説明

車両用フロアスペーサ

【課題】所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性をも同時に満足できるようにした発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを得る。
【解決手段】車両用フロアスペーサAは、室内側となる平板部12a,12bと、フロアフレーム側である該平板部12a,12bの裏面から立設した複数本の突条13a,13bとを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体10と、前記突条13a,13bの間に形成される空間14a,14bを埋めるようにして形成される吸音材20からなる層とで構成される。フロアスペーサ本体10の平板部12a,12bには貫通孔15を形成してもよく、突条13a,13bには吸音材20の一部が入り込む留め付け孔16を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床面の平坦性を確保する等の目的で用いられる車両用フロアスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床面の平坦性を確保するため、吸音性能を向上させるため、車内外で発生する衝撃に対して乗員を保護するため、あるいは、軽量化するため等の目的で、車両のフロアフレームに存在する凹溝内に、発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを収容配置することは知られている。ポリスチレン系樹脂発泡体のような発泡樹脂成形体は、一般に吸音特性に乏しく、それ自体では殆ど吸音性能を有しない。そのために、車内の居住性向上の観点から高い吸音性能が求められる場合には、発泡樹脂成形体に吸音材として機能するフェルト等を後加工で貼り付けたものを、車両用フロアスペーサとして用いることが行われる。
【0003】
一般に、中実の発泡樹脂成形体は軽量で高い圧縮強度を持つため、40mm〜150mm程度の厚さの車両用フロアスペーサとして有効である。また、特許文献1には、図10に示すように、自動車の乗員座席の足元を形成する床面に対応する水平部2aと足元前方に敷設される傾斜部2bとを有する硬質発泡プラスチック製のフロアスペーサ1であって、水平部2aおよび傾斜部2bの室内側は共に平板部2とされ、床面側はハニカム構造、スリット構造又は突起構造のような突条構造3としたものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−127796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示す形態のフロアスペーサのように、室内側は平板部であり、フロアフレーム側は平板部の裏面から複数本の突条が立設している構造の車両用フロアスペーサであっても、吸音性向上のためには吸音材としてフェルト等を貼り付けることが必要となる。高い吸音性能が求められる場合には、従来、20mm〜60mm程度の厚みのフェルトが必要とされるが、このような厚みのフェルトを貼り付けると、フェルトに起因する圧縮強度の低下が無視できなくなり、大きな沈み込みにより居住性の劣化を招く恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車両用フロアスペーサにおいて、所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性をも同時に満足できるようにした発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用フロアスペーサは、車両のフロアフレームに存在する凹溝内に収容設置される車両用フロアスペーサであって、室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0008】
本発明による車両用フロアスペーサにおいて、発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体は、室内側は平板部であり、車両の床面の平坦性を確保するという目的は達成できる。また、フロアスペーサ本体のフロアフレーム側は平板部の裏面から複数本の突条を立設した構成であり、突条全体のフロアフレームに対する接地面積を、当該車両用フロアスペーサに求められる圧縮強度を考慮して適宜設定することにより、軽量化を満足しながら、圧縮強度を満足する車両用フロアスペーサとすることができる。
【0009】
さらに、本発明による車両用フロアスペーサでは、フロアスペーサ本体の前記突条間に形成される空間には、該空間を埋めるようにして吸音材からなる層が形成されている。吸音材からなる層は室外で発生する音が室内に入り込むのを防ぐ吸音壁として機能するので、車両室内に対して高い吸音性能も確保できる。従来の車両用フロアスペーサのように裏面にフェルトのような吸音材を貼り付けるものは、吸音材を介してフロアフレームに接することとなるが、本発明による車両用フロアスペーサは、フロアスペーサ本体の突条がフロアフレームに直接に接しているので、圧縮されやすい材料である吸音材からなる層が存在していても、当該車両用フロアスペーサに対して予め設定された圧縮強度が変化(低下)することはない。そのために、圧縮強度を満足しながら、同時に高い吸音性能を備えることができる。
