説明

車両用内装材

【課題】車両の窓部から入射する太陽光を受け止めても、内装材やその周囲の温度上昇を抑制し、運転者等乗員への熱気の伝達を低減して、冷房装置に加わる負荷を低減し、車室内側への反射による眩しさも抑制する。
【解決手段】車両(1)の窓部(2)から入射した太陽光(R)を受ける部位の車両用内装材である。内装材本体部(4)の上方に受光プレート(5)を配置する。受光プレート(5)の上面に波形の受光面(6)を形成する。受光面(6)は、窓部(2)から入射する太陽光(R)を受け止める第1斜面(8)と、第1斜面(8)により太陽光(R)が遮られる部位の第2斜面(9)とを備える。第1斜面(8)は、水平方向からの太陽光(R)が反射しても、乗員(C)に当たらない角度に傾斜させてある。内装材本体部(4)と受光プレート(5)との間に冷却風路(10)を形成する。冷却風路(10)と連通する通気路(12)に送風装置(13)を設け、車外の空気を上記の冷却風路(10)へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のダッシュボードなど、窓部から入射する太陽光を受ける部位に配置された車両用内装材に関し、さらに詳しくは、車両の窓部から入射する太陽光を受け止めてもこの内装材やその周囲の温度上昇を抑制でき、運転者等乗員への熱気の伝達を低減できるうえ、冷房装置に加わる負荷を低減でき、さらに車室内側への反射による眩しさも抑制できる、車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に乗用車やトラック、バスなどの車両にあっては、車両の窓部から入射する太陽光を受けると、ダッシュボードなどの内装材の温度が外気温よりも大きく上昇し、車載の冷房装置が停止している状態では、例えば70℃以上にもなる。特にダッシュボードは、運転者への眩しさを抑えるため一般に暗色材料で形成されており、太陽光の輻射熱を吸収して一層温度が上昇し易い。この内装材の温度が上昇すると、雰囲気温度も上昇して、近傍に位置する運転者などに多量の熱気が伝わる。また、運転者にはダッシュボードで反射した太陽光の輻射熱も伝わる。このため、特に駐車後に運転を開始する場合などは、運転席近傍を早急に冷却することが要求され、冷房装置が高負荷で運転される。
【0003】
上記の冷房装置の負荷は、例えば夏場にあっては、全体の40〜50%が窓部を通して入射する太陽光の輻射熱によるものと言われており、結果として車両走行消費エネルギー全体の10〜15%が冷房負荷となっている。従って、上記の太陽光を受けても、内装材の温度上昇を効率よく抑制できれば運転環境を良好にできるうえ、冷房装置の負荷を低減でき、ひいては冷房装置を稼動するための燃料の消費を低減して、燃費の向上を図ることができ、COなど排気ガスの排出が低減されるので環境に優しくすることができる。
【0004】
従来、上記のダッシュボードを冷却するため、ダッシュボード内に冷気を流通させるもの(例えば、特許文献1参照、以下従来技術1という。)や、ダッシュボードの上面に沿って冷気を吹き出すもの(例えば、特許文献2参照、以下従来技術2という。)が提案されている。
【0005】
上記の従来技術1は、ダッシュボードの上面材の内部を空洞とし、この空洞に対して冷房装置からの冷気の一部が導入される入口を設け、この空洞を車外に連通させる出口にシャッタ機構を設けたものである。
また、上記の従来技術2は、冷却手段と送風手段とを備えるとともに、ダッシュボード上面に吹出口を設けてあり、この吹出口からダッシュボードの上面に沿って、冷却手段で冷却した空気を送風手段により吹出すようにしてある。
【0006】
【特許文献1】実開平06−057707号公報
【特許文献2】特開平05−338434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術1は、ダッシュボードの内部が冷却風で冷却される。しかしながら、ダッシュボードは計器類を取り付けるなどの理由から、一般に厚肉の合成樹脂材料で形成されており、このダッシュボードが太陽光を受けると、多量の輻射熱がこのダッシュボードに蓄積される。しかも合成樹脂材料は熱伝達効率が高くないことから、特に夏場などで駐車中に温度が上昇したのち走行を開始する場合には、このダッシュボード全体を急速に冷却するのが容易でない。このため、車室内の空気を冷却する冷気に加えて、多量の冷気を上記の空洞に流通させる必要があり、冷房装置全体に大きな負荷が加わる問題がある。
