説明

車両用フード構造

【課題】 衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合のフードの折れ曲がり効果との両立を可能とする。
【解決手段】 フード10のフードインナパネル14の中央領域14Eには、骨格としての複数のビード18が車幅方向に沿って直線状に形成されている。ビード18の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、車体上方へ凸の円弧形状になっており、この断面形状は、車幅方向に渡って略一定になっている。また、各ビード18の車幅方向両端部18Bは、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部14C、14Dの近傍に達している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に適用される車両用フード構造に関し、特に、車両へ衝突した衝突体を保護することが考慮された車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両へ衝突した衝突体を保護することが考慮された車両用フード構造がある。この車両用フード構造においては、フードインナパネルに骨格を、前後、左右、斜め方向に形成し、フードの剛性及び強度を確保することで、衝突体がフードに衝突した際に、フードがエンジンルーム内の部品に衝突する、所謂2次衝突の発生を抑制するようになっている。また、この車両用フード構造においては、フードインナパネルに車幅方向に延びる低剛性部を形成し、フードに車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合に、この低剛性部によってフードをくの字に折り曲げることで、車両の前突時にフードが車体後方へ移動するのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−233248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の車両用フード構造では、フードインナパネルに形成した斜立骨に車幅方向に延びる低剛性部を形成しており、斜立骨における低剛性部を形成した部位の剛性及び強度が低下している。この結果、衝突体が、低剛性部を形成したフードの部位に略車体上方から略車体下方へ向かって衝突した場合には、衝突体が衝突したフードの部位が局所変形し易い。このため、フードによって衝突エネルギを十分に吸収できず、フードが車体下方側へ大きく変形し、エンジンルーム内の部品に衝突する2次衝突が発生し易い。
【0004】
即ち、特許文献1の車両用フード構造では、衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度の確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合に、フードを折り曲げることで、車両の前突時にフードが車体後方へ移動するのを防止するという、所謂、フードの折れ曲がり効果との両立が難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合のフードの折れ曲がり効果との両立が可能な車両用フード構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、フードアウタパネルと、該フードアウタパネルの下方に配設されたフードインナパネルとを備え、車体前後方向後部がフードヒンジを介して車体に取付支持された車両用フード構造であって、
前記フードインナパネルの外周縁部を除く中央領域に車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿ってのみ連続形成された骨格を有し、前記骨格は車幅方向両端部が前記フードインナパネルの車幅方向両端部に達していることを特徴とする。
【0007】
従って、フードインナパネルの外周縁部を除く中央領域に、骨格が車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿ってのみ連続形成されており、骨格の車幅方向両端部がフードインナパネルの車幅方向両端部に達している。このため、これらの骨格によって、衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度を確保することができる。この結果、フードに衝突体が、略車体上方から略車体下方へ向かって衝突した場合には、衝突体が衝突したフードの部位が局所変形するのを防止でき、2次衝突の発生を抑制できる。
【0008】
また、フードインナパネルに形成した骨格が、車幅方向に沿ってのみ連続形成されており、骨格が形成されていない車体前後方向に沿っては、フードの剛性及び強度が低くなっている。このため、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合には、フードが、前端部と、フードヒンジを介して車体に取付支持された後部と、の間で容易に折れ曲がり、車両の前突時にフードが車体後方へ移動するのを防止できる。
【0009】
この結果、衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度の確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合のフードの折れ曲がり効果との両立が可能である。
