説明

車両用モール

【課題】 ドア本体の設計の変更を伴うことなく発光体をドアの側面の乗員が視認できる位置に設け、発光体により乗員にドアの状態を報知する車両用モールを提供すること。
【解決手段】 車両の側面のドア3に設けられるモール本体10と、モール本体10の端部に内装され乗員にドア3の状態を報知する発光体20と、モール本体10に設けられ発光体20の発光を透光する透光部11と、を備えた車両用モール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアの状態を、モール本体に設けた発光体により乗員に報知する車両用モールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動で開閉動作する車両のドアの開閉動作を知らせる方法として、一般にブザー(ピーピー音)が用いられる。ブザーにより乗員に開閉動作を知らせる方法では、ドアの開閉方向及び開閉速度を知ることができない。また夜間にブザーが鳴ると、住宅街、マンションの駐車場等で騒音の問題がある。
【0003】
これに対して、ドアの厚さ方向の移動を発光体を順次点滅することで、対向車や後続車等に対して、ドアの厚さ方向への移動する側を知らせることが開示されている。対向車や後続車等は、発光体の点滅状態に基づいてドア開口を開閉する状態を認識することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−190990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドア装置は、リンクアームに発光体を設けて、対向車や後続車等にドアの厚さ方向への移動を報知するが、ドアのスライド方向の開閉動作を乗員に知らせるには、発光体をドアの表面の乗員が視認できる位置に設ける必要がある。ドアの表面に新たに発光体の設置スペースを確保するにはドア本体の設計の変更を伴い、意匠性、コスト面から困難を伴うものであった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ドア本体の設計の変更を伴うことなく発光体をドアの側面の乗員が視認できる位置に設け、発光体により乗員にドアの状態を報知する車両用モールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両の側面のドアに設けられるモール本体と、前記モール本体の端部に内装され乗員に前記ドアの状態を報知する発光体と、前記モール本体に設けられ前記発光体の発光を透光する透光部と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記ドアは自動で開閉動作し、前記発光体は前記ドアの開閉動作と連動して前記ドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知する。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記発光体は、前記ドアのロック解除及びロック施錠の少なくともいずれかを前記乗員に報知する。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記モール本体の端部開口から軸方向にスライド嵌入される端末キャップを備え、前記発光体は前記端末キャップに取り付けられる。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記発光体は前記モール本体の軸方向に少なくとも3個以上直列に設けられ、前記発光体の送り点灯により前記ドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知する。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、前記透光部は、前記モール本体の夫々の前記発光体に対応する位置に設けられた透光孔である。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、前記発光体は発光ダイオードである。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、前記発光ダイオードと前記モール本体の間には導光板が設けられ、前記発光ダイオードの点灯は前記導光板を介して前記透光孔から前記モール本体の外に案内される。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、前記発光体は有機ELである。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、前記透光部は透過性部材であり、前記透過性部材は前記モール本体の少なくとも前記有機ELに対応する位置に形成される。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、前記モール本体は、ドア本体とウィンドーガラスの間に設けられるベルトモールである。