、ヘッドレスト本体14を所望高さに調節した状態において、図示しないロック機構によってサポートブラケット60に固定される。
【0036】
図2および図3に示すようにシートバック12の内部には、ばねアッセンブリ21の下部、すなわち乗員(着座者)の腰部付近の後方に位置するように受圧部材75が設けられている。受圧部材75は、ばねアッセンブリ21に取付けられている。ばねアッセンブリ21が乗員によって押されて後方に撓んだときに、受圧部材75が、ばねアッセンブリ21と共に、前側の位置から後側の位置に向かって移動することができる。受圧部材75の一部に、後方に突出する凸部76が形成されている。
【0037】
受圧部材75の後面と対向する位置に増速ユニット79が設けられている。増速ユニット79は、ロアフレーム部材33に固定されたベースブラケット80と、ベースブラケット80に設けられた第1のアーム81および第2のアーム82を有している。この増速ユニット79は、第1のアーム81が上側に位置し、第2のアーム82が下側に位置するように、上下方向に縦置きの姿勢、すなわちベースブラケット80の長手方向が上下方向に沿う姿勢で、ロアフレーム部材33に配置されている。
【0038】
図3と図7に示すように、ベースブラケット80のケーブル支持部85に、前記一対のケーブル41,42の各アウタチューブ43の一端43aが接続されている。ケーブル41,42の各ワイヤ44の一端44aは、それぞれベースブラケット80のワイヤ支持部86に接続されている。
【0039】
第1のアーム81の一端(上端)は、第1のピン90によって、ベースブラケット80に回動可能に支持されている。ベースブラケット80には、第1のピン90を中心に回転可能なガイドプーリ91が設けられている。
【0040】
第1のアーム81と第2のアーム82は、側面方向から見て横向きのV形をなすように、第2のピン92によって互いに回動可能に接続されている。言い換えると、第1のアーム81と第2のアーム82によって、<形のリンク機構が構成され、第1のアーム81と第2のアーム82が受圧部材75の方向に突き出ている。第1のアーム81と第2のアーム82とのなす角度θ3は、好ましくは90°以上(鈍角)である。
【0041】
第1のアーム81と第2のアーム82との接続部にローラ95が設けられている。ローラ95は当接部材の一例である。このローラ95は、第2のピン92を中心に回転自在である。このローラ95は、受圧部材75の後面に突出する凸部76と対向するよう配置され、受圧部材75が後方(図3と図7に矢印Bで示す方向)に移動したときに、凸部76がローラ95に当接するようになっている。
【0042】
第2のアーム82の他端(下端)に、第3のピン96と、第3のピン96を中心に回転自在なプーリ97が設けられている。第3のピン96は、ベースブラケット80に形成されたガイド孔100に挿入され、ガイド孔100に沿ってガイド孔100の長手方向に移動できるようになっている。
【0043】
前記第3のピン96とガイド孔100によって、ガイド手段が構成されている。ガイド手段は、ローラ95が受圧部材75によって後方に押されたときに、第1および第2のアーム81,82のなす角度θ3が大きくなるようにプーリ97の移動を案内するものである。
【0044】
ローラ95が受圧部材75よって図7中の矢印B方向に押されると、第1のアーム81と第2のアーム82のなす角度θ3が増加する。ここで第1のピン90はベースブラケット80に支持されているから、第3のピン96はガイド孔100の一端(上端)100aから他端(下端)100bに向かって移動する。このため、第1のピン90から第3のピン96までの距離が次第に大きくなってゆく。すなわち、プーリ97がガイド孔100に沿って下方に移動する。
【0045】
図7に示すようにガイド孔100は、第1のピン90に近い側に位置する第1の部分101と、第1のピン90から遠い側に位置する第2の部分102とを有している。第1の部分101は、第1のピン90と第3のピン96とを結ぶ延長線L1に対し、角度θ4をなして斜め下後方に延びている。第2の部分102は、前記延長線L1に対して第1の部分101とは逆側(斜め下前方)に曲がっている。
【0046】
このため、プーリ97が、ガイド孔100に沿ってガイド孔100の一端100aから他端100bに向かって移動する際、第3のピン96が第1の部分101に沿って容易に移動できる。そして第3のピン96が第2の部分102に沿って移動するときには、プーリ97の移動速度が第1の部分101を移動するときよりも大きくなる。
【0047】
図7に示すように、ガイドプーリ91の一部に、前記一対のケーブル41,42のそれぞれのワイヤ44の一部44cが接している。その下方に位置するプーリ97には、各ワイヤ44の他端側の部位44dが、それぞれ半周程度巻掛けられている。言い換えると、ワイヤ44の他端側の部位44dは、プーリ97によって方向がほぼ180°変換(Uターン)した状態で、それぞれの一端44aがベースブラケット80のワイヤ支持部86に固定されている。
【0048】
このためプーリ97がガイド孔100に沿って、ガイド孔100の一端100aから他端100bに向かって移動すると、プーリ97が動滑車のように下方に移動することにより、各ワイヤ44が、プーリ97の移動量の2倍の距離に相当する長さ分だけ引かれる。言い換えると、受圧部材75が後方(矢印B方向)に移動するときに、受圧部材75の動きが増速ユニット79によって増速され、ワイヤ44が速やかに引かれるようになっている。
【0049】
前記一対のケーブル41,42の各ワイヤ44の他端44b(図3に示す)は、ヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58に接続されている。このため増速ユニット79によって各ワイヤ44が図3に矢印Dで示す方向に引かれると、ヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が矢印Aで示す方向に移動する。
【0050】
次に上記構成の車両用シート10の作用について説明する。
