説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】液圧供給源および車輪ブレーキ間に介設される液圧制御ユニットの作動を、車輪ブレーキの液圧が目標液圧となるようにコントローラで制御する車両用ブレーキ液圧制御装置において、流量制御の概念を取り入れるようにして車輪ブレーキの液圧制御の制御精度および応答性を両立させる。
【解決手段】コントローラは、目標車輪ブレーキ圧設定手段30で設定される目標液圧に基づいて車輪ブレーキの目標液量を求める目標液量演算手段31と、ブレーキ液圧検出手段で検出された液圧に基づいて車輪ブレーキの実液量を求める実液量演算手段32と、目標液量演算手段31で得られた目標液量ならびに実液量演算手段32で得られた実液量に基づいて車輪ブレーキの目標流量を求める目標流量演算部34とを含むとともに、目標流量演算部34で得られた目標流量に基づいて液圧制御ユニットの作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧を出力する液圧供給源と、車輪ブレーキの液圧を調整可能として前記液圧供給源および前記車輪ブレーキ間に介設される液圧制御ユニットと、前記車輪ブレーキの液圧を検出するブレーキ液圧検出手段と、前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標車輪ブレーキ圧設定手段を含むとともに前記車輪ブレーキの液圧が前記目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧となるように前記液圧制御ユニットの作動を制御するコントローラとを備える車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置は、たとえば特許文献1等で既に知られている。
【特許文献1】特開2006−197382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来、車輪ブレーキの液圧を制御するにあたっては、車輪ブレーキの目標液圧と、該目標液圧よりも高い減圧閾値と、前記目標液圧よりも低い増圧閾値とを定めておき、検出した車輪ブレーキのブレーキ液圧と、前記目標液圧、前記減圧閾値および前記増圧閾値とを比較して車輪ブレーキ液圧の「減圧」、「保持」および「増圧」を定めるのが一般的である。この際、制御精度を高めるために図16(a)で示すように、減圧閾値および増圧閾値を目標液圧に近づけると、車輪ブレーキのブレーキ液圧が減圧閾値および増圧閾値を一気に跨いで、オーバーシュートを生じてしまう。一方、図16(b)で示すように、減圧閾値および増圧閾値を目標液圧から離して保持領域を拡げると、制御精度が低下してしまう。そこで特許文献1で開示されたものでは、制御精度の向上およびオーバーシュートの防止を図るために、図16(c)で示すように、制御モードに応じて閾値を持ちかえるようにしているが、ランプ応答性の向上を図るようにすると、図16(d)で示すように、増圧モードおよび減圧モードでブレーキ液圧が階段状に変化し、モードハンチングを生じてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、流量制御の概念を取り入れるようにして車輪ブレーキの液圧制御の制御精度および応答性を両立させるようにした車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、液圧を出力する液圧供給源と、車輪ブレーキの液圧を調整可能として前記液圧供給源および前記車輪ブレーキ間に介設される液圧制御ユニットと、前記車輪ブレーキの液圧を検出するブレーキ液圧検出手段と、前記車輪ブレーキの目標液圧を設定する目標車輪ブレーキ圧設定手段を含むとともに前記車輪ブレーキの液圧が前記目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧となるように前記液圧制御ユニットの作動を制御するコントローラとを備える車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記コントローラは、前記目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧に基づいて前記車輪ブレーキの目標液量を求める目標液量演算手段と、前記ブレーキ液圧検出手段で検出された液圧に基づいて前記車輪ブレーキの実液量を求める実液量演算手段と、前記目標液量演算手段で得られた目標液量ならびに前記実液量演算手段で得られた実液量に基づいて前記車輪ブレーキの目標流量を求める目標流量演算部とを含むとともに、前記目標流量演算部で得られた目標流量に基づいて前記液圧制御ユニットの作動を制御することを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記液圧制御ユニットは、前記液圧供給源の液圧を前記車輪ブレーキに作用せしめる増圧モード、前記車輪ブレーキの液圧を解放する減圧モード、ならびに前記車輪ブレーキの液圧を保持する保持モードを切換え可能であり、前記コントローラが、前記目標流量演算部で得られた目標流量の符号および絶対値に基づいて、前記増圧モード、前記減圧モードおよび前記保持モードを切換えるようにして前記液圧制御ユニットの作動を制御することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記液圧制御ユニットが、電流制御されるリニアソレノイド弁を含み、前記コントローラは、前記ブレーキ液圧検出手段で検出された液圧ならびに前記目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧の差と、前記目標流量演算部で得られた目標流量とに基づいて前記リニアソレノイド弁の印加電流を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記液圧供給源が、電動モータで駆動されるポンプを含み、前記コントローラは、前記目標流量演算部で得られた目標流量に基づいて前記ポンプの目標吐出量を求める目標吐出量演算手段と、該目標吐出量演算手段で得られた目標吐出量に基づいて前記電動モータの目標回転数を求める目標回転数演算手段とを含むとともに前記目標回転数演算手段で得られた目標回転数に基づいて前記電動モータを制御することを特徴とする。
