説明

車両用ランプ制御システム

【課題】 運転者が周辺の安全を確認する際にはランプの照明範囲と光度を自動的に制御して運転者の顔向き方向の領域を照明することで周辺の確認を確実に行うようにし、かつ無用なランプ制御動作を無くした車両用ランプ制御システムを提供する。
【解決手段】 車両の運転者の顔向き方向を検出する顔向き方向検出手段12と、検出した顔向きが継続して所定の状態にあることを判定する顔向き状態判定手段21と、検出した顔向き方向と判定した顔向き状態とに基づいて当該方向の照明を行うようにランプLSL,RSLの照明状態(照明面積、照明方向、光度)を制御するランプ制御手段(制御ECU)2を備える。運転者が注視したい領域を十分な明るさで照明することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の運転者が周辺の安全を確認する際に有効な照明制御を行うようにした車両用ランプ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行の安全性を高めるために、自動車の走行中に運転者の顔の向きを検出し、顔の向きが変化したときに自車の前照灯(ヘッドランプ)や補助灯等の灯具の照明範囲を当該顔の向きに追従するように制御し、運転者の顔の向いた方向の領域の照明を確保して運転者による自動車の周辺の安全を確認することを可能にしたランプ制御システムが提案されている。例えば、特許文献1には、運転者の顔に装着した光学素子を利用して顔の向きを検出し、検出した顔の向きの方向にヘッドランプの照明光軸をスイブル制御する技術が提案されている。また、特許文献2はカメラで撮像した運転者の顔面画像から顔の向きと視線方向を検出し、これに基づいて補助灯の照射方向を調整する技術が提案されている。これらの技術によれば、運転者が向いた方向の自動車周辺を明るく照明することができるので障害物等の確認が容易になり、安全走行を確保する上で有利になる。
【特許文献1】特開2001−347881号公報
【特許文献2】特開平9−76815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1,2の技術はいずれも検出した運転者の顔の向きに応じてヘッドランプや補助灯の照明方向を制御しているが、運転者が障害物等を確認しようとして顔向きを変化させた場合に、これに伴って照明方向が変化されても、明るさが不足しているときには障害物を十分に確認することができず、また確認までに時間がかかってしまい、迅速性が要求される走行時における安全確認の面で好ましくない。
【0004】
本発明の目的は、運転者が周辺の安全を確認しようとする際にはランプの光度を自動的に制御して運転者の顔向き方向の領域を照明することで周辺の確認を確実に行うようにした車両用ランプ制御システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用ランプ制御システムは、車両に設けられた照明用のランプの点灯状態を制御するためのランプ制御システムであって、車両の運転者の顔向き方向を検出する顔向き方向検出手段と、検出した顔向きが継続して所定の状態にあることを判定する顔向き状態判定手段と、検出した顔向き方向と判定した顔向き状態とに基づいて顔向き方向の照明を行うようにランプの照明状態を制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする。ここで、ランプ制御手段はランプの照明状態の制御として、当該ランプの光度を顔向きの継続時間に応じて変化制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者が周辺の安全を確認すべく顔向きを変化させるとともに、その顔向きの状態が継続して所定の状態にあるときには、当該顔向き方向を十分な明るさで照明するようにランプの照明状態を制御する。これにより、単に顔向きが変化したときにランプ制御をするのではなく、例えば視認した障害物等を十分に確認すべく所定の時間継続して障害物の方向を向いているときにランプの照明状態の制御を行うことで、運転者が安全を確認するのに必要とされる場合にのみランプ制御を実行することになり、運転者による安全の確認を行い易くする一方で無用なランプ制御を無くしてエネルギー消費を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態として、顔向き状態判定手段は運転者の顔向き方向が継続して同じ方向にあるときの停滞時間を検出し、ランプ制御手段は当該停滞時間に応じてランプの光度を変化させる。運転者が安全を確認すべく顔を障害物等の方向に向けており、その方向を向いている停滞時間が所定の時間以上のときには障害物の確認がし難い状態であると判定し、ランプの光度を増大して確認し易くする。また、これと併せて、顔向き角度に応じて照明範囲を連続的、又は断続的に変化制御する。ここで、照明範囲の変化制御として、照明面積或いは照明方向を変化制御する。