【0010】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車両用フード構造であって、前記骨格は車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であることを特徴とする。
【0011】
従って、請求項1に記載の内容に加えて、骨格の車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であるため、フードの車幅方向全域において衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度を確保できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明は、フードアウタパネルと、フードアウタパネルの下方に配設されたフードインナパネルとを備え、車体前後方向後部がフードヒンジを介して車体に取付支持された車両用フード構造であって、フードインナパネルの外周縁部を除く中央領域に車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿ってのみ連続形成された骨格を有し、骨格は車幅方向両端部がフードインナパネルの車幅方向両端部に達しているため、フードの剛性及び強度確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した場合のフードの折れ曲がり効果との両立が可能であるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車両用フード構造であって、骨格は車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であるため、請求項1に記載の効果に加えて、フードの車幅方向全域において衝突体を保護するためのフードの剛性及び強度を確保できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における車両用フード構造の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0015】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0016】
図1に示される如く、本実施形態のフード10は、自動車の車体前部に形成されたエンジンルームを開閉可能に覆うフロントフードであって、フード10の車体前後方向後部の車幅方向両端部10Aは、各々フードヒンジ11によって車体、例えば、フロントウインドシールドガラス13の前方側となるカウルサイド部に支持されている。
【0017】
図2に示される如く、フード10は車体後方側から車体前方側へ向かって下方に滑らかに湾曲しており、前端部10Bの車幅方向中央部に配設されたフードロック装置15によって、エンジンルームを閉塞した状態に保持できるようになっている。
【0018】
フード10は、フード10の車体外側面を構成するフードアウタパネル12と、フードアウタパネル12のフード内側(裏面側)に配設され、フード10の内側部を構成するフードインナパネル14とを備えている。また、フードアウタパネル12の外周部はフードインナパネル14の外周部に結合されており、フード10はフードアウタパネル12とフードインナパネル14とで最中構造とされた、所謂波型フードとなっている。なお、フードアウタパネル12とフードインナパネル14の中央部の適宜箇所は接着剤によって接着されている。
【0019】
図1に示される如く、フードインナパネル14における外周縁部は前端縁部14A、後端縁部14B、左右の車幅方向両端部14C、14Dで構成されており、前端縁部14A、後端縁部14B、左右の車幅方向両端部14C、14Dの内側が中央領域14Eとなっている。また、これらの前端縁部14A、後端縁部14B、左右の車幅方向両端部14C、14Dは、フードインナパネル14をプレス加工等によって車体下方へ突出変形することによって成形されており、中央領域14Eに比べて剛性及び強度が高くなっている。
【0020】
また、フードインナパネル14の中央領域14Eには、車体前後方向に所定の間隔を開けてフード10の骨格となる複数のビード18が車幅方向に沿って直線状に連続形成されている。なお、骨格とは、車幅方向に連続した湾曲構造(山形構造)になっており、車幅方向の軸線が曲げに対して周囲の部位に比べて強い部位を示している。
【0021】
ビード18は、プレス成形等でフードインナパネル14を車体上方へ突出変形させることによって形成されており、各ビード18の断面形状及びビード18の間隔は略等しくなっている。
【0022】
図2に示される如く、フードインナパネル14の各ビード18の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、車体上方へ凸の円弧形状になっており、各ビード18の頂部18Aには、凹部20が車幅方向に沿ってプレス成形等で頂部18Aを車体下方へ向かって膨出させることによって形成されている。また、これらの凹部20には、各ビード18の頂部18Aをフードアウタパネル12の下面に接合するための接着剤22が塗布されている。
【0023】
また、ビード18の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、車幅方向に渡って略一定になっている。
【0024】
なお、断面形状が車幅方向に渡って略一定とは、ビード18の曲げ剛性及び曲げ強度が、車幅方向に渡って所定範囲内(−20%〜+20%)となる断面形状を意味している。このため、断面形状が車幅方向に渡って一定でも良く又は多少変化していても良い。