衝突時に乗員がシートバック12に押し付けられると、乗員の腰部付近からシートバック12に入力する荷重によって、受圧部材75が後方に押される。このことにより、受圧部材75が増速ユニット79のローラ95を押すため、第1のアーム81と第2のアーム82のなす角度θ3(図7に示す)が大きくなる方向に、第2のアーム82が移動する。
【0051】
このとき第3のピン96がガイド孔100に沿って下方に移動することにより、プーリ97が下方に移動する。プーリ97には、一対のケーブル41,42の各ワイヤ44が半周程度U形に巻掛けられているため、いわゆる動滑車の原理により、プーリ97の移動速度の約2倍の速度でワイヤ44が図7に矢印Eで示す方向に引かれる。このためヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が図3に矢印Aで示す方向に移動する。
【0052】
ガイド孔100の第1の部分101は、第1および第3のピン90,96の延長線L1に対して角度θ4をなして後方に傾いているため、ローラ95が矢印B方向に押されるときに、最初のうちは、第3のピン96が第1の部分101に沿って少し後方に移動しながら下方に移動する。このため、ワイヤ44をアウタチューブ43から容易に引出すことができる。
【0053】
そののち、第3のピン96が第2の部分102に沿って移動するため、ワイヤ44の引出し速度が大きくなる。このようなガイド孔100は、第1の部分101の傾き角度θ4を変更することや、第1の部分101に対して第2の部分102のなす角度を変更することなどにより、ワイヤ44の引出し速度を調整することができる。
【0054】
前記増速ユニット79によってケーブル41,42の各ワイヤ44が同時に引かれることにより、左右一対のヘッドレスト駆動機構67の各スライド部材58が、それぞれ、ガイド孔50に沿って、斜め上後方(図3と図4に矢印Aで示す方向)に移動する。
【0055】
このとき、サブフレーム55の腕部57が上後方に移動することに伴い、サポートブラケット60が上昇しつつ、接点C1〜C2間の領域S(図6に示す)を支点として、前方に倒れるように移動する。接点C1〜C2間の領域S自体は前方に移動することなく同一位置にとどまるため、乗員の首下の拘束を早めることなく、ヘッドレスト本体14が図4に矢印M1で示すような軌跡を描いて前上方に移動する。このことにより、首下が拘束される前に頭部がヘッドレスト本体14によって速やかに拘束される。
【0056】
本実施形態では、摺動ガイドブラケット65に摺動ガイド部材66を設けているため、ヘッドレスト作動時にサポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって円滑に移動することができる。しかも摺動ガイド部材66の押圧部70がサポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢しているため、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0057】
また、摺動ガイド部材66に横方向規制部71が設けられていることにより、サポートブラケット60が作動する際の横方向の振れを抑制することができ、ヘッドレスト作動時に、サポートブラケット60が基準位置から上昇位置に向かって円滑に移動することができる。従ってこのシートバック12は、摺動部にがたつきが生じることを抑制でき、ヘッドレスト13の作動性に優れ、むち打ち障害値低減に効果的である。
【0058】
本実施形態のシートバック12では、受圧部材75の後方への動きが、増速ユニット79から一対のケーブル41,42の各ワイヤ44を介して、ヘッドレスト駆動機構67へと伝達されるため、増速ユニット79からヘッドレスト駆動機構67までの距離が大きくても、ワイヤ44によって受圧部材75の動きをヘッドレスト駆動機構67に速やかに伝達することができる。
【0059】
このため、増速ユニット79からヘッドレスト駆動機構67までの距離が比較的大きくても、受圧部材75とヘッドレスト駆動機構67とを含む装置全体を軽量に構成することができる。また、シートバック12の内部に増速ユニット79とヘッドレスト駆動機構67を組付けることが容易である。
【0060】
しかも本実施形態の車両用シート10は、衝突時の受圧部材75の移動速度を増速ユニット79によって増速し、ワイヤ44を介してヘッドレスト駆動機構67を作動させる構成であるため、応答性に優れており、作動遅れを生じない。この増速ユニット79は、受圧部材75から独立して構成されているため、シートバックフレーム20への組付性が良い。
【0061】
図8と図9は、本発明の第2の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66も合成樹脂の一体成形品であり、ばね部110を有する押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを有している。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。押圧部70は、サポートブラケット60の前面に当接し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このように構成された第2の実施形態も、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0062】
図10と図11は、本発明の第3の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66も合成樹脂の一体成形品であり、ばね性を有する押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを有している。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の凹部69に嵌合することにより、摺動ガイド部材66の上下方向の位置が定まるようになっている。押圧部70は、サポートブラケット60の前面に当接し、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このように構成された第3の実施形態も、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。
