説明

車両用フードエアバッグ装置

【課題】車両用フードエアバッグ装置において、エアバッグモジュール及びドアをフードに組み付ける際の組付け作業性を大幅に向上させることを目的とする。
【解決手段】車両用フードエアバッグ装置10では、エアバッグモジュール14をフードインナパネル24側からフード12に組み付け、フードアウタパネル22の開口部22Aを覆うドア18については、エアバッグモジュール14とは別に組み付けられる。このため、エアバッグモジュール14の組付け時におけるフードアウタパネル22の傷付きを防止できると共に、ドア18の組付け時における寸法ばらつきの微調整を容易に行うことができ、これらエアバッグモジュール14及びドア18の組付け作業性を大幅に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ袋体をフード外へ膨張させる車両用フードエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フードの後部にエアバッグモジュールを収納する一方、該フードの後部において車幅方向に延びる開口部を、エアバッグモジュールに予組立てされたドアによって開閉可能に覆った車両用フードエアバッグ装置が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−271645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般にフードエアバッグ装置用のエアバッグモジュールは細長くかつ重い部品であり、上記した従来例のように、ドアが予め取り付けられた状態のエアバッグモジュールを、フードの上方から開口部を通じて該フード内に挿入して組み付ける構造とすると、例えばフードの外観、即ち意匠性を考慮してフードの開口部を小さくした場合には、エアバッグモジュールの組付け作業性が低下するだけでなく、エアバッグモジュールの組付け時にフードアウタパネルの意匠面を傷付け易い。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両用フードエアバッグ装置において、エアバッグモジュール及びドアをフードに組み付ける際の組付け作業性を大幅に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、インフレータからのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体を有し、フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に該フードインナパネル側から挿入され、該フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメント及び前記フードインナパネルに対して組み付けられたエアバッグモジュールと、該エアバッグモジュールに対応して前記フードアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に、前記エアバッグ袋体の膨張時にその膨張力により展開して該開口部を開放するように、該開口部の周縁に係止されたドアと、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードアウタパネルの開口部を覆うドアを、フードアウタパネル側から該フードアウタパネルに組み付けるようにし、エアバッグモジュールをフードインナパネル側からフード内に挿入して組み付けるようにしたので、エアバッグモジュール及びドアをフードに組み付ける際の組付け作業性を大幅に向上させることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジを有し、該ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有しており、前記リインフォースメントに対して配設された連結部材に、該リインフォースメントに対して所定範囲内で相対変位可能となるように連結されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ドアのヒンジを、リインフォースメントに対して配設された連結部材に、該リインフォースメントに対して相対変位可能なフローティング状態で連結する構成としたので、ドアをフードアウタパネルに組み付ける際の寸法のばらつきを吸収することができる。この場合、エアバッグモジュールの組立ての際の寸法のばらつきや、該エアバッグモジュールのフードへの組付けの際の寸法のばらつきを考慮する必要がない。このため、ドアをフードアウタパネルへ組み付ける際の組付け作業性を更に向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置では、エアバッグ袋体の膨張力によりドアが押し上げられると、該ドアよりも低剛性に構成されたヒンジが塑性変形することで該ドアの展開が支持され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部がドアの展開に伴って伸長することで、該ドアがヒンジを中心としてフードアウタパネル上へ反転するように展開する。このため、エアバッグ袋体の膨張時に、ドアをヒンジにより支持した状態で展開させて開口部を開放することが可能である。
【0010】