【0025】
また、各ビード18の車幅方向両端部18Bは、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部14C、14Dの近傍に達している。
【0026】
なお、フードインナパネル14に形成した各ビード18における頂部18Aは、フードアウタパネル12に接近している。この結果、これらの部位では、フード10を車幅方向に沿って切断した断面の面積が他の部位に比べて小さくなっており、フード10を剛性及び強度が他の部位に比べて低くなっている。この結果、図2に示される如く、車体が壁M等に前方から衝突(前突)し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図2の矢印F)が作用した場合には、フード10の車幅方向両端部10Aが各々フードヒンジ11によって車体に支持されているため、フードインナパネル14に形成した各ビード18における頂部18Aが、フード10の屈曲の起点となる。
【0027】
図1に示される如く、車体前方から2本目のビード18における頂部18Aの車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部14C、14Dの部位には、クラッシュビード26がそれぞれ形成されている。これらのクラッシュビード26は、フードインナパネル14の一部をフードアウタパネル12側にプレス加工等によって膨出させることによって形成されている。このため、クラッシュビード26を形成した部位においてフード10の厚さが薄くなっており、クラッシュビード26を形成した部位は、左右の車幅方向両端部14C、14Dにおける他の部位に比べて剛性及び強度が低くなっている。
【0028】
従って、図2に示される如く、車体が壁M等に前方から衝突(前突)し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図2の矢印F)が作用した場合には、フード10の車幅方向両端部10Aが各々フードヒンジ11によって車体に支持されているため、クラッシュビード26(図1参照)が、フード10の屈曲の起点となる。
【0029】
即ち、クラッシュビード26を形成したことで、車体前方から2本目のビード18における頂部18Aにおいて、フード10が折れ曲がるようになっている。なお、クラッシュビード26を形成しない場合には、少なくとも何れかの1つのビード18における頂部18Aにおいて、フード10が折れ曲がるようになっている。
【0030】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0031】
本実施形態では、図2に示される如く、衝突体Kが車体前方斜め上方から車体後方斜め下方(矢印A方向)へ向かってフード10に衝突した場合には、フードアウタパネル12とともに、フードインナパネル14のビード18が下方へ変形して衝突エネルギを吸収する。
【0032】
この時、各ビード18がフードインナパネル14に車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿って連続形成されており、各ビード18の車幅方向両端部18Bが、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部14C、14Dの近傍に達している。この結果、これらの各ビード18によって、衝突体Kを保護するためのフード10の剛性及び強度を確保することができる。このため、衝突体Kが衝突したフード10の部位が局所変形するのを防止でき、フード10がエンジンルーム内の部品に衝突する、所謂2次衝突の発生を抑制できる。
【0033】
また、各ビード18が車幅方向に沿って長いため、衝突時の応力をフード10の広範囲に伝播させることができ、衝突初期のエネルギ吸収量を増加できる。この結果、衝突後期の最大加速度を低減できる。
【0034】
この結果、図3に示される如く、衝突体KのストロークSと衝突体Kの減速度となる負の加速度Gとの関係は、ストロークSの増加に伴って加速度Gが上昇し、ストロークS0で加速度Gが最大値G0に達した後、ストロークSの増加に伴い加速度Gが下降し、衝突後期に加速度Gが略一定G1になる。
【0035】
また、フードインナパネル14に形成したビード18が、車幅方向に沿ってのみ連続形成されているため、ビード18が形成されていない車体前後方向に沿っては、フード10の剛性及び強度が低くなっている。この結果、図2に示される如く、車体が壁M等に前突し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図2の矢印F)が作用した場合には、フード10が、前端部10Bと、両端が各々フードヒンジ11を介して車体に取付支持された車幅方向両端部10Aと、の間で容易に折れ曲がる。
【0036】
この際、フードインナパネル14の車体前方から2本目のビード18における頂部18Aの車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部14C、14Dの部位に形成したクラッシュビード26を起点にして、図2に二点鎖線で示すように、フード10が、フードインナパネル14の車体前方から2本目のビード18における頂部18Aにおいて、車体上方へ凸のく字形状に容易に折れ曲がる。
【0037】
このため、車両の前突時にフード10が車体後方(図2の矢印B)へ移動するのを防止できる。
