説明

車両用内燃機関及びその制御方法

【課題】エネルギ損失を抑制しながら、タービンで圧縮された圧縮空気の温度を低下させること。
【解決手段】内燃機関の排気流路2に設けられたタービン10と、内燃機関の吸気流路に設けられ、タービン10の回転と同期して駆動する圧縮器20と、複数の隔壁を有するロータと、ロータを収容する筺体40とを備え、筺体40が、圧縮器20の下流で吸気流路1に接続される第1導入部と、圧縮器20の上流で吸気流路1に接続される第2導入部と、ロータ駆動モータを回転することにより得られた一次空気を内燃機関の燃焼室7に連通する吸気流路1に排出する第1排出部と、ロータ駆動モータを回転することにより得られた二次空気をタービン10の上流の排気流路2に排出する第2排出部と、を有し、制御部は、第1導入部から導入された一次空気が膨張する一方で第2導入部から導入された二次空気が圧縮するようにロータ駆動モータの回転数を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内燃機関及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関として、例えば、特許文献1には、過給器から燃焼室に送り込まれる圧縮空気をインタークーラの冷却水により熱交換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−2983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、過給器で圧縮され、高温となった圧縮空気がインタークーラのみで冷却されるため、圧縮空気が有していた熱エネルギが冷却水に奪われてしまい、エネルギ損失が生じてしまう。
【0005】
従って、本発明の目的は、エネルギ損失を抑制しながら、タービンで圧縮された圧縮空気の温度を低下させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明においては、内燃機関の排気流路に設けられたタービンと、前記内燃機関の吸気流路に設けられ、前記タービンの回転と同期して駆動する圧縮器と、複数の隔壁を有するロータと、前記ロータを収容し、前記複数の隔壁との間に複数の隔室を形成する筺体と、前記ロータを駆動するモータと、前記モータを制御する制御手段と、を備え、前記筺体が、前記圧縮器の下流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮された一次空気を前記隔室内に導入する第1導入部と、前記圧縮器の上流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮されていない二次空気を前記隔室内に導入する第2導入部と、前記モータを回転することにより得られた一次空気を前記内燃機関の燃焼室に連通する吸気流路に排出する第1排出部と、前記モータを回転することにより得られた二次空気を前記タービンの上流の排気流路に排出する第2排出部と、を有し、前記制御手段は、前記第1導入部から導入された一次空気が膨張する一方で前記第2導入部から導入された二次空気が圧縮するように前記モータの回転数を制御することを特徴とする車両用内燃機関が提供される。
【0007】
また、本発明においては、内燃機関の排気流路に設けられたタービンと、前記内燃機関の吸気流路に設けられ、前記タービンの回転と同期して駆動する圧縮器と、複数の隔壁を有するロータと、前記ロータを収容し、前記複数の隔壁との間に複数の隔室を形成する筺体と、前記ロータを駆動するモータと、前記モータを制御する制御手段と、を備え、前記筺体が、前記圧縮器の下流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮された一次空気を前記隔室内に導入する第1導入部と、前記圧縮器の上流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮されていない二次空気を前記隔室内に導入する第2導入部と、前記モータを回転することにより得られた一次空気を前記内燃機関の燃焼室に連通する吸気流路に排出する第1排出部と、前記モータを回転することにより得られた二次空気を前記タービンの上流の排気流路に排出する第2排出部と、を有する車両用内燃機関の制御方法であって、前記制御手段が、前記第1導入部から導入された一次空気が膨張する一方で前記第2導入部から導入された二次空気が圧縮するように前記モータの回転数を制御することを特徴とする車両用内燃機関の制御方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、前記第1導入部から導入された一次空気を膨張させることにより前記圧縮器で圧縮された一次空気の温度を低下させることができる一方で、前記第2導入部から導入された二次空気を圧縮させて前記排気流路に排出することにより前記タービンの駆動効率を向上させることができる。