請求項3の発明は、インフレータからのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体を有し、フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に該フードインナパネル側から挿入され、該フードインナパネルに対して組み付けられたエアバッグモジュールと、該エアバッグモジュールに予め組み付けられ、該エアバッグモジュールに対応して前記フードアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に前記エアバッグ袋体の膨張時にその膨張力により展開して該開口部を開放するように構成され、該開口部の周縁との間にシール部材を配設するためのシール面を有するドアと、を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ドアが予め組み付けられたエアバッグモジュールを、フードインナパネル側からフード内に挿入して組み付けるようにしたので、組付け作業時におけるフードアウタパネルの外面の傷付きを防止することができ、これによってフードの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジを有し、該ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有していることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置では、エアバッグ袋体の膨張力によりドアが押し上げられると、該ドアよりも低剛性に構成されたヒンジが塑性変形することで該ドアの展開が支持され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部がドアの展開に伴って伸長することで、該ドアがヒンジを中心としてフードアウタパネル上へ反転するように展開する。このため、エアバッグ袋体の膨張時に、ドアをヒンジにより支持した状態で展開させて開口部を開放することが可能である。
【0014】
請求項5の発明は、前記フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメントを更に備え、前記エアバッグモジュールは、前記リインフォースメント及び前記フードインナパネルに対して組み付けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードインナパネルとフードアウタパネルとがリインフォースメントにより連結されて補強されており、エアバッグモジュールは該リインフォースメント及びフードインナパネルに対して組付けられているので、エアバッグモジュール組付け位置におけるフードの剛性をより向上させることができる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1、請求項2及び請求項5の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記フードインナパネル及び前記リインフォースメントに、前記フードアウタパネルの前記開口部の車両前後方向の開口幅よりも大きく開口した前記エアバッグモジュール組付け用の挿入口が形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードインナパネル及びリインフォースメントに形成されたエアバッグモジュール組付け用の挿入口とフードアウタパネルの開口部の車両前後方向の開口幅について、挿入口の方が大きく設定されているので、エアバッグモジュールの組付け作業性が向上するだけでなく、エアバッグモジュールの前後寸法を大きく設定し、高さ寸法を相対的に小さく設定することが可能である。
【0018】
また、請求項6に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードアウタパネルの開口部の車両前後方向の開口幅を、意匠性の観点から狭く設定しつつ、エアバッグモジュールの高さ寸法を小さく設定できるので、車両への搭載性を向上させることが可能である。
【0019】
請求項7の発明は、請求項3又は請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記フードインナパネルに、前記フードアウタパネルの前記開口部の車両前後方向の開口幅よりも大きく開口した前記エアバッグモジュール組付け用の挿入口が形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードインナパネルに形成されたエアバッグモジュール組付け用の挿入口とフードアウタパネルの開口部の車両前後方向の開口幅について、挿入口の方が大きく設定されているので、エアバッグモジュールの組付け作業性が向上するだけでなく、エアバッグモジュールの前後寸法を大きく設定し、高さ寸法を相対的に小さく設定することが可能である。
【0021】
また、請求項7に記載の車両用フードエアバッグ装置では、フードアウタパネルの開口部の車両前後方向の開口幅を、意匠性の観点から狭く設定しつつ、エアバッグモジュールの高さ寸法を小さく設定できるので、車両への搭載性を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグモジュール及びドアをフードに組み付ける際の組付け作業性を大幅に向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0023】
請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、ドアをフードアウタパネルへ組み付ける際の組付け作業性を更に向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0024】