【0009】
さらに請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、前記コントローラが、前記増圧モードから前記減圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする増圧タイマと、前記減圧モードから前記増圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする減圧タイマとを含むとともに、前記増圧タイマおよび前記減圧タイマのカウント値のハイセレクト値が大きくなるにつれて前記液圧制御ユニットの制御量を大きくすることを特徴とする。
【0010】
なお実施例のマスタシリンダMおよびポンプ18が本発明の液圧源に対応し、実施例のレギュレータ弁7、入口弁9,10および出口弁14,15が本発明のリニアソレノイド弁に対応し、実施例の左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBが本発明の車輪ブレーキに対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧に基づいて目標液量演算手段で得た車輪ブレーキの目標液量と、ブレーキ液圧検出手段で検出された液圧に基づいて実液量演算手段で得た車輪ブレーキの実液量とに基づいて目標流量演算部で車輪ブレーキの目標流量を求め、その目標流量に基づいてコントローラが液圧制御ユニットの作動を制御するので、車輪ブレーキの液圧制御の制御精度および応答性を高めることができる。すなわち車輪ブレーキの液圧制御において必要な応答特性はランプ応答であり、ランプ応答中は車輪ブレーキに対するブレーキ液の入出力は連続のはずであり、そのような連続したブレーキ液の入出力を基本にした制御を行うことで、制御精度および応答性を高めることができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、目標流量の符号および絶対値に基づいて制御モードを切換えることにより、実圧および目標液圧の高低に直接かかわることなく、リニアに実圧を変化させることができ、制御精度および応答性を両立させることが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、リニアソレノイド弁の印加電流を、ブレーキ液圧検出手段で検出された液圧ならびに目標車輪ブレーキ圧設定手段で設定される目標液圧の差と、前記目標流量演算部で得られた目標流量とに基づいて制御するので、流量に対してリニアソレノイド弁の特性が変化するのに対応して制御電流を得ることにより、制御性能を高めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、目標流量に基づいて得た目標吐出量に基づいて目標回転数を定め、ポンプを駆動する電動モータを前記目標回転数に基づいて制御するので、液圧制御時の応答性および静粛性を高めるとともに、液圧制御精度の更なる向上を図ることができる。
【0015】
さらに請求項5記載の発明によれば、制御ハンチングの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図15は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ液圧制御装置の構成を示す液圧系統図、図2はコントローラの一部構成を示すブロック図、図3は液圧および液量の関係を示す図、図4は制御モードの決定手法を従来手法と対比させて説明するためのタイミングチャート、図5はリニアソレノイド弁の電流を定めるためのマップを従来のものと対比させて示す図、図6は制御電流の変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図、図7は目標圧の振動に伴って実圧の振動が生じた状態を示す図、図8は制御モード、目標圧、実圧およびタイマカウント値の変化を示すタイミングチャート、図9はハイセレクト値に対するF/Bゲインの変化を示す図、図10は電動モータの回転数変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図、図11はレギュレータ弁のF/Bゲイン変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図、図12は回転数偏差に対するF/Bゲインの変化を示す図、図13は電動モータの駆動回路を示す図、図14は電動モータの制御手順を示すフローチャート、図15は電動モータのモータブレーキ状態を示すためのタイミングチャートである。
【0018】
先ず図1において、ブレーキ操作に応じた液圧を出力する第1の液圧発生源であるマスタシリンダMには、乗員のブレーキ操作によるブレーキ操作力がブレーキペダル1から入力される。該マスタシリンダMは、タンデム型に構成されるものであり、車輪ブレーキである左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBに対応した第1出力ポート3と、車輪ブレーキである右前輪用ディスクブレーキ(図示せず)および左後輪用ディスクブレーキ(図示せず)に対応した第2出力ポート4とを備え、第1および第2出力ポート3,4は、液圧制御ユニット5を介して前記各ディスクブレーキBA,BB…に接続される。
【0019】
前記液圧制御ユニット5の第1出力ポート3側の部分と、第2出力ポート4側の部分とは同一の構成を有するものであり、以下、液圧制御ユニット5の第1出力ポート3側の部分だけについて説明し、液圧制御ユニット5のうち第2出力ポート4側の部分についての説明は省略する。
【0020】