【実施例1】
【0008】
次に、本発明の実施例1を説明する。図1は本発明のランプ制御システムを適用した自動車の概略構成と各ランプの照明範囲を併せて示す平面模式図、図2はシステムのブロック構成を示す図である。図1において、自動車CARの前部の左右には自車の前方を照明するための左と右の各ヘッドランプ(前照灯)LHL,RHLが配設される。前記左右のヘッドランプLHL,RHLは、それぞれハイビームランプHBLとロービームランプLBLを備えるいわゆる4灯式ランプとして構成されており、左右のロービームランプLBLによって同図に点描する前方領域FAを照明する配光特性となっている。このロービームランプLBLは、図2に示すように、スイブル(偏向)機構SVでの制御によって照明光軸を水平左右方向にスイブル制御し、さらにはレベリング(上下)機構LVでの制御によって照明光軸を垂直上下方向にレベリング制御することが可能に構成されている。これらスイブル機構SVとレベリング機構LVは既に広く知られている機構であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0009】
また、図1において、各ヘッドランプLHL,RHLには、前記前方領域FAの左右側方領域LSA,RSAを照明するための補助灯としての左右サイドランプLSL,RSLが組み込まれている。前記左右のサイドランプLSL,RSLは、ここではLED等の発光素子を光源としたランプで構成されており、複数のLEDを選択的に発光させることによってサイドランプLSL,RSLの光度及び照明面積を変化することができるように構成されている。また、選択して発光させるLEDを相違させることによってサイドランプLSL,RSLの照明範囲を例えば左右方向に変化させ、その照明中心となる照明方向を変化させることもできるように構成されている。このように本発明における照明範囲の制御は実質的に照明する領域を変化制御するものであり、照明する面積を変化制御する制御と照明する方向を変化制御する両方の制御を含むものである。
【0010】
一方、図1において、前記自動車CARの車室内の運転席の正面位置、例えばステアリングホイールSTWの近傍位置には運転者DRの顔を正面方向から撮像するための顔向き検出カメラ3が配置され、フロントガラス上部の例えば図には表れないルームミラーの近傍には自車の前方の広い領域を撮像するための周辺監視カメラ4が配置される。これらのカメラ3,4はいずれも例えばCCD撮像素子あるいはCMOS撮像素子等の半導体撮像素子を用いたカメラで構成される。また、ダッシュボードにはナビゲーション装置5が配設される。このナビゲーション装置5からは、自車が現在走行している地図上の位置情報や、自車が現在走行している地域ないしその周辺領域の道路情報、特に現在走行している道路のカーブ(曲路)や交差点、坂道、踏切等の情報が道路信号として出力される。
【0011】
さらに、前記自動車CARには、図1には示されていないが図2に示すように、前記ヘッドランプLHL,RHLを点灯させるための照明スイッチのオン・オフ状態、すなわちヘッドランプLHL,RHLの点灯状態を検出してヘッドランプ信号を出力するヘッドランプセンサー61、運転者によって操舵されたときの前記ステアリングホイールSTWによる操舵角を検出して操舵角信号を出力するステアリング角センサー62、自動車CARの変速機のギア位置を検出可能なギアポジションセンサー63、自動車CARの車速を検出して車速信号を出力する車速センサー64、自動車CARの図には表れない左右のターンシグナルランプを点灯させるためのターンシグナルスイッチを操作したときのターンシグナル信号を出力するターンセンサー65が配設される。
【0012】