請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、フードの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0025】
請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグ袋体の膨張時に、ドアをヒンジにより支持した状態で展開させて開口部を開放することができる、という優れた効果が得られる。
【0026】
請求項5に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグモジュール組付け位置におけるフードの剛性をより向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0027】
請求項6に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグモジュールの組付け作業性を向上させると共に、車両への搭載性を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0028】
請求項7に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグモジュールの組付け作業性を向上させると共に、車両への搭載性を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係る車両用フードエアバッグ装置10は、車両における例えばフロント側のフード12に設けられており、エアバッグモジュール14と、ドア18とを有している。
【0031】
図1から図3において、エアバッグモジュール14は、インフレータ26からのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体16を有し、フード12におけるフードアウタパネル22とフードインナパネル24との間に該フードインナパネル24側から挿入され、該フードインナパネル24とフードアウタパネル22とを連結して補強するリインフォースメント40及びフードインナパネル24に対して組み付けられている。エアバッグ袋体16及びインフレータ26は、共にモジュールケース28内に収納されており、エアバッグ袋体16はインフレータ26からのガスの供給を受けてフードアウタパネル22の開口部22Aを通じてフード12外へ膨張展開するように構成されている。
【0032】
モジュールケース28は、フードアウタパネル22の開口部22Aに対応して開口すると共に、車幅方向に長尺に形成された箱状部材であり、具体的には、車両前側の壁部材30と、車両後側の壁部材32と、底部部材34とを例えば溶接することで箱形状に形成されている。底部部材34には、壁部材30より車両前方及び壁部材32より後方に夫々延長されたフランジ部34Fが設けられている。即ちエアバッグモジュール14は、モジュールケース28のフランジ部34Fの部分において、ボルト36及びナット38を用いてフードインナパネル24に取り付けられ、リインフォースメント40と共締めされている。
【0033】
リインフォースメント40は、例えば断面逆ハット形に形成され、フードアウタパネル22とフードインナパネル24との間に車幅方向に延設されている。またリインフォースメント40は、フードインナパネル24に対して直接的に結合されており、例えばマスチック42を介してフードアウタパネル22を支持するように構成されている。
【0034】
インフレータ26は、モジュールケース28内に収納され、図示しない衝突体が車両の前部に衝突した際に、エアバッグ袋体16に対して膨張用のガスを供給するためのガス供給源であって、例えば、取付けブラケット44を用いることでモジュールケース28の車両前側の壁部材30寄りの底部部材34に固定されている。
【0035】
図3に示されるように、フードインナパネル24及びリインフォースメント40には、フードアウタパネル22の開口部22Aの車両前後方向の開口幅よりも大きく開口したエアバッグモジュール組付け用の挿入口70が形成されている。
【0036】
ドア18は、エアバッグモジュール14に対応してフードアウタパネル22に形成された開口部22Aを覆うと共に、エアバッグ袋体16の膨張時にその膨張力により展開して該開口部22Aを開放するように、該開口部22Aの周縁22Bに係止される蓋体であって、例えばアルミニウムや鉄の鋼板を成形したドアフレーム46の上から、合成樹脂性のカバー48を固着して構成され、図2に示されるように、フードアウタパネル22の開口部22Aの周縁22Bに、弾性変形することでフードアウタパネルから離脱可能な複数個のクリップ62により係止され、開口部22Aを覆う位置に保持されている。カバー48と周縁22Bとの間にはシール部材50が配設されている。クリップ62は、例えばドアフレーム46に固着されており、エアバッグ袋体16の膨張力がドア18に作用した際に弾性変形して、周縁22Bから離脱するようになっている。
【0037】
図1,図3において、ヒンジ21は、フードインナパネル24に対して所定範囲内で相対変位可能となるように、該フードインナパネル24側の連結部材の一例たる段付きボルト52に連結され、ドア18の展開時に該ドア18を支持する部材であって、ドア18におけるドアフレーム46の後端側に、例えば該ドア18の長さ方向に沿って複数箇所設けられている。ヒンジ21のうち、段付きボルト52に連結される先端部21Bは、補強部材58により補強され、かつ先端部21B及び補強部材58には、段付きボルト52のスパン52Aが隙間をもって挿通される貫通穴60が形成されている。