前記液圧制御ユニット5は、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBに共通な液圧路6と、該液圧路6および第1出力ポート3間に介設されるレギュレータ弁7と、前記液圧路6側へのブレーキ液の流通を許容してレギュレータ弁7に並列接続される一方向弁8と、前記液圧路6および左前輪用ディスクブレーキBA間に介設される入口弁9と、前記液圧路6および右後輪用ディスクブレーキBB間に介設される入口弁10と、前記液圧路6側へのブレーキ液の流通を許容して前記入口弁9,10にそれぞれ並列接続される一方向弁11,12と、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBに共通な単一のリザーバ13と、左前輪用ディスクブレーキBAおよび前記リザーバ13間に介設される出口弁14と、右後輪用ディスクブレーキBBおよび前記リザーバ13間に介設される出口弁15と、吸入側が前記リザーバ13に一方向弁16を介して接続される第2の液圧供給源としてのポンプ18と、該ポンプ18の吐出側に接続されるダンパ19と、該ダンパ19および前記液圧路6間に設けられるオリフィス20と、前記ポンプ18の吸入側および一方向弁16間と第1出力ポート3間に設けられるサクション弁21とを備える。前記ポンプ18は、駆動デューティを変化させることで回転数を変化させ得る電動モータ17で駆動されるものであり、この電動モータ17は、液圧制御ユニット5の第1出力ポート3側の部分と、第2出力ポート4側の部分とに共通である。
【0021】
前記レギュレータ弁7および入口弁9,10は、常開型のリニアソレノイド弁であり、前記出口弁14,15は常閉型のリニアソレノイド弁であり、前記サクション弁21は常閉型ソレノイド弁である。また第1出力ポート3およびレギュレータ弁7間には、マスタシリンダMの出力液圧を検出するマスタシリンダ出力液圧検出手段22が接続され、前記入口弁9,10と、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBとの間には、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBに作用するブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧検出手段23,24がそれぞれ接続される。
【0022】
而して入口弁9および出口弁14は、入口弁9を開弁するとともに出口弁14を閉弁することで前記液圧路6および左前輪用ディスクブレーキBA間を接続するとともに前記左前輪用ディスクブレーキBAおよび前記リザーバ13間を遮断する増圧モード、入口弁9を閉弁するとともに出口弁14を開弁することで前記液圧路6および左前輪用ディスクブレーキBA間を遮断するとともに左前輪用ディスクブレーキBAおよび前記リザーバ13間を接続する減圧モード、ならびに入口弁9および出口弁14をともに閉弁することで前記液圧路6および前記リザーバ13を左前輪用ディスクブレーキBAから遮断する保持モードを切換え可能な切換弁手段25を構成し、増圧モードでは液圧路6の液圧が左前輪用ディスクブレーキBAに作用し、減圧モードでは左前輪用ディスクブレーキBAの液圧をリザーバ13に解放し、保持モードでは左前輪用ディスクブレーキBAの液圧が保持される。
【0023】
また入口弁10および出口弁15は、入口弁10を開弁するとともに出口弁15を閉弁することで前記液圧路6および右後輪用ディスクブレーキBB間を接続するとともに前記右後輪用ディスクブレーキBBおよび前記リザーバ13間を遮断してする増圧モード、入口弁10を閉弁するとともに出口弁15を開弁することで前記液圧路6および右後輪用ディスクブレーキBB間を遮断するとともに右後輪用ディスクブレーキBBおよび前記リザーバ13間を接続する減圧モード、ならびに入口弁10および出口弁15をともに閉弁することで前記液圧路6および前記リザーバ13を右後輪用ディスクブレーキBBから遮断する保持モードを切換え可能な切換弁手段26を構成し、増圧モードでは液圧路6の液圧が右後輪用ディスクブレーキBBに作用し、減圧モードでは右後輪用ディスクブレーキBBの液圧をリザーバ13に解放し、保持モードでは右後輪用ディスクブレーキBBの液圧が保持される。
【0024】
このような液圧制御ユニット5では、サクション弁21を励磁、開弁した状態で電動モータ17を作動せしめることにより、ポンプ18が、マスタシリンダM側から吸入して加圧したブレーキ液を前記レギュレータ弁7および入口弁9,10間の液圧路6に吐出することになる。この際、レギュレータ弁7の作動を制御することにより、液圧路6の液圧を調圧することができる。
【0025】
すなわちポンプ18およびレギュレータ弁7は、非ブレーキ操作時に液圧路6に調圧された液圧を作用せしめるものであり、その液圧を切換弁手段25,26の入口弁9,10および出口弁14,15で制御することにより、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBに相互に異なるブレーキ液圧を作用せしめることができ、それにより車両走行時の挙動安定制御やトラクション制御等のブレーキ制御を実行することができる。この際、レギュレータ弁7は、液圧路6の液圧が、左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBのうち高い液圧が要求されている側のディスクブレーキのブレーキ液圧に対応した値となるように制御される。しかも左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBのうち高い液圧が要求されている側のディスクブレーキの制御にあたって、増圧モード、減圧モードおよび保持モードの切換えを、レギュレータ弁7の開閉制御によって行うこともある。
【0026】
またサービスブレーキ時には、電動モータ17の作動が停止され、レギュレータ弁7が開弁されるとともにサクション弁21が閉弁されており、切換弁手段25,26のうちサービスブレーキ時にロック状態に陥る可能性が生じた車輪に対応する切換弁手段を制御するアンチロックブレーキ制御を実行することにより、車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