【0038】
この結果、本実施形態では、衝突体Kを保護するためのフード10の剛性及び強度の確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重Fが作用した場合に、フード10を折り曲げ変形させることで、車両の前突時にフード10が車体後方へ移動するのを防止する、所謂、フード10の折れ曲がり効果との両立が可能である。
【0039】
また、本実施形態では、ビード18の車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であるため、ビード18の車幅方向全域において衝突体Kを保護するためのフード10の剛性及び強度を確保できる。
【0040】
なお、各ビード18の車幅方向両端部18Bが、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部14C、14Dに達した構成としても良い。
【0041】
また、クラッシュビード26は、フードインナパネル14の車体前方から2本目以外のビード18における頂部18Aの車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部14C、14D等の他の部位に形成しても良い。
【0042】
また、クラッシュビード26は、複数のビード18における頂部18Aの車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部14C、14Dの複数の部位に形成しても良い。
【0043】
また、クラッシュビード26を形成せずに、フード10を変形させる構成としても良い。
【0044】
次に、本発明の車両用フード構造の第2実施形態を図4に従って説明する。
【0045】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図4に示される如く、本実施形態では、フードインナパネル14に車幅方向に沿って連続形成した各ビード18が車体前後方向に蛇行しており、フードインナパネル14に形成した各ビード18が車体上下方向から見て波状になっている。
【0047】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0048】
本実施形態では、第1実施形態の作用効果に加えて、フードインナパネル14に形成した各ビード18を車体上下方向から見て波状にしたため、第1実施形態のように各ビード18を直線状にした場合に比べて、フード10の剛性及び強度が上がる。この結果、衝突体Kが衝突した際に、衝突初期のエネルギ吸収量が第1実施形態に比べて更に増加する。このため、更に効率の良いエネルギ吸収が可能となる。
【0049】
なお、上記実施形態では、複数のビード18を車体上下方向から見て波状にしたが、これに代えて、図5に示される如く、複数のビード18をフード10の後端縁部10Cの意匠に合わせて車体上下方向から見て円弧状に連続形成しても良い。この場合には、図4の構成と同様に、フード10の剛性及び強度が上がると共に、最後部のビード18に配設する接着剤22とフード10の後端縁部10Cとの距離を車幅方向に沿って略一定にできるため、第1実施形態のように各ビード18を直線状にした場合に比べて、フード10の後部における車幅方向両端部近傍の耐デント性能を向上できる。
【0050】
次に、本発明の車両用フード構造の第3実施形態を図6〜図8に従って説明する。
【0051】
図6に示される如く、本実施形態のフード30は、自動車の車体前部に形成されたエンジンルームを開閉可能に覆うフロントフードであって、車体前後方向後部の車幅方向両端部30Aは、各々フードヒンジ31によって車体、例えばフロントウインドシールドガラス33の前方側となるカウルサイド部に支持されている。
【0052】
図7に示される如く、フード30は車体後方側から車体前方側へ向かって下方に滑らかに湾曲しており、前端部30Bの車幅方向中央部に配設されたフードロック装置35によって、エンジンルームを閉塞した状態に保持できるようになっている。
【0053】
また、フード30は、フード30の車体外側面を構成するフードアウタパネル32と、フードアウタパネル32のフード内側(裏面側)に配設され、フード30の内側部を構成するフードインナパネル34とを備えており、フードアウタパネル32の外周部はフードインナパネル34の外周部に結合されている。なお、フードアウタパネル32とフードインナパネル34の中央部の適宜箇所は接着剤によって接着されている。
【0054】
図6に示される如く、フードインナパネル34における外周縁部は前端縁部34A、後端縁部34B、左右の車幅方向両端部34C、34Dで構成されており、前端縁部34A、後端縁部34B、左右の車幅方向両端部34C、34Dの内側が中央領域34Eとなっている。また、これらの前端縁部34A、後端縁部34B、左右の車幅方向両端部34C、34Dは、フードインナパネル34をプレス加工等によって車体下方へ突出変形することによって形成されており、中央領域34Eに比べて剛性及び強度が高くなっている。
【0055】
また、フードインナパネル34の中央領域34Eには、車体前後方向に所定の間隔を開けてフード30の骨格となる複数のビーム38が車幅方向に沿って直線状に連続形成されている。
【0056】
フードインナパネル34における前端縁部34Aと、最も車体前方に位置するビーム38との間には、貫通孔40が車幅方向に沿って形成されている。貫通孔40の車幅方向中間部には、車体前後方向に沿って連結フランジ42が直線状に形成されており、連結フランジ42によって前端縁部34Aと、最も車体前方に位置するビーム38とが連結されている。