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、前記ドアは、スライドドア、スイングドアのいずれかである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明では、乗員が視認できるドアのモール本体でウィンドーガラスの昇降に影響しない端部に発光体を設けてドアの状態を報知するため、ブザーを鳴らすことなく乗員にドアの動作を知らせることができる。よって、夜間の住宅街、マンションの駐車場等では、ブザーの音を停止して、発光体の点灯のみでドアの動作を乗員に報知することで、騒音の問題を解決できる。また、発光体を乗員が視認できるモール本体に内装することで、ドア本体の設計の変更が不要で既存のドア本体への展開も可能であり、意匠性を損なうことがなく、またドア本体の設計変更のコストが必要ない。また、ウィンドーガラスへの干渉を防ぐことができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明では、自動開閉ドアの開閉動作と連動してドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知するため、請求項1と同様にブザーを鳴らすことなく乗員にドアの動作を知らせることができる。よって、夜間の住宅街、マンションの駐車場等では、ブザーの音を停止して、発光体の点灯のみでドアの動作を乗員に報知することで、騒音の問題を解決できる。また、発光体を乗員が視認できるモール本体に内装することで、ドア本体の設計の変更が不要で既存のドア本体への展開も可能であり、意匠性を損なうことがなく、またドア本体の設計変更のコストが必要ない。
【0020】
また、請求項3に記載の発明では、ドアが開閉動作する前に乗員は事前に発光体によりドアの開閉動作を知ることができるため、安全性が向上する。また、ロック解除、ロック施錠をモール本体に設けた発光体から報知することで、夜間に照度の高いハザードランプ、ウインカーランプ等を点灯させることなく、乗員はロック解除、ロック施錠を確認できる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明では、発光体はモール本体の端部開口から軸方向にスライド嵌入される端末キャップに設けられるため、発光体の組み付けが容易であり、組み付け工数が低減でき、また着脱が容易なため発光体の交換が容易に行える。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、発光体はモール本体の軸方向に少なくとも3個以上直列に設けられるため、発光体の送り点灯によりドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知できる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明では、透光部はモール本体の夫々の発光体に対応する位置に設けられた透光孔であるため、既存のモール本体に孔加工を施すことで、透光孔を形成できる。
【0024】
また、請求項7に記載の発明では、発光体は発光ダイオードであるため、モール本体端部の限られたスペースに複数の発光ダイオードを設けることができる。また、発光ダイオードは発熱が少ないため、モール本体への熱影響を少なくできる。
【0025】
また、請求項8に記載の発明では、発光ダイオードの発光はモール本体の間には導光板を介してモール本体の小さな透光孔から外に案内される。発光ダイオードの真っ直ぐな光は導光板により透光孔から外に案内されるときに広がりを持つため、乗員への視認効果が高まる。また、導光板を設けることで透光孔から発光ダイオードが直接は見えないため、意匠性を損なうことがない。
【0026】
また、請求項9に記載の発明では、発光体は有機ELであるため、矢印図形、文字表示等により、乗員にスライドドア3の開閉方向及び開閉速度を知らせることができる。また有機ELは省スペースで曲面にも設置可能であるため、モール本体の局面に沿って設けることもできる。
【0027】
また、請求項10に記載の発明では、透光部は透過性部材により構成されるため、透光孔が不要で外部からの雨水等に対するシール性が向上する。
【0028】
また、請求項11に記載の発明では、ドア本体とウィンドーガラスの間のベルトモールへの設置が可能である。
【0029】
また、請求項12に記載の発明では、スライドドア、スイングドアの状態を乗員に報知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例の車両用モール1を備えた車両2である。車両2の側面には自動で開閉動作するスライドドア3(ドア)が設けられ、スライドドア3は内部にロック4を備える。また、スライドドア3のスライドドア本体5とウィンドー6との間のベルトモール10(モール本体)の端部には、車両用モール1が設けられる。
【0031】
図2は、車両用モール1をスライドドア3に取り付けた状態を示す拡大図である。ベルトモール10のウィンドーガラス6の昇降と干渉しない端部には、ベルトモール10の長さ方向に直径が約1.5mmの3個の小さな透光孔11(透光部)が直列に設けられる。