【0027】
前記液圧制御ユニット5のレギュレータ弁7、入口弁9,10、出口弁14,15、電動モータ17およびサクション弁21はコントローラCで制御されるものであり、このコントローラCには、マスタシリンダ出力液圧検出手段22およびブレーキ液圧検出手段23,24の検出値がそれぞれ入力される。
【0028】
図2において、前記コントローラCにおいて前記左前輪用ディスクブレーキBAに関連する部分は、左前輪用ディスクブレーキBAの目標液圧を設定する目標車輪ブレーキ圧設定手段30と、該目標車輪ブレーキ圧設定手段30で設定される目標液圧に基づいて左前輪用車輪ブレーキBAの目標液量を求める目標液量演算手段31と、ブレーキ液圧検出手段23で検出された液圧に基づいて左前輪用ディスクブレーキBAの実液量を求める実液量演算手段32と、液圧制御ユニット5のレギュレータ弁7、入口弁9および出口弁14のうち制御対象の弁の前後の差圧を演算する実差圧演算手段33と、前記目標液量演算手段31で得られた目標液量ならびに前記実液量演算手段32で得られた実液量に基づいて左前輪用車輪ブレーキBAの目標流量を求める目標流量演算部34と、該目標流量演算部34の演算結果に基づいて前記液圧制御ユニット5の制御モードを定めるとともに液圧制御ユニット5の作動量を定める液圧制御ユニット目標制御量設定部35と、前記目標車輪ブレーキ圧設定手段30で定めた目標液圧ならびに実液圧の差を演算する目標差圧演算手段36と、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35の演算結果に基づいてポンプ18の目標回転数を演算する目標回転数演算手段37と、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35の演算結果、前記目標差圧演算手段36の演算結果および前記実差圧演算手段33の演算結果に基づいて液圧制御ユニット5のうち制御対象である弁に印加する制御電流を演算する制御電流演算部38と、前記目標回転数演算手段37の演算結果ならびにモータ回転数検出手段29で検出される実モータ回転数に基づいて電動モータ17の駆動デューティを演算する駆動デューティ演算部39と、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35で定められた前記液圧制御ユニット5の制御モードに基づいて計時する計時部40とを備える。
【0029】
目標液量演算手段31および実液量演算手段32は、図3で示すように予め設定されたマップに従って、液圧に応じた液量を演算するものである。また実差圧演算手段33は、液圧制御ユニット5におけるレギュレータ弁7、入口弁9および出口弁14の前後の差圧を検出するものであり、入口弁9を開弁するとともに出口弁14を閉弁したままでレギュレータ弁7によって液圧路6の液圧を調圧しているときには、マスタシリンダ出力液圧検出手段22で検出されたマスタシリンダMの出力液圧ならびにブレーキ液圧検出手段23,24で検出される左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBのブレーキ液圧のうち高い方の液圧が実差圧演算手段33に入力され、実差圧演算手段33はレギュレータ弁7の前後の実差圧を演算することになる。またレギュレータ弁7を開弁したままで入口弁9および出口弁14を開閉制御しているときにはマスタシリンダ出力液圧検出手段22で検出されたマスタシリンダMの出力液圧ならびにブレーキ液圧検出手段23で検出される左前輪用ディスクブレーキBAのブレーキ液圧が実差圧演算手段33に入力され、実差圧演算手段33は入口弁9および出口弁14の前後の実差圧を演算することになる。
【0030】
図2において、目標流量演算部34は、目標液量演算手段31で得られた目標液量を微分してフィードフォワード(F/F)項を求めるF/F項演算手段41と、目標液量演算手段31で得られた目標液量から実液量演算手段32で得られた実液量を減算する加え合わせ点42と、該加え合わせ点42で得られた液量差(目標液量−実液量)からフィードバック(F/B)項を演算するF/B項演算手段43と、前記F/F項演算手段41で得られたF/F項に前記F/B項演算手段43で得られたF/B項を加算する加え合わせ点44とで構成されており、この目標流量演算部34によれば、左前輪用車輪ブレーキBAの目標流量が前記加え合わせ点44から出力される。
【0031】
液圧制御ユニット目標制御量設定部35は、前記目標流量演算部34から入力される目標流量によって液圧制御ユニット5の制御モードを定める制御モード演算手段45と、前記目標流量演算部34から入力される目標流量ならびに前記制御モード演算手段45で定められた制御モードに基づいて前記レギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14の目標弁流量を演算する弁流量演算手段46と、前記制御モード演算手段45で定められた制御モードならびに前記弁流量演算手段46で演算された流量に基づいてポンプ18の目標吐出量を演算する目標吐出量演算手段47とで構成される。
【0032】
而して制御モード演算手段45は、目標流量演算部34で得られた目標流量の符号および絶対値に基づいて、増圧モード、減圧モードおよび保持モードを切換えるものであり、図4(a)で示すように、目標流量が変化するときに、そのプラス側の値が増圧閾値を超えたときに増圧モードに移行し、増圧閾値以下になったときには増圧モードから保持モードに移行し、マイナス側の値が減圧閾値未満となったときに保持モードから減圧モードに移行し、さらに減圧閾値以上となったときに減圧モードから保持モードに移行することになる。それに対して従来のものでは、図4(b)で示すように、実圧が目標圧よりも低く設定された増圧閾値未満となるのに応じて増圧モードに移行し、実圧が前記増圧閾値以上となるのに応じて増圧モードから保持モードに移行し、実圧が目標圧よりも高く設定された減圧閾値を超えるのに応じて保持モードから減圧モードに移行し、さらに実圧が減圧閾値以下となるのに応じて減圧モードから保持モードに移行するようにしている。