これにより、エネルギ損失を抑制しながら、前記圧縮器で圧縮された圧縮空気の温度を低下させることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記一次空気が膨張することにより生じる圧力波に前記二次空気を圧縮させることにより、前記一次空気から前記二次空気に熱伝達される構成であってもよい。この構成によれば、前記一次空気と前記二次空気とを混合させることなく、前記一次空気と前記二次空気との間で熱伝達を行うことができる。
【0010】
また、本発明においては、前記筺体を迂回して前記筺体よりも下流の吸気流路に前記一次空気を導くバイパス流路と、前記バイパス流路を開閉可能である弁と、前記弁を駆動する駆動モータと、前記駆動モータを制御する駆動制御手段と、を更に備え、前記駆動制御手段は、前記内燃機関が出力すべきトルクが小さいほど、前記弁の開度を増大させる構成であってもよい。この構成によれば、前記内燃機関が出力すべきトルクが比較的小さい場合には、前記圧縮器での圧縮率が低いことから温度を低下させる必要がなく、また、前記タービンの駆動効率を助長する必要がないため、前記筺体を迂回させることにより、前記一次空気と前記二次空気との間で膨張及び圧縮を行う際のエネルギ損失を抑制することができる。その一方で、前記内燃機関が出力すべきトルクが比較的大きい場合には、前記一次空気を筺体内へ導入することにより温度を低下させ、圧縮された一次空気が有する余剰分のエネルギを用いて前記二次空気を圧縮して、前記タービンの駆動効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記制御手段は、前記内燃機関が出力すべきトルクが大きいほど、前記モータの回転数を増大させる構成であってもよい。この構成によれば、前記モータの回転数を増大させることにより、前記一次空気の膨張及び前記二次空気の圧縮を促進することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エネルギ損失を抑制しながら、タービンで圧縮された圧縮空気の温度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用内燃機関100の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】ロータ30及び筺体40の断面図である。
【図3】制御部60の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】制御部60の処理手順を示す図である。
【図5】各制御弁の制御処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で以下の実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0015】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用内燃機関100の機能的構成を示すブロック図である。図2は、ロータ30及び筺体40の断面図である。図3は、制御部60の機能的構成を示すブロック図である。
【0016】
本発明に係る車両用内燃機関100は、内燃機関の排気流路2に設けられたタービン10と、内燃機関の吸気流路1に設けられ、タービン10の回転と同期して駆動する圧縮器20と、複数の隔壁31を有するロータ30と、ロータ30を収容し、複数の隔壁31との間に複数の隔室46を形成する筺体40と、ロータ30を駆動するロータ駆動モータ50と、ロータ駆動モータ50を含む駆動機構を制御する制御部60と、を備える。
【0017】