【0010】
本発明による車両用フロアスペーサの他の態様では、フロアスペーサ本体における前記平板部には複数の貫通孔が形成される。貫通孔を形成することにより、室内側の騒音を該貫通孔を通過させて吸音材からなる層に吸収させることができるので、車両用フロアスペーサの室内音に対する吸音性能も向上させることができる。
【0011】
本発明による車両用フロアスペーサの他の態様では、フロアスペーサ本体における前記複数本の突条の全部または一部に、平板部に沿う方向の留め付け孔が形成される。この留め付け孔は、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層をその位置に安定的に保持するために用いられる。すなわち、本発明による車両用フロアスペーサの好ましい態様では、吸音材からなる層の一部が前記突条に形成された前記留め付け孔に入り込んでおり、振動等により吸音材からなる層が落下するのを確実に阻止している。
【0012】
本発明において、フロアスペーサ本体は任意の発泡樹脂成形体で作ることができるが、熱可塑性樹脂ビーズの発泡成形体であることは好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、などが挙げられる。
【0013】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合して得られるスチレン改質ポリオレフィン系樹脂、特に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂の発泡ビーズを用いることは好ましい。その理由は、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の成形品は、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂に比べて寸法安定性と形状保持性に優れ、ポリスチレン系樹脂に比べ擦れによる粉が出にくいことによる。また、ポリエチレン系樹脂ビーズやポリプロピレン系樹脂ビーズの発泡成形品は全体の寸法収縮率が大きく、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂ビーズの発泡成形品と比較して寸法精度が出にくく、かつ、二次発泡力も小さいことによる。
【0014】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、スチレン成分の割合は40〜90重量%であり、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%である。スチレン成分の割合が40重量%未満では、材料強度(圧縮強度)が相当低下するので、吸音材を配置するために十分な広さの空間を突条間に形成することができない。90重量%を越える場合には、ポリスチレン系樹脂単体と同様に自動車のボデー(車体パネル)との擦れ音の発生などの不都合がある。
【0015】
フロアスペーサ本体の成形に際しては、例えば上記するスチレン改質ポリエチレン系樹脂をはじめとする熱可塑性樹脂に、発泡剤を含浸させて発泡性の熱可塑性樹脂とし、該発泡性の熱可塑性樹脂を加熱水蒸気等で3〜70倍の範囲内で予備発泡させることで予備発泡粒子を製造する。次いで、かかる予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、蒸気加熱等によって発泡成形すればよい。発泡成形時の発泡倍率は3〜70倍である。発泡剤にはブタン、プロパン等を用いることができる。
【0016】
本発明において、吸音材からなる層を構成する吸音材に特に制限はなく、自動車の分野で一般に使用されているものを適宜用いることができる。具体的には、フェルト(例えば、綿、化学繊維等の雑反毛をPETで固めたもの)、ポリウレタン発泡体、不織布、車両用部材のリサイクル材(ウレタン、綿、化学繊維等の粉砕品)をPET樹脂で固めたもの、解繊繊維や動植物製繊維材料、グラスウール、アスファルト発泡体、などを挙げることができる。なかでも、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布は好ましく、そのなかでも、高性能中綿素材からなる不織布(シンサレート(商標名))は好ましい。
【0017】
本発明による車両用フロアスペーサの全体形状は、フロアスペーサ本体が、平板部と、その裏面から複数本の突条が立設していることを条件に、任意であり、例えば、車両への設置時に単に水平部を形成する形状のもの、あるいは図10に示すように水平部の先端に乗員の足が乗る傾斜部を備える形状のもの、などが挙げられる。後者の場合には、水平部および傾斜部を構成する双方の平板部の裏面に複数本の突条が立設される。突条は、円柱形状あるいは角柱形状であってもよく、図10に例示するようなスリットをなす形状であってもよい。いずれの場合も、突条と突条の間には空間が形成されるので、その空間を埋めるようにして前記吸音材からなる層が形成される。
【0018】
本発明による車両用フロアスペーサにおいて、前記吸音材からなる層は、突条間に形成される空間の全体を埋めるようにして形成されてもよく、突条間に形成される空間の一部を埋めるようにして形成されてもよい。当該車両に求められる吸音性能と使用する吸音材の吸音性能を勘案して、いずれかを選択する。後者の場合に、平板部の裏面に突条間に形成される空間の一部が残るようにして吸音材からなる層を形成すると、その残存空間は吸音機能(消音機能)を果たし、吸音性能のさらなる向上を図ることができる。