【0032】
図3は、車両用モール1の分解組立図である。ベルトモール10の端部は、ベルトモール10の長さ方向にスライドして組みつけられる端末キャップ12が設けられる。
【0033】
端末キャップ12には、3個の発光ダイオード20(発光体)を備えた発光ダイオードユニット21が取り付けられている。発光ダイオード20は、夫々透光孔11に対応する位置に設けられる。透光孔11には、導光板22が嵌合する。
【0034】
図4は、車両用モール1の組み付けた状態を示すのA−A断面図である。発光ダイオード20は、発光ダイオードユニット21に設けられたハーネス23から電源が供給されて点灯する。導光板22は発光ダイオード20とベルトモール10の間に設けられ、発光ダイオード20の点灯は導光板22を介して夫々の透光孔11からベルトモール10の外に広がりを持って案内される。
【0035】
図5は、車両用モール1の点灯パターンを示す説明図である。
【0036】
(開動作時)
スライドドア3の開動作前に、3個の発光ダイオード20が同時に1秒間に2回点滅してロック4のロック解除を報知する。次にスライドドア3の開動作と連動して、スライドドア3の開方向に1秒間に1回送り点灯する。スライドドア3が全開位置に達すると、3個の発光ダイオード20が同時に1秒間に2回点滅してロック4のロック施錠を報知する。
【0037】
(閉動作時)
スライドドア3の閉動作前に、3個の発光ダイオード20が同時に1秒間に2回点滅してロック4のロック解除を報知する。次にスライドドア3の閉動作と連動して、スライドドア3の閉方向に1秒間に1回送り点灯する。スライドドア3が全閉位置に達すると、3個の発光ダイオード20が同時に1秒間に2回点滅してロック4のロック施錠を報知する。
【0038】
ここではスライドドア3が一定の速度で開閉動作した場合の送り点灯について説明したが、スライドドア3の開閉速度が変化する場合には、例えば開閉速度が速い場合は0.5秒間に1回の送り点灯により、乗員に開閉速度が速いことを報知する。
【0039】
本発明の第1実施例の車両用モール1では、乗員が視認できるスライドドア3のベルトモール10に発光ダイオード20を設けて、発光ダイオード20の送り点灯からスライドドア10の動作(開閉方向、開閉速度)を報知するため、ブザーを鳴らすことなく乗員にスライドドア3の動作を知らせることができる。よって、夜間の住宅街、マンションの駐車場等では、ブザーの音を停止して、発光ダイオード20の点灯のみでスライドドア3の動作を乗員に報知することができ、騒音の問題を解決できる。また、発光ダイオード20を乗員が視認できるベルトモール10に内装することで、スライドドア本体5の設計変更が不要で、意匠性を損なうことがなく、またスライドドア本体5の設計変更のコストが必要ない。
【0040】
また、スライドドア3が開閉動作する前に乗員は事前に発光ダイオード20の点灯によりスライドドア3の開閉動作を知ることができるため、安全性が向上する。また、ロック解除、ロック施錠をベルトモール10に設けた発光ダイオード20から報知することで、夜間に照度の高いハザードランプ、ウインカーランプ等を点灯させることなく、乗員はロック解除、ロック施錠を確認できる。
【0041】
また、発光ダイオード20とベルトモール10の間に導光板22を設けることで、ベルトモール10の小さな透光孔11から外への光に広がりを持たせることができ、乗員への視認効果を高めることができる。また、透光孔11から直接発光ダイオード20が見えないため、意匠性を損なうことがない。
【0042】
また、発光ダイオード20はベルトモール10の端部開口にスライド嵌入される端末キャップ12と一体で設けられるため、スライドドア3に設けられたウィンドーガラス6との干渉を防ぐことができる。また、発光ダイオード20をベルトモール10の長さ方向にスライドして組み付けるため組み付け性がよく、またベルトモール10には発光ダイオード20を取り付けるための繋ぎ目等が不要なため、意匠性、シール性が向上する。
【0043】
また発光ダイオード20にRGBの三色の発光ダイオードを組み合わせて使用する場合は、例えばスライドドア3の開動作では青色点灯し、閉動作では赤色点灯することで、さらに乗員への視認効果を高めることができる。
【0044】
また、第1実施例では、スライドドア3のベルトモール10に車両用モール1を設けた場合について説明したが、ベルトモール10に限定されるものではない。また、スライドドア3ではなくて、例えばスイングドア、バックドア等へ適用してもよい。
【0045】
(第2実施例)
図6、図7は、本発明の第2実施例である車両用モール30で、第1実施例の車両用モール1との違いは、発光ダイオードユニット21の代わりに有機ELユニット31を用いたことである。共通の部品については共通の符番を用いて説明する。
【0046】
図6は、本発明の第2実施例である車両用モール30の分解組立図である。端末キャップ12には、有機ELユニット31が取り付けられている。図7は、車両用モール30の組み付けた状態を示すのB−B断面図である。有機ELユニット31は、ハーネス23から電源が供給されて発光する。ベルトモール32は、有機ELユニット31に対応する部位が透過性部材により構成され、有機ELユニット31の発光表示がベルトモール32の外から視認可能になっている。