【0063】
図12と図13は、本発明の第4の実施形態の摺動ガイド部材66を示している。この摺動ガイド部材66は、ばね性を有する1枚の金属板を成形することにより、押圧部70と、左右一対の横方向規制部71と、ストッパ部72とを設けている。この摺動ガイド部材66は摺動ガイドブラケット65の内側に挿入され、ストッパ部72が摺動ガイドブラケット65の上端面に当接することにより、上下方向の位置が定まる。ばね性を有する押圧部70は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。この実施形態のように、薄板ばねからなる摺動ガイド部材66を用いれば、大きな寸法ばらつきを吸収することが可能である。
【0064】
図14と図15は、本発明の第5の実施形態の摺動ガイドブラケット120を示している。この摺動ガイドブラケット120は、ばね性を有する1枚の金属板からなり、リベットあるいはボルト等の固定用部品121によって、アッパフレーム部材32に固定されている。摺動ガイドブラケット120の前壁に、後側に突出する押圧部122が形成されている。摺動ガイドブラケット120の両側部に左右一対の横方向規制部123が形成されている。横方向規制部123は、サポートブラケット60の側面に接することができる。押圧部122は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。
【0065】
このような第5の実施形態によれば、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。しかも組付性の向上と、部品点数の削減が可能である。
【0066】
図16と図17は、本発明の第6の実施形態の摺動ガイド部材130を示している。この摺動ガイド部材130は、ばね性を有する1本のワイヤ(金属線材)を成形することにより、押圧部131と、左右一対の横方向規制部132とを設けている。押圧部131と横方向規制部132は、それぞれ、摺動ガイドブラケット65に形成された孔133に挿入される。押圧部131は、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このような摺動ガイド部材130であれば、構造がさらに簡単となり、組付性も向上する。
【0067】
図18と図19は、本発明の第7の実施形態を示している。この実施形態では、押圧部として機能するコイルばね140が摺動ガイドブラケット65に取付けられている。コイルばね140は、摺動ガイドブラケット65に形成された凹部69に挿入されている。また、摺動ガイドブラケット65の両側壁の内面に、凸部からなる横方向規制部141が形成されている。
【0068】
この第7の実施形態では、押圧部として機能するコイルばね140が、サポートブラケット60をアッパフレーム部材32に向けて付勢している。このため、簡単な構造でありながら、部品寸法のばらつきを吸収して摺動部の摺動性を確保することができるとともに、摺動部のがたの発生を防止することができる。また、摺動ガイドブラケット65の側壁に横方向規制部141を設けたことにより、サポートブラケット60が作動する際の横方向の振れを抑制することができ、ヘッドレストを円滑に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す車両用シートの斜視図。
【図2】図1に示された車両用シートのシートバックの内部を示す斜視図。
【図3】図1に示された車両用シートのシートバックの内部を示す側面図。
【図4】図1に示された車両用シートのヘッドレスト駆動機構の側面図。
【図5】図1に示された車両用シートの摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材を示す斜視図。
【図6】図5に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の縦断面図。
【図7】図1に示された車両用シートの増速ユニットの側面図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図9】図8に示された摺動ガイド部材の断面図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図11】図10に示された摺動ガイド部材の縦断面図。
【図12】本発明の第4の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図13】図12に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【図14】本発明の第5の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図15】図14に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【図16】本発明の第6の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図17】図16に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材を一部断面で示す平面図。
【図18】本発明の第7の実施形態を示す摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の斜視図。
【図19】図18に示された摺動ガイドブラケットと摺動ガイド部材の平面図。
【符号の説明】
【0070】
10…車両用シート
12…シートバック
13…ヘッドレスト
14…ヘッドレスト本体
15…ステー
20…シートバックフレーム
32…アッパフレーム部材
60…サポートブラケット
65…摺動ガイドブラケット
66…摺動ガイド部材
67…ヘッドレスト駆動機構
70…押圧部
71…横方向規制部
120…摺動ガイドブラケット
122…押圧部
123…横方向規制部
130…摺動ガイド部材
131…押圧部