【0033】
ところで実圧を基準とした従来の制御モードの切換えによれば、図16に関連して説明したような課題が生じるのであるが、目標流量の符号および絶対値に基づく制御モードの切換えによれば、図4(a)で示すように、実圧および目標液圧の高低に直接かかわることなく、リニアに実圧を変化させることができ、制御精度および応答性を両立させることが可能となるのである。
【0034】
図2において、制御電流演算部38は、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35の弁流量演算手段46で得られた目標弁流量ならびに前記目標差圧演算手段36で得られた目標差圧に基づいて前記レギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14の目標電流のフィードフォワード(F/F)項を演算する目標電流F/F項演算手段48と、前記目標差圧演算手段36で得られた目標差圧から前記実差圧演算手段33で得られた実差圧を減算する加え合わせ点49と、該加え合わせ点49で得られた差圧偏差に基づいて目標電流のフィードバック(F/B)項を演算する目標電流F/B項演算手段50と、前記目標電流F/F項演算手段48で得られたF/F項に前記目標電流F/B項演算手段50で得られたF/B項を加算する加え合わせ点51とで構成されており、加え合わせ点51から前記レギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14の目標電流が出力される。
【0035】
ところでリニアソレノイド弁である前記レギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14をリニア制御するための制御電流は、一般的には、図5(c)で示すように代表的な弁流量に対応した差圧−電流特性のテーブル検索によって得るようにしているのであるが、リニアソレノイド弁の特性は流量に対して変化するものであり、また応答性はF/F制御に大きく影響される。そこで前記目標電流F/F項演算手段48は、弁流量演算手段46で得られた目標弁流量を用い、予め設定していた差圧−流量−電流の特性マップに従って制御電流を得るようにしており、レギュレータ弁7および入口弁9では、図5(a)で示すように、一定差圧では流量が増大するのに応じて電流が小さくなる差圧−流量−電流の特性マップに従って目標電流F/F項演算手段48で制御電流が得られ、出口弁14では、図5(b)で示すように、一定差圧では流量が増大するのに応じて電流が大きくなる差圧−流量−電流の特性マップに従って目標電流F/F項演算手段48で制御電流が得られる。
【0036】
このようにブレーキ液圧検出手段23で検出された液圧ならびに目標車輪ブレーキ圧設定手段30で設定される目標液圧の差と、目標流量演算部34で得られた目標流量とに基づいてレギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14の制御電流が定められ、その制御電流でレギュレータ弁7、入口弁9もしくは出口弁14がリニア制御されることになる。
【0037】
ここで傾きが変化するランプ応答をたとえばレギュレータ弁7の開閉によって制御する場合、従来の代表的な弁流量に基づく制御電流によるものでは、図6(b)で示すように、目標圧に対して実圧を適切に変化させ得ると言い難いが、前記目標弁流量の変化に応じて制御電流を変化させるようにすると、図6(a)で示すように、目標圧に対して実圧を適切に変化させることが可能であり、制御性能が向上することになる。
【0038】
図2において、前記目標回転数演算手段37は、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35における目標吐出量演算手段47で得られたポンプ18の目標吐出量に基づいて電動モータ17の目標回転数を演算するものであり、前記駆動デューティ演算部39は、前記目標回転数演算手段37で得られた目標回転数に基づいて前記電動モータ17の目標駆動電圧のフィードフォワード(F/F)項を演算する目標モータ電圧F/F項演算手段52と、前記目標回転数演算手段37で得られた目標回転数から実際の電動モータ17の回転数である実モータ回転数を減算する加え合わせ点53と、該加え合わせ点53で得られた回転数偏差に基づいて前記電動モータ17の目標駆動電圧のフィードバック(F/B)項を演算する目標モータ電圧F/B項演算手段54と、前記目標モータ電圧F/F項演算手段52で得られたF/F項に前記目標モータ電圧F/B項演算手段53で得られたF/B項を加算する加え合わせ点55と、該加え合わせ点55で得られた駆動電圧に基づいて駆動デューティを演算する駆動デューティ演算手段56とで構成されており、電動モータ17が、前記駆動デューティ演算手段56で得られた駆動デューティで制御される。
【0039】
ところで、上述のように流量の概念を導入した液圧制御によって応答性および高精度の両立が可能となるのであるが、目標液圧そのものが振動を含んでいる場合には、図7で示すように、高応答性であることが逆に振動を助長させる場合がある。特に、入口弁9,10および出口弁14,15で構成される切換弁手段25,26を用いて増、減圧を行う場合には、入口弁9,10および出口弁14,15を交互に切り換えて開閉するので振動を助長し易くなる。そこで、そのような目標液圧の振動を検出した場合には、制御電流演算部38の目標電流F/B項演算手段50での演算におけるF/Bゲインを変化させることにより、効果的に振動を低減することができる。
【0040】
すなわち目標電流F/B項演算手段50での演算におけるF/Bゲインは、計時部40での計時結果に応じて変化するものであり、該計時部40は、前記液圧制御ユニット目標制御量設定部35における制御モード演算手段45からの信号に応じてカウントする増圧タイマ57および減圧タイマ58と、増圧タイマ57および減圧タイマ58のカウント値をハイセレクトするハイセレクト手段59とを備える。
【0041】