タービン10は、排気の勢いで回転する羽根車である。タービン10は、排気中から有害物質等を除去する触媒3を介して、排気ガスを車外に放出する。圧縮器20は、タービン10と同軸に固定されることにより、タービン10と同期して回転する羽根車(コンプレッサ)である。圧縮器20は、空気中から粉塵を除去するエアクリーナ9を介して導入された吸気を過給して、内燃機関の燃焼室7に送り出す。係るタービン10及び圧縮器20を備えたターボチャージャーでは、内燃機関が出力すべきトルク(目標トルク)が大きくなるほど、排気の排出圧力が増大するため、圧縮器20における圧縮率が増大していく。
【0018】
ロータ30(回転体)は、筺体40の内壁45と、隣り合う2つの隔壁31との間に隔室46を複数形成している。これにより、それぞれの隔室46が略密閉空間を形成している。
【0019】
筺体40は、中空の直方体に形成された断熱部材であり、内部にロータ30を収容している。筺体40は、圧縮器20の下流で吸気流路1に接続され、圧縮器20で圧縮された一次空気を隔室46内に導入する第1導入部41と、圧縮器20の上流で吸気流路1に接続され、圧縮器20で圧縮されていない二次空気を隔室46内に導入する第2導入部42と、ロータ駆動モータ50を回転することにより得られた一次空気を吸気流路1に排出する第1排出部43と、ロータ駆動モータ50を回転することにより得られた二次空気をタービン10の上流の排気流路2に排出する第2排出部44と、を有する。
【0020】
第1導入部41及び第1排出部43は、筺体40の一方側の端面A1に形成される。第1導入部41は、圧縮器20で圧縮され、スロットル弁1gで流量調整された一次空気を筺体40内に導入し、第1排出部43は、ロータ駆動モータ50を回転することにより得られた一次空気をインタークーラ6を介して燃焼室7に供給する。
【0021】
ここで、第1排出部43から排出された一次空気は、圧縮器20で圧縮された空気を断熱膨張させたものであるため、温度が低下している。このため、インタークーラ6で行う冷却処理を低減することができ、熱エネルギの損失を抑制することができる。
【0022】
第2導入部42及び第2排出部44は、例えば、端面A1と対面する他方側の端面A2に形成される。第2排出部44は、タービン10の上流における排気流路2に設けられた可変弁8に接続される。可変弁8は、燃焼室7内に排気が逆流することを防止するために設けられる。
【0023】
第2排出部44と可変弁8とを接続する流路には、圧縮暖気導入弁47が設けられる。圧縮暖気導入弁47には、燃焼室7との間を接続する流路1eが接続される。また、この流路1eには、第1排出部43から排出された一次空気を導入するための流路1fが接続される。流路1fには、流路1eへの一次空気の導入量を規定する一次空気導入弁48が設けられる。圧縮暖気導入弁47及び一次空気導入弁48は、制御部60からの指令に従って圧縮暖気導入弁駆動モータM2、一次空気導入弁駆動モータM7により駆動される。従って、圧縮暖気導入弁47は、後述の諸条件に応じて、第2排出部44から排出された二次空気を可動弁8又は燃焼室7内の少なくともいずれかに導入することができる。
【0024】
また、第1排出部43とインタークーラ6との間を接続する流路には、燃焼室7内への一次空気の導入量を規定する膨張冷気導入弁49が設けられる。膨張冷気導入弁49は、制御部60からの指令に従って膨張冷気導入弁駆動モータM6により駆動される。膨張冷気導入弁49には、タービン10の下流であって、触媒3の上流の排気流路2に一次空気を導入するための流路1hが接続される。従って、膨張冷気導入弁49は、後述の諸条件に応じて、第1排出部43から排出された一次空気を燃焼室7又は排気流路2の少なくともいずれかに導入することができる。
【0025】
可変弁8には、タービン10の直前で排気の一部を逃がして過給量を調節するウェストゲート2bが設けられる。ウェストゲート2bには、当該迂回流路を通過する量を調節するウェストゲート弁2cが設けられる。ウェストゲート弁2cは、制御部60からの指令に従ってウェストゲート弁駆動モータM1により駆動される。
【0026】
吸気流路1には、筺体40を迂回して筺体40よりも下流の吸気流路1に一次空気を導くバイパス流路1cと、バイパス流路1cを開閉可能であるバイパス弁1dとが設けられる。バイパス弁1dは、制御部60からの指令に従ってバイパス弁駆動モータM3により駆動される。
【0027】