132…横方向規制部
140…コイルばね(押圧部)
141…横方向規制部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームを有するシートバックと、
該シートバックの上部に設けるヘッドレスト本体および該ヘッドレスト本体の下方に延びるステ−を有するヘッドレストと、
前記ヘッドレストのステ−を挿入するサポートブラケットであって、その背面が前記シートバックフレームのアッパフレーム部材に当接するサポートブラケットと、
前記シートバックフレームに設けられ、前記サポートブラケットを上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケットと、
前記シートバックに設けられ、乗員によって押されたとき後方に移動する受圧部材と、
前記受圧部材が後方に移動したとき前記サポートブラケットが基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くように駆動するヘッドレスト駆動機構と、
前記摺動ガイドブラケットに設けられ、前記サポートブラケットを前記アッパフレーム部材に向けて付勢する押圧部と、
を具備したことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記アッパフレーム部材は、前記サポートブラケットが前記基準位置にあるとき該サポートブラケットに接する第1の接点と、前記サポートブラケットが前記上昇位置に移動したとき該サポートブラケットに接する第2の接点とを有し、
これら第1および第2の接点間の領域に向けて、前記押圧部が前記サポートブラケットを付勢することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記摺動ガイドブラケットに、前記サポートブラケットの側面に接触可能な横方向規制部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記押圧部と前記横方向規制部が、合成樹脂によって一体に成形されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記押圧部と前記横方向規制部が、ばね性を有する1枚の金属板を成形してなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記押圧部と前記横方向規制部が、ばね性を有する1本の金属ワイヤを成形してなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記押圧部がコイルばねからなり、前記横方向規制部が前記摺動ガイドブラケットの側壁の内面に突設された凸部からなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記サポートブラケットと前記アッパフレーム部材とが互いに接触する部位に、金属よりも摩擦係数の小さいコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項1】
シートバックフレームを有するシートバックと、
該シートバックの上部に設けるヘッドレスト本体および該ヘッドレスト本体の下方に延びるステ−を有するヘッドレストと、
前記ヘッドレストのステ−を挿入するサポートブラケットであって、その背面が前記シートバックフレームのアッパフレーム部材に当接するサポートブラケットと、
前記シートバックフレームに設けられ、前記サポートブラケットを上下方向に移動可能に支持する摺動ガイドブラケットと、
前記シートバックに設けられ、乗員によって押されたとき後方に移動する受圧部材と、
前記受圧部材が後方に移動したとき前記サポートブラケットが基準位置から上昇位置に向かって移動しつつ前側に傾くように駆動するヘッドレスト駆動機構と、
前記摺動ガイドブラケットに設けられ、前記サポートブラケットを前記アッパフレーム部材に向けて付勢する押圧部と、
を具備したことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記アッパフレーム部材は、前記サポートブラケットが前記基準位置にあるとき該サポートブラケットに接する第1の接点と、前記サポートブラケットが前記上昇位置に移動したとき該サポートブラケットに接する第2の接点とを有し、
これら第1および第2の接点間の領域に向けて、前記押圧部が前記サポートブラケットを付勢することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記摺動ガイドブラケットに、前記サポートブラケットの側面に接触可能な横方向規制部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記押圧部と前記横方向規制部が、合成樹脂によって一体に成形されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記押圧部と前記横方向規制部が、ばね性を有する1枚の金属板を成形してなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記押圧部と前記横方向規制部が、ばね性を有する1本の金属ワイヤを成形してなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記押圧部がコイルばねからなり、前記横方向規制部が前記摺動ガイドブラケットの側壁の内面に突設された凸部からなることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記サポートブラケットと前記アッパフレーム部材とが互いに接触する部位に、金属よりも摩擦係数の小さいコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−82771(P2006−82771A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271789(P2004−271789)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]