【0008】
一方、上記の従来技術2は、ダッシュボードの表面が冷却風で直接冷却される。しかしながら、上述のようにこのダッシュボードの保有する熱量が大きいため、表面に沿って冷却封を流通させるだけではその表面温度を急速に低下させることが容易でないうえ、ダッシュボードの上方が開放空間であるため、上記の冷気は吹出口近傍で急速に拡散し易く、ダッシュボードの表面全体に沿って冷気を行き渡らせることが容易でない問題もある。
【0009】
本発明の技術的課題は、上記の問題点を解消し、車両の窓部から入射する太陽光を受け止めてもこの内装材やその周囲の温度上昇を抑制でき、運転者等乗員への熱気の伝達を低減できるうえ、冷房装置に加わる負荷を低減でき、さらに車室内側への反射による眩しさも抑制できる、車両内装材用冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は車両用内装材に関し、車両(1)の窓部(2)から入射する太陽光(R)を受ける部位に配置された車両用内装材であって、上記の太陽光(R)を受ける受光面(6)が波形に形成してあり、この波形が、上記の窓部(2)から入射する太陽光(R)を受け止める第1斜面(8)と、この第1斜面(8)により上記の太陽光(R)が遮られる部位に配置した第2斜面(9)とを備えることを特徴とする。
【0011】
窓部から入射した太陽光は、上記の受光面の波形のうちの上記の第1斜面に受けとめられ、第2斜面には太陽光が当たらない。この第1斜面と第2斜面とは交互に配置されているので、この受光面は全体として太陽光の輻射による温度上昇が抑制され、上記の第1斜面と接触して昇温する近傍の雰囲気も、低温の第2斜面との接触により温度上昇が抑制される。
【0012】
上記の第1斜面は、窓部から入射する太陽光を受け止め得るように、窓部側に臨ませてあり、一方、第2斜面は第1斜面の影に入るように、即ち太陽光を受けないように配置されるため、例えば運転席側など、車室内側に臨ませてある。このため、窓部を通して入射した太陽光は大部分が窓部側へ反射され、車室内側への反射が抑制される。従って、太陽光の反射による車室内側への輻射量が低く抑えられ、また、車室内側への反射による眩しさも抑制される。なお上記の受光面の特に第1斜面は、フロントガラスへの映り込みを防止するなどの理由から、暗色材料で形成して反射を抑えると好ましい。
【0013】
上記の内装材は、その受光面に上記の波形が形成してあればよく、この内装材本体部の上面に上記の波形の受光面を形成してもよく、或いは、内装材本体部の上方に受光プレートを配置して、この受光プレートの上面に上記の波形の受光面を形成したものであってもよい。
【0014】
内装材本体部に上記の波形の受光面を形成した場合は、一体に形成できるので安価に実施できる利点がある。一方、上記の受光プレートを用いる場合には、既存の車両の内装材にも容易に適用できるうえ、この受光プレートで太陽光を遮断するので内装材本体部の昇温を防止でき、しかもこの受光プレートを薄肉に形成することができるので、太陽光による輻射熱の蓄積を少なく抑えることができる利点がある。しかも、後述のように冷却風路を形成した場合には、この受光プレートを薄肉に形成することで、冷却風により受光プレート全体の温度を速やかに低下できる利点もある。なお、この受光プレートは、合成樹脂材料や、厚紙、金属材料などのほか、これらの複合材料など、任意の材料で形成することができる。
【0015】