タービン10の下流の排気流路2には、圧縮器20の上流の吸気流路1と連通する流路2dが設けられる。この流路2dには、高温のEGRガスを冷却するEGRクーラ5及びEGRガスの流量を調節するEGR弁4が設けられる。EGR弁4は、制御部60からの指令に従ってEGR弁駆動モータM4により駆動される。
【0028】
ロータ駆動モータ50は、その出力軸が筺体40内に延びており、筺体40内に収容されたロータ30を後述の制御部60からの制御信号を受けて回転させる。
【0029】
制御部60は、CPU、ROM、RAM等を有するECUであり、種々のセンサから入力される検出信号に基づいて、ロータ駆動モータ50等の接続機器を制御する。制御部60には、アクセル開度センサ61、機関速度センサ62、車速センサ63、冷却水温度センサ64、ノッキング検出センサ65、燃焼室温度センサ66等の種々のセンサが接続される。ノッキング検出センサ65は、例えば、シリンダブロックに配設された振動センサである。
【0030】
制御部60には、ロータ30を駆動させるロータ駆動モータ50、ウェストゲート弁2cを駆動させるウェストゲート弁駆動モータM1、圧縮暖気導入弁47を駆動させる圧縮暖気導入弁駆動モータM2、バイパス弁1dを駆動させるバイパス弁駆動モータM3、EGR弁4を駆動させるEGR弁駆動モータM4、スロットル弁1gを駆動させるスロットル弁駆動モータM5、膨張冷気導入弁49を駆動させる膨張冷気導入弁駆動モータM6、一次空気導入弁48を駆動させる一次空気導入弁駆動モータM7等が接続され、各種センサからの検出信号に基づいて、それぞれの駆動モータを駆動させる。
【0031】
制御部60は、第1導入部41から導入された一次空気が膨張する一方で第2導入部42から導入された二次空気が圧縮するようにロータ駆動モータ50の単位時間当たりの回転数(回転速度)を制御する。これにより、筺体40内では、一次空気が膨張することにより生じる圧力波Wに二次空気を圧縮させることにより、一次空気と二次空気との間で熱伝達が行われる。制御部60は、制御手段及び駆動制御手段として機能する。
【0032】
[制御部60の処理手順]
図4は、制御部60の処理手順を示す図である。まず、制御部60は、アクセル開度センサ61で検出されたアクセル開度、機関速度センサ62で検出された機関速度、車速センサ63で検出された車速及びノッキング検出センサ65で検出されたノッキング発生有無等を読み込む(ステップS1)。そして、ステップS1で読み込まれた検出信号に基づいて、目標トルク(内燃機関が出力すべきトルク)を算出する(ステップS2)。
【0033】
次に、ステップS2で算出された目標トルク、ステップS1で読み込まれた機関速度に基づいて、燃料噴射量、要求空気充填量及び点火時期を算出する(ステップS3)。そして、ステップS1で読み込まれた機関速度及びエンジン冷却水温度、ステップS3で算出された要求空気充填量に基づいて、各制御弁の開度及び駆動モータの速度を算出する(ステップS4)。そして、ノッキング検出センサ65で検出された信号に基づいて、各制御弁の開度及び駆動モータの速度を補正する(ステップS5)。最後に、ステップS5で補正した制御パラメータに基づいて、各アクチュエータを制御する(ステップS6)。
【0034】
(バイパス弁1dの制御処理の一例)
制御部60は、ステップS2で算出された目標トルクが小さいほど、バイパス弁1dの開度を増大させる。制御部60は、例えば、目標トルクに応じたバイパス弁1dの開度(バイパス弁駆動モータの回転角度)を示すデータテーブルを有しており、このデータテーブルに従ってバイパス弁1dの開度を決定する。
【0035】
これにより、目標トルクが比較的小さい場合には、圧縮器20での圧縮率が低いことから温度を低下させる必要がなく、また、タービン10の駆動効率を助長する必要がないため、バイパス流路1cにより筺体40を迂回させることにより、筺体40内において一次空気と二次空気との間で膨張及び圧縮を行う際のエネルギ損失を抑制することができる。その一方で、目標トルクが比較的大きい場合には、一次空気を筺体40内へ導入することにより温度を低下させ、圧縮された一次空気が有する余剰分のエネルギを用いて二次空気を圧縮して、タービン10の駆動効率を向上させることができる。
【0036】
(ロータ駆動モータ50の制御処理の一例)
制御部60は、ステップS2で算出された目標トルクが大きいほど、ロータ駆動モータ50の回転数を増大させる。これにより、ロータ30の回転数を増大させて圧縮波による一次空気の膨張及び二次空気の圧縮を促進することができる。このため、圧縮率のより高い二次空気をタービン10の上流に導入することにより、圧縮器20での圧縮率を高めることができ、トルクを増大させることができる。