そして、図2に示すように、前記顔向き検出カメラ3と周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号は画像処理ECU(Electronic Control Unit )1に入力され、この画像処理ECU1において後述するように運転者DRの顔向きが検出され、また自車の前方領域の道路状況や障害物が検出される。なお、ここで障害物は自車の安全走行の障害になる物を意味しており、例えば路上に存在する建造物やその他の異物、並びに他車や歩行者を含む広い意味で用いている。また、前記画像処理ECU1の検出信号は制御ECU2に入力される。この制御ECU2には前記した各センサー61〜65及びナビゲーション装置5の各出力も入力されている。制御ECU2は画像処理ECU1において検出した運転者DRの顔向き情報から運転者の顔向き状態を判定し、判定した状態に基づいて前記補助灯としてのサイドランプLSL,RSLの照明範囲や光度を変化制御し、照明状態の制御を実行する。
【0013】
図2に示すように、画像処理ECU1は、周辺監視部11と顔向き検出部12とを備えている。周辺監視部11は周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号を所定のタイミングで取り込んで画像認識し、自動車CARの前方の道路の路肩や、道路に描かれたレーンマーク、さらには、道路上に存在する建造物や異物、さらに他車や歩行者等の障害物を検出する。そして、検出した情報を周辺監視情報として出力する。一方、前記顔向き検出部12は顔向き検出カメラ3で撮像した運転者DRの顔画像の撮像信号を所定のタイミングで取り込んで画像認識し、運転者DRの顔向きを検出してこれを顔向き情報として出力する。顔向き検出部12での顔向き検出については特許文献1,2に記載されている技術を始めとして種々の手法が存在するが、ここでは本出願人が先に特願2007−242941で提案している手法を用いている。
【0014】
この顔向き検出動作について図3を参照して簡単に説明する。顔向き検出部12は、顔向き検出カメラ3で所要の時間間隔で撮像して得られる時系列の運転者DRの顔画像DRFに対してソーベルフィルタ処理を施して顔の輪郭や両眼、鼻、耳等の輪郭を取得する。顔向き検出カメラ3は運転者DRの正面に配設されており、通常では運転者DRは運転中の殆どは自車の前方を向いていると言えるので、撮像した運転者DRの顔画像は運転者の顔の正面画像と言える。しかる上で、初期設定を行う。この初期設定では、図3(a)のように運転者DRの正面の顔画像DRFを判定画面12A上に配置し、この顔画像DRFから両眼LE,REの位置座標、例えば眼球の中心点の位置座標を求め、これら両眼の位置座標から両者の左右方向の中心点を演算し、この中心点を通る垂直線を顔中心線Cxとして定義し、この顔中心線Cxの座標を記憶しておく。この初期設定を行っておくことにより、以降は時系列で順次取得される運転者DRの顔画像DRFから、その都度両眼LE,REの位置座標を求め、これらの位置座標と、初期設定で記憶した顔中心線Cxとから左右の各眼と顔中心線との各寸法dL,dRをそれぞれ偏位寸法として演算し、この偏位寸法から運転者DRの顔向きを検出する。
【0015】
例えば、図3(b)のように、運転者DRの顔画像DRFにおいて、左眼LEの偏位寸法dLが右眼REの偏位寸法dRよりも大きいときには運転者は左を向いていると検出し、反対に図3(c)のように、右眼REの偏位寸法dRが左眼LEの偏位寸法dLよりも大きいときには右を向いていると検出す。また、これら両眼の偏位寸法dL,dRの差の大きさから顔向きの角度も検出できる。実際には、初期設定において、両眼の偏位寸法の差の値と運転者DRの実際の顔向き角度との相関を測定しておき、この測定値に基づいて偏位寸法をパラメータとする角度マップを作成して顔向き検出部12の内部記憶装置に記憶させておき、順次取得した偏位寸法を当該角度マップに適用することで運転者DRの顔の向きの方向及びその角度を迅速に検出することが可能になる。
【0016】
前記制御ECU2は、図2に示したように、検出した運転者DRの顔向き情報から当該運転者の状態、特に運転者DRが注視している方向を推定する顔向き状態判定部21と、この顔向き状態判定部21で判定された状態に基づいてランプ制御を行うランプ制御部22とを備えている。顔向き状態判定部21には前記画像処理ECU1からの顔向き情報が入力され、この顔向き情報から時間軸上での顔向き角度を検出する。また、この顔向き角度が所定時間以上にわたって同じ方向に向けられて停滞しているときに、そのときの停滞時間を検出し、これらを顔向き状態信号として出力する。例えば、図4(a)は顔向き検出部12で検出した顔向き角度の例であり、横軸に時間、縦軸に顔向き角度を示している。ここでは、運転者DRは右、左に顔向きを変化させており、特に台形の部分では顔を向いた方向に所定時間ts以上継続して顔向きを停滞させていることが示されている。このような停滞状態が検出されたときには、顔向き状態判定部21は、運転者が同方向に障害物や異常等の存在を察知してその方向を注視している状態である蓋然性が高いと判定する。ランプ制御部22は顔向き状態判定部21で判定したときの顔向き状態信号、すなわち、顔向き角度と停滞時間に基づいてサイドランプLBL,RBLの照明範囲や光度を制御する。また場合によってロービスムランプLBLをスイブル制御するためのスイブル制御部23と、レベリング制御するためのレベリング制御部24を併せて制御する。