【0019】
突条間に形成される空間に吸音材を取り付ける態様は任意であり、特に制限はない。接着剤を用いる態様、ステープルのような適宜の留め具を用いる態様などであってよい。しかし、取り付け時の作業効率を考慮すると、吸音材と突条との間の接触のみによって吸音材を所定の位置に保持して、吸音材からなる層を形成する態様は、最も好ましい。この態様は、吸音材を取り付けるときの作業効率が向上することに加え、当該車両用フロアスペーサを廃棄する時等に、異種材料であるフロアスペーサ本体部分と吸音材とを容易に分別して回収できる利点ももたらされる。前記したように、フロアスペーサ本体における前記複数本の突条の全部または一部に、平板部に沿う方向の留め付け孔を形成する場合には、吸音材の一部を該留め付け孔内に入り込ませることにより、突条間に形成される空間に吸音材を一層安定的に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性をも同時に満足できる発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による車両用フロアスペーサの一形態を正面側から見た斜視図、図2は図1に示す車両用フロアスペーサを背面側から見た斜視図、図3は図2のa−a線による断面図であり、図4は図1に示す車両用フロアスペーサの組み立て状態を説明するための図である。
【0022】
車両用フロアスペーサAは、フロアスペーサ本体10と吸音材20とで構成される。フロアスペーサ本体10は、例えばスチレン改質ポリエチレン系樹脂の予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形体である。
【0023】
図示の例において、フロアスペーサ本体10は、水平部11aと該水平部11aの先端に位置する傾斜部11bとで構成され、図4によく示すように、水平部11aと傾斜部11bとは、共に、平板部12a,12bと該平板部12a,12bの裏面側に一体成形された複数の突条13a,13bとで構成される。図示の例で、平板部12a側の突条13aは16個の円筒体であり、平板部12b側の突条13bは4個の長方体である。
【0024】
車両用フロアスペーサAは、図示しない車両フレームに存在する凹溝内に収容設置される。その際に、フロアスペーサ本体10の前記水平部11aは主として嵩上げ材として機能してフロア面が平坦面となるのを確保する。傾斜部11bは運転時の乗員の足が置かれる場所であり、乗員の下肢部衝撃吸収パッドとして機能する。
【0025】
車両用フロアスペーサ10が車内に配置されたときに、水平部11aに係る上載荷重を考慮して平板部12aに対する突条13aの総面積が設定され、また、傾斜部11bに係る衝突時等に生じる衝撃荷重を効果的に吸収できるように平板部12bに対する突条13bの総面積が設定される。なお、この設計思想は、前記特許文献1に記載のように既に知られており、その設計思想に基づき突条13a、13bを形成すると、平板部12a,12bの裏面側において、突条と突条との間には空間14a,14bが形成される。
【0026】
なお、水平部11aと傾斜部11bは同じ発泡倍率であってもよいが、傾斜部11bは大きな衝撃荷重を受けることから、それを効果的に吸収できるように異なった発泡倍率として成形してもよい。その場合、傾斜部11b用の予備発泡粒子として、水平部11aの予備発泡粒子に比して低倍率にて予備発泡させた粒子を用い、成形キャビティ内における水平部11aと傾斜部11bとの境界付近には、双方の粒子が混ざり合わないように予め隔壁を設けておき、区画された各キャビティ内にそれぞれの予備発泡粒子を同時充填し、充填後にキャビティ内から隔壁を速やかに除去して、型内発泡成形することにより、水平部11aと傾斜部11bとで発泡倍率の異なるフロアスペーサ本体10を成形することができる。
【0027】
本発明による車両用フロアスペーサAにおいて、フロアスペーサ本体10の前記突条13a、13bの間の空間14a,14bには、例えば、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布のような吸音材20が埋め込まれ、吸音材からなる層が形成される。図1〜図4に示す例において、吸音材20の厚さは、水平部11aにおいては突条13aの高さとほぼ同じであり、傾斜部11bでは突条13bの高さとほぼ同じである。
【0028】
吸音材20の水平部11aに対応する領域21aには、突条13aに対応する箇所に突条13aの直径よりもやや小さい直径の貫通孔22が形成されており、図4に示すように、フロアスペーサ本体10の裏面から吸音材20を圧入することにより、吸音材20の前記領域21aは、前記空間14aのすべてを埋めるようにして入り込み、吸音材からなる層を形成する。吸音材20は、吸音材20と突条13aとの間の接触でもってその位置に保持される。
【0029】
吸音材20の傾斜部11bに対応する領域21bは、前記領域21aと一部において連続しており、かつ、傾斜部11bの突条13bに対応する箇所には、突条13bの横幅よりもやや狭い幅の切り欠き23が形成されている。領域21bを突条13bの間に圧入することにより、前記領域21bは前記空間14bの埋めるようにして入り込み、吸音材からなる層を形成する。ここでも、吸音材20は、吸音材20と突条13bの間の接触のみでもってその位置に保持される。なお、領域21bの両側に位置する部分21c、21cは必要な場合には補助的に接着剤を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0030】