【0037】
(ノッキング発生時の制御処理の一例)
制御部60は、ステップS1でノッキングが発生していることを検出した場合には、ウェストゲート弁2cの開度を絞って、タービン10に導入される排気量を増大させる。これにより、タービン10の駆動力が増大すると共に圧縮器20での圧縮率が高まる。圧縮器20での圧縮率が高まると、一次空気の温度が上昇してしまうため、ロータ駆動モータ50の回転数を上げて一次空気の温度を低下させる。このような処理を繰り返すことにより、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0038】
(膨張冷気導入弁49の制御処理の一例)
制御部60は、第1排出部43から排出された一次空気の圧縮率が第2排出部44から排出された二次空気の圧縮率よりも高くなるようにロータ駆動モータ50の回転数を制御している。このような状態で、制御部60は、ステップS2で算出された目標トルクが大きいほど、膨張冷気導入弁49の開度を増大させる。これにより、目標トルクが大きいほど、第2排出部44から排出された二次空気よりも高い圧縮率である第1排出部43から排出された一次空気の燃焼室7への導入量を増加させるため、目標トルクを確実に出力することが可能となる。
【0039】
また、制御部60は、第1排出部43から排出された一次空気の温度が第2排出部44から排出された二次空気の温度よりも低くなるようにロータ駆動モータ50の回転数を制御している。このような状態で、制御部60は、燃焼室7内の温度が高いほど、膨張冷気導入弁49の開度を増大させる。これにより、燃焼室7内の温度が高いほど、膨張冷気導入弁49の開度を増大させて温度の低い空気をより多く燃焼室7内に導入することにより、燃焼室7内の温度を適正範囲内に制御することができる。
【0040】
(圧縮暖気導入弁47の制御処理の一例)
更に、制御部60は、第1排出部43から排出された一次空気の温度が第2排出部44から排出された二次空気の温度よりも低くなるようにロータ駆動モータ50の回転数を制御している。このような状態で、制御部60は、燃焼室7内の温度が高いほど、圧縮暖気導入弁47の開度を減少させる。これにより、燃焼室7内の温度が高いほど、膨張冷気導入弁49の開度を減少させて温度の高い空気の導入を抑制することにより、燃焼室7内の更なる温度上昇を抑制することができる。
【0041】
[他の制御処理の一例]
なお、上述の圧縮暖気導入弁47、バイパス弁1d及びウェストゲート弁2c等を制御するそれぞれの駆動モータは、目標トルクや燃焼室温度等の大きさに応じて段階的に駆動するものであってもよいし、目標トルクや燃焼室温度等の諸条件の変動に追随してリアルタイムに駆動するものであってもよい。
【0042】
例えば、各制御弁は、図5で示すように、「開く」又は「閉じる」の2段階で制御することもできる。ここでは、内燃機関の温度が予め定めた温度よりも低い場合(冷間)と、内燃機関の温度が予め定めた温度よりも高い場合(温間)とに分けて制御を行う。また、冷間時は、低速で運転している可能性が高いため、機関速度に応じた制御は行わないが、温間時は、低速〜高速で運転している可能性があるため、機関速度が予め定めた速度よりも遅い場合(低速域)と機関速度が予め定めた速度よりも速い場合(高速域)とに分けて制御を行う。また、温間時には、目標トルクが予め定めたトルクよりも大きい場合(高負荷)と、目標トルクが予め定めたトルク以下である場合(低負荷)とに分けて制御を行う。図中で「吸気連通」とは、吸気マニホールドに連通していることを示し、「排気連通」とは、排気マニホールドに連通していることを示している。なお、開閉制御の詳細についての説明は省略する。
【0043】
以上述べた通り、本実施形態によれば、エネルギ損失を抑制しながら、タービン10で圧縮された圧縮空気の温度を低下させることができる。
【0044】
なお、上述の実施形態では、すべての弁が制御部60の指令に従って駆動モータで駆動する電気制御弁としたが、必ずしも全ての弁が電気制御弁である必要はなく、電気制御を行わなくてもよいものについては、スプリング等を用いた機械式の弁を用いても構わない。
【符号の説明】
【0045】
1 吸気流路
2 排気流路
7 燃焼室
10 タービン