上記の第1斜面は、上記の窓部側に臨ませて傾斜させてあればよく、特定の傾斜角度に限定されない。しかし、この第1斜面を鉛直方向に近づけると、太陽光の角度によっては第2斜面へ太陽光が照射される場合があり、逆に水平方向に近づけると、太陽光がこの第1斜面で反射して、その反射光が運転者などの乗員に当たり易くなり、運転者への輻射熱が増加する場合がある。そこでこの第1斜面は、近傍の窓部の形状や座席の配置状況などによっても異なるが、頂部での水平面に対する傾斜角度を、90度以下であって、水平方向から入射する太陽光の反射光が乗員に当たる角度よりも大きく設定すると好ましく、具体的には20〜40度程度に設定するとより好ましい。
【0016】
一方、上記の第2斜面は、第1斜面により太陽光が遮られる部位に配置されておればよく、これも特定の傾斜角度に限定されない。しかし、頂部での水平面に対する傾斜角度が小さくなると太陽光を受け易くなり、逆にこの傾斜角度を大きくし過ぎると波形のピッチ間隔が小さくなって製作コストが高くつく等の問題がある。そこでこの第2斜面は、近傍の窓部の形状や第1斜面の傾斜角度などによっても異なるが、頂部での水平面に対する傾斜角度を、90度以上に設定すると好ましく、110〜130度程度に設定するとより好ましい。
【0017】
上記の受光面は、車室内の雰囲気と熱交換されて温度上昇が抑制され、あるいは冷却されるが、この波形の受光面に沿って内方に冷却風路を備え、この冷却風路と連通する通気路に送風手段を設けてある場合には、その送風手段で外気等の冷却風を流通させることで、上記の受光面が効果的に冷却される。この場合、冷却風路の内面は上記の受光面の波形に沿わせてあると、冷却風との接触面積が大きいので効率よく熱交換され、速やかに冷却されるのでより好ましい。なお、上記の送風手段は、通常、ファンなどが用いられるが、車両の走行により外気が導入されるように、進行方向に向けた開口とこれを開閉するシャッターなどで構成して、上記のファンを省略したものであってもよい。
【0018】
また、上記の受光プレートを用いる場合は、この受光プレートの内部に上記の冷却風路を形成してもよいが、上記の内装材本体部と受光プレートとの間に冷却風路を形成し、この冷却風路と連通する通気路に送風手段を設けてもよい。この場合は、簡単な構造の受光プレートを用いることができるので、安価に実施できて好ましい。
【0019】
上記の冷却風路には、車載の冷房装置から供給する冷却風を送風してもよく、この場合は上記の受光面を集中的に、速やかに冷却することができる。しかしながら、上記の受光面は太陽光を受けることで外気温よりも高温に加熱されることから、上記の送風手段は車外の空気を上記の冷却風路へ供給するだけで、この内装材を十分に冷却できる。この場合は内装材の冷却のために車載の冷房装置の負荷を高めることがないので、燃料の消費を一層低減して、燃費の向上をさらに図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0021】
(1) 車両用内装材の受光面は、太陽光を受け止める第1斜面と太陽光を受けない第2斜面とが交互に配置された波形に形成されているので、窓部から入射する太陽光を受け止めても、その輻射による受光面全体の温度上昇を抑制できる。また、この受光面近傍の雰囲気も、低温の第2斜面との接触により気温の上昇を抑制することができる。
【0022】
(2) 第1斜面は窓部側に臨ませてあり、車室内側には第1斜面で太陽光が遮られる第2斜面が臨ませてあることから、窓部を通して入射した太陽光の大部分が窓部側へ反射されるので、太陽光の反射による車室内側への輻射量を低く抑えて、運転者等への熱気の伝達を低減できるうえ、車室内側への反射による眩しさも抑制できる。
【0023】
(3) 受光面や近傍の雰囲気の温度上昇を抑制できるうえ、受光面での反射による車室内側への輻射量を低く抑えて運転者等への熱気の伝達を低減できる。これにより、冷房装置に加わる負荷を低減でき、ひいては冷房装置を稼動するための燃料の消費を低減して、燃費の向上を図ることができ、COなど排気ガスの排出が低減されるので環境に優しくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の実施形態を示し、図1は車両のダッシュボード近傍の平面図、図2はダッシュボードの縦断側面図、図3は図2のA部の拡大断面図である。