【0038】
段付きボルト52は、リインフォースメント40に固着された取付けブラケット54に、ナット56を用いて締結されており、ヒンジ21の車両上下方向及び車両前後方向への相対変位を所定範囲内で許容するスパン52Aを有している。
【0039】
ヒンジ21の先端部21Bに設けられた貫通穴60の形状は、少なくともヒンジ21の車両上下方向の相対変位を許容するように、例えば段付きボルト52の軸方向と直角方向、即ち略車両上下方向に長い長穴として形成されている。この貫通穴60の長さを大きく設定すると、先端部21Bとスパン52Aとの間の隙間が大きくなり、段付きボルト52におけるヒンジ21の車両上下方向の相対変位可能範囲を拡大させることができる。従って、貫通穴60の形状設定により、段付きボルト52におけるヒンジ21の車両上下方向の相対変位可能範囲内において、クリップ62をフードアウタパネル22から離脱させることも可能である。なお、貫通穴60の形状は、これに限られるものではなく、例えば車幅方向の相対変位を許容するように、貫通穴60の車幅方向径をより大きく設定してもよい。
【0040】
またヒンジ21は、例えばドア18のドアフレーム46の後端側に一体的に設けられ、ドア18の展開に伴って塑性変形し易いように該ドア18のドアフレーム46より低剛性に構成されている。更にヒンジ21は、余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部21Aを有している。変形可能部21Aは、ヒンジ21の低剛性部分を折曲げて余長部としたものであり、ドア18の展開に伴って伸長するようになっている。なお、変形可能部21Aの折曲げ形状や余長量は、図示のものに限られない。
【0041】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。まず、フード12に対するドア18の組付けについて説明すると、図3において、ドアフレーム46にカバー48を固着すると共に、ヒンジ21の先端部21Bに補強部材58を固着してドア18としておき、該ドア18をフードアウタパネル22の上側から該フードアウタパネル22に嵌め込んで、クリップ62を開口部22Aの周縁22Bに係合させる(図2)。そして、図1,図3に示されるように、ヒンジ21の先端部21Bの貫通穴60に段付きボルト52を通し、該段付きボルト52を取付けブラケット54に固着されているナット56に締結することで、フードインナパネル24側に組み付ける。ドア18自体は軽い部品であるので、フード12に対する組付け作業性は良好である。
【0042】
このとき、ドア18のヒンジ21は、段付きボルト52にフローティング状態で連結され、フードインナパネル24に対して所定範囲内、即ちスパン52Aと貫通穴60との間の隙間の範囲内、及びスパン52Aの長さの範囲内で相対変位可能となっているので、ドア18の位置を微調整することができ、ドア18の組付け時における開口部22Aと該ドア18との間の寸法のばらつきを、ヒンジ21が段付きボルト52に対して相対変位することで吸収することができる。
【0043】
またドア18は、エアバッグモジュール14に対してはサブアッセンブリされないので、該サブアッセンブリ時の寸法ばらつきについては考慮する必要がない。このため、フードアウタパネル22の開口部22Aと該開口部22Aに設けられるドア18との意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることが可能である。また、ドア18をエアバッグモジュール14と分離しているので、エアバッグモジュール14にドア18が組み付けられている場合と比較して、上下振動によるドア18の車両上下方向の動き量を少なくできるので、該上下振動対策としてのフローティング量を抑制することが可能である。
【0044】
次に、図3において、フード12に対するエアバッグモジュール14の組付けについて説明すると、モジュールケース28内にインフレータ26及びエアバッグ袋体16を収納して予めサブアッセンブリ化したエアバッグモジュール14を、エアバッグモジュール組付け用の挿入口70からフード12内に挿入し、フランジ部34Fをフードインナパネル24に当接させ、ボルト36をフードインナパネル24及びリインフォースメント40に通し、ナット38に対して締結すると、エアバッグモジュール14の組付けが完了する。
【0045】
挿入口70とフードアウタパネル22の開口部22Aの車両前後方向の開口幅については、挿入口70の方が大きく設定されているので、エアバッグモジュール14の組付け作業性が向上するだけでなく、エアバッグモジュール14の前後寸法を大きく設定し、高さ寸法を相対的に小さく設定することが可能である。これにより、フードアウタパネル22の開口部22Aの車両前後方向の開口幅を、意匠性の観点から狭く設定しつつ、エアバッグモジュール14の高さ寸法を小さく設定できるので、車両への搭載性を向上させることが可能である。例えば、フード12が設けられるエンジンコンパートメント内の部品(図示せず)との位置関係により、フードアウタパネル22とフードインナパネル24の間の空間が制限される場合でも、該空間にエアバッグモジュール14を組み付けることが可能となる。なお、エアバッグモジュール14の前後寸法を大きく設定する場合には、エアバッグ16の膨張を考慮して、モジュールケース28の上部を、フードアウタパネル22の開口部22Aの開口幅と同等以下に絞り込むことが好ましい。