前記増圧タイマ57は、増圧モードから前記減圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップするようにしてカウント値TM_MDCAL_Zを得るものであり、また前記減圧タイマ58は、前記減圧モードから前記増圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップするようにしてカウント値TM_MDCAL_Gを得るものであり、それらのカウント値TM_MDCAL_Z,TM_MDCAL_Gのハイセレクト値TM_MDCALがハイセレクト手段59で得られる。
【0042】
而して、図8で示すように、前記ハイセレクト値TM_MDCALが大きいときにはハンチングを生じておらず、ハイセレクト値TM_MDCALが小さいときにはハンチングを生じていると判断することができる。
【0043】
そこで制御電流演算部38の目標電流F/B項演算手段50には計時部40のハイセレクト手段59からハイセレクト値TM_MDCALが入力されており、目標電流F/B項演算手段50では、図9で示すように、F/Bゲインが前記ハイセレクト値TM_MDCALが大きくなるにつれて大きくなるように変化する。すなわちハンチングを生じそうになるとF/Bゲインを大きくすることでレギュレータ弁7、入口弁9,10もしくは出口弁14,15の制御量を大きくし、それにより振動を助長させることなく制御することが可能となる。しかも前記F/Bゲインは、ハンチングの有無に応じて切り換えられるのではなく、ハイセレクト値TM_MDCALの変化に伴って連続的に変化するものであるので、スムーズな制御を実現することができ、ロバスト性も向上することになる。
【0044】
ところで液圧制御時の作動音および振動に対してはポンプ18を駆動する電動モータ17の回転数の影響が大きい。そこで作動音を小さくするために、電動モータ17の回転数を下げることが一般的に行われているが、電動モータ17の回転数を下げると作動音は小さくなるものの、図10(b)で示すように、加圧応答性が低下してしまう。しかるに目標回転数演算手段37が、ポンプ18の目標吐出量に基づいて電動モータ17の目標回転数を演算するものであり、その目標回転数に基づいて前記駆動デューティ演算部39が電動モータ17の駆動デューティを演算することで電動モータ17の回転数が制御されるので、図10(a)で示すように、作動音を小さくして静粛性を保持しつつ応答性を高めることができる。しかもポンプ18の吐出量を最適化することで液圧制御の精度向上にも寄与することができる。
【0045】
またレギュレータ弁7で自己昇圧制御を行う場合に、制御精度を高めるために液圧によるフィードバックを行う際には、応答性および外乱に対するタフネス向上のためにはF/Bゲインを大きくすることが要求される。しかるに前記自己昇圧は、ポンプ18から吐出された液圧をレギュレータ弁7で調圧することでなされるものであり、制御初期にポンプ18からの吐出量がまだ所定値に達していない状態では、レギュレータ弁7側でのフィードバックによっても昇圧が改善されることはなく、逆に、そのような状態で図11(b)で示すように、F/Bゲインを大きくすると、大きな液圧偏差で過剰なF/Bゲインが演算されてしまい、ポンプ18の吐出量が所定値に達したときにはオーバーシュートしてしまうので、F/Bゲインを大きくすることができない。そこで、図2で示すように、駆動デューティ演算部39の加え合わせ点53で得られる回転数偏差(目標回転数演算手段37で得られた目標回転数−実モータ回転数)が制御電流演算部38の目標電流F/B項演算手段48に入力され、目標電流F/B項演算手段48では、図12で示すように前記回転数偏差が大きくなるにつれて小さくなるようにF/Bゲインが変化する。これにより、レギュレータ弁7のF/Bゲインが、不必要な部分では図11(a)で示すように小さくなり、ポンプ17の吐出量が所定値に達してもオーバーシュートを生じることが抑止されることになる。
【0046】
電動モータ17の回転数は上述のように自在に変化するのであるが、実際に電動モータ17の回転数を任意に変化させるためには、駆動および制動の両方を制御しなければならない。特に、制動側はHブリッジ等で正負の制御を行うことによっても実現可能であるが、図13で示すような電気回路によるブレーキのみでも大きな効果がある。すなわち電動モータ17の両端子には、バッテリ60およびスイッチ61から成る直列回路が接続されるとともに、電動モータ17の両端子間をショートさせるためのスイッチ62が前記直列回路と並列に接続されており、電動モータ17の作動時には、図13(a)で示すように、スイッチ61を導通するとともにスイッチ62を遮断し、電動モータ17の制動時には、図13(b)で示すように、スイッチ61を遮断するとともにスイッチ62を導通してモータブレーキ状態を得るようにすればよい。
【0047】
このようにモータブレーキ量を制御することなしに、オン・オフを切換えるようにすることは簡単な回路追加で実現可能あり、そのオン・オフを図14で示す制御手順によって切換えることで減速側の効果的な制御を実現することができる。
【0048】
図14のステップS1では、電動モータ17の駆動制御モードが終了モードであるか否かを判断する。ここで電動モータ17の駆動モードとしては「停止」、「駆動」および「終了」が設定されており、「終了」は、駆動要求はないものの慣性で電動モータ17が回転している状態である。而してステップS1で、終了モードであることを確認したときにはステップS2に進んでブレーキオンの状態とする。
【0049】
ステップS1において終了モードではないと判断したときには、ステップS3に進み、電動モータ17の駆動制御モードが駆動モードであるか否かを判断し、駆動モードであるときには、ステップS4において目標モータ電圧が一定値以下であるか否かを判断し、一定以下であったときにはステップS5においてモータ回転数偏差(目標回転数−実回転数)が一定値以下であるか否かを判断し、一定値以下であったときには、ステップS5からステップS2に進んでブレーキオンの状態とする。
【0050】