【0017】
このようなランプ制御システムによるランプ制御動作を説明する。図5はランプ制御動作のメインフローチャートである。先ず、制御ECU2はヘッドランプセンサー61の信号からヘッドランプLHL,RHLが点灯されているか否かを判定する(S11)。点灯されていない場合にはランプ制御は実行しない。点灯されている場合には画像処理ECU1からの情報を取り込み、顔向き状態判定ステップ(S12)を実行する。この顔向き状態判定ステップ(S12)では、顔向き状態判定部21は画像処理ECU1からの顔向き情報を取込むとともに、制御ECU2内に内蔵しているタイマからの時間情報を取得し(S121)、これらの情報から図4に示した時間軸上での顔向き角度の変化を求め、この変化から顔向き状態判定信号を出力する。この顔向き状態判定信号は、顔向き角度に基づく照明範囲制御信号と、その停滞時間に基づく光度制御信号とで構成される。しかる上で、ランプ制御部22はこの顔向き状態判定信号に基づいて照明状態を変化制御するためのランプ制御ステップ(S13)を実行する。このランプ制御ステップ(S13)では、顔向き状態判定信号中の顔向き角度から顔を向いている方向のサイドランプLSL又はRSLを点灯し(S131)、次いで点灯したサイドランプについて顔向き状態判定信号中の照明範囲制御信号に基づいて照明範囲を変化させるためのランプ制御を実行する(S132)。また、これと同時に点灯したサイドランプについて顔向き状態判定信号中の光度制御信号に基づいて光度を制御するためのランプ制御を実行する(S133)。
【0018】
図6は照明状態の制御を行う際の基準となる制御マップの一例である。図6(a)において、横軸は顔向き角度、縦軸はサイドランプLSL,RSLの照明範囲であり、顔向き角度が大きくなるとこれに合わせてサイドランプLSL,RSLの照明範囲を自動車の前方から側方、さらには後側方(運転者から見た領域)に向けて変化させている。照明範囲を変化するためには、例えば、サイドランプの光源を構成している複数のLEDの発光個数を変化することにより照明面積を変化させる。すなわち、図7(a)に右サイドランプRSLの照明範囲を模式的に示すように、発光するLEDが少なくて照明面積が小さいときには、a1のように前方の領域のみが照明されるが、発光するLEDの数を増やして照明面積を少し大きくするとa2のように側方(右側方)の領域まで照明されるようになり、さらに発光するLEDの数を増やして照明面積を大きくするとa3のように運転者に対して後側方(右後側方)の領域まで照明されるようになる。
【0019】
あるいは、照明範囲を変化する手段として、サイドランプLSL,RSLの光源を構成している複数のLEDのうち、発光するLEDを変更させることにより照明する領域を変化させ、照明領域の中心である照明方向を変化させる。図示は省略するが、サイドランプLSL,RSLでは、光源としてランプ正面に向けて配置されたベース板に複数のLEDが平面配置され、各LEDが発光したときに出射される光はランプの前面に設けられたレンズにより屈折されて前方ないし側方に照射されるようになっている。このような構成のサイドランプにおいて、例えば図7(b)示す右サイドランプRSLにおいて、複数のLEDのうち、自動車の中央側に配置されているLED群を発光させることでb1のように照明範囲の方向が前方に向けられた照明が行われる。また、これよりも若干外側(右側)に配置されたLED群を発光させることでb2のように照明範囲は外側の側方に向けられた照明となる。さらに、外側(右側)に配置されているLED群を発光させることでb3のように照明範囲が後側方に向けられた照明となる。
【0020】