20 圧縮器
30 ロータ
31 隔壁
40 筺体
41 第1導入部
42 第2導入部
43 第1排出部
44 第2排出部
46 隔室
50 ロータ駆動モータ
60 制御部
100 車両用内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路に設けられたタービンと、
前記内燃機関の吸気流路に設けられ、前記タービンの回転と同期して駆動する圧縮器と、
複数の隔壁を有するロータと、
前記ロータを収容し、前記複数の隔壁との間に複数の隔室を形成する筺体と、
前記ロータを駆動するモータと、
前記モータを制御する制御手段と、を備え、
前記筺体が、
前記圧縮器の下流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮された一次空気を前記隔室内に導入する第1導入部と、
前記圧縮器の上流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮されていない二次空気を前記隔室内に導入する第2導入部と、
前記モータを回転することにより得られた一次空気を前記内燃機関の燃焼室に連通する吸気流路に排出する第1排出部と、
前記モータを回転することにより得られた二次空気を前記タービンの上流の排気流路に排出する第2排出部と、を有し、
前記制御手段は、前記第1導入部から導入された一次空気が膨張する一方で前記第2導入部から導入された二次空気が圧縮するように前記モータの回転数を制御することを特徴とする車両用内燃機関。
【請求項2】
前記一次空気が膨張することにより生じる圧力波に前記二次空気を圧縮させることにより、前記一次空気から前記二次空気に熱伝達されることを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関。
【請求項3】
前記筺体を迂回して前記筺体よりも下流の吸気流路に前記一次空気を導くバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉可能である弁と、
前記弁を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータを制御する駆動制御手段と、を更に備え、
前記駆動制御手段は、前記内燃機関が出力すべきトルクが小さいほど、前記弁の開度を増大させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用内燃機関。
【請求項4】
前記制御手段は、前記内燃機関が出力すべきトルクが大きいほど、前記モータの回転数を増大させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用内燃機関。
【請求項5】
内燃機関の排気流路に設けられたタービンと、
前記内燃機関の吸気流路に設けられ、前記タービンの回転と同期して駆動する圧縮器と、
複数の隔壁を有するロータと、
前記ロータを収容し、前記複数の隔壁との間に複数の隔室を形成する筺体と、
前記ロータを駆動するモータと、
前記モータを制御する制御手段と、を備え、
前記筺体が、
前記圧縮器の下流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮された一次空気を前記隔室内に導入する第1導入部と、
前記圧縮器の上流で前記吸気流路に接続され、前記圧縮器で圧縮されていない二次空気を前記隔室内に導入する第2導入部と、
前記モータを回転することにより得られた一次空気を前記内燃機関の燃焼室に連通する吸気流路に排出する第1排出部と、
前記モータを回転することにより得られた二次空気を前記タービンの上流の排気流路に排出する第2排出部と、
を有する車両用内燃機関の制御方法であって、
前記制御手段が、前記第1導入部から導入された一次空気が膨張する一方で前記第2導入部から導入された二次空気が圧縮するように前記モータの回転数を制御することを特徴とする車両用内燃機関の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223090(P2010−223090A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70957(P2009−70957)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】