図1に示すように、この車両(1)のフロントガラス(2)の近傍に位置するダッシュボード(3)は、太陽の高さや向きによっては、このフロントガラス(2)を通して入射する太陽光(R)が受け止められる。
【0025】
図2に示すように、上記のダッシュボード(3)は、本体部(4)とその上方に配置した受光プレート(5)とからなる。この受光プレート(5)は、例えば波形に折った暗色の厚紙で形成してあり、この受光プレート(5)の上面に波形の受光面(6)が形成してある。なお、この実施形態では上記の受光プレート(5)を厚紙で形成したが、本発明では合成樹脂材料や金属材料、これらの複合材料など、他の任意の材料で受光プレートを形成できる。
【0026】
上記の受光プレート(5)は、本体部(4)上を容易に移動しないように、ビスなどの固定手段(7)で本体部(4)に固定してある。但し本発明の受光プレート(5)は、自重などで本体部(4)上を容易に移動しない場合は、固定手段を省略して本体部(4)上に単に載置してもよい。また上記の固定手段(7)は、係止部材や吸盤、磁石等で受光プレート(5)を本体部(4)に着脱可能に固定するものであってもよく、或いは接着剤などで受光プレート(5)を本体部(4)に着脱不能に固定するものであってもよい。
【0027】
図2と図3に示すように、上記の受光面(6)は、上記のフロントガラス(2)から入射する太陽光(R)を受け止める第1斜面(8)と、この第1斜面(8)により上記の太陽光(R)が遮られる部位に配置した、即ち影になっている部位の第2斜面(9)とを備える。具体的には、上記の第1斜面(8)はフロントガラス(2)側に臨ませてあり、上記の第2斜面(9)は車室(1a)内側に臨ませてある。それらの傾斜角度は、例えば第1斜面(8)は、頂部での水平面に対する傾斜角度(α)が約30度に設定してあり、第2斜面(9)は、頂部での水平面に対する傾斜角度(β)が約120度に設定してある。このため、車両(1)の前方から水平方向に太陽光(R)が入射しても、第1斜面(8)に反射した光が運転者などの乗員(C)に達することはなく、また、太陽光(R)が上方から入射しても第2斜面(9)には当ることがない。
【0028】
上記の受光プレート(5)の波形は、例えば高さが約22mm、ピッチが約25mmの三角波状に形成した。しかし本発明ではこの波形の形状や寸法はこの実施形態のものに限定されず、他の形状であってもよく、寸法もこれより小さくても或いは大きくてもよい。なお、この実施形態では、第1斜面(8)の傾斜角度(α)と第2斜面(9)の傾斜角度(β)を、それぞれ受光面(6)の全体に亘って略同一角度に設定したが、例えば運転席側に近づくほど第1斜面(8)の傾斜角度(α)を大きくし、第2斜面(9)の傾斜角度(β)を小さく設定するなど、変化をもたせることも可能である。
【0029】
上記の受光プレート(5)の第1斜面(8)は、太陽光(R)を受け止めると昇温する。しかし上記の第2斜面(9)は太陽光(R)を受けることがないので、昇温が抑制される。このため、この受光プレート(5)は全体として昇温が抑制され、周囲の雰囲気も昇温が抑制されて、上記のダッシュボード(3)から近傍の乗員(C)に伝わる熱気が軽減される。また、乗員(C)からは影になっている第2斜面(9)が主として見え、第1斜面(8)は見えないか、或いは見えたとしても、太陽光(R)の反射がこの乗員(C)へは届かない。このため、乗員(C)は太陽光(R)の反射による輻射熱を受けにくいうえ、このダッシュボード(3)が太陽光(R)の反射で眩しくなることが防止される。
【0030】
図2と図3に示すように、上記の本体部(4)と受光プレート(5)との間に冷却風路(10)が、上記の波形の受光面(6)に沿ってダッシュボード(3)内に形成してある。この冷却風路(10)には、上記の本体部(4)の上面に開口された、結露防止用の空気吹出口(11)が臨ませてある。この空気吹出口(11)は、通気路(12)を介して車外の大気に連通してあり、この通気路(12)に送風装置(13)が設けてある。そして、この送風装置(13)を運転することで、車外の空気が上記の冷却風路(10)へ供給され、上記の太陽光(R)により昇温した受光プレート(5)が、冷却風路(10)を流通する外気により速やかに冷却される。