【0047】
本発明の第2実施例の車両用モール30では、発光体の点灯パターンによる表示ではなく、例えば矢印図形、文字表示等により、乗員にスライドドア3の開閉方向及び開閉速度を知らせることができる。また、有機ELユニット31に対応する部位が透過性部材により構成されたベルトモール32を用いることで、透光孔11が不要となり、外部からの雨水等に対するシール性が向上する。また有機ELは省スペースで曲面にも設置可能であるため、ベルトモール32の局面に沿って設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施例である車両用モールを備えた車両である。
【図2】本発明の第1実施例である車両用モールをスライドドアに取り付けた状態を示す拡大図である。
【図3】本発明の第1実施例である車両用モールの分解組立図である。
【図4】本発明の第1実施例である車両用モールの組み付けた状態を示すのA−A断面図である。
【図5】本発明の第1実施例である車両用モールの点灯パターンを示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施例である車両用モールの分解組立図である。
【図7】本発明の第2実施例である車両用モールの組み付けた状態を示すのB−B断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用モール
2 車両
3 スライドドア(ドア)
4 ロック
10 ベルトモール(モール本体)
11 透光孔(透光部)
20 発光ダイオード(発光体)
22 導光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面のドアに設けられるモール本体と、前記モール本体の端部に内装され乗員に前記ドアの状態を報知する発光体と、前記モール本体に設けられ前記発光体の発光を透光する透光部と、を備えた車両用モール。
【請求項2】
前記ドアは自動で開閉動作し、前記発光体は前記ドアの開閉動作と連動して前記ドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用モール。
【請求項3】
前記発光体は、前記ドアのロック解除及びロック施錠の少なくともいずれかを前記乗員に報知する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用モール。
【請求項4】
前記モール本体の端部開口から軸方向にスライド嵌入される端末キャップを備え、前記発光体は前記端末キャップに取り付けられる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用モール。
【請求項5】
前記発光体は前記モール本体の軸方向に少なくとも3個以上直列に設けられ、前記発光体の送り点灯により前記ドアの開閉方向及び開閉速度の少なくとも1つを前記乗員に報知する、ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の車両用モール。
【請求項6】
前記透光部は、前記モール本体の夫々の前記発光体に対応する位置に設けられた透光孔である、ことを特徴とする請求項5に記載の車両用モール。
【請求項7】
前記発光体は発光ダイオードである、ことを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の車両用モール。
【請求項8】
前記発光ダイオードと前記モール本体の間には導光板が設けられ、前記発光ダイオードの点灯は前記導光板を介して前記透光孔から前記モール本体の外に案内される、ことを特徴とする請求項7に記載の車両用モール。
【請求項9】
前記発光体は有機ELである、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用モール。
【請求項10】
前記透光部は透過性部材であり、前記透過性部材は前記モール本体の少なくとも前記有機ELに対応する位置に形成される、ことを特徴とする請求項9に記載の車両用モール。
【請求項11】
前記モール本体は、ドア本体とウィンドーガラスの間に設けられるベルトモールである、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の車両用モール。
【請求項12】
前記ドアは、スライドドア、スイングドアのいずれかである、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の車両用モール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−126313(P2009−126313A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302435(P2007−302435)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】