またステップS3において、電動モータ17の駆動モードが駆動モードではなく、停止モードであると判断したときには、ステップS3からステップS6に進んでブレーキオフの状態とし、駆動モードではあるが目標モータ電圧が一定値を超える状態であるとステップS4で判断したとき、ならびに駆動モードで目標モータ電圧が一定値以下ではあるもののモータ回転数偏差が一定値を超えるとステップS5で判断したときには、ステップS6でブレーキオフの状態とする。
【0051】
このような制御手順によれば、電動モータ17は、図18で示すように、終了モードのときにブレーキオンの状態となるだけでなく、駆動モードであっても、目標モータ電圧が一定値以下、かつモータ回転数偏差が一定値以下のとき(すなわち電動モータ17の実回転数が所定値を超えて目標回転数を上回ったとき)にもブレーキオンの状態となり、減速応答性が向上することになる。
【0052】
次にこの実施例の作用について説明すると、コントローラCは、目標車輪ブレーキ圧設定手段30で設定される目標液圧に基づいて目標液量演算手段31で得た左前輪用ディスクブレーキBAおよび右後輪用ディスクブレーキBBを含む各車輪のディスクブレーキの目標液量と、ブレーキ液圧検出手段23,24で検出された液圧に基づいて実液量演算手段32で得た各ディスクブレーキBA,BB…の実液量とに基づいて目標流量演算部34で各ディスクブレーキBA,BB…の目標流量を求め、その目標流量に基づいて液圧制御ユニット5の作動を制御するので、各ディスクブレーキBA,BB…の液圧制御の制御精度および応答性を高めることができる。すなわち各ディスクブレーキBA,BB…の液圧制御において必要な応答特性はランプ応答であり、ランプ応答中は各ディスクブレーキBA,BB…に対するブレーキ液の入出力は連続のはずであり、そのような連続したブレーキ液の入出力を基本にした制御を行うことで、制御精度および応答性を高めることができる。
【0053】
またコントローラCは、目標流量演算部34で得られた目標流量の符号および絶対値に基づいて、増圧モード、減圧モードおよび保持モードを切換えるようにして液圧制御ユニット5の作動を制御するので、実圧および目標液圧の高低に直接かかわることなく、リニアに実圧を変化させることができ、制御精度および応答性を両立させることが可能となる。
【0054】
しかも液圧制御ユニット5においてリニアソレノイド弁であるレギュレータ弁7、入口弁9,10および出口弁14,15の印加電流を、ブレーキ液圧検出手段23,24で検出された液圧ならびに目標車輪ブレーキ圧設定手段30で設定される目標液圧の差と、前記目標流量演算部34で得られた目標流量とに基づいて制御するので、流量に対してレギュレータ弁7、入口弁9,10および出口弁14,15の特性が変化するのに対応して制御電流を得ることにより、制御性能を高めることができる。
【0055】
またコントローラCは、目標流量演算部34で得られた目標流量に基づいてポンプ18の目標吐出量を求める目標吐出量演算手段47と、該目標吐出量演算手段47で得られた目標吐出量に基づいて前記ポンプ18を駆動する電動モータ17の目標回転数を求める目標回転数演算手段37を含むものであり、目標回転数演算手段37で得られた目標回転数に基づいて電動モータ17を制御するので、液圧制御時の応答性および静粛性を高めるとともに、液圧制御精度の更なる向上を図ることができる。
【0056】
またコントローラCは、増圧モードから前記減圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする増圧タイマ57と、前記減圧モードから前記増圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする減圧タイマ58とを含んでおり、増圧タイマ57および減圧タイマ58のカウント値をハイセレクト手段59でハイセレクトしたハイセレクト値TM_MDCALが大きくなるにつれて液圧制御ユニット5におけるレギュレータ弁7、入口弁9,10もしくは出口弁14,15の制御量を大きくするので、制御ハンチングの発生を防止することができる。
【0057】
またコントローラCは、モータ回転数検出手段29で検出される実モータ回転数が目標回転数演算手段37で演算される目標回転数となるように電動モータ17を制御するのであるが、回転数偏差(目標回転数−実モータ回転数)が大きくなるにつれて小さくなるようにレギュレータ弁7を制御するためのF/Bゲインが変化する。これにより、レギュレータ弁7のF/Bゲインを不必要な部分で小さくなるようにして、制御初期にポンプ17の吐出量が所定値に達してもオーバーシュートを生じることが抑止することができる。
【0058】
さらに電動モータ17の両端子には、バッテリ60およびスイッチ61から成る直列回路が接続されるとともに、電動モータ17の両端子間をショートさせるためのスイッチ62が前記直列回路と並列に接続されており、コントローラCは、電動モータ17の駆動状態にあっても目標モータ電圧が一定値以下、かつ電動モータ17の実回転数が所定値を超えて目標回転数を上回ったときには、前記スイッチ62を導通して電動モータ17の両端子間をショートさせることで電動モータ17をブレーキオンの状態とするので、簡単な駆動回路で電動モータ17の減速応答性が向上することになる。
【0059】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】車両用ブレーキ液圧制御装置の構成を示す液圧系統図である。
【図2】コントローラの一部構成を示すブロック図である。
【図3】液圧および液量の関係を示す図である。
【図4】制御モードの決定手法を従来手法と対比させて説明するためのタイミングチャートである。
【図5】リニアソレノイド弁の電流を定めるためのマップを従来のものと対比させて示す図である。
【図6】制御電流の変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図である。
【図7】目標圧の振動に伴って実圧の振動が生じた状態を示す図である。
【図8】制御モード、目標圧、実圧およびタイマカウント値の変化を示すタイミングチャートである。