【0046】
このように、車両用フードエアバッグ装置10では、ドア18とエアバッグモジュール14とを別々に組み付けるようにしたので、エアバッグモジュール14及びドア18をフード12に組み付ける際の組付け作業性を大幅に向上させることができる。
【0047】
通常使用時においては、図2に示されるように、ドア18が複数個のクリップ62によりフードアウタパネル22の開口部22Aを覆う位置に保持されているので、開口部22Aはドア18により安定的に覆われた状態となっている。このため、通常使用時に開口部22Aとドアとの意匠性を良好に維持できる。
【0048】
次に、衝突体が車両の前部に衝突した場合の作用について説明する。この場合、図1において、車両用フードエアバッグ装置10のインフレータ26が作動して、該インフレータ26から多量のガスがモジュールケース28内に折り畳み収納されているエアバッグ袋体16へ供給される。これによりエアバッグ袋体16が膨張し始めると、その膨張力によりドア18が開き、該エアバッグ袋体16がフード12の外へ膨張展開し、該エアバッグ袋体16に衝突体が当たることで、その衝撃が吸収される。
【0049】
具体的には、図2において、エアバッグ袋体16の膨張時にその膨張力がドア18に作用し、該ドア18がエアバッグ袋体16の膨張力により押し上げられると、クリップ62が弾性変形してフードアウタパネル22から離脱し、ドア18が展開可能となる。このとき、ヒンジ21は、貫通穴60の下端が段付きボルト52に至るまで、該段付きボルト52に対して相対変位することができ、貫通穴60の下端が段付きボルト52に至ったところで先端部21Bが該段付きボルト52に係止される。ヒンジ21の先端部21Bは、補強部材58により補強されており、また段付きボルト52は、リインフォースメント40に対して配設されているので、段付きボルト52における先端部21Bの係止状態が安定している。
【0050】
ヒンジ21の相対変位可能範囲の設定によっては、該相対変位可能範囲内においてクリップ62がフードアウタパネル22から離脱することができるので、ヒンジ21の存在がクリップ62の離脱の妨げになることを抑制でき、クリップ62をフードアウタパネル22から円滑に離脱させることができる。
【0051】
続いて、エアバッグ袋体16の膨張力によりドア18が押し上げられた際には、該ドア18よりも低剛性に構成されたヒンジ21が塑性変形することで該ドア18の展開が安定的に支持される。更に、余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部21Aがドア18の展開に伴って伸長することで、例えばドア18が押し上げられて、すべてのクリップ62がフードアウタパネル22から離脱した後に、該ドア18がヒンジ21を中心としてフードアウタパネル22上へ反転するようにでき、安定したクリップ62の離脱を行うことで、ドア18を円滑に展開させることが可能である(展開状態については図示せず)。ドア18が展開することで、開口部22Aが開放され、該開口部22Aを通じてエアバッグ袋体16がフード12外へ膨張展開することが可能となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、連結部材の一例として段付きボルト52を挙げたが、これに限られるものではなく、ヒンジ21をフローティング状態で連結できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。また、ドアフレーム46の上からカバー48を固着することでドア18を構成するものとしたが、これに限られるものではなく、例えばカバー48を用いずに、ドアフレーム46自体がフードアウタパネル22の開口部22Aを覆うようにしてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
図4において、本実施の形態に係る車両用フードエアバッグ装置20は、車両における例えばフロント側のフード12に設けられており、エアバッグモジュール74と、ドア78とを有している。
【0054】
エアバッグモジュール74は、インフレータ26からのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体16を有し、フード12におけるフードアウタパネル22とフードインナパネル24との間に該フードインナパネル24側から挿入され、該フードインナパネル24に対して組み付けられている。エアバッグ袋体16及びインフレータ26は、共にモジュールケース76内に収納されており、エアバッグ袋体16はインフレータ26からのガスの供給を受けてフードアウタパネル22の開口部22Aを通じてフード12外へ膨張展開するように構成されている。
【0055】
モジュールケース76は、フードアウタパネル22の開口部22Aに対応して開口すると共に、車幅方向に長尺に形成された箱状部材であり、具体的には、略箱状に形成された底部部材84の車両前側に、上縁80Aにドア78の前縁78Aを係止するためのクリップ82が固着された壁部材80を、例えば溶接することで構成されている。底部部材84には、該底部部材84より車両前方及び後方にまで、具体的には挿入口70の車両前後方向の開口幅よりも車両前後方向に長く延びる取付けブラケット86が固着されている。即ちエアバッグモジュール74は、取付けブラケット86、ボルト36及びナット38を用いることでフードインナパネル24に取り付けられている。
【0056】