また、前記制御マップは、図6(b)のマップを組み合わせて用いている。図6(b)において、横軸は停滞時間、縦軸はサイドランプの光度であり、ここでは顔向き状態判定信号中の顔向きの停滞時間が長くなるのに従ってサイドランプの光度を増加させている。すなわち、停滞時間が長くなるということは、運転者が顔を向けた方向を継続して見ていることであり、この見ている方向に何か運転者が確認したい物、例えば障害物が存在しているがこれを短時間では確認できない状態であり、あるいは詳細な確認をしたい状態であると判定される。したがって、停滞時間が長くなるのにしたがってサイドランプの光度を増加し、運転者における確認をより容易にかつ迅速に行うようにする。これにより、危険回避等の次の運転操作に迅速に移行することが可能になり、安全走行を確保する上で好ましいものとなる。なお、停滞時間が短いということは、運転者が直ちに障害物等を確認できたと判定されるので、光度は低くてもよい。
【0021】
このように、制御マップを参照して運転者の顔向き角度に追従して照明範囲を変化させることで運転者が注視しようとする方向の領域を照明することが可能になり、運転者による安全確認に有利となる。また、この制御の際には、運転者が同じ方向を向いているときの顔向きの停滞時間を考慮し、停滞時間に追従して照明光度を制御することで当該領域の照明をより明るく照明することが可能になり、運転者による安全確認を迅速かつ確実に行うことが可能になる。
【0022】
なお、図6の制御マップでは照明範囲と光度をそれぞれ時間軸上で連続的に変化制御しているが、各制御マップの顔向き角度や停滞時間に適宜のしきい値を設定し、これらのしきい値と顔向き角度又は停滞時間とを比較することで、各制御マップにおいて破線で示すように照明範囲や光度を段階的に増減するような制御を行ってもよい。また、図6の各制御マップでは、微小角度の顔向き角度範囲内と、微小時間の停滞時間範囲内をそれぞれ不感帯として設定しているので、微小な顔向き角度の変化及び微小時間の停滞時間の際には照明範囲や光度が変化されることはない。そのため、通常の運転動作によって生じる運転者の僅かな顔向き変化や瞬間的な顔向き変化に対して照明範囲や照明光度が変化されることはなく、頻繁な照明状態の変化に伴う煩わしさが生じることを未然に回避することができる。
【0023】
例えば、図4(a)のグラフに示した顔向き動作の場合において、顔向きが左右に変化しても不感帯角度±θoの範囲内のときには照明範囲を変化させるための制御信号は出力されない。顔向き角度が不感帯角度以上になると図4(b)のようにランプの照明範囲を制御するための照明範囲制御信号が出力される。この照明範囲制御信号により図6(a)の制御マップに基づくランプの照明範囲(照明面積又は照明方向)の制御が行われる。そして、顔向き角度が所定の角度範囲内に所定の停滞時間ts以上停滞しているときには図4(c)のようにランプの光度を制御するための光度制御信号が出力される。この光度制御信号により図6(b)の制御マップに基づくランプの光度の制御が行われる。
【0024】
ここで、本発明におけるランプ制御部22でのランプ制御においては、車両信号を参照することで制御マップに基づく照明範囲や照明光度の変化制御を前述とは異なる態様に変化させるようにしてもよい。例えば、車速センサー64からの車速信号を参照し、低速の市街地走行の場合には、高速の郊外走行に比較して照明範囲や照明光度の変化分を抑制するようにする。図6(a)の制御マップの場合には、実線を郊外走行時の特性とすると、低速の市街地走行では鎖線で示すように特性の傾きを小さくし、同じ顔向き角度でも照明範囲が側方に向けて変化する量を少なくする。これは、市街地では周辺環境が明るいため前方ないし後側方の確認に必要とされる照明光度は少なくて済むことが多いからである。また、図6(b)の制御マップでは、実線を郊外走行時の特性とすると、市街地走行では鎖線で示すように特性の傾きを小さくし、同じ顔向き停滞時間でも照明光度の増加を抑制する。これは、市街地では周辺環境が明るいため照明光度の増加は少なくて済むためである。
【0025】
また、ランプ制御においては、前述した車速に代えて、周辺監視部11からの周辺監視情報に基づいて市街地走行と郊外走行を判定し、あるいはナビゲーション装置5からの位置情報や道路情報を参照して市街地走行と郊外走行を判定し、その上で図6の制御マップの特性でのランプ制御を行ってもよい。さらには、ターンセンサー65やギアポジションセンサー64等から得られる車両信号を単独、あるいはこれらを複合して取得することによって市街地走行と郊外走行を判定することも可能である。勿論、市街地走行と郊外走行とに限定してランプ制御を行うのではなく、各情報や車両信号を参照することにより、自動車の種々の走行状態を判定し、それぞれに対応した照明光度と照明範囲の制御を行うことが可能である。
【0026】