【0031】
上記の冷却風路(10)を経た空気は、図1に示すように、車室(1a)内で運転席などの座席(14)とは異なる部位に排出される。なお、この実施形態では上記の冷却風路(10)からの排気を車室(1a)内に排出したが、本発明では下流側の通気路を設けて、車外に排気を排出してもよい。この場合、この下流側の通気路に上記の送風装置(13)を設けて、この送風装置により吸引することで、上記の冷却風路(10)に外気を案内することも可能である。
【0032】
次に、上記の受光プレートに太陽光をうけたときの表面温度を、受光プレートを備えない従来のダッシュボードと比較して測定した。
【0033】
(実験例1)
晴天時で外気温が26℃において、ドアの窓を閉めた状態で車両(1)を停止し、30分後の温度を測定したところ、車室(1a)内の温度は41℃であった。この状態で、上記の受光プレート(5)の第1斜面(8)は、71℃に上昇していたが、第2斜面(9)は62℃であった。これに対し従来のダッシュボードは、72℃にまで上昇していた。
【0034】
次に、上記のドアの窓を開けて走行することにより車室(1a)内を換気し、10分後に温度測定したところ、車室(1a)内の温度は38℃に低下していた。このとき、上記の第1斜面(8)は10℃低下して61℃となっており、第2斜面(9)は56℃となっていた。これに対し、従来のダッシュボードでは、約6℃低下して66℃になっていた。
さらにこの状態で、上記の冷却風路(10)に26℃の外気を送風して10分後に温度測定したところ、上記の第1斜面(8)は47℃に低下し、第2斜面は41℃にまで低下した。
【0035】
上記の測定結果から、上記の波形の受光面(6)を備えたダッシュボード(3)は、太陽光を受けても、従来のダッシュボードに比較して表面温度の上昇を抑制でき、上記の冷却風路に外気を送風するだけで、その表面温度を速やかに低下させることができる、ということが判る。
【0036】
(実験例2)
上記のダッシュボードが晴天時に太陽光を受けた場合の、運転席への反射光の量を測定するため、この運転席側からダッシュボードの照度を測定した。その結果、上記の受光プレート(5)のうちの、運転席側から主に見える第2斜面(9)は約2200ルクスであった。これに対し、従来のダッシュボードは約3600ルクスであった。
【0037】
次に、晴天時に外気温が28℃の条件下で、車両(1)を停止してドアの窓を約10cm開き、上記の冷却風路(10)に外気を送風した状態で、受光プレートの表面温度と、この受光プレートからの輻射を受ける運転席の温度を測定した。その結果、車室内の温度は40℃で、受光プレートの第1斜面の表面温度は45℃であり、運転席は47℃であった。これに対し、従来のダッシュボードでは、車室内の温度は40℃であったが、ダッシュボードの表面温度は70℃であり、運転席は51℃であった。なお、上記の運転席の温度は、運転席で運転者の位置に黒い厚紙をほぼ鉛直方向に配置してその表面温度を測定した。
【0038】
上記の測定結果から、上記の波形の受光面(6)を備えたダッシュボード(3)は、太陽光を受けても、従来のダッシュボードに比較して運転席への輻射熱の伝達と眩しさが軽減されていることが判る。
【0039】
上記の実施形態で説明した車両用内装材は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の構造や配置などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0040】
例えば上記の実施形態では、車両用内装材を本体部とその上に配置した受光プレートとで構成して、この受光プレートの上面に受光面を形成した。しかし本発明では内装材の上面に、一体的に受光面を形成してもよい。
また上記の実施形態では、結露防止用の空気吹出口を利用して冷却風路に外気を導入したが、本発明の冷却風路は、専用に車外の空気を導入する通気路を内装材の内部に設けてもよく、或いは車載の冷房装置からの冷気を導入してもよい。
【0041】