インフレータ26の取付けブラケット44には、おねじ部88が設けられており、該おねじ部88は底部部材84及び壁部材80に挿通されている。該おねじ部88に対してナット90を締結することにより、インフレータ26がモジュールケース76に固定されると共に、底部部材84及び壁部材80が共締めされている。
【0057】
図5に示されるように、ドア78は、エアバッグモジュール74に予め組み付けられ、該エアバッグモジュール74に対応してフードアウタパネル22に形成された開口部22Aを覆うと共にエアバッグ袋体16の膨張時にその膨張力により展開して該開口部22Aを開放するように構成され、該開口部22Aの周縁22Bとの間にシール部材92を配設するためのシール面78Bを有している。具体的には、ドア78の後端部にはヒンジ96が設けられ、該ヒンジ96は底部部材84の後壁部84Eに例えばリベット94を用いて固定されている。ドア78の前縁78Aは、壁部材80の上縁80Aに設けられたクリップ82に係止されている。シール部材92は、ドア78とフードアウタパネル22との間の水密性を高めるための、例えばゴムシールである。
【0058】
ヒンジ96は、ドア78の展開に伴って塑性変形し易いように該ドア78より低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部96Aを有している。変形可能部96Aは、ヒンジ96の低剛性部分を折曲げて余長部としたものであり、ドア78の展開に伴って伸長するようになっている。なお、変形可能部96Aの折曲げ形状や余長量は、図示のものに限られない。
【0059】
図5に示されるように、エアバッグモジュール74がフード12に組み付けられる前の状態において、シール部材92は、フードアウタパネル22の開口部22Aの周縁22Bに設けられているが、これに限られず、エアバッグモジュール74側、即ちドア78のシール面78Bに設けてられていてもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、エアバッグモジュール74を組み付けることで、フードアウタパネル22とフードインナパネル24とを連結して補強できるため、リインフォースメントを配設していないが、これに限られず、リインフォースメントを追加してもよい。
【0061】
他の部分は、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5において、フード12に対するエアバッグモジュール74の組付けについて説明すると、予めモジュールケース76内にインフレータ26及びエアバッグ袋体16を収納しドア78を組み付けてエアバッグモジュール74をサブアッセンブリ化しておく。このエアバッグモジュール74をエアバッグモジュール組付け用の挿入口70からフード12内に挿入し、取付けブラケット86をフードインナパネル24に当接させる。そして、ボルト36をフードインナパネル24に通し、ナット38に対して締結すると、ドア78が開口部22Aを覆うと共に、シール面78Bがシール部材92に当接して、エアバッグモジュール74の組付けが完了する。
【0063】
このように、車両用フードエアバッグ装置20では、ドア78が予め組み付けられたエアバッグモジュール74を、フードインナパネル24側からフード12内に挿入して組み付けるようにしたので、組付け作業時におけるフードアウタパネル22の外面の傷付きを防止することができ、これによってフード12の意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることができる。また、開口部22Aの周縁22Bとドア78のシール面78Bとの間にシール部材92を配設することで、エアバッグモジュール74をフードインナパネル24側からフード12内に挿入する際における該ドア78の傷付きを防止することができる。
【0064】
次に、衝突体が車両の前部に衝突した場合の作用について説明する。この場合、図4において、車両用フードエアバッグ装置20のインフレータ26が作動して、該インフレータ26から多量のガスがモジュールケース76内に折り畳み収納されているエアバッグ袋体16へ供給される。これによりエアバッグ袋体16が膨張し始めると、その膨張力によりドア78が開き、該エアバッグ袋体16がフード12の外へ膨張展開し、該エアバッグ袋体16に衝突体が当たることで、その衝撃が吸収される。
【0065】
具体的には、エアバッグ袋体16の膨張時にその膨張力がドア78に作用し、該ドア78がエアバッグ袋体16の膨張力により押し上げられると、ドア78の前縁78Aが塑性変形しながらクリップ82から離脱し、該ドア78が展開可能となる。ドア78が展開する際には、該ドア78よりも低剛性に構成されたヒンジ96が塑性変形することで該ドア78の展開が安定的に支持される。更に、余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部96Aがドア78の展開に伴って伸長することで、ドア78の前縁78Aがクリップ62から離脱した後に、該ドア78がヒンジ96を中心としてフードアウタパネル22上へ反転することができる。このため、ドア78を円滑に展開させることが可能である(展開状態については図示せず)。ドア78が展開することで、開口部22Aが開放され、該開口部22Aを通じてエアバッグ袋体16がフード12外へ膨張展開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1から図3は、第1実施形態に係り、図1は、通常使用時における車両用フードエアバッグ装置を、車幅方向におけるヒンジの位置で断面した状態を示す断面図である。