【図9】ハイセレクト値に対するF/Bゲインの変化を示す図である。
【図10】電動モータの回転数変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図である。
【図11】レギュレータ弁のF/Bゲイン変化による実圧の目標圧に対する追随性を従来のものと対比させて示す図である。
【図12】回転数偏差に対するF/Bゲインの変化を示す図である。
【図13】電動モータの駆動回路を示す図である。
【図14】電動モータの制御手順を示すフローチャートである。
【図15】電動モータのモータブレーキ状態を示すためのタイミングチャートである。
【図16】従来の手法による課題を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0061】
18・・・液圧源であるポンプ
5・・・液圧制御ユニット
7・・・リニアソレノイド弁であるレギュレータ弁
9,10・・・リニアソレノイド弁である入口弁
14,15・・・リニアソレノイド弁である出口弁
23,24・・・ブレーキ液圧検出手段
30・・・目標車輪ブレーキ圧設定手段
31・・・目標液量演算手段
32・・・実液量演算手段
34・・・目標流量演算部
37・・・目標回転数演算手段
47・・・目標吐出量演算手段
57・・・増圧タイマ
58・・・減圧タイマ
C・・・コントローラ
BA・・・車輪ブレーキである左前輪用ディスクブレーキ
BB・・・車輪ブレーキである右後輪用ディスクブレーキ
M・・・液圧供給源であるマスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧を出力する液圧供給源(M,18)と、車輪ブレーキ(BA,BB)の液圧を調整可能として前記液圧供給源(M,18)および前記車輪ブレーキ(BA,BB)間に介設される液圧制御ユニット(5)と、前記車輪ブレーキ(BA,BB)の液圧を検出するブレーキ液圧検出手段(23,24)と、前記車輪ブレーキ(BA,BB)の目標液圧を設定する目標車輪ブレーキ圧設定手段(30)を含むとともに前記車輪ブレーキ(BA,BB)の液圧が前記目標車輪ブレーキ圧設定手段(30)で設定される目標液圧となるように前記液圧制御ユニット(5)の作動を制御するコントローラ(C)とを備える車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記コントローラ(C)は、前記目標車輪ブレーキ圧設定手段(30)で設定される目標液圧に基づいて前記車輪ブレーキ(BA,BB)の目標液量を求める目標液量演算手段(31)と、前記ブレーキ液圧検出手段(23,24)で検出された液圧に基づいて前記車輪ブレーキ(BA,BB)の実液量を求める実液量演算手段(32)と、前記目標液量演算手段(31)で得られた目標液量ならびに前記実液量演算手段(32)で得られた実液量に基づいて前記車輪ブレーキ(BA,BB)の目標流量を求める目標流量演算部(34)とを含むとともに、前記目標流量演算部(34)で得られた目標流量に基づいて前記液圧制御ユニット(5)の作動を制御することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記液圧制御ユニット(5)は、前記液圧供給源(M,18)の液圧を前記車輪ブレーキ(BA,BB)に作用せしめる増圧モード、前記車輪ブレーキ(BA,BB)の液圧を解放する減圧モード、ならびに前記車輪ブレーキ(BA,BB)の液圧を保持する保持モードを切換え可能であり、前記コントローラ(C)が、前記目標流量演算部(34)で得られた目標流量の符号および絶対値に基づいて、前記増圧モード、前記減圧モードおよび前記保持モードを切換えるようにして前記液圧制御ユニット(5)の作動を制御することを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記液圧制御ユニット(5)が、電流制御されるリニアソレノイド弁(7,9,10,14,15)を含み、前記コントローラ(C)は、前記ブレーキ液圧検出手段(23,24)で検出された液圧ならびに前記目標車輪ブレーキ圧設定手段(30)で設定される目標液圧の差と、前記目標流量演算部(34)で得られた目標流量とに基づいて前記リニアソレノイド弁(7,9,10,14,15)の印加電流を制御することを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記液圧供給源(18)が、電動モータ(17)で駆動されるポンプであり、前記コントローラ(C)は、前記目標流量演算部(34)で得られた目標流量に基づいて前記ポンプ(18)の目標吐出量を求める目標吐出量演算手段(47)と、該目標吐出量演算手段(47)で得られた目標吐出量に基づいて前記電動モータ(17)の目標回転数を求める目標回転数演算手段(37)とを含むとともに前記目標回転数演算手段(37)で得られた目標回転数に基づいて前記電動モータ(17)を制御することを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記コントローラ(C)が、前記増圧モードから前記減圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする増圧タイマ(57)と、前記減圧モードから前記増圧モードまたは前記保持モードへの移行時にカウント値を「0」にクリアする以外のときにカウントアップする減圧タイマ(58)とを含むとともに、前記増圧タイマ(57)および前記減圧タイマ(58)のカウント値のハイセレクト値が大きくなるにつれて前記液圧制御ユニット(5)の制御量を大きくすることを特徴とする請求項2記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−296704(P2008−296704A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144026(P2007−144026)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】