実施例1では補助灯として設けたサイドランプLSL,RSLをランプ制御しているが、本発明のランプ制御では、サイドランプ以外の補助灯をランプ制御するように構成してもよい。また、補助灯はヘッドランプの一部として設けられてもよいし、ヘッドランプとは別に設けられてもよい。さらに、本発明にかかるランプ制御は、補助灯としてのランプの制御に限られるものではなく、顔向き角度に基づいてヘッドランプLHL,RHLのロービームランプLBLをスイブル制御あるいはレベリング制御することにより照明範囲を変化させ、さらには、顔向き停滞時間に追従してヘッドランプLHL,RHLの光度を変化するような制御を行うことも可能である。
【0027】
本発明において、顔向き検出手段(顔向き検出部12)は運転者の顔向き動作が検出できる手段であれば、実施例1のように顔向き検出カメラ3で撮像した顔画像を画像解析する構成に限られるものではない。また、顔向き検出カメラ3で撮像した運転者の顔画像を画像解析して顔向きを検出する際の処理手法は実施例1の手法に限られるものはなく種々の処理手法が採用できる。また、顔向き状態判定手段21での判定に際しては、顔向き角度や顔向き停滞時間は全く同一方向に顔が向けられた時の角度や時間に基づくものではなく、顔向き角度や停滞時間に所定の幅を持たせ、顔向きが所定の角度範囲内に向けられている時の角度や所定範囲の時間として判定するようにしてもよい。これにより、顔向き方向が微小な範囲で変動する場合でも検出する顔向き角度や顔向き停滞時間の検出値が微細に変化することがなく、検出値が安定して照明光度及び照明範囲の変化が緩やかなランプ制御が可能になり、運転者や他車あるいは歩行者が煩わしさを感じることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した自動車の概念構成を示す平面模式図である。
【図2】本発明のランプ制御システムのブロック構成図である。
【図3】顔向き検出手段での検出動作を説明する概念図である。
【図4】顔向き角度とランプ制御用の信号の相関を示す図である。
【図5】ランプ制御動作のメインフローチャートである。
【図6】ランプ照明範囲と光度の制御マップである。
【図7】ランプ範囲(面積,方向)の制御態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 画像処理ECU
2 制御ECU
3 顔向き検出カメラ
4 周辺監視カメラ
5 ナビゲーション装置
11 周辺監視部
12 顔向き検出部
21 顔向き状態判定部
22 ランプ制御部
23 スイブル制御部
24 レベリング制御部
LHL,RHL ヘッドランプ
LSL,RSL サイドランプ
LBL ロービームランプ
CAR 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた照明用のランプの点灯状態を制御するためのランプ制御システムであって、当該車両の運転者の顔向き方向を検出する顔向き方向検出手段と、検出した顔向きが継続して所定の状態にあることを判定する顔向き状態判定手段と、検出した顔向き方向と判定した顔向き状態とに基づいて顔向き方向の照明を行うように前記ランプの照明状態を制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする車両用ランプ制御システム。
【請求項2】
前記顔向き状態判定手段は運転者の顔向き方向が継続して同じ方向にあるときの停滞時間を検出し、前記ランプ制御手段は当該停滞時間に応じて前記ランプの光度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項3】
前記ランプ制御手段は前記ランプの照明状態の制御として、当該ランプの光度を時間軸上で連続的、又は断続的に変化制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項4】
前記ランプ制御手段は前記ランプの照明状態の制御として、当該ランプの照明範囲を前記顔向き角度に応じて連続的、又は断続的に変化制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用ランプ制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120148(P2009−120148A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299226(P2007−299226)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】