【0057】
フードインナパネル34における隣接するビーム38の間には、貫通孔44が車幅方向に沿って形成されている。貫通孔44の車幅方向中間部には、車体前後方向に沿って連結フランジ46が直線状に形成されており、連結フランジ46によって隣接するビーム38同士が連結されている。
【0058】
フードインナパネル34における後端縁部34Bと、最も車体後方に位置するビーム38との間には、貫通孔48が車幅方向に沿って形成されている。貫通孔48の車幅方向中間部には、車体前後方向に沿って連結フランジ50が直線状に形成されており、連結フランジ50によって後端縁部34Bと最も車体後方に位置するビーム38とが連結されている。
【0059】
従って、フード30は最中構造(2重構造)でなく、所謂、ビーム構造となっている。
【0060】
図7に示される如く、各ビーム38はプレス成形等でフードインナパネル34を下方へ突出変形させることによって形成されており、各ビーム38の断面形状及び各ビーム38の間隔は略等しくなっている。
【0061】
また、ビーム38の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、開口部を車体上方へ向けたハット断面形状となっている。即ち、底部38Aの前端部から車体斜め前方上側に向かって前壁部38Bが形成されており、前壁部38Bの上端部には、略車体前方へ向かってフランジ38Cが形成されている。また、底部38Aの後端部から車体斜め後方上側に向かって後壁部38D形成されており、後壁部38Dの上端部には、略車体後方へ向かってフランジ38Eが形成されている。
【0062】
また、ビーム38の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、車幅方向に渡って略一定になっている。
【0063】
なお、断面形状が車幅方向に渡って略一定とは、ビーム38の曲げ剛性及び曲げ強度が、車幅方向に渡って所定範囲内(−20%〜+20%)となる断面形状を意味している。このため、断面形状が車幅方向に渡って一定でも良く又は多少変化していても良い。
【0064】
図6に示される如く、各ビーム38の車幅方向両端部38Fは、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部14C、14Dに達している。
【0065】
なお、フード30におけるフードインナパネル34に各貫通孔40、44、48を形成した部位は、貫通孔を形成していない部位に比べて、剛性及び強度が低くなっている。この結果、図7に示される如く、車体が壁M等に前方から衝突(前突)し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図7の矢印F)が作用した場合に、フード30の車幅方向両端部30Aが各々フードヒンジ31によって車体に支持されているため、各貫通孔40、44、48を形成した部位が、フード30の屈曲の起点になる。
【0066】
また、車体前方から2つ目の貫通孔44における前後方向中央の車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部34C、34Dの部位には、クラッシュビード52がそれぞれ形成されている。これらのクラッシュビード52は、フードインナパネル34の一部をフードアウタパネル32側にプレス加工等によって湾曲させることによって形成されている。このため、クラッシュビード52を形成した部位においてフード30の厚さが薄くなっており、剛性及び強度が低くなっている。
【0067】
従って、図7に示される如く、車体が壁M等に前方から衝突(前突)し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図7の矢印F)が作用した場合には、フード30の車幅方向両端部30Aが各々フードヒンジ31によって車体に支持されているため、クラッシュビード52(図6参照)が、フード30の屈曲の起点となる。
【0068】
即ち、クラッシュビード52を形成したことで、車体前方から2つ目の貫通孔44における前後方向中央において、フード30が折れ曲がるようになっている。なお、クラッシュビード52を形成しない場合には、少なくとも何れかの1つの貫通孔44において、フード30が折れ曲がるようになっている。
【0069】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0070】
本実施形態では、図7に示される如く、衝突体Kが車体前方斜め上方から車体後方斜め下方(矢印A方向)へ向かってフード30に衝突した場合には、フードアウタパネル32とともに、フードインナパネル34のビーム38が下方へ変形して衝突エネルギを吸収する。
【0071】
この時、各ビーム38がフードインナパネル34に車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿って連続形成されており、各ビーム38の車幅方向両端部38Fが、フードインナパネル34の両端部に形成された左右の車幅方向両端部34C、34Dに達している。このため、これらの各ビーム38によって、衝突体Kを保護するためのフード30の剛性及び強度を確保することができる。この結果、フード30がエンジンルーム内の部品に衝突する、所謂2次衝突の発生を抑制できる。
【0072】