また上記の実施形態では、冷却風路からの排気を運転席とは異なる部位で車室内に排出したので、通気路を簡単に配置できた。しかし本発明では、下流側に通気路を設けて、冷却風路からの排気を車外に排出してもよく、この場合は、車室内の雰囲気温度全体を良好に低下できるので好ましい。
さらに上記の実施形態では、上記の内装材がダッシュボードである場合について説明したが、本発明の車両用内装材は、太陽光を受ける部位の内装材であればよく、リアパーセルシェルフなど他の部位の内装材であってもよいことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の車両用内装材は、車両の窓部から入射する太陽光を受け止めてもこの内装材やその周囲の温度上昇を抑制でき、運転者等乗員への熱気の伝達を低減できるうえ、冷房装置に加わる負荷を低減でき、さらに車室内側への反射による眩しさも抑制できるので、乗用車やトラック、バスなど、種々の車両の内装材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示す、車両のダッシュボード近傍の平面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す、ダッシュボードの縦断側面図である。
【図3】図2のA部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…車両
2…窓部(フロントガラス)
3…内装材(ダッシュボード)
4…内装材本体部
5…受光プレート
6…受光面
8…第1斜面
9…第2斜面
10…冷却風路
12…通気路
13…送風手段(送風装置)
C…乗員
R…太陽光
α…第1斜面(8)の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の窓部(2)から入射する太陽光(R)を受ける部位に配置された車両用内装材であって、
上記の太陽光(R)を受ける受光面(6)が波形に形成してあり、この波形が、上記の窓部(2)から入射する太陽光(R)を受け止める第1斜面(8)と、この第1斜面(8)により上記の太陽光(R)が遮られる部位に配置した第2斜面(9)とを備えることを特徴とする、車両用内装材。
【請求項2】
上記車両(1)の内装材本体部(4)の上方に受光プレート(5)を配置して、この受光プレート(5)の上面に上記の波形の受光面(6)を形成した、請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
上記の受光面(6)に沿って内方に冷却風路(10)を備え、この冷却風路(10)と連通する通気路(12)に送風手段(13)を設けた、請求項1または請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
上記の内装材本体部(4)と受光プレート(5)との間に冷却風路(10)を形成して、この冷却風路(10)と連通する通気路(12)に送風手段(13)を設けた、請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項5】
上記の送風手段(13)は、車外の空気を上記の冷却風路(10)へ供給可能に構成してある、請求項3または請求項4に記載の車両用内装材。
【請求項6】
上記の第1斜面(8)は、上記の窓部(2)に臨ませて傾斜させてあり、その傾斜角度(α)を、水平方向から入射する太陽光(R)の反射光が乗員(C)に当たる角度よりも大きくしてある、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149248(P2009−149248A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330610(P2007−330610)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【特許番号】特許第4212636号(P4212636)
【特許公報発行日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(507419828)
【Fターム(参考)】