このようにしてフロアスペーサ本体10に吸音材20を取り付けた後の状態が図1〜図3に示される。図示のように、吸音材20はすべて突条間の空間内に収容され、車両用フロアスペーサAの裏面には、フロアスペーサ本体10の突条13a,13bの下端部が露出している。車両用フロアスペーサAを車両のフロアフレームに存在する凹溝内に収容設置したときに、突条13a,13bの露出した下端面がフロアフレームに直接接して、そこが上載荷重の支持面となる。
【0031】
上記のようであり、本発明による車両用フロアスペーサAでは、フロアスペーサ本体10の裏面には複数本の突条13a,13bが所要の接地面積となるように立設した構成であり、軽量化を満足しながら、圧縮強度を同時に満足することができる。さらに、突条間に形成される空間14a,14bには該空間を埋めるようにして吸音材20からなる層が形成されており、それが吸音壁として機能するので、車両室内に対する高い吸音性能も確保することできる。
【0032】
なお、図1〜図4に示した例では、傾斜部11bの裏面にも吸音材20を配置するようにしたが、求められる吸音性能レベルによっては、この領域の吸音材20を省略してもよい。また、吸音材20の領域21bの両側に位置する部分21c、21cのみを省略してもよい。いずれであっても、車両用フロアスペーサAを廃棄する時等に、異種材料であるフロアスペーサ本体10と吸音材20とを容易に分別して回収することができる。
【0033】
フロアスペーサ本体10は、水平部11aのみのものであってもよく、また傾斜部11bのみのものであってもよい。全体が矩形状であるのも一つの例示であり、フロアフレームに形成される凹溝等の形状に応じて、適宜の形状のフロアスペーサ本体10が用いられる。吸音材20と接触する力を大きくするために、突条13a,13bの周面に凹凸を形成してもよい。傾斜部11bに形成する突条13bは、突条13aのように円筒形状であってもよい。また、突条13a,13bの水平断面形状は、矩形状や長円状でもよい。
【0034】
図5は、本発明による車両用フロアスペーサAの他の実施の形態を示す、図3に相当する図である。ここでは、吸音材20からなる層が、突条13a,13b間に形成される空間14a,14bの全部でなく、一部を埋めるようにして形成されている点で、図1〜図4に示した車両用フロアスペーサAと相違している。この形態の車両用フロアスペーサは、吸音材20が高い吸音性能を有する場合、あるいは車両に高い吸音性能が求められない場合等に、有効に用いることができる。
【0035】
図5aの車両用フロアスペーサA1では、厚さの薄い吸音材20aが突条13a,13bの下端部近傍のみに位置しており、フロアスペーサ本体10の平板部12a,12bと吸音材20aとの間には、空間14cが残存している。この空間14cは吸音室として機能する。図5bの車両用フロアスペーサA2では、厚さの薄い吸音材20aがフロアスペーサ本体10の平板部12a,12bの裏面に接するようにして位置しており、図5cの車両用フロアスペーサA3では、厚さの薄い吸音材20aが突条13a,13bの中間の高さに位置している。
【0036】
図6は、本発明による車両用フロアスペーサAのさらに他の実施の形態を示している。ここでは、フロアスペーサ本体10bとして、傾斜部11bの平板部12bの裏面に形成する突条が円筒状の突条13cであるフロアスペーサ本体10bを用いると共に、図6bに示すように、吸音材20bとして、それぞれの突条13a,13cに対応する箇所に十文字の切り込み線24を形成したものを用いている。なお、図では、水平部11aに対応する吸音材20b1と傾斜部11bに対応する吸音材20b2とを分離したものとして示したが、連続していても差し支えない。
【0037】
切り込み線24の位置を突条13a,13cの位置に合わせて、吸音材20bを圧入することにより、図6aに示すような車両用フロアスペーサA4が完成する。この形態では突条13a,13cと吸音材20bとの間の摩擦力は一層大きくなり、吸音材20bの埋込態様は一層安定する。
【0038】
図7〜図9は、本発明による車両用フロアスペーサAのさらに他の実施の形態を示している。ここでは、フロアスペーサ本体10cとして、図7に裏面から見た状態を示すように、前記平板部12a,12bに多数の貫通孔15を形成するとともに、平板部12a,12bの裏面に形成した円筒状の突条13a,13cには平板部12a,12bに沿う方向(平板部に平行な方向)に走る留め付け孔16を形成したフロアスペーサ本体10cを用いている。なお、図示の例では、突条13a,13cのすべてに留め付け孔16を形成しているが、一部の突条にのみ形成してもよい。また、留め付け孔16は図示のもののように突条13a,13cを貫通していてもよく、一端が閉鎖していてもよい。
【0039】
また、図8bに示すように、吸音材20cとして、それぞれの突条13a,13cに対応する箇所に、前記した留め付け孔16内に入り込むことのできる大きさと形状の舌片25を切り込み線26により形成したものを用いている。なお、27も必要に応じて形成される切り込み線である。なお、図では、水平部11aに対応する吸音材20c1と傾斜部11bに対応する吸音材20c2とを分離したものとして示したが、この場合でも、連続していて差し支えない。