また、各ビーム38が車幅方向に沿って長いため、衝突時の応力をフード30の広範囲に伝播させることができ、衝突初期のエネルギ吸収量を増加できる。この結果、衝突後期の最大加速度を低減できる。
【0073】
また、フードインナパネル34に形成したビーム38が、車幅方向に沿ってのみ連続形成されているため、ビーム38が形成されていない車体前後方向に沿っては、フード30の剛性及び強度が低くなっている。この結果、図7に示される如く、車体が壁M等に前突し、車体前方から所定値以上の衝撃荷重(図7の矢印F)が作用した場合には、フード30の車幅方向両端部30Aが各々フードヒンジ31によって車体に支持されているため、フード30が容易に変形する。
【0074】
この際、車体前方から2本目の貫通孔44における前後方向中央の車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部34C、34Dの部位に形成したクラッシュビード52を起点にして、図7に二点鎖線で示すように、フード30が車体前方から2つ目の貫通孔44における前後方向中央において、車体上方へ凸のく字形状に容易に折れ曲がる。このため、車両の前突時にフード30が車体後方(図7の矢印B方向)へ移動するのを防止できる。
【0075】
この結果、本実施形態では、衝突体Kを保護するためのフード30の剛性及び強度の確保と、車体前方から所定値以上の衝撃荷重Fが作用した場合に、フード30を折り曲げ変形させることで、車両の前突時にフード30が車体後方へ移動するのを防止する、所謂、フード30の折れ曲がり効果との両立が可能である。
【0076】
また、本実施形態では、ビーム38の車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であるため、ビーム38の車幅方向全域において衝突体Kを保護するためのフード30の剛性及び強度を確保できる。
【0077】
また、本実施形態では、連結フランジ42によって前端縁部34Aと最も車体前方に位置するビーム38とが連結されており、連結フランジ46によって隣接するビーム38が連結されている。また、連結フランジ50によって後端縁部34Bと最も車体後方に位置するビーム38とが連結されている。
【0078】
この結果、衝突時の荷重が、連結フランジ42、46、50によって隣接する前端縁部34A、ビーム38又は後端縁部34Bに伝播される。このため、衝突体KのストロークSと衝突体Kの減速度となる負の加速度Gとの関係は図8に示されるようになる。即ち、図8に実線で示される本実施形態と、図8に破線で示される、連結フランジ42、46、50によって前端縁部34Aとビーム38と後端縁部34Bとを連結しない比較例と、を比べると、本実施形態では、図8にハッチングで示すように衝突初期のエネルギ吸収量を増加できる。このため、本実施形態では、衝突後期の最大加速度G1を低減できるので、比較例に比べて、効率良くエネルギを吸収できる。
【0079】
また、本実施形態では、連結フランジ42によって前端縁部34Aと最も車体前方に位置するビーム38とが連結されており、連結フランジ46によって隣接するビーム38同士が連結されている。また、連結フランジ50によって後端縁部34Bと最も車体後方に位置するビーム38とが連結されている。この結果、フードインナパネル34の剛性及び強度が向上する。このため、フードインナパネル34のフードアウタパネル32への組付け精度が向上し、組付けが容易になるのでフード30の生産性が向上する。
【0080】
なお、各連結フランジ42、46、50は、前端縁部34A、ビーム38、後端縁部34Bの間にそれぞれ複数本配設しても良い。
【0081】
また、各ビーム38の車幅方向両端部38Fが、フードインナパネル14の両端部に形成された左右の車幅方向両端部34C、34Dの近傍に達した構成としても良い。
【0082】
また、クラッシュビード52は、フードインナパネル34の車体前方から2本目の貫通孔44以外の貫通孔40、44、48における前後方向中央の車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部34C、34Dの部位等の他の部位に形成しても良い。
【0083】
また、クラッシュビード52は、貫通孔40、44、48における前後方向中央の車幅方向外側への延長線上となる左右の車幅方向両端部34C、34Dの複数の部位に形成しても良い。
【0084】
また、クラッシュビード52を形成せず、フード30を変形させる構成としても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、各ビーム38の断面形状及び各ビーム38の間隔を略等しくしたが、これに代えて、車体前後方向で各ビーム38の断面形状(高さと幅)を変えると共に、車体前後方向で各ビーム38の間隔を変えた構成としても良い。
【0086】
次に、本発明の車両用フード構造の第4実施形態を図9及び図10に従って説明する。
【0087】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図9及び図10に示される如く、本実施形態では、フード10の前方側にあるビード18と比べて、フード10の後方側にあるビード18が大きくなっている。
【0089】
即ち、図9に示される如く、フード10の前方側にあるビード18の幅W1と比べて、フード10の後方側にあるビード18の幅W2が大きくなっており、図10に示される如く、フード10の前方側にあるビード18の高さH1と比べて、フード10の後方側にあるビード18の高さH2が大きくなっている。