【図2】通常使用時における車両用フードエアバッグ装置を、車幅方向におけるクリップの位置で断面した状態を示す断面図である。
【図3】車両用フードエアバッグ装置を分解し、車幅方向におけるヒンジの位置で断面した状態を示す断面図である。
【図4】図4,図5は、第2実施形態に係り、図4は、通常使用時における車両用フードエアバッグ装置を、車幅方向におけるヒンジの位置で断面した状態を示す断面図である。
【図5】車両用フードエアバッグ装置を分解し、車幅方向におけるヒンジの位置で断面した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用フードエアバッグ装置
12 フード
14 エアバッグモジュール
16 エアバッグ袋体
18 ドア
20 車両用フードエアバッグ装置
21 ヒンジ
21A 変形可能部
22 フードアウタパネル
22A 開口部
22B 周縁
24 フードインナパネル
26 インフレータ
40 リインフォースメント
52 段付きボルト(連結部材)
54 取付けブラケット(連結部材)
62 クリップ
70 挿入口
74 エアバッグモジュール
76 モジュールケース
78 ドア
78B シール面
92 シール部材
96 ヒンジ
96A 変形可能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータからのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体を有し、フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に該フードインナパネル側から挿入され、該フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメント及び前記フードインナパネルに対して組み付けられたエアバッグモジュールと、
該エアバッグモジュールに対応して前記フードアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に、前記エアバッグ袋体の膨張時にその膨張力により展開して該開口部を開放するように、該開口部の周縁に係止されたドアと、
を有することを特徴とする車両用フードエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジを有し、
該ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有しており、前記リインフォースメントに対して配設された連結部材に、該リインフォースメントに対して所定範囲内で相対変位可能となるように連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項3】
インフレータからのガスの供給を受けて膨張展開するエアバッグ袋体を有し、フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に該フードインナパネル側から挿入され、該フードインナパネルに対して組み付けられたエアバッグモジュールと、
該エアバッグモジュールに予め組み付けられ、該エアバッグモジュールに対応して前記フードアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に前記エアバッグ袋体の膨張時にその膨張力により展開して該開口部を開放するように構成され、該開口部の周縁との間にシール部材を配設するためのシール面を有するドアと、
を有することを特徴とする車両用フードエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジを有し、
該ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有して前記エアバッグモジュールに連結されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項5】
前記フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメントを更に備え、
前記エアバッグモジュールは、前記リインフォースメント及び前記フードインナパネルに対して組み付けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項6】
前記フードインナパネル及び前記リインフォースメントに、前記フードアウタパネルの前記開口部の車両前後方向の開口幅よりも大きく開口した前記エアバッグモジュール組付け用の挿入口が形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項5の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項7】
前記フードインナパネルに、前記フードアウタパネルの前記開口部の車両前後方向の開口幅よりも大きく開口した前記エアバッグモジュール組付け用の挿入口が形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196798(P2007−196798A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16596(P2006−16596)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】