【0040】
フロアスペーサ本体10cに吸音材20cを取り付けるに当たっては、図9aに示すように、切り込み線26で形成される舌片25の位置を突条13a,13cの位置に合わせる。その状態で、吸音材20cを円筒状の突条13a,13cに向けて押し付ける。それにより、図9bに示すように、吸音材20cは舌片25が突条13a,13cの先端で押し上げられた状態で次第に下方に向けて入り込む。吸音材20cがある程度の距離だけ降下すると、押し上げられることにより立ち上がった姿勢となった舌片25は、図9cに示すように、前記留め付け孔16の中に入り込む。必要な場合には、立ち上がった姿勢となった舌片25を前記留め付け孔16内に向けて押し込むことにより、舌片25は留め付け孔16内に入り込んだ姿勢となる。それにより、図8aに示すように、本発明による車両用フロアスペーサA5が完成する。
【0041】
この車両用フロアスペーサA5では、円筒状の突条13a,13cの形成した留め付け孔16内に入り込んだ舌片25は抵抗体として機能し、フロアスペーサ本体10cに対する吸音材20cの取り付け態様は一層安定したものとなり、振動等により吸音材20cが落下するのを確実に阻止することができる。さらに、フロアスペーサ本体10cに多数の貫通孔15を形成したことにより、室内側の騒音を前記貫通孔15を通過させて吸音材20cからなる層で吸収することができ、車両用フロアスペーサA5の室内音に対する吸音性能も向上する。
【0042】
なお、図7〜図9に示したフロアスペーサ本体10cは、貫通孔15と円筒状の突条13a,13cに形成した留め付け孔16の双方を有しているが、貫通孔15を省略することもできる。また、図1〜図6に示したいずれの形態のフロアスペーサ本体10,10bにおける平板部12aおよびまたは12bに対しても、同様にして貫通孔を形成することができ、その場合に、やはり、車両用フロアスペーサの室内音に対する吸音性能は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による車両用フロアスペーサの一形態を正面側から見た斜視図。
【図2】図1に示す車両用フロアスペーサを背面側から見た斜視図。
【図3】図2のa−a線による断面図。
【図4】図1に示す車両用フロアスペーサの組み立て状態を説明するための図。
【図5】図5a〜図5cは本発明による車両用フロアスペーサの他の実施の形態を示す、図3に相当する図。
【図6】図6aは本発明による車両用フロアスペーサのさらに他の実施の形態を示す側面図であり、図6bはそこで用いる吸音材を示す平面図である。
【図7】本発明による車両用フロアスペーサのさらに他の実施の形態で用いるフロアスペーサ本体を示す図。
【図8】図8aは図7に示したフロアスペーサ本体を用いた本発明による車両用フロアスペーサのさらに他の実施の形態を示す側面図であり、図8はそこで用いる吸音材を示す平面図である。
【図9】図8aに示す車両用フロアスペーサの組み立て状態を説明するための図。
【図10】従来の車両用フロアスペーサの一例を示す図。
【符号の説明】
【0044】
A…車両用フロアスペーサ、10…フロアスペーサ本体、11a…水平部、11b…傾斜部、12a,12b…平板部、13a,13b…突条、14a,14b…突条と突条との間の空間、15…貫通孔、16…留め付け孔、20…吸音材、25…舌片、24,26,27…切り込み線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアフレームに存在する凹溝内に収容設置される車両用フロアスペーサであって、
室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備えることを特徴とする車両用フロアスペーサ。
【請求項2】
フロアスペーサ本体における前記平板部には複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項3】
フロアスペーサ本体における前記複数本の突条の全部または一部には平板部に沿う方向の留め付け孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用フロアスペーサであって、吸音材からなる層の一部が前記突条に形成された前記留め付け孔に入り込んでいることを特徴とする車両用フロアスペーサ。
【請求項5】
吸音材からなる層は、突条間に形成される空間の全体または一部を埋めるようにして形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項6】
吸音材が、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布のいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用フロアスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−314160(P2007−314160A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277838(P2006−277838)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】