【0090】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0091】
本実施形態では、第1実施形態の作用効果に加えて、フード10の前方側にあるビード18と比べて、フード10の後方側にあるビード18を大きくすることで、軽い衝突体が衝突する可能性の高いフード10の前方側の剛性及び強度に比べて、重い衝突体が衝突する可能性の高いフード10の後方側の剛性及び強度を高くすることができる。この結果、フード10の全域において、効率良くエネルギを吸収できる。
【0092】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1、2、4実施形態におけるビード18の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、車体上方へ凸の円弧形状に限定されず、他の形状としても良い。
【0093】
即ち、図11に示される第5実施形態の如く、フードインナパネル14の中央領域14Eの車体前後方向に沿って切断した断面形状を正弦波形状として、正弦波の山の部分をビード18とした構成としても良い。
【0094】
また、図12に示される第6実施形態の如く、フードインナパネル14の中央領域14Eの車体前後方向に沿って切断した断面形状を、山の部分をビード18とし、頂部18Aが前後方向中央部より後方側にある鋸歯形状とした構成としても良い。
【0095】
また、上記第3実施形態におけるビーム38の車体前後方向に沿って切断した断面形状は、開口部を車体上方へ向けたハット断面形状に限定されず、開口部を車体上方へ向けた円弧形等の他の形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用フード構造を示すフードアウタパネルを二点鎖線で示す平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両用フード構造における衝突体のストロークと加速度との関係を簡素化した波形で示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用フード構造を示すフードアウタパネルを二点鎖線で示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用フード構造を示すフードアウタパネルを二点鎖線で示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る車両用フード構造を示すフードアウタパネルを二点鎖線で示す平面図である。
【図7】図6の7−7線に沿った拡大断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車両用フード構造における衝突体のストロークと加速度との関係を簡素化した波形で示すグラフである。
【図9】本発明の第4実施形態に係る車両用フード構造を示すフードアウタパネルを二点鎖線で示す平面図である。
【図10】図9の10−10線に沿った拡大断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る車両用フード構造を示す図2に対応する断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る車両用フード構造を示す図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0097】
10 フード
10A フードの車体前後方向後部の車幅方向両端部
11 フードヒンジ
12 フードアウタパネル
14 フードインナパネル
14A フードインナパネルの前端縁部(外周縁部)
14B フードインナパネルの後端縁部(外周縁部)
14C フードインナパネルの車幅方向両端部(外周縁部)
14D フードインナパネルの車幅方向両端部(外周縁部)
14E フードインナパネルの中央領域
18 ビード(骨格)
18A ビードの頂部
18B ビードの車幅方向両端部
30 フード
30A フードの車体前後方向後部の車幅方向両端部
31 フードヒンジ
32 フードアウタパネル
34 フードインナパネル
38 ビーム(骨格)
38F ビームの車幅方向両端部
40 貫通孔
42 連結フランジ
44 貫通孔
46 連結フランジ
48 貫通孔
50 連結フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードアウタパネルと、該フードアウタパネルの下方に配設されたフードインナパネルとを備え、車体前後方向後部がフードヒンジを介して車体に取付支持された車両用フード構造であって、
前記フードインナパネルの外周縁部を除く中央領域に車体前後方向に所定の間隔を開け、車幅方向に沿ってのみ連続形成された骨格を有し、前記骨格は車幅方向両端部が前記フードインナパネルの車幅方向両端部に達していることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記骨格は車体前後方向に沿って切断した断面形状が車幅方向に渡って略一定であることを特徴とする請求項1に記載の車両用フード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−44311(P2006−44311A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224238(P2004−224238)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】